JP3965850B2 - 冷蔵庫 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、再生ポリオールを含んだ発泡ウレタンの原料液を用いて製造される冷蔵庫及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の環境保護の高まりや冷蔵庫を含む大物家庭電化製品のリサイクルに関する法律が制定されるなど、廃冷蔵庫の処理は重要な社会的課題となりつつある。廃冷蔵庫のリサイクルを考える上で、冷蔵庫の断熱材として用いられ冷蔵庫重量の約10%を占める構成材料であり、嵩の高い発泡ウレタンの処理は非常に重要な課題である。
従来、使用に供された冷蔵庫などから排出される発泡ウレタン屑は、回収後、主に埋設による廃棄方法をとってきた。しかしながら、廃棄処分場の容量が飽和状態に近づいていることや、環境保護の観点からも発泡ウレタンの再利用の推進が必要となってきた。
リサイクルという観点から見た場合、廃棄された材料を元の製品に戻し、再利用することが最も望ましい形態である。よって、廃冷蔵庫から排出される発泡ウレタンを、冷蔵庫に再利用する方法の確立が必要となってきた。
【0003】
発泡ウレタンは、熱硬化性樹脂であるため、熱可塑性樹脂のように溶融再生が困難である。よって、従来より様々な再利用方法が検討されてきた。第一に、例えば特開昭52−009162号公報に記述がある発泡ウレタンの粉砕物をウレタン原液と混合して再発泡するといったフィラーとして再利用する方法、第二に、例えば特開昭57−34926号公報に記述があるウレタンフォームの廃材を粉砕又は切断し、これに結合剤を塗布、混合したものを熱圧縮成形するといったプレス成形方法、第三に、例えば特開平10−152578号公報に記述があるように、ある種の溶媒を用いて発泡ウレタンを分解させ、それを再度発泡ウレタンの原料の一部とする化学的分解方法である。
【0004】
一方、冷蔵庫の断熱材に再利用することを考えた場合、上記各方法で取り得る方法は次のようになる。第一の方法では、冷蔵庫の断熱材として発泡ウレタンを注入する際、発泡ウレタン粉砕物を同時に混合し、内箱と外箱から成る空間に流し込む。第二の方法では、プレス成形にて得た板状物を冷蔵庫の断熱壁として適用する。第三の方法では、発泡ウレタンの原料液の一部として冷蔵庫断熱箱体の製造工程に戻し、再利用する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
冷蔵庫のリサイクルを考える上で、重要な発泡ウレタンの再利用方法ではあるが、上記のような従来の方法は、次のような短所がある。第一の方法は、発泡ウレタン粉の密度が小さく、ウレタン原液との密度差のため混合しにくく、混合状態が不均一になりやすい。そのため、ウレタン粉が局在化した箇所が脆くなり、冷蔵庫の箱体としての強度が発揮できない。また、品質上問題のない範疇でウレタン粉を混合しようとすると混合率がかなり低く抑えられてしまうという欠点がある。第二の方法は、一旦板状物に成形してから、冷蔵庫に断熱壁として貼り付けるため、従来の製造工程・設備では対応できず、設備投資を伴う。また、第二の方法では、断熱効果を生む独立気泡体が形成しにくく、冷蔵庫の断熱材としての機能を考えた場合、適用が難しい。第三の方法は、再度原料の一部とする方法であるため、従来の製造工程を基本的に変えることなく対応でき、経済的にも有利な方法であるが、冷蔵庫断熱材としての品質を維持するためには、再生した原料の混合率が低く抑えられ、有効利用できないという欠点があった。
【0006】
