[実施の形態1]
本願発明の理解を容易にするために、まず本願発明の基礎となる相変化メモリについて説明する。図1は、相変化メモリの全体構成を示すブロック図である。図1において、この相変化メモリは、メモリアレイ1、書込回路2、および読出回路3を備える。
メモリアレイ1は、複数行複数列に配置された複数のメモリセルを含む。各メモリセルは、相変化に伴う抵抗値のレベル変化によってデータを記憶する相変化素子を有する。書込回路2は、書込動作時に、メモリアレイ1の複数のメモリセルのうちのいずれかのメモリセルを選択し、選択したメモリセルにデータを書き込む。読出回路3は、読出動作時に、メモリアレイの1の複数のメモリセルのうちのいずれかのメモリセルを選択し、選択したメモリセルの記憶データを読み出す。
図2は、メモリアレイ1に含まれるメモリセルMMの構成を示す回路図である。図2において、このメモリセルMMは、NチャネルMOSトランジスタ4および相変化素子5を含む。NチャネルMOSトランジスタ4のゲートGはワード線電圧VWLを受け、そのソースSはソース線電圧VSLを受け、その基板SUB(ウェル、バックゲート)はウェル線電圧VMWを受け、そのドレインDは相変化素子5の一方電極に接続されている。相変化素子5の他方電極は、ビット線電圧VBLを受ける。ワード線電圧VWLおよびビット線電圧VBLは、書込回路2および読出回路3によって制御される。ソース線電圧VSLおよびウェル電圧VMWは、ともに接地電圧(0V)に固定される。
書込回路2は、相変化素子5を高抵抗のアモルファス状態にすることより相変化素子5にたとえばデータ“1”を書き込み、相変化素子5を低抵抗の結晶状態にすることにより相変化素子5にたとえばデータ“0”を書き込む。書込回路2は、相変化素子5に与える熱とその期間によって相変化素子5の状態を制御する。相変化素子5を高抵抗のアモルファス状態にする動作はリセット動作と呼ばれ、相変化素子5を低抵抗の結晶状態にする動作はセット動作と呼ばれる。
図3はリセット動作時における書込回路2の動作を示すタイムチャートであり、図4はセット動作時における書込回路2の動作を示すタイムチャートであり、図5はリセット動作時およびセット動作時における相変化素子5の温度変化を示すタイムチャートである。
書込回路2は、リセット動作時は、図3に示すように、ワード線電圧VWLを正の一定電圧VaにしてメモリセルMMのNチャネルMOSトランジスタ4を導通状態にさせる。次に、書込回路2は、ビット線電圧VBLを短時間だけ正電圧Vaにし、相変化素子5にリセット電流を流す。リセット電流は、図5に示すように、相変化素子5の温度が短時間taだけ相変化材料の融点Taよりも高くなった後、短時間tdで結晶化温度Txよりも低くなるように設定される。これにより、相変化素子5は、結晶化することなく、高抵抗のアモルファス状態にされる。
また書込回路2は、セット動作時は、図4に示すように、ワード線電圧VWLを正の一定電圧Vb(<Va)にしてメモリセルMMのNチャネルMOSトランジスタ4の抵抗値を所定値に設定する。次に、書込回路2は、ビット線電圧VBLを比較的長時間tsにわたって正電圧Vcにし、相変化素子5にセット電流を流す。セット電流は、図5に示すように、相変化素子5の温度が比較的長時間tmにわたって相変化材料の結晶化温度Tx以上で融点Ta以下になるように設定される。結晶化温度Txは、融点Ta以下で、かつガラス転移点以上の温度である。これにより、相変化素子5は結晶化される。
図6は、読出動作時における読出回路3の動作を示すタイムチャートである。読出回路3は、図6に示すように、ワード線電圧VWLを正の一定電圧VdにしてメモリセルMMのNチャネルMOSトランジスタ4を導通状態にし、ビット線BLにリセット動作時およびセット動作時よりも低い正電圧Veを印加し、相変化素子5に流れる読出電流に基づいてデータを読み出す。この読出電流は、相変化素子5の状態が変化しないように、低いレベルに設定される。
たとえば、読出回路3は、相変化素子5に流れる電流が所定のしきい値電流よりも小さい場合は、相変化素子5は高抵抗のアモルファス状態であり、相変化素子5の記憶データは“1”であると判定する。また読出回路3は、相変化素子5に流れる電流が所定のしきい値電流よりも大きい場合は、相変化素子5は低抵抗の結晶状態であり、相変化素子5の記憶データは“0”であると判定する。
なお、リセット動作時は、図7に示すように、ビット線電圧VBLを正の一定電圧Vaにするとともに、ワード線電圧VWLを短時間だけ正電圧Vaにしても同じ結果が得られる。
このような相変化メモリでは、セット動作を行なっても、複数のメモリセルMMのうちのいくつかのメモリセルMMについては、低抵抗の結晶状態にすることができないと言う問題がある。次に、この原因について説明する。
図8は、相変化素子5の温度と結晶成長速度との関係を示す図である。図8において、相変化素子5の温度を上昇させて行くと、結晶成長速度は徐々に上昇し、ピークを越えた後に急に低下する。すなわち、相変化素子5には、最も効率良く結晶成長が進む温度範囲Tmがあり、この温度範囲Tmはガラス転移点以上の結晶化温度Txと融点Taの間にある。この温度範囲Tmは、相変化素子5によりばらつく。
図9(a)〜(c)は、3つメモリセルMMA,MMB,MMCの相変化素子5の最適結晶成長温度範囲Tm、結晶化温度Tx、および融点Taと、3つメモリセルMMA,MMB,MMCの相変化素子5を結晶化させる場合の最適な温度変化曲線を示す図である。また、図9(d)〜(f)は、3つメモリセルMMA,MMB,MMCの相変化素子5の温度を最適な温度変化曲線に沿って変化させる場合の、ワード線電圧VWLおよびビット線電圧VBLを示す図である。
図9(a)(b)に示すように、2つメモリセルMMA,MMBの相変化素子5の結晶化温度Txおよび融点Taが異なると、これに伴い最適な結晶成長温度範囲Tmも異なる。また、図9(b)(c)に示すように、2つメモリセルMMB,MMCの相変化素子5の結晶化温度Txおよび融点Taがほとんど同じであっても、最適な結晶成長温度範囲Tmが異なる場合がある。図9(a)〜(c)では、3つメモリセルMMA,MMB,MMCの相変化素子5の結晶成長温度範囲がそれぞれTmA,TmB,TmC(TmB>TmC>TmA)である場合が示されている。このように最適な結晶成長温度範囲Tmが異なる3つの相変化素子5の全てを結晶化させるためには、各相変化素子5の温度を個別に設定する必要がある。
