JP5202801B2 - ショートサイクルアーク溶接のための方法及び装置 - Google Patents
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Description
スタッド溶接においては、ドローンアーク点火による方法とチップ点火による方法とが区別される。
ドローンアーク点火によるスタッド溶接においては、スタッドが被加工物上に置かれ、パイロット電流が通電される。次に、スタッドが被加工物から持ち上げられてアークを生じる。
チップ点火法においては、スタッドは、一般的に被加工物からある一定の距離を置いて保持され、バネ力により被加工物まで移動させられ、スタッドと被加工物とが接触した瞬間に高電圧によりアークが点火される(一般的にコンデンサ放電)。
「スタッド」という用語は、本明細書の関連においては広義に理解されるものとする。これに関連して、それは、ネジ付きスタッド、ネジなしスタッド、フランジ付きスタッド、Tスタッド、タップ付きスタッドなどを含むことができる。しかし、本明細書の事例においては、「スタッド」という用語はまた、スタッド溶接法を用いて板金上に溶接されるナットなどのような他の被加工物を含むものである。
欧州標準規格「prEN ISO 13918」には、様々な形式のスタッドが説明されている。
チップ点火法においては、被加工物に面するスタッドの端面上にいわゆる点火チップが設けられる。点火チップは、アークの点火を助けるものである。工程中に、非常に急速に上昇するコンデンサ放電電流(〜10kA/ms)が点火チップを流れる。この高電流は、電気ヒューズにおいて生じるものと同様の点火チップの爆発的蒸発を引き起こし、従ってアークを点火する。アークの点火時間及び燃焼時間が常に再現可能であることを保証するために、点火チップの直径及び長さには非常に厳格な寸法精度の要件が課せられる(一般的に、それぞれ±0.05mm及び±0.08mm)。
しかし、比較的大きな直径(>10mm)の鋼スタッドの場合には、打ち込まれたアルミニウム球又はスプレーされたアルミニウムコーティングをスタッドチップに設けることができる(円錐状の端面が使用される場合)。アルミニウムは、この場合は溶剤として働くものである(上述の標準規格「prEN ISO 13918」も参照されたい)。
チップ点火によるスタッド溶接のためのスタッドは、特許文書DE19622958C1に説明されている。そこでは、スタッドの端面は、内方に円錐状ドーム形を成している。点火チップは、そこではかなり長く作られるべきである。この手段の目的は、発生するブロー効果を最小にすることである。高い駆動電圧及び存在する溶接電流の大きさ(約10kA)のために、そこで使用されるコンデンサ放電溶接は、電子に対する最小出口仕事を要する場所に逃げるのに妥当な機会をアークに提供する。これは、それ自体、表面状態が均一でない場合にブロー効果が大きいことを表すものである。
この関連において、アークが点火される時に接触チップが被加工物に押し付けられるチップ点火法の変形が開示されている。ここでは、接触チップはまた、スタッドと被加工物の間の空間がアークの点火及び接触チップの蒸発後に増大しないので、一種のスペーサとして働いている。その代わりに、部分的に溶融したスタッドは、この「接触チップ高さ」から開始して部分的に溶融した被加工物内に注ぎ込まれる。
特許文書DE8,017,920U1もまた、チップ点火法によるスタッド溶接のための円筒形点火チップを備えたスタッドを開示している。ここでの基本的な考えは、点火チップをスタッドの両端面に適用することができ、これらの端面の設計が円錐状ではなく平坦であるということである。
DE19925628A1により、清掃段階を有する別のドローンアーク点火溶接法が公知であり、スタッドによる溶接が後に行われる場所からアルミニウム表面上のコーティングが除去されるように、磁気アーク偏向を使用してアークとその形状に影響を及ぼすものである。
被加工物に部材を溶接するための別の方法は、ドローンアーク点火による方法とチップ点火による方法とを開示するDE19927371C2に開示されている。この文書は、様々に設計された端面を有するいくつかのスタッドを更に開示しているが、どの形式のスタッドがどの方法に対して特に有用であるかを詳細に示していない。
本発明の更に別の目的は、このような方法のためのスタッド、このようなスタッドを製造する方法、また、スタッド溶接工程に対するこのようなスタッドの使用を明確にすることである。
a)被加工物の溶接面に溶接される端面を有し、端面の中央に明確な突起が形成されたスタッドを準備する段階と、
b)溶接面上に突起を配置してパイロット電流を給電する段階と、
c)溶接面からスタッドを持ち上げ、それによってアークを引き出す段階と、
