以下、本発明を具体化した電子キーシステム及び電子キーの一実施形態を図1〜図6に従って説明する。
図1に示すように、車両1には、車両キーとして使用される電子キー2との間で無線通信によりキー照合を行って、このキー照合の成立を条件にドアロックの施解錠やエンジン始動等が許可又は実行される電子キーシステム3が設けられている。電子キー2は、車両1との間で狭域無線通信が可能であって、電子キー2が固有に持つIDコードをキーコードとして無線通信により車両1に発信して、車両1にキー照合を行わせることが可能なキーのことをいう。なお、車両1が通信相手に相当する。
電子キーシステム3には、電子キー2からキーコードとしてIDコードを発信するときに個別のキー操作が不要であるキー操作フリーシステムが含まれている。このキー操作フリーシステムには、ドアロックの施解錠操作の際にキー操作を必要としない機能としてスマートエントリーシステムがある。この場合、車両1には、電子キー2との間でキー照合(ID照合)を行う照合ECU(Electronic Control Unit)4と、車載モータやリレー等の動作を管理するメインボディECU5とが設けられ、これらECU4,5が車内の一ネットワークであるLIN(Local Interconnect Network)6を介して接続されている。照合ECU4には、車外にLF(Low Frequency)帯の電波(約134KHz)を発信可能な車外発信機7と、車内に同様のLF電波を発信可能な車内発信機8と、UHF(Ultra High Frequency)帯の一種であるRF(Radio Frequency:約312MHz)の電波を受信可能な車両チューナ9とが接続されている。また、メインボディECU5には、ドアロックの施解錠を実行するときの駆動源としてドアロックモータ10が接続されている。
また、電子キー2には、電子キー2の各種動作を統括制御する通信制御回路11が設けられている。この通信制御回路11は、CPU(Central Processing Unit)12やメモリ13等の各種デバイスを持ち、電子キー2が持つ固有のキーコードとしてIDコードがメモリ13に登録されている。通信制御回路11には、LF電波を受信可能なキー受信アンテナ14aと、RF電波を発信可能なキー発信アンテナ14bとが接続されている。通信制御回路11は、キー受信アンテナ14aにおける電波受信有無を逐次監視するとともに、キー発信アンテナ14bからの電波発信の動作を管理する。
照合ECU4は、車両駐車時、車外発信機7からLF帯のリクエスト信号Srqを断続的に発信させることにより、車両周辺にリクエスト信号Srqの車外通信エリアを形成して、狭域無線通信(以降、スマート通信と記す)の成立を試みる。電子キー2がこの車外通信エリアに入り込んでリクエスト信号Srqを受信すると、電子キー2はリクエスト信号Srqに応答する形で、自身に登録されたIDコードを乗せたID信号SidをRF帯の電波で返信する。照合ECU4は、車両チューナ9でID信号Sidを受信してスマート通信(車外通信)が確立すると、自身のメモリ15に登録されたIDコードと電子キー2のIDコードとを照らし合わせてID照合、いわゆるスマート照合(車外照合)を行う。照合ECU4は、この車外照合が成立したことを確認すると、メインボディECU5によるドアロック施解錠動作を許可又は実行する。
また、キー操作フリーシステムには、エンジン始動停止操作の際に実際の車両キー操作を必要とせずに単なるスイッチ操作のみでエンジン16の始動停止操作を行うことが可能な機能としてワンプッシュエンジンスタートシステムがある。この場合、車内には、同システムの操作スイッチとしてプッシュモーメンタリ式のエンジンスイッチ17が設けられている。エンジンスイッチ17は、照合ECU4及びメインボディECU5に接続されている。エンジンスイッチ17の操作機能には、エンジン始動停止機能の他に、電源遷移機能も割り当てられている。
