以下、本発明に係る現像装置および画像形成装置の好適な実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
≪画像形成装置≫
図1は、画像形成装置の具体例として、電子写真方式による4色フルカラーレーザビームプリンタの本体(以下、単に「装置本体20」という)を示す。この場合の装置本体20は、垂直方向に並設された4個の像担持体としての感光体ドラム1A,1B,1C,1Dが備わっている。以下、説明中「感光体ドラム1」と略記する。同様に以下の各部材についても代表符号で略記する。
感光体ドラム1は、矢印方向に不図示の駆動モーターにより回転駆動される。感光体ドラム1の周囲にはその回転方向に従って順にプロセス手段を構成する以下の各部材が配置されている。感光体ドラム1の表面を均一に帯電するための帯電ローラ2を有し、画像情報に基づきレーザを照射して感光体ドラム1上に静電潜像を形成する露光装置6、すなわち静電的に潜像を生成する潜像形成装置を有する。また、静電潜像を現像剤像(トナー像)として顕像化する現像装置3を有し、感光体ドラム1上のトナー像を顕像化画像として転写材(記録媒体)Pに転写するための静電搬送転写装置18が備わっている。さらに、転写後の感光体ドラム1表面に残った転写残トナーを除去するクリーニングブレード5などが備わっている。
また、各感光体ドラム1に対向して接触する位置に循環周回動する転写材搬送ベルトとしての静電搬送ベルト22が配備されている。静電搬送ベルト22の内側に当接し、4つの感光体ドラム1に対応して、転写部材としての転写ローラ4が併設される。これら転写ローラ4は感光体ドラム1と対向し、転写部を形成する。これら転写ローラ4から静電搬送ベルト22を介して正極性の電荷が転写材に印加され、この電荷による電界により、感光体ドラム1に接触中の転写材に、感光体ドラム1上の負極性トナーが転写される。
定着装置7は、転写材Pに転写された複数のトナー像を定着させるものである。感光体ドラム1上のトナー像を転写した転写材Pは、定着装置7を通過する際に、熱および圧力を印加される。これにより、複数色のトナー像が転写材P表面に永久定着される。
上記感光体ドラム1と、この感光体ドラム1に作用する上記プロセス手段であるたとえば帯電ローラ2、現像装置3、そしてクリーニングブレード5を一体的にカートリッジ化し、装置本体20に着脱自在なプロセスカートリッジ19が構成されている。
本実施形態においては、プロセスカートリッジ19はY(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),K(ブラック)の各色トナーを内包した4つのプロセスカートリッジ19A,19B,19C,19Dからなっており、全て同一の形状のものである。
プロセスカートリッジ19は、装置本体20において次のように作用する。
この場合のプロセスカートリッジ19は、半導電性の現像ローラ、あるいは表面に誘電層を形成した現像ローラを用いて感光体表面層に押し当てる構成でもって現像を行う非磁性一成分DC接触現像方式のものが例示されている。
図2は、非磁性一成分DC接触現像方式現像装置3(以下、単に「現像装置」という)を備えた装置本体を示し、この場合K(ブラック)色のプロセスカートリッジのみが図示されている。すなわち、感光体ドラム1の周囲に帯電ローラ2、現像装置3、転写ローラ4、クリーニングブレード5が設置され、帯電ローラ2と現像装置3と間の外側に露光装置6が配置されている。また、感光体ドラム1と転写ローラ4との間の転写ニップに対して転写材搬送方向の下流側には定着装置7が配置されている。
感光体ドラム1は、直径30[mm]の負帯電の有機感光体で、いずれも図示しないアルミニウム製のドラム基体上に感光体層を有しており、所定の周速で矢印方向(時計回り方向)に回転駆動する。その回転過程において接触する帯電ローラ2により負極性の一様な帯電を受ける。
帯電手段としての帯電ローラ2は、感光体ドラム1表面に回転自在に接触し、帯電バイアス電源(図示略)から印加される帯電バイアスによって感光体ドラム1を負帯電の所定電位に均一に帯電する。
(実施例1)
図3〜図6は、上記現像装置3の実施例1による構成を示す。図3は現像室撹拌部材32、トナー収容室撹拌部材34および連通口35の配置を示す。図4は図3中の符号(1)で示す長手中央の現像容器8の断面を、図5は図3中の符号(2)で示す長手端部の現像容器8の断面を、そして図6は図3中の符号(3)で示す長手端部の現像容器8の断面をそれぞれ示す。
この場合の現像装置3は、一成分現像剤としての非磁性トナーTを用いて現像を行う。現像容器8を有し、この現像容器8の開口部に感光体ドラム1に対向して配置された図中矢印で示す反時計回り方向に回転自在な現像剤担持体としての現像ローラ9が備わっている。また、現像ローラ9に圧接する回転自在なトナー供給ローラ10を有し、現像ローラ9に当接する弾性を有する規制ブレード(規制部材)11を有している。また、現像ローラ9を含む現像室(第1室)31が形成され、その第1室の内部である現像室31内の非磁性トナーTを撹拌する第1室撹拌部材32を有している。さらに、連通口35を介して現像室31に連接しているトナー収容室(第2室)33を有し、この第2室の内部であるトナー収容室33内の非磁性トナーTを撹拌する第2室撹拌部材34を備えている。規制ブレード11は、現像ローラ9とトナー供給ローラ10との圧接部に対して現像ローラ9の回転方向下流側で現像ローラ9に当接している。
トナー収容室33内の非磁性トナーTは、第2室撹拌部材34によって連通口35を通って現像室31に搬送される。第1室撹拌部材32で撹拌された非磁性トナーTは、現像ローラ9に圧接して回転するトナー供給ローラ10によって現像ローラ9の表面に供給される。現像ローラ9に供給されたトナーは現像ローラ9の回転に伴って搬送され、規制ブレード11と現像ローラ9の当接部での摩擦で電荷を付与され、現像ローラ9の表面に薄層化される。薄層化されたトナーは現像ローラ9の回転によって搬送され、感光体ドラム1との当接部(現像部)にて感光体ドラム1上に形成された静電潜像に付着して顕像化する。なお、現像ローラ9上の現像に寄与しなかったトナーは、トナー供給ローラ10で剥ぎ取られる。
つぎに、現像装置3の各部の性能仕様や寸法サイズなど具体的に示す。
非磁性トナーTを収容した現像容器8の長手方向に延在する開口部に感光体ドラム1に対向する位置に図中矢印で示す反時計回り方向に回転自在な直径16mmの現像ローラ9が配置されている。この現像ローラ9に圧接する回転自在なトナー供給ローラ10を有し、また現像ローラ9に当接する弾性を有する規制ブレード11と、非磁性トナーTを撹拌する第1室撹拌部材32などを備えている。
たとえば、直径サイズが16mmの現像ローラ9は感光体ドラム1に当接幅をもって接触し、感光体ドラム1の周速度(200mm/sec)よりも大きいたとえば周速度300mm/secで回転する。現像ローラ9の表面は非磁性トナーTとの摺擦確率を高くし、且つ非磁性トナーTを円滑に搬送すべく適度な凹凸による粗さを有している。ここでは、直径16mmで長さ240mm、そして肉厚4mmのシリコンゴム層上にアクリルウレタン系の薄層をコート成形して構成されている。現像ローラ9には現像バイアス電圧を印加する電源S1が接続され、その電源S1によって現像ローラ9に負極性の所定電位の現像バイアス電圧を印加する。
さらに、現像ローラ9は、たとえば−100Vの現像バイアス電圧が印加されたときの抵抗値を104 〜106 Ω、算術平均粗さRaが0.3〜5.0μm、硬度がアスカーC硬度で40°〜70℃(加重1kg)に調整される。抵抗値の測定は、直径30mmのアルミニウム製ローラ(図示略)と現像ローラ9を当接荷重5Nで長手方向全域に当接させ、そのアルミニウム製ローラを0.5rpsで回転させる。そして、現像ローラ9に−100Vの直流電圧を印加してアース側に10kΩの抵抗を配置する。その抵抗の両端の電圧を測定し、測定した電圧値から電流値を算出して現像ローラ9の抵抗を算出する。
また、現像ローラ9が感光体ドラム1の表面に当接する個所(現像部)に対して、現像ローラ9の回転方向の下流側に可撓性を有するシール部材23が設けられている。このシール部材23は、未現像トナーの現像容器8の内部への通過を許容すると共に、現像容器8内の非磁性トナーTが現像ローラ9の感光体ドラム1の表面との当接部に対して現像ローラ9の回転方向の下流側から漏出するのを防止する。
トナー供給ローラ10は、規制ブレード11の現像ローラ9との当接部に対して現像ローラ9の回転方向の上流側に当接して矢印で示す反時計回り方向に回転する。また、トナー供給ローラ10は、発泡骨格状スポンジ構造のものが、現像ローラ9への非磁性トナーTの供給ならびに未現像トナーの剥ぎ取りの点から好ましい。本実施形態では、芯金上にポリウレタンフォームを設けた直径16mmのトナー供給ローラ10が用いられている。トナー供給ローラ10の現像ローラ9に対する当接幅としては1〜6mmが有効であり、現像ローラ9に対してその当接部において相対速度を持たせることが好ましい。本実施形態では、現像ローラ9との当接幅を3mmに設定するが、このときのトナー供給ローラ10と現像ローラ9の線圧は40N/mである。
