JP5178926B2 - 荷電粒子顕微鏡及びイオン顕微鏡 - Google Patents

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Description

本発明は、荷電粒子顕微鏡及びイオン顕微鏡に関する。
電子を走査しながら試料に照射して、試料から放出される二次荷電粒子を検出すれば、試料表面の構造を観察することができる。これは走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope以下、SEMと略記)と呼ばれる。一方、イオンビームを走査しながら試料に照射して、試料から放出される二次荷電粒子を検出しても、試料表面の構造を観察することができる。これは走査イオン顕微鏡(Scanning Ion Microscope以下、SIMと略記)と呼ばれる。特に、水素、ヘリウム、などの質量の軽いイオン種を試料に照射すれば、相対的にスパッタ作用は小さくなり試料を観察するのに好適となる。
さらに、イオンビームは、電子ビームに比べて試料表面の情報に敏感である特徴を有する。これは、二次荷電粒子の励起領域が電子ビームの照射に比べて、試料表面により局在するからである。また、電子ビームでは、電子の波としての性質が無視できないため、回折効果により収差が発生する。一方、イオンビームでは、電子に比べて重いため、回折効果を無視することができる。
また、電子ビームを試料に照射して、試料を透過した電子を検出すれば、試料内部の構造を反映した情報を得ることができる。同様に、イオンビームを試料に照射して、試料を透過したイオンを検出しても、試料内部の構造を反映した情報を得ることもできる。これは透過イオン顕微鏡と呼ばれる。特に、水素、ヘリウム、などの質量の軽いイオン種を試料に照射すれば、試料を透過する割合が大きくなり観察するのに好適となる。
逆に酸素、窒素、アルゴン、クリプトン、キセノン、あるいはガリウム、インジウムなどの質量の重いイオン種を試料に照射すれば、スパッタ作用により試料を加工するのに好適となる。特に、液体金属イオン源(Liquid Metal Ion Source、以下LMIS)を用いた集束イオンビーム装置(Focused Ion Beam、以下FIB)がイオンビーム加工装置として知られている。また、プラズマイオン源やガス電界電離イオン源により、酸素、窒素、アルゴン、クリプトン、およびキセノンなどのガスイオンを生成して試料に照射するようにしても試料の加工は可能である。
ところで、試料観察を主な目的とするイオン顕微鏡では、イオン源として、ガス電界電離イオン源が好適である。ガス電界電離イオン源は先端曲率半径を100nm程度にした金属エミッタティップに水素あるいはヘリウムなどのガスを供給し、エミッタティップに数kV以上の高電圧を印加することにより、ガス分子を電界電離し、これをイオンビームとして引き出すものである。本イオン源の特徴は、エネルギ幅が狭いイオンビームを生成することができ、また、イオン発生源のサイズが小さいため、微細なイオンビームを生成することができることにある。
イオン顕微鏡では、高信号/ノイズ比で試料を観察するためには、試料上で大きな電流密度のイオンビームを得る必要がある。そのためには、電界電離イオン源のイオン放射角電流密度を大きくする必要がある。イオン放射角電流密度を大きくするためには、エミッタティップ近傍のイオン材料ガス(イオン化ガス)の分子密度を大きくすればよい。単位圧力当たりのガス分子密度は、ガスの温度に逆比例する。そのため、エミッタティップを極低温に冷却し、エミッタティップ周辺のガスの温度を低温化すればよい。それによって、エミッタティップ近傍のイオン化ガスの分子密度が大きくすることができる。エミッタティップ周辺のイオン化ガスの圧力を、例えば、10−2〜10Pa程度にすることができる。
しかしながら、イオン材料ガスの圧力を〜1Pa以上にすると、イオンビームが中性ガスと衝突して中性化し、イオン電流が低下する。また、電界電離イオン源内のガス分子の個数が多くなると、高温の真空容器壁に衝突して高温化したガス分子が、エミッタティップに衝突する頻度が高くなる。そのため、エミッタティップの温度が上昇してイオン電流が低下する。そのために、電界電離イオン源では、エミッタティップ周辺を機械的に囲うガスイオン化室が設けられる。ガスイオン化室は、エミッタティップに対向して設けられたイオン引き出し電極を利用して形成される。
