JP5178937B2 - 遮音二重床及び建築物 - Google Patents

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Description

本発明は、重量床衝撃音遮断性能が良好な遮音二重床、及び、当該遮音二重床を有する建築物に関する。
従来のマンションの一般的な二重床の構造では、図39に示したように、床基盤(コンクリートスラブ)上に複数配置された防振支持脚3により、スラブから所定の距離(床下空気層)を隔てて、下地パネル(パーチクルボード)4bが支持され、この下地パネル上に床仕上げ層5が配置されている。以下、これを「従来例」という。
この従来例の二重床では、重量床衝撃音(例えば、子供が飛び跳ねるときの下階で発生する音)の遮断性能が低いという問題があり、改善が望まれていた。
その改善方法の一つは、二重床の下地パネル4bの曲げ剛性を高めることであり、例えば、従来例の下地パネルを平面的なパーチクルボードに代えて、曲げ剛性の高い立体構造の下地パネルとしたものがある(例えば、特許文献1参照)。以下、これを「第1先行技術」と呼ぶ。
この技術により重量床衝撃音遮断性能はある程度向上するものの、騒音問題意識の社会的高まりの中にあって、この性能は未だ充分とはいえない。
この第1先行技術を発展させ、更なる重量床衝撃音の改善を図った遮音二重床が提案されている(図40参照)。この構造は、立体構造とした特許文献1の下地パネル4の曲げ剛性の方向性に着目し、配置を工夫することで更なる改善が図られている(特許文献2参照)。以下、これを「第2先行技術」と呼ぶ。
この第2先行技術は実用化され、その製品には重量床衝撃音の低減量が1デシベルと言う国土交通大臣の認定が与えられている。
しかしながら、この第2先行技術であっても、その性能は依然として充分ではない。加えて、第1先行技術及び第2先行技術の遮音二重床は、下地パネル4の厚さの増大による二重床高さ7hの増大に伴う、建物の階高上昇あるいは室内空間の圧迫という欠点もある。
また、他の視点からの改善例として、図41に示す様に、二重床と壁の取り合い部に空気孔27を設置する方法がある(例えば、非特許文献1、2参照)。この空気孔27は、床下空気層2の密閉度を解放することで空気バネの働きを低減させている。このことで、従来例で起こる床下空気層2のバネによる共振増幅が防止され、重量床衝撃音遮断性能が向上する。
しかしながら、この方法もある程度の性能(低減量0デシベル)が非特許文献2に示されているものの、依然として充分な遮断性能の実現には至っていない。加えて、この場合の空気孔27は、設置場所が制約されるため、室形状等によっては充分な設置箇所を確保できない他、隙間への異物侵入等の欠点もある。これを第3先行技術と呼ぶ。
特許公開2009−127248 特許公開2003−227226
社団法人日本音響材料協会 音響技術 NO.121 (vol.32no.1)2003年3月 P22 2.2二重床端部の隙間の影響 工学図書株式会社発行 住宅性能表示制度・日本住宅性能表示基準・評価方法基準・技術解説2001 P365 図8−7
この発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、重量床衝撃音遮断性能を高めるとともに、高さの増大を抑えた簡易で軽量な構造を有する遮音二重床を提供することを目的とする。
また、本発明は、遮断する重量床衝撃音の周波数帯域を調整することができる遮音二重床を提供することも目的としている。
また、本発明は、遮音二重床を有する建築物を提供することも目的としている。
この発明は、床基盤と、この床基盤上に設置された複数の防振支持脚と、この複数の防振支持脚で床下空気層を隔てて所定の高さに支持された床下地と、この床下地の上面に敷設された床仕上げ層からなる二重床において、前記床下地が箱体からなり、該箱体の下面あるいは側面に、当該箱体の内部と前記床下空気層とを連通して前記床下空気層の圧力を緩衝する複数の空気孔を穿設するとともに、前記箱体の内部に、前記複数の空気孔をそれぞれ通過する空気を通し、ヘルムホルツレゾネータの共振周波数が16Hz乃至1000Hzのいずれかである複数のダクトを設けて床衝撃音の周波数特性を変化させたことを特徴とするものである。
また、前記箱体の内部に、配管類を敷設するとよい。
また、前記箱体を形成する部材の一部を着脱自在に形成し、前記配管類の更新を可能にするとよい。
また、前記箱体の高さを部分的に圧縮した空間を設け、該空間に、配管類を敷設するとよい。
また、複数の前記箱体を所定の間隔で配置し、前記箱体間の隙間に配管類を敷設するとよい。
また、本発明は、上記の遮音二重床を備えていることを特徴とする建築物も提供する。
また、前記床基盤が、水廻り段差を無くした構造を有するものであってよい。
以上説明したように、本発明によれば、床下地に床下空気層の圧力を緩衝する複数の空気孔を穿設するとともに、前記複数の空気孔をそれぞれ通過する空気を通し、ヘルムホルツレゾネータの共振周波数が16Hz乃至1000Hzのいずれかである複数のダクトを設けて床衝撃音の周波数特性を変化させたので、重量床衝撃音遮断性能を高めることができる。効果の詳細は、後述する。