トナー供給ローラ10の周速度として、現像動作時に200mm/secとなるように図示しない回転駆動源から回転動力を受けて所定タイミングで回転する。トナー供給ローラ10と現像ローラ9との接触位置において、トナー供給ローラ10の回転方向は現像ローラ9の回転方向と逆方向である。トナー供給ローラ10の電位と現像ローラ9の電位は等電位である。
規制ブレード11は、現像ローラ9のトナー供給ローラ10の表面との当接部に対して、現像ローラ9の回転方向の上流側にて自由端側の先端近傍が現像ローラ9の外周面に面接触にて弾性を有して当接するよう設けられている。規制ブレード11は、シリコン、ウレタンなどのゴム材料や、バネ弾性を有するSUSまたはリン青銅の金属薄板を基体とし、現像ローラ9への当接面側にゴム材料等を接着して構成されている。本実施形態では、厚さ1.0mmの板状のウレタンゴムで形成された規制ブレード11が用いられている。また、規制ブレード11の現像ローラ9に対する当接圧は、5〜35N/m(線圧の測定は、摩擦係数が既知の金属薄板を3枚当接部に挿入し、その中央の一枚をばね計りで引き抜いた値から換算した)に設定した。規制ブレード11が現像ローラ9に当接する位置は、現像ローラ9との当接部よりも現像ローラ9の先端部がその回転方向の上流側に位置するいわゆるカウンタ方向となっている。
現像容器8内に充填されている非磁性トナーTは、非磁性一成分現像剤であって転写性に優れているものである。また、その非磁性トナーTは、転写されずに感光体ドラム1上に残存した転写残トナーをクリーニングブレード5でクリーニングする際、潤滑性が高いことから感光体ドラム1の摩耗の少ないなどの利点を有している。すなわち、球形状のトナーであって表面が平滑な非磁性トナーTが用いられている。
トナーTの形状係数として、SF−1が100〜180であり、SF−2が100〜140であるものを用いている。なお、このSF−1、SF−2は、日立製作所FE−SEM(S−800)を用いてトナー像を無作為に100個サンプリングした。その画像情報をインターフェイスを介してニコレ社製の画像解析装置(Luzex3)に導入して解析を行い、下式より算出し得られた値を定義している。
SF−1=(MXLNG)2 /(AREA×(π/4)×100) …(1)
SF−2=(PERI)2 /(AREA×(π/4)×100) …(2)
ここで、AREAはトナー投影面積、MXLNGは絶対最大長、PERIは周長である。
この非磁性トナーTの形状係数SF−1は球形度合を示し、100から大きくなるにつれて球形から徐々に不定形となる。また、SF−2は凹凸度合を示し、100から大きくなるにつれてトナー表面の凹凸が顕著になる。
非磁性トナーTの製造方法としては、上記形状係数(SF−1、SF−2)の範囲内になれば、いわゆる粉砕方法による製造方法がある。たとえば、そうした製造方法は特開昭36−10231号公報や特開昭59−53856号公報に開示されている。すなわち、懸濁重合方法を用いて直接トナーを生成方法、単量体には可溶で得られる重合体が不溶な水系有機溶剤を用い直接トナーを生成する分散重合方法がある。あるいは水溶性極性重合開始剤存在下で直接重合しトナーを生成するソープフリー重合方法に代表される乳化重合方法等を用いてトナーを製造することも可能である。
この実施例1では、非磁性トナーTの形状係数SFー1を100〜180に、SF−2を100〜140に容易にコントロールでき、比較的容易に粒度分布がシャープで粒径が3〜9μmの微粒子トナーが得られる常圧下での、又は加圧下での懸濁重合方法を用い、モノマーとしてスチレンとn−ブチルアクリレート、荷電制御剤としてサリチル酸金属化合物、極性レジンとして飽和ポリエステル、更にワックスと着色剤を加え、着色懸濁粒子を製造した。
そして、トナー母体100重量部に対して、疎水性シリカを1重量部外添することによって、上述したような転写性に優れた負極性の非磁性トナーTを製造した。この非磁性トナーTのトナー体積抵抗値としては1014Ω・cm以上である。
非磁性トナーTの体積抵抗値の測定条件は、直径φ:6mm、測定電極板面積:0.283cm2 、圧力:1500gの錘を用い、圧力:96.1kPa、測定時の粉体層厚:0.5〜1.0mmとする。400Vの直流電圧を微小電流計(YHP4140pA METER/DC VOLTAGE SOUCE)で電流値を測定し、測定した電流値より体積抵抗値(比抵抗)を算出する。また、この非磁性トナーTの凝集度は、25%である。
非磁性トナーTの凝集度測定には以下の方法を用いた。
本実施形態における凝集度は、従来公知のパウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製PT−E型)により以下の方法をとって測定した。測定環境を23℃,50%RHとする。(1)トナー5.0gを正確に計り取る。(2)振動台に、上から100メッシュ(目開き150μm)、200メッシュ(目開き75μm)、400メッシュ(目開き38μm)のふるいを重ねてセットする。(3)精秤した5.0gのトナーを静かにふるい(100メッシュ上)にのせ、振動系に18Vの電圧を印加して15秒間振動させる。(4)静かに各ふるいの上に残ったトナー量を精秤する。
凝集度(%)=x+y+z
x=100×((100メッシュ上に残ったトナー量[g])/5)
y=100×((200メッシュ上に残ったトナー量[g])/5)×3/5
z=100×((400メッシュ上に残ったトナー量[g])/5)×1/5
また、トナーの安息角は23°である。このトナーの安息角測定には、以下の方法を用いた。トナー150gを目開き710μmのメッシュを通して直径8cmの円形テーブルの上にトナーを堆積させる。このとき、テーブルの端部からトナーが溢れる程度に堆積させる。このときのテーブル上に堆積したトナーの稜線と円形テーブル面との間に形成された角度をレーザー光で測定することで安息角とした。
この実施例1においては、トナー結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、40〜70℃であることがよい。Tgが40℃未満の場合にはトナーの保存安定性や耐久安定性の面から問題が生じやすく、70℃を超える場合にはトナーの定着点の上昇をもたらす。フルカラー画像を形成するためのカラートナーの場合においては各色トナーの定着時の混色性が低下し色再現性にやや劣り、OHP画像の透明性が低下する。特に、45〜65℃であることが好ましい。本実施例ではTgが60℃のトナーを用いた。
トナーに含まれるワックスの最大吸熱ピークは、45〜75℃であることが好ましい。ワックスの最大吸熱ピークが45℃未満の場合、本発明に用いられる樹脂のガラス転移温度よりも低くなるために、高温環境に放置した際にトナー表面に溶け出すため、耐ブロッキング性能が大幅に悪くなる。一方、最大吸熱ピークが75℃より大きい場合、トナー定着溶融時にワックスが迅速に溶融トナー表面に移行できず、離型性が悪くなるために、高温オフセットが発生し易くなる。特に、50〜70℃であることが好ましい。本実施例では、最大吸熱ピークが65℃のトナーを用いた。
なお、実施例1におけるTgの測定には、たとえばパーキンエルマー社製示差走査熱量計「DSC−7」を用いて、ASTM D3418−82に準じて測定する。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。測定試料は2〜10mg、好ましくは5mgを精密に秤量する。測定試料はアルミニウム製パンを用い対照用に空パンをセットし、測定温度範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで常温常湿下測定を行う。2回目の昇温過程で得られる、温度30〜200℃の範囲におけるDSC曲線をもって解析を行う。
ガラス転移温度(Tg)については、得られたDSC曲線より中点法で解析を行った値を用いる。また、ワックスの融点ついては、得られたDSC曲線の吸熱メインピークの温度値を用いる。
つぎに、実施例1として示した現像装置3の現像動作について説明する。
現像動作時には、現像容器8内の非磁性トナーTは、第1室撹拌部材32の回転に伴いトナー供給ローラ10側に送られる。この非磁性トナーTは、トナー供給ローラ10の矢印で示す反時計回り方向への回転によって現像ローラ9近傍に搬送される。そして、現像ローラ9とトナー供給ローラ10との当接部において、トナー供給ローラ10上に担持されている非磁性トナーTは、現像ローラ9と摺擦されることによって摩擦帯電を受け、現像ローラ9上に付着する。
そして、現像ローラ9の矢印で示す反時計回り方向への回転に伴い、非磁性トナーTが規制ブレード11の圧接下に送られ、現像ローラ9上に薄層形成され、感光体ドラム1との対向部である現像部へ搬送される。本実施の形態では、非磁性トナーTの良好な帯電電荷量として−30〜−5μC/gとなるように設定している。
この現像部において、現像ローラ9上に薄層形成された非磁性トナーTが、−300Vの現像バイアスが印加された現像ローラ9によって感光体ドラム1上に形成されている静電潜像に付着し、トナー像として現像される。