特許文献1には、エミッタティップの先端に微小な突出部を形成することによって、イオン源特性が向上することが開示されている。非特許文献1には、エミッタティップ先端の微小な突出部を、エミッタティップ材料とは異なる第2金属を用いて作製することが開示されている。非特許文献2には、ヘリウムをイオン放出するガス電界電離イオン源を搭載した走査イオン顕微鏡が開示されている。
特許文献2には、ガスをイオン化する電界をエミッタの先端近傍に形成する引き出し電極と、エミッタを冷却する冷却手段と、を含むガス電界電離イオン源と、ガス電界電離イオン源から引き出したイオンを集束するレンズ系と、イオンビームを走査するビーム偏向器と、二次粒子を検出する二次粒子検出器と、走査イオン顕微鏡像を表す画像表示手段と、を含む走査荷電粒子顕微鏡が開示されている。また、上段ビーム偏向器/アライナーの偏向作用によりビームを可動ビーム制限絞り上で走査し、この走査信号と同期した信号をXY信号、二次電子検出強度をZ(輝度)信号として走査イオン顕微鏡画像を作り、画像表示手段にモニタ表示することが開示されている。さらに、このモニタ画面の走査イオン顕微鏡画像は、可動ビーム制限絞りの絞り孔に相当するイオン放射立体角で電界イオン顕微鏡像を畳み込みしてぼかした相当画像が得られること開示されている。
特許文献3には、電子銃やガリウム液体金属イオン源において、表面クリーニング手段を設け、これにより例えばカーボンナノチューブ表面あるいはガリウム表面などに付着した非晶質のコンタミ膜を除去する手法が開示されている。また、表面クリーニング手段をとしては、反応ガス導入手段と活性化手段などが開示されている。また、反応性ガスが水素の場合には水素吸蔵合金を用いる例が開示されている。しかしながら、イオンビームとなる材料のガリウムの供給方法については何ら開示が無い。
特許文献4には、荷電粒子線装置において、ガス電界電離イオン源において、非蒸発ゲッター材料に水素を吸着させて、非蒸発ゲッター材料を加熱して放出された水素をイオン化ガスとして用いることが開示されている。
また、特許文献5には、「イオン液体」を含有する溶液をエレクトロスプレー法により気相中に放出させ、必要なイオンのみをイオン源内部に輸送する構造および、イオンビームとして利用されなかったイオン液体を回収・再利用することが開示されている。
特開昭58−85242号 特開2008−140557号 特開2005−364657号 特開2009−163981号 特開2009−87594号
H.−S.Kuo、 I.−S.Hwang、 T.−Y.Fu、 J.−Y.Wu、 C.−C.Chang、 and T.T.Tsong、 Nano Letters 4(2004)2379. J.Morgan、 J.Notte、 R.Hill、and B.Ward、 Microscopy Today、 July 14(2006)24
金属エミッタ先端にナノピラミッド構造を持つガス電界電離イオン源では、次のような課題がある。本イオン源の特徴はナノピラミッドの先端の原子1個近傍から放出されたイオンを用いることである。すなわち、イオンが放出される領域が狭くイオン光源がナノメータ以下に小さい。このため、単位面積、単位立体角あたりの電流すなわち輝度が高い。
このイオン光源を同じ倍率で試料に集束するか、縮小率を数分の1程度にして試料上で集束すると例えば0.1nmから1nm程度のビーム径が得られる。すなわち、0.1nmから1nm程度の超分解能観察が実現する。
ところで、イオン顕微鏡では、高信号/ノイズ比で試料を観察するためには、試料上で大きな電流密度のイオンビームを得る必要がある。そのためには、ガス電界電離イオン源のイオン放射角電流密度を大きくする必要がある。イオン放射角電流密度を大きくするためには、エミッタティップ近傍のイオン材料ガス(イオン化ガス)の分子密度を大きくすればよい。単位圧力当たりのガス分子密度は、ガスの温度に逆比例する。そのため、エミッタティップを極低温に冷却し、エミッタティップ周辺のガスの温度を低温化すればよい。それによって、エミッタティップ近傍のイオン化ガスの分子密度が大きくすることができる。また、同様に、イオン材料ガス(イオン化ガス)の分子密度を上げるため、エミッタティップ周辺を機械的に囲うガスイオン化室を設けて、エミッタティップ周辺のイオン化ガスの圧力を、例えば、10−2〜10Pa程度に高くする。
