JP5191845B2 - アクリル系ゴム組成物及びアクリル系ゴム成形体 - Google Patents

アクリル系ゴム組成物及びアクリル系ゴム成形体 Download PDF

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Description

この発明は、例えば、軸受用シール、オイルシール、摺動を伴うシール材等のシール材の材料、或いは密封用ブーツ、ホース等の材料などとして用いられるアクリル系ゴム組成物に関する。
近年、ゴム材料には、高性能化、高機能化の要求の高まりを背景にして、機械的強度、弾性、耐熱性等の各種物性の向上が求められている。例えば、パッキン、シール、その他の各種ゴム製品においては、耐熱性、弾性、耐油性、耐候性、耐老化性等が必要とされることが多い。特に、シール材の用途においては、耐熱性、耐油性が重要であることが多いが、スチレンブタジエンゴム等のジエン系ゴムでは、耐熱性、耐油性が不十分であることから、このような用途には例えばエチルアクリレートモノマーに架橋点モノマーを共重合してなるアクリル系共重合ゴム等が従来から使用されている(特許文献1参照)。
特公平3−16969号公報
しかしながら、上記のようなエチルアクリレートモノマーに架橋点モノマーを共重合してなるアクリル系共重合ゴムは、耐熱性及び耐油性に優れるものの、耐摩耗性に劣っているし、使用の継続により摺動抵抗が大きくなる等摺動性能が不十分であるという問題があった。
この耐摩耗性や摺動性能を向上させるために、混錬時にPTFEを配合せしめる、シリコーンオイルを添加する等の手法も提案されているが、その効果は十分なものではなかった。
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、耐熱性及び耐油性に優れ、十分な機械的強度及び弾性を有すると共に、耐摩耗性能、摺動特性にも優れたアクリル系ゴム組成物及びアクリル系ゴム成形体を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
[1]共重合成分として、アクリル酸アルキルエステル及びアクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群より選ばれる1種または2種以上の不飽和単量体を60〜98.9質量%、1分子中に少なくとも1個以上のアクリロイル基を有するポリシロキサン及び1分子中に少なくとも1個以上のメタクリロイル基を有するポリシロキサンからなる群より選ばれる1種または2種以上のポリシロキサンを1.0〜30質量%、エチレン性不飽和多価カルボン酸不完全エステルを0.1〜20質量%含有してなるアクリル系共重合ゴムと、
多価アミン架橋剤と、を含有してなり、
前記アクリル系共重合ゴム100質量部に対して前記多価アミン架橋剤を0.1〜20質量部含有することを特徴とするアクリル系ゴム組成物。
[2]前記エチレン性不飽和多価カルボン酸不完全エステルが、エチレン性不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステルである前項1に記載のアクリル系ゴム組成物。
[3]前記エチレン性不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステルがブテンジオン酸モノアルキルエステルである前項2に記載のアクリル系ゴム組成物。
[4]前記アクリル系共重合ゴムは、乳化剤として少なくともオルガノポリシロキサン系乳化剤を用いた乳化重合により共重合されたものである前項1〜3のいずれか1項に記載のアクリル系ゴム組成物。
[5]前記アクリル系共重合ゴムは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンメチルポリシロキサンコポリマー及びポリオキシエチレンドデシルエーテルを乳化剤として用いた乳化重合により共重合されたものである前項1〜3のいずれか1項に記載のアクリル系ゴム組成物。
[6]前項1〜5のいずれか1項に記載のアクリル系ゴム組成物を架橋してなる架橋体からなるアクリル系ゴム成形体。
[1]の発明に係るアクリル系ゴム組成物は、共重合成分として、アクリル酸アルキルエステル及びアクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群より選ばれる1種または2種以上の不飽和単量体を60〜98.9質量%、1分子中に少なくとも1個以上のアクリロイル基を有するポリシロキサン及び1分子中に少なくとも1個以上のメタクリロイル基を有するポリシロキサンからなる群より選ばれる1種または2種以上のポリシロキサンを1.0〜30質量%、エチレン性不飽和多価カルボン酸不完全エステルを0.1〜20質量%含有してなるアクリル系共重合ゴムと、多価アミン架橋剤と、を含有してなり、アクリル系共重合ゴム100質量部に対して多価アミン架橋剤を0.1〜20質量部含有してなる構成であるから、耐熱性及び耐油性に優れ、十分な機械的強度及び弾性を有すると共に、耐摩耗性、摺動特性にも優れたアクリル系ゴム組成物が提供される。