図9(d)〜(f)に示すように、3つメモリセルMMA,MMB,MMCに同じビット線電圧VBLを印加する場合は、3つのメモリセルMMA,MMB,MMCのワード線電圧VWLを個別に設定する必要がある。図9(d)〜(f)では、3つのメモリセルMMA,MMB,MMCのワード線電圧VWLがそれぞれVA,VB,VC(VB>VC>VA)である場合が示されている。
しかし、図1〜図7で示した相変化メモリでは、全メモリセルMMに同じ電圧を印加するので、いくつかのメモリセルMMについては最適な印加電圧でのセット動作ができず、相変化素子5の抵抗値を所定の値に設定できなくなる。また、相変化素子5の最適な結晶成長温度範囲Tmにばらつきがなくても、NチャネルMOSトランジスタ4の特性にばらつきがある場合も同様の問題が生じる。
また、メモリセルMMの周辺温度によって相変化素子5の最適な結晶成長温度範囲Tmが異なる場合、セット動作時の気温などによっては、同じメモリセルMMに同じ電圧を印加しても相変化素子5の抵抗値を所定の値に設定できなくなる。
また、図3および図4で示したように、リセット動作時とセット動作時では、印加電圧値が異なるので、複数の電源が必要となり、チップサイズが大きくなるという問題もあった。この実施の形態1では、これらの問題点の解決が図られる。
図10(a)は、この発明の実施の形態1による相変化メモリのセット動作を示すタイムチャートであって、図4と対比される図である。図10(a)において、書込回路2は、ビット線電圧VBLを所定時間だけ正電圧Vaに立ち上げる一方、ワード線電圧VWLを正電圧Vaにした後、ワード線電圧VWLを一定の傾きで下降させる。図10(a)中の期間t1では、ビット線電圧VBLとワード線電圧VWLがともに正電圧Vaにされて、相変化素子5の温度が融点Ta近傍に上昇する。期間t1の次の期間t2では、ビット線電圧VBLが正電圧Vaに維持されるとともに、ワード線電圧VWLが一定の傾きで下降されて、相変化素子5の温度が結晶化温度Tx以下の温度まで低下する。
ここでは、このようなセット動作を徐冷セット動作と呼ぶものとする。この徐冷セット動作を行なうことにより、相変化素子5の最適な結晶成長温度範囲Tmにばらつきがある場合や、相変化素子5の周辺温度が変動する場合でも、相変化素子5を高い確率で結晶状態にすることができる。図10(a)の期間t1,t2が本発明の効果を得るために必要な期間であるので、その期間t1,t2の前後の状態が異なる場合でも、図10(a)の場合と同様の効果を得ることができる。たとえば、図10(b)に示すように、ワード線電圧VWLを期間t1の直前に立ち上げてもよい。また図10(c)に示すように、ワード線電圧VWLを期間t1の直前に立ち上げ、期間t2の直後にワード線電圧VWLを0Vに立ち下げてもよい。また図10(d)に示すように、ワード線電圧VWLを期間t1の直前に立ち上げ、期間t2の直後にビット線電圧VBLを0Vに立ち下げてもよい。
図11は、本願発明の効果を説明するための図であって、図9(d)〜(f)および図10(a)を重ねた図である。図11において、3つのメモリセルMMA,MMB,MMCの最適なワード線電圧VWLがそれぞれVA,VB,VC(VB>VC>VA)であるので、図4で示したようにワード線電圧VWLを一定にした場合は、3つの相変化素子5のうちの1つしか結晶化させることができない。これに対して本願発明では、ワード線電圧VWLが下降する途中で必ずVB,VC,VAとなる。ワード線電圧VWLがVB,VC,VAになる期間PB,PC,PAでは、それぞれ3つの相変化素子5の温度が最適な結晶成長温度範囲TmB,TmC,TmAになるので、3つの相変化素子5をともに結晶状態にすることができる。
図12(a)〜(d)は、本願発明の効果をより詳細に説明するための図である。特に、図12(a)は図11の期間PA,PB,PCの近傍を拡大した図であり、図12(b)〜(d)はそれぞれ3つのメモリセルMMA,MMB,MMCの相変化素子5の温度と結晶化速度の関係を示す図である。図12(a)において、本願発明では、ワード線電圧VWLは一定の傾きで連続的に下降する。
ワード線電圧VWLがVnからVn+1まで下降する途中でVWL=VBとなり、図12(c)に示すように、メモリセルMMBの相変化素子5の温度が最適な結晶成長温度範囲TmBを通過する。次いでワード線電圧VWLがVn+1からVn+3まで下降する途中でVWL=Vn+2=VCとなり、図12(d)に示すように、メモリセルMMCの相変化素子5の温度が最適な結晶成長温度範囲TmCを通過する。次いでワード線電圧VWLがVn+3からVn+4まで下降する途中でVWL=VAとなり、図12(b)に示すように、メモリセルMM1の相変化素子5の温度が最適な結晶成長温度範囲Tm1を通過する。したがって、3つのメモリセルMMA,MMB,MMCが全て結晶状態になる。
図13(a)〜(d)は、本願発明の比較例を示す図であって、図12(a)〜(d)と対比される図である。図13(a)において、この比較例では、ワード線電圧VWLは一定時間毎にステップ状に下降する。図13(a)では、ワード線電圧VWLがVnからVn+4までステップ状に下降する状態が示されている。
ワード線電圧VWLが一定時間だけVnにされた後、ワード線電圧VWLがVnからVn+1に立ち下げられるが、Vn>VB>Vn+1であるので、図13(c)に示すように、メモリセルMMBの相変化素子5の温度は最適な結晶成長温度範囲TmBを飛ばして低下する。次いでワード線電圧VWLが一定時間だけVn+1にされた後、ワード線電圧VWLがVn+1からVn+2に立ち下げられ、さらに、ワード線電圧VWLが一定時間だけVn+2にされた後、ワード線電圧VWLがVn+2からVn+3に立ち下げられるが、Vn+2=VCであるので、図13(d)に示すように、メモリセルMMCの相変化素子5の温度は最適な結晶成長温度範囲TmCになる。
次にワード線電圧VWLが一定時間だけVn+3にされた後、ワード線電圧VWLがVn3からVn+4に立ち下げられるが、Vn3>VA>Vn+4であるので、図13(b)に示すように、メモリセルMMBの相変化素子5の温度は最適な結晶成長温度範囲TmBを飛ばして低下する。したがって、3つのメモリセルMMA,MMB,MMCのうちの1つのメモリセルMMCのみが結晶状態になり、2つのメモリセルMMA,MMBは結晶状態にならない。以上より、本願発明の方が比較例よりも優れていることが分かる。
