以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るウィンドレギュレータ装置の全体構成を示す正面図である。このウィンドゥレギュレータ装置は車両のサイドウィンドウに設けられる窓ガラスを開閉する。図1に示されるようにウィンドレギュレータ装置は駆動機構1と駆動力伝達機構9を備える。駆動機構1は、窓ガラスを開閉作動させるための動力を発生する動力源としての電気モータ2と、出力軸3と、電気モータ2に連結されたハウジング8と、ハウジング8に収容された図示しない検知ユニットを備える。電気モータ2は例えば車載バッテリなどの電源に電気的に接続され、電源からの電力供給により回転駆動力を発生する。出力軸3は電気モータ2が発生する回転駆動力により回転する。駆動力伝達機構9は、出力軸3の回転駆動力によって窓ガラスWが図の矢印により示される上下方向に開閉作動するように、出力軸3の回転駆動力を窓ガラスWに伝達する。ハウジング8内に収納された検知ユニットは、窓ガラスWの閉作動中に窓ガラスWと窓枠との間に異物が挟み込まれたか否か、および、窓ガラスWの開閉位置が予め定められている特定の開閉位置領域に属する位置であるか否か、を検知する。
図1に示されるように、駆動力伝達機構9は、固定ブラケット91,セクタギヤ92,リフトアーム93,第1ガイドレール部材94,第2ガイドレール部材95およびイコライザアーム96を備える。固定ブラケット91は車両のドアパネルに固定されているとともにハウジング8を支持している。セクタギヤ92は図に示されるように円弧状の歯部921を備え、この歯部921の円弧中心にてピン97により回転可能に固定ブラケット91に連結される。
リフトアーム93は長尺状の部材であり先端に向けて先細りに形成される。リフトアーム93はその基端側にてセクタギヤ92の回転中心位置に固定される。したがって、セクタギヤ92がピン97の軸周りに回転すると、それに伴ってリフトアーム93もピン97を中心として同方向に回転する。また、リフトアーム93の先端にはシュー93aが連結される。
第1ガイドレール部材94は窓ガラスWの下部にほぼ水平に固定される。第1ガイドレール部材94には、その長手方向に沿ってガイド溝が形成される。このガイド溝内にシュー93aが摺動可能に配設される。第2ガイドレール部材95はドアパネルに固定される。第2ガイドレール部材95にも、その長手方向に沿ってガイド溝が形成される。
イコライザアーム96は第1アーム961および第2アーム962を備える。第1アーム961および第2アーム962はいずれも長尺状の部材である。両アームの基端側同士がリフトアーム93の略中央付近にて結合される。第1アーム961および第2アーム962は結合状態にて図の方向から見て同一の軸を持つように直線状に各々固定され、かつリフトアーム93の中心付近で回転可能にリフトアーム93に連結される。また、第1アーム961の先端にはシュー961aが連結される。このシュー961aは第1ガイドレール部材94のガイド溝内に摺動可能に配設される。第2アーム962の先端にもシューが連結され、このシューは第2ガイドレール部材95のガイド溝内に摺動可能に配設される。したがって、第1ガイドレール部材94のガイド溝にはリフトアーム93の先端および第1アーム961の先端が、第2ガイドレール部材95のガイド溝には第2アーム962の先端が、それぞれシューを介して連結される。また、第1ガイドレール部材94と第2ガイドレール部材95が平行に配置するように、各アーム寸法が調整される。
出力軸3はハウジング8に回転可能に支持される。この出力軸3は電気モータ2の回転駆動力を受けて回転する。また後述するように、出力軸3には出力ギヤ部が形成されており、この出力ギヤ部はセクタギヤ92の歯部921に噛み合う。
このような構成において、出力軸3が図1において時計回り方向に回転すると、その回転はセクタギヤ92に伝達されて、セクタギヤ92がピン97を中心に反時計回り方向に回転する。これに伴いリフトアーム93もピン97を中心に反時計回り方向に回転する。リフトアーム93が反時計周り方向に回転すると、リフトアーム93の先端に取り付けられたシュー93aが図の一点鎖線で示されたような円弧状の軌跡を描くため、シュー93aが第1ガイドレール部材94のガイド溝内を摺動するとともに第1ガイドレール部材94が上方移動する。これに伴い窓ガラスWが上方移動する。つまり窓ガラスWが閉作動する。窓ガラスWの閉作動時には、イコライザアーム96がリフトアーム93,第1ガイドレール部材94および第2ガイドレール部材95との間の構造的配置関係を維持するように回転する。これにより第1ガイドレール部材94が第2ガイドレール部材95との間の平行状態を維持しながら上昇する。
また、出力軸3が図1において反時計回り方向に回転すると、セクタギヤ92がピン97を中心として時計回り方向に回転する。これに伴いリフトアーム93もピン97を中心として時計回り方向に回転する。これによりシュー93aが第1ガイドレール部材94のガイド溝内を摺動するとともに第1ガイドレール部材94が下方移動する。第1ガイドレール部材94の下方移動により窓ガラスWも下方移動する。つまり窓ガラスWが開方向に作動(開作動)する。窓ガラスWの開作動時には、イコライザアーム96がリフトアーム93,第1ガイドレール部材94および第2ガイドレール部材95との間の構造的配置関係を維持するように回転する。これにより第1ガイドレール部材94が第2ガイドレール部材95との間の平行状態を維持しながら下降する。このようにして窓ガラスWの開閉が行われる。なお、図において実線で示された窓ガラスWの開閉位置が全閉位置であり、二点鎖線で示された窓ガラスWの開閉位置が全開位置である。
上記のように作動するアーム式の駆動力伝達機構9を備えるウィンドレギュレータ装置においては、リフトアーム93の回転運動が窓ガラスWの直線運動に変換される。したがって、窓ガラスWの閉作動時に窓ガラスWの荷重により出力軸3に作用するモーメントがリフトアーム93の回転位置により変化する。図2は、窓ガラスWが全開位置から全閉位置まで閉作動するときに出力軸3に作用するモーメントの大きさと、リフトアーム93の回転位置との関係を示したグラフである。このグラフからわかるように、リフトアーム93の回転位置が重力方向に直交する水平位置であるときにモーメントが最大である。リフトアーム93の回転位置が水平位置から上死点位置(窓ガラスWの全閉位置)または下死点位置(窓ガラスの全開位置)に向かうほどモーメントが小さくなる。
図3は駆動機構1の分解斜視図である。図に示されるように、駆動機構1は、電気モータ2と、出力軸3と、検知ユニット5と、ハウジング8を備える。電気モータ2は図示しない締結手段などによりハウジング8に連結される。ハウジング8は、第1ハウジング81と、第2ハウジング82と、第3ハウジング83と、蓋84を備える。第1ハウジング81は軸方向に長い円筒形状に形成され、内部には電気モータ2のモータ軸に連結された図示しないウォームが収納される。このウォームはモータ軸と同軸回転する。第2ハウジング82は第1ハウジング81の側周部に隣接し、第1ハウジング81の円筒軸と直交する軸を持つ円筒形状をなし、上端側が開口している。なお、第1ハウジング81の内部空間と第2ハウジング82の内部空間は、両ハウジングの隣接部位にて連通する。
第3ハウジング83は第2ハウジング82の上部に配置形成される。この第3ハウジング83は、第2ハウジング82の上端開口縁から図において右方向に略水平に拡がった底面83aと、底面83aの周縁から立設した側壁83bを持つ。したがって図からわかるように、第3ハウジング83の底面83aから窪んでいる円形状の空間Sが第2ハウジング82内の空間である。第3ハウジング83の上端は開口しており、この開口は蓋84により塞がれる。蓋84は図示しない締結手段により第3ハウジング83に固定される。第3ハウジング83内には、後述する抑えバネ74を収納する抑えバネ収納用隔壁83cが、空間Sに沿って円弧状に形成される。
図に示されるように第2ハウジング82の底面中央部分には円筒状のボス82aが形成されている。このボス82a内の円孔に出力軸3が挿通する。出力軸3は第2ハウジング82および第3ハウジング83の内部空間に進入する。出力軸3は先端部31および基端部32を有し、基端部32から先端部31にかけて出力ギヤ部33,軸部34,係合部35がこの順に形成されている。出力ギヤ部33は上述したように駆動力伝達機構9のセクタギヤ92に噛み合い、出力軸3の回転駆動力を駆動力伝達機構9に伝達する。係合部35は断面略十字状に形成され、後述する被駆動プレート63に嵌合する。軸部34、係合部35および先端部31が第2ハウジング82および第3ハウジング83の内部空間に進入する。先端部31が蓋84の内側面(ハウジング8の内部空間に向いた面)に形成されている凹部84aに挿入される。これにより出力軸3がハウジング8に回転可能且つ軸方向移動不能に支持される。
ハウジング8内に収納される検知ユニット5は、挟み込み検知ユニット6および位置検知ユニット7からなる。挟み込み検知ユニット6は第2ハウジング82内に配設される。挟み込み検知ユニット6は、ウォームホイール61、駆動力伝達バネ62、被駆動プレート63、ワッシャ64、挟み込み検知プレート65、挟み込み検知スイッチ66および板バネ67を備える。