メインボディECU5には、エンジン16の点火制御や燃料噴射制御を管理するエンジンECU18が、車内の一ネットワークであるCAN(Controller Area Network)19を介して接続されている。メインボディECU5には、車載アクセサリに繋がるACC(Accessory)リレー20と、走行系の各種電装品に繋がるIG(Ignition)リレー21と、エンジンスタータ(図示略)に繋がるスタータリレー22とが接続されている。
照合ECU4は、例えばカーテシスイッチ(図示略)により運転者の車内への乗車を確認すると、今度は車内発信機8からリクエスト信号Srqを発信して、車内全域に車内通信エリアを形成する。照合ECU4は、電子キー2がこの車内通信エリアに入り込んで返信してきたID信号Sidを車両チューナ9で受信してスマート通信(車内通信)が確立すると、自身に登録されたIDコードと電子キー2のIDコードとを照らし合わせてID照合、いわゆるスマート照合(車内照合)を行う。照合ECU4は、この車内照合が成立したことを確認すると、エンジンスイッチ17のプッシュ操作による電源状態切り換えを許可する。
電子キーシステム3には、電子キー2のボタン操作による遠隔操作によってドアロックを施解錠可能なワイヤレスキーシステムが含まれている。この場合、電子キー2には、例えば押しボタン式の施錠ボタン23、解錠ボタン24及びトランクボタン25等が設けられている。施錠ボタン23は、遠隔操作によりドアロックを施錠するときに操作する。解錠ボタン24は、遠隔操作によりドアロックを解錠するときに操作する。また、トランクボタン25は、トランクを遠隔操作により解錠するときに操作する。なお、施錠ボタン23、解錠ボタン24、トランクボタン25が操作手段を構成する。
例えば、施錠ボタン23が操作されると、電子キー2のIDコードと、車両1にドアロック施錠の動作開始を要求する機能コード(施錠要求コード)とを含んだワイヤレス信号Swlが、キー発信アンテナ14bからRF電波により発信される。そして、このワイヤレス信号Swlを車両1が受信して無線通信(ワイヤレス通信)が確立し、ワイヤレス信号SwlのIDコードのID照合(ワイヤレス照合)が成立すると、続く施錠要求コードによってドアロックが施錠する。
図2に示すように、車両1には、車両1から電子キー2の電源となり得る電波(以降、電力電波Svvと記す)を電子キー2に発信して、この電力電波Svvによって電子キー2を動作させる電力伝送システム26が設けられている。ところで、スマート通信の際、電子キー2は車両1から電波受け付けが可能であり、一方のワイヤレス通信の際には、電子キー2は自身が自ら動く動作をとらなければならない。このため、本例の電力伝送システム26は、スマート通信時の電子キー2の電源を電力電波Svvにより供給しつつ、ワイヤレス通信時には電子キー2の電源をキー内蔵の電池27に切り換え、電池27を電子キー2の電源とするシステムとなっている。
この場合、車両1には、電力電波Svvの発信元として電力伝送装置28が設けられている。電力伝送装置28は、発信機7,8や車両チューナ9とともに照合ECU4に接続され、動作が照合ECU4によって管理されている。電力伝送装置28は、照合ECU4からの指令に基づき、電力電波SvvをRF電波により電子キー2に向けて発信可能となっている。また、電力電波Svvの発信エリア(電力電波エリア)は、リクエスト信号Srqよりも少し広いエリアに設定されている。なお、電力伝送装置28が電力伝送手段を構成する。
また、照合ECU4には、電力伝送装置28の動作を管理する電力伝送管理部28aが設けられている。電力伝送管理部28aは、発信機7,8からのLF電波の発信に同期して電力伝送装置28から電力電波Svvを発信させ、より具体的には、電子キー2がLF電波を受け取る若干前に電子キー2が電力電波Svvを受信できるように、LF電波よりも少し早いタイミングで電力電波Svvを発信させる。例えば、リクエスト信号Srqで見るならば、電力電波Svvはリクエスト信号Srqよりも少し早いタイミングで発信される。電力伝送管理部28aが電力伝送手段を構成する。
