JP5386955B2 - ポリアミド多孔質略球状粒子および光学材料 - Google Patents
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Description
しかしながらこれまでに開発された球晶構造を有するポリアミド多孔質微粒子は、原料がナイロン6やナイロン12、およびナイロン66に基づくものであり、これらを250℃〜260℃にてマトリックス樹脂と溶融混錬させると容易に溶解し、特徴的な構造である球晶構造を有する多孔質形状を保つことが出来なくなることが問題となっていた。
本発明は、これまでにない280℃以上の融点を有するポアミドの多孔質で球晶状の粒子および、それらを容易に安定して製造できる方法を提供することである。さらに、透明樹脂材料と粒子とを260℃の温度で混合分散して均一化した後に、フィルム化や塗膜によって光学用途の成形体にする際に、これまでのナイロン6、ナイロン66およびナイロン12の多孔質微粒子の代わりに本粒子を用いることで、熱的に安定でかつ高性能な特性を有する光学フィルムや塗膜、インク印刷材料を容易に提供することを目的とする。また、触媒担持体についても、280℃までの高温での触媒反応が可能となる。
(1)融点が280℃以上の熱可塑性ポリアミドからなる多孔質略球状粒子である。
(2)単一粒子そのものが球晶構造を有する前記(1)の多孔質略球状粒子である。
(3)平均粒子径0.1〜30μmである前記(1)又は(2)の多孔質略球状粒子である。
(4)BET比表面積1〜150m 2 /gである前記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の多孔質略球状粒子である。
(5)平均細孔径が0.01〜0.5μmである前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の多孔質略球状粒子である。
(6)吸油量が150〜800ml/100gである前記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の多孔質略球状粒子である。
(7)ポリアミドがナイロン46からなる前記(1)〜(6)のいずれか一つに記載の多孔質略球状粒子である。
(8)ポリアミドがナイロン9Tからなる前記(1)〜(7)のいずれか一つに記載の多孔質略球状粒子である。
(9)光拡散板中に添加するための前記(1)〜(8)のいずれか一つに記載の多孔質略球状粒子である。
(10)融点が280℃以上のポリアミドを良溶媒に溶解後、ポリアミドの溶解度を下げることでポリアミドの球晶となる核を生成および成長させた球晶構造を有するポリアミド多孔質略球状粒子の製造方法である。
(11)前記(1)〜(8)のいずれか一つに記載のポリアミド多孔質略球状粒子を含有する光散乱または偏光解消機能を有する光学材料である。
(12)前記(1)〜(8)のいずれか一つに記載のポリアミド多孔質略球状粒子を透明性樹脂に分散させてなる光散乱または偏光解消機能を有する光学材料である。
(13)透明性樹脂が、スチレン又はメチルメタクリレートをモノマー成分として含有するモノマー又はモノマー組成物を重合してなる樹脂である前記(11)に記載の光学材料である。
前記(1)〜(8)のいずれか一つに記載のポリアミド多孔質略球状粒子を含む塗膜を透明性基板上に形成してなる光散乱または偏光解消機能を有する光学材料である。
(14)前記(1)〜(8)のいずれか一つに記載のポリアミド多孔質略球状粒子を透明性基板上に接着してなる光散乱または偏光解消機能を有する光学材料である。
これらのポリアミドには、さらに、テレフタル酸、イソフタル酸、m−キシリレンジアミンなどの少量の芳香族成分を共重合してもよい。これらのモノマーの組み合わせのうち、重合後のポリアミドの融点が280℃以上になるものが熱的な安定性が高いため好ましい。本発明のポリアミド樹脂は、融点が280〜330℃であるものが好ましく、融点が290〜310℃であるものが最も好ましい。
ポリアミド46:1,4−テトラメチレンジアミンとアジピン酸との共重合体。
ポリアミド6T/66:1,6−ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸とアジピン酸との共重合体。
ポリアミド6T/6I:1,6−ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸とイソフタル酸との共重合体。
ポリアミド6T/6I/66:1,6−ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸とイソフタル酸とアジピン酸との共重合体。
