JP5182108B2 - El素子、及びそれを用いたel表示装置 - Google Patents

El素子、及びそれを用いたel表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、EL素子、及びそれを用いたEL表示装置に関する。
近年、情報機器の多様化に伴って、消費電力が少なく、容積が小さい面発光素子のニーズが高まり、このような面発光素子の一つとしてエレクトロルミネッセンス素子(本願では、EL素子と略す)が注目されている。そして、このようなEL素子は使用する材料によって無機EL素子と有機EL素子とに大別される。
ここで、無機EL素子は一般に発光部に高電界を作用させ、電子をこの高電界中で加速して発光中心に衝突させ、これにより発光中心を励起させて発光させるようになっている。一方、有機EL素子は電子注入電極とホール注入電極とからそれぞれ電子とホールとを発光層内で結合させて、有機材料を励起状態にし、この有機材料が励起状態から基底状態に戻るときに発光するようになっており、無機EL素子に比べて、低い電圧で駆動できるという利点がある。面で発光するという利点を活かして、薄型のディスプレイや照明用途としての展開が期待されている。
しかしながら、EL素子等の面発光素子を発光させた場合、高い屈折率を持つ発光層の内部で発せられた光は様々な方向に進行し、面発光素子の出射面等において全反射して面発光素子の内部に閉じ込められる光も多く存在する。一般に、面発光素子で発せられた光の20%〜30%しか面発光素子の外部に取り出すことができず、十分な明るさを得られないという問題があった。特に有機EL素子の場合、明るさを電流の大きさで補おうとすると素子の寿命が短くなるという問題もある。
このような問題に対し、拡散粒子を含有する層をEL素子の光出射面側のいずれかの位置に設ける技術が従来知られている。しかし単なる拡散層を設けるだけの構成では、十分な光取り出し効果が得られない。
例えば、特許文献1には、扁平な散乱体を用いた光拡散フィルムについての記載があるが、液晶表示装置の最表面に設けて視野角の拡大を狙った光拡散フィルムについての記載であり、光取り出し効率向上についての概念はなく、このままEL素子に用いても光透過性電極との間に空隙が生じ、もともと取り出される臨界角内の光のみしか光学シートに入射されない。また、仮に通常の接着層を介してEL発光素子に貼り付けたとしても封止部位と接着層との屈折率差が大きいことにより、十分な光取り出し効率は向上しない。更には、臨界角内の光に対する散乱効果が強すぎ、正面輝度の取り出し効率が低く、粒子の分散も機械的分散にのみ頼っているため不十分で、光取り出し効率が低いという問題がある。
特許文献2には、平均粒径の異なる2種の超微粒子を樹脂中に拡散し、樹脂層を高屈折率化した散乱層についての記載がある。これは、超微粒子を樹脂中に拡散して基板を高屈折率化してITOの屈折率を近づけることで、基板とITO界面での反射を防止でき有効であるが、散乱粒子の分散を機械的分散にのみ頼っているため樹脂との親和性が不十分なため加熱時にクラックが発生する恐れがある。また、臨界角以内の角度で進行する光に対しても散乱を与えてしまうため効率的ではない。更には、扁平な散乱体を用いるという思想、記載もない。
特許文献3には、屈折率異方性を有した微粒子が報告されており、臨界角以内の光は散乱せず、臨界角以上の光のみ散乱するので効果的であるが、用いられている屈折率異方性を有する球状粒子では、有する異方性を揃えて粒子を並べることは困難であり、当該特許には作成方法の記載もない。また、形状異方性を有する粒子の記載もあるが形状、粒径等について何ら言及されていない。
従って、EL素子において十分な光り取り出し効果を有し、かつクラックの発生のない光取り出しフィルムに関する技術が望まれている状況にある。
特許3822102号公報 特開2005−190931号公報 特表2000−503163号公報
本発明の目的は、扁平なドメインが透明樹脂中に分散されている光拡散機能を有する光学シートを光取り出しフィルムとしてEL素子に用いることで、十分な光取り出し効率とクラックの発生のないEL素子を提供することにある。
本発明の上記課題は以下の構成により達成される。
1.少なくとも1つの基板のいずれかの面に、対向する一対の電極と該電極の間に1つの発光層を備え、前記一対の電極のうち少なくとも一方は光透過性電極であって、該光透過性電極の光取り出し面側に封止部位が設けられているEL素子において、該封止部位の視認側面に下記条件をいずれも満たす光学シートが接着部位を介して設けられていることを特徴とするEL素子。
a.該光学シートは、少なくとも透明樹脂からなるマトリックス中に平均アスペクト比が2以上の扁平なドメインが分散されている構成であって、該シート面に垂直な断面における該扁平なドメインの長軸方向と該光学シート面と平行な方向とのなす小さい方の角度の平均値が30°以内である。
b.該光学シートを構成する前記マトリックスの屈折率をnとし、前記扁平なドメインの屈折率をnとするとき、nは1.62以上2.0以下であり、かつ|n−n|≧0.05である。
c.該接着部位の屈折率をnとするとき、該光学シートを構成する前記マトリックスの屈折率が|n−n|≦0.05の関係を満たす。
2.前記扁平なドメインの平均粒径が10μm未満であり、平均厚みが0.5μm以下であることを特徴とする前記1に記載のEL素子。
3.前記扁平なドメインは、カルボン酸、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤より選択される少なくとも1種の化合物によって表面処理されていることを特徴とする前記1または2に記載のEL素子。
4.前記マトリックスは平均粒径が1nm以上100nm以下の微粒子を含有し、該微粒子を分散させたマトリックスの下記式で表される屈折率をn、前記扁平なドメインの屈折率をn、該微粒子の屈折率をnとすると、
微粒子の屈折率n>1.8でかつ|n−n|≧0.05の関係を満たすことを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のEL素子。
(式) n=n・A+n・(1−A)
(式中、マトリックスの屈折率をn、マトリックスの体積分率をA、微粒子の屈折率をn、微粒子の体積分率を1−Aとする。)
5.前記微粒子は、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルシリルクロライド、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシランから選択される少なくとも一つの表面処理剤で改質されていることを特徴とする前記4に記載のEL素子。
6.前記扁平なドメインが炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウムから選ばれる少なくも一つであることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載のEL素子。
7.外界から上記光学シート内に入射する光のうち、該シート面の法線方向から入射する光に対する平行透過率をToとし、該シート面の法線に対し40°傾斜した方向から入射する光に対する平行透過率をTβとしたとき、Tβ/Toの値が0.65以上であることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載のEL素子。
8.前記1〜7のいずれか1項に記載のEL素子を用いることを特徴とするEL表示装置。
本発明によれば、扁平なドメインが透明樹脂中に分散されている光拡散機能を有する光学シートを光取り出しフィルムとしてEL素子に用いることで、十分な光取り出し効率とクラックの発生のないEL素子を提供することができる。
本発明に係わる光学シートの光学特性を評価する際の光学系を示す模式図である。 本発明のEL素子構成の実施形態の一例を示す模式図である。 実施形態のEL表示装置の断面構成の一例を示す模式図である。 実施形態のEL表示装置の回路構成の一例を示す模式図である。 実施例で作成したEL表示装置の断面構成を示す模式図である。
以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明のEL素子は、少なくとも1つの基板のいずれかの面に、対向する一対の電極と該電極の間に1つの発光層を備え、前記一対の電極のうち少なくとも一方は光透過性電極であって、該光透過性電極の光取り出し面側に封止部位が設けられていることを特徴とし、かつ該EL素子は、前記封止部位の視認側面に下記条件をいずれも満たす光学シートが接着部位を介して設けられていることを特徴とする。
a.該光学シートは、少なくとも透明樹脂からなるマトリックス中に平均アスペクト比が2以上の扁平なドメインが分散されている構成であって、該シート面に垂直な断面における該扁平なドメインの長軸方向と該光学シート面と平行な方向とのなす小さい方の角度の平均値が30°以内である。
b.該光学シートを構成する前記マトリックスの屈折率をnとし、前記扁平なドメインの屈折率をnとするとき、nは1.62以上2.0以下であり、かつ|n−n|≧0.05である。
c.該接着部位の屈折率をnとするとき、該光学シートを構成する前記マトリックスの屈折率が|n−n|≦0.05の関係を満たす。
形状異方性を有する平均アスペクト比が2以上の扁平なドメインをシート面に垂直な断面におけるドメインの長軸方向と該シート面と平行な方向とのなす小さい方の角度の平均値が30°以内となるようにマトリックスである透明樹脂中に分散、固定化させることで、EL素子から視認側正面に向かって出射される光に対して殆ど散乱を起こすことなく、臨界角以上の角度で進行する光に対して大きな散乱を与え、光取り出し効率を高めることができる。
しかしながら、扁平なドメインを機械的に混合するだけではマトリックスとの親和性が不十分であるため、界面に空隙が生じたり、扁平なドメイン同士が凝集してしまい、目的の分散状態やマトリックスの機械的強度を得ることができない。そこで本発明者らは検討を重ねた結果、表面処理を行った扁平なドメインを用いることで、該シート面に垂直な断面における該扁平なドメインの長軸方向と該光学シート面と平行な方向とのなす小さい方の角度の平均値が30°以内となる分散状態を達成し、更に樹脂との親和性が十分なため加熱時のクラック発生を顕著に抑制し、光取り出し効率を向上できることを見出したものである。
また、マトリックスの屈折率を透明電極の屈折率にを近づけることで、EL素子の光出射面に位置する基板と透明電極界面での反射を防止でき、光取り出し効率を向上できる。
マトリックスに用いられる透明樹脂は樹脂単体で屈折率を調整しても、微粒子を混合することで屈折率を調整しても良い。特に、マトリックスに微粒子を混合するとマトリックスの熱膨張率を低減することができ、EL素子駆動時に生じる熱の影響からの光学シートの不規則な変形を抑制することができ、該光学シート中の樹脂と光散乱粒子との間に発生するクラックを防止することができる。
(透明樹脂、扁平なドメインの屈折率の測定)
透明樹脂の屈折率は、扁平粒子を含まない透明樹脂のシートを予め作製し、これを株式会社アタゴ製のアッベ屈折率計DR−M2を用いて測定する。また、扁平なドメインの屈折率は、ベッケ法を用いて測定する。即ち、屈折率の異なるいくつかの浸液を用意し、これにドメイン(例えば後述する扁平粒子)を浸した際のベッケ線の有無を観察することにより、屈折率を定めることができる。
扁平なドメインと同様に、微粒子についても表面処理を行ってからマトリックスと混合、分散することで、より良好な効果を得ることができる。
尚、本願において、「マトリックス」とは、ドメインを含有し保持する媒体として機能する基材ないし基盤(母体)をいう。本発明においては、後述する各種樹脂等をマトリックスとして用いる。また、「ドメイン」とは、マトリックスとは異なる屈折率を有し、光を散乱させる機能を有する物質からなる個々に独立した微小領域をいう。本発明においては、後述する各種扁平な無機又は有機粒子をドメインとして用いる。
以下、本発明を詳細に説明する。
<扁平粒子>
本発明で扁平なドメインとして生産上、性能上好ましく使用される扁平粒子について説明する。
本発明に用いられる扁平粒子は、粒子の立体形状に直交3次元座標系を当てはめたとき、少なくともいずれか一方向に短い特徴をもつ粒子であり、外見上、円盤を含む楕円盤状のもの、四角状あるいは六角状に代表される多角形平板状のもの、更には棒状のものなど種々の形状のものが用いられる。