本発明は、上記のような問題点を解決するために成されたものであり、品質を損なうこと無く、発泡ウレタンを再利用した冷蔵庫とその製造方法を得ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る冷蔵庫は、外箱と、内箱と、前記外箱と前記内箱にて形成される箱体と、前記箱体を複数の貯蔵室に仕切る複数の仕切壁と、前記外箱と前記内箱との間の空間に発泡ウレタンの原料液を注入するため冷蔵庫背面に設けられた複数の注入口とを備え、前記複数の仕切壁が密に設けられている部分の後方に設けられた注入口から注入する発泡ウレタンの原料液は、前記複数の仕切壁が粗に設けられている部分の後方に設けられた注入口から注入する発泡ウレタンの原料液に比べ、含有する再生ポリオールの比率が大きいものである。
【0008】
また、本発明に係る冷蔵庫は、外箱と、内箱と、前記外箱と前記内箱の間に空間とを設け、前記空間に発泡ウレタンの原料液を注入し発泡充填して成る冷蔵庫において、前記発泡ウレタンの原料液は、再生ポリオールと、新品ポリオールと、水とを含有し、前記水の量は、前記新品ポリオールと前記再生ポリオールとを合わせたポリオール全体の量に対して0.1〜5%とするものである。
【0009】
また、本発明に係る冷蔵庫は、再生ポリオールの量は、新品ポリオールと再生ポリオールを合わせたポリオール全体の量に対して1〜50%とするものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1に、冷蔵庫断熱箱体の生産から、廃棄後のウレタンをもとにポリオールを再生し、その再生したポリオールを用いて冷蔵庫を製造する工程を示す。
発泡ウレタンの原料液となるポリオール1とイソシアネート2を高圧発泡機3を用いて混合する(ステップ1、以下、ステップはSと記載。)。発泡ウレタンの原料液である、高圧発泡機3で生成した混合液(ウレタン液)を冷蔵庫の外箱と内箱の間に形成される空間内に流入させ、その空間内を発泡充填し冷蔵庫断熱箱体4をつくる(S2)。冷蔵庫断熱箱体4に各種部品、例えば棚や冷蔵庫扉などを取り付けて冷蔵庫5を生産する(S3;図示せず)。尚、S3の各部品の取り付けは、S1やS2より前に行っても良い。その冷蔵庫5が廃棄され(S4)廃冷蔵庫6になる。廃冷蔵庫6の処理として破砕回収方法を用いる場合では難破砕物や再生利用する熱可塑性樹脂部品などを取除き(S5;図示せず)破砕機7内に入れ破砕する(S6)。破砕された発泡ウレタンは塊状の発泡ウレタン塊8となる。ウレタン塊8を風力選別機などを用いてウレタン塊、金属、その他樹脂に分別する(S7;図示せず)。分別されたウレタン塊を粉砕機9に入れさらに細かく粉砕する(S8)。粉砕された発泡ウレタン塊は粉状のウレタン粉10となる。ウレタン粉10とポリオール11、触媒11’を反応槽12内に入れ混合し加熱する(S9)。反応槽12内の分解液13は蒸留装置14やろ過器14’で蒸留・ろ過し低沸点物質や固形物を除去し(S10)、再生ポリオール15を生成する。所定量の再生ポリオール15をポリオール1に用い、S1、S2の工程を経て再生ポリオールを使用した冷蔵庫を生産していく。
以上、品質にすぐれ、経済的な廃棄ウレタンを再利用した冷蔵庫を製造でき、冷蔵庫から排出されたものを再度冷蔵庫へ戻す理想的なリサイクル工程を実現できる。
【0020】
図1のフローチャートは、生成した再生ポリオール15をポリオール1として使用し続けるように記載しているが、あまり多くの回数このフローを続けていると発泡ウレタンの強度等の品質が低下してくる。このフローで生成した再生ポリオール15を使わずに、別のフローで生成された再生ポリオールをポリオール1に用いたり、新品ポリオールのみをポリオール1に用いることも可能である。尚、ポリオール1の成分(再生ポリオールの混合率等)調整は、目的とする冷蔵庫断熱箱体の強度等の品質に合わせて行う。
