JP5202928B2 - トナーシール複合軸受 - Google Patents
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(1)樹脂製滑り軸受とオイルシールを組み合わせたものは、本来オイルシール用のものが使われており、NBR(ニトリルゴム)あるいはFKM(フッ素ゴム)等の合成ゴム製リップシール部の外側に金属環の付いた構造となっており、軸受部材に圧入するなどして複合化しており、部品点数、組立コストの上昇を招くという問題点があった。
(2)樹脂製滑り軸受と熱可塑性エストラマー製シールを組み合わせたものは、射出成形金型に、樹脂製滑り軸受部材をインサートし、熱可塑性エストラマー製シール部材を軸受と一体に成形することによって、組立コストの削減を図るものである(特許文献1:特開平10−3212号公報参照)。しかし、シール部材に要求される低硬度の熱可塑性エストラマーは固化時間が長く、離型時の変形や成形歪みにより、シールリップ部の精度確保が難しいという問題点があった。
(3)熱可塑性エストラマー製シールと滑り受軸一体成形品は、別材質で構成していたトナーシール部材と滑り受軸部材を同一材とし、熱可塑性エストラマーによる射出成形一体品とすることで、部品点数、組立コストの削減を図るものである(特許文献2:特開2000−145798号公報参照)。しかし、シールリップ部の精度確保が難しい上に、本来、軸を保持する軸受部の剛性が低いために、回転時に軸の振動を誘発しやすく、回転トルクも高くなりやすいという問題点があった。
(4)樹脂製滑り軸受とフッ素樹脂製シールを組み合わせたものは、フッ素樹脂製シートから打ち抜いた、ワッシャー状のシールリップ材を、樹脂製滑り軸受内にインサート成形し、後に使用する軸径に相当する棒材をシールリップ内径に挿入して拡張することで、シールリップを成形するもので、部品点数の削減による低コスト化を図るものである(特許文献3:特開2002−323139号公報参照)。一度拡張させたシールリップが弾性回復するのを防ぐために、製品使用の直前まで棒材を挿入しておく必要があり、組立時、軸挿入の際にシールリップが破損しやすい、弾性回復による「しめしろ」で回転トルクが高いという問題点があった。
(1)弾力性のある非発泡の熱硬化型ポリウレタン製であり、軸を挿通する穴を中央部に有する円盤形のトナーシール部材。
(2)熱硬化型ポリウレタンがJIS−A硬度で65±15度であることを特徴とする(1)記載のトナーシール部材。
(3)熱硬化型ポリウレタンが、オイル成分を1±0.5phr含有することを特徴とする(1)又は(2)記載のトナーシール部材。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載のトナーシール部材を軸受本体に組み込んだトナーシール複合軸受。
(5)トナーシール部材と軸受部材本体とから構成されるトナーシール複合軸受であって、
トナーシール部材は、非発泡である熱硬化型ポリウレタン製であって、軸を挿通する穴を中央部に有する円盤形であり、
軸受部材本体は、軸を挿通する穴を中央部に設けた円筒形であり、トナーに接する側の穴の端部が傘状に凸部に形成されており、
前記軸受本体の傘状凸部に前記トナーシール部材が傘状傾斜面に沿って固定されていることを特徴とする(4)記載のトナーシール複合軸受。
(6)中央部に穴を有する円盤形のトナーシール部材を製造する方法であって、注型して成形した円筒形状の非発泡である熱硬化型ポリウレタンを所定の厚さにスライスする、あるいは所定の厚さの非発泡である熱硬化型ポリウレタン製シートを中央部に穴を有する円盤形に打ち抜いて成形することによってトナーシール部材を成形する方法。
(1)トナーシール複合軸受のトナーシール部材として、トナーシール部材用素材として新規な熱硬化型ポリウレタンを採用し、優れた耐摩耗性を実現できた。
(2)熱硬化型ポリウレタンを円筒形状に注型したものを所定の厚さにスライスする、あるいは所定の厚さのシート成形品から、打ち抜いて成形することによってトナーシール部材を得ることができる。こうして得たトナーシール部材は、内径の真円度、同軸度等の、寸法精度が高く、またクリープ現象に起因するシールリップ部の変形、ヘタリが小さいため、より高いシール性、耐久性が得られる。