電子キー2の通信制御回路11には、電子キー2の動作を統括管理する通信制御部29と、受信電波や発信電波に各種処理を加える処理回路として送受信回路30とが設けられている。通信制御部29は、前述したCPU12やメモリ13等を備える回路であって、信号線31を介して送受信回路30に接続されている。通信制御部29は、アンテナ14a,14b及び送受信回路30を介して車両1と電波のやり取りを行うことによりスマート通信を実行するとともに、送受信回路30からキー発信アンテナ14bを介して電波発信を行うことによりワイヤレス通信を実行する。
また、電子キー2には、電子キー2において電力電波Svvを受信する受電機32が設けられている。受電機32は、電力電波Svvを受信するためのアンテナとして受電アンテナ33と、電力電波Svvを整流及び電圧変換する受電回路34とからなる。受電機32は、電力線35を介して通信制御部29及び送受信回路30に接続されている。受電機32は、受電アンテナ33で受信した電力電波Svvを整流するとともに、通信制御部29や送受信回路30が必要とするレベルの電圧値に変換して、この電圧を無線電力Jmとして通信制御部29や送受信回路30に出力する。なお、受電機32が電力伝送手段を構成する。
通信制御部29には、受電回路34から出力された無線電力Jmを取り込む無線電力入力部36が設けられている。また、通信制御部29には、無線電力入力部36で入力した無線電力Jmを電源として送受信回路30を動作させる無線電力動作部37が設けられている。無線電力動作部37は、受電回路34が電力電波Svvを受信している際、受信動作又は発信動作の実行タイミングで受電回路34から無線電力入力部36を介して無線電力Jmを引き込み、この無線電力Jmによって送受信回路30を動作させる。
また、送受信回路30には、前述した通信制御部29と同様に無線電力入力部38及び無線電力動作部39が設けられている。無線電力動作部39は、受電回路34が電力電波Svvを受信している際、受信動作又は発信動作の実行タイミングで受電回路34から無線電力入力部38を介して無線電力Jmを引き込み、この無線電力Jmによって送受信回路30を動作させる。なお、無線電力入力部36,38及び無線電力動作部37,39が電力伝送手段を構成する。
通信制御部29及び送受信回路30には、受電機32と並列する状態で電池27と接続されている。電池27は、電力線35において電池27側に分岐する分岐線35aの経路を介して通信制御部29と接続されている。この分岐線35aの経路上には、ワイヤレス通信用の各種ボタン(施錠ボタン23、解錠ボタン24、トランクボタン25)の操作により接点状態のオンオフが切り換わるスイッチ40が接続されている。本例のスイッチ40には、施錠ボタン用スイッチ40aと、解錠ボタン用スイッチ40bと、トランクボタン用スイッチ40cとが設けられている。これらスイッチ40a〜40cは、例えばモーメンタリ式のスイッチであって、自身に繋がるワイヤレス用のボタンが押し操作されている期間中、オン状態を維持する。
また、これらスイッチ40a〜40cは、電源側とGND側との2つの接点部41,42を持ち、電源側の接点部41が電池27と通信制御部29との経路上に設けられるとともに、GND側の接点部42が通信制御部29とGNDとの経路上に設けられている。よって、ワイヤレス通信用の操作ボタンが操作された際には、この操作ボタンのスイッチ40がオン状態をとることにより、電池27→通信制御部29(送受信回路30)→GNDという電流ループが形成される。これにより、通信制御部29及び送受信回路30に電流が流れて、操作ボタンに応じたワイヤレス通信が実行可能となる。
通信制御部29には、スイッチ40a〜40cの操作状態を監視するスイッチ状態監視部43が設けられている。スイッチ状態監視部43は、複数のスイッチ40a〜40cのうち、どのスイッチによって通信制御部29に通電動作が行われるかどうかを見ることにより、スイッチ40a〜40cのうちどれが操作されたのかを確認する。通信制御部29には、スイッチ状態監視部43の監視結果を基にワイヤレス通信を実行させる電池駆動源動作部44が設けられている。電池駆動源動作部44は、複数のスイッチ40a〜40cのうち、操作スイッチに基づくワイヤレス通信を実行させる。なお、スイッチ状態監視部43が監視手段に相当し、電池駆動源動作部44が電源切換手段に相当する。