また、現像ローラ9上の現像に寄与しなかったトナーは、トナー供給ローラ10との当接部において現像ローラ9表面から剥ぎ取られる。この剥ぎ取られたトナーの大部分は、トナー供給ローラ10の回転に伴い搬送され現像容器8内の非磁性トナーTと混ざりあい、非磁性トナーTの帯電電荷が分散される。そして、同時にトナー供給ローラ10の回転により現像ローラ9上に新たな非磁性トナーTが供給され、上述した現像動作を繰り返す。
つぎに、この実施例1において、第1室である現像室31の第1室撹拌部材32と、第2室(現像剤収容室)であるトナー収容室33の第2室撹拌部材34について説明する。
図3〜図6で示す第1室撹拌部材32と第2室撹拌部材34には、撹拌軸39に厚さ100μmのPPSシートを貼り付けた部材を用いた。
図3に示すように、第1室撹拌部材32のPPSシート長手端部から現像室の側壁36までの長手距離は20mmである。第2室撹拌部材34のPPSシート長手端部からトナー収容室の側壁37までの長手距離は2mmである。連通口35のうち、現像室側壁36から最も離れている位置から現像室側壁36までの長手距離は10mmである。現像室側壁36とトナー収容室側壁37の長手位置は同一である。撹拌軸39のみで、PPSシートが貼られていない長手位置においては、トナーを撹拌する能力が無い。したがって、撹拌能力がある第1室撹拌部材32の長手位置と、連通口35が所在する長手位置は異なり、撹拌能力がある第2室撹拌部材34の長手位置と、連通口35の長手位置は一部が重なっている。
図6は、第2室撹拌部材34の長手位置と、連通口35の長手位置が重なっている長手位置の断面図である。図6において、連通口35の最も低い部位を中心とするたとえば半径Rの円と第1室とが重なり合う空間の位置をA、現像室31内で最も低い位置をE、Aの高さをhA、Eの高さをhEとすると、(hA−hE)=10mmであり、
hA > hE
を満たす。
転写ローラ4は感光体ドラム1と対向し、静電搬送ベルト22を介して、感光体ドラム1に所定の押圧力で接触して転写部を形成する。転写ローラ4には、転写バイアス電源(不図示)から転写バイアスが印加される。これにより転写ローラ4から静電搬送ベルト22を介して正極性の電荷が転写材Pに印加され、この電荷による電界により、感光体ドラム1に接触中の転写材Pに、感光体ドラム1上の負極性トナーが転写される。
クリーニングブレード5の材料としては、シリコーンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム等のゴム弾性を有するものが挙げられるが、耐摩耗性や永久変形性などの観点から、ポリウレタンゴムが好ましい。
このクリーニングブレード5の先端部は、矢印の方向に回転する感光体ドラム1表面に対し、回転方向下流に向かって徐々に離間する方向、つまり感光体ドラム1の回転方向と対向した、所謂カウンタ方向に所定の圧力をもって当接されている。
そしてクリーニングブレード5の先端部には、回転する感光体ドラム1表面との摩擦力を低減することを目的とし、予め潤滑剤としての微粉体が塗布されることで付与されている。
微粉体としては、様々な材質、形状のものが提案されている。本実施の形態においては、クリーニングブレード5の先端部分に予め塗布される潤滑剤として次を用いた。球形を有する平均粒径3μm、円形度0.93のシリコーン樹脂粒子(商品名トスパール:東芝シリコーン社製)と、不定形、具体的には鱗片形状を有する平均粒径2μmのフッ化黒鉛(商品名セフボン:セントラル硝子社製)と、を所定の割合で混合したものである。円形度に関しては、例えば東亜医用電子社製フロー式粒子像分析装置FPIA−1000等を用いて測定することが可能である。微粉体を塗布する方法としては、これら単一物質をアルコール等の揮発性液体に分散し、この溶液をクリーニングブレード5の先端部に塗布する方法を用いた。なお、クリーニングブレード5のエッジ先端からの塗布幅としては、概ね1mmとした。クリーニングブレード5は、転写後に感光体ドラム1表面に残った転写残トナーを除去する。
露光装置6は、いずれも図示しないレーザドライバ、レーザダイオード、ポリゴンミラー14などを備えている。レーザドライバに入力される画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して変調されたレーザ光はレーザダイオードから出力される。その出力されたレーザ光は高速回転するポリゴンミラー14でレーザ光を走査し、光学レンズ系15を介して感光体ドラム1表面を画像露光Lして画像情報に対応した静電潜像を形成する。
定着装置7は、回転自在な定着ローラ7aと加圧ローラ7bを有しており、定着ローラ7aと加圧ローラ7b間の定着ニップにてシートPを挟持搬送しながら、シートPの表面に転写されたトナー像を加熱、加圧して熱定着する。
以上の構成から、装置本体20では次のように画像形成動作が行われる。
画像形成オンの作動信号が送信されると、感光体ドラム1は回転駆動源(図示略)から回転動力を受けて図中矢印で示す時計回り方向にたとえば周速度200[mm/s]で回転する。そして、帯電ローラ2にはたとえば−1300Vの帯電バイアス電圧であるDC電圧が印加され、帯電ローラ2の表面を一様に帯電する。帯電された感光体ドラム1上に露光装置6から画像露光Lが照射され、入力される画像情報に応じた静電潜像が形成される。その際、感光体ドラム1上の画像露光Lがされない部分の暗部電位はたとえば−700V、画像露光Lされた部分の明部電位は−150Vとなるように露光装置6のレーザパワーが調整されている。
現像装置3では、現像ローラ9によって感光体ドラム1上のかかる静電潜像をトナー像として可視化する。すなわち、現像ローラ9には感光体ドラム1の帯電極性(負極性)と同極性の現像バイアス電圧が印加され、感光体ドラム1の帯電極性(負極性)と同極性に帯電された一成分現像剤としての後述する非磁性トナーTを付着させて反転現像する。そのようにして静電潜像をトナー像として可視化する。
感光体ドラム1上のトナー像がその感光体ドラム1と転写ローラ4との間の転写ニップに達すると、そのタイミングに合わせて記録用紙などのシートPがピックアップローラ16によって一枚ずつ給送される。給送されてきたシートPはレジストローラ(図示略)などによって転写ニップに送り込まれる。非磁性トナーTと逆極性(正極性)の転写バイアス電圧が転写ローラ4に印加され、感光体ドラム1上のトナー像が転写される。トナー像が転写されたシートPは定着装置7に搬送され、定着ローラ7aと加圧ローラ7bとの間の定着ニップにてトナー像をシートPに加熱しかつ加圧して永久定着させ、熱定着を終えると排紙トレイ17上へと排出される。また、トナー像転写後の感光体ドラム1表面に残留している転写残トナーは、クリーニングブレード5によって除去されて、廃トナー収納容器13内に回収される。
つぎに、上記実施例1の比較例として以下数例を示す。
(比較例1・1/比較例1・2/比較例1・3)
図7は、第1室である現像室31と、第2室であるトナー収容室33が長手全域にわたって連通口35を介して連続した構造において、h=10mmの場合を比較例1・1、h=3mmの場合を比較例1・2、h=1mmの場合を比較例1・3として示す。
(比較例1・4/比較例1・5/比較例1・6)
図8,図9,図10は、現像室31とトナー収容室33が長手全域にわたって連通口35を介して連続した構造における比較例1・4、比較例1・5、比較例1・6を示す。
(比較例1・7)
図11は、比較例1・7の断面図を示す。現像室31とトナー収容室33が長手全域にわたって連通口35を介して繋がっており、その連通口に開閉部材38を設けている。開閉部材38は上端が固定されて下端が開閉する機構を備えている。開閉部材38が閉まっているときはトナー収容室33から現像室31へのトナーの移動はない。撹拌部材12に押されて開閉部材38が開いているときはトナー収容室33から現像室31へのトナー移動があり、同時に現像室31からトナー収容室33へのトナー移動がある。
(比較例1・8)
図12は、比較例1・8を示す。第1室撹拌部材32のPPSシート長手端部から、現像室側壁36までの長手距離は20mm、第2室撹拌部材34のPPSシート長手端部からトナー収容室側壁37までの長手距離は2mmとした。連通口35のうち、現像室側壁36から最も離れている位置から、現像室側壁36までの長手距離は30mmである。ここで、現像室側壁36とトナー収容室側壁37の長手位置は同一である。このように、撹拌能力を持つ第1室室撹拌部材32の長手位置と、連通口の長手位置の一部が重なっている。
(比較例1・9)
図13は、比較例1・9の断面図を示し、この場合は第2室撹拌部材34を有していない。ここで、連通口の最も低い位置をA、トナー収容室底面の最も高い位置をFとすると、AFは直線であり、AFと水平線のなす角をα、トナーの安息角をθとすると、
α=30°、θ=23°であり、α>θを満たす。
(比較例1・10)
図14は、比較例1・10の断面図を示し、この場合は第1室撹拌部材32を有していない。ここで、連通口の最も低い位置をG、トナー供給ローラ付近の現像室底面をHとすると、GHは直線であり、GHと水平線のなす角をβ、トナーの安息角をθとすると、
β=30°、θ=23°であり、β>θを満たす。