ポリアミド6T/N−5T:1,6−ヘキサメチレンジアミンと1,5−ペンタメチレンジアミンとテレフタル酸との共重合体。
ポリアミド9T:1,9−ノナンジアミンとテレフタル酸との共重合体。
S:多孔粒子の比表面積[m2/g]、
S0:同一粒子径の円滑な球状粒子の比表面積[m2/g]とする。
円滑な球の比表面積(S0)は、数式(2)に従い算出することができる。
dobs:観測される数平均球状粒子径[m]、
ρ:ポリアミドの密度[g/m3]とする。
ここで、ポリアミド46の密度ρを、1.18g/cm3(=1.18×106g/m3)、として求めることができる。
多孔質粒子の配合割合は透明性樹脂と多孔質粒子の合計に対して、0.1〜60重量%が好ましい。
透明性塗料に用いられるバインダーとしては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。
さらには、前記多孔質粒子を直接透明性基板に接着剤等で接着してもよい。
また、本発明の光材料は、光源装置と背面偏光板の間に配することができる。液晶表示装置には、その方式によっては液晶セルより背面に拡散フィルムなどを配している。拡散フィルム等が用いられている場合には、光学材料は該拡散フィルムの前面または後ろ側のいずれに配されていてもよい。
ポリアミド粒子の粒子形状と大きさは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察する。球形粒子の粒径は、コールターカウンター又はSEM写真より測定する。 SEM写真による数平均粒子径(Dn)及び体積平均粒子径(Dv)は、100個の粒子径より数式(4)及び数式(5)に従い、算出する。粒度分布指数(PDI)は、数式(6)に従い算出する。
Dn:数平均粒子径、Dv:体積平均粒子径、PDI:粒度分布指数とする。
ポリアミド粒子の比表面積は、窒素吸着によるBET法3点測定で行った。
水銀ポロシメーターで測定し、平均細孔径を求めた。測定範囲は0.0034〜400μmで測定した。
ポリアミドの融解熱は、示差走査熱量計(DSC)で測定する。DSCの測定は、窒素中で、昇温速度5℃/分の条件で、室温から昇温を行い、温度範囲120〜230℃の吸熱ピークの面積を算出する。ポリアミド46の結晶融解熱は、Takeshi Yamanobe,et al, Journal of Molecular Structure, Volume 829, Issues 1-3, 17 March 2007, Pages 80-87から270J/gとして、この比として結晶化度を算出した。融点は、最初のピーク値の温度とした。
ポリアミド多孔質微粒子の吸油量は、JIS K 5101にしたがって、煮亜麻仁油の吸油量を測定した。
ポリアミド多孔質微粒子の光散乱特性は、粒子を透明樹脂に規定量分散させてシート化させたものを用いて測定した。測定装置は、日本電色工業社製NHD5000を用い、JIS K7361−1およびJIS K7136に準じて全光線透過率およびヘイズを測定した。
ポリアミド多孔質微粒子分散試料の偏光解消能の評価には、日本分光社製の紫外・可視分光光度計V−570を用い、検出部には積分球を設置し、検出部入口には偏光フィルムを2枚、お互いの偏光軸が直角になるように設置したのち、試料の光学フィルムを、2枚の偏光フィルムの間に挿み、350〜800nmまでの波長範囲における透過率により評価した。
ナイロン46(DSM社製、商品名「スタニールTS300」:非強化ナイロン46)70gを70℃でフェノール930gに溶解し、さらに100gのメタノールを入れて攪拌し、30℃で保存したポリアミド溶液(A)を作成した。次に、水4000gにメタノール3600gを混合して、25℃で保存した非溶媒Bを作成した。これらを攪拌機つきの20L容器にて、すばやく混合攪拌後、静置させポリマー粒子を析出沈殿させた。遠心分離機を用いて固液分離後、50℃のメタノールを100倍量かけ洗いしてポリマー粒子を洗浄後、分離・乾燥し、乾燥粉状態で合計65gの粒子を得た。
得られた粒子を走査型電子顕微鏡により観察したところ、多孔質の、均一な粒子であり、また、透過型電子顕微鏡により検鏡したところ、粒子の中心から放射状に成長した単独球晶状粒子であった。得られたポリアミド46多孔質微粒子の走査型電子顕微鏡写真を図1に、透過型電子顕微鏡写真を図2に示す。