しかしながら、ガス電界電離イオン源の全放出電流はせいぜい数100pAレベルで少ない。すなわち、エミッタティップ周辺にイオン化ガスを供給しても、そのわずかがイオンになり、その他のほとんどが、真空ポンプによって排気されてしまうのである。このため、イオン材料ガスが、イオンビームとして用いられる割合が極めて低く、原料利用効率が悪いという問題があった。本願発明者は、このことが、経済効率が悪いのみならず、資源の浪費、あるいはエネルギ利用効率の低下になり地球環境保護に反することになることに着目した。
また、イオン化ガスが水素などの反応性ガスの場合には、高圧ガスボンベなどによって必要以上のガスを装置近傍に配置したり、配管中にも高濃度のガスを保存したり、さらにはガスを大気に排出されるため、安全対策が必要になり装置コストの増大になってしまうという問題があった。これは、従来の数μAから数Aのイオン電流を生成するガスプラズマを利用したイオン源などに比べて、全放出電流がせいぜい数100pAレベルで少ないガス電界電離イオン源で顕在化する問題であることを本願発明者は見出したのである。
本発明の目的は、イオン化ガスの利用効率が高く、経済効率がよい荷電粒子顕微鏡及びイオン顕微鏡を提供することにある。
本発明は、真空容器と、該真空容器内の排気を行う第1のポンプと、前記真空容器内に配置されたエミッタティップと、該エミッタティップに対向して設けられた引き出し電極と、前記エミッタティップにガスを供給するガス供給手段と、を有する荷電粒子顕微鏡において、前記ガス供給手段は、前記エミッタティップで使用されなかったガスを循環させる第2のポンプを有し、前記第2のポンプは、前記ガスを吸着するガス吸着材料を有していることを特徴とする荷電粒子顕微鏡である。
さらに、前記ガス吸着材料の温度を制御する温度制御手段を備えることを特徴とする。
さらに、前記ガス吸着材料を加熱させる手段及び冷却する温度制御手段を備えたことを特徴とする。
さらに、前記ガス吸着材料にあらかじめガスを吸着させ、前記第1のポンプを駆動させることを特徴とする。
さらに、前記ガス吸着材料が、非蒸発ゲッター材料であることを特徴とする。
さらに、前記ガス供給手段は、前記真空容器から前記ガス吸着材料が収納されている第1の真空室へのガス流路である第1の流路と、前記第1の真空室から前記真空容器へのガス流路である第2の流路と、前記第2の流路にガスを選択的に透過するガス選択透過手段と、を有することを特徴とする。
さらに、前記第1の流路には、バルブが配置されていることを特徴とする。
さらに、前記第1の流路及び前記第2の流路には、バルブが形成されていることを特徴とする。
さらに、前記第1の真空室には第3のポンプを設けたことを特徴とする。
さらに、前記ガス選択透過手段は、水素選択透過膜であることを特徴とする。
さらに、前記ガスは、水素であることを特徴とする。
さらに、前記ガスは、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンの少なくとも1つを含むことを特徴とする。
さらに、前記エミッタティップをナノピラミッドで構成したことを特徴とする。
また、真空容器と、該真空容器内の排気を行う第1のポンプと、前記真空容器内に配置されたエミッタティップと、該エミッタティップに対向して設けられた引き出し電極と、前記エミッタティップにガスを供給するガス供給手段と、前記エミッタティップから放出されたイオンビームを集束する集束レンズと、該集束レンズを通過した前記イオンビームを偏向する偏向器と、前記イオンビームを試料に照射して、前記試料から放出される二次粒子を検出する二次粒子検出器と、を有するイオン顕微鏡において、前記ガス供給手段は、前記エミッタティップで使用されなかったガスを循環させる第2のポンプを有し、前記第2のポンプは、前記ガスを吸着するガス吸着材料を有していることを特徴とするイオン顕微鏡である。
また、真空容器と、該真空容器内の排気を行う第1のポンプと、前記真空容器内に配置されたエミッタティップと、該エミッタティップに対向して設けられた引き出し電極と、前記エミッタティップにガスを供給するガス供給手段と、前記エミッタティップから放出された荷電粒子ビームを集束する集束レンズと、該集束レンズを通過した前記荷電粒子ビームを偏向する偏向器と、前記荷電粒子ビームを試料に照射して、前記試料から放出される二次粒子を検出する二次粒子検出器と、を有する荷電粒子顕微鏡において、前記エミッタティップには、正の電圧又は負の電圧を選択的に印加することができ、前記ガス供給手段は、前記エミッタティップで使用されなかったガスを循環させる第2のポンプを有し、前記第2のポンプは、前記ガスを吸着するガス吸着材料を有していることを特徴とする荷電粒子顕微鏡である。