また、以上は廃冷蔵庫の断熱箱体を利用し新たな冷蔵庫の断熱箱体を製造しているが、冷蔵庫以外のものの廃棄ウレタンを冷蔵庫に利用することも、冷蔵庫の廃棄ウレタンを冷蔵庫以外のものに再利用することも可能である。
【0021】
図1を詳細に説明する。発泡ウレタンは一般的にポリオールとイソシアネートを反応させて生成される。ポリオールはイソシアネートと反応させる前に、発泡剤、水、触媒、整泡剤を添加しておく。発泡剤の種類としては、HCFC141bのようなフロン類やシクロペンタンのような炭化水素などが用いられる。
図1のS1にて発泡させる際、ポリオール1とイソシアネート2の2液を確実に反応、発泡させるため、高圧高速で衝突混合させる必要があるが、一般的には高圧発泡機3が用いられる。高圧発泡機3で混合されたウレタン液(発泡ウレタンの原料液)は、冷蔵庫の外箱と内箱から形成された空間に吐出され、反応と共に発生する熱により、ウレタン液に含有されている発泡剤が気化し、空間を発泡しながら充填していく。発泡固化した発泡ウレタンは、冷蔵庫の外箱など接触する部材と接着固化し、冷蔵庫の断熱箱体4を形成する。
【0022】
断熱箱体4に各種部品、例えば棚や冷蔵庫扉、冷蔵庫扉ポケット、冷却器、圧縮機などを装着し(S3)、製品として出荷された冷蔵庫5は、使用者のもとでその寿命を全うしたのち廃棄(S4)される。廃棄された冷蔵庫6は、廃家電品をリサイクルする工場に集められ処理される。その処理の一般的な方法について説明する。廃冷蔵庫6は、必要な部品、例えば破砕回収方法では冷媒のフロンや冷凍機油を回収し、難破砕物である圧縮機や扉ガスケットのマグネット、再生利用可能な熱可塑性樹脂部品等を事前に取り外し(S5)破砕機7に投入される。ここで、断熱材である発泡ウレタンは、数10mm前後の大きさのウレタン塊8に破砕される(S6)。ウレタン塊8を風力選別機などを用いてウレタン塊、金属(例えば、外箱などの鉄)、その他樹脂(例えば、内箱などのABS樹脂)と分別する(S7)。分別されたウレタン塊は、さらに嵩を少なくするため、粉砕機9にかけ、粉末状のウレタン粉10にする(S8)。この発泡ウレタンを破砕(S6)、粉砕(S8)する工程で発生するフロン類などの発泡剤を回収する装置を備えつけ、オゾン層破壊物質や温暖化ガスを大気中に放出すること無く、適性に処理することが望ましい。
【0023】
次に、生成したウレタン粉10をもとに再生ポリオールを製造する工程について説明する。再生ポリオールを製造する方法は、ポリオール分解法、アミン分解法、加水分解法、タンデムケモリシス法、アンモニア分解法等がある。ここではその中で最も効果的と思われるポリオール分解法について述べる。ポリオール分解法はエチレングリコール等の水酸基を持つ化合物を用いてウレタン結合を分解するものである。再生ポリオール15の原料となるウレタン粉10は、その分解反応を効率よく進めるためにも、より細かく粉砕されることが望ましい。例えば、数10mm前後のウレタン塊を反応に用いた場合に比べ、数mm程度のウレタン粉を用いるとその分解反応時間は1/5程度に短縮される。ウレタン粉10をポリオール11、触媒11’と共に反応槽12に投入、攪拌しながら加熱する(S9)。投入されるポリオール11は、例えばエチレングリコールのような単体物質でも良いし、水酸基数の異なる物質の混合体でも良い。触媒11’は、例えば水酸化カリウムなどのアルカリ触媒やアミン系触媒等を用いる。加熱(S9)は、150〜250℃で1〜数時間実施する。冷却後、生成した分解液13は、蒸留装置14にて減圧蒸留し、水などの低沸点物質を除去し、加圧等によりフィルタ14’を通してろ過し、固形物を除去する(S10)。このようにして得られた再生ポリオール15の性状は、反応に使用するポリオール11の種類・形態と、投入されるウレタン粉10とポリオール11の比率によって変化しうる。