得られたポリアミド46多孔質球状粒子について、コールターカウンターで粒子径および粒子径分布を測定したところ、数平均粒子径(Dn)は3.0μmであり、体積平均粒子径(Dv)は4.0μmであり、粒子分布指数(PDI)は1.33であった。また、BET比表面積は112.0m 2 /gであり、多孔度RIは66であり、融点は287℃、結晶化度は42%、吸油量は580ml/100gであった。
ナイロン46(DSM社製、商品名「スタニールTS300」:非強化ナイロン46)100gを70℃でフェノール900gに溶解し、さらに100gのイソプロピルアルコールを入れて攪拌し、30℃で保存したポリアミド溶液(A)を作成した。次に、水3000gにイソプロピルアルコール2000gを混合して、25℃で保存した非溶媒Bを作成した。これらを攪拌機つきの20L容器にて、すばやく混合攪拌後、静置させポリマー粒子を析出沈殿させた.遠心分離機を用いて固液分離後、50℃のメタノールを100倍量かけ洗いしてポリマー粒子を洗浄してポリマー粒子を分離・乾燥し、乾燥粉状態で合計85gの粒子を得た。
得られた粒子を走査型電子顕微鏡により観察したところ、多孔質の、均一な粒子であり、また、透過型電子顕微鏡により検鏡したところ、粒子の中心から放射状に成長した単独球晶状粒子であった。
得られたポリアミド46多孔質球状粒子について、コールターカウンターで粒子径および粒子径分布を測定したところ、数平均粒子径(Dn)は6.0μmであり、体積平均粒子径(Dv)は8.6μmであり、粒子分布指数(PDI)は1.43であった。また、BET比表面積は115.0m 2 /gであり、多孔度RIは136であり、融点は288℃、結晶化度は40%、吸油量は250ml/100gであった。
ナイロン46(DSM社製、商品名「スタニールTS300」:非強化ナイロン46)50gを70℃でフェノール950gに溶解し、さらに100gのn−プロパノールを入れて攪拌し、30℃で保存したポリアミド溶液(A)を作成した。次に、水3000gにn−プロパノール2300gを混合して、25℃で保存した非溶媒Bを作成した。これらを攪拌機つきの20L容器にて、すばやく混合攪拌後、静置させポリマー粒子を析出沈殿させた.遠心分離機を用いて固液分離後、50℃のメタノールを100倍量かけ洗いしてポリマー粒子を洗浄してポリマー粒子を分離・乾燥し、乾燥粉状態で合計40gの粒子を得た。
得られた粒子を走査型電子顕微鏡により観察したところ、多孔質の、均一な粒子であり、また、透過型電子顕微鏡により検鏡したところ、粒子の中心から放射状に成長した単独球晶状粒子であった。
得られたポリアミド46多孔質球状粒子について、コールターカウンターで粒子径および粒子径分布を測定したところ、数平均粒子径(Dn)は3.3μmであり、体積平均粒子径(Dv)は4.1μmであり、粒子分布指数(PDI)は1.24であった。また、BET比表面積は121m 2 /gであり、多孔度RIは78であり、融点は288℃、結晶化度は40%、吸油量は600ml/100gであった。
ナイロン9T(クラレ社製、商品名「ジェネスタ」:非強化ナイロン9T)50gを70℃でフェノール1240gに溶解し、さらに100gのメタノールと塩化カルシウムを5gを入れて攪拌し、30℃で保存したポリアミド溶液(A)を作成した。次に、水440gにメタノール100gを混合して、25℃で保存した非溶媒Bを作成した。これらを攪拌機つきの10L容器にて、すばやく混合攪拌後、静置させポリマー粒子を析出沈殿させた.遠心分離機を用いて固液分離後、50℃のメタノールを100倍量かけ洗いしてポリマー粒子を洗浄してポリマー粒子を分離・乾燥し、乾燥粉状態で合計40gの粒子を得た。
得られた粒子を走査型電子顕微鏡により観察したところ、多孔質の、均一な粒子であり、また、透過型電子顕微鏡により検鏡したところ、粒子の中心から放射状に成長した単独球晶状粒子であった。得られたポリアミド9T多孔質微粒子の走査型電子顕微鏡写真を図3に、透過型電子顕微鏡写真を図4に示す。
得られたポリアミド9T多孔質球状粒子について、コールターカウンターで粒子径および粒子径分布を測定したところ、数平均粒子径(Dn)は8.6μmであり、体積平均粒子径(Dv)は10.4μmであり、粒子分布指数(PDI)は1.21であった。また、BET比表面積は11.8m 2 /gであり、融点は292℃、吸油量は200ml/100gであった。
実施例4において、ポリアミド溶液(A)に塩化カルシウムを10g溶解させた以外は、実施例4と同様にしておこなった。得られた粒子を走査型電子顕微鏡により観察したところ、多孔質の、均一な粒子であり、また、透過型電子顕微鏡により検鏡したところ、粒子の中心から放射状に成長した単独球晶状粒子であった。得られたポリアミド9T多孔質球状粒子について、コールターカウンターで粒子径および粒子径分布を測定したところ、数平均粒子径(Dn)は13.5μmであり、体積平均粒子径(Dv)は18.0μmであり、粒子分布指数(PDI)は1.33であった。また、BET比表面積は7.9m 2 /gであり、融点は292℃、吸油量は150ml/100gであった。