さらに、前記ガスは水素、ヘリウムのいずれか一つと、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素、酸素のうちの少なくともいずれか一つを加えたものであることを特徴とする。
さらに、前記エミッタティップによってネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素、酸素のうちの少なくとも一つのガスによるイオンビームを利用して試料を加工するモードと、前記エミッタティップによって水素、ヘリウムのいずれか一つのガスによるイオンビームを利用して試料を観察するモードと、前記エミッタティップによって生じた電子ビームを利用して試料を観察するモードを選択できる選択手段を備えたことを特徴とする。
なお、該エミッタティップと引き出し電極の間に電圧を印加して、前記エミッタティップにガスを供給すると、該エミッタティップ先端でガスがイオン化する。これをイオンビームとして用いるが、前記エミッタティップ周辺に供給したガスのうち、イオン化しなかったガスを、本明細書では前記エミッタティップで使用されなかったガスと表現する。
本発明によると、イオン化ガスの利用効率が高く、経済効率を良くすることができる。
本発明による荷電粒子顕微鏡の一例の概略構成図である。 本発明による荷電粒子顕微鏡のガス電界電離イオン源の一例である。 本発明による荷電粒子顕微鏡の一例の制御系の概略構成図である。 本発明による荷電粒子顕微鏡のガス電界電離イオン源の一例である。 本発明による荷電粒子顕微鏡の一例である。
本発明の一実施例は、真空容器内に、 真空容器の真空排気機構と、針状のエミッタティップと、 前記エミッタティップに対向して設けられた引き出し電極と、 前記エミッタティップ周辺にガス供給する機構と、針状のイオンエミッタ先端領域で、前記ガスをイオン化して、これをイオンビームとして引き出すガス電界電離イオン源において、 前記真空排気機構と、前記ガス供給する機構とを接続し、前記真空容器と前記ガス供給する機構の間に、前記イオン化すべきガスを吸着する材料を配置することを特徴とするガス電界電離イオン源とすることである。
この構成によると、エミッタティップ周辺にイオン源材料であるガスを供給して、針状のイオンエミッタ先端領域で、このガスをイオン化して、イオンビームとして引き出す。そしてイオン化すべきガスを吸着する材料によって、イオン化されなかったガスを吸着して、これをガスとして脱離させ、エミッタティップ周辺に供給して、針状のイオンエミッタ先端領域で、イオン化して、イオンビームとして引き出すことができる。これにより、イオン化ガスの利用効率が高く、経済効率がよく、ひいては地球環境保護と整合性の良いガス電界電離イオン源が提供されるという効果を奏する。
さらに、上記したガス電界電離イオン源において、上記イオン化すべきガスを吸着する材料の温度制御装置を備えることにより、吸着量および脱離量を制御することができるため、より効率的なイオン化ガスの利用が可能になるガス電界電離イオン源が提供されるという効果を奏する。
さらに、上記したガス電界電離イオン源において、上記イオン化すべきガスを吸着する材料の加熱および冷却装置を備えることにより、加熱により大量の脱離が可能にする、および冷却により大量の吸着が可能にすることにより効率的なイオン化ガスの利用が可能になるガス電界電離イオン源が提供されるという効果を奏する。
さらに、上記したガス電界電離イオン源において、上記イオン化すべきガスを吸着する材料に予めイオン化すべきガスを吸蔵させておいた後に、前記ガス電界電離イオン源を真空排気することにより、大量のガスを真空装置内に導入することができ、寿命の長いガス電界電離イオン源が提供されるという効果を奏する。
さらに、上記したガス電界電離イオン源において、イオン化すべきガスを吸着する材料を非蒸発ゲッター材料とすることで、真空容器の真空度を向上して、針状のイオンエミッタへの不純物ガス吸着を低下させイオンビームを安定化させ、さらにイオン化ガスの利用効率が高いガス電界電離イオン源が提供されるという効果を奏する。