【0024】
冷蔵庫断熱材に適した性状になるよう設定された条件で製造された再生ポリオール15は、新品ポリオールと混合しポリオール1として再度冷蔵庫断熱材原料として使用される。
再生ポリオールの混合形態を図2乃至図7に示す。発泡に供するポリオール1(図1参照)は、ポリオール以外に発泡に必要な整泡剤17、触媒18、水19、発泡剤20を規定量添加し、ポリオールシステム液、すなわちポリオール1として調整する必要がある。図2は再生ポリオールの混合形態として、新品ポリオール16、再生ポリオール15各々単独で整泡剤17b、17a、触媒18b、18a、水19b、19aを添加した後、発泡剤20を混合する方法、図3は新品ポリオール16にあらかじめ再生ポリオール15がある一定比率混合されることを前提として整泡剤17c、触媒18c、水19cを添加しておき、再生ポリオール15混合後、発泡剤20を混合する方法、図4は新品ポリオール16、再生ポリオール15を混合した後、整泡剤17d、触媒18d、水19dを添加し、発泡剤20を混合する方法、図5は新品ポリオール16にあらかじめ整泡剤17e、触媒18eを添加し、再生ポリオール15混合後、水19eを添加、発泡剤20を混合する方法、図6は新品ポリオール16に整泡剤17f、触媒18f、水19fを添加し、再生ポリオール15には水19f’のみを添加、その両液を混合後、発泡剤20を混合する方法、図7は図3の方法と再生ポリオール15を混合した後の工程が違っていて、新品ポリオール16にあらかじめ再生ポリオール15がある一定比率混合されることを前提として整泡剤17g、触媒18g、水19gを添加しておき、再生ポリオール15混合後、水19g’を更に添加して発泡剤20を混合する方法である
以上のような6つの再生ポリオール混合形態が考えられるが、どの方法で実施されるかは、製造、品質管理の面から決定される。
【0025】
発泡ウレタンの製造工程上、ポリオール1中の水分管理は重要な項目である。水分は、発泡ウレタンの断熱性、強度、流動性に影響を及ぼす項目であるため、ポリオールの水分含有率を検査のうえ、適正な水分量に調整する必要がある。
水分管理という観点から、再生ポリオール混合工程は、図2、図4、図5、図6、図7の工程が望ましく、特に、新品ポリオール16と再生ポリオール15とを混合後、水(19d、19e、19g’)を添加する工程である図4、図5、図7が望ましい。
再生ポリオール15は製造工程上、蒸留(S10)により低沸点物質の除去がなされるが、その際水分も除去される。よって、生成した再生ポリオール15は、冷蔵庫用断熱材の原料としては、水分量が不足している場合が多い。そこで、再生ポリオール15及び新品ポリオール16の水分含有率、もしくは再生ポリオール15と新品ポリオール16が混合されたポリオール全体の水分含有率を検査のうえ、適正量の水19を添加する必要がある。通常、新品ポリオール16は、原料メーカから冷蔵庫製造メーカに供給される際、既に規定量の整泡剤17、触媒18、水19を添加された状態にあることが多い。このような場合、再生ポリオール15をそのまま新品ポリオール16と混合して、冷蔵庫の製造に用いると、再生ポリオール15の混合分相当の水分の不足が生じ、主に流動性と強度の不足を招く。特に近年の複雑化した冷蔵庫の形態に対応するには、流動性の確保は重要であり、流動性確保のために、不足した水分19を新品ポリオール16と再生ポリオール15とを混合後、添加することとなる。その際、添加する水19の量は、生成した再生ポリオールの水分量検査の結果や混合する新品ポリオールの水分量、及び再生ポリオールの混合率に基づき決定され、ポリオール全体に対して0.1〜5%の範囲で添加される。尚、水分量を増加させることにより、水とイソシアネートとの反応により生じる尿素結合が増え、強度が増す。しかし、尿素結合を生む反応は、反応発熱量が高く、発泡時の反応速度が増すので、水分添加量は5%程度が上限となる。
