JP2014226700A - Tigスポット溶接方法及び溶接継手 - Google Patents

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Kiyoshi Koyama
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Masayuki Abe
正行 阿部
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Shigeaki Miura
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Abstract

【課題】溶加材を使用しない非消耗電極式のTIG溶接法を用いて、重ね合わせの被溶接材において確実かつ十分高い接合強度で外観仕上がりの良い溶接継手を得ること。【解決手段】このTIGスポット溶接方法においては、タッチスタート方式によってアーク放電が開始され、最初に貫通孔の中で第2(下側)の被溶接材W2が溶けてそこに溶融池ができる。そして、トーチ電極42を引き上げてその先端位置を高くするにつれて、アークACが径方向にも広がって、第1(上側)の被溶接材W1の貫通孔64の内壁が溶け落ちて溶融池WPに合流し、さらには凹部62の斜面も溶け落ちて溶融池WPに合流し、溶融池WPは径方向にも深さ方向にもさらに拡大する。そして、通電開始から所定の通電時間が経過して、アークを消滅させると、溶接池が大気中の自然冷却によって直ぐに凝固して溶融凝固部になり、重ね溶接継手が出来上がる。【選択図】 図4B

Description

本発明は、重ね合わせの被溶接材を点で継ぎ合わせるためのスポット溶接に係り、特にTIG溶接法を用いるTIGスポット溶接方法に関する。
従来より、重ね合わせの被溶接材に点状の重ね継手を形成するためのスポット溶接方法として、抵抗スポット溶接法、レーザスポット溶接法およびアークスポット溶接法が多く用いられている。
これらのスポット溶接法のうち、抵抗スポット溶接法とレーザスポット溶接法は、溶接棒が不要であること、自動溶接が容易であることなどの利点がある反面、溶接機の価格が高いことが難点となっている。さらに、抵抗スポット溶接法により得られる溶接継手には電極の圧痕(凹み)ができるが、溶接中に飛散した溶融金属が溶接部の周囲に付着すると、その表面に表散りの突起物ができる。その場合は、表散りを取り除く工程が必要になる。レーザスポット溶接法においても、溶接継手の表面に同心円状の凹凸が現れ、外観仕上がりはそれほど良くはない。また、抵抗スポット溶接法およびレーザスポット溶接法のいずれも、重ね溶接継手の接合状態を外観から判定できない。このため、破壊検査によって被溶接材内部のナゲット径を目視で確認する作業が必要となる。
一方、アークスポット溶接法は、電極と母材(被溶接材)との間で空中に発生するアークの高熱を利用して母材を溶接する方法であり、アーク熱により電極が消耗(溶融)する消耗電極式(たとえばMIG溶接法)と、消耗しない非消耗電極式(たとえばTIG溶接法)の2種類がある。アーク溶接機は、消耗電極式および非消耗電極式のいずれも、抵抗溶接機やレーザ溶接機より低いコストで導入できることや、様々な現場で手動の溶接作業をフレキシブルに行えることが長所になっている。
一般に、板金のような比較的厚い重ね合わせの被溶接材に対して重ね継手を形成するアークスポット溶接法は、消耗電極式を多く用いており、TIG溶接法を用いる場合でもトーチ電極と被溶接材との間に溶接ワイヤや溶加棒等の溶加材を挿入して溶かす方式を採っている。そして、アークスポット溶接法において、このように電極あるいは溶加材を溶融させて重ね継手を形成する場合は、重ね合わせで上になる側の被溶接材に開口を形成して、その開口の中に電極あるいは溶加材より溶融金属を供給し、これを溶接部としている(たとえば特許文献1,2)。
特開平8−192267号公報 特開2003−334657号公報
