JP5195125B2 - 車両用駆動装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ハイブリット車両の駆動系等に適用され、動力源と変速機がクラッチを介して接続され、クラッチの締結制御を、変速機の油圧制御ユニットにより作り出されたクラッチ制御圧に基づいて行う車両用駆動装置に関する。
従来、エンジンと自動変速機が乾式クラッチを介して接続され、自動変速機の油圧コントロールバルブユニットにより作り出されたクラッチ圧を用いて前記乾式クラッチの油圧によって駆動されるレリーズ機構を動作制御するハイブリッド車両用駆動装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このハイブリッド車両用駆動装置では、接続状態の乾式クラッチを遮断する場合、油圧コントロールバルブユニットからのクラッチ圧を、第1供給路、第2供給路、第3供給路、接続部を通ってレリーズ機構のシリンダーに供給する。一方、遮断状態の乾式クラッチを接続する場合、レリーズ機構のシリンダーに供給していたクラッチ圧の作動油をドレーンする。
特開2007−1457号公報
しかしながら、従来のハイブリッド車両用駆動装置にあっては、油圧コントロールバルブユニットにより作り出した変速機作動油によるクラッチ圧を、油路を介してそのままレリーズ機構のシリンダーに供給する構成としていたため、変速機作動油に混入しているミスト状の気泡がレリーズ機構のシリンダーに入ってしまい、初期にシリンダーのエア抜きをしても徐々に気泡が溜まり、乾式クラッチの動作応答性が悪化してしまう、という問題があった。
さらに、変速機作動油は、自動変速機で発生した摩耗粉等のコンタミを混入しており、このコンタミがレリーズ機構のシリンダーに入ってしまい、シリンダーのシールを傷つけることで、シール性や耐久信頼性を低下させる、という問題があった。
特に、乾式クラッチの場合、レリーズフォークの代わりに、油圧アクチュエータとしてコンセントリックスレイブシリンダー(以下、「CSC(Concentric Slave Cylinderの略)」という。)を用い、レリーズベアリングを介してダイヤフラムスプリングに対する押圧力を制御している。この場合、単に乾式クラッチの断接制御を行うばかりでなく、スリップ締結状態(=半クラッチ状態)を含んできめ細かく制御している。しかし、CSCに気泡が溜まったり、CSCのシール性が低下したりすると、クラッチ動作制御の精度を悪化させ、乾式クラッチの動作制御を伴うモード切り替え時等において、ショックや間延び感を発生させる原因となる。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、クラッチ締結制御時、変速作動油の気泡やコンタミの影響を排除することで、油圧アクチュエータの耐久信頼性を確保しながら、クラッチ動作制御の精度を向上させることができる車両用駆動装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明では、動力源と変速機がクラッチを介して接続され、前記変速機の油圧制御ユニットにより作り出されたクラッチ制御圧に基づいて前記クラッチの締結制御を行う車両用駆動装置において、前記油圧制御ユニットと前記クラッチの油圧アクチュエータを連通するクラッチ制御圧路の途中位置に油圧変換手段を設けた。
前記油圧変換手段は、前記クラッチ制御圧を前記油圧アクチュエータへのクラッチ作動圧に変換すると共に、変速機作動油とクラッチ作動油を別系統の作動油として切り分ける。
そして、前記油圧変換手段を、第1ピストンを有するマスターシリンダーと、前記第1ピストンに連結された第2ピストンを有するスレイブシリンダーによる油圧変換シリンダーであり、前記油圧制御ユニットから前記マスターシリンダーまでの油圧回路と、前記スレイブシリンダーから前記油圧アクチュエータまでの油圧回路を閉回路とした。
よって、本発明の車両用駆動装置にあっては、クラッチ締結制御時、油圧変換手段において、変速機の油圧制御ユニットにより作り出されたクラッチ制御圧が、変速機作動油とは別系統のクラッチ作動油によるクラッチ作動圧に変換される。そして、変換されたクラッチ作動圧を、油圧アクチュエータへ供給することで、クラッチの締結状態や解放状態が制御される。