次に、本例の電子キーシステム3がとる通信動作の具体例を図3〜図6に従って説明する。
まずは、スマート通信について述べる。照合ECU4は、車外の電子キー2とスマート通信を実行する際、まずは停止状態(スリープ状態)になっている電子キー2を起動させるべく、車外発信機7からウェイク信号45をLF電波により発信させる。このウェイク信号45は、車外発信機7から一定間隔をおいて繰り返し発信され、車両周囲における電子キー2の有無が監視される。ウェイク信号45には、電子キー2(送受信回路30)の動作状態を安定させるバースト信号46と、ウェイク信号45の発信元を表すウェイクパターン47とが含まれている。ウェイクパターン47は、各車両1がそれぞれ持つ個別のコード列からなっている。
電力伝送装置28は、車外発信機7がウェイク信号45を発信するのに先立ち、電力電波SvvをRF電波により発信する。この電力電波Svvは、ウェイク信号45よりも若干早いタイミングで発信されるとともに、電子キー2がウェイク信号45を受信してから、これに応答する動作をとることができるように、ウェイク信号45に対するアック返信が終わるまで出力される。
電子キー2を所持したユーザが車両1に近づくと、まずは電力電波Svvの発信エリアに入り込む。このとき、電子キー2は、この電力電波Svvを受電アンテナ33で受信する。受電アンテナ33で受信された電力電波Svvは、受電回路34によって整流されるとともに、通信制御部29及び送受信回路30の電源として好適な電圧値に値が変換され、これが無線電力Jmとして通信制御部29及び送受信回路30に供給される。
送受信回路30は、この無線電力Jmを受け付けると、無線電力動作部39が働いて、それまでの電源オフ状態から、無線電力Jmを電源として起動した電源オン状態に切り換わる。送受信回路30は、電源オン状態に切り換わると、自身に待機電流が流れて、キー受信アンテナ14aにおいて無線電波の受信有無を監視する受信準備動作を実行する。送受信回路30は、電子キー2のサーチ時、無線電力Jmを受け付ける度にこの受信準備動作を行うことにより、この一連の動作をポーリング動作として実行する。一方、通信制御部29は、この無線電力Jmを受け付けると、それまでの電源オフ状態から、ウェイク信号45による起動を待つ待機状態をとる。
続いて、電子キー2が更に車両1に近づくと、今度は電子キー2がウェイク信号45の通信エリアに入り込み、ウェイク信号45をキー受信アンテナ14aで受信する。このとき、通信制御部29及び送受信回路30は、無線電力Jmを電源として受信動作を行うとともに、電力電波Svvの後に引き続いて車両1から発信されるウェイク信号45の受信を待機する。
送受信回路30は、無線電力Jmにより電源オンに切り換わった後にウェイク信号45を受信すると、まずはウェイク信号45に含まれるバースト信号46によって安定化され、続いてウェイクパターン47のコード列を自身のものと照らし合わせるウェイクパターン照合を実行する。送受信回路30は、ウェイクパターン照合が成立することを確認すると、その旨を伝える通知としてウェイクパターン照合成立通知を通信制御部29に出力する。通信制御部29は、送受信回路30から出力されたウェイクパターン照合成立通知を入力すると、電源状態がそれまでの電源オフ状態から電源オン状態に切り換わり、スマート通信を開始する。
このとき、通信制御部29は、無線電力動作部37が働いて、無線電力Jmを電源として動作を開始し、送受信回路30及びキー発信アンテナ14bを介してアック返信の動作を実行する。この場合、電子キー2は、車両1から発信される電力電波Svvを電源として受信しているので、これを電源として発信動作を実行する。このとき、通信制御部29は、送受信回路30及びキー発信アンテナ14bを介して、アック信号48をRF電波により車両1に向けて発信させる。