しかしながら、上記のように電極あるいは溶加材を溶融させて重ね継手を形成するアークスポット溶接法は、被溶接材と同じ材質の電極あるいは溶加材を使用しなければならない煩わしさがあり、溶接作業中に電極あるいは溶加材を送給する操作も必要であり、さらには重ね溶接継手の強度や仕上がりがそれほど良くないという問題もある。すなわち、このようなアークスポット溶接法は、被溶接材双方の原子同士を直接混じり合わせる接合ではないため、接合面の小さい重ね溶接継手で高い接合強度を得るのは難しい。このため、上側被溶接材の開口に電極あるいは溶加材からの溶融金属を多めに盛るほかない。しかしながら、それによって、溶接継手の表面に余盛りの凸部ができてしまい、外観の美しい仕上がりが得られない。
なお、溶加材を使用しない非消耗電極式のTIG溶接法は、突き合わせ溶接やすみ肉溶接にはよく使われているが、スポット溶接では薄板の重ね溶接を除いて殆ど使われていない。すなわち、溶加材を使用しない非消耗電極式のTIG溶接法は、重ね合わせ被溶接材の接触界面にアークの高熱を直接及ぼすことができないため、スポット溶接で接合強度の高い重ね溶接継手を得るのは難しい。また、重ね溶接継手の接合状態は、外観から判定できないため、頻繁に破壊検査を行って確認しなければならない。
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、溶加材を使用しない非消耗電極式のTIG溶接法を用いて、重ね合わせの被溶接材において確実かつ十分高い接合強度で外観仕上がりの良い溶接継手を得ることができるTIGスポット溶接方法を提供する。
本発明のTIGスポット溶接方法は、第1および第2の被溶接材を重ね合わせてTIG溶接法によりスポット溶接するTIGスポット溶接方法であって、重ね合わせで上になる第1の被溶接材に、そのおもて面から裏面に向かって径が次第に小さくなる凹部と、この凹部の底から裏面まで延びる貫通孔とを形成する工程と、前記第2の被溶接材の上に前記第1の被溶接材を重ね合わせて、トーチ電極の先端を前記第1の被溶接材の前記貫通孔の中に通して前記第2の被溶接材に接触させる工程と、前記第2の被溶接材に前記トーチ電極の先端が接触した状態で、前記トーチ電極の周囲にシールドガスを供給しながら、前記トーチ電極と前記第1および第2の被溶接材とを含む閉回路内で通電を開始する工程と、前記シールドガスの供給と前記通電を継続しながら、前記トーチ電極の先端を前記貫通孔の中で前記第2の被溶接材から上に引き離して、前記トーチ電極と前記第2の被溶接材との間でアークを発生させ、前記アークの熱によって前記第2の被溶接材を溶かす工程と、前記シールドガスの供給と前記通電を継続しながら、前記トーチ電極の先端を前記貫通孔の上方さらには前記凹部の上方に引き上げて、前記トーチ電極と前記第1および第2の被溶接材との間でアークを発生させ、前記アークの熱によって前記第1および第2の被溶接材を溶かす工程と、前記アークを消滅させて前記第1および第2の被溶接材の溶融部を凝固させる工程とを有する。
本発明のTIGスポット溶接方法においては、タッチスタート方式によってアーク放電が開始され、最初に貫通孔の中で第2の被溶接材が溶けてそこに溶融池ができる。そして、トーチ電極を引き上げてその先端位置を高くするにつれて、アークが径方向にも広がって、第1の被溶接材の貫通孔の内壁が溶け落ちて溶融池に合流し、さらには凹部の斜面も溶け落ちて溶融池に合流し、溶融池は径方向にも深さ方向にもさらに拡大する。そして、通電開始から所定の通電時間が経過して、アークを消滅させると、溶接池が大気中の自然冷却によって直ぐに凝固して溶融凝固部になり、重ね溶接継手が出来上がる。こうして、第1および第2の被溶接材は、溶接ポイントに形成された重ね溶接継手にて点状に接合される。
本発明のTIGスポット溶接方法によって得られる溶接継手の溶融凝固部は、第1の被溶接材のおもて面に形成される円環状の縁部と、この縁部の径方向内側で浅く窪んで第1の被溶接材のおもて面の一部を形成する第1の面と、上記縁部の径方向内側で第1および第2の被溶接材の内部を通って非溶融凝固部との境界面を形成する第2の面とを有する。
本発明の好適な一態様においては、凹部の縁部の口径をφA、トーチ電極の直径をφB、貫通孔の口径をφCとすると、2φB<φA<3φB、φB<φC<1.5φBである。また、貫通孔は円筒状が好ましく、凹部の径が次第に小さくなるテーパ角度αは、好ましくは90°<α<130°である。
別の好適な一態様においては、閉回路で通電を開始した後は、トーチ電極の先端が高くなるにつれて閉回路で流れる電流を段階的または連続的に大きくする制御が行われる。
