JP5192433B2 - メタルコア基板、メタルプレート用導電部材及びこれらの製造方法 - Google Patents
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この種のメタルコア基板としては、例えば特許文献1から特許文献5に記載のものがある。これら特許文献に記載のメタルコア基板は、コアとなるアルミニウムや銅等のメタルプレートの表面に絶縁層が形成されるとともに、その上面に回路パターンが形成され、その回路パターンに電子部品が搭載されるようになっている。
一方、特許文献5には、表面粗度が小さい圧延銅板からなるメタルプレートを用いる場合に、絶縁層との接着性を高めるために、メタルプレートの表面をエッチングやパルス電解技術により粗化処理することが記載されている。絶縁層との接着性向上のために、メタルプレートの表面を粗化処理することは、特許文献3にも記載されている。
いずれの場合も、メタルプレートをそのまま使用することはできず、粗化処理やめっき処理の部分的な加工が必要で生産性が悪い。
本発明のメタルプレート用導電部材は、Cu系基材を有するとともに、表面にSn系表面層が形成され、該Sn系表面層と前記Cu系基材との間にCu−Sn金属間化合物又はNi−Sn金属間化合物を有する金属間化合物層が形成された導電部材であって、前記金属間化合物層の前記Sn系表面層と接する面の表面粗さが、算術平均粗さRaで0.05〜0.35μmであり、かつ、十点平均粗さRzで0.5〜3.0μmであることを特徴とする。
この場合、金属間化合物層のSn系表面層と接する面の表面粗さが前記範囲よりも小さいと、凹凸がほとんどなくなってしまい、絶縁層との良好な接合強度を得ることができず、また、前記範囲を超えると、絶縁層との接合強度は大きくなるが、Sn系表面層の下に凹凸の大きい金属間化合物層が存在することになるから、特にコネクタ端子として使用したときの挿抜時の抵抗が大きくなるため好ましくない。
さらに、本発明のメタルコア基板は、前記メタルプレートにおける前記金属間化合物層の露出部分が絶縁層により被覆されていることを特徴とする。
まず、メタルコア基板について説明すると、このメタルコア基板1は、図3に示すように、長さ方向の中央部に配置される回路基板部2と、両端部に配置されるコネクタ端子部3とを一体に形成してなるものである。回路基板部2は、コアとなるメタルプレート4の両面が絶縁層5により被覆され、この絶縁層5の上に回路導体6が形成されており、その上に電子部品7が搭載される。一方、コネクタ端子部3は、メタルプレート4の絶縁層5により被覆されていない両端部がそのままコネクタ端子部3とされ、外部のコネクタ端子8が二点鎖線で示すように嵌合状態に接続されるようになっている。
また、メタルプレート4は、以下に述べるメタルプレート用導電部材11において、コネクタ端子部3となる中央部分の最表面層の一部を除去して、内層の表面を露出することにより形成したものである。
この実施形態のメタルプレート用導電部材11は、図2に示すように、Cu系基材12の表面に、Cu−Sn金属間化合物層13、Sn系表面層14がこの順に形成されるとともに、Cu−Sn金属間化合物層13はさらに、Cu3Sn層15とCu6Sn5層16とから構成されている。
Cu系基材12は、Cu又はCu合金から構成された例えば板状のものである。Cu合金としては、その材質は必ずしも限定されないが、無酸素銅、タフピッチ銅、Cu−Zr系合金、Cu−Cr−Zr系合金、Cu−Fe−P系合金がプレス加工性に優れながら導電率と熱伝導率が高いため好適であり、例えば、三菱伸銅株式会社製OFC,TC,TAMAC4,C151,MZC1,ZC,TAMAC194が好適に用いられる。
一方、十点平均粗さRzに関しては、Rzが0.5μm以上あると、絶縁層5に対するアンカー効果が有効に機能し、接合強度を高めることができるが、局部的に山・谷が大き過ぎると、欠陥の原因となる。Rzが3.0μmを超えると、高温時にCu系基材12のCuが拡散してCu−Sn合金層13が成長し、そのCu6Sn5層16が導電部材11の表面まで達し、これにより、表面にCu酸化物が形成され、接触抵抗を増大させることになる。したがって、Rzは最大3.0μmまでが好ましい。