このように、クラッチ作動油を、変速機作動油とは別系統の作動油として切り分けているため、変速機作動油に混入しているミスト状の気泡が、クラッチの油圧アクチュエータに溜まることが無い。また、変速機作動油に混入しているコンタミが油圧アクチュエータのシール性を低下させたりシールを傷付けたりすることが無い。すなわち、クラッチ動作応答性を悪化させる変速機作動油の気泡やコンタミによる影響が排除される。
この結果、クラッチ締結制御時、変速作動油の気泡やコンタミの影響を排除することで、油圧アクチュエータの耐久信頼性を確保しながら、クラッチ動作制御の精度を向上させることができる。
加えて、油圧制御ユニットからマスターシリンダーまでの油圧回路と、スレイブシリンダーから油圧アクチュエータまでの油圧回路を閉回路とすることで、2つの油圧回路からの油漏れのリスクを減少することができる。
以下、本発明の車両用駆動装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の車両用駆動装置を適用したハイブリッド車両の駆動系を示す概略図である。
実施例1の車両用駆動装置を適用した後輪駆動によるハイブリッド車両(車両の一例)の駆動系は、図1に示すように、エンジン1(動力源)と、フライホイール2と、エンジンクラッチ3(クラッチ)と、モータージェネレータ4と、自動変速機5(変速機)と、プロペラシャフト6と、ディファレンシャル7と、左ドライブシャフト8と、右ドライブシャフト9と、左後輪10と、右後輪11と、を備えている。なお、図1中で、12は左前輪であり、13は右前輪である。
前記エンジン1は、そのエンジン出力軸14にフライホイール2が設けられ、エンジンクラッチ3を介して変速機入力軸15に連結される。前記エンジンクラッチ3は、制御型の乾式クラッチであり、自動変速機5の油圧コントロールバルブユニット52(油圧制御ユニット)により作り出されたクラッチ制御圧を用い、クラッチ締結(スリップ締結を含む。)とクラッチ解放(スリップ解放を含む。)が制御される。
前記モータージェネレータ4は、永久磁石を埋設するとともに前記変速機入力軸15に連結されるロータ4aと、積層板によるステータコアにステータコイルが巻き付けられたステータ4bと、を有する同期型モータージェネレータである。このモータージェネレータ4は、駆動機能と回生機能と発電機能を有する。前記駆動機能は、バッテリ充電容量が確保されている走行時等において、ステータコイルに三相交流の電流を印加することで回転駆動する機能をいう。前記回生機能は、制動時や減速時等において、前記変速機入力軸15に制動トルクを付与することで発生する発電エネルギー分を回生する機能をいう。前記発電機能は、バッテリ充電容量が不足している走行時等において、エンジン1からの駆動力の一部によりロータ4aを回転駆動させることで発電する機能をいう。
前記自動変速機5は、例えば、プラネタリギア列と摩擦締結要素を有し、摩擦締結要素の掛け替え変速により複数の前進変速段を得る有段変速機である。この自動変速機5の変速機出力軸16には、プロペラシャフト6とディファレンシャル7が連結され、このディファレンシャル7に、左後輪10を有する左ドライブシャフト8と、右後輪11を有する右ドライブシャフト9が連結されている。
そして、ハイブリッド車両は、走行条件やバッテリ容量条件等に応じて、「ハイブリッド車走行モード」、「エンジン車走行モード」、「電気自動車走行モード」等から最適な走行モードを選択する制御が行われる。前記「ハイブリッド車走行モード」は、エンジンクラッチ3を締結し、エンジン1とモータージェネレータ4を動力源として走行するモードをいう。前記「エンジン車走行モード」は、エンジンクラッチ3を締結し、モータージェネレータ4により発電しながらエンジン1のみを動力源として走行するモードをいう。前記「電気自動車走行モード」は、エンジンクラッチ3を解放し、モータージェネレータ4のみを動力源として走行するモードをいう。
図2は、ハイブリッド車両の駆動系に有する実施例1の車両用駆動装置を示す一部断面図である。