【0026】
図8は、上述のような図2乃至図7の方法により製造された再生ポリオール15を新品ポリオール16に混合し、発泡成形した発泡ウレタンの圧縮強度を示したものである。横軸は再生ポリオール15の混合率(%)、縦軸は各混合率に対する発泡ウレタンの圧縮強度である。混合率が20%を越えたあたりから圧縮強度の低下が見られる。よって、従来の品質を保持しようとすれば、混合率を20%程度に制限するか、過充填率を上げ、強度を増すことが必要となる。しかし、過充填率を上げることは、注入量の増大を招くため、経済的に得策ではない。
【0027】
図9は、2ドアタイプ冷蔵庫の模式図を示したものである。(a)は冷蔵庫の正面図、(b)は冷蔵庫の側面図である。この形態の冷蔵庫の場合、上側の小さな扉を有する貯蔵室23と下側の大きな扉を有する貯蔵室24の間には、仕切壁25が存在する。冷蔵庫の背面にはウレタン原料液を注入するための注入口20a、20bが各2個ずつ設けられている。底面22と仕切壁25の距離と天井面21と仕切壁25との距離の違いにより、また冷蔵庫の箱体は扉の大きさ、重量等の違いにより、扉が大きい下側の貯蔵室24側の方が変形しやすい。よって、再生ポリオールを混合することにより、強度低下が起きるので、変形しやすい最も大きな扉の下側貯蔵室24側に設置された、その扉の後方にある注入口20bからは、再生ポリオールを含まないウレタン原料液を注入し、対向する上側貯蔵室23側に設置された注入口20aからのみ、再生ポリオール15を混合したウレタン原料液を注入することにより、冷蔵庫箱体強度に影響を与えることなく、再生ポリオール15が使用できる。ただし、強度上影響を与えない再生ポリオールの混合比率が、図8のごとく判明していれば、対向する位置にある上側貯蔵室23側の注入口20aより投入するウレタン原料液の再生ポリオール混合率を上回らず、かつ強度低下の現れない混合率の上限内で、再生ポリオールを混合したウレタン原料液を扉の大きい下側貯蔵室24側の注入口20bより、投入しても構わない。
【0028】
次に、冷蔵庫の形態別に、本発明の実施の形態について述べる。図10は種々の形態の冷蔵庫模式図を示したものである。図10(a)の冷蔵庫は、底面22から高さ方向で800mm乃至1100mmの位置に仕切壁25を設けて、上下二つの貯蔵室23、24に分離している。この仕切壁25の高さは、上方の貯蔵室23が使いにくくならない程度の高さに設定している。また、仕切壁25の高さに幅をもたせているのは、冷蔵庫全体の高さが高い場合、例えば1650mm程度以上の場合には高めの位置に仕切壁25を設け、冷蔵庫全体の高さが低い場合、例えば1600mm程度以下の場合には低い位置に仕切壁25を設けるものである。底面22と仕切壁25の距離と天井面21と仕切壁25との距離の違いにより、距離の小さい上方の貯蔵室23に比べ、距離の大きい下方の貯蔵室24の方が変形しやすい。よって、上方の注入口20a(図9参照)からは再生ポリオールを混合したウレタン原料液を注入することが可能であるが、下方の注入口20b(図9参照)からは新品ポリオールのみを混合した原料液を注入するか、上方の注入口20aに注入するウレタン原料液の再生ポリオールの混合率を上回らず、かつ強度低下の現れない混合率の上限内の原料液を注入する。
【0029】