実施例1対応モデルの試作床の断面図である。 実施例2対応モデルの試作床の断面図である。 重量床衝撃音実測結果のグラフである。 実施例1の断面図である。 実施例1の床仕上げ材を拡大した説明用断面図である。 実施例1の床仕上げ層を上部から見た説明用平面図である。 実施例1の床仕上げ層の機能を説明する模式図である。 実施例1の下地パネルと配管類の説明図である。 実施例2の断面図である。 実施例3の断面図である。 実施例3の1ユニットの説明図である。 実施例4の断面図である。 実施例4の配管類と下地ユニットの説明図である。 実施例5の断面図である。 実施例6の断面図である。 実施例7の断面図である。 変形例1bdの断面図である。 変形例1bdの床仕上げ層の機能を説明する模式図である。 変形例1cdの断面図である。 変形例1cdの床仕上げ層の機能を説明する拡大図である。 変形例1cdの床仕上げ層の機能を説明する模式図である。 変形例1aeの断面図である。 変形例1afの断面図である。 変形例2eの断面図である。 変形例2fの断面図である。 変形例3beの断面図である。 変形例3cfの断面図である。 変形例4beの断面図である。 変形例4cfの断面図である。 変形例5beの断面図である。 変形例5cfの断面図である。 変形例7bdの断面図である。 実施例8のスラブ断面図である。 従来例のスラブ断面図である。 図35(a)は本発明の第9実施例の構成例を説明するための概略平面図、同図(b)は本発明の第9実施例の構成例を説明するための概略断面図である。 従来例の断面図である。 先行技術2の断面図である。 先行技術3の断面図である。 従来例の鉛直変形メカニズムの説明図である。 実施例1の鉛直変形メカニズムの説明図である。 先行技術1対応モデルの試作床の断面図である。
以下、添付図面を参照しながら、この発明の実施の形態を詳細に説明する。
まず、本明細書中で使用している用語について、次のように定義する。
「床基盤」とは、鉄筋コンクリート造又は鉄骨造の建物の界床に使用される鉄筋コンクリートスラブ1(図1参照)を指す。前記鉄筋コンクリートスラブは、普通コンクリート製、軽量コンクリート製並びにALC製、及び均質スラブ並びにボイドスラブを含む。
「二重床」とは、床基盤上に空気層を有する床仕上げ構造である。二重床は、一般に乾式二重床とか乾式遮音二重床とも呼ばれるが、ここでは本発明と明確に区別するため、単に「二重床」と言う。断面的な二重床の範囲は、床基盤(スラブ)の上から床仕上げ材表層までの範囲である。この高さを二重床高さ7hと言う(図6参照)。
「遮音二重床」とは、二重床に重量床衝撃音遮断性能を付加した本発明にかかる床仕上げ構造であり、二重床と同様に二重床高さ7hの断面範囲に収まる構造である。
「床下地」とは、二重床あるいは遮音二重床から床仕上げ層を除いた部分である。一般に、防振支持脚3(図1参照)と下地パネルを総称するが、ここでは下地パネルに密着した捨て張り合板(図示略)あるいは床暖房の放熱板(図示略)は床下地から除外し、これらの各要素は床仕上げ層に含める。
「防振支持脚」3は、弾性変形する防振構造を備え、所定の高さを保持するための長さを有し、その長さは調整可能で、その頂部には、支持するパネルとの接合機能を果たす支持板3a(図1参照)を有する構造で、現在これらが組み上げられた状態で市販されている。ここではこの市販品以外に、頂部の支持板3aの無いもの、長さが極端に短いもの(床基盤と下地パネルの間が小さい場合)及び長さの調整が出来ないもの、スチールバネとゴムを併用したもの等を含む防振支持手段を含めて「防振支持脚」と呼ぶ。
「下地パネル」とは、一般的には従来例(図39参照)のように平板のパーチクルボード4bを指すが、ここでは立体化したリブ付きパネルや中空パネル(図40参照)を含む。また、その材質は、木質の他、鉄及びコンクリート(FRCを含む)を含む。断面範囲は、床下地から防振支持脚3を除いた部分である。
「下地ユニット」とは、床下地(の下地パネル)を中空構造又は立体構造とした場合の、下地パネルから上部面材を除いた部分の、1施工単位を指す。
「床仕上げ層」とは、下地パネルの上から床仕上げ材表層までを指す。したがって、空気圧緩衝層及びこれを接着する両面テープ、あるいは床暖房の放熱板や捨て張り合板等も、ここでは床仕上げ層に含める(後述)。
「防音フローリング」とは、直張り用に使用されるものであり、裏面に不織布等の防音層を配したフローリング材を指す。「防音フローリング」は、直張り用フローリング材の中で最も普及している製品である。
次に、本発明の主要なメカニズムと重量床衝撃音の実測結果を説明する。
従来例などの二重床は、一次固有振動数(f:式(I)参照)が63ヘルツ帯域にあるため、ここが決定周波数帯域となる重量床衝撃音では遮断性能が低く、これより高い周波数帯域(例えば250ヘルツ帯域)が決定周波数となる軽量床衝撃音では遮断性能が高い。二重床の床衝撃音は、一次固有振動数(f)を低下させることで、重量床衝撃音でも遮断性能が向上する。
ここで、一次固有振動数(f)を低下させるためには、式(I)における(k)を小さくする(二重床全体のバネをやわらかくする)こと、及び(m)を大きくする(二重床の単位面積当たりの重量(面密度)を重くする)ことである。また、(k)は、床下空気層のバネ(ka)と防振支持脚(kb)とを合成したバネであり、このバネ(k)については、床全面積が因数となる(ka)が支配的であるため、空気バネの制御は、床衝撃音低減への寄与率が高い。

ここで、
f:二重床の一次固有振動数(Hz)
k:床1m2当たりの合成したバネ定数(N/m)
ka:床1m2当たりの床下空気層のバネ定数(N/m)
kb:床1m2当たりの防振支持脚のバネ定数(N/m)
m:床1m2当たりの二重床の質量(=面密度(kg/m2))
ρ:空気の密度(kg/m3
c:音速(m/s)
h:床下空気層の厚さ(m)
である。
また、この式(I)によれば、床下空気層の厚さ(h)を増大させると、バネ(ka)定数は低下し、一次固有振動数(f)が低下し、床衝撃音遮断性能が向上するが、室内空間の圧迫又は建物の階高増大というデメリットを招く。前述の第3先行技術は、床下空気の密閉度を開放する空気抜き開口を床端部に設置することによって、床下空気層のバネ(ka)の働きが減じられ、空気層厚さの増大なしに(ka)の定数を低下させたものと同様の一次固有振動数(f)の低減効果が発揮される。本発明も、この第3先行技術と同一のメカニズムに基づいている。本発明では、二重床全面に空気孔を設置する手段により、設置場所や箇所数の限定を無くし、床下空気層のバネの働きを更に大きく減じている。
図3は、縦軸に重量床衝撃音の音圧レベルを、横軸に中心周波数帯域をそれぞれ示しており、実際のマンションで実施した重量床衝撃音の測定結果である。衝撃源はJIS A 1418−2に規定されている標準衝撃源(以下、ボール)で、子供が飛び跳ねた衝撃などを再現している。