ウォームホイール61は第2ハウジング82の内部空間Sの図において最も下部に配置される。ウォームホイール61は、円筒形状をなし外周側に歯(例えばはすば歯)が形成された外周壁部61aと、内周に円孔61bが形成された円筒形状の内周壁部61cと、外周壁部61aの下端と内周壁部61cの下端とを連結するリング状の底面部61dを有する。第2ハウジング82のボス82aが円孔61bに嵌め込まれることにより、ウォームホイール61が第2ハウジング82に回転可能に支持される。円孔61bには出力軸3が挿通される。また、外周壁部61aに形成された歯が第1ハウジング81内に収容されているウォームと噛み合う。このウォームホイール61とウォームによりウォーム減速ギヤが構成される。したがって、ウォームが回転するとその回転がウォームホイール61に伝達されて、ウォームホイール61が出力軸3を中心軸として減速回転する。このウォームホイール61が本発明の入力側回転部材に相当する。
ウォームホイール61内に係止部611が形成される。この係止部611は底面部61dから立設され、その高さは外周壁部61aの高さを上回る。また、外周壁部61aの上端面には周方向に沿って凸状に形成された複数個(本実施形態では4個)の突片612が等間隔に設けられる。各突片612は外周壁部61aに沿った円弧形状をなし、全て同一形状である。この突片612が本発明の入力側凹凸部に相当する。
駆動力伝達バネ62は、ウォームホイール61の底面部61d上に配設される。駆動力伝達バネ62は底面部61dに沿うように円弧状に形成され、その一端にて係止部611に係止される。この駆動力伝達バネ62が本発明の弾性部材に相当する。
被駆動プレート63は周方向の一部分が扇形状に切りかかれたような略円板形状をなし、切りかかれている部分を境にして径の大きい大径部63bおよび径の小さい小径部63cを有する。この被駆動プレート63の中央部に十字状の貫通孔63aが形成される。十字状の貫通孔63aに出力軸3の係合部35が嵌め込まれる。これにより被駆動プレート63は出力軸3に一体回転可能に連結される。また被駆動プレート63は、ワッシャ64により軸方向移動が規制される。このような形状を有する被駆動プレート63が第2ハウジング82内にてウォームホイール61上に同軸的に配設される。このときウォームホイール61に形成されている係止部611が、被駆動プレート63の扇形状に切り欠かれた部分により形成される空隙から突出することで、係止部611と被駆動プレート63との干渉が防止される。また、大径部63bの周方向端部(切り欠き端部)の一方から図において下方に延びた第1突片63dが、他方から図において上方に延びた第2突片63eが、それぞれ形成される。第1突片63dにはウォームホイール61内に配設された駆動力伝達バネ62の他端が係止される。したがって、駆動力伝達バネ62は、その一端にてウォームホイール61の係止部611に、他端にて被駆動プレート63の第1突片63dに、それぞれ係止される。また、被駆動プレート63の大径部63bには、図に示されるように周方向に沿って延びた円弧状の長孔63fが形成される。
挟み込み検知プレート65は、段付き円板形状の回転板651と、回転板651の図において下面の外周縁付近に周方向に沿って凸状に形成され、等間隔に設けられた複数の突片652とを備える。回転板651の中央には出力軸3を挿通する円孔が形成される。また、回転板651の下面側に断面円弧状の凸部651aが形成される。この凸部651aは被駆動プレート63に形成された長孔63fと同形状の断面を有する。凸部651aが長孔63fに嵌め込まれるように挟み込み検知プレート65が被駆動プレート63上に同軸的に載置される。これにより挟み込み検知プレート65が被駆動プレート63に一体回転可能且つ軸方向移動可能に連結され、両プレート63,65は出力軸3を中心軸として一体的に回転する。被駆動プレート63と挟み込み検知プレートとの組み付け体が、本発明の出力側回転部材に相当する。
また、回転板651には、周方向に沿って円弧状の長孔651bが形成される。挟み込み検知ユニット6が第2ハウジング82内に収納されたとき、この長孔651bから被駆動プレート63に形成された第2突片63eおよびウォームホイール61に形成された係止部611が突出する。
複数の突片652は回転板651の中心からの径方向距離が同一となるように回転板651の周方向に沿って設けられる。各突片652は回転板651の周方向に沿った円弧形状をなし、全て同一形状である。突片652の個数はウォームホイール61の外周壁部61aに形成されている突片612の個数と同じ(本実施形態では4個)である。回転板651の中心から各突片652までの径方向距離は、ウォームホイール61の中心からその外周壁部61aに形成された各突片612までの径方向距離と同じである。したがって、挟み込み検知プレート65と被駆動プレート63との組み付け体(出力側回転部材)がウォームホイール61(入力側回転部材)上に配置されたときに、各突片652はウォームホイール61の外周壁部61aの上端面に対面する。そして、ウォームホイール61と挟み込み検知プレート65が出力軸3を中心に回転した場合には、突片652と突片612が同一円周上を回転する。突片652が本発明の出力側凹凸部に相当する。
図10は、ウォームホイール61と挟み込み検知プレート65との配置関係を表す側面図である。図10に示されるように、挟み込み検知プレート65は、ウォームホイール61に対面するように、ウォームホイール61と同軸的に配置されている。そして、ウォームホイール61の挟み込み検知プレート65に対面する面(具体的にはウォームホイール61の外周壁部61aの上端面)に突片612が形成され、挟み込み検知プレート65のウォームホイール61に対面する面(図示下面)に突片652が形成される。これらの突片612,652が本発明のカム手段に相当する。
突片612にはテーパ面612aが形成される。このテーパ面612aは、図3においてウォームホイール61がX方向に回転するときに、突片612の回転方向の先頭側にあたる面に形成される。テーパ面612aは、突片612の底部側が先端側よりも長くなるように、上記X方向に対して傾斜している。このテーパ面612aの存在により、突片612の形状が側面から見て略台形状となる。
また、突片652にはテーパ面652aが形成される。このテーパ面612aは、ウォームホイール61が挟み込み検知プレート65に対してX方向に相対回転するときに、突片612が近づいてくる側の面、つまり突片612のテーパ面612aに対面する側の面に形成されている。テーパ面652aは、突片652の底部側が先端側よりも長くなるように、上記X方向に対して傾斜している。このテーパ面652aの存在により、突片652の形状が側面から見て略逆台形状となる。
また図10からわかるように、ウォームホイール61と挟み込み検知プレート65が相対回転した場合には、突片612と突片652が干渉する。この場合において、ウォームホイール61が図3の矢印X方向に回転し、挟み込み検知プレート65が回転していないときに両突片612,652が干渉した場合には、両突片612,652がテーパ面612a,652aにて係合する。係合時には両テーパ面612a,652aが面接触する。これらのテーパ面612a,652aが本発明の係合面に相当する。
図3に示されるように、板バネ67はリング状の部分とこのリング状の部分から放射状に延びた板状の部分を有し、リング状の部分に出力軸3が挿通される。板バネ67は挟み込み検知プレート65と後述する作動レバー73との間に介在する。したがって挟み込み検知プレート65は板バネ67の弾性力を受け、ワッシャ64を介して被駆動プレート63に押し付けられる。
図4は、挟み込み検知スイッチ66の側面概略図である。図からわかるように挟み込み検知スイッチ66は、基板661と、基板661上に形成された第1導電部662aおよび第2導電部662bと、一端が第1導電部662aに接続された可動片663を有する。可動片663の先端が実線で示されているように基板661から離間しているときは、第1導電部662aと第2導電部662bが非導通状態である。一方、可動片663の先端が押圧されて破線で示されているように基板661上の第2導電部662bに接触した場合に可動片663を介して第1導電部662aと第2導電部662bが導通状態になる。第1導電部662aと第2導電部662bが非導通状態であるときは挟み込み検知スイッチ66の切り換え状態がOFF状態であり、導通状態であるときは挟み込み検知スイッチ66の切り換え状態がON状態である。可動片663が本発明の可動接点であり、第2導電部662bが本発明の固定接点である。
挟み込み検知スイッチ66は、その可動片663が挟み込み検知プレート65に面するように図3において挟み込み検知プレート65の直上に配置され、図示しない固定手段によりその位置が固定されている。したがって、挟み込み検知プレート65の軸方向移動により挟み込み検知スイッチ66の切り換え状態が変化する。挟み込み検知スイッチ66は蓋84の内面側に形成されていてもよい。
なお、ウォームとウォームホイール61との噛合面には通常グリースなどの潤滑剤が塗布されるが、このグリースの飛散を防止するために、飛散防止プレート4が設けられる。この飛散防止プレート4は、第3ハウジング83の底面83a上の第2ハウジング82内の空間Sを取り囲む位置に載置される。
