本発明は、半導体素子の製造方法に関する。
活性層がZnO系化合物半導体で形成された半導体発光素子が知られている。(たとえば、特許文献1及び2参照。)ここで、ZnO系化合物半導体には、ZnOのみならずこれを母体としたMgZnO(マグネシウム・酸化亜鉛)あるいはCdZnO(カドミウム・酸化亜鉛)などの混晶も含まれる。
図7(A)及び(B)は、ZnO系化合物半導体で形成された活性層を有する半導体発光素子の概略的な断面図である。
図7(A)を参照して、活性層がZnO系化合物半導体で形成された半導体発光素子の製造方法について説明する。
n型ZnO基板51上に、300〜500℃で、厚さ10〜1000nmのn型ZnOバッファ層52を形成する。続いてn型ZnOバッファ層52上に、Gaをドープした、厚さ1μm以上のn型ZnO層53を形成する。厚さを1μm以上とするのは、n型ZnO基板51とn型ZnOバッファ層52との界面から伝わる欠陥の影響を除いて、n型ZnO層53より上の層の機能を十分に確保するためである。
n型ZnO層53上に、Gaをドープしたn型MgZnO層54を形成する。n型MgZnO層54は、n型キャリア注入層及びキャリア閉じ込め層としての機能を有する。
次に、n型MgZnO層54上に、活性層55を形成する。活性層55は、たとえばダブルヘテロ(double hetero :DH)構造または量子井戸(quantum well :QW)構造を備える。
DH構造の場合、活性層55として、アンドープのZnO層、CdZnO層、ZnOS層、ZnOSe層またはZnOTe層が形成される。また、QW構造の場合、活性層55は、たとえば薄膜のMgZnO/ZnO(またはCdZnOまたはZnOSまたはZnOSeまたはZnOTe)/MgZnOの積層構造を有する。
活性層55上に、Nをドープしたp型MgZnO層56を形成する。p型MgZnO層56は、p型キャリア注入層としての機能を有する。p型MgZnO層56は、キャリア密度とキャリア移動度とがともに低く、抵抗率が高い。したがってオーミック電極を形成するために、p型MgZnO層56上に、Nをドープしたp型ZnO層57を形成する。
p型ZnO層57の形成後、p側オーミック電極58を形成する。p側オーミック電極58は、例えば、Auで、p型ZnO層57の一部の領域上に形成される、たとえば円形部分電極である。
また、n側オーミック電極50をn型ZnO基板51の、n型ZnOバッファ層52が形成されている面とは反対の面に形成する。n側オーミック電極50は、たとえばAlで厚さ100nmに形成される。
図7(A)に示した半導体発光素子においては、抵抗率の高い(キャリア移動度の低い)p型側から光が取り出される。p側オーミック電極58を部分電極としたのはこのためである。
p型ZnO層57は、正孔の有効質量が大きいため、移動度がたとえば数cm2/Vsと小さく、抵抗率が大きい。また、図7(A)に示した半導体発光素子の各層は、面内方向に比べ、厚さ方向の寸法が非常に小さい。このため、図7(A)に示す構造の半導体発光素子に電流を流した場合、電流は主として厚さ方向に流れ、結果的に部分電極であるp側オーミック電極58直下にのみ電流が注入されやすく、各層の面内方向に拡散しにくい。したがって、活性層55における発光もp側オーミック電極58の直下でのみで生じ、発生した光の大部分が電極に遮られて、素子外部に取り出されない場合がある。
図7(B)に、図7(A)に示した半導体発光素子の変形例を示す。図7(A)に示した半導体発光素子とは、p型ZnO層57上にたとえばNiで厚さ15nmの透明電極59が形成され、更に透明電極59上にp側ボンディング電極60が、たとえばAuで厚さ100nmに形成されている点において異なる。
発生した光の大部分が電極に遮られ、素子外部に取り出されないという問題は、透明電極59を用いることにより解決される。しかし、透明電極59を設けると、半導体発光素子の製造において、透明電極を作製する工程が必要となる。また、透明電極59によって、発生した光が吸収され、取り出し光量が低下するという問題が新たに生じる。