〔ナイロン6多孔質粒子の製造〕
フェノールとメタノールとを質量比で9:1の割合で含む溶液1000gに、ポリアミド6(宇部興産社製、分子量13000)を50g加えて溶解させポリアミド6濃度5質量%のポリアミド6溶液を調製し、室温に保持した。このナイロン溶液1に、メタノールと水とを7:0.5の混合比で混合した混合液を添加した。温度は室温で行った。24時間静置して、析出終了させた。その後遠心分離でポリマーを単離した後、50℃のメタノールを100倍量かけ洗いしてポリマー粒子を洗浄してポリマー粒子を分離・乾燥し、乾燥粉状態で合計40gの粒子を得た。
得られたポリマー粒子を走査型電子顕微鏡で観察したところ、数平均粒子径10.0μm、体積平均粒子径13.8μmの比較的均一な球形の多孔質粒子であった。また、平均細孔径0.057μm、PDI1.36、比表面積21.4m2/g、多孔度指数RI42.1、ポリマー粒子の結晶化度56%であった。SEM観察およびTEM観察から中心の単一または複数の核から三次元的に放射状にナイロンフィブリルが成長し、単一粒子そのものが球晶構造を有していることがわかった。
〔ナイロン66多孔質粒子の製造〕
メタクレゾール1000gに、ポリアミド66(宇部興産社製、分子量11,000)を50g加えて溶解させポリアミド6濃度5質量%のポリアミド6溶液を調製し室温に保持した。このナイロン溶液1に、メタノールと水とを1.5:1の混合比で混合した混合液を添加した。温度は室温で行った。24時間静置して、析出終了させた。その後遠心分離でポリマーを単離した後、50℃のメタノールを100倍量かけ洗いしてポリマー粒子を洗浄してポリマー粒子を分離・乾燥し、乾燥粉状態で合計40gの粒子を得た。
得られたポリマー粒子を走査型電子顕微鏡で観察したところ、数平均粒子径3.7μm、体積平均粒子径4.5μmの比較的均一な球形の多孔質粒子であった。また、平均細孔径0.101μm、PDI1.22、比表面積22.0m2/gであった。SEM観察およびTEM観察から中心の単一または複数の核から三次元的に放射状にナイロンフィブリルが成長し、単一粒子そのものが球晶構造を有していることがわかった。
実施例1〜5および参考例1〜2で得られた各粒子を窒素雰囲気下でPMMA樹脂20gとブラベンダーを用いて260℃で5分間攪拌混合をおこない、1.5wt%および3wt%の粉体含有透明樹脂混合体を作成後、すかさず、プレス機を用いてポリアミド多孔質略球状粒子を透明樹脂に分散させてなる光学シート(10cm×10cm×厚み500μm)を作成した。
参考例と比較して、多孔質構造を保持している実施例1〜5は、全光線透過率およびヘイズが高く光散乱性に優れていることがわかる。
Claims (9)
- 融点が280℃以上330℃以下、かつBET比表面積が2〜150m2/g、かつ吸油量が150〜800ml/100g、かつ球晶構造を有するポリアミド46又はポリアミド9Tからなる多孔質略球状粒子。
- 平均粒子径0.1〜30μmである請求項1に記載の多孔質略球状粒子。
- 平均細孔径が0.01〜0.5μmである請求項1又は2に記載の多孔質略球状粒子。
- 光拡散板中に添加するための請求項1〜3のいずれか一項に記載の多孔質略球状粒子。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリアミド多孔質略球状粒子を含有する光散乱または偏光解消機能を有する光学材料。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリアミド多孔質略球状粒子を透明性樹脂に分散させてなる光散乱または偏光解消機能を有する光学材料。
- 透明性樹脂が、スチレン又はメチルメタクリレートをモノマー成分として含有する樹脂である請求項6に記載の光学材料。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリアミド多孔質略球状粒子を含む塗膜を透明性基板上に形成してなる光散乱または偏光解消機能を有する光学材料。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリアミド多孔質略球状粒子を透明性基板上に接着してなる光散乱または偏光解消機能を有する光学材料。
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