別の好適な一態様においては、トーチ電極の先端を第2の被溶接材から引き離した後にアークを持続しながら所定の離間距離でトーチ電極を一定時間だけ静止させ、その後アークを持続しながらトーチ電極の先端をさらに上に引き上げる制御が行われる。
本発明のTIGスポット溶接方法によれば、上記のような構成および作用により、溶加材を使用しない非消耗電極式のTIG溶接法を用いて、重ね合わせの被溶接材において確実かつ十分高い接合強度で外観仕上がりの良い溶接継手を得ることができる。
本発明のTIGスポット溶接方法を自動式で実施するためのTIG溶接機の全体構成を示す図である。 上記TIG溶接機においてTIGスポット溶接が行われる前の溶接部および溶接回路の状態を示す図である。 上記TIG溶接機においてTIGスポット溶接が行われている時の溶接部および溶接回路の状態を示す図である。 実施形態において上側被溶接材の溶接ポイントに形成される漏斗状の孔(凸部および貫通孔)のプロファイルを示す図である。 実施形態のTIGスポット溶接における一段階を示す図である。 実施形態のTIGスポット溶接における一段階を示す図である。 実施形態のTIGスポット溶接における一段階を示す図である。 実施形態のTIGスポット溶接における一段階を示す図である。 実施形態のTIGスポット溶接における一段階を示す図である。 実施形態のTIGスポット溶接における一段階を示す図である。 実施形態のTIGスポット溶接において得られた実際の溶融凝固部の断面構造(写真)を示す図である。
以下、添付図を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
図1に、本発明のTIGスポット溶接方法を自動式で実施するためのTIG溶接機の全体構成を示す。
このTIG溶接機は、直流式の溶接電源回路および制御回路等を内蔵したユニット形態の装置本体10と、この装置本体10からの用力の供給と制御の下で重ね合わせの被溶接材W1,W2にTIGスポット溶接を施す溶接ヘッド12と、シールドガスまたは不活性ガス(たとえばアルゴンガス)の供給源たとえばガスボンベ14とを有する。
溶接ヘッド12は、板状のベース16にステージ18とトーチスタンド20を併設し、トーチスタンド20にTIG溶接用のトーチ22を昇降可能に搭載している。より詳しくは、ステージ18は、被溶接材W1,W2を水平面内のXY方向で移動させるためのXYステージ24と、被溶接材W1,W2を水平面内の方位角方向(θ方向)で移動させるためのθステージ26とを有している。トーチスタンド20に固定されている台28の上に昇降機構(図示せず)を内蔵した昇降タワー30が設けられ、この昇降タワー30に昇降駆動軸32およびトーチ支持体34を介して棒状のトーチ22が鉛直方向に起立した姿勢で上下移動可能に取り付けられている。
水平方向においてトーチ22の位置は固定されている。装置本体10よりケーブル25を介して送られてくる制御信号の下でXYステージ24およびθステージ26がXY方向の移動動作およびθ方向の移動(回転)動作をそれぞれ行うことにより、ステージ18に載置されている被溶接材W1,W2の溶接ポイントPをトーチ22の直下に高い精度で位置決めすることができる。
トーチ22は、装置本体10よりトーチケーブル内蔵のホース36を介してTIG溶接用の電力と不活性ガスの供給を受けるようになっており、絶縁体たとえば樹脂からなる円筒状のトーチボディ38とこのトーチボディ38の下端部に着脱自在に取り付けられる円筒状または円錐状のトーチノズル40とを有し、トーチボディ38およびトーチノズル40の中にトーチ電極(タングステン電極棒)42を着脱自在に装着し、トーチノズル40の下端よりわずかに(通常2〜3mm)トーチ電極42の先端部を突出させている。
この実施形態では、アーク放電を開始させるために、トーチ電極42の先端を被溶接材W1,W2に接触させて通電を開始した後に引き離してアーク放電を発生させるタッチスタート方式が用いられる。トーチ支持体34には、タッチスタート方式においてトーチ電極42の先端を被溶接材W1,W2に安定確実に接触させるための圧縮コイルばね(図示せず)が取り付けられている。