d)端面と溶接面とが溶融し始める方法で、アークを通って流れる溶接電流を確立する段階と、
e)溶接スタッドを溶接面上に降下させて、端面及び溶接面における溶融物を混合させる段階と、
f)溶融物全体が固化してスタッドが被加工物に一体化する方法で接合するように溶接電流を切る段階と、
を含むものである。
更に、上述の目的は、そのようなスタッドを製造する方法によって達成され、突起は、スタッドの一体部分として形成され、突起寸法に対する許容範囲は、±0.1mmよりも大きい。
最後に、上述の目的は、本発明によるドローンアーク点火を用いるショートサイクルアーク溶接のためのこのようなスタッドの使用によって達成される。
従って、本発明の方法は、自動車産業における使用に特に適するものである。
本発明によるドローンアーク点火スタッドは、その明確な一体的突起において従来のドローンアーク点火スタッドとは異なっている。この突起は、従って、酸化特性を改善するための異なる材料の圧入集合体ではない。
更に、ドローンアーク点火スタッド上の接触点又は突起を使用することの利点は、同様な突起がチップ点火スタッド上に存在するという事実にも関わらず、これまで決して認識されることがなかったので、本発明による使用は特に重要である。
実際の溶接段階d)は、ここでは用途に応じて直流電流又は交流電流で行うことができる。
すなわち、目的は完全に達成される。
本発明によるドローンアーク点火によるスタッド溶接工程の一部として清掃段階を行う際に、明確な突起の結果として、スタッドが平坦又は一般的に僅かに円錐状の端面を有する場合と比較して、清掃段階において使用されるアークが接合軸線に対してかなりより同心的に生じることは特に有利である。
更に、アークに対して磁気的に影響を及ぼすためのコイルの使用は不要である。その結果、溶接ヘッドを遥かに細く作ることができる。付加的な干渉エッジが回避され、溶接工具のアクセス性も損なわれることはない。
全体として、非磁性的原因によるアークブローの防止に大きく貢献するものである。
従来のスタッドにおいては、スタッド製造中の冷間成形工程における潤滑に対して必要とされる最少量のオイルは、冷間成形工具の端面領域に集まり、従って、結果として円錐形よりもドーム状になりがちなスタッド端面が形成される。これは、アークをスタッド軸線から外れた位置で点火させてそこに維持させ、従って、磁気が原因ではないアークに対するブロー効果を引き起こす可能性がある。
一般的に、清掃電流は、溶接電流よりも小さいか、等しいか、又は大きいとすることができる。
明確な突起により、清掃段階中のアークは、常にスタッド端面の中央で発生し、端面と、被加工物上の隣接区域ではなく関連する溶接面とが清掃されることを保証する。このようにして、清掃アークが非対称的になって不都合な溶接結果、特に、一方向への曲げ強度がブロー効果によって鋭く低減する場合の結果が生じるという状況を全体的に回避することができる。
ここで、これらの全てが高周波電圧(コンデンサ放電時に電圧のピークがある)又は高電圧なしに行うことができることに注意すべきである。一般的に、ドローンアーク点火による本発明のスタッド溶接における溶接電流は、<2000アンペアの範囲である。
更に、公称では円錐形端面のむしろドーム状の成形は、清掃段階において不均一なアーク形成の原因をもたらす可能性があるが、それが回避される。
簡潔に説明すると、一般的に電気的に絶縁性である汚染物質又はコーティングが大きいか又は厚いほど、アーク電圧は大きい。その理由は、所定の溶接電流に対して、電圧は電気抵抗に比例するからである。
その結果、汚染物質/コーティングの厚さがある一定の閾値を超えた場合に、清掃段階が実行される。これに反して、何の汚染物質も存在しない場合には、これは低いアーク電圧として現れるが、清掃段階は省略することができる。
これは、清掃段階を実際に必要な長さの時間に亘ってのみ実行すればよいという利点を有する。
しかし、代替的に、好ましくは事前に選択することができる固定された期間内に清掃段階を実行することも可能である。
更に、清掃電流は、交流電流として選択されることが好ましい。
この関連において、清掃段階中に清掃電流の極性が2回から10回までの範囲で反転される場合に、それは特に有利である。
これは、制御技術の点で実施が容易であり、総じて非常に良好な清掃結果をもたらすものである。
例えば溶接面が一般的に端面よりも多くの清掃を必要とするある一定の用途で見出される事例においては、負荷サイクルは、清掃電流がより多くの清掃を必要とする表面に対してより有効である極性により長く維持されるように設定することができる。
このようにして、特に表面の一方の清掃の強調という上述の実施形態と同様な効果を達成することができる。2つの手段を互いに組み合わせてもよいことは言うまでもない。