また、図14は、図11で示した本願発明のワード線電圧VWLとメモリセルMMBの相変化素子5の結晶化に最適なワード線電圧VBとが交わる期間PBと、そこを過ぎた期間PB2とを拡大した図である。図14において、期間PBで相変化素子5が結晶化した場合、期間PB2において相変化素子5は既に低抵抗化している。したがって、期間PB,PB2においてメモリセルMMBに一定のワード線電圧VBを印加し続けると、期間PBから期間PB2への移行に伴い相変化素子5に流れる電流が増加する。その結果、期間PB2において相変化素子5の温度がその融点Ta以上になると、期間PBで一旦低抵抗化した相変化素子5が期間PB2で再び高抵抗化する現象が発生する。これに対して本願発明では、期間PBから期間PB2にかけてワード線電圧VWLを下降させるので、期間PBで一旦低抵抗化した相変化素子5が期間PB2で再び高抵抗化する現象の発生を防止することができる。
次に、本願発明の効果を実測にて確認した結果を示す。図15は、複数のメモリセルMMに対して、図4で示した従来のセット動作を行なった場合と、図10(b)で示した本願発明の徐冷セット動作を行なった場合との歩留りを比較した図である。両方の場合において同じメモリセルMMを用いた。また、図4の期間tsと図10(b)の期間t2とを同じ時間に設定した。また図10(b)の期間t1は、徐冷セット動作時間に大きな影響を与えないように、t2の0.01倍の時間に設定した。
図15において、“Pass”は良品を示し、“Z”はセット動作不良を示し、“X”はリセット動作不良をそれぞれ示している。図15から、従来のセット動作を行なった場合よりも本願発明の徐冷セット動作を行なった方が、セット動作不良を減少させて良品を増やすことができることが分かる。このように、本願発明では、従来のセット動作時間とほとんど同じ時間で徐冷セット動作を行ない、セット動作不良を低減させることができる。
また図16(a)(b)は、複数のメモリセルMMに対して、図4で示した従来のセット動作を行なった場合と、図10(b)で示した本願発明の徐冷セット動作を行なった場合との抵抗分布を比較した図である。合計6種類のセット動作を実施した。6種類のセット動作のうち5種類は図4で示した従来のセット動作である。ただし、これら5種類のセット動作間では、ワード線電圧VWLが異なる。具体的には、ワード線電圧VWLを0.5V,0.7V,0.9V,1.1V,1.3Vに設定した。
残る1種類は図10(b)で示した本願発明の徐冷セット動作である。具体的には、期間t2においてワード線電圧VWLを1.5Vから0Vまで一定の傾きで連続的に低下させた。これらは全て同じメモリセルMMを用いて測定した。また、予めリセット動作にてメモリセルMMの抵抗分布を高抵抗側に制御し、メモリセルMMの抵抗値および分散が各セット動作直前においてほぼ同じであることを逐一確認した後、6種類のセット動作の各々を開始した。また、図4の期間tsと図10(b)の期間t2を同じ時間に設定した。また、図10(b)の期間t1は、セット動作時間に大きく影響を与えないように、期間t2の0.01倍の時間とした。図16(a)のセットおよびリセット動作は25℃で実施し、図16(b)のセットおよびリセット動作は85℃で実施した。
図16(a)の結果から、25℃において従来のセット動作を行なう場合、VWL=0.9Vでセットした後の抵抗値の分布が最も小さくなっており、最適なワード線電圧VWLは0.9Vであることが分かる。また図16(b)の結果から、85℃において従来のセット動作を行なう場合、VWL=1.1Vでセットした後の抵抗値の分布が最も小さくなっており、最適なワード線電圧VWLは1.1Vであることが分かる。また図16(a)(b)の結果から、いずれの温度においても本願発明の徐冷セット動作を行なった後の抵抗値の分布が最も小さくなっており、本願発明の徐冷セット動作を行なうことが最適であることが分かる。このように、本願発明によれば、温度に応じて印加電圧条件を変えることなく、各温度において従来のセット動作よりも優れた抵抗制御を行なうことができた。
また、図3、図4および図7で示したように、従来の相変化メモリではリセット動作時とセット動作時でそれぞれ印加電圧値が異なるため、複数の電源が必要である。しかし、本願発明では、図17に示すように、徐冷セット動作時のワード線電圧VWLをリセット動作時のワード線電圧VWLと同じ電圧から一定の傾きで下降させることにより、徐冷リセット動作とセット動作を共通の電源を用いて行なうことができる。なお、図17の左側はリセット動作の電圧波形であり、これは図7で示したリセット動作の電圧波形と同じである。図17の右側は徐冷セット動作の電圧波形である。したがって、本願発明によれば、電源を単一にしてチップサイズの縮小化を図ることができる。
[実施の形態2]
図18(a)は、この発明の実施の形態2による相変化メモリの徐冷セット動作を示すタイムチャートであって、図10(a)と対比される図である。図18(a)において、この徐冷セット動作が実施の形態1の徐冷セット動作と異なる点は、ワード線電圧VWLを一定の傾きで下降させる代わりに、ビット線電圧VBLを一定の傾きで下降させる点である。
すなわち、書込回路2は、ワード線電圧VWLを所定時間だけ正電圧Vaに立ち上げる一方、ビット線電圧VBLを正電圧Vaにした後、ビット線電圧VBLを一定の傾きで連続的に下降させる。図18(a)中の期間t1では、ビット線電圧VBLとワード線電圧VWLがともに正電圧Vaにされて、相変化素子5の温度が融点Ta近傍に上昇する。期間t1の次の期間t2では、ワード線電圧VWLが正電圧Vaに維持されるとともに、ビット線電圧VBLが一定の傾きで下降されて、相変化素子5の温度が結晶化温度Tx以下の温度まで低下する。
この徐冷セット動作を行なうことにより、実施の形態1と同様に理由で、相変化素子5の最適な結晶成長温度範囲Tmにばらつきがある場合や、相変化素子5の周辺温度が変動する場合でも、相変化素子5を高い確率で結晶状態にすることができる。図18(a)の期間t1,t2が本発明の効果を得るために必要な期間であるので、その期間t1,t2の前後の状態が異なる場合でも、図18(a)の場合と同様の効果を得ることができる。たとえば、図18(b)に示すように、ビット線電圧VBLを期間t1の直前に立ち上げてもよい。また図18(c)に示すように、ビット線電圧VBLを期間t1の直前に立ち上げ、期間t2の直後にビット線電圧VBLを0Vに立ち下げてもよい。また図18(d)に示すように、ビット線電圧VBLを期間t1の直前に立ち上げ、期間t2の直後にワード線電圧VWLを0Vに立ち下げてもよい。
次に、本願発明の効果を実測にて確認した結果を示す。図19は、複数のメモリセルMMに対して、図4で示した従来のセット動作を行なった場合と、図18(b)で示した本願発明の徐冷セット動作を行なった場合との歩留りを比較した図である。両方の場合において同じメモリセルMMを用いた。また、図4の期間tsと図18(b)の期間t2とは同じ時間に設定した。また図18(b)の期間t1は、徐冷セット動作時間に大きな影響を与えないように、期間t2の0.01倍の時間に設定した。