実線は、二重床の無い床基盤(コンクリートスラブ1)のみの測定結果を示す。これを素面と呼ぶ。
点線は、図41に示す、特許文献1をモデル化した、空気孔の無い二重床である。これを第1先行技術対応モデルと呼ぶ。
破線は、第1先行技術対応モデルに空気孔(中空部連通孔10)を備えた図2に示す遮音二重床である。これを第2実施例対応モデルと呼ぶ(第2実施例については後述する)。
一点鎖線は、第2実施例対応モデルに更に仕上げ層連通孔11を備えた図1に示す遮音二重床である。これを第1実施例対応モデルという(第1実施例については後述する)。
実測したこれらの二重床は、いずれも面密度調整用レンガ25を内部に貼り付け、それぞれ実施例に相当する面密度(平米当り約50キログラム)に調整されている。
また、図3の測定は、本発明者等による「一般社団法人 日本建築学会 2011年度大会(関東)学術講演梗概集D−1 P219 高性能遮音二重床の開発」に記載した内容に従って行った。
そして、図3のグラフによれば、中空部連通孔10の効果は(これの無い第1先行技術対応モデルに比べ)、125・250ヘルツ帯域で8及び7デシベルであった。更に仕上げ層連通孔11を設置した場合(これの無い第2実施例対応モデルに比べ)、63・125ヘルツ帯域で7及び4デシベルの効果があった。これらの効果は、式(I)に示した(f)の因数や空気孔の条件(直径・頻度・孔の深さ(ネック))により、出現する周波数帯域やレベルが異なる。しかしこのグラフでは、いずれもこれらの空気孔により重量床衝撃音遮断性能に大きな効果が現れた。
これらの実験から、一般のマンションでこの効果を実現し易い好適な形態とした実施例を以下に示す。
<第1実施例>
第1実施例を図4〜図8に基づいて説明する。図において1は床基盤となるコンクリートスラブである。4は、コンクリートスラブ1の上に配置された防振支持脚3に保持されている下地パネルである。5は、下地パネル上に設置された床仕上げ層である。第1実施例(の二重床7)は、コンクリートスラブ上の床下空気層2、防振支持脚3、下地パネル4、空気孔(中空部連通孔10と仕上げ層連通孔11)及び仕上げ層5で構成されている。この高さを二重床高さ7hと言う。
下地パネル4は木質素材で出来ており、上部面材12と下部面材13とを所定の中空部高さ14hを隔ててリブ材9で強固に結合されていて、曲げ剛性を高める構造となっている。この下部面材13には空気孔として中空部連通孔10が設けられており、この孔により床下空気層2と中空部14の間で空気の移動が可能となっている。
更に、上部面材13には仕上げ層連通孔11が設けられており、この空気孔により中空部14と床仕上げ層5の最下層との間でも空気の移動が可能となっている。5は床仕上げ層で、材質は防音フローリング6である。防音フローリング6は、図7の断面図に示す様に、木質合板の裏面に鋸目ZGが入り、防音層として不織布26等が裏打ちされた、スラブへの直張り用木質床仕上げ材である。この防音フローリング6は、裏面の鋸目ZGによって曲げ剛性が小さい(フニャフニャした)板材であり、裏打ちされた不織布26は弾力と通気性を有している。第1実施例では、この防音フローリング6を、図6の平面図に示す様に下地パネル4(の上部面材12)に接着材である両面接着テープ15により部分接着している。
図4に示した配管類8は、衛生や電気設備等の配管・配線類で、図8(第1実施例の下地パネル4と配管類8の説明図)に示す様にリブの切り欠き部16によりリブ材9を貫通し下地パネル4に内蔵されている。
以下、この様に構成された第1実施例の遮音二重床に関し、重量床衝撃音を遮断するメカニズム等を説明する。
二重床の下地パネル4の曲げ剛性が向上すると、重量床衝撃音遮断性能が向上する。第1実施例では、上部面材12、下部面材13、リブ材9の3部材を強固に繋いだ中空構造とすることで、下地パネル4の曲げ剛性が向上している。また、この3部材が平面的な広がりを持って強固に繋がれているため、より大きな面積が振動的に一体化されている。二重床に衝撃や集中荷重が加わると、従来例では図39の様に局部的に鉛直変形量22が生じるが、第1実施例の場合は、前記一体化により、局部変形が生じにくく鉛直変形量22が比較的小さい(図40参照)。したがって、第1実施例の遮音二重床にボールによる重量衝撃を加えた場合、床下空気層2の圧力上昇は、従来例に比べ小さくなる。
二重床で床衝撃による床下空気層2の圧力上昇が生じた場合、床下空気層2上部にある二重床は上方へ押し戻される。その際、二重床の質量と前述の空気バネ(定数はka)の働きで共振し、コンクリートスラブ1へ共振増幅された衝撃力が伝達される。第1実施例では、下部面材13に中空部連通孔10が開けられているため、床下空気層2の圧力上昇と共に、床下空気は中空部14へと移動する。このため、空気バネの働きが阻害され、床下空気層2のバネ定数(ka)は見かけ上低下し、一時固有振動数(f)が低下するため重量床衝撃音遮断性能が向上する。
この中空部連通孔10から侵入した空気は、中空部14内の圧力上昇を伴い、仕上げ層連通孔11より上方へ移動する。この仕上げ層連通孔11の働きで、中空部14の圧力は好適なレベルを超えないため、床下空気層2から中空部連通孔11を介した更なる空気の移動が可能となる。この2種類の連通孔10,11により、第1実施例は、床下空気層2のバネの働きを大きく減じている。
この仕上げ層連通孔11から上方へ移動した空気は、床仕上げ層5の最下層に集まり、圧力上昇を伴い図7に示す様に、部分接着された防音フローリング6を押し上げる。この圧力上昇による床仕上げ層5の変形は、衝撃的な(短)時間内に収束し変形量も小さいため、図7のイメージ図の様な変化を肉眼で見ることは出来ず、生活上の違和感も無い。
第1実施例の遮音二重床は、中空部連通孔10、仕上げ層連通孔11及びこの働きを阻害しない床仕上げ層5により、床下空気層2のバネを自由に制御しており、その悪影響を大幅に排除している。また、下地パネル4の曲げ剛性向上及び一体化面積の拡大と、空気バネ制御の相乗効果で、第1実施例は高い重量床衝撃音遮断性能が見込まれる。