既に上述のように、被加工物及びスタッドがアルミニウム合金で作られることは特に有利である。
しかし、本発明による方法は、被加工物及びスタッドが鋼で作られている場合にも有利に使用することができる。
本発明によるスタッドに関しては、突起が端面を超えて0.1から1mmだけ、より具体的には0.3から0.6mmだけ突出することが特に有利である。
この寸法は、典型的に使用される清掃電流を用いる場合に、清掃段階及び/又は溶接段階中に突起が完全に溶融することを保証することが可能であるという点で有利である。
これに関連して、突起にその自由端に向けてテーパが付けられることも有利である。
これは、アークが点火される時にスタッド軸線の中心への更に強い集中を促進するものである。
これに関連して、突起が、その自由端の領域において0.1から2mmの範囲、より具体的には0.2から1.2mmの範囲、特に好ましくは0.3から0.6mmの範囲の直径を有することも有利である。
上述の特徴及び以下に説明する特徴は、説明する特定の組合せにおいてのみ使用される必要はなく、本発明の範囲から逸脱することなく他の組合せ又は単独で使用してもよいことは言うまでもない。
本発明の例示的実施形態を図面に示し、以下の説明において詳しく説明する。
スタッド溶接システム10は、ロボット(多関節ロボット)16上のキャリッジ14によって担持されたそれ自体公知の設計の溶接ヘッド12を有する。
キャリッジ14上の溶接ヘッド12の移動方向は、18としてラベル付けされている。
移動方向18は、アルミニウムスタッドが溶接されるアルミニウム板の形態を有する被加工物20の表面に対して垂直に延びる。
電源24は、第1の線25aにより溶接ヘッド12と、図1には詳細に示されていないが溶接ヘッド12上に保持されたスタッドとに接続される。
電源の第2の線26b(例えば、直流の場合は接地線)は、被加工物20に接続される。
スタッドは、線26を通じて溶接ヘッド12に自動的に供給される。
更に、制御/供給ユニット22は、不活性ガス線28を通じて不活性ガスを付加的に供給する。
スタッド溶接システム10は、一般的に、ドローンアーク点火によるショートサイクルアーク溶接の方法に従って作動する。
スタッド溶接システム10においては、図2に示すようなスタッド40が被加工物20に溶接される。
スタッド40は、端面46において被加工物20に溶接される。端面46は、一般的に円錐状にテーパが付けられ、その円錐角度αは、180°よりも小さく165°よりも大きい(指導要綱DVS0902も参照されたい)。
直径約8mmのシャンク42の場合、突起48は、約0.6mmの長さLを有する。
端面46近くにおける突起48の直径D1は約0.6mmである。その自由端近くにおける突起48の直径D2は約0.3mmである。
本発明によるスタッド40においては、突起48は、回転対称に設計される。
しかし、突起48の横断面は多角形とすることができ、従って、例えば、三角形、四角形、又は更に放物形から円錐形とすることができる。
スタッド溶接法60は、開始段階62に続いて、被加工物20の溶接面に溶接される時に用いる端面46を有するスタッド40を供給する第1の段階64を有し、端面46の中央には、明確な突起48が形成されている。
この段階において、スタッド40は、例えばそれ自体公知の方法で溶接ヘッド12のホルダ内に収容される。更に、段階64において、ロボット16とキャリッジ14は、溶接ヘッド12が、その移動軸線18が被加工物20に対してほぼ垂直である開始位置に置かれるように移動される。
次の段階68において、スタッド40が被加工物20から持ち上げられ(例えばリニアモータにより)、この工程で、流れているパイロット電流の結果としてドローンアーク法に従いアークが引き出される。
パイロット電流相Pの開始時に、電流Iはパイロット電流値まで上昇され、その後スタッドが最初に第1のレベルまで持ち上げられる。図4の図においては、第1の閾値T1よりも大きいアーク電圧Vがこの時点で確立される。
アーク電圧Vが第1の閾値T1を超えた場合、これは、端面46及び/又は被加工物20の溶接面上の汚染が実際の溶接段階の前に清掃段階76を実行する必要があるほど大きいことを表している。
清掃段階76において、電流Iは、清掃電流まで上昇される。これに加えて、スタッド40は、被加工物20の表面から更に持ち上げられる。
清掃相C中にアーク電圧Vが第2の閾値T2よりも低下した場合は(図3の段階78におけるJ(イエスを表す))、清掃相Cが終了する。次に、従来の溶接段階Wが実行される(図3の段階72)。この工程において、電流Iは、最初に溶接電流までかなり大きく増大される。これによって端面46及び溶接面が溶融し始める。しかし、代替的に、清掃電流が実際の溶接電流よりも大きいこともあり、その場合、電流は溶接電流まで低下される。事前に溶接相Wの開始時に、スタッド40と被加工物20の間の距離Sが再び低減される。