本発明に係わる光学シートは、透明樹脂中に平均アスペクト比が2以上の扁平粒子が分散されている構成であることが特徴である。本発明においてアスペクト比とは、粒径と厚さの比(アスペクト比=直径/厚さ)をいう。また、本発明でいう粒径とは、扁平粒子の表面を形成する平面あるいは曲面の中で最も広い面積を有する面(以下、主要面と称する)の外接面または内接面に対して垂直にその粒子を投影した場合の面積(投影面積)に等しい円の直径で表される。粒子の厚さとは、主要面に垂直な方向での粒子の厚さのうち最長のものとして定義する。
粒径と厚さは、粒子が固体の場合、以下の方法で求められる。予めEL素子より剥離して取り出した光学シートから、バインダー樹脂を溶解等の方法により除去し、粒子のみを抽出する。これを支持体上に内部標準となる粒径既知のラテックスボールとともに塗布した試料を作成し、ある角度からカーボン蒸着法によりシャドーイングを施した後、通常のレプリカ法によってレプリカ試料を作成する。同試料の電子顕微鏡写真を撮影し、画像処理装置等を用いて個々の粒子の投影面積と厚さを求める。この場合、粒子の投影面積は内部標準の投影面積から、粒子の厚さは内部標準と粒子の影(シャドー)の長さから算出することができる。本発明において、アスペクト比、粒径、粒子厚さの平均値は、上記シャドーイング法を用いて粒子を任意に300個以上測定し、それらの算術平均として求められる値をいう。また、粒子が気体あるいは液体の場合、光学シートを超薄膜切片状に連続的に切り出し、電子顕微鏡像の画像処理により立体化した後、上記粒径と厚みを求めることができる。
本発明において、扁平粒子の平均アスペクト比は2以上であるが、5以上であることが好ましい。また、本発明に用いられる扁平粒子の平均粒径は、10μm未満が好ましく、0.1μm〜8μmが更に好ましく、0.1μm〜5μmが特に好ましい。本発明に用いられる扁平粒子の平均厚みは、2μm以下が好ましく、1μm以下が更に好ましく、0.5μm以下が最も好ましい。
本発明に用いられる扁平粒子は、無機物質、有機物質、有機/無機複合物のいずれであっても構わないし、その物質の状態が固体に限定されるものではなく、液体でも気体でも構わない。扁平粒子が液体の例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す)のような熱可塑性樹脂中に、常温で液体の状態を示しかつPETとの相溶性が低いUV吸収化合物などを分散させ、PETとともに溶融押出法にて製膜後、二軸延伸したシートなどが挙げられる。二軸延伸後の各UV吸収化合物からなる分散体は、周囲のPETに追随して面方向に形が伸びるため、扁平状の分散体となる。PETとUV吸収化合物の平均屈折率の差が0.02以上異なるようにUV吸収化合物の種類を選択するとともに延伸倍率を制御することにより、本発明の狙う散乱特性を示す光学シートを得ることができる。また、扁平粒子が気体の例としては、例えば、PET中に、PETと平均屈折率が殆ど差がない無機粒子を添加し、先程と同様、PETとともに溶融押出法にて製膜後、二軸延伸したシートなどが挙げられる。PETを二軸延伸することにより、各無機粒子とPETとの界面を起点とした微細な空隙が形成され扁平粒子状になる。添加する無機粒子は、屈折率が分散媒のPETと近いものを選択しているため、光学的には何ら影響を及ぼさない。無機粒子のサイズや添加濃度、延伸倍率を制御することにより、本発明の狙う散乱特性を示す光学機能性フィルムを得ることができる。
次に、本発明に用いられる扁平粒子の具体例を示す。無機系の扁平粒子としては、マスコバイト(白雲母)、フロゴバイト(金雲母)、バイオタイト(黒雲母)、セリサイト(絹雲母)、フッ素金雲母(人造雲母)などの雲母(マイカ)類や、カオリン(クレー)、タルク(滑石)、モンモリロナイトなどの他、薄片状の、酸化アルミニウム・酸化チタン・酸化亜鉛・酸化ケイ素やこれらを複合したもの、平板状の炭酸カルシウムなど、更には、平板状に形状制御された塩化銀、臭化銀、沃化銀、沃臭化銀、臭塩化銀、沃塩化銀、沃臭塩化銀等のハロゲン化銀などが用いられる。
雲母類としては、例えば、山口雲母工業所製A−11、A−21、A−41、AB−25S、SYA−21R、SYA−41R、SJ−005、SJ−010、CS−325DC、Y−1800、Y−2300X、Y−2400、Y−3000、SA−310、SA−350、FA−450、NCC−322、NCF−322、TM−10、TM−20などや、コープケミカル社製ミクロマイカMK−100F、S1MK、MK−100、MK−200、MK−300や、同社製ソフシマME−100、同MAE、同MTE、同MEE、同MPEなどが用いられる。
カオリン、タルクなどのスメクタイト類としては、例えば、山口雲母工業所製FK−500S、FK−300S、CT−35などや、コープケミカル社製ルーセンタイトSWN、同SWF、同SAN、同SAN316、同STN、同SEN、同SPNなどが挙げられる。
薄片状の酸化アルミニウムとしては、例えば、キンセイマテック社製のセラフYFA00610、同02025、同02050、同05025、同05070、同07070、同10030や、朝日化学工業社製ルクセレンFAOなどが挙げられる。
薄片状の酸化チタンとしては、例えば、朝日化学工業社製ルクセレンシルクD、同H、同UV、ルクセレンPC、同ODTなどが挙げられる。
薄片状の酸化亜鉛としては、例えば、朝日化学工業社製ルクセレンFZTなどが挙げられる。
薄片状の酸化ケイ素としては、例えば、朝日化学工業社製ケミセレンや、日本板硝子社製SGフレーク、TSG9、TSG30、NTS30K3TA、NPT30K3TAなどが挙げられる。
また、扁平粒子が炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウムから選ばれる少なくも一種を用いることも好ましい。
例えば、扁平状の炭酸カルシウムとしては、ニューライム社製の六角板状、円盤状、鱗片状のものなどが用いられる。
有機系の扁平粒子としては、例えば、特開平11−199706号公報に開示されているような製造方法を用いて作られる、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリスルフィド系、ポリオレフィン系、フッ素樹脂系またはポリビニルアルコール系のものなどが用いられる。
扁平粒子の特殊形状として、棒状粒子が挙げられる。棒状粒子を用いる場合、その長軸は本発明に係わる光学シートの面方向に配向していることが重要であり、該シート面に垂直な方向から見た場合、個々の棒状粒子は特定の方向を向かず無配向になっていることが好ましい。また、単独に1つの棒状粒子として分散されている場合だけでなく、複数の棒状粒子が凝集して扁平な形状の粒子群を成しているものも好ましく用いられる。具体的には、上記、無機系、有機系、あるいはこれらの複合系いずれの扁平粒子においても、後述の粒子バインダーとして用いる各種樹脂との親和性を高めるため、公知の各種表面改質剤・手法を用いて表面処理することができる。
(扁平粒子の配向性)
本発明に係わる光学シート内における扁平粒子の配向性は、該光学シート面と平行な方向と個々の扁平粒子の扁平方向が概ね平行になっていることが光取り出し効率を向上する上で好ましい。換言すれば、該シート面に垂直な縦横2つの断面における粒子の長軸方向が、各断面のシート面方向に概ね平行であることが好ましい。ここで、シート面に垂直な断面における粒子の長軸方向とは、閉曲線または閉直線で囲まれる粒子断面において、外周の2点間の距離のうち最も長い2点を結んだ方向を意味するものとする。本発明に係わる光学シート内における扁平粒子の配向性は、シート面に垂直な縦横2つの断面における、粒子断面の長軸方向と光学シート面と平行な方向とのなす小さい方の角度の平均が30°以内であることが特徴であり、20°以内であることが好ましい。
上記好ましい配向性を実現させる方法としては、平均アスペクト比の高い扁平粒子を選択したり、シート形成時に高粘度の扁平粒子含有の溶液を用意し、この溶液をシート状に延ばす際にシートの面方向に強いせん断力が加わるようにしたり、あるいは塗布直後の溶剤を多量に含んでいる状態から乾燥固化するまでの時間を長めにするなど、種々の方法があり、適宜これらの方法を単独あるいは組合せて実現させることができる。逆に言えば、例えば溶剤とUV硬化樹脂と扁平粒子を含んだ塗布液を、ワイヤーバーなどで塗布した後、直ちにUV照射することにより、固化した層内において十分に安定配向していない扁平粒子を含んだシートを作製することが可能である。ワイヤーバー塗布において、塗布後乾燥してUV照射による固化までの時間を十分にとることにより、良好な配向性を得ることができる。また、他の方法として、スピンコート法は扁平粒子の好ましい配向を形成しやすく好ましい。
扁平粒子の配向特性を測定する具体的方法としては、例えば以下のような方法を用いることができる。即ち、予めEL素子より接着部位を溶解する溶剤などを用いて剥離した光学シートを包埋用樹脂に埋め込み、これをウルトラミクロトーム(RMC社製MT−7)によりシートの断面(正確にはX軸方向の断面とY軸方向の断面の2方向がある)を厚み100nmの超薄切片状に切削し、これらを走査型電子顕微鏡、あるいは透過型電子顕微鏡にて撮影する。そして撮影画像を例えば画像解析ソフト(三谷商事(株)製、WinROOF、ver3.60)等により解析し、先述の定義に従い算出することで求めることができる。
本発明に用いられる扁平粒子は、カルボン酸、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤より選択される少なくとも1種の化合物によって表面処理されていることが、該扁平粒子の長軸方向と該光学シート面と平行な方向とのなす小さい方の角度の平均値が30°以内になるように分散する上で好ましい手法である。
具体的なカルボン酸としては、脂式カルボン酸ではギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸のような飽和脂肪酸、あるいはオレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸のような不飽和カルボン酸が用いられ、脂式ジカルボン酸ではシュウ酸、マロン酸、コハク酸などが用いられ、芳香族カルボン酸では安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、没食子酸、メリト酸、ケイ皮酸などが用いられ、その他としては、ピルビン酸のようなオキソカルボン酸や、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、グルタル酸、アジピン酸、アミノ酸、ニトロカルボン酸などが挙げられる。
シランカップリング剤の例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリアセトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシジルオキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポシシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びβ−シアノエチルトリエトキシシランが挙げられる。
また、珪素に対して2置換のアルキル基を持つシランカップリング剤の例として、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルフェニルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン及びメチルビニルジエトキシシランが挙げられる。
これらのうち、分子内に二重結合を有するビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、珪素に対して2置換のアルキル基を持つものとしてγ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン及びメチルビニルジエトキシシランが好ましく、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシランが特に好ましい。
チタンカップリング剤としては、としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリアシルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等が用いられる。