図5は、各部品が組み付けられた挟み込み検知ユニット6の正面図であり、図6は図5のA−A断面図である。図5からわかるように、ウォームホイール61は第1ハウジング81に収納されたウォームWGに噛み合う。ウォームホイール61が図のX方向(このX方向は図3のX方向と同一方向である。)に回転したときに、ウォームホイール61に形成された係止部611によって一端が係止された駆動力伝達バネ62がX方向に押圧されるとともに、第1突片63dにて駆動力伝達バネ62の他端を係止した被駆動プレート63が駆動力伝達バネ62によりX方向に押圧される。
位置検知ユニット7は第3ハウジング83内に配設される。図3に示されるように、位置検知ユニット7は、第1歯車71と、第2歯車72と、作動レバー73と、抑えバネ74と、不感帯領域検知スイッチ75と、反転作動領域検知スイッチ76と、連結ピン77と、第3ハウジング83に取り付けられたストッパ73gとを備える。第1歯車71の中央には円孔が形成される。この円孔に出力軸3が嵌め込まれることにより、第1歯車71が出力軸3に一体回転可能に支持される。第2歯車72は第1歯車71と噛み合う位置に配置される。図からわかるように第2歯車72の歯数は第1歯車71の歯数よりも多い。したがって、第2歯車72は第1歯車71の回転を減速する。また、第2歯車72の図において上面に凸状のカム72aが形成される。このカム72aは第2歯車72の周方向に沿って所定の長さを持ち、周方向に沿って円弧状に形成される。また、第2歯車72の図において下面に円柱状の凸部72bが形成される。また、第2歯車72の中心には円孔が形成され、この円孔内に連結ピン77が挿通される。この連結ピン77により第2歯車72が回転可能に支持される。
作動レバー73は第1歯車71および第2歯車72の図において下方に配設され、細長い平板形状を呈する。図7は作動レバー73の正面図である。図からわかるように、作動レバー73には出力軸3が挿通する第1円孔73aが形成されている。第1円孔73aに出力軸3が挿通することにより作動レバー73が出力軸3に相対回転可能に支持される。なお出力軸3は、第1円孔73aを挿通した後に第1歯車71に形成された円孔を挿通する。
また、作動レバー73は、第1円孔73aから長手方向の一方側(図の右方側)に延びた第1アーム部73bおよび他方側(図の左方側)に延びた第2アーム部73cを有する。第1アーム部73bの略中央に第2円孔73dが形成される。第2円孔73d内には、第2歯車72を挿通した連結ピン77が挿通される。この連結ピン77を介して作動レバー73が第2歯車72に連結される。したがって、作動レバー73は、第1歯車71と一体回転する出力軸3に相対回転可能に支持されているとともに、連結ピン77を介して第2歯車72に連結される。第2歯車72は図に示されるように作動レバー73の第1アーム部73bの直上位置に回転可能に配置される。この場合において、第1アーム部73bは、第2歯車72が回転したときに第2歯車72の下面に形成された凸部72bが第1アーム部73bの先端部分Aに係合し且つ基端部分Bに係合しないように、起伏を持って形成される。また、第1アーム部73bには係止部73eが形成される。この係止部73eは後述する抑えバネ74の一端を係止する。また、第2アーム部73cの先端部分には段差73fが形成される。第1円孔73aの軸方向を高さ方向とした場合、この段差73fを挟んだ一方の部分D1の高さと他方の部分D2の高さは異なっている。
抑えバネ74は、第3ハウジング83内に形成されている抑えバネ収納用隔壁83c内に収納される。図3に示されるように抑えバネ収納用隔壁83cは、同心状に形成された二つの円弧状の壁と、これらの円弧状の壁の一端側を塞ぐ底壁により形成され、他端側が開口している。このような抑えバネ収納用隔壁83c内に収納された抑えバネ74の一端が上記したように作動レバー73の係止部73eに係止され、他端が抑えバネ収納用隔壁83cの底壁に係止される。したがって作動レバー73は抑えバネ74が発生する伸張力により付勢されて第1円孔73aを中心として回転しようとするが、この回転は、第3ハウジング83内に設けられているストッパ73gに作動レバー73の第1アーム部73bの先端部分が係合することにより規制される。この規制によって作動レバー73が位置決めされる。
図8は不感帯領域検知スイッチ75の側面概略図、図9は反転作動領域検知スイッチ76の側面概略図である。これらのスイッチ75,76は挟み込み検知スイッチ66と同様に、基板751,761と、基板751,761上に形成された第1導電部752a,762aおよび第2導電部752b、762bと、一端が第1導電部752a,762aに接続された可動片753,763を有する。可動片753,763の先端が実線で示されているように基板751,761から離間しているときは、第1導電部752a,762aと第2導電部752b,762bが非導通状態である。一方、可動片753,763の先端が押圧されて破線で示されているように基板751,761上の第2導電部752b,762bに接触した場合に可動片753,763を介して第1導電部752a,762aと第2導電部752b,762bが導通状態になる。第1導電部752a,762aと第2導電部752b,762bが非導通状態であるときはスイッチ75,76の切り換え状態がOFF状態であり、導通状態であるときはスイッチ75,76の切り換え状態がON状態である。
不感帯領域検知スイッチ75は、図3からわかるように作動レバー73の直上に配設される。具体的には、作動レバー73が第1円孔73aを中心として回転したときに、可動片753の先端部が作動レバー73の第2アーム部73cの先端に形成された段差73fを乗り越えるような位置に、不感帯領域検知スイッチ75が固定される。このような位置に固定された不感帯領域検知スイッチ75から見た場合、作動レバー73の第2アーム部73cの段差73fを挟んだ一方の部分D1の方が他方の部分D2よりも近い。つまり図3から見て部分D1の高さ位置が部分D2の高さ位置よりも高い。部分D1に可動片753の先端部分が接触しているときは、可動片753が押圧されてその先端部が基板751上の第2導電部752bに接触し、不感帯領域検知スイッチ75の切り換え状態がON状態になる。一方、部分D2に可動片753の先端部が接触しているときは、可動片753の先端部が基板751上の第2導電部752bから離間し、不感帯領域検知スイッチ75の切り換え状態がOFF状態になる。
反転作動領域検知スイッチ76は第2歯車72の直上に配設される。具体的には、第2歯車72が回転したときに、可動片763の先端部が第2歯車72上に形成されたカム72aにその長さ方向にわたって接触可能となる位置に、反転作動領域検知スイッチ76が固定される。可動片763の先端部がカム72aに接触しているときは可動片763の先端部がカム72aにより押圧されて基板761上の第2導電部762bに接触し、反転作動領域検知スイッチ76の切り換え状態がON状態になる。一方、可動片763の先端がカム72aに接触していないときは可動片763の先端部が基板761上の第2導電部762bから離間し、反転作動領域検知スイッチ76の切り換え状態がOFF状態になる。なお、不感帯領域検知スイッチ75および反転作動領域検知スイッチ76は、蓋84に直接形成されていてもよい。
このように構成されたウィンドレギュレータ装置において、電気モータ2の回転がウォームホイール61に伝達されてウォームホイール61が図3および図5の矢印X方向に回転した場合、ウォームホイール61に形成された係止部611に一端が係止された駆動力伝達バネ62が押圧され、この駆動力伝達バネ62もX方向に回転する。駆動力伝達バネ62がX方向に回転すると、第1突片63dにて駆動力伝達バネ62の他端に係止された被駆動プレート63もX方向に回転する。被駆動プレート63の回転に伴って挟み込み検知プレート65および出力軸3がX方向に回転する。出力軸3のX方向への回転は、図1から見て出力軸3の時計回り方向への回転である。したがって出力軸3の回転によって駆動力伝達機構9のリフトアーム93が図1において反時計回り方向に回転する。これにより窓ガラスWが閉作動する。
一方、ウォームホイール61が図3および図5の矢印X’方向に回転した場合、係止部611が駆動力伝達バネ62から離間する方向に移動し、やがて被駆動プレート63の第1突片63dに係合する。この係合によりウォームホイール61の回転駆動力が駆動力伝達バネ62を介さずに直接被駆動プレート63に伝達される。これにより被駆動プレート63はX’方向に回転し、それに伴って挟み込み検知プレート65および出力軸3がX’方向に回転する。出力軸3のX’方向への回転は、図1から見て出力軸3の反時計回り方向への回転である。したがって出力軸3の回転によって駆動力伝達機構9のリフトアーム93が図1において時計回り方向に回転する。これにより窓ガラスWが開作動する。