ところで、この第1実施例では、下地パネル4を中空構造としたため、従来例のように配管類8をスラブ1上に配置すると、二重床高さ7hが増大する。そこで、図8に示す様に、下地パネル4を構成するリブ材9を部分欠損させ、下地パネル4の中空部にこの配管類8を敷設し、二重床高さ増大を回避した。また、下部面材13とリブ材9は接着剤とビスで固定したが、上部面材12とリブ材9はビスのみで固定し、内蔵した配管類8の更新性にも配慮した。
一般に下地パネル4と床仕上げ層2の間に張り付けられる捨て張り合板(図示略)は、前記仕上げ層連通孔11の空気抜き機能を損なってしまう。捨て張り合板の主目的は、下地パネル4同士のせん断変形(いわゆる目違い)を防止し、仕上げ材の変形や損傷を防止することである。第1実施例は、前述の通り下地パネル4を構成する部材同士を強固につないでいるため、せん断変形が生じない。このため、ここでは捨て張り合板を省略することが可能となっている。なお、不陸調整用などで、捨て張り合板を設ける場合は、仕上げ層連通孔11を下地パネル4と同位置に設ける必要がある。
<第2実施例>
第2実施例は、第1実施例に設けた仕上げ層連通孔11を有していない。このため床仕上げ層5には特別な制限はない。この点が第1実施例と異なっている。図9にその断面を示す。床仕上げ層5は、複合フローリングの例を示しており、下地パネル4の上部面材12に直接張り付けられている。また、必要に応じ捨て張り合板を設けてもよく、捨て張りの方法にも制限は無い。
第2実施例の重量床衝撃音遮断性能は、図3のグラフの破線(第2実施例対応モデル)で示される。この125及び250ヘルツ帯域で現れた重量床衝撃音の遮断効果は、前述の一次固有振動数(f)の因数及び中空部連通孔の形状並びに頻度により、周波数が変化する。第2実施例の場合、中空部高さ14hを大きくすることにより、より低い周波数まで重量床衝撃音の遮断効果を奏することが出来る。また、床仕上げ層5に制限が無いことも第2実施例の優れた点である。
<第3実施例>
第3実施例は、第1実施例と下地パネル4の構成が異なる。図10にその断面を示す。下地パネル4は、上部面材12を除く部分をユニット化し、そのユニット24同士が強固につながれている。連結されたユニット24は、上部面材12がビス23で強固に取り付けられている。ひとつのユニット24を取り出した形を図11に示す。このユニット24は、中空構造又は立体構造とした下地パネル4の高さを部分的に圧縮し、この圧縮部分に配管類8の敷設空間8bを設けた形状となっている。
第3実施例は、曲げ剛性の連続性が第1実施例と若干異なる。このため、振動的に一体化される面積がこれらに比べ小さくなる。しかしながら、性能を支配的に左右する空気バネの対策は、第1実施例と同様である。第3実施例の重量床衝撃音遮断性能は、おおむね図3のグラフの一点鎖線(第1実施例対応モデル)と同等の性能となる。また、この第3実施例は、配管類8と二重床の施工時期を区分けすることが出来るため、施工性に優れている他、ユニット化に伴う生産性向上も見込まれる。
<第4実施例>
第4実施例は、第3実施例の下地パネル4と更に構成が異なる。図12にその断面を示す。下地パネル4は、上部面材12を除く部分がユニット化されている。このユニット24同士は、所定の距離をおき上部面材12で強固に連結され、下地パネル4として一体化されている。また、配管類8は、このユニット24同士の隙間に配置されている。上部面材12同士のジョイント部(上部面材ジョイント部31)は、おおむね下地ユニット24の範囲中で完結しているため、上部面材12のジョイント部にせん断変形(目違い)が生じず、捨て張り合板を省略できる。また、この上面材ジョイント部31に隙間を設ければ、上部面材ジョイント部31と床下層連通孔の兼用部11bとして機能する。
第4実施例も第3実施例と同様に、曲げ剛性の連続性が第1実施例と異なり、振動的に一体化される面積が第1実施例に比べ若干小さくなる。ただし、空気バネの対策が第1実施例と同様であるため、重量床衝撃音遮断性能は、おおむね図3のグラフの一点鎖線(第1実施例対応モデル)と同等の性能となる。この第4実施例も、第3実施例と同様に二重床の施工性や部品の生産性が向上している。また、第4実施例は、図13の斜視図に示すように、配管類8がユニット24の隙間に配置されるため、配管スペースが必要な部分のみユニット間隔を取ったり、あるいは配管スペースが不要な部分はユニット24同士を密着させ、配管スペースが必要な部分でユニット24の間隔を取るようにすることができ、配管スペースの幅や位置の設定についての自由度が高い。
<第5実施例>
第5実施例は、第1実施例と下地パネルの構成が更に異なる。図14にその断面を示す。下地パネル4は、下部面材13を有していないが、これは中空部連通孔10を極大化したパターンと考えることが出来る。このこと以外は、第1実施例とおおむね同じである。第5実施例は、下部面材を有していないため、上部面材12を防振支持脚3で支持するようにしている。なお、上部面材12をリブ材9で支持するようにすることもできる。
第5実施例に重量床衝撃音測定用標準衝撃源であるボールを落下させた時、第1実施例と同様、床下空気層2が圧縮される。その空気は圧力上昇に伴い、上部面材12に設けられた仕上げ層連通孔11により、上方へ移動する。以下、第1実施例と同様のメカニズムである。この第7実施例の重量床衝撃音遮断性能は、おおむね第1実施例と同等である。
<第6実施例>
第6実施例は、前述した第5実施例とリブ材の形状が異なる。図15にその断面を示す。下地パネル4は、上部面材12と必要最小限のリブ材である目違い防止(剪断方向のずれ防止)リブ28で構成されている。この第6実施例も、下部面材を有していないため、防振支持脚3で上部面材12を支持しているが、第5実施例と同様にリブ材(目違い防止リブ28)で支持することも出来る。また、必要最小限の大きさとなったリブ材でも、下地パネル(上部面材12)の目違い防止機能を果たすため、捨て張り合板は省略出来る。