図19において、“Pass”は良品を示し、“Z”はセット動作不良を示し、“X”はリセット動作不良をそれぞれ示している。図19から、従来のセット動作を行なった場合よりも本願発明の徐冷セット動作を行なった方が、セット動作不良を減少させて良品を増やすことができることが分かる。このように、本願発明では、従来のセット動作時間とほとんど同じ時間で徐冷セット動作を行ない、セット動作不良を低減させることができる。
次に、実施の形態1と2の効果を実測にて比較した結果を示す。図20は、ビット線電圧VBLを下降させて徐冷セット動作を行なった場合(実施の形態2)と、ワード線電圧VWLを下降させて徐冷セット動作を行なった場合(実施の形態1)との歩留りを比較した図である。図20から、ビット線電圧VBLを下降させて徐冷セット動作を行なうよりもワード線電圧VWLを下降させて徐冷セット動作を行なう方が、セット動作不良を減少させて良品を増やすことができることが分かる。これは、前者よりも後者の方が徐冷セット動作時間内において相変化素子5の結晶化が進む時間を長くすることができるからである。
すなわち、図21(a)に示すように、ワード線電圧VWLを一定電圧V4に維持しながらビット線電圧VBLをV4,V3,V2,V1と一定の傾きで下降させる場合と、図21(b)に示すように、ビット線電圧VBLを一定電圧V4に維持しながらワード線電圧VWLをV4,V3,V2,V1と一定の傾きで下降させる場合とを比較するものとする。また、図21(a)(b)で、一定時間当りの電圧降下量は同じとする。
一方、図22の実線は、図2で示したNチャネルMOSトランジスタ4のみの静特性である。図22の横軸はビット線電圧VBLであり、縦軸はNチャネルMOSトランジスタ4のドレイン−ソース間電流Idsである。また、図22の破線は、図2の各電圧を印加(VBLとVWL以外は0V)した場合に、相変化素子5およびNチャネルMOSトランジスタ4に流れる電流Ieffである。相変化素子5が無い状態でVBL=V4,VWL=V4とした場合は、図22に示す電流Ids(VBL=V4,VWL=V4)が流れるが、相変化素子5が有る場合は相変化素子5自身の抵抗値による電圧降下が発生し、相変化素子5に流れる電流はIeff(VBL=V4,VWL=V4)となる。このIeffが、相変化素子5の状態を制御する電流となる。
ビット線電圧VBLを図21(a)に示すように下降させた場合、相変化素子5に流れる電流Ieffは、図22に示すように、Ieff(VBL=V4,VWL=V4)→Ieff(VBL=V3)→Ieff(VBL=V2)→Ieff(VBL=V1)の順に低下する。一方、ワード線電圧VWLを図21(b)に示すように下降させた場合、相変化素子5に流れる電流Ieffは、図22に示すように、Ieff(VBL=V4,VWL=V4)→Ieff(VWL=V3)→Ieff(VWL=V2)→Ieff(VWL=V1)の順に低下する。
図21(c)は、図21(a)の徐冷セット動作時における相変化素子5の電流Ieffの時刻変化を示す図である。また、図21(d)は、図21(b)の徐冷セット動作時における相変化素子5の電流Ieffの時刻変化を示す図である。また、図21(c)(d)の縦軸に示されているIeff(Tx〜Ta)は、相変化素子5の温度を相変化素子5の結晶化が進む温度範囲にする電流範囲である。
図21(a)と(b)、図21(c)と(d)をそれぞれ比較すると、下降させる電圧VWL,VBLの傾きが同じであり、かつ徐冷セット動作時間が同じでありながら、ワード線電圧VWLを下降させて徐冷セット動作を行なう方が、ビット線VBLを下降させて徐冷セット動作を行なうよりも、相変化素子5の結晶化が進む時間t2をより長くすることができることが分かる。以上が図20の結果が生じた理由である。
なお、この実施の形態2では、本発明が、NチャネルMOSトランジスタ4と相変化素子5とが電気的に直列に接続された構成のメモリセルMMに適用された場合について説明したが、この発明は、他の構成のメモリセルにも適用可能である。
たとえば、図23に示すように、相変化素子5と、その両端の2つの端子6,7のみで構成されたメモリセルに対しても適用できる。徐冷セット動作時は、一方の端子6を0Vにし、他方の端子7に図18(a)〜(d)で示したビット線電圧VBLを印加すればよい。たとえば図24に示すように、ビット線電圧VBLを期間t1で正電圧Vaにした後、期間t1の次の期間t2でビット線電圧VBLを一定の傾きで低下させればよい。また、期間t2の経過後は、引き続き一定の傾きで下降させてもよいし、図25に示すように、0Vに立ち下げてもよい。
また、本発明は、図26に示すように、端子7,6間に相変化素子5とダイオード8が電気的に直列に接続された構成のメモリセルに対しても適用できる。このメモリセルでは、ダイオード8のカソードが一方の端子6に接続され、ダイオード8のアノードが相変化素子5を介して他方の端子7に接続されている。この場合も、徐冷セット動作時は、一方の端子6を0Vにし、他方の端子7に図18(a)〜(d)で示したビット線電圧VBLを印加すればよい。
また、本発明は、図27に示すように、端子6,7間にダイオード8と相変化素子5が電気的に直列に接続された構成のメモリセルに対しても適用できる。このメモリセルでは、ダイオード8のアノードが一方の端子6に接続され、ダイオード8のカソードが相変化素子5を介して他方の端子7に接続されている。この場合、徐冷セット動作時は、一方の端子6を0Vにし、他方の端子7に図18(a)〜(d)で示したビット線電圧VBLと極性が逆で絶対値が同じ電圧/VBLを印加すればよい。
[実施の形態3]
図28は、この発明の実施の形態3による相変化メモリの全体構成を示す回路ブロック図である。図28において、この相変化メモリはメモリアレイMAを備える。メモリアレイMAは、複数行複数列に配置された複数のメモリセルMM<0,0>〜MM<x,n(y+1)+y>と、それぞれ複数行に対応して設けられた複数のワード線WL<0>〜WL<x>と、それぞれ複数行に対応して設けられた複数のキャパシタC<0>〜C<x>と、それぞれ複数列に対応して設けられた複数のビット線BL<0>〜BL<n(y+1)+y>とを含む。ただし、x,y,nの各々は自然数である。ビット線BL<0>〜BL<n(y+1)+y>は、(y+1)本ずつ(n+1)個のビット線グループに分割されている。