装置本体10は、ユニット正面に表示器44、操作ボタン46および電源スイッチ48等をタッチパネル形式で配置し、ユニット側面または背面に外部接続端子またはコネクタ類50を配置している。ガスボンベ14よりホース15に送出されるシールドガスは、装置本体10を経由してトーチ22に供給されるようになっている。
図2Aおよび図2Bに、このTIG溶接機においてTIGスポット溶接が行われる前と行われている時の溶接部および溶接回路の状態を示す。TIGスポット溶接が開始される前に、装置本体10の制御の下でXYステージ24およびθステージ26(図1)によるXY方向および/または回転(θ)方向の移動動作が行われ、図2Aに示すように、被溶接材W1,W2の溶接ポイントPがトーチ電極42の真下に位置決めされる。通常は、被溶接材W1,W2上の各溶接ポイントPにXY座標が割り当てられるので、オープンループ制御の位置合わせ動作が行われる。しかし、モニタカメラ等を用いてフィードバック制御の位置合わせ動作を行うことも可能である。
TIGスポット溶接が開始される前は、装置本体10内で溶接電源回路EDCのスイッチSWはオフ状態になっている。なお、被溶接材W1,W2の少なくとも一方が、接触子52、母材側の溶接ケーブル54およびスイッチSWを介して溶接電源回路EDCの正極側端子に接続される。トーチ電極42は、ホース36(図1)内のトーチケーブル37を介して溶接電源回路EDCの負極側端子に接続される。
図2Bに示すように、被溶接材W1,W2の溶接ポイントPでTIGスポット溶接が行われている時は、トーチ電極42と被溶接材W1,W2との間で空中にアークACが発生しており、溶接電源回路EDCの正極側端子→オン状態のスイッチSW→母材側溶接ケーブル54→接触子52→被溶接材W1,W2→アークAC→トーチ電極42→トーチケーブル37→溶接電源回路EDCの負極側端子の経路(閉回路)で、直流の溶接電流iBが流れる。この時、トーチノズル40よりシールドガスSGがトーチ電極42および溶接ポイントPの周囲に噴き付けられる。
以下、図3、図4A〜図4Fにつき、この実施形態におけるTIG溶接機およびTIGスポット溶接方法の作用を説明する。
先ず、図3に示すように、重ね合わせで上になる被溶接材W1には、溶接ポイントPが設定される箇所に予めたとえばドリル加工によって漏斗状の孔60が形成される。この漏斗状の孔60は、上側被溶接材W1のおもて面から裏面に向かって径が次第に小さくなるすり鉢状の凹部62と、このすり鉢状凹部62の底から裏面まで延びる円筒状の貫通孔64とからなっている。
ここで、漏斗状孔60のプロファイル、すなわちすり鉢状凹部62の最上部または縁部62aの口径φA、深さDおよびテーパ角度αならびに貫通孔64の口径φCおよび高さHの各寸法は、トーチ電極42の直径φBや上側被溶接材W1の厚さT1等に応じて適宜選ばれる。好ましいプロファイルとして、トーチ電極42の直径φBに対して、すり鉢状凹部62の最上部口径φAは2φB<φA<3φBの範囲に選ばれ、貫通孔64の口径φCはφB<φC<1.5φBの範囲に選ばれる。また、上側被溶接材W1の厚さT1に対して、すり鉢状凹部62の深さDは0.4T1<D<0.6T1の範囲に選ばれ、貫通孔64の高さHは0.4T1<H<0.6T1の範囲に選ばれる。また、すり鉢状凹部62の径が次第に小さくなるテーパ角度αは、90°<α<130°の範囲に選ばれる。
上記のようにしてステージ18上で重ね合わせ被溶接材W1,W2の位置合わせが済むと、装置本体10の制御の下で昇降タワー30の昇降機構が作動し、トーチ22を待機用の高さ位置(初期位置)から垂直下方に下ろし、その下降の最中にシールドガスSGの噴き付けが開始される。そして、図4Aに示すように、トーチ電極42の先端が上側被溶接材W1のすり鉢状凹部62および貫通孔64の中を通って下側被溶接材W2の露出している上面に当接し、適度な圧力で加圧接触する。そして、トーチ22の下降が停止する。
こうしてトーチ電極42の先端が上側被溶接材W1の貫通孔64の中で下側被溶接材W2に加圧接触している状態の下で、装置本体10内で溶接電源回路EDCのスイッチSWがそれまでのオフ状態からオン状態に切り換えられる。これにより、溶接電源回路EDCより直流電圧がトーチ電極42と下側被溶接材W2との間に印加される。そうすると、溶接電源回路EDCの正極側端子→オン状態のスイッチSW→母材側溶接ケーブル54→接触子52→上側被溶接材W1→下側被溶接材W2→トーチ電極42→トーチケーブル37→溶接電源回路EDCの負極側端子の経路(閉回路)で、通電開始の直流電流つまりスタート電流iSが流れる。