(3)熱硬化型ポリウレタンの構造としては、エーテル系/エステル系のいずれも使用できる。エステル系のほうが耐摩耗性が高く、長寿命化が図れるために、より望ましい。
(4)離型抵抗の制約を受けずに、低硬度のポリウレタンを用いることが出来るため、回転トルクが低く、軸の振れに対して追従性が高く、耐久性にも優れたトナーシール複合軸受を提供することが出来る。
(5)更に、平坦な状態のワッシャー状のトナーシール部材を、軸受部材にインサートした状態でシールリップ部を傘状に凸に姿勢を保持しているので、スムーズな軸の挿入を可能とする。平坦な状態のままでインサートして、その状態を保持した状態では、シールリップが、軸の挿通によりトナーシール部材の先端が所定の方向とは逆向きに押されて反対向きになってしまう恐れがあるが、本願発明は、傘状に凸に姿勢を保持した状態にインサートされるので、軸の挿通に対して十分な抵抗を発揮し、安定した組立姿勢とすることができる。
熱硬化型ポリウレタン製のワッシャー状の平円盤形のトナーシールは、平板の状態で軸受本体に組み込んだ場合、軸を挿通すると、軸の挿通方向に屈曲してしまう。本発明のトナーシール軸受は、トナー収容部のトナー撹拌スクリューなどの回転軸の軸受に用いられることが多い。このような回転軸に対して、トナーシールの端面は、トナー容器内部側に向ける姿勢となって、軸受部へのトナーの侵入やトナーの漏出をブロックする機能を果たす。しかし、軸の挿通方向に屈曲してしまうと、端面は逆向きとなってしまい、トナーシール機能を果たさない。この様な軸挿通による抵抗に対して姿勢を維持できるように本願発明では傘状の凸に形成して、傾斜面をトナー容器内部側(即ち、トナー側)を向けて形成し、トナーシール部材の姿勢を安定させるものである。
図1はワッシャー状のシール部材Bを平面上に軸受部材Aに組み込んだ状態B1を示す。このように組み込まれたシール部材Bは、回転軸Cが装着された状態では、図2に示されるようにトナー容器の内側に向いた状態B2となることが望ましい。
しかしながら、回転軸は単純な丸棒ではなく、中央側にはトナー撹拌スクリューなどが設けられているので、図3に示すように回転軸の軸端側から軸受に挿入されることとなる。シール部材Bの中央部に形成された孔は、回転軸径よりも小さいので、回転軸に押されて屈曲する。この屈曲方向は、トナー容器とは逆の外向きになることが多い。図3に外向きに屈曲した状態B3を示す。B3の様な状態では、トナー容器側から押し出されてきたトナーが屈曲面に沿ってシールと軸との接触面に容易に侵入し、漏出する危険がある。
<熱硬化型ポリウレタン>
トナーシール部材の材料として、熱硬化性ポリウレタンを使用する。
熱硬化性ポリウレタンは、電子写真装置のトナークリーニングブレードに使用されている組成を用いることができる。トナーのクリーニング部材として実績があり、優れた耐摩耗性を有する素材である。
ポリウレタンの構造としては、エーテル系/エステル系のいずれも使用できるが、エステル系のほうが耐摩耗性が高く、長寿命化が図れるために、より望ましい。
また、離型抵抗の制約を受けずに、低硬度のポリウレタンを用いることが出来るため、回転トルクが低く、軸の振れに対して追従性が高く、耐久性にも優れたトナーシール複合軸受を提供することが出来る。
シール部材として用いるのは、JIS−A硬度で65±15度の硬度のものが使用でき、望ましくは65±10度、更に望ましくは65±5度のものを使用する。この硬度範囲より硬いと、軸の回転トルクが増大し、軸の振れに対する追従性が悪くなり、トナーシール性が悪化する。
また、この硬度範囲より軟らかいと、組立時、軸をトナーシール部材に挿入する際に開口縁であるシールリップの反転を起こしやすくなり、組み付け性が悪化する。また、トナーシール部材表面の粘着性が増すことから、軸の回転トルクが増大する。
更に、トナーシール部材として用いる熱硬化型ポリウレタンには、軸材との潤滑性を向上させるために、オイル状潤滑剤を添加することが出来る。使用できるオイルとしては、出光興産(株)製鉱物油「ダフニースーパーメカニックオイル100」、東レ・ダウコーニング(株)製シリコン油「SH200」等があり、1±0.5phr含有することで潤滑効果を得ることが出来る。この添加量範囲より少ないと潤滑効果が現れず、これより多いとシール成形品の表面にブリードしやすくなり、トナーが付着しやすくなったり、トナーを汚染する恐れが出てくる。