各メモリセルMMは、図2で示したものと同じ構成であり、NチャネルMOSトランジスタ4と相変化素子5を含む。NチャネルMOSトランジスタ4のゲートは対応のワード線WLに接続され、そのソースは接地電圧VSS(0V)を受け、そのドレインは相変化素子5を介して対応のビット線BLに接続されている。キャパシタC<0>〜C<x>は、それぞれワード線WL<0>〜WL<x>と接地電圧VSSのラインとの間に接続されている。なお、キャパシタCは、ワード線WLの先端部(図中の右端部)に接続されていてもよいし、ワード線WLの基端部(図中の左端部)に接続されていてもよい。
また、この相変化メモリは、XデコーダXDECと、それぞれワード線WL<0>〜WL<x>に対応して設けられたワード線ドライバWLD<0>〜WLD<x>とを備える。XデコーダXDECは、入力されたアドレス信号に従って、内部行アドレス信号Xadd<0>〜Xadd<x>のうちのいずれかの信号を活性化レベルの「H」レベルにする。
各ワード線ドライバWLDは、NANDゲート10,11、ANDゲート12、PチャネルMOSトランジスタ13、およびNチャネルMOSトランジスタ14〜16を含み、内部アドレス信号Xadd、制御信号WLMODE0〜WLMODE2、および制御電圧VCMに従って、対応のワード線WLを駆動する。
内部アドレス信号Xaddおよび制御信号WLMODE2がともに「H」レベルにされると、NANDゲート10の出力信号が「L」レベルになり、PチャネルMOSトランジスタ13が導通してワード線WLが「H」レベル(正電圧Va)に立ち上げられる。また、内部アドレス信号Xaddおよび制御信号WLMODE0のうちの少なくとも一方の信号が「L」レベルにされると、NANDゲート11の出力信号が「H」レベルになり、NチャネルMOSトランジスタ14が導通してワード線WLが「L」レベル(接地電圧VSS)にリセットされる。
また、内部アドレス信号Xaddおよび制御信号WLMODE1がともに「H」レベルにされると、ANDゲート12の出力信号が「H」レベルになり、NチャネルMOSトランジスタ16が導通してNチャネルMOSトランジスタ15がワード線WLと接地電圧VSSのラインとの間に接続される。NチャネルMOSトランジスタ15は、電流切換回路17からの制御電圧VCMに応じたレベルの電流を流す。NチャネルMOSトランジスタ15のゲート長は、論理回路(たとえばゲート10〜12)などで通常使用するMOSトランジスタのゲート長よりも長く設定されている。これは、ゲート長寸法のばらつきなどによる電流ばらつきを抑制するためである。
電流切換回路17は、図29に示すように、定電流源22、NチャネルMOSトランジスタNI<0>〜NI<m>,NISW<0>〜NISW<m>、およびアナログスイッチASW<0>〜ASW<m>を含み、制御信号φI<0>〜φI<m>に従って制御電圧VCMを出力する。ただし、mは自然数である。
NチャネルMOSトランジスタNI<0>〜NI<m>は、互いに異なるゲート幅を有する。NチャネルMOSトランジスタNI<0>〜NI<m>の各々は、ダイオード接続されている。NチャネルMOSトランジスタNI<m>のドレインおよびゲートは、共通接続されて定電流源22の出力電流Irefを受ける。NチャネルMOSトランジスタNISW<m>は、NチャネルMOSトランジスタNI<m>のソースと接地電圧VSSのラインとの間に接続され、そのゲートは制御信号φI<m>を受ける。
アナログスイッチASW<m>は、NチャネルMOSトランジスタNI<m>のゲートと電流切換回路17の出力ノード17aとの間に並列接続されたPチャネルMOSトランジスタ23およびNチャネルMOSトランジスタ24を含む。制御信号φI<m>は、インバータ25で反転されてPチャネルMOSトランジスタ23のゲートに入力されるとともに、インバータ25,26で遅延されてNチャネルMOSトランジスタ24のゲートに入力される。
制御信号φI<0>〜φI<m>のうちのいずれか1つの信号が「H」レベルにされ、残りの信号は「L」レベルにされる。たとえば、制御信号φI<m>が「H」レベルにされて制御信号φI<0>〜φI<m−1>が「L」レベルにされると、NチャネルMOSトランジスタNISW<0>〜NISW<m>のうちのNチャネルMOSトランジスタNISW<m>のみが導通するとともに、アナログスイッチASW<0>〜ASW<m>のうちのアナログスイッチASW<m>のみが導通する。
これにより、電流切換回路17のNチャネルMOSトランジスタNI<m>のゲートと各ワード線ドライバWLDのNチャネルMOSトランジスタ15のゲートが接続され、トランジスタNI<m>,15はカレントミラー回路を構成する。したがって、トランジスタ15には、定電流Irefと、トランジスタNI<m>,15のゲート幅の比とで決まる電流が流れる。したがって、トランジスタNI<0>〜NI<m>は互いに異なるゲート幅を有するので、制御信号φI<0>〜φI<m>のうちのどの信号を「H」レベルにするかによってトランジスタ15に流れる電流を切換えることができ、ワード線電圧VWLの下降速度を切換えることができる。
たとえば、制御信号φI<0>を「H」レベルにしたときにトランジスタ15に流れる電流I0と、制御信号φI<1>を「H」レベルにしたときにトランジスタ15に流れる電流I1と、制御信号φI<m>を「H」レベルにしたときにトランジスタ15に流れる電流Imとの大小関係がI1>I0>Imであるとする。この場合、図30に示すように、制御信号φI<0>を「H」レベルにしたときのワード線電圧VWLの立ち下がり時間TF0=t3−t1と、制御信号φI<1>を「H」レベルにしたときのワード線電圧VWLの立ち下がり時間TF1=t2−t1と、制御信号φI<m>を「H」レベルにしたときのワード線電圧VWLの立ち下がり時間TFm=t4−t1との大小関係は、TFm>TF0>TF1となる。
したがって、制御信号φI<0>を「H」レベルに設定したが、ワード線電圧VWLの立ち下がり時間を短縮したい場合は、制御信号φI<0>の代わりに制御信号φI<1>を「H」レベルにすればよい。逆に、ワード線電圧VWLの立ち下がり時間を延長したい場合は、制御信号φI<0>の代わりに制御信号φI<m>を「H」レベルにすればよい。
なお、徐冷セット動作時におけるワード線電圧VWLの立ち下がり時間をリセット動作時におけるワード線電圧VWLの立ち下がり時間よりも長くするため、NチャネルMOSトランジスタ15の電流駆動能力はNチャネルMOSトランジスタ14の電流駆動能力よりも小さく設定されている。