なお、p型ZnO基板を準備し、p型側からp型ZnO層、及びその他の各層を形成してn型ZnO層側を光取り出し面とする半導体発光素子を作製することも考えられるが、この場合、結晶性の良好な素子を得ることは難しい。p型ZnO層の形成にあたっては、n型ZnO層形成時よりも不純物のドープ量を多くする必要があり、また、ドープ量の増大に伴い結晶性は低下する。p型側から各層を成長させると、p型ZnO層形成時に多量にドープした不純物が、それ以降形成する層へも悪影響を及ぼすためである。
更に、p型ZnO基板を作製すること自体も困難である。p型ZnO基板を作製するためには、大量の不純物をドープする必要がある。ところが平衡状態においては不純物の溶解度が小さいため、基板の作製は、非平衡な成長条件の中で行わなければならない。しかしながら、大型・厚膜基板は、工業的には平衡状態で成長させることにより生産される。
図8(A)〜(H)は、ZnO基板を研磨して薄くして作成した半導体発光素子の概略的な断面図である。
図8(A)を参照する。厚さ300〜500μmのn型ZnO基板51上に、300〜500℃で、厚さ10〜1000nmのn型ZnOバッファ層52を形成する。なお、n型ZnO基板51は、素子完成後において電流拡散層として機能するが、製造時においては、一時成長用基板としても機能する。したがって、平坦性と機械的強度を確保するため、300〜500μm以上の厚さを備えることが好ましい。
n型ZnOバッファ層52上に、n型ZnOバッファ層52の成長温度よりも高温、たとえば300〜1000℃で、厚さ1μm以上のn型ZnO層53を形成する。厚さを1μm以上とするのは、n型ZnO基板51とn型ZnOバッファ層52の界面から伝わる欠陥の影響を除いて、表面の結晶性を高めるためである。
n型ZnO層53上に、n型キャリア注入層及びキャリア閉じ込め層(クラッド層)として機能するn型MgZnO層54を、厚さ200nmに形成する。
n型MgZnO層54上に、活性層55を形成する。活性層55は、たとえばDH構造またはQW構造を備える、厚さ30〜100nmの層である。
DH構造の場合、活性層55として、アンドープの、または適当な伝導性をもたせたZnO層、CdZnO層、ZnOS層、ZnOSe層またはZnOTe層が形成される。
QW構造の場合、活性層55は、たとえば薄膜のMgZnO/ZnO(またはCdZnOまたはZnOSまたはZnOSeまたはZnOTe)/MgZnOの積層構造を有する。この場合、ZnO層等がウェルを構成し、MgZnO層がバリアを構成する。
なお、MgZnO混晶のMg組成を0〜0.5にすることにより、結晶構造をウルツ鉱構造に保ちつつ、エネルギーギャップを3.37eV〜4.4eVに広げることが可能である(非特許文献1参照)。このようなことから、MgZnO層をクラッド層やMQW(multiple−quantum well:MQW)構造のバリア層として用いることができる。
また、非特許文献2に開示されているMgZnOをバリア層(障壁層)とし、ZnOをウェル層(井戸層)とした場合のMQW構造からの室温におけるPL発光(励起光:He−Cdレーザ325nm)のウェル層幅依存性によれば、ZnOからなるウェル層の幅を4nm以下にすることにより、量子準位が形成され、発光波長が高エネルギー側にシフトし、ZnOのエネルギーギャップよりも高エネルギー側の発光を得ることができることがわかる。
活性層55上に、たとえば厚さ200nmのp型MgZnO層56を形成する。p型MgZnO層56は、p型キャリア注入層として機能する。
p型MgZnO層56上に、厚さ100〜200nmのp型ZnO層57を形成する。
n型ZnO基板51上に形成されたn型ZnOバッファ層52からp型ZnO層57までの積層構造を発光積層構造61と呼ぶ。
発光積層構造61は、たとえば分子線エピタキシ法(molecular beamepitxy: MBE)を用いて形成される。発光積層構造61の形成において、n型ZnO層53及びn型MgZnO層54に添加するn型のドーパントとしては、たとえばGaを用いる。Al、In等を用いることもできる。また、p型MgZnO層56及びp型ZnO層57に添加するp型のドーパントとしては、たとえばNを用いる。As、P等を用いてもよい。