実施例1の車両用駆動装置は、エンジン1と自動変速機5がエンジンクラッチ3を介して接続され、図2に示すように、自動変速機5の油圧コントロールバルブユニット52により作り出されたクラッチ制御圧Pccを用いてエンジンクラッチ3の締結制御を行う。
前記エンジンクラッチ3は、エンジン1と自動変速機5の間に連結されるクラッチ&モーターケース61(クラッチケース)に収容された乾式単板クラッチである。このエンジンクラッチ3は、図2に示すように、クラッチカバー31と、プレッシャープレート32と、ダイヤフラムスプリング33と、クラッチディスク34と、トーショナルダンパー35と、を備えている。
前記クラッチカバー31は、回転するクラッチ機構を支えている金属カバーで、フライホイール2に固定されており、エンジン1の回転中は常時回転している。前記クラッチカバー31の内側には、プレッシャープレート32が取り付けられている。また、クラッチカバー31の中央部分に、ダイヤフラムスプリング33が取り付けられており、ダイヤフラムスプリング33の力でプレッシャープレート32とクラッチディスク34を密着させる役目をしている。前記クラッチディスク34の両面には、ライニングと呼ばれる摩耗材が張りつけてある。そして、クラッチディスク34には、接触時の衝撃を緩和するため、トーショナルダンパー35と呼ばれるスプリング(通常4〜6個)が装着されている。
この実施例1の車両用駆動装置において、油圧コントロールバルブユニット52とエンジンクラッチ3のCSC20(油圧アクチュエータ)を連通するクラッチ制御圧路の途中位置に、油圧変換シリンダー40(油圧変換手段)を設けている。この油圧変換シリンダー40は、クラッチ制御圧PccをCSC20へのクラッチ作動圧Pcaに変換すると共に、変速機作動油(ATF)とクラッチ作動油(CSC専用油)を別系統の作動油として切り分けている。
前記CSC20は、エンジン1と自動変速機5の間に連結されるクラッチ&モーターケース61に収容され、エンジンクラッチ3と同軸上に配置された油圧アクチュエータである。このCSC20は、図2に示すように、CSCシリンダー21と、CSCピストン22と、CSCスプリング23と、レリーズベアリング24と、スプリング押圧プレート25と、クラッチ作動圧室26と、クラッチ作動圧ポート27と、を備えている。
前記レリーズベアリング24は、スプリング押圧プレート25を介してダイヤフラムスプリング33に対し力を加え、エンジンクラッチ3を切ったり繋いだりするベアリングである。このレリーズベアリング24は、CSCピストン22に加わる力(ダイヤフラムスプリング33による力、CSCスプリング23による力、クラッチ作動圧Pcaによる力)の関係により軸方向にスライドする。なお、レリーズベアリング24が、図2の上部に示すように、エンジンクラッチ3側に進出した位置で、エンジンクラッチ3が切れた状態になる。一方、図2の下部に示すように、自動変速機5側に後退した位置で、エンジンクラッチ3が接続した状態になる。
前記油圧変換シリンダー40は、図2に示すように、第1ピストン41aを有するマスターシリンダー41と、第1ピストン41aと同軸上にて連結された第2ピストン42aを有するスレイブシリンダー42による構成である。
前記マスターシリンダー41は、自動変速機51の油圧コントロールバルブユニット52により作り出されたクラッチ制御圧Pccを導く第1制御圧室41bを有する。そして、油圧コントロールバルブユニット52と第1制御圧室41bは、変速機ケース51に形成されたクラッチ制御圧油路43により連結されている。
前記スレイブシリンダー42は、第1ピストン41aと第2ピストン42aにより第1制御圧室41bと画成され、CSC20へのクラッチ作動圧Pcaを作り出す第2制御圧室42bを有する。そして、第2制御圧室42bとCSC20のクラッチ作動圧ポート27は、クラッチ&モーターケース61内にてクラッチ作動圧パイプ44により連結されている。
前記マスターシリンダー41のクラッチ制御圧Pccを受圧する第1ピストン径D1を、前記スレイブシリンダー42のクラッチ作動圧Pcaを受圧する第2ピストン径D2より大きな径に設定している。