前述したSは、このCu−Sn金属間化合物層13の表面の凹凸を適切な範囲に調整するために有効である。100ppmを超えると、めっき膜がもろくなるので好ましくない。20ppm〜50ppmがより好ましい。
この面積被覆率は、皮膜を集束イオンビーム(FIB;Focused Ion Beam)により断面加工し、走査イオン顕微鏡(SIM;Scanning Ion Microscope)で観察した表面の走査イオン像(SIM像)から確認することができる。
なお、このCu−Sn金属間化合物層13は、Cu系基材12の上にめっきしたCuと表面のSnとが拡散することにより合金化したものであるから、リフロー処理等の条件によっては下地となったCuめっき層の全部が拡散してCu−Sn金属間化合物層13となる場合もあるが、そのCuめっき層が残る場合もある。このCuめっき層が残る場合は、そのCuめっき層は例えば0.01〜0.1μmの厚さとされる。
まず、図1(a)に示すように、Cu系基材12として、Cu又はCu合金の板材を用意し、これを脱脂、酸洗等によって表面を清浄にした後、Cuめっき、Snめっきをこの順序で順次行うことにより、図1(b)に示すように、Cuめっき層21、Snめっき層22を形成する。また、各めっき処理の間には、酸洗又は水洗処理を行う。
Cuめっきの条件としては、めっき浴に硫酸銅(CuSO4)及び硫酸(H2SO4)を主成分とした硫酸銅浴が用いられ、レベリングのために塩素イオン(Cl−)が添加される。めっき温度は35〜55℃、電流密度は20〜60A/dm2とされる。
Snめっきの条件としては、めっき浴に硫酸(H2SO4)と硫酸第一錫(SnSO4)を主成分とした硫酸浴が用いられ、めっき温度は15〜35℃、電流密度は10〜30A/dm2とされる。また、Snめっき浴中には、調整剤としてSを含有する芳香族化合物の光沢剤(例えばベンゾチアゾール類)が0.1〜10mg/Lの範囲で添加される。この添加剤成分により、Snめっき中にS成分が取り込まれ、リフロー処理の際にCu−Sn金属間化合物層とSn系表面層との界面の形状を微妙に調整することが可能となる。
また、Snめっきの電流密度は10A/dm2未満ではSnの粒界密度が低くなって緻密な表面層を形成する効果が乏しく、一方、電流密度が30A/dm2を超えると、電流効率が著しく低下するため望ましくない。
これらの各めっき条件をまとめると、以下の表1及び表2に示す通りとなる。
このリフロー処理を還元性雰囲気で行うことによりSnめっき表面に溶融温度の高いすず酸化物皮膜が生成するのを防ぎ、より低い温度かつより短い時間でリフロー処理を行うことが可能となり、所望の金属間化合物構造を作製することが容易となる。
そして、その絶縁層5の上に回路導体6を形成すると、メタルコア基板1として完成する。この回路導体6は、絶縁層5に銅箔を積層してなるもので、必要な部分をパターンエッチングするなどの方法で形成される。
Cu合金板(Cu系基材)として、厚さ0.25mmの三菱伸銅株式会社製TC材を用い、これにCu、Snの各めっき処理を順次行った。この場合、表3に示すように、各めっき処理の電流密度を変えて複数の試料を作成した。各めっき層の目標厚さについては、Cuめっき層の厚さは0.3μm、Snめっき層の厚さは1.5μmとした。また、これら二種類の各めっき工程間には、処理材表面からめっき液を洗い流すための水洗工程を入れた。
本実施例におけるめっき処理では、Cu合金板にめっき液を高速で噴きつけ、なおかつ酸化イリジウムを被覆したTi板の不溶性陽極を用いた。
上記の二種類のめっき処理を行った後、その処理材に対してリフロー処理を行った。このリフロー処理は、最後のSnめっき処理をしてから1分後に行い、270℃で20秒間加熱した。