ベタ画像先端反射濃度と比べてベタ画像後端反射濃度が低下せず、現像室で使われたトナー量だけ、トナー収容室から現像室へ新しいトナーを補給できることを確認するために、以下の方法で各々の現像装置を評価した。
現像装置へのトナーの充填方法を説明する。現像室にシアントナーを100g充填した。入りきらない分は、トナー収容室に入れた。その後で、トナー収容室にマゼンタトナーを100g充填した。入りきらない場合は、最大限マゼンタトナーが入るところまで充填した。
(評価1):現像室トナー混入
現像室からトナーが消費されない状態で、トナー収容室(第2室)から現像室(第1室)にトナーが混入するかどうかを確認した。現像室からトナーが消費されない状態で現像装置を2時間駆動し、駆動開始から0分、10分、30分、60分、120分の各時間経過ごとにベタ画像を出力し、ベタ画像中のM(マゼンタ)トナーとC(シアン)トナーの混色を評価した。評価基準は以下の通りである。
シアントナーのみのベタ画像のマゼンタ反射濃度をD1、各々の時間におけるベタ画像のマゼンタ反射濃度をD2とする。(D2−D1)の最大値が0.1未満ならば「○」、(D2−D1)の最大値が0.1以上0.2未満ならば「△」、(D2−D1)の最大値が0.2以上ならば「×」の各記号で評価を表した。
(評価2):ベタ先後端濃度差
評価1の終了後に、ベタ画像を出力し、ベタ画像後半で反射濃度が低下しないかどうかを確認した。画像の反射濃度は「マクベス反射濃度計」(マクベス社製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定した。
具体的には、ベタ画像先端50mmの平均濃度と、ベタ画像後端50mmの平均濃度の差を算出した。評価基準は以下の通りである。
シアンの反射濃度差が0.1未満ならば「○」、シアンの反射濃度差が0.1以上0.2未満ならば「△」、シアンの反射濃度差が0.2以上ならば「×」の各記号で評価を表した。
(評価3):トナー収容室残量
評価2の終了後にベタ画像を連続出力して、ベタ画像が印字できなくなるまでトナーを消費する。印字できなくなった時の現像装置のトナー残量を測定した。評価基準は以下の通りである。
トナー残量が30g未満ならば「○」、トナー残量が30g以上50g未満ならば「△」、トナー残量が50g以上ならば「×」の各記号で評価を表した。
上記評価1〜評価3の全てがクリアできれば、高流動性トナーを用いた場合でも、簡易な構成で、現像室からトナー収容室へのトナー移動が無い。また、現像室で使われたトナー量だけトナー収容室から現像室へ新しいトナーを補給することと、トナー収容室内に未使用トナーを残さないことを同時に実現できる。また、ベタ画像先端反射濃度と比べてもベタ画像後端反射濃度が低下しないことも実現できる。
そこで、〔表1〕として図15に示す総合評価を行う。この総合評価の評価基準はつぎのとおりである。
評価1、評価2、評価3の全てが「○」であるならば総合評価は「○」である。評価1、評価2、評価3のいずれかが「△」であり、他が「△」または「○」であるならば総合評価は「△」である。そして、評価1、評価2、評価3のいずれかが「×」であるならば総合評価は「×」である。実施例1と、比較例1・1〜比較例1・10の評価結果を図15の〔表1〕に示す。
それによると、実施例1の総合評価は「○」であった。すなわち、高流動性トナーを用いた場合でも、簡易な構成で現像室からトナー収容室へのトナー移動がみられない。そしてさらに、現像室で使われたトナー量だけトナー収容室から現像室へ新しいトナーを補給することと、トナー収容室内に未使用トナーを残さないことを同時に実現できる。
比較例1・1〜比較例1・6と、比較例1・8のように、第1室撹拌部材32の長手位置と、連通口の長手位置が重なる場合、現像室内トナーとトナー収容室内トナーの混合が発生する。したがって、トナー収容室内のトナーを新しい状態に保てない。また、比較例1・7のように、連通口に開閉弁をつけても、現像室内トナーとトナー収容室内トナーの混合が発生する。したがって、トナー収容室内のトナーを新しい状態に保てない。また、比較例1・9のように、トナー収容室内に撹拌部材を持たない場合、トナー収容室の底面を安息角以上に設定しても、壁面にトナーが付着するため、自重のみでトナーを現像室に搬送することはできない。したがって、トナー収容室内に多くの未使用トナーを残す。同様に、比較例1・10のように、現像室内に撹拌部材を持たない場合、現像室の底面を安息角以上に設定しても、壁面にトナーが付着するため、自重のみでトナーをトナー供給ローラに搬送することはできない。したがって、ベタ画像の先端と後端で濃度差が発生し、現像室内に多くの未使用トナーを残す。
このように、比較例1・1〜比較例1・10によって比較を試みた場合でも、高流動性トナーを用いた場合でも、簡易な構成で、現像室からトナー収容室へのトナー移動が無い。また、現像室で使われたトナー量だけトナー収容室から現像室へ新しいトナーを補給することと、トナー収容室内に未使用トナーを残さないことを同時に実現できない。
そこで、高流動性トナー入りの実施例1の現像装置を用いて、印字率1%の文字画像を2枚印字したら5秒停止する耐久試験を行ったところ、転写効率が安定し、画質を安定にすることができた。これが意味するところは、常にトナー収容室から現像室へ新しいトナーが補給されていることを示す。すなわち、トナー収容室内のトナーは新しい状態を保持しており、現像室からトナー収容室へのトナー移動が無いことを示す。
また、高流動性トナー入りの比較例1・1〜比較例1・4の現像装置を用いて、印字率1%の文字画像を2枚印字したら5秒停止する耐久試験を行ったところ、転写効率が徐々に落ち、画質の劣化を防止することができなかった。これが意味するところは、トナー収容室から現像室へ新しいトナーが補給されていないことを示す。すなわち、トナー収容室内のトナーは新しい状態を保持できず、現像室からトナー収容室へのトナー移動が有ることを示す。
以上のように、現像装置内に現像室と、連通口を介して現像室と連通しているトナー収容室と、第1室撹拌部材と、第2室撹拌部材とを備えている場合に、第1室撹拌部材の長手位置と連通口の長手位置は異なる。また、第2室撹拌部材の長手位置と連通口の長手位置は一部が重なる。連通口が存在する長手位置において連通口で最も低い位置をA、現像室内で最も低い位置をE、Aの高さをhA、Eの高さをhEとすると、
hA>hE
を満たす実施例1を実施することにより、高流動性トナーを用いた場合でも、簡易な構成で、現像室からトナー収容室へのトナー移動がみられない。そして、現像室で使われたトナー量だけトナー収容室から現像室へ新しいトナーを補給することと、トナー収容室内に未使用トナーを残さないことを同時に実現できる。
(実施例2)
実施例1では、連通口で最も低い位置をAとすると、現像室内で最も低い位置Eはほぼ第1室撹拌部材32の直下であり、AE間の現像室底面はAからEに下る傾斜になっている。このような場合、位置Aに到達したトナーは、位置Eに向かって自重で移動することができる。
しかし、図16に示すように、位置Eに向かって自重で移動できる位置Fが、位置Aから遠い場合、トナーは自重で移動することが困難になる。
実施例1では、N/N環境(温度23℃湿度50%RH)でのみ試験を行ったが、H/H環境(温度30℃湿度80%RH)やL/L環境(温度15℃湿度10%RH)では、トナーの凝集度は変化する。各々の環境におけるトナー凝集度でも性能を発揮できるように、現像装置を設定しなければならない。
以下で、位置Fと位置Aの距離を変化させて、トナーが自重で現像室内に移動できるか否かを、N/N環境(温度23℃湿度50%RH)、H/H環境(温度30℃湿度80%RH)、L/L環境(温度15℃湿度10%RH)で確認した。
図16は、実験例の長手端部の断面図を示す。実施例1と同様に、撹拌能力がある第1室撹拌部材32の長手位置と、連通口の長手位置は異なり、撹拌能力がある第2室撹拌部材の長手位置と、連通口の長手位置は一部重なっている。ここで、AFは現像室底面であり、AFは直線であり、AFと水平線のなす角は0°である。トナーは位置Fに到達すれば、位置Eに向かって自重で移動できる。
線分AF=5mm、10mm、15mm、20mmの4条件で、実施例1で行った現像装置評価を実施した。
ここで、N/N環境、H/H環境、L/L環境の全てが「○」であるならば、評価は「○」である。N/N環境、H/H環境、L/L環境の一つが「△」で、他が「△」または「○」であるならば、評価は「△」である。そして、N/N環境、H/H環境、L/L環境のいずれかが「×」であるならば、評価は「×」とした。その評価結果を図17に〔表2〕として示す。
AF=5mm、10mmの時には、全ての環境で連通口付近のトナーが自重で現像室内に移動できる。この場合、トナー収容室から現像室にトナーを送り込むことができる。したがって、トナー収容室内にトナーを残さない。
これに対して、AF=15mm、20mmでは、連通口付近のトナーが自重で現像室内に移動できない環境がある。この場合、トナー収容室から現像室にトナーを送り込むことができない。したがって、トナー収容室内に多くの未使用トナーを残す。