ジルコニウムカップリング剤としては、ジルコニウムテトラアセチルアセテート、ジルコニウムジブトキシビスアセチルアセトネート、ジルコウムトリブトキシアセチルアセネート、ジルコニウムテトラキスエチルアセトアセテート、ジルコニウブトキシトリスエチルアセトアセテート、ジリコニウムブトキシビスエチルアセトアセテート、ジリコニウムトリブトキシモノエチルアセトアセテート、ジリコニウムテトラキスエチルラクテート、ジリコニウムジブトキシビスエチルラクテート、ビスアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテートジルコニウム、モノアセチルアセトネートトリスエチルアセトアセテートジルコニウム、ビスアセチルアセトネートビスエチルラクテートジルコニウム等のジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムn−ブチレート、ジルコニウムn−プロピレート等のジルコニウムアルコキシド等が用いられる。
カップリング剤による表面処理は、扁平粒子の分散物に、カップリング剤を加え、室温から60℃までの温度で、数時間から10日間分散物を放置することにより実施できる。表面処理反応を促進するため、無機酸(例えば、硫酸、塩酸、硝酸、クロム酸、次亜塩素酸、ホウ酸、オルトケイ酸、リン酸、炭酸)、有機酸(例えば、酢酸、ポリアクリル酸、ベンゼンスルホン酸、フェノール、ポリグルタミン酸)、またはこれらの塩(例えば、金属塩、アンモニウム塩)を、分散物に添加してもよい。
本発明に係わる光学シートに含有される扁平粒子の添加量としては、個々の粒子の詳細な形状や、材質で決まってくる屈折率、更には粒子のバインダーとして機能する透明樹脂の屈折率などとの関係により、一概に適正範囲を語ることはできないが、光学シートに対する体積比率として0.03%〜50%の範囲であることが好ましく、0.1%〜30%の範囲であることが更に好ましい。
本発明において、扁平粒子と透明樹脂を混合する際に、特に限定的な方法を用いる必要はないが、本発明に係わる光学シートを溶液流延法や塗布方法で作製する場合、該扁平粒子の種類と透明樹脂、更には用いられる溶剤の組合せによっては、扁平粒子の凝集が生じる可能性がある。このような場合には、予め少量の透明樹脂と溶剤を混ぜて樹脂を溶解させた液をつくり、その液を攪拌しながらこれに扁平粒子を少量ずつ添加した後、分散し、そこに残りの透明樹脂をやはり少量ずつ添加していくプロセスが好ましい。
<透明樹脂>
本発明のマトリックスとして用いられる透明樹脂は、可視光領域で実質的に透明な材料を用いることが好ましい。具体的には、例えばトリアセチルセルロースやセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートのようなセルロースエステル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィンポリマー、架橋ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂などの非晶性熱可塑性樹脂や、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂などの結晶性熱可塑性樹脂などを用いることができる。更には、上記熱可塑性樹脂の基材あるいはガラス基材上にアクリル系、エポキシ系、ウレタン系などの紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂で構成された樹脂を先述の扁平粒子とともに塗布することも好ましい。
光学シートを構成する前記マトリックスの屈折率をnとし、前記扁平なドメインの屈折率をnとするとき、nは1.62以上2.0以下であり、かつ|n−n|≧0.05であることが本発明の効果を得る上で必要である。|n−n|はより好ましくは0.5≧|n−n|≧0.05、更に好ましくは0.3≧|n−n|≧0.05、特に好ましくは0.2≧|n−n|≧0.05である。
0.5を超えると後方散乱が大きくなり、取り出し効率が低下する恐れがある。
は1.62以上2.0以下であり、かつ|n−n|≧0.05にすることでITO電極及封止層との屈折率差が軽減し、界面での反射による光損失をより防ぐことができる。
このような屈折率を満足するマトリックスと扁平なドメインを満足する組み合わせとして、例えばポリカーボネート系樹脂として三菱ガス化学社製 EP4000、EP5000、ポリエステル系樹脂として大阪ガスケミカル社製 OKP4、OKP4HT、(メタ)アクリレート系樹脂として三菱化学社製 UV1000、UV2000、UV3000、イオウ含有(メタ)アクリレート樹脂として特開2002−97217、三菱ガス化学社製ルミプラス等に薄片状酸化アルミニウム(キンセイマテック社製)、薄片状酸化ケイ素(朝日化学工業社製)、薄片状酸化ケイ素(日本板硝子社製)、薄片状酸化チタン(朝日化学工業社製)、薄片状酸化亜鉛(朝日化学工業社製)等を混合する組み合わせが好ましい。
このとき、マトリックスとドメインとの相溶性によっては下記のシランカップリング剤でドメインを表面処理して用いることで良好な分散状態を得ることができる。
シランカップリング剤としてはテトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、ポリシラザン、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルシリルクロライド、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等が好ましく用いることができる。
さらに下記の微粒子をマトリックスに混合することでマトリックスの屈折率を調整しても良い。
このときに好ましく用いられる微粒子としては酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等が挙げられ、マトリックスとの相溶性によっては上記のような表面処理剤を用いて表面処理を行っても良い。
(微粒子)
マトリックスは先述のように屈折率の調整や機械的強度を向上するために微粒子を含有することが好ましい。
本発明において好ましく用いられる微粒子としては、平均一次粒子径が1nm以上、100nm以下であり、さらに1nm以上、50nm以下が好ましく、さらに1nm以上、30nm以下が好ましい。平均一次粒子径が1nm未満の場合、コア粒子の分散が困難になり所望の性能が得られない恐れがあることから、平均一次粒子径は1nm以上であることが好ましく、また平均一次粒子径が100nmを超えると、得られる樹脂組成物が濁るなどして透明性が低下し、光線透過率が70%未満となる恐れがあることから、平均一次粒子径は100nm以下であることが好ましい。
ここでいう平均一次粒子径は各一次粒子を同体積の球に換算した時の直径(球換算粒径)の体積平均値をいう。
尚、粒子の体積平均分散粒径は、SEM(走査型電子顕微鏡)、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いて確認できるほか、BET法により比表面積を測定することで推算することも可能である。
微粒子の形状は、特に限定されるものではないが、好適には球状の微粒子が用いられる。また、粒径の分布に関しても特に制限されるものではないが、本発明の効果をより効率よく発現させるためには、広範な分布を有するものよりも、比較的狭い分布を持つものが好適に用いられる。尚、無機粒子の形状、分布とも、SEM、TEMを用いて確認することができる。
微粒子は構成する金属が、Li、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Rb、Sr、Y、Nb、Zr、Mo、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Ta、Hf、W、Ir、Tl、Pb、Bi及び希土類金属からなる群より選ばれる1種または2種以上の金属である無機酸化物微粒子を用いることができ、具体的には、例えば、酸化珪素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化鉛、これら酸化物より構成される複酸化物であるニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウム、タンタル酸リチウム、アルミニウム・マグネシウム酸化物(MgAl)等が挙げられる。また、本発明において用いられる酸化物微粒子として希土類酸化物を用いることもでき、具体的には酸化スカンジウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化プラセオジム、酸化ネオジム、酸化サマリウム、酸化ユウロピウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビウム、酸化ジスプロシウム、酸化ホルミウム、酸化エルビウム、酸化ツリウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウム等も挙げられる。
本発明では、該微粒子を分散させたマトリックスの下記式で表される屈折率をn、前記扁平なドメインの屈折率をn、該微粒子の屈折率をnとすると、
微粒子の屈折率n>1.8でかつ|n−n|≧0.05の関係を満たすことが、本発明の効果をより向上する上で好ましい。|n−n|の好ましい範囲と同様に、|n−n|はより好ましくは0.5≧|n−n|≧0.05、更に好ましくは0.3≧|n−n|≧0.05、特に好ましくは0.2≧|n−n|≧0.05である。
(式) n=n・A+n・(1−A)
(式中、マトリックスの屈折率をn、マトリックスの体積分率をA、微粒子の屈折率をn、微粒子の体積分率を1−Aとする。)
これらは、マトリックス、及び微粒子の種類、扁平なドメインの種類を適宜選択することで調整することが可能である。
微粒子の屈折率については、光工学ハンドブック(朝倉書店)等に記載されているベッケ線を用いる方法等により測定することができる。また、微粒子と同じ組成のバルク体のd線波長における屈折率の文献値を参考にしてもよい。これらの方法は扁平粒子の屈折率の測定にも用いることができる。
マトリックスに用いられる微粒子は、より分散性を向上し、クラックの発生を防止する為に表面処理されていることが好ましい。
微粒子は、樹脂との濡れ性を上げるために表面処理を行い、表面を疎水化することが望ましい。
微粒子の表面処理の方法としては、カップリング剤等の表面修飾剤による表面処理、ポリマーグラフト、メカノケミカルによる表面処理などが挙げられる。
また、微粒子の表面処理に用いられる表面修飾剤としては、シラン系カップリング剤を始め、シリコーンオイル、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系カップリング剤等が挙げられる。
特にシラン系カップリング剤が好ましく、シラン系カップリング剤としては、耐熱性や、高い疎水性を示すシランカップリン剤を用いるのが好ましい。シランカップリング剤としては、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルシリルクロライド、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、東レ・ダウシリコーン製のSZ6187などを好適に用いることができる。
上記シランカップリング剤のなかでも、液中での微粒子の凝集が小さいことから、一官能のシランカップリング剤を用いるのが好ましい。さらに、微粒子が小粒径化するにしたがって、質量に対する表面積が増加し、分子量の大きな表面処理剤を用いて表面処理を行うと多量の表面処理剤が必要となる。表面処理を多量に含有した微粒子を用いて作製した光学用樹脂材料の物性は劣化する。したがって、分子量が小さく、高い疎水性を示すシランカップリング剤を用いるのが望ましく、表面処理剤としてヘキサメチルジシラザン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルシリルクロライドを用いるのがより好ましい。