本実施例の処理材断面は、透過電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分光分析(TEM−EDS分析)の結果、Cu系基材の上に、Cu3Sn層、Cu6Sn5層、Sn系表面層の3層構造となっており、なおかつCu6Sn5層の表面には凹凸があった。またCu6Sn5層とCu系基材の界面には不連続なCu3Sn層があり、集束イオンビームによる断面の走査イオン顕微鏡(FIB−SIM像)から観察されるCu3Sn層のCu系基材に対する表面被覆率は60%以上であった。また、この透過電子顕微鏡でSn系表面層の厚さを測定し、その最小膜厚を求めた。
この表面粗さは、露出させたCu−Sn金属間化合物層の表面に、オリンパス株式会社製の走査型共焦点赤外レーザ顕微鏡LEXT OLS−3000−IRを用い、対物レンズ100倍の条件でレーザ光を照射して、その反射光から距離を測定し、そのレーザ光をCu−Sn金属間化合物層の表面に沿って直線的にスキャンしながら距離を連続的に測定することにより求めた。
以上の試験条件並びにCu−Sn金属間化合物層の表面粗さ、Sn系表面層の最小膜厚、S含有量の各測定結果を表3にまとめた。
そして、Sn系表面層のままの状態としたコネクタ部については105℃×1000時間経過後の接触抵抗、動摩擦係数、はんだ耐熱性を測定し、絶縁層を形成した回路基板部については絶縁層の剥離強度を測定した。
接触抵抗は、試料を105℃×1000時間放置した後、山崎精機株式会社製電気接点シミュレーターを用い荷重0.49N(50gf)摺動有りの条件で測定した。
剥離強度は、0.25mmの銅板では測定が困難なことから、35μmのTC銅箔上に同様の条件でSnめっきを施してリフロー処理した後、JIS C 6481の規定に準拠して測定した。
はんだ耐熱性は、JIS C 6481の常態の測定方法の規定に準拠して測定し、絶縁層を形成した回路基板部に膨れ又ははがれが生じたものを×、生じなかったものを○とした。
これらの結果を表4に示す。
実施例試料としては、表3の試料1〜6の条件で製作したものを選択し、比較例としては、従来技術としての黒化処理をメタルプレートの粗化処理として施したものを使用した。絶縁抵抗値が1MΩ以下となったものを×とした。
また、実施形態では、Sを含有する芳香族化合物の光沢剤をSnめっき浴に添加したが、Cuめっき浴に添加してもよい。
2 回路基板部
3 コネクタ部
4 メタルプレート
5 絶縁層
6 回路導体
7 電子部品
11 導電部材
12 Cu系基材
13 Cu−Sn金属間化合物層
14 Sn系表面層
15 Cu3Sn層
16 Cu6Sn5層
21 Cuめっき層
22 Snめっき層
23 マスク
Claims (5)
- Cu系基材を有するとともに、表面にSn系表面層が形成され、該Sn系表面層と前記Cu系基材との間にCu−Sn金属間化合物又はNi−Sn金属間化合物を有する金属間化合物層が形成された導電部材であって、前記金属間化合物層の前記Sn系表面層と接する面の表面粗さが、算術平均粗さRaで0.05〜0.35μmであり、かつ、十点平均粗さRzで0.5〜3.0μmであることを特徴とするメタルコア基板のメタルプレート用導電部材。
- 請求項1記載のメタルプレート用導電部材における一部のSn系表面層が除去され、前記金属間化合物層の表面が露出していることを特徴とするメタルコア基板用メタルプレート。
- 請求項2記載のコアメタル基板用メタルプレートにおける前記金属間化合物層の露出部分が絶縁層により被覆されていることを特徴とするメタルコア基板。
- Cu系基材の表面に、Ni又はNi合金、Cu又はCu合金のいずれかをめっきし、その上にSn又はSn合金をめっきしてそれぞれのめっき層を形成した後、加熱してリフロー処理することにより、前記Cu系基材と最外層のSn系表面層との間に、Ni−Sn金属間化合物又はCu−Sn金属間化合物を有する金属間化合物層を形成した導電部材を製造する工程と、該導電部材における前記Sn系表面層の一部を除去して、前記金属間化合物層の表面を露出する工程とを有することを特徴とするメタルコア基板用メタルプレートの製造方法。
- 請求項4記載の製造方法によってメタルプレートを製作し、露出した前記金属間化合物層の上に絶縁層を形成する工程を有するメタルコア基板の製造方法。
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