次に、挟み込み検知スイッチ66の切り換え作動について説明する。窓ガラスWの閉作動時に窓ガラスWと窓枠との間に異物が挟み込まれていないときは、電気モータ2の回転駆動力がそのまま出力軸3に伝達される。このときウォームホイール61と挟み込み検知プレート65は同期回転する。ウォームホイール61と挟み込み検知プレート65が同期回転している場合は、図10に示されるようにウォームホイール61に形成された突片612と挟み込み検知プレート65に形成された突片652との間の距離は変化しない。このため両突片612,652は干渉せずに一定の間隔を保った状態で同一円周上を回転する。また、挟み込み検知プレート65の上部に載置されている挟み込み検知スイッチ66の可動片663の先端部は挟み込み検知プレート65に接触しておらず、そのため基板661上に形成された第2導電部662bに接触しない。つまり、異物が挟み込まれていないときには挟み込み検知スイッチ66の切り換え状態はOFF状態である。
一方、窓ガラスWの閉作動時に窓ガラスWと窓枠との間に異物が挟み込まれたときは、異物の存在により窓ガラスWの閉作動(上昇)が妨げられる。このため出力軸3の回転が停止する。出力軸3の回転停止に伴って被駆動プレート63および挟み込み検知プレート65の回転も停止する。しかし、ウォームホイール61は電気モータ2の回転駆動力を受けて、図3および図5のX方向に回転し続ける。このため、被駆動プレート63および挟み込み検知プレート65に対してウォームホイール61がX方向に相対回転する。このとき被駆動プレート63に形成された第1突片63dは停止しているのに対してウォームホイール61に形成された係止部611は回転しているので、両者間に挟まれた駆動力伝達バネ62は係止部611のX方向への回転により圧縮される。つまり、駆動力伝達バネ62が圧縮されることにより被駆動プレート63および挟み込み検知プレート65に対するウォームホイール61のX方向への相対回転が許容される。図11は駆動力伝達バネ62が圧縮されたときの作動状態を表す挟み込み検知ユニット6の正面図である。なお、被駆動プレート63に対して係止部611がX方向へ相対回転した場合、やがて係止部611が被駆動プレート63に形成されている第2突片63eに係止する。これによりウォームホイール61のそれ以上の相対回転が規制される。
挟み込み検知プレート65に対してウォームホイール61がX方向に相対回転した場合、ウォームホイール61に形成されている突片612と挟み込み検知プレート65に形成されている突片652との間の距離が縮まり、やがて両突片は干渉する。図12は、両突片612,652が干渉した状態を示す側面図である。図に示されるように、両突片612,652はテーパ面612a,652a同士で係合する。この係合により挟み込み検知プレート65の突片652がテーパ面612a上を滑るように移動して、ウォームホイール61の突片612に乗り上げる。これにより挟み込み検知プレート65が上方に押し上げられる。この場合において、各突片612,652の個数は複数(4個)であり、且つ等間隔に配置されているので、複数の突片652が同時に複数の突片612に乗り上げる。よって、挟み込み検知プレート65は周方向に傾くことなく水平状態を保ったまま、ウォームホイール61から離間する方向に軸方向移動する。
挟み込み検知プレート65が両突片612,652の係合によって上方に押し上げられた場合、図12に示されるように挟み込み検知プレート65の上面が挟み込み検知スイッチ66の可動片663を押圧する。これにより可動片663の先端部が基板661上に形成されている第2導電部662bに接触し、可動片663を介して第1導電部662aと第2導電部662bが導通状態になる。つまり、異物が挟み込まれたときに挟み込み検知スイッチ66の切り換え状態はON状態になる。
以上の説明からわかるように、挟み込み検知プレート65が軸方向移動していない(押し上げられていない)とき、すなわち挟み込みが発生していないときには挟み込み検知スイッチ66の切り換え状態がOFF状態になり、挟み込み検知プレート65がウォームホイール61から離間する方向に軸方向移動した(押し上げられた)とき、すなわち挟み込みが発生しているときには挟み込み検知スイッチ66の切り換え状態がON状態になる。換言すれば、挟み込み検知プレート65が押し上げられていないときにおける挟み込み検知プレート65とウォームホイール61との間の距離をA(図10参照)、挟み込み検知プレート65が押し上げられているときにおける上記距離をB(図12参照)としたときに、挟み込み検知スイッチ66は、上記距離がAのときに切り換え状態がOFF状態になり、上記距離がBのときに切り換え状態がON状態となるような位置に設置される。
また、異物の挟み込み時には挟み込み検知プレート65は出力軸3の回転停止に連動して回転を停止しているので、挟み込み検知プレート65は回転せずに軸方向に移動し、挟み込み検知スイッチ66の可動片663に回転することなく接触する。このため両者の接触時に回転による摩耗が発生しない。したがって、摩耗による挟み込み検知精度の悪化が防止される。
次に、位置検知ユニット7の作動について説明する。図3からわかるように位置検知ユニット7の第1歯車71は出力軸3に連結されているので、出力軸3の回転に伴って一体回転する。第1歯車71が回転すると、第1歯車71に噛み合っている第2歯車72が第1歯車71と反対方向に回転する。第2歯車72の回転により第2歯車72の下面に形成された凸部72bも回転する。この凸部72bの作動レバー73に対する回転位置は、出力軸3の回転に伴い変化する窓ガラスWの開閉位置に対応付けて予め決められている。図13は窓ガラスWの開閉位置を表す概略図である。
図13において、窓ガラスWの開閉位置は窓ガラスWの上端の位置により表される。窓ガラスWの開閉位置が図の線Pにより表される全開位置であるときに窓ガラスWは全開し、図の線Sにより表される全閉位置であるときに全閉する。また、窓ガラスWの開閉位置が、図の線Rにより表される全閉近傍の位置から全閉位置までの間の領域R−Sに属する位置であるときには、窓ガラスWを閉めるときに窓ガラスWの上端が窓枠に設けられているウェザストリップなどに接触することにより異物の挟み込みを誤検知するおそれがある。このような窓ガラスWが閉じきる直前に挟み込みが誤検知される領域R−Sは、本明細書において不感帯領域と呼ばれる。また図において線Rにより表される開閉位置は本明細書において不感帯領域開始位置と呼ばれる。本実施形態においては、窓ガラスWの開閉位置が全開位置から不感帯領域開始位置までの間の領域(領域P−R)に属する位置、つまり不感帯領域に属さない位置であるときに、第2歯車72の凸部72bが作動レバー73に係合せず、開閉位置が不感帯領域(領域R−S)に属する位置であるときに凸部72bが作動レバー73に係合して作動レバー73が回転作動するように、凸部72bと作動レバー73との配置関係が設定される。
図14は、第1歯車71,第2歯車72および作動レバー73の配置関係を表す正面図である。図からわかるように抑えバネ74は、作動レバー73を図のX’方向に付勢している。ストッパ73gは、抑えバネ74の付勢力による作動レバー73のX’方向への回転を規制する。この回転規制により作動レバー73が図に示される位置に位置決めされる。そして、位置決めされた作動レバー73の上面(図において手前側)に第1歯車71および第2歯車72が噛合状態で組み付けられる。出力軸3の回転により第1歯車71がX方向に回転すると、窓ガラスWが閉作動するとともに、第1歯車71に噛合した第2歯車72がX方向とは反対のX’方向に回転する。
窓ガラスWが全開位置から不感帯領域開始位置まで閉作動するときに、第2歯車72に形成された凸部72bは図14の符号72b’により表される位置から符号72b”により表される位置まで図の実線矢印Sに沿ってX’方向に回転する。また、窓ガラスWが不感帯領域開始位置から全開位置まで開作動するときに凸部72bは図の符号72b”により表される位置から符号72b’により表される位置まで図の一点鎖線矢印S’に沿ってX’方向とは逆方向に回転する。実線矢印Sおよび一点鎖線矢印S’により表される凸部72bの回転領域が図において回転領域Aにより表される。符号72b’により表される位置は、作動レバー73の第1アーム部73bの先端部分の図示上側に接する位置である。符号72b”により表される位置は第1アーム部73bの先端部分の図示下側に接する位置である。したがって、凸部72bの回転位置が回転領域A内の位置である場合、凸部72bは作動レバー73に係合しない。すなわち、窓ガラスWの開閉位置が全開位置から不感帯領域開始位置までの間の位置、つまり不感帯領域に属さない位置であるときは、第2歯車72が作動レバー73に係合しない。
第2歯車72が作動レバー73に係合していない場合、出力軸3の回転駆動力が作動レバー73に伝達されないので作動レバー73は回転作動しない。図15は、作動レバー73が回転作動していない場合における不感帯領域検知スイッチ75と作動レバー73との接触状態を示す部分側面概略図である。図に示されるように、不感帯領域検知スイッチ75の可動片753の先端部は作動レバー73の第2アーム部73bの段差73fを挟んで高さ位置が高い部分D1に当接し、この部分から押圧力を受けて基板751に形成されている第2導電部752bに接触している。したがって、窓ガラスWの開閉位置が不感帯領域に属さない位置であるときは、不感帯領域検知スイッチ75の切り換え状態がON状態である。