トナーシール部材は、熱硬化型ポリウレタン材料を、円筒形状に注型成形したものを所定の厚さにスライスする方法、あるいは、所定の厚さに形成したシートから、内外径を打抜く方法で、ワッシャー状とする。
こうして得たトナーシール部材は、内径の真円度、同軸度等の、寸法精度が高く、またクリープ現象に起因する、シールリップ部の変形、ヘタリが小さいため、より高いシール性、耐久性が得られる。
軸径より絞り込まれた内径寸法を持つ弾性体であるために、組立時に軸の挿入が困難となるが、軸受部材にインサートした状態でシールリップ部を傘状に凸に形成することで、スムーズな軸の挿入が可能となる。
本発明の軸受部材としては、摺動性に優れ、射出成形可能な熱可塑性樹脂材料を用いることができる。内部にインサートする熱硬化型ポリウレタンの耐熱性を考慮すると、電子写真装置の現像部軸受部材として実績のあるポリアセタール樹脂をベースにするのが好ましい。例えば、本発明者が先に提案した特許第3029029号公報、特開2006−089625号公報に開示された組成を用いることができる。
含油樹脂組成物中に占める自己潤滑性樹脂の量は、40容積%以上98容積%以下が好ましく、55容積%以上85容積%以下が特に好ましい。自己潤滑性樹脂の量が上記範囲未満であると、摺動部材として必要な機械的強度が低下し、摩耗量が増大してしまうことがある。逆に、自己潤滑性樹脂の量が上記範囲を越えると、含油樹脂組成物の硬度が上昇し、トナー等の微粉末の侵入により摺動抵抗が増大してしまうことがある。
例えば、潤滑油担体としてのポリノルボルネン系エラストマー(日本ゼオン株式会社の商品名「ノルソレックス」)8容積%と潤滑油としての鉱物油(出光石油株式会社の商品名「ダフニースーパーメカニックオイル100」)30容積%とをヘンシェルミキサーで混合し、常温で12時間放置して、両者が均一に相溶した泥状の混合物を得た。これに、自己潤滑性樹脂としてのポリアセタール樹脂粉末(ポリプラスチック株式会社の商品名「ジュラコンM90−02」)42容積%と酸化亜鉛ウィスカー(松下アムテック社の商品名「パナテトラ」)20容積%とを添加し、再びヘンシェルミキサーで混合して含油樹脂組成物を得た。この含油樹脂組成物を押し出して裁断し、樹脂ペレットを得た。そして、この樹脂ペレットを用いて射出成形を行い、含油樹脂軸受を製造する。
スチレン・ブタジエン・ラジアルテレブロック共重合体は、ポリスチレンをハードセグメント、ポリブタジエンをソフトセグメントとするスチレン・ブタジエン系熱可塑性エラストマーである。
潤滑油としては、(a)スピンドル油、タービン油、マシン油、ダイナモ油等の芳香属系潤滑油、(b)ナフテン系潤滑油、(c)パラフィン系潤滑油、(d)炭化水素、エステル、ポリグリコール、シリコーン等の合成油等が挙げられる。潤滑油の配合量は、用いられる含油樹脂組成物100容積%に対し15容積%以上30容積%以下が好ましい。
補強充填材として酸化亜鉛ウィスカーを添加することができ、含油樹脂軸受の機械的性質を向上させることができる。酸化亜鉛ウィスカーの含有量を0.5容積%以上20容積%以下にするとよい。酸化亜鉛ウィスカーとしては、繊維長が2μm以上50μm以下であり、繊維径が0.2μm以上3μm以下であるものが好適に用いられる。補強充填材として酸化亜鉛ウィスカーと金属粉末とを併用し、この酸化亜鉛ウィスカーと金属粉末との容積比を4/6以上6/4以下とすれば、含油樹脂軸受の熱伝導性及び寸法安定性を向上させることができる。補強充填材の含有率を含油樹脂組成物100容積%に対して0.5容積%以上20容積%以下とするのが好ましい。金属粉末としては、例えば耐摩耗性に優れる青銅、りん青銅、ホワイトメタル、鉛青銅、ケルメット(銅鉛合金)等の銅系金属等が挙げられる。
例えば、潤滑油担体としてのスチレン・ブタジエンラジアルテレブロック共重合体(旭化成株式会社製 商品名「アサプレンT-411G」12・5容積%と、潤滑油としての鉱物油(出光石油株式会社製 商品名「ダフニースーパーメカニックオイル100」21.3容積%とをヘンシェルミキサーで混合し、70℃で24時間熟成させた。この混合物は粉末状を呈している。この後、自己潤滑性樹脂としてのポリアセタール樹脂粉末(ポリプラスチックス株式会社製商品名「ジュラコンM90-00」56・2容積%と補強充填材としての酸化亜鉛ウィスカー(松下産業情報機器株式会社製 商品名「パナテトラWZ-0531」10.0溶積%とを添加し、再びヘンシェルミキサーで混合して、含油樹脂組成物を得た。これを2軸混錬押出機により押し出して裁断し、樹脂ペレットを得た。この樹脂ペレットを射出成形にて含油樹脂軸受を製造する。