すなわち、連通口が所在する長手位置のうち、少なくとも1個所の長手位置において、連通口で最も低い位置をAとし、Aの最下端の高さ寸法をhAとする。その場合、位置Aを中心とした半径10mmの球内と第一室が重なり合う空間に、hAより低い空間を含むことを満たす。その場合に、H/H環境(温度30℃湿度80%RH)からL/L環境(温度15℃湿度10%RH)まで高流動性トナーを用いた場合でも、簡易な構成で、現像室からトナー収容室へのトナー移動が無い。また、現像室で使われたトナー量だけトナー収容室から現像室へ新しいトナーを補給することと、トナー収容室内に未使用トナーを残さないことを同時に実現できる。
(実施例3)
撹拌部材は、撹拌軸にPPSシートを貼り付けた部材であり、PPSシートが付いている長手位置は撹拌能力があり、付いていない長手位置は撹拌能力が無い。
実施例1では、第1室撹拌部材32に撹拌能力がある長手位置と連通口の長手位置とは異なり、第2室撹拌部材34に撹拌能力がある長手位置と、連通口の長手位置は、一部が重なる例を挙げた。これは、連通口が存在する全ての長手位置において、第1室撹拌部材32は、連通口近傍のトナーを撹拌することができないことを意味する。さらに、連通口が存在する長手位置のうち、少なくとも一ヶ所の長手位置において、第2室撹拌部材34は、連通口近傍のトナーを撹拌することができることを意味する。連通口近傍のトナーを撹拌することができるか否かは、撹拌部材と連通口の最短距離に依存する。
この実施例3においては、撹拌部材と連通口の最短距離と、撹拌能力の関係について記載する。
第1室撹拌部材32と連通口の最短距離をL1、第2室撹拌部材34と連通口の最短距離をL2として、L1=0mm、5mm、10mmの3条件、L2=0mm、5mm、10mmの3条件、合計3×3=9通りの条件を設定する。これらの条件でもってトナー攪拌能力を確認するために実施例1で試みた現像装置評価を実施した。なお、L1、L2はPPSシートの長さを変えて調整した。この実施例3における3・1〜3・4の4通りと、比較例3・1〜3・5との評価結果を図18に〔表3〕として示す。
評価結果では、連通口が存在する全ての長手位置において、第1室撹拌部材32と連通口の最短距離が設定長さの5mmより長い。連通口が所在する長手位置のうち少なくとも1個所の長手位置に、第2室撹拌部材34と連通口の最短距離が設定長さよりも短い5mm以下であることを満たすようにする。そのようにすることで高流動性トナーを用いた場合でも、簡易な構成で、現像室からトナー収容室へのトナー移動がみられない。そして、現像室で使われたトナー量だけトナー収容室から現像室へ新しいトナーを補給することと、トナー収容室内に未使用トナーを残さないことを同時に実現できる。但し、連通口の底面の傾斜角や、連通口近傍の現像室底面の傾斜角、連通口近傍のトナー収容室底面の傾斜角によって、第1室撹拌部材32と連通口の最短距離の適切な値や、第2室撹拌部材34と連通口の最短距離の適切な値は変わる。
たとえば、連通口の底面の傾斜角、連通口近傍の現像室底面の傾斜角、連通口近傍のトナー収容室底面の傾斜角が、トナーが自重でトナー収容室から現像室側に移動する角度になっている場合、第1室撹拌部材32と連通口の最短距離を5mmより短くしても良い。また、第2室撹拌部材34と連通口の最短距離を5mmより長くしても良い。
(実施例4)
次に、連通口の長手位置と、第1室撹拌部材32の長手位置の関係により、トナー収容室から現像室へのトナー補給がどのように変化するかを示す。
図19は、第1室撹拌部材32の撹拌軸を含み、水平線に直交する平面図を示す。また、図20に示す連通口のうち、最寄りの現像室の側壁(第1室の側壁)から最も離れている長手位置における断面図を示す。
第1室撹拌部材32のうち、最寄りの現像室側壁から最も近い長手位置で、第1室撹拌部材32直下の現像室底面をBとし、位置Bの高さをhBとする。実施例1中のhEとhBは同じである。連通口のうち、最寄りの現像室側壁から最も離れている長手位置で、最も低い位置をCとし、位置Cの最下端の高さ寸法をhCとする。実施例1中のhAとhCは同じである。
また、現像室側壁から位置Cまでの長手距離をLCとし、第1室撹拌部材32の端部から現像室側壁までの長手距離をLBとし、トナーの安息角をθとする。実施例1では、(hC−hB)=10mm、(LB−LC)=10mmの例を挙げた。実施例1で用いたトナーの安息角θは23°である。
トナー撹拌及び補給能力を確認するために、(LB−LC)=0mm、5mm、10mm、20mm、30mmの5条件で、実施例1で行った現像装置評価を実施した。なお、LCは固定で、LBのみ変化させ、条件を変更した。その結果を〔表4〕として図21に示す。ここで、(hC−hB)/tanθ=23.56である。
評価結果より、関係式tanθ ≦ (hC−hB)/(LB−LC)5 ≦ (LB−LC)を満たすようにする。そうすることで高流動性トナーを用いた場合でも、簡易な構成で、現像室からトナー収容室へのトナー移動がみられない。そして、現像室で使われたトナー量だけトナー収容室から現像室へ新しいトナーを補給することと、トナー収容室内に未使用トナーを残さないことを同時に実現できる。
ここで、tanθ ≦ (hC−hB)/(LB−LC)の意味を説明する。連通口近傍の現像室長手端部に堆積したトナー溜まりは、端部から中央に向かって下る傾斜を形成する。現像室長手内側でトナーが消費されたときに、トナーの安息角にしたがって、現像室長手端部に堆積したトナー溜まりの一番上の部分が内側に移動する。現像室長手端部に堆積したトナー溜まりの端部から中央への最大傾斜は、現像室内にトナーが無くなった時かつ、現像室長手端部にトナーが最大限溜まったときである。現像室長手端部にトナーが溜まった状態を図19に示す。
連通口のうち、最寄りの現像室側壁から最も離れている長手位置において、第1室撹拌部材32の撹拌軸真下で、トナー溜まりの最も高い位置をDとした。
位置Dの高さをhDとすると、少なくとも、(hD−hC)≒0であり、通常は、(hD−hC)≧0を満たすこと、つまり最下端の高さ寸法と同等または小さいことを確認した。すなわち、線分BDの水平線に対する傾斜角が、現像室長手端部に堆積したトナー溜まりの端部から中央への最大傾斜角となる。
tanθ≦(hC−hB)/(LB−LC)は、現像室長手端部に堆積したトナー溜まりの端部から中央への最大傾斜角が、トナー安息角より大きいことを示す。また、5>(LB−LC)の意味を説明する。これは、第1室撹拌部材32と連通口の長手位置が近すぎると、一部の連通口近傍の現像室長手端部にトナー溜まりを形成することができず、現像室からトナー収容室へのトナー移動が起こることを示す。したがって、5≦(LB−LC)を満たすことで、全ての連通口近傍の現像室長手端部にトナー溜まりを形成することができ、現像室からトナー収容室へのトナー移動が起こることを防止できる。
(実施例5)
実施例5では、連通口の形状に関して記載する。現像装置内で、連通口が存在する長手端部の断面図を図22に、現像ローラ側から見た連通口を図23に示す。連通口の幅(壁の厚み)をw、連通口高さをh、連通口長さ(連通口の長手長さ)をLと規定する。
実施例1では、w=1mm、h=5mm、L=10mmで、(LB−LC)=10mm、
トナー凝集度=25%、トナー安息角=23°の例を挙げた。しかし、必ずしもこの限りではない。実施例1から、w=1mm、5mm、15mm、20mmの4条件変化させて、実施例1で行った現像装置評価を実施した。図24に〔表5〕として評価結果を示す。
評価結果より、wは15mm以下を満たすことで、トナー収容室内のトナーを全て現像室に送ることができる。wの下限は、現像室とトナー収容室を仕切る壁の強度の設定値で決められる。実施例1から、h=0.5mm、1mm、5mm、15mm、20mmの5条件変化させて、実施例1で行った現像装置評価を実施した。図25に〔表6〕として評価結果を示す。
評価結果より、hは1mm以上15mm以下を満たすことで、高流動性トナーを用いた場合でも、簡易な構成で、現像室からトナー収容室へのトナー移動がみられなない。そして、現像室で使われたトナー量だけトナー収容室から現像室へ新しいトナーを補給することと、トナー収容室内に未使用トナーを残さないことを同時に実現できる。実施例1から、L=1mm、3mm、5mm、10mmの4条件変化させて、実施例1で行った現像装置評価を実施した。図26に〔表7〕としてその評価結果を示す。評価結果より、Lは3mm以上を満たすことで、トナー収容室内のトナーを新しい状態に保ち、トナー収容室内のトナーを全て現像室に送ることができる。
(実施例6)
実施例6では、画像印字領域の長手位置と、第1室撹拌部材32の長手位置の関係により、ベタ画像先後端濃度差がどのように変化するかを示す。画像印字領域の長手左端をP、長手右端をT、第1室撹拌部材32の長手左端をQ、長手右端をRとし、PQ=RTとする。
実施例1では、PQ=0mmに設定した。この実施例6では、PQ=10mm、20mm、30mmでベタ画像先後端濃度差を確認した。但し、(LB−LC)=10mmに保つように、連通口幅Lを変更した。その他の設定は実施例1と同様である。評価結果を図27に〔表8〕として示す。それによれば、線分PQが長いほど、ベタ画像の長手端部において、ベタ画像先後端濃度差が発生した。したがって、線分PQ ≦ 20mm かつ、線分RT≦20mmを満たす場合には、ベタ画像の長手全領域で、ベタ画像先後端濃度差が0.2未満である。