前記マスターシリンダー41は、図2に示すように、自動変速機5の変速機ケース51に取り付けている。そして、自動変速機5の油圧コントロールバルブユニット52からマスターシリンダー41までのクラッチ制御圧油路43のうち、マスターシリンダー41よりも高い位置に、変速機作動油(ATF)に含まれる気泡を抜くエア抜きオリフィス45(エア抜き手段)を設けている。このエア抜きオリフィス45は、エア抜き方向にのみ開くワンウェイバルブ46を有する。
前記スレイブシリンダー42は、エンジンクラッチ3及びCSC20が収容されたクラッチ&モーターケース61に取り付けている。そして、スレイブシリンダー42に、第2ピストン42aのピストンストロークを検出するストロークセンサー47を設けている。このストロークセンサー47は、第2ピストン42aに設けられた磁石47aと、磁石47aによる磁力線位置を電気的に検知する位置センサ部47bと、により構成されている。なお、このストロークセンサー47により検出されたセンサ値は、エンジンクラッチ3の締結制御情報として用いられる。
前記クラッチ&モーターケース61の外側位置には、図2に示すように、電動モータにより駆動されるオイルポンプ48が設けられている。
次に、作用を説明する。
まず、「CSC動作制御の課題」の説明を行い、続いて、実施例1の車両用駆動装置における作用を、「作動油の切り分け作用」、「油圧変換シリンダーでの油漏れ防止作用」、「クラッチ動作応答性の向上作用」、「クラッチ作動圧の補正作用」、「ストロークセンサーの設定自由度確保作用」に分けて説明する。
[CSC動作制御の課題]
図3は、ハイブリッド車両の駆動系に有する現行の車両用駆動装置を示す一部断面図である。
現行の車両用駆動装置は、図3に示すように、CSCの作動油は、自動変速機内の油圧コントロールバルブユニットで制御された変速機作動油(ATF)を、CSCパイプにより直接CSCシリンダー内に送っていた。そして、ストロークセンサーでCSCピストンの移動量を測定し、この測定情報を、エンジンクラッチの締結制御に用いていた。したがって、現行のCSC動作制御方式では、下記に列挙するような課題があった。
(課題1)
自動変速機内の変速機作動油を、直接CSCに圧送しているため、変速機作動油に混入している細かい気泡、コンタミ等がそのままCSCに送り込まれる。したがって、CSCシリンダー内にてエア抜きをしても、徐々にエアが溜まり、CSCの応答性を悪化させる。さらに、コンタミでCSCのシールを傷つけ、油漏れの原因になっていた。
(課題2)
CSCピストンの位置を検出しているストロークセンサーが、CSC本体に取り付けられているため、レイアウトの困難性や、センサーケーブルの取り出し等、形状の制約があった。つまり、ストロークセンサーの設置スペースを確保しておく必要があるし、センサーケーブルのレイアウト場所も確保しておく必要がある。
(課題3)
油圧コントロールバルブユニットで作り出されたCSC作動油圧で、乾式単板クラッチを切るため、乾式単板クラッチを切るのに十分な油圧レベルまでCSC作動油圧を上げる必要がある。この結果、オイルポンプが大型化したり、エネルギー損失が大きくなったり、ピストンの受圧面積を増やした専用CSCの開発する必要がある等、制約のある構成となっていた。
[作動油の切り分け作用]
実施例1の車両用駆動装置にあっては、エンジンクラッチ3の締結制御時、油圧変換シリンダー40において、自動変速機5の油圧コントロールバルブユニット52により作り出されたクラッチ制御圧Pccが、変速機作動油とは別系統のクラッチ作動油によるクラッチ作動圧Pcaに変換される。そして、変換されたクラッチ作動圧Pcaを、CSC20へ供給することで、エンジンクラッチ3の締結状態や解放状態が制御される。
このように、クラッチ作動油を、変速機作動油とは別系統の作動油として切り分けているため、変速機作動油に混入しているミスト状の気泡が、エンジンクラッチ3のCSC20に溜まることが無い。また、変速機作動油に混入しているコンタミがCSC20のシール性を低下させることが無い。すなわち、クラッチ動作応答性を悪化させる変速機作動油の気泡やコンタミによる影響が排除される。
[油圧変換シリンダーでの油漏れ防止作用]