n型、p型ともに、ドーパントの添加は、たとえばキャリア濃度が、5×1017〜1×1019cm−3となるように行う。ただし、2×1016cm−3のキャリア濃度で素子の発光が確認された例もある。
図8(B)を参照する。p型ZnO層57上に、p側オーミック・反射電極62を形成する。p側オーミック・反射電極62は、p型ZnO層57上の全面電極とすることができる。
p側オーミック・反射電極62は、たとえばオーミック材料層と高反射率材料層の2層で構成される。オーミック材料層は、発光積層構造61(p型ZnO層57)上に、Ti、Ni等で形成され、発光積層構造61とオーミック接触を得ることができる。高反射率材料層は、オーミック材料層上に、Al、Ag、Rh、Pd等の高反射率材料で形成され、発光積層構造61側から入射した光を、有効に取り出し面側(n型ZnO基板51側)に反射することができる。p側オーミック・反射電極62の一構成例として、厚さ1nmのNi層(オーミック材料層)と厚さ2000nmのAg層(高反射率材料層)との積層構造を採用することができる。この場合、p側オーミック・反射電極62の形成は、電子線加熱蒸着法(EB法)、またはスパッタ法により行う。
図8(C)を参照する。p側オーミック・反射電極62上に、たとえば厚さ200nmのAu層63を、スパッタ法で形成する。Au層63は、後工程で共晶による接合のために用いられる。
図8(D)を参照する。図8(A)〜(C)を参照して説明した工程とは別工程により、たとえばn型またはp型不純物を高濃度に添加したシリコン基板64の両面に、それぞれAu層65、及び66を蒸着し、窒素雰囲気下において、400℃で合金化する。Au層65、66の厚さは、たとえば150〜600nmである。合金化により、シリコン基板64とAu層65、66とは共晶化し、一体化され、オーミック接触を形成する。このため、Au層65、66はシリコン基板64から剥離しない。
図8(E)を参照する。Au層65上に、厚さ600〜1200nmのAuSn層67を、EB法、スパッタ法等により蒸着する。AuSn層67の組成は、重量比でAu:Sn=約20:約80である。
図8(F)を参照する。図8(C)及び(E)に示す構造体を、それぞれ保持台68a、68bに、Au層63とAuSn層67とが向き合うように保持し、両者を共晶ボンディングする。共晶ボンディングは、たとえば熱圧着(メタルボンディング)により行う。熱圧着(メタルボンディング)とは、共晶材料が溶融する温度を加え、更に加重することにより接着する方法である。接合は、AuSn層67とAu層63とを、たとえば、窒素雰囲気下、300℃で10分間、約1MPaの圧力で密着させることにより行う。
図8(G)を参照する。Au層63とAuSn層67の共晶ボンディングにより、Au−Sn共晶ボンディングパット69が形成され、図8(C)及び(E)に示す2つの構造体が接合される。
続いて、厚さ300〜500μmのn型ZnO基板51を、所望の厚さまで研削する。研削には、たとえば粒径5〜10μmのAl2O3粉末を用いる。どの程度の厚さまで研削するかについては、後に詳述する。研削されたn型ZnO基板51は、完成後の素子において、電流を拡散させる層として機能する。
研削した面に、ドライまたはウェットエッチングを施し、凹凸構造(テクスチャ構造)を構築する。凹凸構造(テクスチャ構造)によって、半導体発光素子の光取り出し効率を向上させることができる。また、ドライまたはウェットエッチングにより、研磨ダメージを除去することもできる。
図8(H)を参照する。研削され、凹凸構造(テクスチャ構造)の形成されたn型ZnO基板51の一部の領域上に、部分電極であるn側オーミック電極70を形成する。n側オーミック電極70は、たとえばAlで厚さ100nmに形成される。