[2]の発明では、エチレン性不飽和多価カルボン酸不完全エステルとしてエチレン性不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステルが用いられた構成であるから、耐熱性及び圧縮永久歪みを向上させることができる。
[3]の発明では、エチレン性不飽和多価カルボン酸不完全エステルとしてブテンジオン酸モノアルキルエステルが用いられた構成であるから、耐熱性及び圧縮永久歪みをより向上させることができる。
[4]の発明では、アクリル系共重合ゴムは、乳化剤として少なくともオルガノポリシロキサン系乳化剤を用いた乳化重合により共重合されたものであるから、該共重合ゴムの収率を向上させることができる利点がある。
[5]の発明では、アクリル系共重合ゴムは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンメチルポリシロキサンコポリマー及びポリオキシエチレンドデシルエーテルを乳化剤として用いた乳化重合により共重合されたものであるから、該共重合ゴムの収率をより向上させることができる利点がある。
[6]の発明では、耐熱性及び耐油性に優れ、十分な機械的強度及び弾性を有すると共に、耐摩耗性、摺動特性にも優れたアクリル系ゴム成形体が提供される。
この発明に係るアクリル系ゴム組成物は、共重合成分として、(A1)アクリル酸アルキルエステル及びアクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群より選ばれる1種または2種以上の不飽和単量体を60〜98.9質量%、(A2)1分子中に少なくとも1個以上のアクリロイル基を有するポリシロキサン及び1分子中に少なくとも1個以上のメタクリロイル基を有するポリシロキサンからなる群より選ばれる1種または2種以上のポリシロキサンを1.0〜30質量%、(A3)エチレン性不飽和多価カルボン酸不完全エステルを0.1〜20質量%含有してなるアクリル系共重合ゴムと、(B)多価アミン架橋剤と、を含有してなり、前記アクリル系共重合ゴム100質量部に対して前記多価アミン架橋剤を0.1〜20質量部含有してなることを特徴とする。
前記アクリル系共重合ゴムは、前記共重合成分(A1)、共重合成分(A2)および共重合成分(A3)を含有した混合物を共重合して得られる共重合体である。
前記アクリル系共重合ゴムの共重合成分(A1)は、アクリル酸アルキルエステル及びアクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群より選ばれる1種または2種以上の不飽和単量体である。
前記アクリル酸アルキルエステルとしては、特に限定されるものではないが、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等が挙げられる。これらの中でも、エチルアクリレートを用いるのが好ましい。
前記アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、特に限定されるものではないが、例えばメトキシメチルアクリレート、エトキシメチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、3−メトキシプロピルアクリレート等が挙げられる。これらの中でも、2−メトキシエチルアクリレートを用いるのが好ましい。
なお、前記共重合成分(A1)としては、1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
前記アクリル系共重合ゴムにおける共重合成分(A1)、即ち前記不飽和単量体の含有率は60〜98.9質量%に設定される。中でも、80〜96質量%に設定されるのが好ましい。
前記アクリル系共重合ゴムの共重合成分(A2)は、1分子中に少なくとも1個以上のアクリロイル基を有するポリシロキサン及び1分子中に少なくとも1個以上のメタクリロイル基を有するポリシロキサンからなる群より選ばれる1種または2種以上のポリシロキサンである。このようなポリシロキサン構造が存在することにより、耐摩耗性、摺動性能を向上させることができる。
中でも、前記アクリル系共重合ゴムの共重合成分(A2)としては、下記一般式(I)で表されるポリシロキサンを用いるのが好ましい。
Figure 0005191845
(但し、式中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2〜8はそれぞれ独立にアルキル基またはアリール基を示し、mは1〜10の整数で、nは1〜200の整数である)
上記一般式(I)で表されるポリシロキサンの市販品として、特に限定されるものではないが、例えばチッソ株式会社製「サイラプレーンFM−0711」、チッソ株式会社製「サイラプレーンFM−0721」、チッソ株式会社製「サイラプレーンFM−0725」、チッソ株式会社製「サイラプレーンFM−075」等が挙げられる。