窓ガラスWが不感帯領域開始位置からさらに閉作動する場合、第2歯車72の凸部72bは図14の符号72b”により表される位置にて作動レバー73に係合する。この場合において、第2歯車72は作動レバー73に連結されているために、凸部72bと作動レバー73との係合によって作動レバー73に対する第2歯車72の回転が停止する。しかし、第1歯車71はX方向への回転を継続しているため、第2歯車72は第1歯車71との噛み合いによって第1歯車71周りをX方向に回される。つまり第2歯車72が第1歯車71の回転力によって第1歯車71の周りをX方向(第1歯車71の自転方向と同一方向)に公転する。第2歯車72のX方向への公転により、第2歯車72に連結ピン77で連結されている作動レバー73は抑えバネ74の付勢力に抗して第1歯車71(出力軸3)を中心としてX方向に回転作動する。
図16は、作動レバー73が回転作動した場合における、第1歯車71,第2歯車72および作動レバー73の配置関係を表す正面図である。作動レバー73は、窓ガラスWが不感帯領域開始位置から全閉位置まで閉作動するときに図の2点鎖線で表される位置から実線で表される位置まで、出力軸3を中心として第2歯車72との係合状態を維持しつつX方向に回転する。また逆に、作動レバー73は、窓ガラスWが全閉位置から不感帯領域開始位置まで開作動するときに図の実線で表される位置から2点鎖線で表される位置まで、出力軸3を中心として第2歯車72とともにX’方向に回転する。すなわち、窓ガラスWの開閉位置が不感帯領域に属する位置であるときには、作動レバー73が第2歯車72に係合するとともに、図16の回転領域B内を回転作動する。
図17は、作動レバー73が回転作動している場合における、不感帯領域検知スイッチ75と作動レバー73との接触状態を示す部分側面概略図である。図に示されるように、不感帯領域検知スイッチ75の可動片753は、作動レバー73が回転すると直ちに第2アーム部73bの段差73fを挟んで高さ位置が低い部分D2に当接するとともに、第2導電部752bから離間する。したがって、窓ガラスWの開閉位置が不感帯領域に属する位置であるときには、不感帯領域検知スイッチ75の切り換え状態はOFF状態である。
このように、不感帯領域検知スイッチ75は作動レバー73の回転作動に基づいて切り換え作動する。具体的には、不感帯領域検知スイッチ75の切り換え状態は、作動レバー73が回転作動していないとき、つまり窓ガラスWの開閉位置が不感帯領域に属しない位置であるときにはON状態であり、作動レバー73が回転作動しているとき、つまり窓ガラスWの開閉位置が不感帯領域に属する位置であるときにはOFF状態である。
また、第2歯車72の上面に形成されたカム72aの回転位置と反転作動領域検知スイッチ76との配置関係も、出力軸3の回転に伴い変化する窓ガラスWの開閉位置に対応付けられている。窓ガラスWの開閉位置が図13の線Qにより表される位置(この位置を本明細書において反転作動領域開始位置と呼ぶ)から不感帯領域開始位置までの間の領域(この領域を本明細書において反転作動領域と呼ぶ)に属する位置であるときに、反転作動領域検知スイッチ76の切り換え状態がON状態となり、窓ガラスの開閉位置が反転作動領域に属しない位置であるときに反転作動領域検知スイッチ76の切り換え状態がOFF状態となるように、カム72aの回転位置と反転作動領域検知スイッチ76の配置関係が決定される。
図18は、窓ガラスWの開閉位置が全開位置であるときにおけるカム72aの回転位置と反転作動領域検知スイッチ76との配置関係を表す図であり、(A)が正面図、(B)が(A)のA方向矢視図である。窓ガラスWの開閉位置が全開位置であるときは、反転作動領域検知スイッチ76の可動片763は第2歯車72のカム72aが形成されていない部分に接触している。このとき可動片763は第2導電部762bに接触していない。すなわち反転作動領域検知スイッチ76の切り換え状態がOFF状態である。
窓ガラスWが全開位置から反転作動領域開始位置の直前位置まで閉作動するときは、カム72aの長手方向の一方の端部Kが図の線Pにより表される回転位置から線Q’により表される回転位置まで回転する。逆に、窓ガラスWが反転作動領域開始位置の直前位置から全開位置まで開作動するときは、端部Kが図の線Q’により表される回転位置から線Pにより表される回転位置まで回転する。端部Kの回転位置が線Pにより表される回転位置から線Q’により表される回転位置までの間の回転領域E内に属する位置であるときは、反転作動領域検知スイッチ76の可動片763がカム72aに接触しない。したがって、窓ガラスWの開閉位置が全開位置から反転作動領域開始位置までの間の領域に属する位置、つまり反転作動領域に属さない位置であるときは、反転作動領域検知スイッチ76の切り換え状態がOFF状態とされる。
図19は、窓ガラスWの開閉位置が反転作動領域開始位置であるときにおけるカム72aの回転位置と反転作動領域検知スイッチ76との配置関係を表す図であり、(A)が正面図、(B)が(A)のB方向矢視図である。図に示されるように、窓ガラスWの開閉位置が反転作動領域開始位置であるときに、反転作動領域検知スイッチ76の可動片763がカム72aの端部Kに乗り上げ始める。このため可動片763がカム72aに押圧されて第2導電部762bに接触し、第1導電部762aと第2導電部762bが導通する。これにより反転作動領域検知スイッチ76の切り換え状態がON状態に切り換わる。
図20は、窓ガラスWの開閉位置が不感帯領域開始位置であるときにおけるカム72aの回転位置と反転作動領域検知スイッチ76との配置関係を表す図であり、(A)が正面図、(B)が(A)のC方向矢視図である。図に示されるように、窓ガラスWの開閉位置が不感帯領域開始位置であるときには、反転作動領域検知スイッチ76の可動片763はカム72aに接触している。このため可動片763がカム72aに押圧されて第2導電部762bに接触し、第1導電部762aと第2導電部762bが導通する。よって、窓ガラスWの開閉位置が不感帯領域開始位置であるとき、反転作動領域検知スイッチ76の切り換え状態はON状態である。
窓ガラスWが反転作動領域開始位置から不感帯領域開始位置まで閉作動するときには、カム72aの端部Kが図20の線Qにより表される回転位置から線Rにより表される回転位置まで回転する。逆に、窓ガラスWが不感帯領域開始位置から反転作動領域開始位置まで開作動するときは、端部Kが図の線Rにより表される回転位置から線Qにより表される回転位置まで回転する。端部Kの回転位置が図の線Qにより表される回転位置から線Rにより表される回転位置までの間の回転領域F内に属する位置であるときは、反転作動領域検知スイッチ76の可動片763がカム72aに接触する。したがって、窓ガラスWの開閉位置が反転作動領域開始位置から不感帯領域開始位置までの間の領域に属する位置、つまり反転作動領域に属する位置であるときは、反転作動領域検知スイッチ76の切り換え状態がON状態とされる。なお、上述のように窓ガラスWが不感帯領域開始位置から全閉位置まで作動するときは第2歯車72が第1歯車71の周りを公転する。したがって、この間は反転作動領域検知スイッチ76の切り換え状態はOFF状態となる。
以上の説明からわかるように、本実施形態のウィンドレギュレータ装置は、挟み込み検知スイッチ66,不感帯領域検知スイッチ75および反転作動領域検知スイッチ76を備える。挟み込み検知スイッチ66は、挟み込みが検知されたか否かに基づいて切り換え作動する。不感帯領域検知スイッチ75は窓ガラスWの開閉位置が不感帯領域に属する位置か否かに基づいて切り換え作動する。反転作動領域検知スイッチ76は窓ガラスWの開閉位置が反転作動領域に属する位置か否かに基づいて切り換え作動する。表1は、各スイッチの切り換え状態がどのようなときにON状態になり、どのようなときにOFF状態になるのかをまとめた表である。
表1に示されるように、挟み込みが検知され、窓ガラスWの開閉位置が不感帯領域外であり且つ反転作動領域内に属する位置(すなわち窓ガラスWの開閉位置が図13における領域Q−R間に属する位置)である場合に、全てのスイッチの切り換え状態がON状態になる。全てのスイッチの切り換え状態がON状態である場合に挟み込み処理が実行される。本実施形態における挟み込み処理は、窓ガラスWを閉作動から開作動に反転させる反転作動処理である。
ちなみに、挟み込みが検知され、且つ窓ガラスWの開閉位置が不感帯領域に属さない位置であっても、窓ガラスWの開閉位置が反転作動領域に属さない位置である場合には挟み込み処理が実行されないが、この理由は以下の通りである。
本実施形態のようにアーム式のウィンドレギュレータ装置が用いられている場合、図2のグラフに示されるようにリフトアームの回転位置により出力軸に作用するモーメントが変化する。特にリフトアームの回転位置が図1において水平位置であるときに最も大きいモーメントが出力軸に作用する。出力軸に作用するモーメントが大きい場合にはそのモーメントによって挟み込みが誤検知されるおそれがある。このような誤検知を防止するためには、出力軸に作用するモーメントが大きいときに挟み込み処理を禁止しなければならない。本実施形態においては出力軸に作用するモーメントが小さくなるようなリフトアームの回転領域が予め求められ、求められた回転領域に対応する窓ガラスの開閉領域が反転作動領域と定められる。そして、窓ガラスの開閉位置がこの反転作動領域に属する位置であるときのみ挟み込み処理が許可される。こうすることで、出力軸に作用するモーメントの変化による挟み込みの誤検知を防止しているのである。具体的には、図2に示されるグラフにおいて、リフトアームの回転領域のうち、水平位置よりも上死点側の反転作動許可位置から上死点位置までの間の回転領域に対応する窓ガラスWの開閉領域が反転作動領域と定められる。そして、窓ガラスWの開閉位置が反転作動領域に属するときに反転作動領域検知スイッチ76の切り換え状態がON状態となるように、第2歯車72上形成されるカム72aが形成される。