第6実施例の重量床衝撃音遮断性能は、従来例(図36の一般的な二重床)と第1実施例の中間的な値となる。この第6実施例は、平面的な配管設置可能スペースが比較的広く、配管と二重床の施工手順が従来例と同じであるため、従来例から第6実施例への変更がスムーズに行える。また、面密度も従来例と同程度である。また、仕上げ層連通孔のメカニズムと効果は、第1実施例と同様である。
<第7実施例>
第7実施例は、図16に示すように、図1に示した従来例に対し、仕上げ層連通孔11と床仕上げ層5が異なっている。図16では、下地パネル4の目違い防止のため、防振支持脚3を下地パネルジョイント部に配置(共通支持脚と呼ばれる一般的な配置)し、防振支持脚頂部3aの支持板と下地パネル4を強固に接合し、捨て張り合板を省いている。一般にこの部分は、薄いブチルゴム等の緩衝材を介し、強固でない方法で支持板と下地パネルが接合されるため、目違い防止に捨て張り合板が設けられる。第7実施例でもこの様に捨て張り合板を設ける場合、仕上げ層連通孔11の効果を阻害しない様、同位置に孔を設けるなどの配慮が必要となる。
第7実施例の重量床衝撃音遮断性能は、従来例と第1実施例の中間的な値となる。この第7実施例は、平面的な配管設置可能スペースの広さや施工手順が従来例と同じであるため、従来例から第7実施例への変更がスムーズに行える。また、面密度も従来例と同程度である。仕上げ層連通孔のメカニズムと効果は、第1実施例と同様であり、第3先行技術で問題となった空気抜き設置箇所の限定は、第7実施例でも完全に解除されている。
<変形例1bd>
第1実施例の変化パターンである変形例1bd(このbとdの記号の意味は後述)は、図17に示す様に床仕上げ層5が第1実施例と異なる。表面仕上げ材は、通気性床仕上げ材20としてカーペットを採用している。また、通気性と適度な弾性をもつフェルトをその下地20a(図18参照)としている。
変形例1bdの重量床衝撃音遮断メカニズムは第1実施例と同様である。すなわち、ボールを落下させた時、第1実施例同様床下空気層2が圧縮され、下地パネルの中空部14へ空気が流入し、中空部14の空気はその圧力上昇に伴い、上部面材13に設けられた仕上げ層連通孔11により上方へ移動する。
変形例1bdでは、上方へ移動してきた空気は、通気性床仕上げ材20を通過し図18に示す様に居室内へ開放される。重量床衝撃音遮断性能は、床仕上げ層の通気性にもよるが、およそ第1実施例と同等である。以下、第1実施例の床仕上げ層である防音フローリングを仕上げパターンa、この変形例1bdの通気性床仕上げ材を仕上げパターンbと呼ぶ。
ここで、変形例に付した記号は、そのアラビア数字が元となった実施例の番号を示し、次のアルファベットが仕上げ層の種類、最後のアルファベットが下地パネルの材質を表している。ここで仕上げ層に関して、aは防音フローリング、bは通気性床仕上げ材(カーペット)、cは最下層が通気性材料(後述)である。また、下地パネルの材質に関して、dは木質、eは繊維補強モルタル、fは鉄板である。したがって前述の変形例1bdは、第1実施例からの変形例で、仕上げ層が通気性床仕上げ材、下地パネルは木質であることを示している。前述の第1実施例〜第7実施例は、すべて仕上げ層がa(防音フローリング)下地パネルの材質はd(木質)である。
<変形例1cd>
変形例1cdは、図19に示す様に床仕上げ層5が第1実施例と異なっている。表面仕上げ材の複合フローリング17とは、通気性の無い合板の表面に薄い木材が張り付けられた、近年最も多用されている床仕上げ材である。この直下層に位置する捨て張り合板21(図20参照)は、複合フローリング17の施工性向上及び歩行感向上の目的を有しているが、適宜省略出来る。この捨て張り合板21直下に位置する空気圧力緩衝層19は、適度な弾性と通気性を兼ね備えた材料(ここでは不織布)で出来ている。この変形例1cdは、この不織布を下地パネル4に全面接着しているが、図6に示した第1実施例と同様に部分接着することも出来る。
変形例1cdに重量床衝撃音測定用標準衝撃源であるボールを落下させた時、第1実施例及び第2実施例と同様、床下空気層2が圧縮され、下地パネル4の中空部14へ空気が流入する。中空部14の空気はその圧力上昇に伴い、上部面材13に設けられた仕上げ層連通孔11により、空気圧緩衝層19へ移動する。その際、空気圧緩衝層19hは、その厚さを増大させることで、下方より来る衝撃的な圧力上昇を緩和することができる。空気圧力緩衝層19は、図21に示す様に部分接着も可能で、その場合表面材の面密度にもよるが、より高い空気圧力緩衝効果を発揮する。変形例1cdの重量床衝撃音遮断性能は、空気圧力緩衝層の厚さ、硬さ(弾性)、並びに通気性、及び接着方法により異なるが、おおむね第1実施例と同等である。以下、複合フローリングと緩衝層を組み合わせた変形例1cd床仕上げ層を、仕上げパターンcと呼ぶ。
<変形例1ae>
変形例1aeは、図22に示す様に下地パネル4の素材が第1実施例と異なっている。ここでは、下地パネル4の上部面材12を除く部分をユニット化しており、素材は繊維補強モルタル(以下、FRC)である。重量床衝撃音遮断メカニズムは、第1実施例と同様であるが、FRCの部材厚調整により二重床の重さである面密度の調整が容易で、遮音設計上の要求に好適なユニット24が生産し易い。変形例1aeの重量床衝撃音遮断性能は、同程度の面密度であれば第1実施例と同等であり、面密度の増加と共に性能が向上する。
<変形例1af>
変形例1afは、図23に示す様に下地パネル4の素材が第1実施例と異なっている。ここでも、下地パネル4の上部面材12を除く部分をユニット化しており、素材は鉄板である。重量床衝撃音遮断メカニズムは、第1実施例と同様である。また、鉄板の場合、各連通孔のネック(ヘルムホルツ共鳴器の孔の奥行き)を必要に応じ形成することが容易である。変形例1afの重量床衝撃音遮断性能も、同程度の面密度であれば、およそ第1実施例と同等である。以下、下地パネルのユニット部の素材を鉄板としたものを、素材パターンfと呼ぶ。
<その他の第1実施例の変形例>