この時、トーチ電極42の先端が下側被溶接材W2に接触しているので、スタート電流iSの大きさに関係なくアークはまだ発生しない。この時、溶接電源回路EDCの出力電圧を制御することにより、スタート電流iSの電流値を一定範囲に制御することが好ましい。すなわち、トーチ電極42の寿命を延ばすには、そのままトーチ電極42の先端を下側被溶接材W2から引き離した時に下側被溶接材W2を溶かさない程度の弱い放電しか起こさない小さな電流値(通常20A以下)が好ましい。一方で、トーチ電極42の先端を下側被溶接材W2から引き離してアーク溶接にふさわしい高熱のアーク放電を安定確実に発生させるには、この段階(接触状態)の通電において下側被溶接材W2に相当のジュール熱を発生させておく必要がある。この実施形態では、これら両面の観点から、スタート電流iSの電流値をたとえば10〜20Aの範囲に制御する。
こうして、上記閉回路でスタート電流iSが一定の電流値で流れることにより、トーチ電極42(特に先端付近)およびこれと接触している下側被溶接材W2の表層部付近で一定のジュール熱が発生する。
次に、所定のタイミングで昇降タワー30の昇降機構がトーチ電極42を垂直上方に引き上げる。これにより、トーチ電極42の先端が下側被溶接材W2の露出部から上に引き離される。この引き離しの瞬間は、上記のようにトーチ電極42の先端と下側被溶接材W2との間に弱い放電が発生する。しかし、この直後に溶接電源回路EDCの出力電圧が一段引き上げられることによって、上記の閉回路で流れる溶接電流がそれまでのスタート電流iSから一段と大きな(たとえば30Aの)主溶接電流iMに切り換えられる。そうすると、図4Bに示すように、トーチ電極42の先端部と下側被溶接材W2との間で本来のアーク放電が起こり、アークACの高熱によってトーチ電極42の直下で下側被溶接材W2の表層部が溶け出し、ここに溶融池WPができる。
この場合、トーチ電極42をゆっくりと連続的に引き上げてもよいが、トーチ電極42の先端が下側被溶接材W2にまだ近い所定の離間距離(たとえば0.5mm〜1mm)に達したところでトーチ電極42を一定時間(たとえば2〜5秒)だけ静止させてもよい。これによって、上側被溶接材W1より先に下側被溶接材W2が溶けてそこに一定の溶融池WPができるまで、アークACを下側被溶接材W2に集中させることができる。このように下側被溶接材W2に溶融池WPができると、この溶融池WPからの伝熱によって周囲(特に被溶接材W1,W2の接触界面付近)も溶け、溶融池WPが徐々に拡大していく。
こうして、貫通孔64の中で一定の溶融池WPができてから、トーチ電極42をさらに引き上げると、図4Cおよび図4Dに示すように、アークACが横にも広がって、上側被溶接材W1の貫通孔64の内壁が溶け落ちて溶融池WPに合流し、さらにはすり鉢状凹部62の斜面も溶け落ちて溶融池WPに合流し、溶融池WPは径方向にも深さ方向にもさらに拡大する。この場合、トーチ電極42の高さ位置に応じて、つまりトーチ電極42の先端が高く上昇するほど、上記閉回路(溶接回路)で流れる主電流iMの電流値を段階的または連続的に増大させて、アーク柱の径および長さを増大させる制御を行ってもよい。
そして、トーチ電極42をさらに引き上げ、トーチ電極42の先端を上側被溶接材W1のおもて面から十分(通常はφA以上)高い位置まで上昇させると、図4Eに示すように、アークACの径方向の拡がりが一層増して、溶融池WPの径も大きく拡大し、漏斗状の孔60(図4A)は周囲からの溶融金属で埋め尽くされる。
そして、通電開始から所定の通電時間が経過すると、装置本体10内でスイッチSWがオフ状態に切り換えられ、主溶接電流iMが切られると、その瞬間にアークは消滅する。直後にシールドガスSGの供給も止められる。アークACが消滅すると、図4Fに示すように、溶接池WPが大気中の自然冷却によって直ぐに凝固して溶融凝固部WJになり、重ね溶接継手が出来上がる。こうして、被溶接材W1,W2は、溶接ポイントPに形成された重ね溶接継手にて点状に接合される。