またシリコーンオイル系処理剤を用いることも好ましく、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等のストレートシリコーンオイルや、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、異種官能基変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、親水性特殊変性シリコーンオイル、高級アルコキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸含有変性シリコーンオイル及びフッ素変性シリコーン等の変性シリコーンオイルを用いることが可能である。
またこれらの処理剤はヘキサン、トルエン、メタノール、エタノール、アセトン、水等で適宜希釈して用いられても良い。
これら微粒子に対する疎水化処理剤の添加量は、全粒子に対し、50〜400質量%であるのが望ましい。
表面処理の方法としては、湿式加熱法、湿式濾過法、乾式攪拌法、インテグラルブレンド法、造粒法等が挙げられる。100nm以下の表面処理を行う場合、乾式攪拌法が粒子凝集抑制の観点から好適に用いられるが、これに限定されるものではない。
マトリックスとして熱可塑性樹脂を用いる場合、熱可塑性樹脂と微粒子を一括で添加し混練してもよいし、段階的に分割添加して混練してもよい。この場合、押出機などの溶融混練装置では、段階的に添加する成分をシリンダーの途中から添加することも可能である。また、予め混連後、熱可塑性樹脂以外の成分で予め添加しなかった成分を添加して更に溶融混練する際も、これらを一括で添加して、混練してもよいし、段階的に分割添加して混練してもよい。分割して添加する方法も、一成分を数回に分けて添加する方法も採用でき、一成分は一括で添加し、異なる成分を段階的に添加する方法も採用でき、そのいずれを合わせた方法でも良い。
本発明において、微粒子は粉体ないし凝集状態のまま添加することが可能である。或いは、液中に分散した状態で添加することも可能である。液中に分散した状態で添加する場合は、混練後に脱揮を行うことが好ましい。
液中に分散した状態で添加する場合、予め凝集粒子を一次粒子に分散して添加することが好ましい。分散には各種分散機が使用可能であるが、特にビーズミルが好ましい。ビーズは各種の素材があるがその大きさは小さいものが好ましく、特に0.1mm以下で0.001mm以上のものが好ましい。
また、マトリックスとして硬化性樹脂を用いる場合は、微粒子と硬化性樹脂は混練法で混合することが望ましい。特に溶融混練法であることが好ましい。
混練において、有機溶剤の使用も可能である。有機溶剤の使用で、溶融混練の温度を下げることができ、樹脂の劣化が抑制しやすくなる。その場合、溶融混練後に脱揮を行い、複合材料中から有機溶剤を除去することが好ましい。
溶融混練に用いることのできる装置としては、ラボプラストミル、ブラベンダー、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等のような密閉式混練装置またはバッチ式混練装置を挙げることができる。また、単軸押出機、二軸押出機等のように連続式の溶融混練装置を用いて製造することもできる。
微粒子の樹脂に対する添加量は所望の効果によって適宜変更が可能であるが、用いる樹脂100質量部当たり体積分率で5%〜50%の範囲であることが好ましい。
(本発明に係わる光学シートの製造方法)
本発明の光学シートの製造方法に特に制約はないが、目安として30μm程度以上の厚みを有するシートを形成する上では、溶液流延法や溶融押出法などで製膜する方法、あるいはその製膜後、適宜延伸して薄膜化する方法などが好ましく用いられる。また、30μm程度未満の厚みを有するシートを形成する場合には、蒸着法、キャスト法、グラビアコート、コンマコート、バーコート、ダイコート、リップコート、ロールコート、フローコート、プリントコート、ディップコート、スピンコート等の塗布法、印刷、インクジェット方式などによる製法が好ましく用いられる。特に扁平粒子の配向性を制御するには上記スピンコート法が好ましい。
(本発明に係わる光学シートの配置位置)
本発明に係わる光学シートの配置位置は、EL素子における、外界に向けて光が取り出される面より発光層側で、光透過性電極の光出射面側の面より視認側のいずれかの位置であることが好ましい。
ここで、外界に向けて光が取り出される面とは、EL素子の最も視認側に位置する面を指す。EL素子の構成として、発光層からの光が光透過性電極を透過した後、透明基板を通り、視認側に達する構成の場合、該透明基板の光透過性電極がある面とは反対側の面に本発明の光学シートが設けられる。該光学シートの該透明基板とは反対側の面は外界空気層となっている構成は、本発明の範囲外であって、本発明の光学シートは、その両面が一般的に屈折率1よりも大きい部材で挟まれていることが重要である。本発明の光学シートは該光透過性電極の視認側の面と該透明基板の該光透過性電極側の面との間に設けられていても構わない。最も好ましい配置位置は、後述する図4、図5に示すようなカラーフィルター基板の透明平坦化層の表面に設けられることである。
本発明のEL素子を画像表示装置として用いる場合は、画像滲みに対する配慮が必要である。画像滲みを極力抑えるためには、外界に向けて光が取り出される面ではない位置、即ち、視認側最表面ではない位置に光学シートを配置することが好ましく、光透過性電極に比較的近い位置に設けることがより好ましい。この際の光透過性電極の視認側面から本発明の光学シートの視認側面までの距離の目安としては、0.2μm以上200μm以下が好ましく、0.5μm以上100μm以下がより好ましく、1μm以上50μm以下が最も好ましい。
<接着部位>
光学シートをEL素子に装着するには、接着部位(接着層)を設け貼合することが好ましく、該接着部位の屈折率をnとするとき、該光学シートを構成する前記マトリックスの屈折率が|n−n|≦0.05の関係を満たすことが必要である。|n−n|はより好ましくは、|n−n|≦0.03である。
接着部位を構成する接着剤、粘着剤としては、接着層に用いられる接着剤としては、熱硬化型アクリル系接着剤、UV硬化型アクリル系接着剤などの透明性の高い硬化型粘着剤やアクリル系粘着剤のように透明性の高い粘着剤が好適に用いられる。本発明では硬化性樹脂を接着剤として用いるのが好ましく、具体的にはイオウ含有(メタ)アクリレート樹脂(特開2002−9721号公報)や三菱ガス化学社製ルミプラス等が挙げられる。
また、硬化性のエポキシ樹脂やアクリレート樹脂に光学シートと同様に微粒子を混合して屈折率を調整して用いても良い。
上記接着層の形成方法としては特に限定されず、一般的方法、例えば、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、コンマコーター、バーコーター、スプレー塗布、インクジェット法等の方法が挙げられる。
<本発明に係わる光学シートの散乱特性>
本発明の光学シートは、該シート内に入射する光のうち、該シート面の法線方向から入射する光に対する平行透過率をToとし、該シート両面を2枚の直角三角プリズム斜面で挟んだ状態で、該シートに対し40°傾いた方向から入射する光に対する平行透過率をTβとしたとき、Tβ/Toの値は0.65以上であることが好ましい。
ここで本発明に係わる光学シートの平行透過率To、Tβの値は、以下のような手法により測定する値である。即ち、予めEL素子より光学シート部を剥離して取り出しておき、これを図1に模式的に表す光学系、例えば日本電色工業社製ヘイズメータNDH2000のような市販のヘイズメータにセットし、該光学シート面の法線方向より光を当て、直進出射されてくる透過光の割合、即ち平行透過率Toを測定する。次に、図1に示すように光学シートを入射光に対して40°傾斜した状態で測定したときに得られる平行透過率の値をTβとする。Tβ/Toの値は0.65以上0.99以下が好ましく、0.7以上0.99以下がより好ましい。
Tβ/Toの値は、光学シートを構成している扁平なドメインの厚みや径、シート内に含有される全散乱体数の中の扁平なドメイン数の割合、扁平なドメインとマトリックスとの屈折率差、散乱体密度、該光学シートの厚みなどを適宜単独または組み合わせで変化させることにより制御できる。
《本発明のEL素子の構成》
次に、本発明のEL素子の構成について説明する。本発明の技術は、有機/無機いずれのEL素子であっても適用可能であるが、ここでは、有機EL素子を代表として主に説明する。図2は、本発明のEL素子の一例を模式的に示した断面図である。この図に示すEL素子21は、基板22上に、陽極23、有機層24、および陰極25をこの順に積層した構成になっている。このうち有機層24は、陽極23側から順に、例えば正孔注入層24a、正孔輸送層24b、発光層24c、及び電子輸送層24dを積層した構成となっている。以下においては、このような積層構成のEL素子21が、基板22と反対側から光を取り出す所謂トップエミッション型の素子として構成されていることとし、この場合の各層の詳細を基板22側から順に説明する。
<基板>
基板22は、その片側の面側にEL素子21が配列形成される支持体であって、公知のものであって良く、例えば、石英、ガラス、金属箔、もしくは樹脂製のフィルムやシートなどが用いられるこの中でも石英やガラスが好ましく、樹脂製の場合には、その材質としてポリメチルメタクリレート(PMMA)に代表されるメタクリル樹脂類、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)などのポリエステル類、もしくはポリカーボネート樹脂などが挙げられるが、透水性や透ガス性を抑える積層構造、表面処理を行うことが必要である。
<陽極>
陽極23には、効率良く正孔を注入するために電極材料の真空準位からの仕事関数が大きいもの、例えばアルミニウム(Al)、クロム(Cr)、モリブテン(Mo)、タングステン(W)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)の金属及びその合金さらにはこれらの金属や合金の酸化物等、または、酸化スズ(SnO)とアンチモン(Sb)との合金、ITO(インジウムチンオキシド)、InZnO(インジウ亜鉛オキシド)、酸化亜鉛(ZnO)とアルミニウム(Al)との合金、さらにはこれらの金属や合金の酸化物等が、単独または混在させた状態で用いられる。
また、陽極23は、光反射性に優れた第1層と、この上部に設けられた光透過性を有すると共に仕事関数の大きい第2層との積層構造であっても良い。
第1層は、アルミニウムを主成分とする合金からなる。その副成分は、主成分であるアルミニウムよりも相対的に仕事関数が小さい元素を少なくとも一つ含むものでも良い。このような副成分としては、ランタノイド系列元素が好ましい。ランタノイド系列元素の仕事関数は、大きくないが、これらの元素を含むことで陽極の安定性が向上し、かつ陽極のホール注入性も満足する。また副成分として、ランタノイド系列元素の他に、シリコン(Si)、銅(Cu)などの元素を含んでも良い。
第1層を構成するアルミニウム合金層における副成分の含有量は、例えば、アルミニウムを安定化させるNdやNi、Ti等であれば、合計で約10質量%以下であることが好ましい。これにより、アルミニウム合金層においての反射率を維持しつつ、有機電界発光素子の製造プロセスにおいてアルミニウム合金層を安定的に保ち、さらに加工精度および化学的安定性も得ることができる。また、陽極23の導電性および基板22との密着性も改善することが出来る。
また第2層は、アルミニウム合金の酸化物、モリブデンの酸化物、ジルコニウムの酸化物、クロムの酸化物、およびタンタルの酸化物の少なくとも一つからなる層を例示できる。ここで、例えば、第2層が副成分としてランタノイド系元素を含むアルミニウム合金の酸化物層(自然酸化膜を含む)である場合、ランタノイド系元素の酸化物の透過率が高いため、これを含む第2層の透過率が良好となる。このため、第1層の表面において、高反射率を維持することが可能である。さらに、第2層は、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などの透明導電層であっても良い。これらの導電層は、陽極23の電子注入特性を改善することができる。
また陽極23は、基板22と接する側に、陽極23と基板22との間の密着性を向上させるための導電層を設けて良い。このような導電層としては、ITOやIZOなどの透明導電層が挙げられる。
そして、このEL素子21を用いて構成される表示装置の駆動方式がアクティブマトリックス方式である場合には、陽極23は画素毎にパターニングされ、基板22に設けられた駆動用の薄膜トランジスタに接続された状態で設けられている。またこの場合、陽極23の上には、ここでの図示を省略したが絶縁膜が設けられ、この絶縁膜の開口部から各画素の陽極23の表面が露出されるように構成されていることとする。