第1実施例は、abcの仕上げパターン3種類及びdefの素材パターン3種類が考えられる。この変形例、1ad,1ae,1af,1bd,1be,1bf,1cd,1ce,1cfの9種類の内、前述及び図示した変形例1bd、1cd、1ae、1af以外は、図示及び説明を省略する。
<第2実施例の変化形>
第2実施例は、床仕上げに特別な限定は無い。このため、第2実施例における変化形は下地素材パターンabcの3種類となり、aは前述第2実施例で記載しているため、変化形は2e及び2fとなる。
<変形例2e>
変形例2eは、図24に示す様に下地パネル4の素材が第2実施例とは異なり、FRCを用いている。重量床衝撃音遮断メカニズムは、第2実施例と同様であるが、FRCの部材厚調整により二重床の重さである面密度の調整が容易で、遮音設計上の要求に好適な性能(重さ)のユニット24が生産し易い。変形例2eの重量床衝撃音遮断性能は、同程度の面密度であれば第2実施例と同等であるが、面密度の増加と共に性能が向上する。
<変形例2f>
変形例2fは、図25に示す様に下地パネル4の素材が第2実施例とは異なり、鉄板を用いている。重量床衝撃音遮断メカニズムは、第2実施例と同様である。また、鉄板の場合、各連通孔10のネックの形成など良好な加工性を生かして遮音設計上の要求に好適なユニット24が生産し易い。変形例2fの重量床衝撃音遮断性能も、同程度の面密度であれば第2実施例と同等であるが、面密度の増加と共に性能が向上する。
<第3実施例の変形例>
第3実施例の変化形は、abcの仕上げパターン3種類及びdefの素材パターン3種類が考えられる。変形例3ae、3af、3bd、3be、3bf、3cd、3ce及び3cfの8種類(第3実施例は3ad)である。この中で代表的な2例を、図示と共に以下に示す。これらの重量床衝撃音遮断性能は第3実施例と同等の高いものであり、以下の2例は更に現場での施工性の向上及び工業化による生産性の向上が図られている。
<変形例3be>
変形例3beは、第3実施例において、床仕上げ層5をパターンb(通気性床仕上げ材)に、下地パネル素材をパターンe(FRC)に、それぞれ変更した例である(図26参照)。
<変形例3cf>
変形例3cfは、第3実施例において、床仕上げ層5をパターンc(空気圧緩衝層+複合フローリング)に、下地パネル素材をパターンf(鉄板)に、それぞれ変更した例である(図27参照)。
<第4の実施例の変形例>
第4実施例も第3実施例と同様に、abcの仕上げパターン3種類及びdefの素材パターン3種類が考えられる。変化形は、ae、af、bd、be、bf、cd、ce及びcfの8種類(第4実施例はaとdの組み合わせ)の組み合わせである。この組み合わせの中で代表的な2例を、図示と共に以下に示す。これらの重量床衝撃音遮断性能は第4実施例と同等のものである。第4実施例は、配管類の施工性が高いが、以下の2例は更に工業化による生産性の向上が見込まれる。
<変形例4be>
変形例4beは、第4実施例において、床仕上げ層5をパターンb(通気性床仕上げ材)に、下地パネル素材をパターンe(FRC)に、それぞれ変更した例である(図28参照)。
<変形例4cf>
変形例4cfは、第4実施例において、床仕上げ層5をパターンc(空気圧緩衝層+複合フローリング)に、下地パネル素材をパターンf(鉄板)に、それぞれ変更した例である(図29参照)。
<第5実施例の変形例>
第5実施例も第4実施例と同様に、abcの仕上げパターン3種類及びdefの素材パターン3種類が考えられる。変化形は、ae、af、bd、be、bf、cd、ce及びcfの8種類(第5実施例はaとdの組み合わせ)の組み合わせである。この組み合わせの中で代表的な2例を、図示と共に以下に示す。
<変形例5be>
変形例5beは、第5実施例において、床仕上げ層5をパターンb(通気性床仕上げ材)に、下地パネル素材をパターンe(FRC)に、それぞれ変更した例である(図30参照)。重量床衝撃音遮断性能は、第5実施例と同等である。変形例5beは、下部面材がほとんど無いため、面密度が小さい設計でもFRCの採用できる他、工業化による生産性の向上も見込める。
<変形例5cf>
変形例5cfは、第5実施例において、床仕上げ層5をパターンc(空気圧緩衝層+複合フローリング)に、下地パネル素材をパターンf(鉄板)に、それぞれ変更した例である(図31参照)。重量床衝撃音遮断性能は、第5実施例と同等である。変形例5cfは、市販の型鋼が使用できるため、試作や非量産品での生産性が確保しやすい。
<第6実施例の変形例>
第6実施例は、下地パネル部分の素材はd(木質系)のみである。このため変化形は、仕上げパターン別に変形例6bd及び変形例6cdの2種類である(図省略)。
<第7実施例の変形例>
第7実施例は、第6実施例と同様に、下地パネルはd(木質系)のみである。このため変化形は、仕上げパターン別に変形例7bd及び変形例7cdの2種類である。最もシンプルな第7実施例であるが、その中でも最もシンプルな変形例7bdを図32に示す。この7bdは、本発明の中で最も従来例に近く、従来例の設計や施工方法を踏襲できる部分が多い。
<第8実施例>
第8実施例は、本発明にかかる遮音二重床を使用した住宅である。そのスラブ断面の例を図33に示す。従来のスラブ断面は、ユニットバスの洗い場と住戸内の床面を平らにするバリアフリーと、ユニットバスの排水管納まりと、構造上必要スラブ厚さ及び二重床部分の床衝撃音遮断性能確保の観点から、床基盤であるスラブの上面の高さを下げた部分(水廻り段差部分30)を有している。
このスラブ断面は、バリアフリーを図り、排水管納まり上必要なユニットバス洗い場高さ32hの寸法(例えば250mm)と、水廻り段差部30の構造上必要なスラブ厚さ(例えば200mm)及び二重床直下のスラブに床衝撃音上必要な厚さ(例えば280mm)確保の観点から、図34に示す形状になることが多かった。
しかし、本発明にかかる遮音二重床を備えた住宅では、遮音二重床により床衝撃音遮断性能が担保されるため、スラブ厚さの低減が可能となる。この低減を利用し、住戸内の全スラブ厚さを構造上必要最小限として、水廻り段差を省略したものが、図35のスラブ断面である。この様に水廻り段差を無くした場合、将来の改装自由度が向上する等のメリットもある。