n側オーミック電極70の形成には、たとえばリフトオフ法を用いる。リフトオフ法とは、半導体発光層22上にフォトレジストを塗布し、フォトマスクを用いて露光することにより、所望の電極形状を開口し、電極材料を蒸着し、その後フォトレジストを、その上の金属層とともに取り除く方法である。電極材料を蒸着する方法として、EB法、スパッタ法などを用いることができる。
図8(H)に示す実施例による半導体発光素子においては、活性層55で光が発光され、n側オーミック電極70側の光取り出し面(n型ZnO基板51の凹凸構造(テクスチャ構造)形成面)から取り出される。光はp型側から取り出されないので、p側オーミック・反射電極62を全面電極とすることができる。一方、n型ZnO基板51は、電流拡散機能を備える。この結果、電流を各層の面内方向全域に拡散することができ、活性層55は面内方向の広い領域で発光を行うことが可能となる。したがって、発光領域が、電極の形成された領域及びその近傍に局在する場合と比べて、より多くの光を外部に取り出すことができる。
また、活性層55で発光された光のうち、p側オーミック・反射電極62側に向かった光が、p側オーミック・反射電極62により光取り出し面側に反射される。更に、光取り出し面に凹凸構造(テクスチャ構造)を備えているため、光取り出し効率が高い。
特開2002−111059号公報
特開2004−342732号公報
Akira Ohtomo, Atsushi Tsukazaki、「Semiconductor Science and Technology」、IOP PUBLISHING LTD、2005年、第20巻、S1−S12頁
T. Makino, Y. Segawa, M. Kawasaki, H. Koinuma、「Semiconductor Science and Technology」、IOP PUBLISHING LTD、2005年、第20巻、S78−S91頁
上述した図8に示す研削によりZnO基板を薄くする方法では、ZnO基板の完全な排除が困難であり、また、研削によるダメージが素子劣化につながる可能性がある。
本発明の目的は、素子劣化の少ない高輝度且つ高効率な半導体素子の製造方法を提供することである。
本発明の一観点によれば、半導体素子の製造方法は、(a)ZnO基板である第1の基板を準備する工程と、(b)前記第1の基板上に、MgZnO/ZnO中間層を形成する工程と、(c)前記MgZnO/ZnO中間層上に、ZnO系化合物半導体素子を形成する工程と、(d)前記MgZnO/ZnO中間層をサイドエッチングすることにより、前記第1の基板と前記ZnO系化合物半導体素子とを分離する工程とを有する。
本発明によれば、本発明によれば、素子劣化の少ない高輝度且つ高効率な半導体素子の製造方法を提供することができる。
図1は、エチレンジアミン四酢酸二水素ナトリウム(EDTA)水溶液と、エチレンジアミン(EDA)を20:1の割合で混合した溶液(EDTA:EDAエッチング液)をエッチング液として用いた場合の、+C面のMgxZn1−xO結晶のエッチング速度のMg組成依存性を表すグラフである。
本発明の発明者は、図1に示すように、エチレンジアミン四酢酸二水素ナトリウム(EDTA)水溶液と、エチレンジアミン(EDA)を20:1の割合で混合した溶液をエッチング液として用いた場合、MgxZn1−xO結晶のMg組成が増加するに従い、エッチング速度が大きく減少することを見出した。
例えば、Mg組成x=0.1でZnO結晶(Mg組成x=0)のエッチング速度(約10nm/min程度)の1/10(約1nm/min程度)となり、Mg組成x=0.2でZnO結晶(Mg組成x=0)のエッチング速度の1/100(約0.1nm/min程度)となり、Mgが入ることによりエッチングされにくくなることがわかった。
図2は、王水(HCl:HNO3=3:1)をエッチング液として用いた場合の、+C面のMgxZn1−xO結晶のエッチング速度のMg組成依存性を表すグラフである。
王水(HCl:HNO3=3:1)をエッチング液として用いた場合、EDTA:EDAエッチング液に比べて、+C面のMgxZn1−xO結晶のエッチング速度は、一桁以上速くなるものの、MgxZn1−xO結晶のMg組成が増加するに従い、エッチング速度が大きく減少する傾向を同様に見出した。