図28に戻って、この相変化メモリは、それぞれn+1個のビット線グループに対応して設けられたYスイッチYSW<0>〜YSW<n>を備える。YスイッチYSW<0>〜YSW<n>は、それぞれノードBLSA<0>〜BLSA<n>に接続されている。各YスイッチYSWは、それぞれ対応の(y+1)本のビット線BLと対応のノードBLSAとの間に接続されたPチャネルMOSトランジスタYSWP<0>〜YSWP<y>と、それぞれ対応の(y+1)本のビット線BLと対応のノードBLSAとの間に接続されたNチャネルMOSトランジスタYSWN<0>〜YSWN<y>とを含む。
PチャネルMOSトランジスタYSWP<0>〜YSWP<y>のゲートはそれぞれビット線選択信号YB<0>〜YB<y>を受け、NチャネルMOSトランジスタYSWN<0>〜YSWN<y>のゲートはそれぞれビット線選択信号YT<0>〜YT<y>を受ける。ビット線選択信号YB<0>〜YB<y>は、それぞれビット線選択信号YT<0>〜YT<y>の反転信号である。ビット線選択時は、ビット線選択信号YT<0>〜YT<y>のうちのいずれか1つの信号が「H」レベルにされる。したがって、YスイッチYSW<0>〜YSW<n>により、ノードBLSA<0>〜BLSA<n>の各々に1本のビット線BLが接続される。
また、この相変化メモリは、YデコーダYDECと、それぞれビット線選択信号YB<0>〜YB<y>,YT<0>〜YT<y>に対応して設けられたYドライバYD<0>〜YD<y>を備える。YデコーダYDECは、入力されたアドレス信号に従って、内部列アドレス信号Yadd<0>〜Yadd<y>のうちのいずれかの信号を活性化レベルの「H」レベルにする。
各YドライバYDは、2段のインバータ18,19で構成される。各YドライバYDは、対応の内部列アドレス信号Yaddが活性化レベルの「H」レベルにされたことに応じて、対応のビット線選択信号YB,YTをそれぞれ「L」レベルおよび「H」レベルにする。これにより、ノードBLSA<0>〜BLSA<n>の各々に1本のビット線BLが接続される。
また、この相変化メモリは、それぞれノードBLSA<0>〜BLSA<n>に接続されたライト回路BLSW<0>〜BLSW<n>および読出用センスアンプSA<0>〜SA<n>を備える。ライト回路BLSW<0>〜BLSW<n>は、それぞれパルス信号BLVP<0>〜BLVP<n>,BLVN<0>〜BLVN<n>によって制御される。
各ライト回路BLSWは、図31に示すように、PチャネルMOSトランジスタ27およびNチャネルMOSトランジスタ28を含む。PチャネルMOSトランジスタ27のソースは電圧Vaを受け、そのゲートはパルス信号BLVPを受け、そのドレインはノードBLSAに接続される。NチャネルMOSトランジスタ28のドレインはノードBLSAに接続され、そのゲートはパルス信号BLVNを受け、そのソースは接地電圧VSS(0V)を受ける。
パルス信号BLVP,BLVNがともに「L」レベルの場合は、PチャネルMOSトランジスタ27が導通するとともにNチャネルMOSトランジスタ28が非導通になって、ノードBLSAは電圧Vaになる。パルス信号BLVP,BLVNがともに「H」レベルの場合は、PチャネルMOSトランジスタ27が非導通になるとともにNチャネルMOSトランジスタ28が導通し、ノードBLSAは接地電圧VSSになる。パルス信号BLVP,BLVNがそれぞれ「H」レベルおよび「L」レベルの場合は、トランジスタ27,28がともに非導通になってノードBLSAはオープン状態(ハイインピーダンス状態、フローティング状態)にされる。
図28に戻って、読出用センスアンプSAは、読出動作時に対応のノードBLSAに所定の電圧を印加し、対応のトランジスタYSWN,YSWP、ビット線BL、およびメモリセルMMを介して接地電圧VSSのラインに流れる電流に基づいて、そのメモリセルMMの記憶データを読み出す。
また、この相変化メモリは、セット/リセット信号生成回路20とセット/リセットパルス生成回路21を備える。セット/リセット信号生成回路20は、書換データ信号に従って、セット信号SETMODEおよびリセット信号RESETMODEを生成する。セット/リセットパルス生成回路21は、書換モード信号、セット信号SETMODE、およびリセット信号RESETMODEに従って、制御信号WLMODE0〜WLMODE2およびパルス信号BLVP<0>〜BLVP<n>,BLVN<0>〜BLVN<n>を生成する。
図32は、この相変化メモリの徐冷セット動作およびリセット動作を示すタイムチャートである。図32では、メモリセルMM<0,0>に対して徐冷セット動作を行なった後、メモリセルMM<0,y+1>に対してリセット動作を行なう場合が示されている。
図32において、内部行アドレス信号Xadd<0>が「H」レベルに立ち上げられて、ワード線ドライバWLD<0>が活性化される。また、内部列アドレス信号Yadd<0>が「H」レベルに立ち上げられて、ビット線選択信号YB<0>,YT<0>がそれぞれ「L」レベルおよび「H」レベルにされ、ビット線BL<0>,BL<y+1>,…がそれぞれノードBLSA<0>,BLSA<y+1>,…に接続される(時刻t0)。
メモリセルMM<0,0>に対して徐冷セット動作を行なう期間(t0〜t5)では、セット/リセット信号生成回路20により、セット信号SETMODEおよびリセット信号RESETMODEがそれぞれ「H」レベルおよび「L」レベルにされる。これに応じてセット/リセットパルス生成回路21は、図32に示すように制御信号WLMODE0〜WLMODE2およびパルス信号BLVP<0>〜BLVP<n>,BLVN<0>〜BLVN<n>を生成する。
すなわち、パルス信号BLVP<0>〜BLVP<n>,BLVN<0>〜BLVN<n>のうちのBLVP<0>,BLVN<0>のみが「L」レベルにされて、ビット線BL<0>が正電圧Va(たとえば1.5V)に立ち上げられる。次いで、制御信号WLMODE0,WLMODE2がともに「H」レベルに立ち上げられ、ワード線ドライバWLD<0>のPチャネルMOSトランジスタ13が導通するとともにNチャネルMOSトランジスタ14が非導通になり、ワード線WL<0>およびキャパシタC<0>が正電圧Va(たとえば1.5V)に充電される(時刻t1)。
次に、制御信号WLMODE1が「H」レベルに立ち上げられるとともに制御信号WLMODE2が「L」レベルに立ち下げられ(時刻t2)、PチャネルMOSトランジスタ13が非導通になるとともに、NチャネルMOSトランジスタ16が導通する。これにより、ワード線WL<0>およびキャパシタC<0>に充電された電荷が、NチャネルMOSトランジスタ15,16を介して接地電圧VSSのラインに流出し、ワード線WL<0>の電圧が下降する。トランジスタ15が一定の電流を流すので、ワード線WL<0>の電圧は一定の傾きで連続的に下降する。この傾きは、NチャネルMOSトランジスタ15の電流値で決まる。