実施例1の車両用駆動装置において、自動変速機5の油圧コントロールバルブユニット52により作り出されたクラッチ制御圧Pccは、クラッチ制御圧油路43を経過してマスターシリンダー41の第1制御圧室41bに導かれる。そして、マスターシリンダー41の第1ピストン41aにより発生した力は、第1ピストン41aに連結されているスレイブシリンダー42の第2ピストン42aに伝達される。一方、第2制御圧室42bにおいて、CSC20へのクラッチ作動圧Pcaが作り出され、クラッチ作動圧パイプ44を介し、CSC20のクラッチ作動圧ポート27に供給される。
したがって、自動変速機5側の変速機作動油による油圧回路は、油圧コントロールバルブユニット52からマスターシリンダー41の第1制御圧室41bまでの閉回路となる。一方、エンジンクラッチ3側のクラッチ作動油による油圧回路は、スレイブシリンダー42の第2制御圧室42bからCSC20のクラッチ作動圧室26までの閉回路となる。このように、2つの油圧回路を閉回路とすることができるため、2つの油圧回路からの油漏れのリスクを減少することができる。特に、実施例1のように、自動変速機5側の油圧回路を変速機ケース51に形成し、エンジンクラッチ3側の油圧回路を、クラッチ&モーターケース61に形成するようにした場合、2つの油圧回路からの油漏れのリスクを確実に低減することができる。
[クラッチ動作応答性の向上作用]
上記のように、実施例1の車両用駆動装置において、自動変速機5の油圧コントロールバルブユニット52により作り出されたクラッチ制御圧Pccは、クラッチ制御圧油路43を経過してマスターシリンダー41の第1制御圧室41bに導かれる。このとき、変速機作動油に気泡が含まれる場合、クラッチ制御圧油路43に設けられたエア抜きオリフィス45から変速機作動油に含まれる気泡を取り除くことができる。
したがって、マスターシリンダー41の第1制御圧室41bに導かれる変速機作動油に気泡が含まれなくなり、第1制御圧室41bに気泡が溜まることもないため、クラッチ制御圧Pccからクラッチ作動圧Pcaへの油圧変換応答性が確保される。この結果、エンジンクラッチ3の動作応答性を向上させることができる。
[クラッチ作動圧の補正作用]
実施例1では、マスターシリンダー41のクラッチ制御圧Pccを受圧する第1ピストン径D1を、スレイブシリンダー42のクラッチ作動圧Pcaを受圧する第2ピストン径D2より大きな径に設定している。そして、第1ピストン41aと第2ピストン42aに作用する力の関係は、
Pcc×(D1/2)2×π=Pca×(D2/2)2×π
となる。
したがって、クラッチ作動圧Pcaは、クラッチ制御圧Pccの(D1/D2)2倍となる。
このように、第1ピストン径D1と第2ピストン径D2を任意に変更することで、クラッチ作動圧PcaとCSC20のCSCピストン22の径の関係を、自由に補正できるようになる。
この結果、スレイブシリンダー42の第2ピストン径D2より、マスターシリンダー41の第1ピストン径D1を大きく設定すると、低い油圧でCSC20を作動させることができる。つまり、CSC20の大きさに合わせて高油圧を、油圧コントロールバルブユニット52により発生させることが無くなる。そして、油圧を下げることができた分、オイルポンプ48を小型化できるし、エネルギー損失も低く抑えることができる。さらに、CSC20の径の大きさに対する油圧コントロールバルブユニット52での発生油圧の制約が無くなることで、市販品のCSCを流用することができ、コスト的にも有利となる。
[ストロークセンサーの設定自由度確保作用]
ストロークセンサー47は、エンジンクラッチ3及びCSC20が収容されたクラッチ&モーターケース61に取り付けているスレイブシリンダー42に設定される。これは、CSC20のCSCピストン22のピストンストロークと、スレイブシリンダー42の第2ピストン42aのピストンストロークと、が比例動作することによる。
したがって、ストロークセンサー47を、CSC20からレイアウト自由度の高い位置へ外出し化することができることになり、CSC20の周りの形状と、センサーケーブルの配索を簡素化することができる。
次に、効果を説明する。