図10(b)の冷蔵庫は、第一仕切壁25と底面22との間に第二の仕切壁26を底面22から高さ方向で300mm乃至500mmの位置に設け図10(a)の貯蔵室24を仕切り、3つの貯蔵室23、29,30を構成している。この第二仕切壁26の高さは、下方の貯蔵室30が使いにくくならない程度の高さに設定している。この冷蔵庫は第一仕切壁25にて、小さな貯蔵室である上方貯蔵室23と大きな貯蔵室である下方貯蔵室24に仕切られるが、大きな貯蔵室24を第一仕切壁以外の仕切壁、第二仕切壁26で仕切ることにより下方貯蔵室24の梁が出来て強度が増す。よって、下方の注入口20bからは、再生ポリオール混合率が図10(a)の場合より多く、かつ上方の注入口20aから投入した原料液より小さいか、もしくは同等であるウレタン原料液を投入することができる。
【0030】
図10(c)の冷蔵庫は図10(b)の冷蔵庫の貯蔵室29を第三仕切壁27にて仕切ったものである。また、図10(d)の冷蔵庫は図10(c)の貯蔵室32を第四仕切壁28にて縦方向に仕切り貯蔵室33、34を形成し、図10(e)の冷蔵庫は図10(c)の貯蔵室331を第四仕切壁28にて縦方向に仕切り貯蔵室35、36を形成したものである。これらの冷蔵庫は、第二仕切壁26と第三仕切壁27、もしくは第二仕切壁26と第三仕切壁27と第四仕切壁28によりラーメン構造を形成している。よって、そのラーメン構造を形成したその部分が最も強くなるので、図10(b)とは逆に上方の注入口20aから投入するウレタン原料液の再生ポリオール混合率より、下方の注入口20bから投入するウレタン原料液の再生ポリオール混合率を大きくすることができる。また、下方の注入口20bより投入するウレタン原料液の再生ポリオール混合率を上方と同じにしても差し支えない。図10(c)の貯蔵室の例としては、23は冷蔵室、31は野菜室、32は第一の冷凍室、30は第二の冷凍室がある。図10(d)の貯蔵室の例としては、23は冷蔵室、31は野菜室、33は製氷室、34は切替室、30は冷凍室がある。図10(e)の貯蔵室の例としては、23は冷蔵室、35は製氷室、36は切替室、32は野菜室、30は冷凍室がある。
【0031】
仕切壁の位置により再生ポリオールの比率を変化させた原料液を注入すると良い。例えば、図10(d)、(e)では、仕切壁が粗の状態である上方部に対応する注入口20aには再生ポリオールの比率を小さくした原料液を、仕切壁が密の状態である下方部に対応する注入口20bには再生ポリオールの比率を大きくした原料液を用いることにより、必要な箱体強度に対する有効な再生ポリオール使用ができる。
以上より、冷蔵庫内の仕切壁の数を増やし冷蔵庫の強度を上げることにより、冷蔵庫の外箱と内箱からなる空間に注入するウレタン原料液の新品ポリオールに対する再生ポリオールの混合率を上げることができる。よって、リサイクル材料を用いた信頼性の高い冷蔵庫が製造でき、廃冷蔵庫のリサイクル率も上がる。
冷蔵庫の形態に応じて再生ポリオールの混合比率を変化させることにより、品質を損なうこと無く、発泡ウレタンを再利用した冷蔵庫とその冷蔵庫の製造方法を得ることができる。
表1は、図10(e)の冷蔵庫における再生ポリオール混合率による冷蔵庫箱体強度の変化を示したものである。Xは上方注入口20aに投入するウレタン原料液の再生ポリオールの混合率(%)、Yは下方注入口20bに投入するウレタン原料液の再生ポリオールの混合率(%)、Zは冷蔵庫箱体強度指数である。
【0032】
【表1】
【0033】
冷蔵庫箱体強度指数Zは、ウレタン原料液において、再生ポリオール混合なしの状態を100とした時の相対指数であり、値が小さい方が強度は低い。尚、合格ラインは90で、表1の再生ポリオール混合率のうち合格であるものには下線を引いた。