図1及び図2を参照して説明したようなMgZnO結晶とZnO結晶のエッチング速度差を利用することにより、MgZnO層をエッチングブロック層として用いることが可能であることがわかった。
図3は、王水(HCl:HNO3=3:1)をエッチング液として用いた場合の、垂直(縦)方向と水平(横)方向のエッチング速度を示す表である。
図3に示す王水(HCl:HNO3=3:1)をエッチング液として用いた場合の、垂直(縦)方向と水平(横)方向のエッチング速度は、本発明者が以下の実験を行って得られたデータである。この実験では、ZnO基板あるいはMgZnOエピ膜上に、金属(Au:10nm/Ni:1.5nm)電極及びレジスト(約1.6μm)でパターン形成(300μm×300μm、電極間隔100μm)された結晶を、ZnO基板の裏面にエッチングから保護するための保護テープを貼り付けた状態で、室温で王水に30〜60秒間ディッピングし、エッチングを行った。レジストを除去した後、サイドエッチング及び垂直エッチングのエッチング量を顕微鏡観察・原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope: AFM)により測定して得られた結果からエッチング速度を算出した。なお、MgZnOの垂直方向のエッチング速度算出は、エッチング時間を長くして測定した。
Mg0.35Zn0.65O結晶とZnO結晶ともに、垂直方向のエッチング速度(ERV)に比べ水平方向のエッチング速度(ERH)が約70倍と速いことがわかった。例えば、Mg0.35Zn0.65O結晶の場合、垂直方向のエッチング速度(ERV)が1.5nm/minなのに対して、水平方向のエッチング速度(ERH)は、100nm/minであり、エッチング速度比(ERH/ERV)は、66.7であることがわかった。また、ZnO結晶の場合、垂直方向のエッチング速度(ERV)が120nm/minなのに対して、水平方向のエッチング速度(ERH)は、8500nm/minであり、エッチング速度比(ERH/ERV)は、70.8であることがわかった。
以上の図1〜図3に示した実験結果から、ZnO基板とZnO系LED構造エピ層との間にMgZnO/ZnO中間層を挿入することにより、MgZnOとZnOとのエッチング速度の差を利用して、ウェットエッチングにより容易にZnO基板とZnO系LED構造エピ層との分離が可能となることがわかった。
図4(A)〜(G)は、本発明の第1の実施例による半導体発光素子の製造方法を示す概略的な断面図である。図4(A)〜(C)は、エピタキシャル成長工程を表し、図4(D)〜(G)は、素子作製工程を表す。
図4(A)を参照する。ZnO(0001)基板11を用意し、該用意したZnO基板11の+C面(Zn極性面)上に、MgZnO/ZnO中間層30をエピタキシャル成長させる。ZnO基板11は、後のサイドエッチングによる分離工程において素子部分と分離されるため、高抵抗であっても素子の性能に影響が無いので、導電型は問わない。また、エピタキシャル成長方法としては、例えば、分子線エピタキシ法(Molecular Beam Epitxy: MBE)、有機金属気相成長法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition: MOCVD)、パルスレーザ成長法(Pulsed Laser Deposition: PLD)、液相エピタキシ法(Liquid Phase Epitaxy: LPE)等を用いることができる。また、複数の成長方法を組み合わせて用いてもよい。
まず、ZnO基板11上に、200〜400℃で、厚さ10〜100nmのMgZnOバッファ層(Mg組成x:0≦x≦0.5)12を形成する。