挟み込み処理は、例えばECUからの指令に基づいて実行されてもよい。この場合、スイッチ66,75,76がECUに接続され、ECUが各スイッチの切り換え状態を監視する。そして、全てのスイッチの切り換え状態がON状態であるときに、挟み込み処理を実行する指令がECUから電気モータに出力される。これにより挟み込み処理が実行される。しかし、ECUを用いた場合はコストが増加するという問題がある。この点に関し、本実施形態のウィンドレギュレータ装置によれば、各スイッチが電気モータ2に通電するための電気回路に組み込まれるとともに、回路構成に所定の工夫が施されることにより、ECUを用いることなく挟み込み処理が実行される。
図21は、電気モータ2に通電するための電気回路を表す回路図である。この電気回路100は、パワーウィンドスイッチ回路部110と、検知スイッチ回路部120と、ドライブ回路部130とに大別される。パワーウィンドスイッチ回路部110は、通電経路としての高圧ライン111および低圧ライン112と、第1スイッチ接点113および第2スイッチ接点114を備える。高圧ライン111は電源のプラス端子PTに接続され、低圧ライン112は電源のマイナス端子NTに接続される。なお電源のマイナス端子NT側は車体などにボディアースされている。
第1スイッチ接点113および第2スイッチ接点114は、第1入力端子113a,114a、第2入力端子113b,114bおよび一つの出力端子113c、114cを持つ2入力1出力型の切り換えスイッチ接点であり、車室内に設けられた窓開閉スイッチの操作により入出力端子間の接続状態が選択的に切り換えられる。第1入力端子113a,114aには高圧ライン111が、第2入力端子113b、114bには低圧ライン112が、それぞれ接続される。窓開閉スイッチが操作されていないときは、図に示されるように第2入力端子113b、114bが出力端子113c,114cに接続される。
検知スイッチ回路部120は、挟み込み検知スイッチ66と、不感帯領域検知スイッチ75と、反転作動領域検知スイッチ76と、これらのスイッチを直列に接続する通電経路であるスイッチライン121を有する。スイッチライン121の一端121aと他端121bは全てのスイッチの切り換え状態がON状態であるときに導通する。
ドライブ回路部130は、第1ラッチングリレー131と第2ラッチングリレー132とを備える。本実施形態においてこれらのラッチングリレー131,132は第1コイル131d、132dおよび第2コイル131e,132eを持つ2コイル型のラッチングリレーである。第1ラッチングリレー131においては、第1コイル131dに通電されたときに第1端子131aと第3端子131cが導通し、第2コイル131eに通電されたときに第2端子131bと第3端子131cが導通する。同様に、第2ラッチングリレー132においては、第1コイル132dに通電されたときに第1端子132aと第3端子132cが導通し、第2コイル132eに通電されたときに第2端子132bと第3端子132cが導通する。以下、第1ラッチングリレー131の第2端子131bと第3端子131cが導通しているような切り換え状態(図に示されている状態)を標準状態と呼び、第1端子131aと第3端子131cが導通しているような切り換え状態を反転状態と呼ぶ。同様に、第2ラッチングリレー132の第2端子132bと第3端子132cが導通しているような切り換え状態(図に示されている状態)を標準状態と呼び、第1端子132aと第3端子131cが導通しているような切り換え状態を反転状態と呼ぶ。また、第1ラッチングリレー131の第1コイル131dと第2コイル131eは直列接続される。同様に、第2ラッチングリレー132の第1コイル132dと第2コイル132eは直列接続される。
また、ドライブ回路部130は、通電経路として第1ライン133a,第2ライン133b,第3ライン133c,第4ライン133dを備える。第1ライン133aは第1ラッチングリレー131の第3端子131cと第1スイッチ接点113の出力端子113cとを電気的に接続する。第2ライン133bは第2ラッチングリレー132の第3端子132cと第2スイッチ接点114の出力端子114cとを電気的に接続する。第3ライン133cは、その一端にて電気モータ2の一方の給電端子である第1給電端子2aに電気的に接続される。またその他端側は2本のラインに分岐し、一方の分岐ラインが第1ラッチングリレー131の第2端子131bに、他方の分岐ラインが第2ラッチングリレー132の第1端子132aに、それぞれ接続される。第4ライン133dは、その一端にて電気モータ2の他方の給電端子である第2給電端子2bに電気的に接続される。またその他端側は2本のラインに分岐し、一方の分岐ラインが第1ラッチングリレー131の第1端子131aに、他方の分岐ラインが第2ラッチングリレー132の第2端子132bに、それぞれ接続される。なお、本実施形態において電気モータ2は正逆回転可能であり、第1給電端子2aから第2給電端子2bに向かう方向に電流が流れる場合には正方向に回転し、第2給電端子2bから第1給電端子2aに向かう方向に電流が流れる場合には逆方向に回転する。電気モータ2が正回転駆動した場合には窓ガラスWが閉作動し、逆回転駆動した場合には窓ガラスWが開作動する。
さらに、ドライブ回路部130は、第5ライン133eおよび第6ライン133fを有する。第5ライン133eの一端は検知スイッチ回路部120のスイッチライン121の一端121aに接続している。第5ライン133eの他端側は2本のラインに分岐し、一方の分岐ラインが第1ラッチングリレー131の第1コイル131dに、他方の分岐ラインが第2ラッチングリレー132の第1コイル132dに、それぞれ接続される。第6ライン133fの一端はスイッチライン121の他端121bに接続している。第6ライン133fの他端は第2ライン133bに接続している。この第6ライン133fには第1ダイオード134aが取り付けられている。第1ダイオード134aは、第6ライン133fの一端側(スイッチライン121の他端121bに接続されている側)から他端側(第2ライン133bに接続されている側)に向かう方向に流れる電流を通し、その反対方向へ流れる電流を遮断する。
さらに、ドライブ回路部130は、第7ライン133gおよび第8ライン133hを有する。第7ライン133gは、第1ラッチングリレー131の第2コイル131eと第2ラッチングリレー132の第2コイル132eとを接続する。第8ライン133hは、その一端にて第7ライン133gに接続され、その他端にて第1ライン133aに接続される。この第8ライン133hには第2ダイオード134bが取り付けられている。第2ダイオード134bは、第8ライン133hの一端側(第7ライン133gに接続されている側)から他端側(第1ライン133aに接続されている側)に向かう方向へ流れる電流を通し、その反対方向へ流れる電流を遮断する。
さらに、ドライブ回路部130は、第9ライン133i,第10ライン133jおよび第11ライン133kを有する。第9ライン133iは、その一端にて第1ライン133aに接続され、その他端にて第2ライン133bに接続される。本実施形態において、第9ライン133iの一端側は、第1ライン133aのうち、第1スイッチ接点113の出力端子113cとの接続点と第8ライン133hとの接続点との間の部分に接続される。また、第9ライン133iの他端側は、第2ライン133bのうち、第2スイッチ接点114の出力端子114cとの接続点と第6ライン133fとの接続点との間の部分に接続される。第10ライン133jは、その一端にて第9ライン133iに接続される。第10ライン133jの他端側は2つのラインに分岐しており、一方の分岐ラインは第1ラッチングリレー131の第1コイル131dと第2コイル131eとを直列に連結する導線部分に接続され、他方の分岐ラインは第2ラッチングリレー132の第1コイル132dと第2コイル132eとを直列に連結する導線部分に接続される。
また、第9ライン133iには第3ダイオード134cおよび第4ダイオード134dが取り付けられている。第3ダイオード134cは、第9ライン133iの一端(第1ライン133aに接続されている端部)と第10ライン133jに接続されている部分との間に設けられ、第4ダイオード134dは、第9ライン133iの他端(第2ライン133bに接続されている端部)と第10ライン133jに接続されている部分との間に設けられる。つまり、第3ダイオード134cと第4ダイオード134dは、第9ライン133iと第10ライン133jとの接続点を挟んで設けられている。第3ダイオード134cは、第9ライン133iの一端から他端に向かう方向へ流れる電流を通し、その反対方向へ流れる電流を遮断する。一方、第4ダイオード134dは、第9ライン133iの他端から一端に向かう方向へ流れる電流を通し、その反対方向へ流れる電流を遮断する。