表1より、第一仕切壁25より上方に設けた注入口20aからは、再生ポリオールの混合率を図8で示した強度低下の生じない20%程度に抑えた原料液を注入し、第一の仕切壁より下方に設けた注入口20bからは、再生ポリオールの混合率を50%まで高めた原料液を注入しても、冷蔵庫全体の強度にはあまり影響を及ぼさず、品質上問題とならないレベルを確保できることが分かった。この冷蔵庫の形態では、上方注入口20aからの原料液注入量と下方注入口20bからの原料液注入量がほぼ同じ場合には、Xが20%、Yが50%である原料液を注入したとき、一番多く再生ポリオールを使ったことになる。
これは、上述のように、第二仕切壁26と第三仕切壁27と第四仕切壁28によりラーメン構造が形成され、その部分が強固になったためだが、このように冷蔵庫の形態に合わせて再生ポリオールの混合率を変化させることにより、有効的に再生ポリオールの使用が可能になる。
以上、第一仕切壁25が冷蔵庫の高さ方向に対して中央部付近以上の位置に設けられた冷蔵庫につき記載したが、中央部付近以下に第一仕切壁25がある場合には上方注入口から注入するウレタン原料液の再生ポリオールの混合率を下げるか、場合によっては下方注入口から注入するウレタン原料液の再生ポリオール混合率を上げる、または、梁となる他の仕切壁を設ければ良い。
【0034】
また、再生ポリオールはその製造工程上受ける熱履歴により、黒褐色を帯びている場合が多いので、注入口20により再生ポリオールの混合率を変化させた場合、断熱材の色調が冷蔵庫の各箇所で異なることとなり、再生ポリオールの混合率が高い原料液を注入した注入口20近辺の断熱材が濃褐色となる。しかしながら、通常断熱材は外箱と内箱におおわれているので、使用者の目に触れることはなく意匠上の問題はない。
【0035】
なお、冷蔵庫内の発泡ウレタンが充填されている位置を冷蔵庫の側面から見た断面図図11を用いて説明する。外箱と内箱とで形成された空間部に冷蔵庫背面に設けられた注入口20a、20bからウレタン原料液が注入され断熱材である発泡ウレタン41が充填(斜線部)されている。冷蔵庫の箱体だけでなく、冷蔵庫扉にも断熱材である発泡ウレタン41が充填(斜線部)されており、この冷蔵庫扉にも上記説明した再生ポリオールを使用することができる。
尚、この冷蔵庫は、3つの仕切壁55、56、57により仕切られ、4つの貯蔵室51、52、53,54を形成している。この貯蔵室は例えば51は冷蔵室、52は冷凍室、53は野菜室、54は冷蔵室である。冷却器43の冷気をファン42にて各貯蔵室へ送り(白抜き矢印)、各貯蔵室から冷気帰還風路45、48、49を通って冷却器43に戻す(黒矢印)ことにより冷蔵庫内を冷気を循環させている。
【0036】
以上、第一仕切壁25より上方に注入口20aを2個、下方に注入口20bを2個、合計4箇所に設けた冷蔵庫を示したが、冷蔵庫の外箱と内箱で形成される空間を均等に発泡ウレタンで充填するためには、注入口20の高さ方向の位置は、冷蔵庫の高さを4分割し底面22から1/4の位置付近に注入口20bを、3/4の位置付近に注入口20aとするのが良く、必ずしも第一仕切壁25の上下に分かれるというわけではない。また、ウレタン原料液を注入する時の冷蔵庫箱体の設置状況(縦、横、斜め置き等)に応じて、上方向や下方向に位置を変えても良い。
250L程度以上のタイプの冷蔵庫に対しては、高さ方向に対して2箇所、左右に各2個ずつの計4箇所が通常であるが、発泡時、外箱と内箱で形成される空間を真空引き後ウレタン液を注入する方法等をとることにより、注入口20は1箇所でも可能である。注入口20はユーザから見えにくい、冷蔵庫背面や底面や天井面等が良く、圧縮機が設置される機械室付近に設けても良い。また、注入口20の位置は、仕切壁の後部にあっても、各貯蔵室の背面にあっても良い。
【0037】
【発明の効果】