照合ECU4は、ウェイク信号45を発信した後の所定時間内にアック信号48を受信すると、車両周囲に電子キー2が存在すると認識する。照合ECU4は、車両周囲に電子キー2が存在することを認識すると、電力電波Svvの発信を継続する。即ち、電力伝送装置28は、1セット分の電力電波Svvを発信した後も、これに連続して、1セット単位の電力電波Svvの発信を継続する。また、続きの電力電波Svvは、この後に続いて車外発信機7から発信されるビークルID49の発信タイミングに合わせて出力される。
電子キー2は、アック信号48を返信すると、その後、車両1から発信される電力電波Svvを継続して受信することにより、これを電源として受信動作を継続する。即ち、通信制御部29及び送受信回路30は、無線電力Jmを電源として受信動作を継続し、この後に続いて車両1から発信されるビークルID49の受信に待機する。
照合ECU4は、アック信号48を受信してから所定のタイムラグを経た後に、車両固有のIDとしてビークルID49を、車外発信機7からLF電波で発信させる。このとき、送受信回路30は、受信中の電力電波Svvによって電源オン状態をとっているので、キー受信アンテナ14aでビークルID49を問題なく受信する。送受信回路30は、ビークルID49を受信すると、このビークルID49を通信制御部29に転送する。通信制御部29は、送受信回路30からビークルID49を入力すると、ビークルID49の正否を見るビークルID照合を行い、通信相手の車両1が正規のものか否かを確認する。このように、ビークルID照合を実施するのは、電子キー2の周囲に車両が複数存在して通信が混在する状況になっても、この中の正規車両のみとスマート通信を行うためである。
通信制御部29は、ビークルID照合の成立を確認すると、その旨を通知するために、車両1にアック返信の発信動作を開始する。このとき、電子キー2は、車両1から発信される電力電波Svvを受信しているので、これを電源として発信動作を実行する。この場合、通信制御部29は、送受信回路30及びキー発信アンテナ14bを介して、アック信号50をRF電波により車両1に向けて発信させる。
照合ECU4は、ビークルID49を発信した後の所定時間内にアック信号50を受信すると、ビークルID照合が成立したことを認識する。照合ECU4は、ビークルID照合が成立することを確認すると、電力電波Svvの発信を継続する。即ち、1セット分の電力電波Svvが発信された後も、これに連続して電力電波Svvの発信が継続される。
電子キー2は、アック信号50を返信すると、その後、車両1から発信される電力電波Svvを継続して受信することにより、これを電源として受信動作を継続する。即ち、通信制御部29及び送受信回路30は、車両1から継続して発信される無線電力Jmを電源として受信動作を継続し、この後に続いて車両1から発信されるチャレンジ51の受信に待機する。
照合ECU4は、アック信号50を受信してから所定のタイムラグを経た後に、チャレンジ51をLF電波により発信させる。チャレンジ51には、発信の度に毎回値が変わるチャレンジコード(乱数コード)と、電子キー2のキー番号とが含まれている。なお、キー番号は、何番目のマスターキーであるのか、又は何番目のサブキーであるのかを通知するものである。このように、キー番号の照合を実施するのは、もし仮に通信エリア内にマスターキー及びサブキーの両方が存在していても、これらが同時に通信を開始しないようにするためである。
通信制御部29は、送受信回路30からチャレンジ51を入力すると、まずはこのチャレンジ51の中のキー番号の正否を見る番号照合を実行し、自身がこのときのスマート通信の通信対象であるか否かを判断する。そして、この番号照合が成立すると、通信制御部29は、同じチャレンジ51内に含まれるチャレンジコードを、自身の暗号鍵によって演算することにより、レスポンスコードを生成する。
通信制御部29は、レスポンスコードの生成が完了すると、これを車両1に通知するために、レスポンスコード返信の発信動作を開始する。このとき、電子キー2は、車両1から発信される電力電波Svvを受信しているので、これを電源として発信動作を実行する。この場合、通信制御部29は、レスポンスの生成作業が終了すると、自身に登録されたIDコードとこのレスポンスコードとを、レスポンス52としてキー発信アンテナ14bからRF電波により車両1に返信する。