実施例1の車両用駆動装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) 動力源(エンジン1)と変速機(自動変速機5)がクラッチ(エンジンクラッチ3)を介して接続され、前記変速機の油圧制御ユニット(油圧コントロールバルブユニット52)により作り出されたクラッチ制御圧Pccを用いて前記クラッチの締結制御を行う車両用駆動装置において、前記油圧制御ユニットと前記クラッチの油圧アクチュエータ(CSC20)を連通するクラッチ制御圧路の途中位置に、クラッチ制御圧Pccを油圧アクチュエータへのクラッチ作動圧Pcaに変換すると共に、変速機作動油(ATF)とクラッチ作動油(CSC専用油)を別系統の作動油として切り分ける油圧変換手段(油圧変換シリンダー40)を設けた。このため、クラッチ締結制御時、変速作動油(ATF)の気泡やコンタミの影響を排除することで、油圧アクチュエータ(CSC20)の耐久信頼性を確保しながら、クラッチ動作制御の精度を向上させることができる。
(2) 前記油圧変換手段は、第1ピストン41aを有するマスターシリンダー41と、前記第1ピストン41aに連結された第2ピストン42aを有するスレイブシリンダー42による油圧変換シリンダー40であり、前記マスターシリンダー41は、前記変速機(自動変速機5)の油圧制御ユニット(油圧コントロールバルブユニット52)により作り出されたクラッチ制御圧Pccを導く第1制御圧室41bを有し、前記スレイブシリンダー42は、前記第1ピストン41aと前記第2ピストン42aにより前記第1制御圧室41bと画成され、前記油圧アクチュエータ(CSC20)へのクラッチ作動圧Pcaを作り出す第2制御圧室42bを有する。このため、油圧制御ユニット(油圧コントロールバルブユニット52)からマスターシリンダー41までの油圧回路と、スレイブシリンダー42から油圧アクチュエータ(CSC20)までの油圧回路を閉回路とすることで、2つの油圧回路からの油漏れのリスクを減少することができる。
(3) 前記マスターシリンダー41のクラッチ制御圧Pccを受圧する第1ピストン径D1を、前記スレイブシリンダー42のクラッチ作動圧Pcaを受圧する第2ピストン径D2より大きな径に設定した。このため、クラッチ制御圧Pccに対するクラッチ作動圧Pcaの補正作用を示し、この結果、オイルポンプ48の小型化、エネルギー損失の低減、コスト的な有利性を達成することができる。
(4) 前記マスターシリンダー41を、前記変速機(自動変速機5)の変速機ケース51に取り付け、前記変速機の油圧制御ユニット(油圧コントロールバルブユニット52)から前記マスターシリンダー41までのクラッチ制御圧油路43に、変速機作動油に含まれる気泡を抜くエア抜き手段(エア抜きオリフィス45)を設けた。このため、クラッチ制御圧Pccからクラッチ作動圧Pcaへの油圧変換応答性の確保作用により、エンジンクラッチ3の動作応答性を向上させることができる。
(5) 前記スレイブシリンダー42を、前記クラッチ(エンジンクラッチ3)及び前記油圧アクチュエータ(油圧コントロールバルブユニット52)が収容されたクラッチケース(クラッチ&モーターケース61)に取り付け、前記スレイブシリンダー42に、前記第2ピストン42aのピストンストロークを検出するストロークセンサー47を設けた。このため、ストロークセンサー47を、油圧アクチュエータ(CSC20)からレイアウト自由度の高い位置へ外出し化することにより、油圧アクチュエータの周りの形状を簡素化することができるし、センサーケーブルの配索を簡素化することができる。
以上、本発明の車両用駆動装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1では、油圧変換手段として、第1ピストン41aを有するマスターシリンダー41と、第1ピストン41aに連結された第2ピストン42aを有するスレイブシリンダー42による油圧変換シリンダー40の例を示した。しかし、1つのピストンやダイアフラムにより2室を画成するような例としても良い。要するに、油圧変換手段としては、クラッチ制御圧を油圧アクチュエータへのクラッチ作動圧に変換すると共に、変速機作動油とクラッチ作動油を別系統の作動油として切り分けるものであれば、具体的な構成は実施例1の構成に限定されない。