なお、前記共重合成分(A2)としては、1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
前記アクリル系共重合ゴムにおける共重合成分(A2)、即ち前記ポリシロキサンの含有率は1〜30質量%に設定される。1質量%未満では、耐摩耗性と摺動性能を十分に向上させることができないし、30質量%を超えると重合率が低下する。中でも、2〜10質量%に設定されるのが好ましい。
前記アクリル系共重合ゴムの共重合成分(A3)は、エチレン性不飽和多価カルボン酸不完全エステルである。この共重合成分(A3)は、このアクリル系共重合ゴムに架橋点を導入するための成分(単量体)である。
前記エチレン性不飽和多価カルボン酸不完全エステルは、多価カルボン酸の複数個のカルボキシル基のうちの少なくとも1つのカルボキシル基がアルキル基によってエステル化された単量体であって、且つ少なくとも1つのカルボキシル基がエステル化されずに残っている単量体である。前記エチレン性不飽和多価カルボン酸不完全エステルとしては、エチレン性不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステルがより好ましく、特に好適なのはブテンジオン酸モノアルキルエステルである。
前記ブテンジオン酸モノアルキルエステルとしては、特に限定されるものではないが、例えば、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノn−プロピル、フマル酸モノイソプロピル、フマル酸モノn−ブチル、フマル酸モノ2−エチルヘキシル、フマル酸モノ2−メトキシエチル等のフマル酸モノエステルの他、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノn−プロピル、マレイン酸モノイソプロピル、マレイン酸モノn−ブチル、マレイン酸モノ2−エチルヘキシル、マレイン酸モノ2−メトキシエチル等のマレイン酸モノエステル等が挙げられる。これらの中でも、フマル酸モノアルキルエステル、マレイン酸モノアルキルエステルが好適に用いられる。
前記エチレン性不飽和多価カルボン酸エステルとしては、1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
前記アクリル系共重合ゴムにおける共重合成分(A3)、即ち前記エチレン性不飽和多価カルボン酸不完全エステルの含有率は0.1〜20質量%に設定される。0.1質量%未満では、得られるアクリル系架橋ゴム成形体は引張強度が低いものとなるし、一方20質量%を超えると、得られるアクリル系架橋ゴム成形体は伸びが不十分なものとなる。中でも、前記共重合ゴムにおけるエチレン性不飽和多価カルボン酸不完全エステルの含有率は0.2〜8質量%に設定されるのが好ましい。
前記アクリル系共重合ゴムは、例えば、前記共重合成分(A1)(A2)及び(A3)を前記所定範囲の割合で含有してなる単量体混合物を重合開始剤の存在下に通常の乳化重合法により共重合させることにより得られる。
前記乳化重合法により共重合させる場合において、乳化剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルキルサルフェート、アルキルアリールスルフォネート、高級脂肪酸の塩(例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩等)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー、アルキルアリールスルホン酸塩(例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等)、高級アルコール硫酸エステル塩、アニオン性乳化剤(例えばアルキルスルホコハク酸塩等)、カチオン性乳化剤(例えばアルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、ベンジルアンモニウムクロライド等)、オルガノポリシロキサン系乳化剤(例えばポリオキシエチレンポリオキシプロピレンメチルポリシロキサンコポリマー等)などが挙げられ、これらの1種を単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
中でも、前記乳化剤としては、少なくともオルガノポリシロキサン系乳化剤を用いる(即ち他の乳化剤との併用系を含む)のが、前記アクリル系共重合ゴムの収率を向上させることができる点で、好ましい。更には、前記乳化剤としては、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンメチルポリシロキサンコポリマー及びポリオキシエチレンドデシルエーテルを用いる(併用する)のが、前記アクリル系共重合ゴムの収率をより一層向上させることができる点で、特に好ましい。
前記乳化剤の使用量は、前記単量体混合物100質量部に対して乳化剤0.1〜10質量部とするのが好ましい。このような範囲に設定することにより、乳化重合反応を効率良く進行させることができる。