さらに、上記したガス電界電離イオン源において、イオン化すべきガスを吸着する材料と、エミッタティップとの間に、イオン化すべきガスを選択的に透過する材料を配置することによって、イオン化すべきガスを吸着する材料から脱離したガスから不純物ガスをとり除くことによって、針状のイオンエミッタへの不純物ガス吸着を低下させイオンビームを安定化させ、さらにイオン化ガスの利用効率が高いガス電界電離イオン源が提供されるという効果を奏する。これは、特にイオン化すべきガスを吸着する材料から、ガスを脱離させるときに、同時に不純物ガスが放出される現象がイオンビームの安定性に影響するという従来では検討されていなかった課題を本願発明者が見出した成果である。
さらに、上記したガス電界電離イオン源において、イオン化すべきガスを吸着する材料と真空容器との間に真空遮断可能なバルブを配置することによって、イオン化すべきガスを吸着する材料から、ガスを脱離させるときに同時に放出される不純物ガスが、真空容器に導入されることを防ぎ、針状のイオンエミッタへの不純物ガス吸着を低下させイオンビームを安定化させ、さらにイオン化ガスの利用効率が高いガス電界電離イオン源が提供されるという効果を奏する。
さらに、上記したガス上記したガス電界電離イオン源において、イオン化すべきガスを吸着する材料と真空容器との間に真空遮断可能なバルブの組を少なくとも2組以上配置することによって、一つめのイオン化すべきガスを吸着する材料から、ガスを脱離させるとき、真空容器との間の真空遮断可能なバルブを閉じて、別の真空遮断可能なバルブを開けて、真空容器中の真空度を保つことができ、針状のイオンエミッタへの不純物ガス吸着を低下させイオンビームを安定化させ、さらにイオン化ガスの利用効率が高いガス電界電離イオン源が提供されるという効果を奏する。
さらに、上記したガス電界電離イオン源において、前記真空遮断可能なバルブによって区切られ、その内部にイオン化すべきガスを吸着する材料を含む真空室を真空排気する真空ポンプを配置することによって、イオン化すべきガスを吸着する材料から、ガスを脱離させるときに同時に放出される不純物ガスを排出することができ、真空容器を高真空に保持できるという効果を奏する。
さらに、上記したガス電界電離イオン源において、真空容器を排気する真空ポンプが超高真空ポンプと粗引ポンプからなり、超高真空ポンプの排気口と粗引ポンプの吸気口との間にイオン化すべきガスを選択的に透過する材料を配置することにより、イオン化すべきガスを吸着する材料からガスを脱離させ、不純物ガスをとり除いた後で、エミッタティップ周辺に供給して、針状のイオンエミッタ先端領域で、イオン化して、イオンビームとして引き出すことができる。これによって、イオン化ガスの利用効率が高いガス電界電離イオン源が提供されるという効果を奏する。
さらに、上記したガス電界電離イオン源において、イオン化すべきガスを水素とすることにより、吸着効率が高く、また吸蔵効率が高いため、イオン化ガスの利用効率がより高いガス電界電離イオン源が提供されるという効果を奏する。また、水素イオンビームを試料に照射したとき、ヘリウムなどに比べて試料ダメージが少ないという効果を奏する。
さらに、上記したガス電界電離イオン源において、エミッタティップの先端を原子で構成されるナノピラミッドとすることにより、イオン化領域が制限されるため、より高輝度のイオン源が形成され、より高分解能の試料観察ができるという効果を奏する。また、このときには全イオン電流はより少なくなるので、イオン化ガスを循環利用することで、イオン化ガスの利用効率がより高いガス電界電離イオン源が提供されるという効果を奏する。
さらに、真空容器内に、イオンを生成する針状のエミッタティップと、 前記エミッタティップに対向して設けられた引き出し電極と、前記エミッタティップを囲むように構成されたイオン化室とを有し、針状のエミッタティップからイオンビームを引き出すガス電界電離イオン源において、 前記真空容器と結合された非蒸発ゲッター材料を内蔵する第一の真空ポンプと、 非蒸発ゲッター材料を加熱する機構と、 前記真空容器と前記第一の真空ポンプとの間に真空遮断可能なバルブと、 真空遮断された前記真空ポンプを排気する第二の真空ポンプと、 前記真空ポンプと前記イオン化室とを結合する配管とを有し、 さらに前記配管途中に水素選択透過膜を有することを特徴とするガス電界電離イオン源とすることで、イオン化ガスの利用効率が高く、経済効率がよく、ひいては地球環境保護と整合性の良いガス電界電離イオン源が提供されるという効果を奏する。