次に、図4(B)に示すように、MgZnOバッファ層12上に、MgZnOバッファ層12の成長温度よりも高温、例えば700〜1000℃で、厚さ100nm以上、好ましくは1μm以上のアンドープのMgZnO層(Mg組成x=0.1〜0.5)13を形成する。その後、10〜1000nmの厚さでZnO層14を形成し、該形成したZnO層14上に、アンドープもしくはn型ドーパントとしてGaやAl、InをドーピングしたMgZnO層(Mg組成x=0.1〜0.5)15を厚さ100nm以上、好ましくは1μm以上で形成する。以上、図4(A)及び図4(B)を参照して説明したように、MgZnO/ZnO中間層30を形成する。
なお、MgZnO/ZnO中間層30の形成工程において、n型ドーピングしたMgZnO層15のMg組成は、後の工程で形成されるZnO系LED構造エピ層16におけるn型MgZnOクラッド層のMg組成より高いほうが望ましい、図1〜図3を参照して説明したように、Mg組成が高いほどエッチング速度が遅くなるので、高Mg組成のn型MgZnO層15が、後に形成するZnO系LED構造エピ層16に対するエッチングブロック層として働く。
図4(C)を参照する。MgZnO/ZnO中間層30上に、ZnO系LED構造エピ層16を順次エピタキシャル成長させることにより形成する。まず、MgZnO/ZnO中間層30上に、n型キャリア注入層及びキャリア閉じ込め層(クラッド層)として機能するn型MgZnO層を、厚さ100〜300nmに形成する。次に、n型MgZnO層上に、活性層を形成する。活性層は、たとえばDH構造またはMQW構造を備える、厚さ10〜100nmの層である。DH構造の場合、活性層として、アンドープの、または適当な伝導性をもたせたZnO層が形成される。MQW構造の場合、活性層は、たとえば薄膜の(MgZnO/ZnO)n/MgZnOの積層構造を有する。この場合、ZnO層等がウェルを構成し、MgZnO層がバリアを構成する。活性層上には、例えば、厚さ50〜200nmの窒素(N)をドープしたp型MgZnO層を形成する。p型MgZnO層は、p型キャリア注入層として機能する。
図4(D)を参照する。ZnO系LED構造エピ層16のp型ZnO層上に、p側オーミック・反射電極17を全面に形成する。p側オーミック・反射電極17は、例えば、オーミック材料層と高反射率材料層の2層で構成される。オーミック材料層は、ZnO系LED構造エピ層16のp型ZnO層上に、Ti、Ni等で形成され、高反射率材料層は、オーミック材料層上に、Al、Ag、Rh、Pd等の高反射率材料で形成される。
図4(E)を参照する。p側オーミック・反射電極17上に、たとえば厚さ200nmのAu層18を、スパッタ法で形成する。一方、支持基板19として、例えば、シリコン基板を用いる場合は、n型またはp型不純物を高濃度に添加したシリコン基板上両面にAu層を蒸着し、不活性ガス(例えば、窒素)雰囲気下において、400℃で合金化する。なお、Au層の厚さは、例えば、150〜600nmである。合金化により、シリコン基板とAu層とは共晶化し、一体化され、オーミック接触を形成する。このため、Au層はシリコン基板から剥離しない。次に、シリコン基板のAu層上に、厚さ600〜1200nmのAuSn層を、EB法、スパッタ法等により蒸着する。AuSn層の組成は、重量比でAu:Sn=約20:約80である。その後、p側オーミック・反射電極17上に形成したAu層18と支持基板19のAuSn層とが向き合うように保持し、両者を共晶ボンディングする。共晶ボンディングは、たとえば熱圧着(メタルボンディング)により行う。熱圧着(メタルボンディング)とは、共晶材料が溶融する温度を加え、更に加重することにより接着する方法である。接合は、AuSn層とAu層18とを、たとえば、窒素雰囲気下、300℃で10分間、約1MPaの圧力で密着させることにより行う。
図4(F)を参照する。図4(E)に示すように支持基板19に接合されたZnO系LEDを、サイドエッチングすることにより、ZnO系LED構造(15〜19)とZnO基板11(及びMgZnOバッファ層12、MgZnO層13)の分離を行う。