前記重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物、無機過酸化物等が挙げられ、これらの1種を単独でまたは2種以上を混合して用いる。中でも、前記重合開始剤としては、ペルオキソ二硫酸カリウムを用いるのが好ましい。前記過酸化物開始剤は、還元剤と組み合わせてレドックス系重合開始剤として使用することができる。この還元剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、金属イオンを含有する化合物、スルホン酸化合物、アミン化合物等が挙げられ、これらの1種を単独でまたは2種以上を混合して用いる。
前記重合開始剤の使用量は、前記単量体混合物100質量部に対して重合開始剤0.01〜1.0質量部とするのが好ましい。
前記多価アミン架橋剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族多価アミン架橋剤、芳香族多価アミン架橋剤等が挙げられる。前記脂肪族多価アミン架橋剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメイト、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。また、前記芳香族多価アミン架橋剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2’−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3,5−ベンゼントリアミン、1,3,5−ベンゼントリ(アミノメチル)等が挙げられる。
この発明では、前記アクリル系共重合ゴム100質量部に対して前記多価アミン架橋剤を0.1〜20質量部含有せしめる。0.1質量部未満では十分な架橋構造を形成できないし、20質量部を超えるとゴム成形体の伸びが不十分になるという問題を生じる。中でも、前記アクリル系共重合ゴム100質量部に対して前記多価アミン架橋剤を0.5〜8質量部含有せしめるのが好ましい。
この発明のアクリル系ゴム組成物は、前記アクリル系共重合ゴムと、前記多価アミン架橋剤とを含有してなる組成物であるが、これに更に架橋促進剤を含有せしめるのが好ましい。このような架橋促進剤を含有せしめる場合、前記アクリル系共重合ゴム100質量部に対して前記多価アミン架橋剤を0.1〜20質量部、架橋促進剤を0.1〜20質量部含有せしめるのが好ましい。架橋促進剤が20質量部を超えると、架橋時に架橋速度が早くなり過ぎたり、架橋物の表面への架橋促進剤のブルーミングが生じたり、架橋物が硬くなり過ぎたりする場合があるので、好ましくない。また、架橋促進剤が0.1質量部未満では、架橋物の引張強さが著しく低下したり、熱負荷後の伸び変化率または引張強さ変化率が大きくなり過ぎたりする場合があるので、好ましくない。中でも、前記アクリル系共重合ゴム100質量部に対して前記多価アミン架橋剤を0.1〜20質量部、架橋促進剤を0.1〜15質量部含有せしめるのがより好ましく、特に好ましいのは架橋促進剤を0.1〜10質量部含有せしめる構成である。
前記架橋促進剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、第4級オニウム塩、第3級アミン化合物、第3級ホスフィン化合物、弱酸のアルカリ金属塩等が挙げられる。前記グアニジン化合物としては、例えば1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジン等が挙げられる。前記イミダゾール化合物としては、例えば2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等が挙げられる。前記第4級オニウム塩としては、例えばテトラn−ブチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリn−ブチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。前記第3級アミン化合物としては、例えばトリエチレンジアミン、1,8−ジアザ−ビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7等が挙げられる。前記第3級ホスフィン化合物としては、例えばトリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン等が挙げられる。前記弱酸のアルカリ金属塩としては、例えばナトリウム又はカリウムのリン酸塩、炭酸塩などの無機弱酸塩或いはステアリン酸塩、ラウリル酸塩などの有機弱酸塩等が挙げられる。