(実施例7)
実施例7では、第1室撹拌部材32の先端とトナー供給ローラ表面の距離により、ベタ画像先後端濃度差がどのように変化するかを示す。第1室撹拌部材32とトナー供給ローラの最近接距離をL4とする。実施例1では、L4=5mmに設定した。それに対して、実施例7では、L4=1mm、5mm、10mm、15mmでベタ画像先後端濃度差を確認した。その他の設定は実施例1と同様である。評価結果を図28に〔表9〕として示す。したがって、L4≦10mmを満たす場合には、ベタ画像先後端濃度差が0.2未満である。
(実施例8)
実施例1では、第1室が現像ローラを含む現像室、第2室がトナー収容室である例を挙げた。この場合、現像装置内の部屋数を最小の2つにでき、簡易な構成にできる。但し、必ずしもこの限りではない。例えば、現像室とトナー収容室の間にトナー撹拌室を設けて、第1室をトナー撹拌室、第2室をトナー収容室としてもよい。この場合、トナー撹拌室内において、現像室内の現像ローラにコートされた履歴を持ったトナーと、トナー収容室内の現像ローラにコートされた履歴を持たないトナーを均一に混ぜることができ、濃度ムラの少ない画像を出力できる。
(実施例9)
実施例1では、トナー凝集度が25%のトナーを用いたが、本発明に適したトナー凝集度の範囲を以下で説明する。図29に〔表10〕として示すように、トナー凝集度3%、5%、10%、25%、40%、50%の6種類のトナーを用いて、実施例1で行った現像装置評価を実施した。但し、新たにクリーニング不良も評価した。評価方法を以下に示す。
評価4:クリーニング不良ベタ画像出力時に、クリーニングブレードをすり抜けた場合に生じる縦スジ状の画像不良を評価した。評価基準は以下の通りである。画像不良が発生しない場合は「○」、画像不良が軽微に発生した場合は「△」、そして画像不良が著しく発生した場合は「×」の各記号で評価を表す。その評価結果を〔表10〕に示す。
評価結果から、トナー凝集度は5%以上40%以下を満たすことで、高流動性トナーを用いた場合でも、簡易な構成で、現像室からトナー収容室へのトナー移動がみられない。そして現像室で使われたトナー量だけトナー収容室から現像室へ新しいトナーを補給することと、トナー収容室内に未使用トナーを残さないことを同時に実現できる。
(実施例10)
実施例1では、非磁性一成分現像剤を用いた。これにより、部材の少ない簡易な現像装置を使うことができる。但し、必ずしもこの限りではない。磁性一成分現像剤を用いた現像装置にも適用できる。また、キャリアとトナーを混合した二成分現像剤を用いた現像装置に、本発明を適用してもよい。この場合、現像室内に長く滞留したキャリアを排出するための排出口を設けることが好ましい。
(実施例11)
実施例1では、連通口の最も低い位置の高さ>トナー収容室の最も低い位置の高さを満たす例を挙げた。しかし、必ずしもこの限りではない。通常、トナー収容室内のトナーを十分に撹拌すれば、空気を含んでトナーの流動性が上がり、トナーの自重で、トナー収容室の最も低い位置に移動しやすくなる。さらに、連通口の最も低い位置の高さ≦トナー収容室の最も低い位置の高さを満たす場合、トナー収容室の最も低い位置から、連通口の最も低い位置にスムーズに移動でき、確実にトナー収容室内のトナーを現像室に送ることができる。
(実施例12)
図30(a),(b)において、実施例1では、第2室撹拌部材34としてこの回転中心から撹拌部材先端までの長さL5が30mmで、長手でL5が一定な部材を用いたが、必ずしもこの限りではない。たとえば、長手中央位置における第2室撹拌部材34の回転中心から撹拌部材先端までの長さをLc、第2室撹拌部材34の長手端部位置における回転中心から撹拌部材先端までの長さをLe、とする。図30(a)に示すように、Lc=25mm、Le=30mmで、長手中央から長手端部に向かって徐々にL5が長くなる撹拌部材を用いてもよい。これにより、第2室撹拌部材34の先端は、長手中央の方が長手端部より先に回転するため、長手中央から長手端部へのトナーの流れを生むことができる。
すなわち、上記撹拌部材は、長手中央から長手端部にトナーを搬送することができる。また、図30(b)に示すように、長手中央の一部をLc=25mm、長手端部の一部をLe=30mmとしてもよい。上記の例以外にも、第2室撹拌部材34について長手中央位置における回転中心から撹拌部材先端までの長さをLc、連通口が存在する長手端部位置における第2室撹拌部材34の回転中心から撹拌部材先端までの長さをLeとする。その場合、Lc<Leを満たす場合、長手中央から長手端部にトナーを搬送することができる。これにより、確実にトナー収容室から現像室へトナーを搬送することができる。以上から、現像剤収容室に備わる第2室攪拌部材の長手中央位置における現像剤搬送力は、連通口が所在する長手端部位置における現像剤搬送力よりも大きい。また、現像室に備わる第1室攪拌部材の長手中央位置における現像剤搬送力は、連通口が所在する長手端部位置における現像剤搬送力よりも小さいといえる。
(実施例13)
実施例1では、第2室撹拌部材34として、撹拌軸にPPSシートを貼り付けた部材を用いた。PPSシートの厚みは長手で一定にした。しかし、必ずしもこの限りではない。たとえば、図31(a),(b)において、図31(a)に示すように、長手中央位置のPPSシート厚み=0.1mm、連通口が存在する長手端部位置のPPSシート厚み=0.05mmである撹拌部材を用いてもよい。これにより、長手中央の方が、長手端部よりトナー搬送力が高いため、長手中央から長手端部へのトナーの流れを生むことができる。すなわち、上記撹拌部材は、長手中央から長手端部にトナーを搬送することができる。また、図31(b)に示すように、長手中央位置のPPSシートの穴の面積<連通口が存在する長手端部位置のPPSシートの穴の面積である撹拌部材を用いてもよい。上記の例以外にも、第2室撹拌部材34について長手中央位置におけるトナー搬送力>連通口が存在する長手端部位置におけるトナー搬送力を満たす場合、長手中央から長手端部にトナーを搬送することができる。
(実施例14)
実施例1では、第1室撹拌部材32としてこの回転中心から撹拌部材先端までの長さLが20mmで、長手でLが一定な部材を用いた。トナー凝集度の低いトナーは、現像装置内で撹拌され空気を含むと容易に拡散する。したがって、トナー収容室端部から現像室端部へ補給されたトナーは、第1室撹拌部材32によって現像室長手中央に拡散することができる。但し、必ずしもこの限りではない。
たとえば、長手中央位置における現像室撹拌部材32の回転中心から撹拌部材先端までの長さをLc、現像室撹拌部材の長手端部位置における、現像室撹拌部材の回転中心から撹拌部材先端までの長さをLeとする。その場合、図32(a)に示すように、Lc=25mm、Le=20mmで、長手中央から長手端部に向かって徐々にLが短くなる撹拌部材を用いてもよい。
これにより、現像室撹拌部材32の先端は、長手端部の方が、長手中央より先に回転するため、長手端部から長手中央へのトナーの流れを生むことができる。すなわち、上記撹拌部材は、長手中央から長手端部にトナーを搬送することができる。また、図32(b)に示すように、長手中央の一部をLc=25mm、長手端部の一部をLe=20mmとしてもよい。
上記の例以外にも、現像室撹拌部材について、長手中央位置における、現像室撹拌部材32の回転中心から撹拌部材先端までの長さをLc、連通口が存在する長手端部位置における現像室撹拌部材の回転中心から撹拌部材先端までの長さをLe、とする。その場合、Lc>Leを満たす場合、長手端部から長手中央にトナーを搬送することができる。これにより、トナー収容室端部から現像室端部へ補給されたトナーを、確実に現像室長手中央に搬送することができる。
(実施例15)
実施例1では、現像室撹拌部材32として、撹拌軸にPPSシートを貼り付けた部材を用いた。PPSシートの厚みは長手で一定にした。しかし、必ずしもこの限りではない。
たとえば、図33(a),(b)において、図33(a)に示すように、長手中央位置のPPSシート厚み=0.05mm、連通口が存在する長手端部位置のPPSシート厚み=0.10mmである撹拌部材を用いてもよい。これにより、長手端部の方が、長手中央よりトナー搬送力が高いため、長手端部から長手中央へのトナーの流れを生むことができる。すなわち、上記撹拌部材は、長手端部から長手中央にトナーを搬送することができる。また、図33(b)に示すように、長手中央位置のPPSシートの穴の面積>長手端部位置のPPSシートの穴の面積である撹拌部材を用いてもよい。
上記の例以外にも、現像室撹拌部材32について、長手中央位置におけるトナー搬送力<長手端部位置におけるトナー搬送力を満たす場合、長手端部から長手中央にトナーを搬送することができる。
(実施例16)