以上説明したように、二重床は、重量床衝撃力が与えられたとき、床下空気層の圧力が衝撃的に上昇する。その際、本発明の遮音二重床では、前記床下地に備えられた複数の空気孔等(等は、前記床下地同士の隙間)により、前記床下空気層の空気が上方へ移動する。この空気の移動により、前記床下空気層の衝撃的な圧力上昇は緩衝(急激な上昇の軽減)される。
この様にして達成された前記床下空気層の圧力緩衝は、第3先行技術と同様に空気バネの働きを低減させ、この結果二重床の一次固有振動数が低下するため、床下空気層による共振増幅が減少し、目的である重量床衝撃音遮断性能の向上が果たされる。
また本発明では、床仕上げ層の最下層に通気性を有する素材を採用できる。これは、床仕上げ層がカーペット又は防音フローリング若しくは前記床仕上げ層の最下層が不織布やフェルト等の通気性素材が採用できることを意味している。
この内、カーペットは、ここでは通気性床仕上げ材を代表して記載しており、前述の床下空気層のから上方へ移動してくる空気を大気に解放する作用を担っている。また、防音フローリング若しくは最下層が不織布やフェルトである前記床仕上げ層は、前述の床下空気層から上方へ移動してくる空気を、この最下層に溜め込む作用が期待できる。これらの作用により、床下空気層の圧力を緩衝する効果を高めている。
また本発明では、床下地同士を居室全体或いは5m2以上の面積で強固に繋ぎ合わせ、振動的に一体化した場合、重量床衝撃による鉛直変形が従来例の図39に比べ、より広い面積範囲の支持脚に作用する(図40参照)。このため、個々の「防振支持脚」の防振構造を、より軟らかくすることが可能となり、課題の重量床衝撃音遮断性能に相乗効果が現れる。
また、以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)下地パネルに、床下空気層の圧力を緩衝する複数の空気孔を備えているか、或いは前記床下地(のパネル)同士の隙間に通気性を備えているため、床下空気層のバネの働きが低減され、空気バネによって生じる共振増幅が解消されるため、重量床衝撃音遮断性能が向上する。
(2)また、隣り合う床下地同士を居室全体或いは5m2以上の面積で強固に繋ぎ合わせ、振動的に一体化した場合、鉛直変形量の低減或いは防振支持脚の柔軟化が出来、重量床衝撃音遮断性能に上記(1)との相乗効果が期待できる。
(3)これら床衝撃音に対する効果によって、必要な遮断性能が充分確保できるので、床基盤であるコンクリートスラブの軽減が可能となる。
(4)このスラブの軽減によって、これを支える梁柱や耐力壁など構造体の軽減を促進するため、建設コストや二酸化炭素排出量の削減あるいは省資源化に有効となる。
(5)また、従来、床衝撃音遮断性能の低さから解体を余儀なくされる既存建物が多く有ったが、本遮音二重床により既存建物の再生利用の可能性が広がる。
<第9実施例>
図35(a),(b)は、本発明の第9実施例にかかる遮音二重床の一例を示した概略平面図、及び、概略断面図である。なお、図35(a),(b)において、上述した各実施例と同様な部分あるいは相当する部分には、同一符号を付している。
図において、下地パネル4は、平板からなる上部面材12と、平板からなる下部面材13とを、断面略十字型の支柱である複数のリブ90を介して所定の距離(中空部高さ14hに相当)を離して配置した構成を有する。ここで、リブ90は、上部面材12と下部面材13との間に、水平方向及び垂直方向に所定の間隔で配置されて、上部面材12と下部面材13とを強固に結合している。さらに、下地パネル4において、上部面材12と下部面材13との隙間である中空部は壁部材(図示略)や巾木(図示略)などにより空間が閉止されていて、下地パネル4は、全体として箱体の構成を有する。そして、下地パネル4の上面には、例えば、複合フローリングからなる床仕上げ層5が設けられている。
なお、リブ90としては、集成材や無垢材等の木質材料の他、前述の実施例で使用した素材である金属(例えばLGS等の軽量鉄骨下地材)やコンクリート系材料(例えばFRC等のコンクリート成型品)、あるいは樹脂系材料(例えば発泡プラスチック)、などを用いることができる。
ここで、下地パネル4を室内に設置する際、隣室との間仕切り壁や敷居などの開口部の構築方法、及び、室外から貫通してくる配管類の収まり具合によっては、下地パネル4を構築する箱体の一部が開口する場合があるが、この箱体の開口する面積が大きい場合であっても、ヘルムホルツレゾネータ共振周波数(共鳴周波数)の計算は、ダクトピッチを考慮して設定した仮想間仕切りに基づいて行えば良い。一方、この箱体の開口する面積が小さい場合には、実際より若干高く算出されるが、開口が無いものとして計算することができる。この様に、第9実施例にかかる遮音二重床も、前述した各実施例にかかる遮音二重床と同様に、レゾネータ(共鳴器・共鳴箱)として扱うことができるため、下地パネル4を大きな箱体と考えることができる。
また、下地パネル4は、防振支持脚3により、コンクリートスラブ1から所定の距離だけ浮いた状態で支持され、これによって、コンクリートスラブ1と下地パネル4との間には、床下空気層2が設けられる。ここで、防振支持脚3の上部に取り付けられた防振支持脚頂部3aは、下地パネル4の内部に配置され、下部面材13にねじ止め等されることで、防振支持脚3が下地パネル4に固定され、それにより、防振支持脚3は、下地パネル4をコンクリートスラブ1上に支持する。
下地パネル4の下部面材13には、水平方向及び垂直方向に所定の間隔で中空部連通孔10が複数穿設されており、おのおのの中空部連通孔10には、ダクト94が、下地パネル4の中空部側から挿入されている。このダクト94の長軸方向の寸法は、下部面材13から突出する部分の長さが、中空部高さ14hの3/4程度までの寸法に設定され、かつ、この複数のダクト94を設けた下地パネル4のヘルムホルツレゾネータの共振周波数(共鳴周波数)が、16Hz乃至1000Hzの任意の値となるような寸法に設定されている。