実施例1では、動力源をエンジンとし、変速機入力軸にモータージェネレータが連結されたFRハイブリッド車両の駆動装置に対する適用例を示したが、FFハイブリッド車両の駆動装置やエンジン車両の駆動装置に対しても適用することができる。また、動力源をモータとする電気自動車の駆動装置や燃料電池車の駆動装置に対しても適用することができる。要するに、動力源と変速機がクラッチを介して接続され、変速機の油圧制御ユニットにより作り出されたクラッチ制御圧に基づいてクラッチの締結制御を行う車両用駆動装置であれば適用できる。
実施例1の車両用駆動装置を適用したハイブリッド車両の駆動系を示す概略図である。 ハイブリッド車両の駆動系に有する実施例1の車両用駆動装置を示す一部断面図である。 ハイブリッド車両の駆動系に有する現行の車両用駆動装置を示す一部断面図である。
符号の説明
1 エンジン(動力源)
3 エンジンクラッチ(クラッチ)
20 CSC(油圧アクチュエータ)
40 油圧変換シリンダー(油圧変換手段)
41 マスターシリンダー
41a 第1ピストン
41b 第1制御圧室
42 スレイブシリンダー
42a 第2ピストン
42b 第2制御圧室
45 エア抜きオリフィス(エア抜き手段)
47 ストロークセンサー
48 オイルポンプ
5 自動変速機(変速機)
51 変速機ケース
52 油圧コントロールバルブユニット(油圧制御ユニット)
61 クラッチ&モーターケース(クラッチケース)
Pcc クラッチ制御圧
Pca クラッチ作動圧
D1 第1ピストン径
D2 第2ピストン径

Claims (5)

  1. 動力源と変速機がクラッチを介して接続され、前記変速機の油圧制御ユニットにより作り出されたクラッチ制御圧に基づいて前記クラッチの締結制御を行う車両用駆動装置において、
    前記油圧制御ユニットと前記クラッチの油圧アクチュエータを連通するクラッチ制御圧路の途中位置に、前記クラッチ制御圧を前記油圧アクチュエータへのクラッチ作動圧に変換すると共に、変速機作動油とクラッチ作動油を別系統の作動油として切り分ける油圧変換手段を設け
    前記油圧変換手段は、第1ピストンを有するマスターシリンダーと、前記第1ピストンに連結された第2ピストンを有するスレイブシリンダーによる油圧変換シリンダーであり、前記油圧制御ユニットから前記マスターシリンダーまでの油圧回路と、前記スレイブシリンダーから前記油圧アクチュエータまでの油圧回路を閉回路とし
    ことを特徴とする車両用駆動装置。
  2. 請求項1に記載された車両用駆動装置において
    記マスターシリンダーは、前記変速機の油圧制御ユニットにより作り出されたクラッチ制御圧を導く第1制御圧室を有し、
    前記スレイブシリンダーは、前記第1ピストンと前記第2ピストンにより前記第1制御圧室と画成され、前記油圧アクチュエータへのクラッチ作動圧を作り出す第2制御圧室を有する
    ことを特徴とする車両用駆動装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載された車両用駆動装置において、
    前記マスターシリンダーのクラッチ制御圧を受圧する第1ピストン径を、前記スレイブシリンダーのクラッチ作動圧を受圧する第2ピストン径より大きな径に設定した
    ことを特徴とする車両用駆動装置。
  4. 請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載された車両用駆動装置において、
    前記マスターシリンダーを、前記変速機の変速機ケースに取り付け、
    前記変速機の油圧制御ユニットから前記マスターシリンダーまでのクラッチ制御圧油路に、変速機作動油に含まれる気泡を抜くエア抜き手段を設けた
    ことを特徴とする車両用駆動装置。
  5. 請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載された車両用駆動装置において、
    前記スレイブシリンダーを、前記クラッチ及び前記油圧アクチュエータが収容されたクラッチケースに取り付け、
    前記スレイブシリンダーに、前記第2ピストンのピストンストロークを検出するストロークセンサーを設けた
    ことを特徴とする車両用駆動装置。
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