照合ECU4は、チャレンジ51を電子キー2に発信する際、自身が持つ暗号鍵によってチャレンジコードを演算して、自らもレスポンスコードを作成する。そして、照合ECU4は、電子キー2からレスポンス52を受信すると、電子キー2のレスポンスコードと、自身が演算したレスポンスコードとを照らし合わせて、レスポンス照合を実行する。照合ECU4は、このレスポンス照合が成立することを確認すると、同じレスポンス52内に含まれるIDコードの正否を照合する。そして、照合ECU4は、レスポンス照合及びID照合の両方が成立することを確認すると、スマート照合を成立として処理する。
なお、例えばスマート通信の途中で、通信環境下に発生したノイズ等によりスマート通信が実行できなくなると、その時点でスマート通信が中断される。このとき、照合ECU4は、車外発信機7からのLF電波発信を停止するので、それに伴って電力伝送装置28からの電力電波Svvの発信も停止する。また、ここでは、車外照合時に車両1及び電子キー2がとる動作について説明したが、車内照合のときも同様の動作をとるので、車内照合の説明は省略する。
続いて、今度はワイヤレス通信について述べる。ここでは、例えば図4に示すように、施錠ボタン23が操作された場合を想定する。施錠ボタン23が押し操作されると、施錠ボタン用スイッチ40aと繋がる電流ループ(施錠ボタン用電流ループLと記す)が閉ループをとり、この電流ループLに電池27を電源とした電流が流れることになる。これにより、電池27から施錠ボタン用電流ループLを介して電池電力Vdが通信制御部29及び送受信回路30の両方に流れ込み、通信制御部29及び送受信回路30がこの電池電力Vdを電源として動作可能となる。
このとき、スイッチ状態監視部43は、施錠ボタン用電流ループLに電流が流れることを確認するので、施錠ボタン23が操作されたことを認識する。そして、電池駆動源動作部44は、電池27から取得する電池電力Vdを電源として、施錠ボタン23が操作されたときにとるワイヤレス動作、即ちワイヤレスドアロック動作を実行する。これにより、電池駆動源動作部44は、ワイヤレス信号Swlとして施錠要求をキー発信アンテナ14bからRF電波により発信し、遠隔操作によって車両1のドアロックを施錠する。
また、図5及び図6に示すように、スイッチ40(40a〜40c)の途中解除の対策として、スイッチ40のオン状態を一定時間Tの間において保持するスイッチオン保持機構53を電子キー2に設けてよい。一定時間Tは、ワイヤレス通信が最後まで完了させるのに必要な時間である。この場合、スイッチ40の各接点部41,42には、電池27との間の電流経路としてそれぞれトランジスタ54,55が接続されている。これらトランジスタ54,55は、接点部41,42と並列状態に接続されるとともに、ゲート端子が通信制御部29に接続されている。また、通信制御部29には、これらトランジスタ54,55のスイッチング動作を管理するスイッチ保持管理部56が設けられている。スイッチ保持管理部56は、トランジスタ54,55をオンすることにより、この経路を電池27との間の電流経路とするよう動作する。なお、スイッチオン保持機構53が保持手段に相当する。
スイッチ保持管理部56は、スイッチ40のオン切り換えに伴って電流の流れ込みを検知すると、オン状態に切り換わったスイッチ40のトランジスタ54,55を、それまでのオフ状態から一定時間Tの間に亘りオンする。これにより、電池27から流れ出す電流がトランジスタ54,55を迂回する流れをとり、通信制御部29に流れ込む。このため、もし仮にスイッチ40が一瞬だけ操作されて、直ぐにスイッチ40から手が離された場合であっても、ワイヤレス通信が完了するまでの一定時間Tの間、電池27の電流が通信制御部29及び送受信回路30に供給され、ワイヤレス通信が最後まで実行される。