この重ね溶接継手の溶融凝固部WJは、上側被溶接材W1のおもて面に非溶融凝固部と面一に形成される円環状の縁部70と、この縁部70の径方向内側で浅く窪んで上側被溶接材W1のおもて面の一部を形成する第1の面72と、縁部70の径方向内側で被溶接材W1,W2の内部を通って非溶融凝固部74との境界面76を形成する第2の面78とを有している。
ここで、第2の面78は、縁部70の径方向内側の中心部が最も深くなり、下側被溶接材W2の厚みが小さい場合は、下側被溶接材W2の裏面に達してその一部を形成することもある。そのように溶融凝固部WJが下側被溶接材W2の裏面に達している場合は、重ね溶接継手の接合状態を外観で確認することができる。しかし、この実施形態のTIGスポット溶接方法においては、上記のように上側被溶接材W1の貫通孔64の中で下側被溶接材W2が最初に溶けてそこから溶融池WPが上下方向および横方向(径方向)の周囲に拡大していくという溶融メカニズムであるから、貫通孔64の底であった被溶接材W1,W2の接触界面付近およびその下の部分(つまり下側被溶接材W2の中)にも溶融凝固部WJが及んでいることは必然かつ確実であり、外観から判定できなくても接合強度は十分にあり、破壊検査による確認は不要である。
また、溶融凝固部WJの第1の面つまり表面72は、浅くて殆ど平坦な窪みであり、ざらざらしておらず、余盛りのような凸部や表散りのような突起もなければ、同心円状の凹凸もない。したがって、外観の仕上がりが良い。
図5に、上記実施形態のTIG溶接機およびTIGスポット溶接方法によって得られた実際の溶融凝固部WJの断面写真を示す。ここで、上側被溶接材W1は溶融メッキ鋼板、下側被溶接材W2は高張力鋼板(JAC590材)であり、上側被溶接材W1の厚さT1は1.8mm、下側被溶接材W2の厚さT2は1.4mm、トーチ電極42の口径φBは2.4mmであった。そして、上側被溶接材W1に形成された漏斗状孔60のプロファイル(図3)として、φA=5.8mm、D=1mm、α=120°、φC=2.5mm、H=0.8mmであった。
そして、得られた溶融凝固部WJにおいては、図5に示すように、おもて面(第1の面)72の直径は約8.3mm、窪みの深さは約0.76mm、第2の面78の最大深さは約2.1mm(下側被溶接材W2内の深さは約0.3mm)、接触界面のナゲット径は約2.8mmであった。
また、この実施形態におけるTIGスポット溶接方法は、上記のように溶加材を使用しない非消耗電極式であるから、溶接ヘッド部回りがシンプルで溶接作業を簡便に行うことできる。さらには、アーク放電を開始するために、高周波や高電圧を使わずにトーチ電極を被溶接材に接触させて通電を開始した後引き離してアーク放電を発生させるタッチスタート方式を用いるので、高価な高周波電源や高圧電源は不要であり、アーク溶接機のコストを下げられるという利点もある。

[他の実施形態又は変形例]
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上述した実施形態は本発明を限定するものではない。当業者にあっては、具体的な実施態様において本発明の技術思想および技術範囲から逸脱せずに種々の変形・変更を加えることが可能である。
たとえば、上記実施形態のTIG溶接機は、完全自動式であり、溶接ヘッド12のステージ18に自動位置合わせ機構(XYステージ24、θステージ26)を備え、昇降タワー30により鉛直方向でトーチ22を昇降移動させるようにしている。しかし、ステージ18を手動式の可動ステージに構成することや、あるいは固定式のステージ18上でワーク(W1,W2)の位置合わせを手動で行うことも可能である。さらには、トーチ22を手動式のトーチに代えて、上記のスポット溶接作業を手動で行うことも可能である。
また、上側被溶接材W1に形成する漏斗状孔60のプロファイルにおいても、種種の変形・選択が可能である。たとえば、すり鉢状凹部62の傾斜面を湾曲状に形成する構成や、階段状に形成する構成も可能である。あるいは、貫通孔64の口径を軸方向で適宜変える構成も可能である。上記被溶接材W1,W2の材質(溶融メッキ鋼板、高張力鋼板)は一例であり、本発明は任意の金属材料からなる被溶接材のスポット溶接に適用可能である。
10 装置本体
12 溶接ヘッド
18 ステージ
22 トーチ