第11ライン133kは、その一端にて第10ライン133jに接続される。第11ライン133kの他端側は接地(ボディアース)される。また、第11ライン133kにはコンデンサ135が取り付けられている。
このような回路構成において、窓開閉スイッチが操作されていないときには、上述したように第1スイッチ接点113の第2入力端子113bが出力端子113cに接続され、第2スイッチ接点114の第2入力端子114bが出力端子114cに接続される。このように接続された場合、第1入力端子113a,114aに接続された高圧ライン111が遮断されるので、電源のプラス端子PT側から電気モータ2に電力が供給されない。このため窓ガラスWは開閉作動しない。
また、窓ガラスWと窓枠との間に異物が挟み込まれていないときに窓ガラスWが閉作動するように窓開閉スイッチが操作された場合、図22に示されるように、第1スイッチ接点113の第1入力端子113aと出力端子113cとが接続され、第2スイッチ接点114の第2入力端子114bと出力端子114cとが接続される。これにより高圧ライン111が第1スイッチ接点113を介して第1ライン133aに接続される。またこのとき第1ラッチングリレー131の切り換え状態は標準状態(第2端子131bと第3端子131cが導通)にされている。このため第1ラッチングリレー131を介して第1ライン133aと第3ライン133cが接続される。よって、高圧ライン111,第1スイッチ接点113,第1ライン133a,第1ラッチングリレー131,第3ライン133cを経て、電源のプラス端子PTと電気モータ2の第1給電端子2aが電気的に接続される。
また、低圧ライン112は第2スイッチ接点114を介して第2ライン133bに接続される。またこのとき第2ラッチングリレー132の切り換え状態は標準状態(第2端子132bと第3端子132cとが導通)にされているので、第2ラッチングリレー132を介して第2ライン133bと第4ライン133dが接続される。よって、低圧ライン112,第2スイッチ接点114,第2ライン133b,第2ラッチングリレー132,第4ライン133dを経て、電源のマイナス端子NTと電気モータ2の第2給電端子2bが電気的に接続される。
このため図22の太線で示したような給電経路が形成されて、電源からの電力が電気モータ2に供給される。このとき電気モータ2の第1給電端子2aから第2給電端子2bへと電流が流れる。この方向に電流が流れるとき、電気モータ2は正回転する。電気モータ2が正回転することにより窓ガラスWが閉作動する。また、高圧ライン111から第1スイッチ接点113を通って第1ライン133aを流れる電流は、第9ライン133i側にも分流し、さらに第10ライン133jおよび第11ライン133kを流れる。第11ライン133kを流れる電流によって、第11ライン133kに取り付けられているコンデンサ135が充電される。
また、窓ガラスWが開作動するように窓開閉スイッチが操作された場合、図23に示されるように第1スイッチ接点113の第2入力端子113bと出力端子113cとが接続され、第2スイッチ接点114の第1入力端子114aと出力端子114cとが接続される。すると、高圧ライン111が第2スイッチ接点114を介して第2ライン133bに接続される。また第2ラッチングリレー132の切り換え状態は標準状態にされているので、第2ラッチングリレー132を介して第2ライン133bと第4ライン133dが接続される。よって、高圧ライン111,第2スイッチ接点114,第2ライン133b,第2ラッチングリレー132,第4ライン133dを経て、電源のプラス端子PTと電気モータ2の第2給電端子2bが電気的に接続される。
また、低圧ライン112は第1スイッチ接点113を介して第1ライン133aに接続される。このとき第1ラッチングリレー131の切り換え状態は標準状態にされているので、第1ラッチングリレー131を介して第1ライン133aと第3ライン133cが接続される。よって、低圧ライン112,第1スイッチ接点113,第1ライン133a,第1ラッチングリレー131,第3ライン133cを経て、電源のマイナス端子NTと電気モータ2の第1給電端子2aが電気的に接続される。
このため図の太線で示したような給電経路が形成されて、電源からの電力が電気モータ2に供給される。このとき図に示されるように電気モータ2の第2給電端子2bから第1給電端子2aに向かう方向へ電流が流れる。この方向に電流が流れるとき、電気モータ2は逆回転する。電気モータ2が逆回転することにより窓ガラスWが開作動する。また、高圧ライン111から第2スイッチ接点114を経て第2ライン133bに流れた電流は、第9ライン133i側にも分流し、さらに第10ライン133jおよび第11ライン133kを流れる。第11ライン133kを流れる電流によりコンデンサ135が充電される。
窓ガラスWの閉作動時に異物の挟み込みが検知された場合、挟み込み検知スイッチ66の切り換え状態がON状態になる。このとき不感帯領域検知スイッチ75の切り換え状態がON状態であり且つ反転作動領域検知スイッチ76の切り換え状態もON状態である場合、検知スイッチ回路部120のスイッチライン121の両端121a,121bが導通する。これにより、図24に示されるように、高圧ライン111−第1スイッチ接点113−第1ライン133a−第9ライン133i−第10ライン133j−第1ラッチングリレー131の第1コイル131dおよび第2ラッチングリレー132の第1コイル132d−第5ライン133e−スイッチライン121−第6ライン133f−第2ライン133b−第2スイッチ接点114−低圧ライン112をつなぐリレー回路に電流が流れる。これにより、第10ライン133jと第5ライン133eとの間に設けられている第1ラッチングリレー131の第1コイル131dおよび第2ラッチングリレー132の第1コイル132dが通電される。第1ラッチングリレー131の第1コイル131dへの通電により可動片131fが作動して第1端子131aと第3端子131cとが接続される。第2ラッチングリレー132の第1コイル132dへの通電により可動片132fが作動して第1端子132aと第3端子132cとが接続される。このようにして、第1,第2ラッチングリレー131,132の切り換え状態が標準状態から反転状態に切り換えられる。
上記のようなラッチングリレーの切り換え作動により、電源から電気モータ2への給電経路が図22から図25のように変化する。すなわち、高圧ライン111−第1スイッチ接点113−第1ライン133a−第1ラッチングリレー131−第4ライン133dを経て電源のプラス端子PTが電気モータ2の第2給電端子2bに接続され、低圧ライン112−第2スイッチ接点114−第2ライン133b−第2ラッチングリレー132−第3ライン133cを経て電源のマイナス端子NTが電気モータ2の第1給電端子2aに接続される。このため電気モータ2への給電方向が逆になり、電気モータ2は逆回転する。電気モータ2の逆回転により窓ガラスWが反転作動する。つまり、挟み込みが検知されたときは、窓が閉まるように窓開閉スイッチが操作されていても、窓ガラスWが開作動する。
挟み込み検知を受けて上記のように窓ガラスWが開作動した場合には挟み込み状態が解消するので、挟み込み検知スイッチ66の切り換え状態は再びOFF状態になる。すると、図24の太線で示された通電経路が形成されなくなるが、第1および第2ラッチングリレー131,132はコイルへの通電が終了された後においても永久磁石などの磁力により第1端子131a,132aと第3端子131c,132cとの接続を維持する。したがって、挟み込み検知スイッチ66の切り換え状態がOFF状態となった後も、窓が閉まるように窓開閉スイッチが操作されている限りは、図26に示されるように電気モータ2への給電経路は変化しない。よって、窓ガラスWの反転作動(開作動)が継続される。
その後、窓開閉スイッチの操作が停止されると、図27に示されるように、第1スイッチ接点113の第2入力端子113bが出力端子113cに接続され、第2スイッチ接点114の第2入力端子114bが出力端子114cに接続される。これにより電源のプラス端子PTと電気モータ2との間の電気的接続が断たれて窓ガラスWの反転作動(開作動)が停止する。このとき図の太線で示されるように、コンデンサ135の放電電流が第11ライン133k−第10ライン133j−第1ラッチングリレー131の第2コイル131eおよび第2ラッチングリレー132の第2コイル132e−第7ライン133g−第8ライン133h−第1ライン133a−低圧ライン112をつなぐリレー回路に流れる。このため第10ライン133jと第7ライン133gとの間に設けられている第1ラッチングリレー131の第2コイル131eおよび第2ラッチングリレー132の第2コイル132eが通電される。第1ラッチングリレー131の第2コイル131eへの通電により可動片131fが作動して第2端子131bと第3端子131cとが接続される。第2ラッチングリレー132の第2コイル132eへの通電により可動片132fが作動して第2端子132bと第3端子132cとが接続される。このように、反転作動後に窓開閉スイッチの操作を停止したときに両ラッチングリレーの切り換え状態が反転状態から標準状態に切り換えられる。この切り換え状態は、その後に反転作動が行われるまで(つまりその後に全てのスイッチ66,75,76の切り換え状態がON状態になるまで)維持される。