さて、本例の場合、スマート通信の際は、車両1から発信される電力電波Svvを電子キー2の電源とし、ワイヤレス通信の際には、キー内蔵の電池27を電源として電子キー2を動作させる。このため、スマート通信時には、電子キー2において電源が不要となるので、その分だけ電子キー2の省エネルギー化を図ることが可能となる。また、電子キー2にワイヤレス通信用の電池27を搭載しておき、ワイヤレス通信時にはこの電池27を電源として電子キー2を動作させる。このため、スマート通信時に必要な電子キー2の電力を、車両1から発信される電力電波Svvによりまかなうようにしても、これまでと同様にワイヤレス通信も実行することが可能となる。
また、電子キー2にスイッチオン保持機構53を設ければ、もし仮にワイヤレス通信用の各種ボタンが瞬間的に押し操作される操作態様がとられたとしても、このときはスイッチオン保持機構53が働いて、ワイヤレス通信が終了するまでの間、電池27の電流が通信制御部29に供給される状態が維持される。よって、電子キー2に、このようなフィードバック機能を持たせれば、より確実にワイヤレス通信を最後まで完了させることが可能となる。このため、スイッチ操作のやり直しをユーザに課す必要がなくなり、装置としての機能性が高いものとなる。
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)スマート通信時の電子キー2の電源を、車両1から発信される電力電波Svvによってまかない、ワイヤレス通信時には、電子キー2の電源が電力電波Svvからキー内蔵の電池27に切り換えられる。このため、電子キー2の電源の省エネルギー化を図るために、スマート通信時の電子キー2の電源を車両1からの電力電波Svvによって供給するようにしても、通信の際に電子キー2が自電源で動作する必要のあるワイヤレス通信を、通常通り実行することができる。これにより、電子キー2のスマート通信の電源を車両1からの電力電波Svvによりまかなうようにしても、スマート通信とワイヤレス通信との両方の機能を電子キー2に持たせることができる。
(2)電子キー2に、電池27と通信制御部29との電気接続を保持するスイッチオン保持機構53を設けた場合、ワイヤレス通信のためのボタン押し操作が、もし仮に一瞬の操作としてしか行われない場合であっても、このボタン操作によって電子キー2の電源が電池27に電気接続した状態が、スイッチオン保持機構53によって一定時間Tの間において保持される。このため、電子キー2の電源が電池27に切り換えられた状態がワイヤレス通信が完了するまで継続されるので、仮にワイヤレス通信のボタン操作が一瞬の押し操作で行われた場合であっても、ワイヤレス通信を通信完了の最後まで実行することができる。
(3)スマート通信時の電子キー2の電源を、車両1からの電力電波Svvによりまかなうので、スマート通信の際に電子キー2の電池27を消耗せずに済む。このため、キー内蔵の電池27をワイヤレス通信のときのみ使用するだけで済むので、電池27の長寿命化を図ることができる。また、1つの電池27を長期間に亘り使用することが可能となるので、その分だけ電池交換の回数を減らすこともできる。
(4)キー内蔵の電池27はワイヤレス通信時にのみ通信制御部29と電気的に繋がって電力が消費されるので、もし仮にディスプレイ(テレビ)やモータ等から生じるノイズを受け付ける状況となっても、電子キー2がこのノイズで動くことはない。よって、このような家庭内で生じ得るノイズで電子キー2が起きて自電力を消費する状況とならずに済むので、この点からも電池27の長寿命化に効果が高いといえる。
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・ 送受信回路30は、必ずしも自ら1つで電波受信と電波発信との両方が可能なものとなっていることに限らず、受信と発信とでそれぞれが別部品となっていてもよい。
・ ワイヤレス通信が行われたか否かの監視は、電流ループLに電流が流れたかどうかを見る形式に限定されず、ワイヤレス通信の実行操作の有無を見ることができれば、どのような形式を採用してもよい。