40 トーチノズル
42 トーチ電極
60 漏斗状の孔
62 すり鉢状の凹部
64 貫通孔
72 溶融凝固部の第1の面
78 溶融凝固部の第2の面
1 上側被溶接材
2 下側被溶接材
WP 溶融池
WJ 溶融凝固部

Claims (11)

  1. 第1および第2の被溶接材を重ね合わせてTIG溶接法によりスポット溶接を行うTIGスポット溶接方法であって、
    重ね合わせで上になる第1の被溶接材に、そのおもて面から裏面に向かって径が次第に小さくなる凹部と、この凹部の底から裏面まで延びる貫通孔とを形成する工程と、
    前記第2の被溶接材の上に前記第1の被溶接材を重ね合わせて、トーチ電極の先端を前記第1の被溶接材の前記貫通孔の中に通して前記第2の被溶接材に接触させる工程と、
    前記第2の被溶接材に前記トーチ電極の先端が接触した状態で、前記トーチ電極の周囲にシールドガスを供給しながら、前記トーチ電極と前記第1および第2の被溶接材とを含む閉回路内で通電を開始する工程と、
    前記シールドガスの供給と前記通電を継続しながら、前記トーチ電極の先端を前記貫通孔の中で前記第2の被溶接材から上に引き離して、前記トーチ電極と前記第2の被溶接材との間でアークを発生させ、前記アークの熱により前記第2の被溶接材を溶かす工程と、
    前記シールドガスの供給と前記通電を継続しながら、前記トーチ電極の先端を前記貫通孔の上方さらには前記凹部の上方に段階的または連続的に引き上げて、前記トーチ電極と前記第1および第2の被溶接材との間でアークを発生させ、前記アークの熱によって前記第1および第2の被溶接材を溶かす工程と、
    前記アークを消滅させて前記第1および第2の被溶接材の溶融部を凝固させる工程と
    を有するTIGスポット溶接方法。
  2. 前記凹部の縁部の口径をφA、前記トーチ電極の直径をφBとすると、2φB<φA<3φBである、請求項1に記載のTIGスポット溶接方法。
  3. 前記貫通孔の口径をφCとすると、φB<φC<1.5φBである、請求項2に記載のTIGスポット溶接方法。
  4. 前記貫通孔は円筒状の開口である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のTIGスポット溶接方法。
  5. 前記凹部の径が次第に小さくなるテーパ角度をαとすると、90°<α<130°である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のTIGスポット溶接方法。
  6. 前記閉回路で通電を開始した後は、前記トーチ電極の先端が高くなるにつれて前記閉回路で流れる電流を段階的または連続的に大きくする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のTIGスポット溶接方法。
  7. 前記トーチ電極の先端を前記第2の被溶接材から引き離した後にアークを持続しながら所定の離間距離で前記トーチ電極を一定時間だけ静止させ、その後アークを持続しながら前記トーチ電極の先端をさらに上に引き上げる、請求項1〜6のいずれか一項に記載のTIGスポット溶接方法。
  8. 重ね合わせられた第1および第2の被溶接材の間に請求項1〜7のいずれか一項に記載のTIGスポット溶接方法により形成される溶接継手であって、
    溶融凝固部が、
    前記第1の被溶接材のおもて面に形成される円環状の縁部と、
    前記縁部の径方向内側で浅く窪んで前記第1の被溶接材のおもて面の一部を形成する第1の面と、
    前記縁部の径方向内側で前記第1および第2の被溶接材の内部を通って非溶融凝固部との境界面を形成する第2の面と
    を有する、溶接継手。
  9. 前記溶融凝固部の縁部は、前記第1の被溶接材のおもて面上で非溶融凝固部と面一である、請求項8に記載の溶接継手。
  10. 前記溶融凝固部の前記第2の面は、前記縁部の径方向内側の中心部が最も深くなる、請求項8または請求項9に記載の溶接継手。
  11. 前記溶融凝固部の前記第2の面は、前記第2の被溶接材の裏面の一部を形成する、請求項8〜10のいずれか一項に記載の溶接継手。
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