ワッシャー状に形成されたシール部材は、トナーシール複合軸受成形用の金型にインサートされるが、その際、金型内でトナーシール部材の開口縁部であるシールリップ部が傘状に凸の形状となるよう保持された状態で、軸受部材が射出成形され、離型されたトナーシール複合軸受成形品のシールリップ部は、傘状に凸の形状で軸受部材と複合化される。トナーシール部材は、軸径より絞り込まれた内径寸法を持つ弾性体であるために、組立時に軸の挿入が困難となるが、軸受部材にインサートした状態でシールリップ部を傘状に凸に形成することで、スムーズな軸の挿入が可能となる。
トナーシール部材と軸受本体の組み付けは、例えば、図6に示すように、軸受本体2にトナーシール部材10を組み付けてトナーシール複合軸受1を得る。軸受本体2の軸受孔20のトナー側端を傘状に凸部とした傾斜凸部3を形成し、ワッシャー状に形成した弾力性のある熱硬化型ポリウレタン製トナーシール部材10をこの傾斜に添わせて配置し、ワッシャー状の外辺部をリング状のシール部材押さえ5で固定する。トナーシールの孔の径は挿入される軸径よりも小さく設定されている。トナーシール部材と軸受本体の組み付けは、ワッシャー状に形成した熱硬化型ポリウレタン製トナーシール部材を射出成形する型内にセットして、軸受部材を射出成形し、インサート成形によって一体化成形することもできる。リング状のトナーシール部材押さえによって、トナーシール部材を固定する手段は少量生産に適している。
これによって、軸の挿入方向に対向する方向に傾斜させてトナーシール部材を装着することができる。図7に示すように、軸4をトナーシール複合軸受1の傾斜凸部3の側から軸受孔20に挿通しても、傾斜によって挿入方向に対向して付勢されているので、トナーシール孔端部が反対側に屈曲する危険性は小さくなる。
インサート成形によるトナーシール複合構造例を図8に示す。射出形成型内にトナーシール部材60を傘状に傾斜させてセットしたのち、軸受部材を射出して一体成形してトナーシール複合軸受け51を製造する。
この例では、軸受け本体52の軸受孔70の径6mm、トナーシール部材53の孔65の径5.6mmである。
[評価試験系]
トナーシール部材 厚さ=0.5mm、初期トナーシール内径しめしろ=(軸径−初期シール内径)/2=0.2mmのトナーシール複合軸受けであって、この軸受けに軸材質(S45C硬質クロムメッキ)軸径φ6の軸を挿通して、軸回転数=670rpmに設定して耐久性試験を行った。
トナーシール部材、軸受本体の組成及び評価試験結果について表1、表2に示す。耐久試験時間は140時間である。軸受部材のベース素材は、ポリアセタール樹脂(POM)を用いている。
潤滑油担体としてのスチレン・ブタジエンラジアルテレブロック共重合体(旭化成株式会社製商品名「アサプレンT-411G」12・5容積%と、潤滑油としての鉱物油(出光石油株式会社製 商品名「ダフニースーパーメカニックオイル100」21.3容積%とをヘンシェルミキサーで混合し、70℃で24時間熟成させた。この混合物は粉末状を呈している。
この後、自己潤滑性樹脂としてのポリアセタール樹脂粉末(ポリプラスチックス株式会社製商品名「ジュラコンM90-00」56・2容積%と補強充填材としての酸化亜鉛ウィスカー(松下産業情報機器株式会社製 商品名「パナテトラWZ-0531」10.0溶積%とを添加し、再びヘンシェルミキサーで混合して、含油樹脂組成物を得た。
これを2軸混錬押出機により押し出して裁断し、樹脂ペレットを得た。この樹脂ペレットを射出成形にて含油樹脂軸受を得た。製造した含油樹脂軸受の形状は、外径が12mm、内径が6mm、長さが4mmである含油樹脂軸受を得た。
1.回転トルク:回転トルクが高いと、摩擦発熱の要因となり、マシンへの負荷も
大きくなるため、より低いことが好ましい。
2.シール内径摩耗量:トナーシール耐久性の指標の一つであり、摩耗量が大きいと、
シールリップのしめしろが小さくなり、トナー漏れを起こし
やすくなるなるため、より小さいことが好ましい。
3.トナーシール耐久性:トナーをより長時間シール出来ることを表す。
4.トナー非付着性:トナーがシール部材に付着しにくい度合いを表す。
5.組み付け性:トナーシール複合軸受をマシンに組み込む際、シャフト(相手軸)へ