以上のようなこの第9実施例の構成によれば、周知のように、下地パネル4のヘルムホルツレゾネータの共振周波数は、ダクト94の直径と長さにより調整できるので、下部面材13に穿設した中空部連通孔10の直径を規定すると、ダクト94の長さによりヘルムホルツレゾネータの共振周波数を設定することができる。そして、このヘルムホルツレゾネータの共振周波数を変化させることで床衝撃音の周波数特性を変化させることが出来る。このため、その二重床の条件に合ったダクト形状を選択することで、床衝撃音遮断性能をさらに向上させることが可能となる。
具体的には、本発明者等による「公益社団法人 日本騒音制御工学会 2012年4月 春季研究発表会講演論文集 P157 高性能乾式遮音二重床の開発」に記載した例によれば、ダクトの長さを20mmから65mmへ変化させることで重量床衝撃音の遮断性能を2デシベル高くすることができた。この場合、ダクトの長さの変化に伴って、ヘルムホルツレゾネータの共振周波数は、58ヘルツから37ヘルツへと変化している。
ここで、ヘルムホルツレゾネータ共振周波数は、いわゆる(一般的な)へルムホルツ型吸音構造の共振周波数計算値であり、本遮音二重床にそのまま適用することは出来ない。なぜなら、へルムホルツ型吸音構造が想定している吸音対象となる空間が、本遮音二重床の床下空気層であるのに対して、本遮音二重床が遮音しようとする床衝撃音が測定される空間が、床下空気層ではなく下階の室内空間であることや、ヘルムホルツ型吸音構造が吸音対象とする空気音と、本遮音二重床が遮音対象とする床衝撃音とは伝搬メカニズムが大きく異なるためである。さらに、床下空気層に発生した空気の圧力(あるいは音圧)は、コンクリートスラブ1を媒体として伝搬し、下階の床衝撃音として測定されるので、コンクリートスラブ1の構造などにより床衝撃音の周波数特性が変化する。
以上のことから、ヘルムホルツレゾネータの共振周波数は、下階の床衝撃音の周波数特を調整する際の目安となる値と考える必要がある。
このように、第9実施例によれば、ダクト94の長さ、径、ピッチ、あるいは、下地パネル4の中空部の容積を調整することで、下地パネル4全体としてのヘルムホルツレゾネータの共振周波数を制御することができるので、遮断すべき目的の衝撃音の周波数帯域に合わせた遮音二重床を構築することができる。
ここに、ヘルムホルツレゾネータの共振周波数は、次の式(II)により算出できる。

ここで、
0:ヘルムホルツレゾネータの共鳴周波数(共振周波数)(Hz)
C:光速(m/S)
S:ダクトの断面積(m2
L:ダクトの実効長さ(m:実長を若干長めに補正した値)
V:箱体の容積(m3
である。
なお、上述した各実施例及び変形例では、中空部連通孔10の形状を円形としているが、それ以外の形状、例えば、四角形や楕円形などを採用することも可能である。その場合、ダクト94の断面形状をそのダクト94が連絡する中空部連通孔10の形状に合わせるようにすると良い。
また、以上述べてきた各実施例の構成及び変形例は、矛盾しない範囲で適宜組み合わせて適用することも可能である。
本発明の遮音二重床は、工場での組み立て、あるいは製造することで、効率的な施工が可能となり、産業上(特に製造業)での利用が期待できる。また、二重床で遮音性を確保することでスラブ厚の低減に伴う建築構造体のスリム化や省資源化が可能となるため、建設業での利用が期待できる。
1 鉄筋コンクリートスラブ
1h スラブ厚さ
2 床下空気層
2h 床下空気層高さ
3 防振支持脚
4 下地パネル
4b 下地パネル(例えば、パーチクルボード)
5 床仕上げ層
6 防音フローリング
7 二重床
7h 二重床高さ
8 配管類
8b 配管用空間
9 リブ材
10 中空部連通孔
11 仕上げ層連通孔
11b 上部面材ジョイント部と仕上げ層連通孔の兼用部
12 上部面材
12b 上部面材(例えば、ベニア板15mm厚)
13 下部面材
13b 下部面材(例えば、ベニア板15mm厚)
14 中空部
14h 中空部高さ
15 両面接着テープ
16 リブの切り欠き部
17 複合フローリング
18 カーペット
19 空気圧緩衝層
19h 空気圧緩衝層の厚さ
20 通気性床仕上げ材
20b 下地フェルト
21 捨て張り合板
22 鉛直変形量
23 ユニット結合用ボルト
24 下地ユニット
25 面密度調整用レンガ
26 不織布
27 空気孔
28 目違い防止リブ
29 遮音二重床
30 水廻り段差部
31 上部面材ジョイント部
32 ユニットバス
32h ユニットバス洗い場高さ
94 ダクト

Claims (7)

  1. 床基盤と、この床基盤上に設置された複数の防振支持脚と、この複数の防振支持脚で床下空気層を隔てて所定の高さに支持された床下地と、この床下地の上面に敷設された床仕上げ層からなる二重床において、
    前記床下地が箱体からなり、該箱体の下面あるいは側面に、当該箱体の内部と前記床下空気層とを連通して前記床下空気層の圧力を緩衝する複数の空気孔を穿設するとともに、前記箱体の内部に、前記複数の空気孔をそれぞれ通過する空気を通し、ヘルムホルツレゾネータの共振周波数が16Hz乃至1000Hzのいずれかである複数のダクトを設けて床衝撃音の周波数特性を変化させたことを特徴とする遮音二重床。
  2. 前記箱体の内部には、配管類が敷設されることを特徴とする請求項1に記載の遮音二重床。
  3. 前記箱体を形成する部材の一部を着脱自在に形成し、前記配管類の更新を可能にしたことを特徴とする請求項2に記載の遮音二重床。
  4. 前記箱体の高さを部分的に圧縮した空間を設け、該空間に、配管類を敷設することを特徴とする請求項1に記載の遮音二重床。
  5. 複数の前記箱体を所定の間隔で配置し、前記箱体間の隙間に配管類を敷設することを特徴とする請求項1に記載の遮音二重床。
  6. 請求項1乃至5のいずれかの請求項に記載の遮音二重床を備えていることを特徴とする建築物。
  7. 前記床基盤が、水廻り段差を無くした構造を有することを特徴とする請求項6に記載の建築物。
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