MgZnO/ZnO中間層30の高Mg組成のアンドープのMgZnO層13及びn型MgZnO層15のエッチング速度は、図1及び図2を参照して説明したように、ZnO層14のエッチング速度に比べて非常に遅いので、n型MgZnO層15はエッチングブロックとして働き、ZnO層14を効率的にエッチングしてZnO系LED構造(15〜19)とZnO基板11(及びZnOバッファ層12、MgZnO層13)の分離を行うことができる。なお、ZnO層14に対してZnO基板11のエッチング速度が遅いのは両者の結晶性の違いによるものである。
なお、エッチング液としては、エチレンジアミン四酢酸二水素ナトリウム(EDTA)水溶液と、エチレンジアミン(EDA)を20:1の割合で混合した溶液、王水(HCl:HNO3=3:1)、塩酸、硝酸などを用いることができる。この際、ZnO基板11の側面も500μm程度エッチングされる。
図4(G)を参照する。ZnO基板11(及びZnOバッファ層12、MgZnO層13)を分離したZnO系LED構造(15〜19)のMgZnO層15の一部の領域上に、部分電極であるn側オーミック電極20を形成する。n側オーミック電極20は、たとえばAlで厚さ100nmに形成される。n側オーミック電極20の形成には、たとえばリフトオフ法を用いる。リフトオフ法とは、MgZnO層15上にフォトレジストを塗布し、フォトマスクを用いて露光することにより、所望の電極形状を開口し、電極材料を蒸着し、その後フォトレジストを、その上の金属層とともに取り除く方法である。電極材料を蒸着する方法として、EB法、スパッタ法などを用いることができる。その後、チップ分離を行う。チップ分離方法としては、例えば、スクライブ・ブレーキングもしくはダイシングなどを用いることができる。
以上の工程により、ZnO系半導体発光素子が作製される。
図5(A)〜(H)は、本発明の第2の実施例による半導体発光素子の製造方法を示す概略的な断面図である。図5(A)〜(C)は、エピタキシャル成長工程を表し、図5(D)〜(H)は、素子作製工程を表す。
第1の実施例と第2の実施例の相違点は、第2の実施例においては、ウェットエッチングによりZnO系LED構造(15〜19)とZnO基板11(及びZnOバッファ層12、MgZnO層13)の分離を行う前に、図5(E)に示すように、スクライブ・ブレーキングもしくはダイシングなどを用いてハーフカットを行う点である。その他の点については、図4に示す第1の実施例と同様であるので、説明を省略する。
第2の実施例によれば、ウェットエッチング工程において、エッチング液が、ハーフカットを行った場所からも入り込むため、短時間でZnO基板の除去が可能となる。
上述の第1の実施例及び第2の実施例において、ZnO系LED構造エピ16中の活性層を10nm以上のZnO層を含まないMQW構造あるいはMgZnO層とするDH構造を採用することも可能である。なお、例えば、100nmの厚さのZnO層を活性層としたDH構造を採用する場合は、活性層も上述したエッチング工程において同時にエッチングされてしまう。これを防ぐことのできる実施例を第3の実施例として以下に説明する。
図6(A)〜(G)は、本発明の第3の実施例による半導体発光素子の製造方法を示す概略的な断面図である。なお、第1の実施例と同じ構成には同じ参照番号を付し、その説明を省略する。
図6(A)を参照する。まず、図4(A)及び(B)を参照して説明したのと同様の手法でMgZnO/ZnO中間層30を形成する。
次に、図6(B)を参照する。MgZnO/ZnO中間層30を形成した後、一旦、成長装置から取り出し、n型MgZnO層25の周縁部(例えば、1mm)をレジストにより保護し、内側のn型MgZnO層25を、例えば、50〜500nm程度エッチングにより除去する。
その後、再び成長装置内において、図6(C)に示すように、n型キャリア注入層及びキャリア閉じ込め層(クラッド層)として機能するn型MgZnO層26a、ZnO活性層26b、p型キャリア注入層として機能するp型MgZnO層26cを順次エピタキシャル成長させることによりDH構造のLEDエピ層16を形成する。