・ スイッチ40がオンに切り換わると、電池27の電力がこのスイッチ40を介して直に通信制御部29や送受信回路30に供給される構造をとることに限定されない。例えば、ワイヤレス通信用の操作ボタンの操作が検出された際、電池27と繋がるトランジスタ等のスイッチング素子のスイッチ状態を切り換えて、電池27との電気接続を変更するものでもよい。
・ 電池27は、必ずしも一次電池であることに限定されず、例えば二次電池やコンデンサ等を採用してもよい。この場合、電子キー2に発電装置を設け、この発電装置から発生した電力を二次電池に蓄えるようにしてもよい。なお、発電装置としては、例えば振動を電力に変えるものや、太陽光により発電するものが想定される。
・ スイッチオン保持機構53は、スイッチ40の接点部41,42に並列接続されたトランジスタ54,55により構成されるものに限らず、一定時間Tの間でスイッチ40のオン状態を保持できれば、どのような構成をとっていてもよい。
・ トランジスタ54,55は、バイポーラトランジスタ等の種々のスイッチング素子を採用することが可能である。
・ 車両1及び電子キー2の間の相互通信は、スマート通信に限定されず、2者の間で電波のやり取りを行うものであれば、どのような種のものでもよい。
・ ワイヤレスキーシステムは、遠隔操作によりドアロック(トランクロック)を施解錠するワイヤレスドアロックシステムに限定されない。例えば、パワースライドドア機能や、カーファインダ機能に応用してもよい。
・ 電力電波Svvは、必ずしもRF電波で出力されることに限らず、例えばLF電波としてもよい。
・ 電力電波Svvは、電子キー2(通信制御部29や送受信回路30)の電源となり得るものであれば、どのような波形形状をとっていてもよい。
・ スマート通信の際、レスポンス照合の成立が確認できると、車両1がその旨を電子キー2に通知して、スマート通信を終了させる形式を採用してもよい。
・ 電子キーシステム3は、キー操作フリーシステムやワイヤレスキーシステムに限定されず、例えばイモビライザーシステムを採用してもよい。
・ 電子キーシステム3で使用する電波の周波数は、必ずしもLFやRFに限定されず、他の周波数を使用してもよい。
・ キー操作フリーシステムは、車両1から電子キー2に電波を飛ばす往路と、電子キー2から車両1に電波を飛ばす復路とで、電波の周波数が必ずしも異なることに限らず、往路と復路とで同じ周波数としてもよい。
・ 電子キー2は、ID照合の成立を条件に通信相手側において動作実行を伴う端末に限定されず、単に認証のみを行う種々の通信端末を広義に含むものとする。
・ 電力電波Svvの発信元は、必ずしも車両1に限らず、車両1以外の箇所から発信されるものでもよい。
・ 無線電力伝送システム26の搭載対象は、必ずしも車両1に限らず、通信端末とその通信相手との間で無線通信を行うシステムであれば、その搭載先は特に限定されない。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(イ)請求項1又は2において、前記スマート通信は、通信完了までに種々の電波のやり取りを複数回繰り返す通信である。この構成によれば、スマート通信を認証性の高いものとすることが可能となる。
(ロ)請求項1又は2,前記技術的思想(イ)のいずれかにおいて、前記電子キーには、自ら電力を生成可能な発電装置が設けられ、当該発電装置により生成した電力が前記電池に充電可能となっている。この構成によれば、発電装置により電池に充電が可能となるので、電池の長寿命化に一層効果が高くなる。
(ハ)通信相手からのリクエストに応答して電子キーがIDコードを自動で発信して、当該電子キーのIDコードを照合するスマート通信と、前記電子キーに設けられた操作手段の遠隔操作により、このとき発信された前記IDコードの照合成立を条件に前記通信相手を動作させるワイヤレス通信との両方の通信が実行可能な電子キーシステムの電子キー電力供給方法において、前記スマート通信時における前記電子キーの電源を、前記通信相手から発信された電力電波によりまかない、前記ワイヤレス通信の際には、前記電子キーに内蔵された電池を電源として、前記電子キーを動作させる電子キー電力供給方法。