ワード線WL<0>の電圧が0Vまで低下した後、制御信号WLMODE0,WLMODE1が「L」レベルに立ち下げられ(時刻t3)、NチャネルMOSトランジスタ14が導通するとともにNチャネルMOSトランジスタ16が非導通になり、ワード線WL<0>の電圧が0Vにリセットされる。また、パルス信号BLVP<0>,BLVN<0>がともに「H」レベルにされて、ビット線BL<0>の電圧が0Vに立ち下げられる。次いでセット信号SETMODEが「L」レベルに立ち下げられて徐冷セット動作が終了する(時刻t4)。このようにして、メモリセルMM<0,0>に対して徐冷セット動作が行なわれ、メモリセルMM<0,0>の相変化素子5が低抵抗の結晶状態にされる。
メモリセルMM<0,y+1>に対してリセット動作を行なう期間(t5〜t8)では、セット/リセット信号生成回路20により、セット信号SETMODEおよびリセット信号RESETMODEがそれぞれ「L」レベルおよび「H」レベルにされる。これに応じてセット/リセットパルス生成回路21は、図32に示すように制御信号WLMODE0〜WLMODE2およびパルス信号BLVP<0>〜BLVP<n>,BLVN<0>〜BLVN<n>を生成する。
すなわち、パルス信号BLVP<0>〜BLVP<n>,BLVN<0>〜BLVN<n>のうちのBLVP<1>,BLVN<1>のみが「L」レベルにされて、ビット線BL<y+1>が正電圧Va(たとえば1.5V)に立ち上げられる。次いで、制御信号WLMODE0,WLMODE2がともに「H」レベルに立ち上げられ、ワード線ドライバWLD<0>のPチャネルMOSトランジスタ13が導通するとともにNチャネルMOSトランジスタ14が非導通になり、ワード線WL<0>およびキャパシタC<0>が正電圧Va(たとえば1.5V)に充電される(時刻t6)。
次に、制御信号WLMODE0,WLMODE2がともに「L」レベルに立ち下げられ、ワード線ドライバWLD<0>のPチャネルMOSトランジスタ13が非導通になるとともにNチャネルMOSトランジスタ14が導通し、ワード線WL<0>およびキャパシタC<0>が0Vに放電される(時刻t7)。次いでリセット信号RESETMODEが「L」レベルに立ち下げられてリセット動作が終了する(時刻t8)。このようにして、メモリセルMM<0,y+1>に対してリセット動作が行なわれ、メモリセルMM<0,y+1>の相変化素子5が高抵抗のアモルファス状態にされる。
この実施の形態3では、実施の形態1と同じ効果が得られる。
図33は、実施の形態3の変更例を示すブロック図である。この変更例では、温度センサ30が追加される。温度センサ30は、メモリアレイMAの温度を検出し、その検出結果に基づいて制御信号φI<0>〜φI<m>を生成する。制御信号φI<0>〜φI<m>は、電流切換回路17に与えられる。
検出温度が上昇するに従ってワード線電圧VWLの立ち下がり時間を短縮したい場合は、図34に示すように、検出温度が室温の場合は制御信号φI<0>〜φI<m>のうちの制御信号φI<0>のみを「H」レベルにし、検出温度が低温の場合は制御信号φI<0>〜φI<m>のうちの制御信号φI<1>のみを「H」レベルにし、検出温度が高温の場合は制御信号φI<0>〜φI<m>のうちの制御信号φI<m>のみを「H」レベルにすればよい。
逆に、検出温度が下降するに従ってワード線電圧VWLの立ち下がり時間を短縮したい場合は、図35に示すように、検出温度が室温の場合は制御信号φI<0>〜φI<m>のうちの制御信号φI<0>のみを「H」レベルにし、検出温度が高温の場合は制御信号φI<0>〜φI<m>のうちの制御信号φI<1>のみを「H」レベルにし、検出温度が低温の場合は制御信号φI<0>〜φI<m>のうちの制御信号φI<m>のみを「H」レベルにすればよい。
また、図36は、実施の形態3の他の変更例を示す回路図である。この変更例では、電流切換回路17が電流切換回路31で置換される。図36において、この電流切換回路31が図29の電流切換回路31と異なる点は、アナログスイッチASW<0>〜ASW<m>が除去され、NチャネルMOSトランジスタNI<0>〜NI<m>,NISW<0>,NISW<m>がNチャネルMOSトランジスタNI,NISWで置換されている点である。NチャネルMOSトランジスタNISWのゲートは制御信号φIを受ける。NチャネルMOSトランジスタNIのゲートは、ワード線ドライバWLDのNチャネルMOSトランジスタ15のゲートに接続される。したがって、この変更例では、NチャネルMOSトランジスタ15に流れる電流は一定値に固定される一方、電流切換回路の小型化を図ることができる。
[実施の形態4]
図37は、この発明の実施の形態4による相変化メモリの全体構成を示す回路ブロック図であって、図28と対比される図である。図37において、この相変化メモリが図28の相変化メモリと異なる点は、PチャネルMOSトランジスタ32が追加され、キャパシタC<0>〜C<x>がキャパシタ33で置換され、各ワード線ドライバWLDのNANDゲート10およびPチャネルMOSトランジスタ13がインバータ34およびトランスファーゲート35で置換されている点である。
PチャネルMOSトランジスタ32のソースは正電圧Vaを受け、そのドレインは電源ノードN32に接続され、そのゲートは制御信号WLMODE1を受ける。キャパシタ33は、電源ノードN32と接地電圧VSSのラインとの間に接続される。トランスファーゲート35は、電源ノードN32と対応のワード線WLとの間に並列接続されたPチャネルMOSトランジスタおよびNチャネルMOSトランジスタを含む。NANDゲート11の出力信号は、トランスファーゲート35のPチャネルMOSトランジスタのゲートに入力されるとともに、インバータ34を介してトランスファーゲート35のNチャネルMOSトランジスタのゲートに入力される。
PチャネルMOSトランジスタ13をトランスファーゲート35で置換したのは、キャパシタ33に充電された電荷をNチャネルMOSトランジスタ15を介して放電する際に、電源ノードN32の電圧がたとえば1.5Vから0Vまで変化するため、1.5Vから0Vのトランスファ能力が必要だからである。
図38は、この相変化メモリの徐冷セット動作およびリセット動作を示すタイムチャートであって、図32と対比される図である。図38では、メモリセルMM<0,0>に対して徐冷セット動作を行なった後、メモリセルMM<0,y+1>に対してリセット動作を行なう場合が示されている。図38において、初期状態では制御信号WLMODE1が「L」レベルにされており、PチャネルMOSトランジスタ32が導通してキャパシタ33が充電され、電源ノードN32の電圧VXは1.5Vになっている。