実施例16では、本発明に適切な規制ブレードとトナー供給ローラの設定について記載する。実施例1では、規制ブレードには絶縁性ウレタンゴムを用い、トナー供給ローラには、芯金上に絶縁性ポリウレタンスポンジを設けた。この実施例16では、規制ブレードにはSUS(金属)を用い、トナー供給ローラには、芯金上に導電性ポリウレタンスポンジを設けた。本実施例では、導電性トナー供給ローラの抵抗は、芯金への印加電圧(Vdc)とした場合、−100V印加時で107 Ωである。それ以外の設定は実施例1と同様である。
ここで、ΔVb=規制ブレードに印加した電圧−現像ローラ芯金に印加した電圧(Vdc)、ΔVs=トナー供給ローラに印加した電圧−現像ローラ芯金に印加した電圧と定義する。
以下で、本発明の現像装置に適切なΔVb、ΔVsの範囲を説明する。適切なΔVb、ΔVsの範囲を調べるために、耐久試験を行い、その耐久試験条件の詳細を次に説明する。
現像容器8に、A4画像の印字率5%で8000枚相当分のトナーとして、200g充填して、N/N環境(23℃50%RH)で、耐久試験を行った。低印字率でも画像不良が発生しないか確認するために、画像はA4で、印字率1%の文字パターンとした。また、2枚画像出力するごとに1回5秒停止する間欠モードとした。
耐久試験は、絶対値が100V以上になるように、ΔVb=+100V、0V、−100V、−200Vの4条件、ΔVs=0V、−100Vの2条件、合計4×2=8条件で行った。印字率1%の文字パターンを16000枚画像出力後に、評価を行った。評価項目は3つである。
1つ目は、“ブレード融着”である。規制ブレードにトナーが融着すると、現像ローラ上にスジ状にトナーがコートされ、ベタ画像を出したときに、縦スジ状の画像不良が発生する。ここで、ベタ画像に縦スジ状の画像不良が無いならば「○」、ベタ画像に縦スジ状の画像不良が軽微にあるならば「△」、そしてベタ画像に縦スジ状の画像不良があるならば「×」の各記号で評価する。
2つ目は、“かぶり”である。現像室内の現像ローラにコートされた履歴を持ったトナーと、トナー収容室内の現像ローラにコートされた履歴を持たないトナーは、帯電性が異なるため、現像室内のトナーがプラス極性に、またトナー収容室内のトナーがマイナス極性に帯電し、静電凝集しやすい。静電凝集したまま現像部に到達すると、感光体ドラム上の画像露光されていないベタ白部に、ポジトナーが現像され、かぶりになる。ここで、ベタ白部のかぶり反射率が3%未満ならば「○」、ベタ白部のかぶり反射率が3%以上5%未満ならば「△」、そしてベタ白部のかぶり反射率が5%以上ならば「×」の各記号で評価する。かぶり反射率の測定方法を以下に示す。
「REFLECTMETER MODEL TC−6DS」(東京電色社製)により測定したプリントアウト画像の白地部分の白色度(反射率Ds(%))と転写紙の白色度(平均反射率Dr(%))の差から、カブリ濃度(%)(=Dr(%)−Ds(%))を算出し、耐久評価終了時の画像カブリを評価した。フィルターは、シアンの場合はアンバーライト、イエローの場合はブルー、マゼンタ及びブラックではグリーンフィルターを用いた。
3つ目は、“ベタ先後端濃度差”である。現像室内の現像ローラにコートされた履歴を持ったトナーと、トナー収容室内の現像ローラにコートされた履歴を持たないトナーは、帯電性が異なるため、現像室内のトナーがプラス極性に、またトナー収容室内のトナーがマイナス極性に帯電して静電凝集しやすい。トナーが凝集していない場合、トナー供給ローラはベタ画像出力時でも、トナー供給ローラ近傍のトナーを取り込み、現像ローラに供給することができる。しかし、トナーが凝集している場合、トナー供給ローラはベタ画像出力時に、トナー供給ローラ近傍のトナーを取り込めず、十分な量のトナーを現像ローラに供給することができない。これにより、ベタ画像出力時に、ベタ画像先端に比べて、ベタ画像後端の反射濃度が低下する。ベタ画像先端は、印字開始から50mm印字後まで、ベタ画像後端は、印字終了から50mm印字前までとする。
ここで、(ベタ画像先端反射濃度−ベタ画像後端反射濃度)が0.1未満ならば「○」、(ベタ画像先端反射濃度−ベタ画像後端反射濃度)が0.1以上0.2未満ならば「△」、(ベタ画像先端反射濃度−ベタ画像後端反射濃度)が0.2以上ならば「×」の各記号で表す。図34に〔表11〕としてその耐久試験の結果を示す。
このように、ΔVbを−100V以上に設定すると、“ブレード融着”、“かぶり”、“ベタ先後端濃度差”の全てが基準を達成できる。ΔVbを−100V以上に設定すると、“ブレード融着”が発生しないのは、現像ローラと規制ブレードの当接部を通過できるトナー量が増え、規制ブレードに付着したものをすぐに出口側に押し流すことができるためである。
また、ΔVbを−100V以上に設定すると、“かぶり”が基準値以下になる理由は、現像ローラと規制ブレードの当接部を通過できるのは、大半がマイナス極性に帯電したトナーであることにある。また、“ベタ先後端濃度差”はΔVs=0Vでも可能だが、ΔVbを−100V以上に設定すると、現像ローラトナーコート量が増えるため、0.1以上0.2未満ベタ濃度低下が見られた。しかし、ΔVsを−100Vに設定すると、トナー供給ローラから現像ローラへのマイナス極性に帯電したトナーの供給量が増加し、ΔVbを−100V以上に設定してもベタ濃度低下が見られなかった。
この実施例16では、現像ローラの抵抗は、−100V印加時で105 Ωである。現像ローラ・規制ブレード間または、現像ローラ・トナー供給ローラ間でトナーが受ける力は、電界に依存する。したがって、現像ローラの抵抗によって、画像不良が発生しないために最適なΔVb、ΔVsは変化する。すなわち、現像ローラの抵抗値によって、ΔVb、ΔVsを調整する必要がある。
(実施例17)
この実施例17では、本発明に適したトナー母体表面に付着させる外添剤について記載する。特に、平均一次粒径50nm以上の外添剤について記載する。外添剤の平均一次粒径は、次のようにして測定したものである。
走査型電子顕微鏡FE−SEM(日立製作所(株)製 S−800)を用いて、無作為に100個以上の外添剤一次粒子を撮影する。各々の一次粒子の一次粒径は、最長辺をa、最短辺をbとしたとき、(a+b)/2で求めた。その後、測定値の平均値(個数平均一次粒径)を算出した。
実施例1では、トナー母体に付着させる外添剤として、平均一次粒径が10nmの疎水性シリカを用いた。外添剤の一次粒径が50nm未満の場合、現像室内の現像ローラ・規制ブレード間や、現像ローラ・トナー供給ローラ間でトナーが摺擦されても、トナー母体から遊離しにくい。しかし、外添剤の一次粒径が50nm以上の場合、現像室内の現像ローラ・規制ブレード間や、現像ローラ・トナー供給ローラ間でトナーが摺擦されると、トナー母体から遊離する。トナー母体から遊離した外添剤は、現像部から感光体ドラムに転移し、現像室から失われる。
現像室・トナー収容室間でトナーが循環する現像装置の場合、現像装置全体から遊離外添剤が失われる。外添剤が失われると、トナーの流動性、帯電性が変化し、現像不良、転写不良、クリーニング不良が発生する。これに対し、本発明による現像室・トナー収容室間でトナーが循環しない現像装置の場合、現像室からのみ遊離外添剤が失われる。すなわち、トナー収容室内に遊離外添剤を保持することができる。そして、新しいトナーとともに遊離外添剤も現像室に補給することができる。これにより、トナーの流動性、帯電性変化を防止し、現像不良、転写不良、クリーニング不良を防止できる。
たとえば、トナーの流動性を上げるために、一次粒径が50nmの酸化チタンを外添してもよい。また、規制ブレードへのトナー融着を防止するために、一次粒径が50nmの疎水性シリカ粒子を外添してもよい。また、感光体ドラムから紙へ転写しやすくするために、一次粒径が100nmの疎水性シリカ粒子を外添してもよい。また、たとえばトナーを帯電させるために、一次粒径が200nmの荷電制御剤を外添してもよい。また、たとえばトナーを感光体ドラムからクリーニングしやすくするために、一次粒径が300nmの樹脂粒子を外添してもよい。さらに、たとえばトナーを帯電させるために、一次粒径が2000nmの帯電促進粒子を外添してもよい。このように、一次粒径が50nm以上2000nm以下の大粒径外添剤をトナー母体に外添してもよい。
(実施例18)
次に、現像室端部にトナー溜まりを形成するための壁について記載する。図35に示すように、連通口が存在する長手位置において現像室内に壁を配置し、壁と連通口との最短距離をL3とする。ここで、L3=8mm、12mm、20mm、30mmに設定して、実施例1で行った現像装置評価を実施した。なお、現像室撹拌部材32の撹拌軸は、上記の壁と連通口の中間に配置した。実施例1では、L3=20mmである。図36に〔表12〕としてその評価結果を示す。
評価結果より、12mm≦L3を満たすことで、高流動性トナーを用いた場合でも、簡易な構成で、現像室からトナー収容室へのトナー移動が見られない。そして、現像室で使われたトナー量だけトナー収容室から現像室へ新しいトナーを補給することと、トナー収容室内に未使用トナーを残さないことを同時に実現できる。L3=8mmの場合、現像室端部において、トナー収容室からのトナー供給により壁近傍のトナーが動き、現像室端部にトナー溜まりができない。これにより、トナー収容室と現像室の間でトナーの入れ替わりが発生する。
(他の実施例として)