この発明のアクリル系ゴム組成物には、補強性充填剤(増量剤)、可塑剤、潤滑油、軟化剤、老化防止剤、加工助剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、耐油性向上剤、スコーチ防止剤、発泡剤、滑剤等を含有せしめても良い。前記補強性充填剤としては、例えば湿式シリカ、フェームドシリカ、クレー、ケイソウ土、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸バリウム、繊維、有機補強剤、有機充填剤等が挙げられる。前記可塑剤としては、例えばフタル酸誘導体、アジピン酸誘導体等が挙げられる。前記軟化剤としては、例えばプロセスオイル等が挙げられる。前記老化防止剤としては、例えばフェニレンジアミン類、フォスフェート類、キノリン類、クレゾール類、フェノール類等が挙げられる。
この発明のアクリル系ゴム組成物は、上述した各成分(アクリル系共重合ゴム、多価アミン架橋剤など)を、例えばロールやニーダー等の通常の混錬装置により均一に混合することにより得られる。
こうして得られたアクリル系ゴム組成物を、例えば圧縮成形、射出成形、トランスファー成形、押出成形、カレンダー成形などの成形法により架橋、成形することによって、本発明のアクリル系ゴム成形体(架橋成形体)を得ることができる。このアクリル系ゴム成形体は、耐熱性及び耐油性に優れ、十分な機械的強度及び弾性を有すると共に、耐摩耗性及び摺動特性にも優れている。従って、本発明のアクリル系ゴム成形体をシール材として用いた場合には、シール材としての摺動性、耐摩耗性、耐熱性を向上させることができ、シール材としてのシール性能を十分に向上させることができる。
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
<実施例1>
3つ口反応フラスコ(重合槽)にイオン交換水を900mL入れた後、これに窒素ガスをバブリングし、70℃まで昇温した後、これにエチルアクリレート280g、1分子中に1個のアクリロイル基を有するポリシロキサンとしてチッソ株式会社製のサイラプレーンFM−075(商品名、数平均分子量10000)8g、フマル酸モノエチルエステル3g、マレイン酸モノエチルエステル9g、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンメチルポリシロキサンコポリマー(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズジャパン社製「TSF4452」)3g、ポリオキシエチレン(30)ドデシルエーテル(オキシエチレンの繰り返し数が30)3g、さらに電解質のリン酸3ナトリウムを0.6g加え、ミセルが安定するまで良く攪拌して乳化せしめた。
次に、前記乳化液に重合開始剤としてペルオキソ二硫酸カリウムを2g添加することによって単量体混合物の共重合反応を3時間行った。なお、共重合反応中にアクリロイル基含有ポリシロキサン(共重合成分A2)等の分離が観察されることはなく十分に均一な反応系が形成されていた。
共重合反応後に、重合液を10Lビーカーに移し、これにメタノール4000mLを加えて室温で攪拌した(塩析を行った)。この塩析により沈殿したアクリル系共重合ゴムをイオン交換水でモノマー臭気がなくなるまで水洗した。水洗後、40℃で72時間減圧乾燥することによって、アクリル系共重合ゴムを得た。
上記乾燥したアクリル系共重合ゴム100.0質量部に対して、ステアリン酸(滑剤)2.0質量部、カーボン粉末(東海カーボン社製「シースト116」、MAFカーボン)(補強材)50.0質量部、ジ−o−トリルグアニジン(大内新興化学社製「ノクセラーDT」)(架橋促進剤)1.0質量部、ヘキサメチレンジアミンカーバメイト(デュポンダウエラストマー社製「DIAK No.1」)(多価アミン架橋剤)0.6質量部を混合してなる組成物を8インチオープンロールで混錬することによりアクリル系ゴム組成物を得た。
しかる後、アクリル系ゴム組成物を圧力100kg/cm2、温度170℃で10分間プレス成形することにより、厚さ2mmのアクリル系ゴムシート(前記アクリル系ゴム組成物の架橋体からなるアクリル系ゴム成形体)を得た。
<実施例2、3>
各共重合成分及び乳化剤として表1に示すものを表1に示す量(g)加えた以外は、実施例1と同様にして、アクリル系ゴムシート(アクリル系ゴム成形体)を得た。なお、これら実施例2、3では、共重合反応中にアクリロイル基含有ポリシロキサン(共重合成分A2)等の分離が観察されることはなく十分に均一な反応系が形成されていた。
<実施例4〜6>
各共重合成分及び乳化剤として表1に示すものを表1に示す量(g)加えた以外は、実施例1と同様にして、アクリル系ゴムシート(アクリル系ゴム成形体)を得た。なお、これら実施例4〜6では、共重合反応中にアクリロイル基含有ポリシロキサン(共重合成分A2)の分離が少し観察された。
<比較例1>
各共重合成分及び乳化剤として表1に示すものを表1に示す量(g)加えた以外は、実施例1と同様にして、アクリル系ゴムシート(アクリル系ゴム成形体)を得た。
各実施例、比較例における共重合反応の重合率を調べたところ、乳化剤としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレンメチルポリシロキサンコポリマー及びポリオキシエチレンドデシルエーテルを用いた実施例1〜3では、それぞれ94.8%、92.5%、91.9%と、重合率は非常に高いものであった(即ち収率が非常に高いものであった)(表1参照)。なお、前記重合率(%)は下記算出式で求められる値である。