次いで、内部行アドレス信号Xadd<0>が「H」レベルに立ち上げられて、ワード線ドライバWLD<0>が活性化される。また、内部列アドレス信号Yadd<0>が「H」レベルに立ち上げられて、ビット線選択信号YB<0>,YT<0>がそれぞれ「L」レベルおよび「H」レベルにされ、ビット線BL<0>,BL<y+1>,…がそれぞれノードBLSA<0>,BLSA<y+1>,…に接続される(時刻t0)。
メモリセルMM<0,0>に対して徐冷セット動作を行なう期間(t0〜t5)では、セット/リセット信号生成回路20により、セット信号SETMODEおよびリセット信号RESETMODEがそれぞれ「H」レベルおよび「L」レベルにされる。これに応じてセット/リセットパルス生成回路21は、図38に示すように制御信号WLMODE0,WLMODE1およびパルス信号BLVP<0>〜BLVP<n>,BLVN<0>〜BLVN<n>を生成する。
すなわち、パルス信号BLVP<0>〜BLVP<n>,BLVN<0>〜BLVN<n>のうちのBLVP<0>,BLVN<0>のみが「L」レベルにされて、ビット線BL<0>が正電圧Va(たとえば1.5V)に立ち上げられる。次いで、制御信号WLMODE0が「H」レベルに立ち上げられ、ワード線ドライバWLD<0>のトランスファーゲート35が導通するとともにNチャネルMOSトランジスタ14が非導通になり、ワード線WL<0>およびキャパシタC<0>が正電圧Va(たとえば1.5V)に充電される(時刻t1)。
次に、制御信号WLMODE1が「H」レベルに立ち上げられ(時刻t2)、PチャネルMOSトランジスタ32が非導通になるとともに、NチャネルMOSトランジスタ16が導通する。これにより、ワード線WL<0>およびキャパシタ33に充電された電荷が、トランスファーゲート35およびNチャネルMOSトランジスタ15,16を介して接地電圧VSSのラインに流出し、ワード線WL<0>の電圧が下降する。トランジスタ15が一定の電流を流すので、ワード線WL<0>の電圧は一定の傾きで連続的に下降する。この傾きは、NチャネルMOSトランジスタ15の電流値で決まる。
ワード線WL<0>の電圧が0Vまで低下した後、制御信号WLMODE0,WLMODE1が「L」レベルに立ち下げられ(時刻t3)、PチャネルMOSトランジスタ32が導通するとともにトランスファーゲート35が非導通になり、電源ノードN32が1.5Vに充電される。また、NチャネルMOSトランジスタ14が導通するとともにNチャネルMOSトランジスタ16が非導通になり、ワード線WL<0>の電圧が0Vにリセットされる。また、パルス信号BLVP<0>,BLVN<0>がともに「H」レベルにされて、ビット線BL<0>の電圧が0Vに立ち下げられる。次いでセット信号SETMODEが「L」レベルに立ち下げられて徐冷セット動作が終了する(時刻t4)。このようにして、メモリセルMM<0,0>に対して徐冷セット動作が行なわれ、メモリセルMM<0,0>の相変化素子5が低抵抗の結晶状態にされる。
メモリセルMM<0,y+1>に対してリセット動作を行なう期間(t5〜t8)では、セット/リセット信号生成回路20により、セット信号SETMODEおよびリセット信号RESETMODEがそれぞれ「L」レベルおよび「H」レベルにされる。これに応じてセット/リセットパルス生成回路21は、図37に示すように制御信号WLMODE0,WLMODE1およびパルス信号BLVP<0>〜BLVP<n>,BLVN<0>〜BLVN<n>を生成する。
すなわち、パルス信号BLVP<0>〜BLVP<n>,BLVN<0>〜BLVN<n>のうちのBLVP<1>,BLVN<1>のみが「L」レベルにされて、ビット線BL<y+1>が正電圧Va(たとえば1.5V)に立ち上げられる。次いで、制御信号WLMODE0が「H」レベルに立ち上げられ、ワード線ドライバWLD<0>のトランスファーゲート35が導通するとともにNチャネルMOSトランジスタ14が非導通になり、ワード線WL<0>およびキャパシタC<0>が正電圧Va(たとえば1.5V)に充電される(時刻t6)。
次に、制御信号WLMODE0が「L」レベルに立ち下げられ、ワード線ドライバWLD<0>のトランスファーゲート35が非導通になるとともにNチャネルMOSトランジスタ14が導通し、ワード線WL<0>が0Vに放電される(時刻t7)。次いでリセット信号RESETMODEが「L」レベルに立ち下げられてリセット動作が終了する(時刻t8)。このようにして、メモリセルMM<0,y+1>に対してリセット動作が行なわれ、メモリセルMM<0,y+1>の相変化素子5が高抵抗のアモルファス状態にされる。
この実施の形態4では、実施の形態3と同じ効果が得られる他、(x+1)個のキャパシタC<0>〜C<x>を1個のキャパシタ33で置換したので、レイアウト面積の低減化を図ることができる。
また、リセット動作時は、ワード線WLの電荷のみを放電すればよいので、ワード線WLおよびキャパシタCの電荷を放電する必要がある実施の形態3に比べ、NチャネルMOSトランジスタ14のサイズを小さくすることができる。
なお、この実施の形態4では、全ワード線WL<0>〜WL<x>に対して共通にPチャネルMOSトランジスタ32およびキャパシタ33を設けたが、ワード線WL<0>〜WL<x>を複数のワード線グループに分割し、各ワード線グループ毎にPチャネルMOSトランジスタ32およびキャパシタ33を設けてもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 メモリアレイ、2 書込回路、3 読出回路、4,14〜16,24,28,NI,NISW,YSWN NチャネルMOSトランジスタ、5 相変化素子、6,7 端子、8 ダイオード、10,11 NANDゲート、12 ANDゲート、13,23,27,32,YSWP PチャネルMOSトランジスタ、17,31 電流切換回路、18,19,25,26,34 インバータ、20 セット/リセット信号生成回路、21 セット/リセットパルス生成回路、22 定電流源、30 温度センサ、33 キャパシタ、35 トランスファーゲート、BL ビット線、BLSA ノード、BLSW ライト回路、C キャパシタ、MA メモリアレイ、MM メモリセル、SA 読出用センスアンプ、WL ワード線、WLD ワード線ドライバ、XDEC Xデコーダ、YD Yドライバ、YDEC Yデコーダ、YSW Yスイッチ。