の挿入のしやすさを表す。
6.低コスト性:より安価に製造できることを表す。
◎ 良好 :好適に使用できる水準である。
○ 良 :使用できる水準である。
△ やや不良:使用に難がある。
× 不良 :使用できない。
1.本発明の各実施例は、従来用いられていたフッ素ゴム製トナーシール(比較例7)、フッ素樹脂製トナーシール(比較例8)と比較すると、トナーシール耐久性に優れている。
2.熱硬化型ポリウレタンの硬さは、JIS−A硬度で50°〜80°が適当である。
実施例1〜7では、JIS−A硬度55°〜75°で、各評価項目が良好となっている。
JIS−A硬度45°である比較例1は、トナーシール耐久性及び組み付け性に劣る。JIS−A硬度85°である比較例2は、回転トルクが大きく、摩耗量が多くなりシール内径が大きくなっている、そしてトナーシール耐久性が小さい。これらを勘案すると、熱硬化型ポリウレタンの硬さは、JIS−A硬度で50°〜80°が適当である。
3.実施例2、6、8と比較例3、4に着目すると、熱硬化型ポリウレタンにオイル成分を添加した場合の影響を検討できる。オイル成分を添加しない実施例2に対して、オイル成分を1phrを添加した実施例6、7は、軸回転トルクが25〜35%低下し、シール内径の摩耗量が少なくなることがわかる。これに対して、オイル成分を2phrを添加した比較例3、4は、実施例2に対して軸回転トルクが低下しているものの、シール内径の摩耗量が増加する結果である。そして、トナー付着性も劣っている。したがって、熱硬化型ポリウレタンにオイル成分を1phr前後添加した場合に、トナーシール性能が向上することが分かる。
4.比較例5は、ワッシャー状に平板にセットした例である。平板状にセットした場合には、軸への挿通操作に際してシールリップが外側向いてしまう危険性があり、組み付け性能が劣ることが示されている。実施例2の傘状に凸にセットしたものと比較すると、摩耗量が大きくなって、シール内径が大きくなっていることがわかる。
140時間耐久性試験を実施した後に、回転軸に直接接触する部分であるトナーシールの内径の変化量を測定した。結果を図9に示す。
比較例2、7は約0.18〜0.21mm摩耗しているが、実施例1、5、6は約0.08〜0.15mmの摩耗に留まっている。これは、比較例に比べて40〜80%の摩耗量に相当している。特に、実施例1及び実施例6では、耐摩耗性は2倍程度向上させることができることを示している。したがって、本発明は、摩耗量が少なく、耐久性が高いことが解る。
2、52 軸受本体
3、53 傾斜凸部
4 軸
5 シール部材押え
10、60 トナーシール部材
15、65 孔
16 円筒ブロック
17 シート
20、70 軸受孔
A 軸受部材
B シール部材
C 回転軸
Claims (6)
- 弾力性のある非発泡の熱硬化型ポリウレタン製であり、軸を挿通する穴を中央部に有する円盤形のトナーシール部材。
- 熱硬化型ポリウレタンがJIS−A硬度で65±15度であることを特徴とする請求項1記載のトナーシール部材。
- 熱硬化型ポリウレタンが、オイル成分を1±0.5phr含有することを特徴とする請求項1又は2記載のトナーシール部材。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のトナーシール部材を軸受本体に組み込んだトナーシール複合軸受。
- トナーシール部材と軸受部材本体とから構成されるトナーシール複合軸受であって、
トナーシール部材は、非発泡である熱硬化型ポリウレタン製であって、軸を挿通する穴を中央部に有する円盤形であり、
軸受部材本体は、軸を挿通する穴を中央部に設けた円筒形であり、トナーに接する側の穴の端部が傘状に凸部に形成されており、
前記軸受本体の傘状凸部に前記トナーシール部材が傘状傾斜面に沿って固定されていることを特徴とする請求項4記載のトナーシール複合軸受。 - 中央部に穴を有する円盤形のトナーシール部材を製造する方法であって、注型して成形した円筒形状の非発泡である熱硬化型ポリウレタンを所定の厚さにスライスする、あるいは所定の厚さの非発泡である熱硬化型ポリウレタン製シートを中央部に穴を有する円盤形に打ち抜いて成形することによってトナーシール部材を成形する方法。
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