重合率(%)=(共重合で得られたアクリル系共重合ゴムの質量)÷(共重合成分の仕込量の総質量)×100
但し、(共重合成分の仕込量の総質量)=(エチルアクリレートの仕込質量)+(アクリロイル基含有ポリシロキサンの仕込質量)+(フマル酸モノエチルエステルの仕込質量)+(マレイン酸モノエチルエステルの仕込質量)
Figure 0005191845
次に、上記のようにして得られた各ゴムシートの諸特性を下記評価法に基づいて評価した。その結果を表2、3に示す。
<A硬度測定法>
JIS K6253に準拠してゴムシートのA硬度を測定した。
<引張強度測定法>
JIS K6251に準拠してゴムシートの3号ダンベル試験片の引張強度(MPa)を測定した。
<破断伸び測定法>
JIS K6251に準拠してゴムシートの3号ダンベル試験片の破断伸び(%)を測定した。
Figure 0005191845
<熱老化試験による耐熱性評価法>
JIS K6257に準拠し、ゴムシートに対し150℃条件下において熱老化試験を開始し、開始から72時間後、144時間後、336時間後、504時間後のそれぞれにおける、初期値に対する硬度変化量、引張強度変化割合(%)、破断伸び変化割合(%)を算出した。これらの結果を表3に示す。この表3において、硬度変化量を「ΔHS」、引張強度変化割合を「ΔTB」、破断伸び変化割合を「ΔEB」と表記した。
<摩耗試験法>
リングオンディスク試験機を用いて、各ゴムシートについて、荷重:200g、回転数:10000rpm、時間:15分間の試験条件で摩耗試験を行って、ゴムシートの摩耗量(mm)および摩耗板の上昇温度を測定した。これらの結果を表3に示す。
Figure 0005191845
表3の熱老化試験結果から、実施例1〜3のアクリル系ゴムシートは、十分な耐熱性を備えていることがわかる。また、表3の摩耗試験結果から、実施例1〜3のアクリル系ゴムシートは、比較例1のシートと比べて、摩耗量が少なく耐摩耗性に優れると共に、摩耗板の温度上昇も抑制されて摺動特性にも優れていることがわかる。
この発明に係るアクリル系ゴム成形体は、耐熱性及び耐油性に優れ、十分な機械的強度及び弾性を有すると共に、耐摩耗性、摺動特性にも優れているので、例えば軸受用シール、オイルシール、摺動を伴うシール材等のシール材として好適に用いられるが、特にこれら用途に限定されるものではない。
摩耗試験により求められた摩耗量を実施例1〜3及び比較例1で対比して示すグラフである。 摩耗試験時の摩耗板の上昇温度を実施例1〜3及び比較例1で対比して示すグラフである。

Claims (6)

  1. 共重合成分として、アクリル酸アルキルエステル及びアクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群より選ばれる1種または2種以上の不飽和単量体を60〜98.9質量%、1分子中に少なくとも1個以上のアクリロイル基を有するポリシロキサン及び1分子中に少なくとも1個以上のメタクリロイル基を有するポリシロキサンからなる群より選ばれる1種または2種以上のポリシロキサンを1.0〜30質量%、エチレン性不飽和多価カルボン酸不完全エステルを0.1〜20質量%含有してなるアクリル系共重合ゴムと、
    多価アミン架橋剤と、を含有してなり、
    前記アクリル系共重合ゴム100質量部に対して前記多価アミン架橋剤を0.1〜20質量部含有することを特徴とするアクリル系ゴム組成物。
  2. 前記エチレン性不飽和多価カルボン酸不完全エステルが、エチレン性不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステルである請求項1に記載のアクリル系ゴム組成物。
  3. 前記エチレン性不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステルがブテンジオン酸モノアルキルエステルである請求項2に記載のアクリル系ゴム組成物。
  4. 前記アクリル系共重合ゴムは、乳化剤として少なくともオルガノポリシロキサン系乳化剤を用いた乳化重合により共重合されたものである請求項1〜3のいずれか1項に記載のアクリル系ゴム組成物。
  5. 前記アクリル系共重合ゴムは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンメチルポリシロキサンコポリマー及びポリオキシエチレンドデシルエーテルを乳化剤として用いた乳化重合により共重合されたものである請求項1〜3のいずれか1項に記載のアクリル系ゴム組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のアクリル系ゴム組成物を架橋してなる架橋体からなるアクリル系ゴム成形体。
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