その後、窓開閉スイッチが開作動方向に操作されると図23に示される経路にしたがって電流が流れて窓ガラスWが開作動する。また窓開閉スイッチが閉作動方向に操作されると図22に示される経路にしたがって電流が流れて窓ガラスWが閉作動する。このように、本実施形態においては、ECUを用いることなく窓ガラスWが自動開閉され、且つ挟み込みが検知された場合に窓ガラスWが自動的に反転作動される。
以上のように、本実施形態のウィンドレギュレータ装置の挟み込み検知ユニット6は、電気モータ2の動力により回転するウォームホイール61と、出力軸3に一体回転可能且つ軸方向移動可能に連結されるとともに、ウォームホイール61に対面するようにウォームホイール61と同軸的に配置された出力側回転部材(被駆動プレート63および挟み込み検知プレート65)と、窓ガラスWが閉作動するようにウォームホイール61がX方向に回転したときに、その回転駆動力を出力側回転部材に伝達するように、ウォームホイール61と被駆動プレート63との間に介装された駆動力伝達バネ62と、ウォームホイール61が出力側回転部材に対してX方向に相対回転したときに、その相対回転に伴い挟み込み検知プレート65が軸方向移動するように、ウォームホイール61および出力側回転部材の対向面(ウォームホイール61の外周壁部61aの上端面および挟み込み検知プレート65の下面)に形成されたカム手段(突片612および突片652)と、挟み込み検知プレート65の軸方向移動に基づいて切り換え作動する挟み込み検知スイッチ66とを備える。
本実施形態によれば、窓ガラスWと窓枠との間に異物が挟み込まれたときに、ウォームホイール61が挟み込み検知プレート65に対してX方向に相対回転する。相対回転時にウォームホイール61および挟み込み検知プレート65の対向面にそれぞれ形成されている突片612と突片652が係合する。この係合により挟み込み検知プレート65が軸方向に移動する。このとき挟み込み検知プレート65は回転せずに軸方向に移動するため、挟み込み検知プレート65は挟み込み検知スイッチ66の可動片663に回転することなく接触する。よって挟み込み検知プレート65と挟み込み検知スイッチ66との接触時に回転による摩耗が発生しない。したがって、摩耗による挟み込み検知精度の悪化が防止される。また、挟み込み検知プレート65が回転せずに軸方向移動するため、挟み込み検知プレート65の軸方向移動を挟み込み検知プレート65の周方向にわたって検知しなくてもよい。よって、挟み込み検知プレート65の軸方向移動のみに基づいて切り換え作動するコンパクトな挟み込み検知スイッチ66を用いることができる。
また、本実施形態の挟み込み検知ユニット6は、挟み込み検知プレート65を軸方向移動させるためのカム手段として、ウォームホイール61の外周壁部61aの上端面に周方向に沿って凸状に形成された突片612と、挟み込み検知プレート65の下方面に周方向に沿って凸状に形成された突片652とを備える。突片612と突片652はウォームホイール61が挟み込み検知プレート65に対してX方向に相対回転したときに係合するように配置形成されている。そして、突片612および突片652には、これらの係合時に挟み込み検知プレート65が軸方向移動するように、X方向に対して傾斜したテーパ面612a,652aがそれぞれ形成されている。このためこれらの係合時に、テーパ面上を相手部材が滑ることにより挟み込み検知プレート65が確実に軸方向移動される。
また、ウォームホイール61の周方向に沿って同一形状の突片612が複数個(本実施形態では4個)設けられているとともに、挟み込み検知プレート65の周方向に沿って同一形状の突片652が突片612と同数個(4個)設けられている。そして、ウォームホイール61が挟み込み検知プレート65に対してX方向に相対回転したときに、全ての突片612が同時に全ての突片652に係合する。このため挟み込み検知プレート65は周方向に傾くことなく水平状態を保ったまま軸方向移動する。よって、挟み込み検知プレート65の傾きにより挟み込み検知スイッチ66の切り換え作動が不安定になることが防止され、ひいては挟み込みの検知精度の悪化が防止される。
また、複数の突片612はウォームホイール61の周方向に等間隔に配設され、複数の突片652は挟み込み検知プレート65の周方向に等間隔に配設されている。このため挟み込み検知プレート65が周方向にまんべんなく軸方向移動する。よって軸方向移動時の水平状態をより一層保つことができる。
また、出力側回転部材が、出力軸3に一体回転可能且つ軸方向移動不能に連結されるとともにウォームホイール61がX方向に回転したときにその回転駆動力が駆動力伝達バネ62を介して伝達される被駆動プレート63と、被駆動プレート63に一体回転可能且つ軸方向移動可能に連結された挟み込み検知プレート65とにより構成される。また挟み込み検知プレート65に突片652が形成される。このように出力側回転部材を、ウォームホイール61からの回転駆動力を出力軸3に伝達する部材(被駆動プレート63)と挟み込み時に軸方向移動する部材(挟み込み検知プレート65)との組み付け体で構成することにより、比較的安価に出力側回転部材を作製することができる。
また、挟み込み検知スイッチ66は、基板661に形成された第1導電部662aおよび第2導電部662bと、可動片663とを備えているとともに、挟み込み検知プレート65の軸方向移動により可動片663と第2導電部662bとの接触状態が変化する位置に配設されている。このような簡易な挟み込み検知スイッチ66により、挟み込み検知プレート65の軸方向移動に基づいて簡単に異物の挟み込みを検知することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定して解釈されるべきものではない。例えば上記実施形態においては被駆動プレート63および挟み込み検知プレート65により出力側回転部材が構成されているが、一つの回転部材によって出力側回転部材が構成されていてもよい。この場合、例えば一つの出力側回転部材をスプライン嵌合などにより出力軸に一体回転可能且つ軸方向移動可能に連結すればよい。
また、上記実施形態においては、異物の挟み込み時に挟み込み検知プレート65がウォームホイール61から離間する方向に軸方向移動する例を示したが、異物の挟み込み時に挟み込み検知プレート65がウォームホイール61に近づく方向に軸方向移動してもよい。この場合、例えば図28に示されるように、異物が挟み込まれていないとき(ウォームホイール61と挟み込み検知プレート65が同期回転しているとき)に突片612の先端辺と突片652の先端辺が接触するように両者が配置される(図28(a)参照)。異物が挟み込まれてウォームホイール61が挟み込み検知プレート65に対して相対回転したときは、突片652が突片612のテーパ面612aを下る(図28(b)参照)。これにより挟み込み検知プレート65をウォームホイール61に近づく方向に軸方向させることができる。
また、上記実施形態においては、突片612と突片652の両方にテーパ面612a,652aが形成されている例を示したが、これらの突片の少なくともいずれか一方にテーパ面が形成されていればよい。一方にテーパ面が形成されていれば、両突片612,652の係合時に一方に形成されたテーパ面上を相手部材が滑りながら移動することによって、挟み込み検知プレート65を軸方向移動させることができる。
また、上記実施形態においては、挟み込み検知プレート65を軸方向に移動させるためのカム手段として凸状に形成された突片612および突片652を用いた例を示したが、凹状に形成された凹部をカム手段として用いてもよい。この場合、例えば図29に示されるように、ウォームホイール61の外周壁部61aの上端面に、一方の端面がテーパ面613aとされた凹部613が形成される。そして、異物が挟み込まれていないときには突片652が凹部613内に配置される(図29(a)参照)。異物が挟み込まれてウォームホイール61が挟み込み検知プレート65に対して相対回転したときには、突片652が凹部613のテーパ面613aに乗り上げる(図29(b)参照)。このように構成した場合でも、挟み込み検知プレート65を軸方向移動させることができる。
また、上記実施形態ではアーム式のウィンドレギュレータ装置を例示したが、ケーブル式その他のウィンドレギュレータ装置であってもよい。なお、アーム式のウィンドレギュレータ装置でない場合は、リフトアームの回転位置によって出力軸に作用するモーメントが変化することはない。よって、モーメントの変化による挟み込みの誤検知が発生しないので、この誤検知による誤作動防止のために設けられている第2歯車72上のカム72aや反転作動領域検知スイッチ76を省略することができる。また、上記実施形態においては車両のサイドウィンドウに設けられた窓ガラスを開閉するためのウィンドレギュレータ装置を例示したが、車両のルーフウィンドウに設けられる窓ガラスなど他の窓ガラスの自動開閉装置として本発明に係るウィンドレギュレータ装置を適用することができる。本発明は、その趣旨を逸脱しない限りに於いて変形可能である。