<正孔注入層/正孔輸送層>
正孔注入層24aおよび正孔輸送層24bは、それぞれ発光層24cへの正孔注入効率を高めるためのものである。このような正孔注入層24aもしくは正孔輸送層24bの材料としては、例えば、ベンジン、スチリルアミン、トリフェニルアミン、ポルフィリン、トリフェニレン、アザトリフェニレン、テトラシアノキノジメタン、トリアゾール、イミダゾール、オキサジアゾール、ポリアリールアルカン、フェニレンジアミン、アリールアミン、オキザゾール、アントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベンあるいはこれらの誘導体、または、ポリシラン系化合物、ビニルカルバゾール系化合物、チオフェン系化合物あるいはアニリン系化合物等の複素環式共役系のモノマー、オリゴマーあるいはポリマーを用いることができる。
また、上記正孔注入層24aもしくは正孔輸送層24bのさらに具体的な材料としては、α−ナフチルフェニルフェニレンジアミン、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリン、金属ナフタロシアニン、ヘキサシアノアザトリフェニレン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(F4−TCNQ)、テトラシアノ4、4、4−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン、N、N、N’、N’−テトラキス(p−トリル)p−フェニレンジアミン、N、N、N’、N’−テトラフェニル−4、4’−ジアミノビフェニル、N−フェニルカルバゾール、4−ジ−p−トリルアミノスチルベン、ポリ(パラフェニレンビニレン)、ポリ(チオフェンビニレン)、ポリ(2、2’−チエニルピロール)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
<発光層>
発光層24cは、陽極23側から注入された正孔と、陰極25側から注入された電子とが再結合して発光光を発生する領域である。このような発光層24cは、炭素及び水素のみから構成される有機材料で形成された有機薄膜であっても良く、正孔輸送性を示す三級アミンを分子構造中に有する材料を用いて構成された層であっても良い。加えて、発光層24cは、ドーパントとして、ベリレン誘導体、クマリン誘導体、ピラン系色素、トリフェニルアミン誘導体等の有機物質を微量含む混合有機薄膜であっても良い。この場合には発光層24cを構成するホスト材料(主材料)と、ドーパントとなる材料との共蒸着によって、発光層24cが形成される。また特に、正孔輸送性を示す三級アミンを分子構造中に有する材料のうち、分子間相互作用が小さく濃度消光しにくい特徴を有するものであれば、高濃度のドーピングが可能になり、最適なドーパントの1つとして機能する。
以上のような発光層24cを構成する材料は、希望する色に応じて選択することが可能である。例えば、青色系統の発光光を得たい場合には、オキサジアゾール誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体などが用いられる。緑色系統の発光光を得たい場合には、青色系統の発光層にクマリン6などのクマリン誘導体、キナクリドン誘導体などの既知の緑色色素をドーピングした層が用いられる。赤色系統の発光光を得たい場合には、青色系統または緑色系統の発光層にニールレッド、DCM1{4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン}、DCJT{4−(ジシアノメチレン)−2−t−ブチル−6−(ジュロリジルスチリル)−ピラン}などのピラン誘導体,スクアリリウム誘導体,ポルフィリン誘導体,クロリン誘導体,ユーロジリン誘導体などの既知の赤色色素をドーピングした層が用いられる。
尚、この発光層24cは、赤色発光層、緑色発光層、青色発光層を積層させた白色発光層であっても良く、また接続層を介して発光層を複数積層させたタンデム構造であっても良い。さらに、発光層24cは、電子輸送層を兼ねた電子輸送性発光層であることも可能であり、正孔輸送性の発光層であっても良い。
<電子輸送層>
電子輸送層24dは、陰極25から注入される電子を発光層24cに輸送するためのものである。電子輸送層24dの材料としては、例えば、キノリン、ペリレン、フェナントロリン、ビススチリル、ピラジン、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、フルオレノン、またはこれらの誘導体や金属錯体が挙げられる。具体的には、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(略称Alq)、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、アントラセン、ペリレン、ブタジエン、クマリン、アクリジン、スチルベン、1,10−フェナントロリンまたはこれらの誘導体や金属錯体が挙げられる。
尚、有機層24は、このような層構造に限定されることはなく、少なくとも発光層24cと、これに接して電子輸送層24dが設けられていれば良く、その他必要に応じた積層構造を選択することができる。
また、発光層24cは、正孔輸送性の発光層、電子輸送性の発光層、あるいは両電荷輸送性の発光層としてEL素子21に設けられていても良い。さらに、以上の有機層24を構成する各層、例えば正孔注入層24a、正孔輸送層24b、発光層24c、電子輸送層24dは、それぞれが複数層からなる積層構造であっても良い。
<陰極>
次に、このような構成の有機層24上に設けられる陰極25は、例えば、有機層24側から順に第1層25a、第2層25bを積層させた2層構造で構成されている。
第1層25aは、仕事関数が小さく、かつ光透過性の良好な材料を用いて構成される。このような材料としては、例えばリチウム(Li)の酸化物である酸化リチウム(LiO)や、セシウム(Cs)の複合酸化物である炭酸セシウム(CsCO)、さらにはこれらの酸化物及び複合酸化物の混合物を用いることができる。また、第1層25aは、このような材料に限定されることはなく、例えば、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)等のアルカリ土類金属、リチウム、セシウム等のアルカリ金属、さらにはインジウム(In)、マグネシウム(Mg)等の仕事関数の小さい金属、さらにはこれらの金属の酸化物及び複合酸化物、フッ化物等を、単体でまたはこれらの金属および酸化物及び複合酸化物、フッ化の混合物や合金として安定性を高めて使用しても良い。
第2層25bは、例えば、MgAgなどの光透過性を有する層を用いた薄膜により構成されている。この第2層25bは、さらに、アルミキノリン錯体、スチリルアミン誘導体、フタロシアニン誘導体等の有機発光材料を含有した混合層であっても良い。この場合には、さらに第3層としてMgAgのような光透過性を有する層を別途有していてもよい。
以上のような陰極25は、このEL素子21を用いて構成される表示装置の駆動方式がアクティブマトリックス方式である場合、陰極25は、有機層24とここでの図示を省略した上述の絶縁膜とによって、陽極23と絶縁された状態で基板22上にベタ膜状に形成され、各画素の共通電極として用いられる。
尚、陰極25は上記のような積層構造に限定されることはなく、作製されるデバイスの構造に応じて最適な組み合わせ、積層構造を取れば良いことは言うまでもない。例えば、上記実施形態の陰極25の構成は、電極各層の機能分離、すなわち有機層24への電子注入を促進させる無機層(第1層25a)と、電極を司る無機層(第2層25b)とを分離した積層構造である。しかしながら、有機層24への電子注入を促進させる無機層が、電極を司る無機層を兼ねても良く、これらの層を単層構造として構成しても良い。また、この単層構造上にITOなどの透明電極を形成した積層構造としても良い。
そして上記した構成のEL素子21に印加する電流は、通常、直流であるが、パルス電流や交流を用いてもよい。電流値、電圧値は、素子が破壊されない範囲内であれば特に制限はないが、有機電界発光素子の消費電力や寿命を考慮すると、なるべく小さい電気エネルギーで効率良く発光させることが望ましい。
さらに、ここでの図示は省略したが、このような構成のEL素子21は、大気中の水分や酸素等による有機材料の劣化を防止するため保護層(封止膜、またはガスバリア層ともいう)で覆われた状態で用いることが好ましい。保護膜には、窒化珪素(代表的には、Si)、酸化珪素(代表的には、SiO)膜、窒化酸化珪素(SiNxOy:組成比X>Y)膜、酸化窒化珪素(SiOxNy:組成比X>Y)膜、またはDLC(Diamond like Carbon)のような炭素を主成分とする薄膜、CN(Carbon Nanotube)膜等が用いられる。これらの膜は、単層または積層させた構成とすることが好ましい。なかでも、窒化物からなる保護層は膜質が緻密であり、EL素子21に悪影響を及ぼす水分、酸素、その他不純物に対して極めて高いブロッキング効果を有するため好ましく用いられる。
尚、以上の実施形態においては、EL素子が上面発光型である場合を例示して本発明を詳細に説明した。しかしながら、本発明のEL素子は、上面発光型への適用に限定されるものではなく、陽極と陰極との間に少なくとも発光層を有する有機層を挟持してなる構成に広く適用可能である。したがって、基板側から順に、陰極、有機層、陽極を順次積層した構成のものや、基板側に位置する電極(陰極または陽極としての下部電極)を透明材料で構成し、基板と反対側に位置する電極(陰極または陽極としての上部電極)を反射材料で構成することによって、下部電極側からのみ光を取り出すようにした、下面発光型のEL素子にも適用可能である。
さらに、本発明のEL素子とは、一対の電極(陽極と陰極)、およびその電極間に有機層が挟持されることによって形成される素子であれば良い。このため、一対の電極および有機層のみで構成されたものに限定されることはなく、本発明の効果を損なわない範囲で他の構成要素(例えば、無機化合物層や無機成分)が共存することを排除するものではない。
一方、高分子有機物から形成された高分子有機層の場合には、発光層24cを中心に、陽極23の方向に正孔輸送層だけ備わりうる。前記正孔輸送層24bは、ポリエチレンジヒドロキシチオフェン(PEDOT)や、ポリアニリン(PANI)などを使用し、インクジェットプリンティング法やスピンコーティング法により陽極23の上部に形成され、前記高分子有機発光層は、ポリフェニルビニレン(PPV)、可溶性PPV、シアノ基付きPPV、ポリフルオレンなどを使用でき、インクジェットプリンティング法や、スピンコーティング法、またはレーザを利用した熱転写法などの一般的な方法でカラーパターンを形成できる。
無機電界発光素子の場合、発光層24cは、ZnS、SrS、CaS、CaCa、SrCa、BaAlのようなアルカリ土類カルシウム硫化物、及びMn、Ce、Tb、Eu、Tm、Er、Pr、Pbなどを含む遷移金属、またはアルカリ稀土類金属のような発光中心原子から形成され、この発光層24cを中心に、陽極23との間及び陰極25との間に絶縁層が形成される。
≪表示装置の概略構成≫
図3は実施形態の表示装置10の一例を示す図であり、図3(A)は概略構成図、図3(B)は画素回路の構成図である。ここでは、発光素子として図2で示したEL素子21を用いたアクティブマトリックス方式の表示装置に本発明を適用した実施形態を説明する。
図3(A)に示すように、この表示装置10の基板2上には、表示領域2aとその周辺領域2bとが設定されている。表示領域2aは、複数の走査線11と複数の信号線13とが縦横に配線されており、それぞれの交差部に対応して1つの画素aが設けられた画素アレイ部として構成されている。これらの各画素aに、EL素子21が設けられている。また周辺領域2bには、走査線11を走査駆動する走査線駆動回路bと、輝度情報に応じた映像信号(すなわち入力信号)を信号線13に供給する信号線駆動回路cとが配置されている。
図3(B)に示すように、各画素aに設けられる画素回路は、例えば各EL素子21と、駆動トランジスタTr1、書き込みトランジスタ(サンプリングトランジスタ)Tr2、および保持容量Csで構成されている。そして、走査線駆動回路bによる駆動によって、書き込みトランジスタTr2を介して信号線13から書き込まれた映像信号が保持容量Csに保持され、保持された信号量に応じた電流が駆動トランジスタTr1から各EL素子21に供給され、この電流値に応じた輝度でEL素子21が発光する。