次に、溶接スタッド40は、溶接スタッド40のフランジ部分44が基本的に被加工物20の表面上に載るように、溶接相W(Wは溶接を表す)中に降下される。その結果、図4の図におけるスタッドの移動Sもゼロ点と交差する(スタッドは、言わば被加工物内に沈み込む)。次に、工程は終了する(段階74)。
図6は、本発明による溶接方法の代替的実施形態を図式84に示している。
本発明による溶接方法の変形では、清掃相C’において清掃電流Iが交流電流として印加され、清掃電流Iの極性は、この相の間に約4回変わる。
これに加えて(又は代替的に)、清掃相C’中における交流電流Iの負荷サイクルTもこれらの境界条件に応じて調節することができる。
溶接相中に直流電流の代わりに交流電流を印加することができることは勿論であり、これによってより良い溶接結果がもたらされる。
清掃段階Cの結果、同心的な清掃効果が得られたことが分る。恐らくは不均一なコーティングにも関わらず、スタッド40が明確な突起48を備えているという事実により、ここでは全てのブロー効果が抑制されている。全体的に、これは、スタッド軸線と同心の円形清掃区域のより均一な形成をもたらしている。
その結果、溶接区域の適切な同心的清掃が存在する時には、最適な溶接結果を達成することができる。
写真100のスタッドを清掃する際に下記の清掃パラメータが使用された。
i.200アンペアの負電流の5ミリ秒間の印加。次に、200アンペアの正電流の30ミリ秒間の印加があり、工程全体は、端面と溶接面の間の3mmの距離で行われた。
これに反して、これらの欠点は、本発明による方法と本発明によるスタッド40が使用される場合には完全に回避することができる。
これに関連して、アークをスタッド軸線周りに対称にするために、溶接ヘッド12上に磁気的アーク偏向の手段を設ける必要はない。その結果、溶接ヘッド12の前方端部は、干渉形状がほとんどなく細く作ることができる。
12 溶接ヘッド
14 キャリッジ
16 多関節ロボット
18 移動方向
20 被加工物
22 制御/供給ユニット
24 電源
Claims (5)
- スタッド(40)が被加工物(20)に溶接されるドローンアーク点火によるショートサイクルアーク溶接のための方法(60)であって、
a)被加工物(20)の溶接面に溶接される時に用いる端面(46)を有し、端面(46)の中央に明確な突起(48)が形成されたスタッド(40)を準備する段階(64)と、
b)前記溶接面上に突起(48)を配置して(66)、パイロット電流(IP)を給電する段階と、
c)前記溶接面からスタッド(40)を持ち上げ(68)、それによってアークを引き出す段階と、
d)前記スタッド(40)と前記加工物(20)との間に印加される電圧(V)を測定し、該電圧(V)が、該スタッドの端面(46)及び前記加工物の溶接面の少なくとも一方が清掃を必要とする程度に汚染されていることを示す第1の所定の閾値(T 1 )を超えたとき(70)、溶接スタッド(40)を持ち上げた後の清掃相(C)である清掃段階(76)において清掃電流(Ic)を生成する段階と、
e)前記電圧(V)が、前記第1の所定の閾値(T 1 )とは異なる第2の所定の閾値(T 2 )以下に低下したとき(78)、前記清掃相を終了する段階と、
f)前記清掃相を終了した後に、前記端面(46)と前記溶接面とが溶融し始めるように、前記アークを通って流れる溶接電流(IW)を確立する段階(72)と、
g)溶接スタッド(40)を前記溶接面上に降下させて(72)、前記端面(46)及び該溶接面における溶融物を混合させる段階と、
h)前記溶融物全体が固化してスタッド(40)が前記被加工物(20)に接合するように、溶接電流(IW)を切る段階(72)と、
を含むことを特徴とする方法。 - 前記清掃電流(IC)が、汚染物質を前記溶接面及び/又は端面(46)から取り除くことを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 清掃電流(IC)は、交流電流として選択されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
- 清掃電流(IC)の極性は、清掃段階(76)中に2回から10回の範囲で反転されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
- 被加工物(20)及びスタッド(40)は、アルミニウム合金で作られることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
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