n型MgZnO層25の内側をエッチングにより除去して、MgZnO/ZnO中間層30の周辺部に段差を形成し、その上にDH構造のLEDエピ層16を形成しているので、LEDエピ層16周辺部にも図6(C)に示すような段差が形成される。この段差が生じることにより、図6(F)に示すエッチング工程において、ZnO活性層26bの側面がn型MgZnO層26aに覆われて、横方向からのエッチングがブロックされる。
なお、図6(D)〜(G)に示す工程は、それぞれ図4(D)〜(G)に示す工程と同様であるので、その説明は省略する。
以上、本発明の実施例によれば、ZnO基板とZnO系LED構造エピ層との間にMgZnO/ZnO中間層を挿入したことにより、MgZnOとZnOとのエッチング速度の差を利用して、ウェットエッチングにより容易にZnO基板とZnO系LED構造エピ層との分離が可能となり、吸収層を無くすことが可能となる。
また、ZnO基板除去に、研削等を用いず、エッチングにより可能なことから、研削ダメージの無いZnO系LED構造エピ層が分離できる。
以上のように、MgZnO/ZnO中間層を挿入することにより、ケミカルエッチングによりZnO系LED構造エピ層とその吸収層となるZnO基板とを分離できることから、素子劣化の少ない高輝度かつ高効率なZnO系半導体発光素子の作製が可能となる。
なお、上述の実施例では、ZnO基板11を用いたが、これをMgZnO基板11とすることもできる。その場合には、サイドエッチングによる分離工程において、MgZnO基板11のエッチング速度は非常に遅くなるため、MgZnO基板11の再利用が可能となる。
また、上述の実施例では、ZnO基板11上にMgZnOバッファ層12を形成したが、これをZnOバッファ層12とすることもできる。この場合、サイドエッチングによる分離工程において、ZnOバッファ層12は、ZnO基板11とともにサイドエッチされる。
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
ZnO系半導体発光素子は、短波長(紫外〜青、緑)LED、LD及びその応用製品である各種インジケーター、LEDディスプレイ等、CD・DVD用光源等に好適に用いられる。
また、白色LED及びその応用製品である照明器具、各種インジケーター、LEDディスプレイ、各種表示器のバック照明等に好適に用いられる。
エチレンジアミン四酢酸二水素ナトリウム(EDTA)水溶液と、エチレンジアミン(EDA)を20:1の割合で混合した溶液をエッチング液として用いた場合の、+C面のMgxZn1−xO結晶のエッチング速度のMg組成依存性を表すグラフである。
王水(HCl:HNO3=3:1)をエッチング液として用いた場合の、+C面のMgxZn1−xO結晶のエッチング速度のMg組成依存性を表すグラフである。
王水(HCl:HNO3=3:1)をエッチング液として用いた場合の、垂直(縦)方向と水平(横)方向のエッチング速度を示す表である。
本発明の第1の実施例による半導体発光素子の製造方法を示す概略的な断面図である。
本発明の第2の実施例による半導体発光素子の製造方法を示す概略的な断面図である。
本発明の第3の実施例による半導体発光素子の製造方法を示す概略的な断面図である。
ZnO系化合物半導体で形成された活性層を有する半導体発光素子の概略的な断面図である。
ZnO基板を研磨して薄くして作成した半導体発光素子の概略的な断面図である。
符号の説明
11…ZnO基板、12…ZnOバッファ層、13…MgZnO層、14…ZnO層、15、25…n型MgZnO層、16、26…ZnO系LED構造エピ層、17、27…p側オーミック・反射電極、1、28…Au層、19…支持基板、20…n側オーミック電極、30…MgZnO/ZnO中間層、50…n側オーミック電極、51…n型ZnO基板、52…n型ZnOバッファ層、53…n型ZnO層、54…n型MgZnO層、55…活性層、56…p型MgZnO層、57…p型ZnO層、58…p側オーミック電極、59…透明電極、60…p側ボンディング電極、61…発光積層構造、62…p側オーミック・反射電極、63…Au層、64…シリコン基板、65、66…Au層、67…AuSn層、68a、b…保持台、69…Au−Sn共晶ボンディングパット、70…n側オーミック電極、50…n側オーミック電極