尚、以上のような画素回路の構成は、あくまでも一例であり、必要に応じて画素回路内に容量素子を設けたり、さらに複数のトランジスタを設けて画素回路を構成しても良い。また、周辺領域2bには、画素回路の変更に応じて必要な駆動回路が追加される。
以上説明した表示装置10は、封止された構成のモジュール形状のものをも含む。例えば、画素アレイ部である表示領域2aを囲むようにシーリング部3が設けられ、このシーリング部3を接着剤として、透明なガラス等の対向部(封止基板)に貼り付けられ形成された表示モジュールが該当する。この透明な封止基板には、カラーフィルター、保護膜、遮光膜等が設けられてもよい。尚、表示領域2aが形成された表示モジュールとしての基板21には、外部から表示領域2a(画素アレイ部)への信号等を入出力するためのフレキシブルプリント基板が設けられていても良い。
以上説明した実施形態の構成によれば、素子特性の向上が図られたEL素子21を用いたことにより、表示装置10における画質の向上を図ることが可能になる。特に、このEL素子21は、アクティブマトリックス型の表示装置10に有利である上面発光型とした場合であっても、素子特性の向上が図られることから、この有機電界発光素子1を用いてアクティブマトリックス型の表示装置10を構成することにより、画素開口が広い表示装置10においての画質の向上を図ることが可能になる。
《照明装置》
本発明の面発光体を適用した照明装置について説明する。
本発明に関わるEL素子は、照明用や露光光源のような一種のランプとして使用してもよいし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用してもよい。動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は、単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。
本発明に用いられる白色のEL素子においては、必要に応じ製膜時にメタルマスクやインクジェットプリンティング法等でパターニングを施してもよい。パターニングする場合は、電極のみをパターニングしてもよいし、電極と発光層をパターニングしてもよいし、素子全層をパターニングしてもよい。発光層に用いる発光ドーパントとしては特に制限はなく、例えば、液晶表示素子におけるバックライトであれば、CF(カラーフィルター)特性に対応した波長範囲に適合するように、白金錯体や公知の発光ドーパントの中から任意のものを選択し組み合わせて、白色化すればよい。
このように、白色のEL素子は、CF(カラーフィルター)と組み合わせて、また、CF(カラーフィルター)パターンに合わせ素子及び駆動トランジスタ回路を配置することで、有機EL素子から取り出される白色光をバックライトとして、青色フィルター、緑色フィルター、赤色フィルターを介して青色光、緑色光、赤色光を得ることで、低駆動電圧で長寿命のフルカラーの有機エレクトロルミネッセンスディスプレイができ、好ましい。
<本発明に関わるEL素子を適用した産業分野>
本発明に関わるEL素子は、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。
以上説明した本発明に係る表示装置は、電子機器、例えば、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置、ビデオカメラなど、電子機器に入力された映像信号、若しくは、電子機器内で生成した映像信号を、画像若しくは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。
また、発光光源としては、例えば、家庭用照明、車内照明、時計や液晶用のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるがこれに限定するものではないが、特にカラーフィルターや光拡散板などと組み合わせた各種表示装置のバックライト、照明用光源としての用途に有効に用いることができる。
《トップエミッション型EL表示装置の実施形態》
次に、本発明に好ましく用いられるトップエミッション型EL表示装置の具体的実施形態の一例を述べる。
図4は、本実施形態のEL表示装置の断面構造を示す模式断面図である。
図4においては、RGBの各画素領域のみを示しているが、実際には図3のように複数の画素領域が有機EL装置における実発光領域の全面に形成されているものとする。
本実施形態のEL表示装置201は、カラーフィルター基板207に対してEL素子の白色光を照射させるようになっている。従って、着色層208R,208G,208Bによって、カラー表示を行うようになっている。
次に、画素電極223及び陰極250によって挟持される低分子系発光機能層の構成について説明する。
図4に示すように、発光層300は、画素電極223から陰極250に向けて、正孔注入層301、正孔輸送層302、有機発光層303、電子注入層304が順次積層された構成となっている。
ここで、正孔注入層301は、トリアリールアミン(ATP)を含むものであり、正孔輸送層302は、TPD(トリフェニルジアミン)系からなるものである。
また、有機発光層303は、スチリルアミン系発光層(ホスト)とアントラセン系ドーパントとを含んで構成される青色の有機発光層や、スチリルアミン系発光層(ホスト)とルブレン系ドーパントを含んで構成される黄色の有機発光層等を含んで形成されている。
また、電子注入層304は、アルミニウムキノリノール(Alq)層である。
また、陰極250は、MgAg等の合金とITOとが積層されてなるものである。
上記の各有機層301〜304の材料及びLiFは、加熱ボート(るつぼ)を用いた真空蒸着法で順次形成される。また、陰極250の形成については、金属系材料については真空蒸着法を採用し、ITO等の酸化物材料についてはECRスパッタ法やイオンプレーティング法、対向ターゲットスパッタ法等の高密度プラズマ成膜法を採用する。
このようなEL表示装置201においては、画素電極223を色毎にパターニングすれば、発光層300及び陰極を形成し分ける必要がなく、高精度が要求されるマスク蒸着を行う必要がない。
次に、陰極250の上方に形成される層膜について説明する。
陰極250の上方には、電極保護層255が形成されている。当該電極保護層255は、ECRスパッタ法やイオンプレーティング法などの高密度プラズマ成膜法によって形成される。材質は透明性や密着性、耐水性を考慮して珪素酸窒化物などの珪素化合物が好ましい。また、形成前には酸素プラズマ処理によって密着性を向上させると電極との密着性が向上し、発光ムラが低減する。硬化前の有機緩衝層の浸透を防ぐことも目的としており、膜厚は100nm以上が好ましい。
また、電極保護層255の上方には、有機緩衝層210が形成されている。当該有機緩衝層210の硬化前の原料主成分としては、減圧真空下で塗布形成するために、流動性に優れかつ溶媒のような揮発成分を持たない有機化合物材料である必要があり、好ましくはエポキシ基を有する分子量3000以下のエポキシモノマー/オリゴマーである(モノマーの定義:分子量1000以下、オリゴマーの定義:分子量1000〜3000)。例えば、ビスフェノールA型エポキシオリゴマーやビスフェノールF型エポキシオリゴマー、フェノールノボラック型エポキシオリゴマー、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3′,4′−エポキシシクロヘキサンカルボキレートなどがあり、これらが単独もしくは複数組み合わされて用いられる。
また、エポキシモノマー/オリゴマーと反応する硬化剤としては、電気絶縁性に優れかつ強靭で耐熱性に優れる硬化被膜を形成するものが良く、透明性に優れかつ硬化のばらつきの少ない付加重合型がよい。例えば、3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、メチル−3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などの酸無水物系硬化剤が好ましい。これらの硬化は60〜100℃の範囲の加熱でおこなわれ、その硬化被膜は珪素酸窒化物との密着性に優れるエステル結合を持つ高分子となる。
また、酸無水の開環を促進する硬化促進剤として芳香族アミンやアルコール類、アミノフェノールなどの比較的分子量の高いものを添加することで低温かつ短時間での硬化が可能となる。
これらの原料ごとの粘度は1000〜10000mPa・s(室温)が好ましい。理由は、塗布直後に有機発光層へ浸透してダークスポットと呼ばれる非発光領域を発生させず、かつ膜厚を3〜10μm以下にするためである。この膜厚に抑えることで、カラーフィルター基板207を有機発光層303により近づけることができるため、隣接する着色層に光を漏らさずに、発光領域を広くとることができる。また、これらの原料を配合した緩衝層材料の粘度も、1000mPa・s以上(室温)でなければならない。これらの材料は、60〜100℃の範囲で加熱することで硬化させる。この時点の問題として、加熱直後に反応が開始されるまで一時的に粘度が低下する。この時に、有機緩衝層210を構成する材料が電極保護層255や陰極250を透過してAlqに達することで、ダークスポットを発生する。そこで、ある程度まで硬化が進むまでは低温で放置し、ある程度高粘度化したところで温度を上げて完全硬化させる方がより好ましい。また、カチオン放出タイプの光重合開始剤を添加して加熱をする前に10mW/cm以下の低照度で部分的に硬化して粘度の低下を防いでも良い。しかし、光重合開始剤は着色するものが多いため、ボトムエミッション用途に限られる。
また、ダークスポットを発生させないため、緩衝層材料の主成分(例えば70質量%以上)は1000mPa・s以上であることが好ましい。理由として、低粘度成分が多く混入されていると硬化する際の加熱により硬化前に有機発光層に浸透してダークスポットを発生させるためである。
また、本実施形態においては、陰極250やガスバリア層230との密着性を向上させるシランカップリング剤が有機緩衝層210に含有されている。
特に、低分子系の有機発光層303の場合には、有機緩衝層210の材料中にシランカップリング剤を混合、もしくは、シランカップリング剤による層を追加し、さらに陰極保護層を追加している。更に、シランカップリング剤単独による層は膜強度が脆い問題があるため、有機緩衝層210によって膜強度を補い、電極保護層255のピンホールへの浸透をシランカップリング剤が防ぐように、有機緩衝層210の材料にシランカップリング剤を混合したほうが好ましい。
シランカップリング剤は、SiO、SiON、SiNとの共有結合が生じるので、陰極保護層やガスバリア層、ガラス基板などとの密着性が向上する(アルミなどの金属とも反応する。)。シランカップリング剤としてはエポキシシランが好ましい。エポキシシランは、緩衝層原料の硬化剤成分(酸無水物系硬化剤)とも反応するので好ましい。
また、主剤/硬化剤/硬化促進剤の組成は40〜45/40〜45/10〜20であることが好ましい(低分子・高分子発光素子に共通)。このようにすると、未硬化成分が10〜20%(緩衝層原料内の未反応エポキシ基を100%とした場合、硬化後の未反応エポキシ基残留比率:FTIRのエポキシ基吸収ピーク強度差で比較可能)となり、未硬化成分による発光機能層への浸透による劣化を防止できる(20%以下になると完全硬化と呼んでいる)。
また、硬化剤基(酸無水、アミン)が、材料の組成として残留しており、未硬化比率は10%前後(原料中のジカルボン酸無水物基を100%とした場合、硬化後の未反応酸無水物基残留比率)である。この程度を完成した膜中に残留させると、硬化時の収縮が少なく、応力を緩和する柔軟性を持つため有機EL素子へのダメージを未然に防止することができるため好ましい。
特に、粘度の低い原料が低分子発光素子の材料を溶かすため(例えばAlqを溶かす虞がある)、低分子発光素子に対しては高粘度の原料を用いることが好ましい。一方、高分子発光素子の場合はこのようなことがない。各原料の分子量を上げて粘度をあげると改善することができる。低分子発光素子の場合の好ましい粘度(あるいは分子量)の範囲は、3000mPa・sから8000mPa・s(室温時)の範囲であり、スクリーン印刷時の膜厚(5μm前後)と塗布面の平坦性を両立できる。