図6で示したように、実施例1では連通口の最も低い位置Aから現像室底面の最も低い位置であるEまで、常にトナーが下る傾斜になっている。すなわち、連通口まで送られたトナーがスムーズに現像室内に自重で移動できる。このように、連通口の最も低い位置Aから、現像室底面の最も低い位置Eまで、常にトナーが下る傾斜になっていることが好ましい。また、実施例1では、感光体ドラム、帯電ローラ、クリーニングブレード、現像室、トナー収容室が一体になったプロセスカートリッジを例に挙げたが、この限りではない。
たとえば、トナー収容室にトナーホッパーを連結可能にするトナー補給カートリッジを採用してもよい。この場合、トナーホッパーからトナー収容室への補給には補給制御を用いてもよい。また、感光体ドラムカートリッジと現像カートリッジに分離してもよい。さらに、現像カートリッジは、現像ローラを含む現像ユニットとトナー容器に分離してもよい。これらを実施することにより、各々の部材を使用限界まで有効利用することができる。これにより、一枚当たりの印字コストを下げることができる。
本発明による現像装置では、現像室に最大でも80gしかトナーが入らない。したがって、低印字率画像を出力し続けた場合、現像室の狭い範囲内でトナー劣化が進み、規制ブレードや現像ローラへトナー融着することがある。これを防止するために、現像室から劣化したトナーを感光体ドラムに現像するシーケンスを設けてもよい。現像室から劣化したトナーを感光体ドラムに現像すると、現像室内のトナー量が減り、トナー収容室から現像室に新しいトナーを補給することができる。これにより、部材劣化を防止できる。
実施例1で行った耐久試験では、トナー収容室内のトナーを使い切ってからも画像形成し続けた。しかし、トナー収容室内に新しいトナーが残っている状態でのみ画像形成を行うことが望ましい。これは、新しいトナーが現像室内にあると、部材にトナー融着しにくくなるためである。原因は、新しいトナー・劣化トナー間に働く力が大きいため、部材に付着した劣化トナーを新しいトナーが剥がす役割を担うためと考えられる。
本実施例では、撹拌部材として撹拌軸にPPSシートを貼り付けた部材を用いたが、この限りではない。剛性の低い材質、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)または、PE(ポリエチレン)または、PP(ポリプロピレン)シート等可撓性有する部材を用いても良い。そして厚さは約50μm〜500μm程度が好ましく、特に好ましくは100μm〜300μmが好適である。
また、PPSシートの一部に穴を開け、トナーに過剰な負荷がかかることを防止してもよい。
(応用例)
また、以上の各実施例の他にも本発明は次の各応用例も可能である。
すなわち、応用例1として図37に示すように、撹拌軸にシートを貼り付けた部材以外に撹拌部材39を用いてもよいし、スクリュー状の撹拌部材を用いてもよい。
実施例1では、第1室撹拌部材32と第2室撹拌部材34は、各々ひとつずつ配置したが、この限りではない。たとえば、トナー収容室の形状が水平方向に長い場合には、二つ以上のトナー収容室撹拌部材を設けてもよい。また、既述の通り、現像室とトナー収容室の間にトナー撹拌室を設けて、第1室をトナー撹拌室、第2室をトナー収容室としてもよい。この場合、連通口位置は必ずしも端部に限定しない。
連通口が中央にあって、第2室撹拌部材34はその部分に撹拌能力を持たず、トナー収容室撹拌部材は中央部に撹拌能力を持っていれば良い。このようにすれば、トナー撹拌室からトナー収容室へのトナー移動を防止し、トナー収容室からトナー撹拌室へ新しいトナーを補給できる。
また、実施例1では連通口を両端に設けたが、片側のみに設けても良い。実施例1では、第2撹拌部材34と第1室撹拌部材332の回転数は同じであったが、この限りではない。例えば、第2室撹拌部材34の回転数を第1室撹拌部材32の回転数より小さくしてもよい。また、第2室撹拌部材34を一定間隔で間欠的に回転させてもよい。これにより、トナー収容室内のトナーにかかる負荷を減らすことができる。また、実施例1では、紙を垂直に搬送する例を挙げたが、この限りではない。紙を横に搬送する方式でも、斜めに搬送する方式でもよい。紙を横に搬送する方式の場合は、トナー収容室を現像室の上に配置する方式が好ましい。図38に長手中央の断面図、図39に長手端部の断面図を示す。図中の第1室撹拌部材32と第2室撹拌部材34はともに時計回り方向に回転する。
紙を斜めに搬送する方式の場合は、現像装置を斜めに傾ける方式が好ましい。図40に長手中央の断面図、図41に長手端部の断面図を示す。図中の第1撹拌部材32と第2室撹拌部材34はともに、時計回り方向に回転する。
実施例1では、N/N環境(温度23℃湿度50%RH)でのみ耐久試験を行ったが、H/H環境(温度30℃湿度80%RH)やL/L環境(温度15℃湿度10%RH)では、トナーの凝集度は変化する。各々の環境におけるトナー凝集度に対応するように、連通口の大きさや配置を設定しなければならない。実施例1では、現像室:トナー収容室=80g:120g=2:3にしたが、現像室をより小さくした方が好ましい。これにより、トナーを補給したときに、画像を良化させる効果を高めることができる。
但し、現像室が小さすぎると、局所的なトナー劣化が起きて、部材を劣化させ画像不良が発生したり、トナー補給の影響で極端に画像が変化したりする場合がある。現像室の容積は、20g以上100g以下が好ましい。上記のことを鑑みると、現像室:トナー収容室=50g:150g=1:3、または、現像室:トナー収容室=40g:160g=1:4にすることが好ましい。
実施例1では、現像ローラには、導電性ゴムを用いたが、この限りではない。現像剤担持体として、金属に樹脂コートスリーブ、金属スリーブを用いてもよい。ただし、これらのスリーブを用いる場合は、硬くて弾性が無いので、接触現像方式よりは非接触現像方式を用いたほうがよい。
実施例1では、トナー供給ローラには、絶縁性スポンジを用いたが、この限りではない。実施例16のように、現像ローラへのトナー供給量を上げたい場合は、導電性スポンジを用い、現像ローラとトナー供給ローラの間に電位差を設けてもよい。
実施例1では、規制ブレードには、シリコンゴムを用いたが、この限りではない。たとえば、りん青銅等の他の金属材料を用いてもよい。また、金属ブレード表面に導電樹脂層を設けてもよいし、金属ブレード表面に絶縁層を設けてもよい。
これまでに記載した本実施形態による現像装置を画像形成装置に搭載すると、高流動性トナーを用いた場合でも、簡易な構成で、現像室からトナー収容室へのトナー移動が無い。そして、現像室で使われたトナー量だけトナー収容室から現像室へ新しいトナーを補給することと、トナー収容室内に未使用トナーを残さないことを同時に実現できる。
以下は、上記実施例や応用例のまとめである。
a)H/H環境(温度30℃湿度80%RH)からL/L環境(温度15℃湿度10%RH)まで、高流動性トナーを用いた場合でも、簡易な構成で現像室からトナー収容室へのトナー移動は防げる。そして、現像室で使用したトナー量分だけトナー収容室から現像室へ新しいトナーを補給するとともに、トナー収容室内に未使用トナーを残さない。
b)現像室の長手端部近傍にトナー溜まりを設けることができ、トナー収容室内のトナーを新しいままに保持でき、現像室で使われたトナー量だけ、トナー収容室から現像室へ新しいトナーを補給できる。
c)撹拌部材の数を最小に抑えることができるので、コスト削減が実現できる。
d)ベタ画像先端反射濃度と比べてもベタ画像後端反射濃度が低下しない。すなわち、面内の反射濃度が均一なベタ画像を出力することができる。
e)高画質画像を安定して出力し続けられる。
f)トナー収容室内で撹拌されたトナーは自重で開口付近まで移動することができる。これにより、トナー収容室内のトナーを確実に現像室に搬送することができる。
g)トナー収容室内において、長手中央から長手端部へのトナーの流れを発生させることができる。これにより、トナー収容室内のトナーを確実に現像室に搬送することができる。
h)現像室内において、長手端部から長手中央へのトナーの流れを発生させることができる。これにより、現像室内長手中央のトナー不足に伴う長手中央濃度薄を解消することができる。
i)現像剤層厚規制部材と現像剤担持体の当接部を通過した後の、現像剤担持体上のトナーの大半は、正規極性に帯電する。これにより、ベタ白部に反転極性のトナーが付着する“かぶり”を防止できる。ここで、正規極性がマイナスの場合、反転極性はプラスとする。
j)現像剤供給部材から現像剤担持体に十分な量のトナーを供給することができ、現像剤担持体上のトナーコート量を安定させることができる。これにより、ベタ画像先端反射濃度と比べてもベタ画像後端反射濃度が低下しない。
k)現像室内に遊離外添剤を補給することができ、現像室内の一成分現像剤の摺擦された表面に補給外添剤を付着させることができる。これにより、一成分現像剤の流動性または帯電性を適正範囲に保ち高画質画像を安定して出力できる。
l)一成分現像剤の流動性または帯電性を適正範囲に保ち高画質画像を安定して出力できる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内でその他の実施形態、応用例、変形例およびそれらの組み合わせも可能である。