本発明に係る冷蔵庫は、外箱と、内箱と、外箱と内箱にて形成される箱体と、箱体を複数の貯蔵室に仕切る複数の仕切壁と、外箱と内箱との間の空間に発泡ウレタンの原料液を注入するため冷蔵庫背面に設けられた複数の注入口とを備え、複数の仕切壁が密に設けられている部分の後方に設けられた注入口から注入する発泡ウレタンの原料液は、複数の仕切壁が粗に設けられている部分の後方に設けられた注入口から注入する発泡ウレタンの原料液に比べ、含有する再生ポリオールの比率が大きいので、必要強度に合わせた再生ポリオール利用ができる。
【0038】
また、本発明に係る冷蔵庫は、外箱と、内箱と、外箱と内箱の間に空間とを設け、空間に発泡ウレタンの原料液を注入し発泡充填して成る冷蔵庫において、発泡ウレタンの原料液は、再生ポリオールと、新品ポリオールと、水とを含有し、水の量は、新品ポリオールと再生ポリオールとを合わせたポリオール全体の量に対して0.1〜5%とするので、原料液の流動性の確保ができ、複雑化した冷蔵庫の形態にも対応できる。
【0039】
また、本発明に係る冷蔵庫は、再生ポリオールの量は、新品ポリオールと再生ポリオールを合わせたポリオール全体の量に対して1〜50%とするので、品質を損なうことのない発泡ウレタンを再利用した冷蔵庫となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 冷蔵庫の発泡ウレタン再生工程を示すフローチャートである。
【図2】 再生ポリオールと新品ポリオールの混合形態を示すフローチャートである。
【図3】 再生ポリオールと新品ポリオールの混合形態を示すフローチャートである。
【図4】 再生ポリオールと新品ポリオールの混合形態を示すフローチャートである。
【図5】 再生ポリオールと新品ポリオールの混合形態を示すフローチャートである。
【図6】再生ポリオールと新品ポリオールの混合形態を示すフローチャートである。
【図7】 再生ポリオールと新品ポリオールの混合形態を示すフローチャートである。
【図8】 再生ポリオール混合率による圧縮強度変化を示すグラフである。
【図9】 2ドアタイプの冷蔵庫模式図である。
【図10】 冷蔵庫形態別の冷蔵庫模式図である。
【図11】 冷蔵庫の縦断面図である。
【符号の説明】
1 ポリオール、2 イソシアネート、5 冷蔵庫、6 廃冷蔵庫、10 ウレタン粉、15 再生ポリオール、16 新品ポリオール、17 整泡剤、18触媒、19 水、20 発泡剤、20 注入口、25 第一仕切壁、26 第二仕切壁、27 第三仕切壁、28 第四仕切壁。
Claims (3)
- 外箱と、内箱と、前記外箱と前記内箱にて形成される箱体と、前記箱体を複数の貯蔵室に仕切る複数の仕切壁と、前記外箱と前記内箱との間の空間に発泡ウレタンの原料液を注入するため冷蔵庫背面に設けられた複数の注入口とを備え、前記複数の仕切壁が密に設けられている部分の後方に設けられた注入口から注入する発泡ウレタンの原料液は、前記複数の仕切壁が粗に設けられている部分の後方に設けられた注入口から注入する発泡ウレタンの原料液に比べ、含有する再生ポリオールの比率が大きいことを特徴とする冷蔵庫。
- 外箱と、内箱と、前記外箱と前記内箱の間に空間とを設け、前記空間に発泡ウレタンの原料液を注入し発泡充填して成る冷蔵庫において、前記発泡ウレタンの原料液は、再生ポリオールと、新品ポリオールと、水とを含有し、前記水の量は、前記新品ポリオールと前記再生ポリオールとを合わせたポリオール全体の量に対して0.1〜5%とすることを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
- 再生ポリオールの量は、新品ポリオールと再生ポリオールを合わせたポリオール全体の量に対して1〜50%とすることを特徴とする請求項2に記載の冷蔵庫。
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