なお、シランカップリング剤以外にも、イソシアネート化合物などの捕水剤、硬化時の収縮を防ぐ微粒子などの添加剤が有機緩衝層210に混入されていてもよい。
また、有機緩衝層210の上方には、ガスバリア層230が形成されている。当該ガスバリア層230の形成方法としては、ECRスパッタ法やイオンプレーティング法などの高密度プラズマ成膜法が採用される。材質は透明性やガスバリア性、耐水性を考慮して珪素酸窒化物などの珪素化合物が好ましい。また、形成前には酸素プラズマ処理によって密着性を向上させると信頼性が向上する。膜厚は、200nm以下では有機緩衝層の表面及び側面被覆が不足するため、300nm以上が好ましい。
本発明に係わる透明平坦化層は、該透明平坦化層よりも透明基材側に位置するカラーフィルター層等の構成により段差(表面凹凸)が生じる場合に、この段差を解消して平坦化を図り、EL発光層の厚みムラ発生を抑制する機能を有する。このような透明平坦化層は、透明(可視光透過率50%以上)樹脂により形成することができる。具体的には、アクリレート系、メタクリレート系、ポリ桂皮酸ビニル系、あるいは環化ゴム系等の反応性ビニル基を有する光硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、また、透明樹脂として、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ノルボルネン系樹脂、4−メチルペンテン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレナフタレート樹脂、ポリプロピレンテレフタレート樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、マレイン酸樹脂等の透明樹脂が挙げられる。さらには、ポリシロキサンオリゴマー等からなるゾルゲル材料もしくはポリシロキサンオリゴマー等と有機ポリマー等とからなる有機−無機ハイブリッド材料を挙げることもできる。このような透明平坦化層の厚みは、使用する材料を考慮し、平坦化作用が発現できる範囲で設定することができ、例えば、カラーフィルター層上の厚みを1〜5μm程度の範囲で適宜設定することができる。
透明平坦化層の形成は、上記樹脂材料を用いて、スピンコート、ロールコート、キャストコート等の方法で塗布し、硬化させることにより行うことができる。
より具体的には、アクリレート系光硬化性樹脂(JSR(株)製 JUPC)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで希釈して平坦化層用塗布液を調製し、この平坦化層用塗布液を、スピンコート法によりカラーフィルター層上に塗布し、プリベーク(120℃、5分間)を行った後、所定のフォトマスクを用いて露光、現像を行い、次いで、ポストベーク(230℃、60分間)を行って、カラーフィルター層とブラックマトリックスを被覆する透明平坦化層(カラーフィルター層上の厚み2μm)を形成することができる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
<EL表示装置101の作製>(比較例)
図4に示すEL表示装置を参考に、前述の《トップエミッション型EL表示装置の実施形態》の項に記載した方法、手順にて作製した。即ち、まず、第1のガラス基板上に、陽極(画素電極)、正孔注入層、正孔輸送層、白色発光層(EL層)、電子注入層、陰極(ITO)の順に積層し、その上に有機緩衝層、ガスバリア層を設けてEL素子を形成する。一方、500μmの厚みを有する第2のガラス基板の片面に、特開2008−41381号公報の実施例1に準じて、ガラス基板上にブラックマトリックス形成後、R,G,B3種のカラーフィルターを100μmピッチで形成し、その上に紫外線硬化型のアクリル系樹脂からなる透明平坦化層を設けた。
カラーフィルター付きの第2のガラス基板のカラーフィルター層側の面、正確にはカラーフィルター層上の透明平坦化層の上に、下記粒子を含有する樹脂をスピンコートし、直ぐに紫外線照射により硬化させて光学シートを設けた。
さらに特開2002−97217号公報:三菱化学社 実施例8を参考に作成したUV硬化樹脂(屈折率1.64)を接着部位(接着層)として用い、第1の基板上に形成されているEL素子のガスバリア層上に貼り付け、図5に示す構成のEL表示装置101を得た。尚、図5において示される番号は、以下の各要素である。
401 第1のガラス基板、402 陽極、403 EL発光層、404 陰極(ITO)、405 ガスバリア層、406 接着層、407 光学シート、408 透明平坦化層、409 カラーフィルター、410 第2のガラス基板。
(粒子+樹脂)
球状アルミナ(AO−800、平均粒径7.0μm、屈折率1.76)
・・・体積比率 5%
UV硬化樹脂(特開2002−97217号公報:三菱化学社 実施例8を参考に作成した(屈折率1.64)) ・・・体積比率 95%
実施例2
<EL表示装置102の作製> (本発明)
EL表示装置101の作製法において、カラーフィルター層上の透明平坦化層の上に、下記扁平粒子を含有した平板粒子+樹脂をワイヤーバーで塗布し、5分間静置した後に紫外線照射により硬化させて光学シートを設けた以外は、全て同じ方法により、EL表示装置102を作製した。
(平板粒子+樹脂)
板状アルミナ(朝日化学工業社製ルクセレンFAO、平均アスペクト比2、平均粒径6.0μm、屈折率1.76) ・・・体積比率 5%
UV硬化樹脂(特開2002−97217号公報:三菱化学社 実施例8を参考に作成した(屈折率1.64)) ・・・体積比率 95%
実施例3
<EL表示装置103の作製> (本発明)
下記扁平粒子を用いた以外はEL表示装置102と同様の方法により、EL表示装置103を作製した。
(平板粒子+樹脂)
板状アルミナ(キンセイマテックス社製 板状アルミナ セラフ05025、平均アスペクト比25、平均粒径5.0μm、屈折率1.76)・・・体積比率 5%
UV硬化樹脂(特開2002−97217号公報:三菱化学社 実施例8を参考に作成した(屈折率1.64)) ・・・体積比率 95%
実施例4
<EL表示装置104の作製> (本発明)
下記扁平粒子を用いた以外はEL表示装置102と同様の方法により、EL表示装置104を作製した。
(平板粒子+樹脂)
板状アルミナ(朝日化学工業社製ルクセレンFAO、平均アスペクト比3.5、平均粒径11.0μm、屈折率1.76) ・・・体積比率 5%
UV硬化樹脂(特開2002−97217号公報:三菱化学社 実施例8を参考に作成した(屈折率1.64)) ・・・体積比率 95%
実施例5
<EL表示装置105の作製> (本発明)
サンプルを40℃で加熱しながら紫外線照射を行った以外はEL表示装置102と同様にEL表示装置105を作製した。このときのTβ/Toの値は0.55であった。
実施例6
<EL表示装置106の作製> (比較例)
サンプルを80℃で加熱しながら紫外線照射を行った以外はEL表示装置102と同様にEL表示装置106を作製した。このときの粒子長軸配向角は45°であった。
実施例7
<EL表示装置107の作製> (比較例)
EL表示装置101の作製法において、カラーフィルター層上の透明平坦化層の上に、下記針状粒子を含有した樹脂をスピンコートし、磁場を与えてガラス基板の法線方向に針状粒子を配向させ、紫外線照射により硬化させて光学シートを設けた以外は、全て同じ方法により、EL表示装置107を作製した。このときの粒子長軸配向角は88°であった。
(針状粒子+樹脂)
酸化チタンにより被覆した針状酸化鉄粒子(酸化鉄粒子;戸田工業製AR 長軸180nm、短軸20nm、酸化チタン被覆率30%、屈折率2.44)
・・・体積比率 5%
UV硬化樹脂(特開2002−97217号公報:三菱化学社 実施例8を参考に作成した(屈折率1.64)) ・・・体積比率 95%
実施例8
<EL表示装置108の作製> (本発明)
下記扁平粒子を用いた以外はEL表示装置102同様の方法により、EL表示装置108を作製した。
(平板粒子+樹脂)
合成雲母(コープケミカル社製、平均アスペクト比30、平均粒径8.0μm、屈折率1.58) ・・・ 体積比率 5%
UV硬化樹脂(特開2002−97217号公報:三菱化学社 実施例8を参考に作成した(屈折率1.64) ・・・体積比率 95%
実施例9
<EL表示装置109の作製> (比較例)
下記扁平粒子を用い、接着層にUV硬化樹脂(新中村化学製 NKエステル DCP (トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート)に重合開始剤としてチバ・ジャパン社製IRGACURE369を0.05質量%添加、屈折率1.56)を用いた以外はEL表示装置102同様の方法により、EL表示装置109を作製した。
(平板粒子+樹脂)
合成雲母(コープケミカル社製、平均アスペクト比30、平均粒径8.0μm、屈折率1.58) ・・・体積比率 5%
UV硬化樹脂(新中村化学製 NKエステル DCP (トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート)に重合開始剤としてチバ・ジャパン社製IRGACURE369を0.05質量%添加、屈折率1.56) ・・・体積比率 95%
実施例10
<EL表示装置110の作製> (比較例)
接着層にUV硬化樹脂(特開2002−97217号公報:三菱化学社 実施例8を参考に作成した。屈折率1.64)を使用した以外はEL表示装置109と同様にEL表示装置110を作製した。
(平板粒子+樹脂)
合成雲母(コープケミカル社製、平均アスペクト比30、平均粒径8.0μm、屈折率1.58) ・・・体積比率 5%
UV硬化樹脂(新中村化学製 NKエステル 1G (エチレングリコールジメタクリレート)に重合開始剤としてチバ・ジャパン社製IRGACURE369を0.05質量%添加、屈折率1.53) ・・・体積比率 95%
実施例11
<EL表示装置111の作製> (本発明)
下記扁平粒子を3−アミノプロピルトリメトキシシランを用いて表面処理を行った以外は102と同様の方法でEL表示装置111作製した。
表面処理剤量は下記に従って適量を用いた。
表面処理剤の量(g)=(粒子の量(g)×粒子の表面積(m/g))/表面処理剤の最小比表面積(m/g)
(平板粒子+樹脂)
板状アルミナ(キンセイマテックス社製 板状アルミナ セラフ05025、平均アスペクト比25、平均粒径5.0μm、屈折率1.76)
・・・体積比率 5%
UV硬化樹脂(特開2002−97217号公報:三菱化学社 実施例8を参考に作成した(屈折率1.64) ・・・体積比率 95%
実施例12
<EL表示装置112の作製> (本発明)
下記扁平粒子を3−アミノプロピルトリメトキシシランを用いて表面処理を行った。
処理済の扁平粒子と下記方法により作製した微粒子分散マトリックスをワイヤーバーで塗布し、直ちに紫外線照射により硬化させて光学シートを設けた以外は、全て同じ方法により、EL表示装置112を作製した。
また接着層にはUV硬化樹脂(特開2002−97217号公報:三菱化学社 実施例8を参考に作成した。屈折率1.64)を使用した。
(平板粒子+樹脂)
板状アルミナ(キンセイマテックス社製 板状アルミナ セラフ05025、平均アスペクト比25、平均粒径5.0μm、屈折率1.76)
・・・体積比率 5%
(微粒子分散マトリックス、屈折率1.66) ・・体積比率 95%
(微粒子分散マトリックス作製方法)
酸化ジルコニア分散液(平均粒径3nm、屈折率2.2、住友大阪セメント社製、10%溶液)100gを純水135mlで希釈した溶液を作成した。この溶液に室温で3−アミノプロピルトリメトキシシラン3.7gをゆっくりと滴下した。さらに、この溶液を60℃で10時間攪拌した。室温まで溶液を冷却し、陰イオン交換樹脂であるアンバーライトを加え、溶液のpHが10.4になるまで攪拌した。この溶液にエタノール680ml、アンモニア水(28%溶液、関東化学社製)230ml、を加える。攪拌しながら、テトラエトキシシラン(信越化学社製)30gをエタノール200ml、水100mlの混合液に溶かし、6時間かけて滴下した。滴下終了後、15時間攪拌した。粒子を遠心分離機を用いて分離し、エタノールで洗浄後、90℃で乾燥し、エタノールを除いた後、450℃で焼成した。
得られた白色紛体17gをなすフラスコに封入し、窒素置換し、さらに塩基性基含有シランカップリング剤HMDS3(信越化学社製)を3.5g加え、30分間150℃で攪拌した。さらに脱気することで、未反応のHMDS3を除いた。該粒子をポリラボシステム(HAAKE社製)を用いて、UV硬化樹脂(新中村化学製 NKエステル 1G (エチレングリコールジメタクリレート)に重合開始剤としてチバ・ジャパン社製IRGACURE369を0.05質量%添加、屈折率1.53)と混練することによって樹脂中に紛体20体積%を含有するサンプルを得た。
(式) n=n・A+n・(1−A)
(式中、マトリックスの屈折率をn、マトリックスの体積分率をA、微粒子の屈折率をn、微粒子の体積分率を1−Aとする。)
に従って微粒子分散マトリックスの屈折率nを計算すると1.66であった。
また、混練時にはイソプロピルアルコール等の溶媒を用いることで樹脂中への分散を容易にすることができた。
実施例13
<EL表示装置113の作製> (本発明)
扁平粒子をHMDS3(信越化学社製)を用いて表面処理を行った以外はEL表示装置112と同様の方法でEL表示装置113を作製した。
実施例14
<EL表示装置114の作製> (本発明)
UV硬化樹脂(特開2002−97217号公報:三菱化学社 実施例8を参考に作成した。屈折率1.64)と下記方法により作製した紛体30体積%を含有する微粒子分散マトリックスを用い、更に接着層にも該微粒子分散マトリックスを用いた以外はEL表示装置112と同様の方法でEL表示装置114を作製した。微粒子分散マトリックスの屈折率nは前記式に従って計算した結果1.87であった。
(微粒子分散マトリックス作製方法)
石原産業(株)製の酸化チタン(タイペークST−01、平均粒径約7nm、屈折率2.4)をナスフラスコに入れた後、190℃で1時間減圧乾燥した。その後、ナスフラスコ内をアルゴンで置換し、HMDS3(信越化学社製)を前述の式に従い適量添加し、300℃で2時間十分に攪拌した。得られた表面処理が施された酸化チタン微粒子を112と同様にポリラボシステムを用いて樹脂と混練することにより微粒子分散マトリックスを得た。
実施例15
<EL表示装置115の作製> (比較例)
UV硬化樹脂(新中村化学製 NKエステル 1G (エチレングリコールジメタクリレート)に重合開始剤としてチバ・ジャパン社製IRGACURE369を0.05質量%添加、屈折率1.53)を接着層として用いた以外はEL表示装置112と同様の方法でEL表示装置115を作製した。
実施例16
<EL表示装置116の作製> (本発明)
扁平粒子に平板炭酸カルシウム(ニューライム社製、平均アスペクト比10、平均粒径5.0μm、屈折率1.53)を用いた以外はEL表示装置112と同様の方法でEL表示装置116を作製した。
実施例17
<EL表示装置117の作製> (本発明)
上記扁平粒子に平板炭酸ストロンチウム(屈折率1.52)を用いた以外はEL表示装置112と同様の方法でEL表示装置117を作製した。
《評価》
得られたEL表示装置について以下の評価を実施した。
(ドメインの長軸方向の配向角)
予めEL素子より接着部位を溶解する溶剤などを用いて剥離した光学シートを包埋用樹脂に埋め込み、これをウルトラミクロトーム(RMC社製MT−7)によりシートの断面(正確にはX軸方向の断面とY軸方向の断面の2方向がある)を厚み100nmの超薄切片状に切削し、これらを走査型電子顕微鏡、あるいは透過型電子顕微鏡にて撮影する。そして撮影画像を例えば画像解析ソフト(三谷商事(株)製、WinROOF、ver3.60)等により解析し、ドメインの長軸方向とシート面に垂直な方向との角度(配向角)を求めた。
(屈折率測定)
光学シートを構成する透明樹脂(マトリックス)、粒子(ドメイン)、接着層の屈折率の測定は、本文記載の方法を用いた。測定波長はいずれも589nmとした。
尚表1中、EL表示装置No.112〜117のマトリックスの屈折率は、上記微粒子分散マトリックスの屈折率nの値を用い、粒子との屈折率差、接着部位との屈折率差については、nを用いて各々計算した。
(光学シートの散乱特性)
図1に模式的に示す日本電色工業社製ヘイズメータNDH2000ヘイズメータに光学シートをセットし、光学シート面の法線方向より光を当て、直進出射されてくる平行透過率Toを測定する。次に、図1に示すように光学シートを入射光に対して40°傾斜した状態で測定したときに得られる平行透過率の値をTβとする。
求めたTo、TβよりTβ/Toを求めた。
(相対正面輝度評価)
作製したEL素子について正面輝度測定を行った。
測定は分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタセンシング製)を用いて正面からの発光輝度(2°視野角正面輝度)を測定した。
EL表示装置101(比較例)の輝度を1として相対値で示した。
(クラック)
作製した光学シートを90℃/dryの恒温槽に1h投入し、投入前後の光学シートの状態をオリンパス社製 蛍光観察顕微鏡 BX51を用いてクラックの状態を調べた。
◎・・・クラックが全く発生しない。
○・・・わずかに発生しているが恒温槽投入前後で性能に変化が無い。
△・・・クラックが発生しており恒温槽投入後で性能が0.1以内の劣化。
×・・・クラックが発生しており恒温槽投入後で性能が0.3以上劣化している。
Figure 0005182108
(実施例まとめ)
各EL表示装置の評価結果をまとめる。
No.101は球状アルミナを用いておりアスペクト比、厚みともに規定外のため輝度が低く、クラックの発生も大きい。
No.102は扁平粒子のアスペクト比は規定内であるが小さいため、ある程度の輝度向上効果は得られているが、マトリックスとの界面にややクラックが発生している。
No.103扁平粒子にアルミナを用いており、輝度向上効果は得られているが、マトリックスとの界面にややクラックが発生している。
No.104は平均粒径が大きいため輝度向上効果がやや低い。
No.105はTβ/Toが低いため輝度向上効果がやや低い。
No.106は配向角が大きいため輝度向上効果が低い。
No.107は針状粒子を縦に入れても輝度向上効果は低い。
No.108は扁平粒子に雲母を用いており、輝度向上効果は得られているが、マトリックスとの界面にややクラックが発生している。
No.109はマトリックスと扁平粒子とのn差が小さいため輝度向上効果が低い。
No.110はマトリックスと接着部材とのn差が大きいため輝度向上効果が低い。
No.111は扁平粒子に表面処理を行ったアルミナを用いることで十分な輝度向上効果が得られているが、マトリックスの熱膨張から扁平粒子とマトリックスとの界面でのクラックがわずかに発生している。
No.112は扁平粒子に表面処理を行ったアルミナを用いて、更に表面処理を行った微粒子をマトリックス中に分散させることで十分な輝度向上効果が得られ、熱膨張抑制効果から扁平粒子とマトリックスとの界面でのクラックを抑制している。
No.113散乱粒子の表面処理違い(テトラエトキシシラン化合物を用いたコアシェル構造)でクラック防止が向上しており、輝度向上効果も高い。
No.114は微粒子分散したマトリックスの屈折率が高く、ITOに近いため輝度向上効果が高い。
No.115は接着部位との屈折率差が大きいため輝度向上効果が得られず、クラックの発生も見られる。
No.116は扁平粒子に表面処理を行った炭酸カルシウムを用いて、表面処理を行った微粒子をマトリックス中に分散させることでアルミナを用いたときよりも輝度向上効果が得られ、熱膨張抑制効果から扁平粒子とマトリックスとの界面でのクラックを抑制している。
No.117は扁平粒子に表面処理を行った炭酸ストロンチウムを用いて、表面処理を行った微粒子をマトリックス中に分散させることでアルミナを用いたときよりも輝度向上効果が得られ、熱膨張抑制効果から扁平粒子とマトリックスとの界面でのクラックを抑制している。
2 基板
2a 表示領域
2b 周辺領域
3 シーリング部
10 表示装置
11 走査線
13 信号線
21 EL素子
22 基板
23 陽極
24 有機層
24a 正孔注入層
24b 正孔輸送層
24c 発光層
24d 電子輸送層
25 陰極
25a 第1層
25b 第2層
201 EL表示装置
207 カラーフィルター基板
208R、208G、208B 着色層
210 有機緩衝層
223 画素電極
230 ガスバリア層
250 陰極
255 電極保護層
300 発光層
301 正孔注入層
302 正孔輸送層
303 有機発光層
304 電子注入層
401 第1のガラス基板
402 陽極
403 EL発光層
404 陰極(ITO)
405 ガスバリア層
406 接着層
407 光学シート
408 透明平坦化層
409 カラーフィルター
410 第2のガラス基板

Claims (8)

  1. 少なくとも1つの基板のいずれかの面に、対向する一対の電極と該電極の間に1つの発光層を備え、前記一対の電極のうち少なくとも一方は光透過性電極であって、該光透過性電極の光取り出し面側に封止部位が設けられているEL素子において、該封止部位の視認側面に下記条件をいずれも満たす光学シートが接着部位を介して設けられていることを特徴とするEL素子。
    a.該光学シートは、少なくとも透明樹脂からなるマトリックス中に平均アスペクト比が2以上の扁平なドメインが分散されている構成であって、該シート面に垂直な断面における該扁平なドメインの長軸方向と該光学シート面と平行な方向とのなす小さい方の角度の平均値が30°以内である。
    b.該光学シートを構成する前記マトリックスの屈折率をnとし、前記扁平なドメインの屈折率をnとするとき、nは1.62以上2.0以下であり、かつ|n−n|≧0.05である。
    c.該接着部位の屈折率をnとするとき、該光学シートを構成する前記マトリックスの屈折率が|n−n|≦0.05の関係を満たす。
  2. 前記扁平なドメインの平均粒径が10μm未満であり、平均厚みが0.5μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のEL素子。
  3. 前記扁平なドメインは、カルボン酸、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤より選択される少なくとも1種の化合物によって表面処理されていることを特徴とする請求項1または2に記載のEL素子。
  4. 前記マトリックスは平均粒径が1nm以上100nm以下の微粒子を含有し、該微粒子を分散させたマトリックスの下記式で表される屈折率をn、前記扁平なドメインの屈折率をn、該微粒子の屈折率をnとすると、
    微粒子の屈折率n>1.8でかつ|n−n|≧0.05の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のEL素子。
    (式) n=n・A+n・(1−A)
    (式中、マトリックスの屈折率をn、マトリックスの体積分率をA、微粒子の屈折率をn、微粒子の体積分率を1−Aとする。)
  5. 前記微粒子は、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルシリルクロライド、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3 −(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシランから選択される少なくとも一つの表面処理剤で改質されていることを特徴とする請求項4に記載のEL素子。
  6. 前記扁平なドメインが炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウムから選ばれる少なくも一つであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のEL素子。
  7. 外界から上記光学シート内に入射する光のうち、該シート面の法線方向から入射する光に対する平行透過率をToとし、該シート面の法線に対し40°傾斜した方向から入射する光に対する平行透過率をTβとしたとき、Tβ/Toの値が0.65以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のEL素子。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のEL素子を用いることを特徴とするEL表示装置。
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