さらに、上記ガス電界電離イオン源と、イオン源から放出されたイオンビームを集束する集束レンズと、該集束レンズを通過した前記イオンビームを偏向する偏向器と、前記イオンビームを試料に照射して、試料から放出される二次粒子を検出する二次粒子検出器を有することを特徴とする荷電粒子顕微鏡とすることで、イオン化ガスの利用効率が高く、経済効率がよく、ひいては地球環境保護と整合性の良い荷電粒子顕微鏡が提供されるという効果を奏する。
さらに、上記ガス電界電離イオン源において、エミッタティップ周辺にガスを供給し、ガス電界電離イオン源でイオン化しなかったガスを前記イオン化すべきガスを吸着する材料で吸着し、次に吸着したガスを再放出させ、これを前記エミッタティップ周辺に供給し、前記ガス電界電離イオン源からイオンビームを引き出し、これを用いて試料の観察または分析すること特徴とする荷電粒子顕微鏡法とすることで、イオン化ガスの利用効率が高く、経済効率がよく、ひいては地球環境保護と整合性の良い荷電粒子顕微鏡法が提供されるという効果を奏する。
さらに、エミッタティップの先端が原子で構成されるナノピラミッドであり、該針状のエミッタティップからイオンビームまたは電子を引き出すハイブリッド粒子源と、該ハイブリッド粒子源からの荷電粒子を試料上に導くための荷電粒子照射光学系と、 前記試料から放出される二次粒子を検出する二次粒子検出器と、 前記試料を透過した荷電粒子を結像する荷電粒子結像光学系と、 前記エミッタティップの近傍にガスを供給するガス供給管と、を有し、 前記ガスは水素、ヘリウムのいずれか一つと、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素、酸素のうちのいずれか一つを加えた少なくとも2種類のガス種を選択可能であり、前記針状のエミッタティップには正の高電圧、および負の高電圧電源のいずれかを選択して接続可能であるハイブリッド荷電粒子顕微鏡とすることで、水素、ヘリウムのいずれか一つのビームで試料極表面の観察ができ、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素、酸素のうちのいずれか一つのイオンビームで試料を加工し、電子ビームを試料に照射して、試料を透過した電子を検出することにより試料内部の観察が可能である荷電粒子線装置が提供されるという効果を奏する。特に、ナノピラミッドエミッタティップを用いることにより、極微小径イオンビームおよび極微小径電子ビームが得られるため、サブナノメータオーダの試料情報解析が可能な荷電粒子顕微鏡が提供されるという効果を奏する。
さらに、エミッタティップの先端が原子で構成されるナノピラミッドであり、該針状のエミッタティップからネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素、酸素のうちのいずれか一つのイオンビームを引き出し、これを試料に照射して試料を加工し、該針状のエミッタティップから水素、ヘリウムのいずれか一つのイオンビームを引き出し、試料表面を観察し、該針状のエミッタティップから電子を引き出し、これを試料に照射して試料を透過した電子を結像することにより試料内部情報を得るハイブリッド荷電粒子線顕微鏡法とすることで、試料表面、試料加工、および試料内部の観察を駆使した複合的な試料解析が可能になるという効果を奏する。特に、ナノピラミッドエミッタティップを用いることにより、極微小径イオンビームおよび極微小径電子ビームを駆使した試料情報解析が可能な荷電粒子顕微鏡法が提供されるという効果を奏する。
図1を参照して本発明による荷電粒子顕微鏡の例を説明する。以下に、イオンビーム装置として、走査イオン顕微鏡装置の第1の例を説明する。本例の走査イオン顕微鏡は、ガス電界電離イオン源1、イオンビーム照射系カラム2、試料室3、及び、冷却機構4を有する。ここでガス電界電離イオン源1、イオンビーム照射系カラム2、及び、試料室3内は真空容器である。
ガス電界電離イオン源1の構成は後で詳細に述べるが、真空容器68内に針状のエミッタティップ21、前記エミッタティップに対向して設けられ、イオンが通過する開口部27を有する引き出し電極24が含まれる。また、エミッタティップ周辺のガス圧力を高めるためイオン化室15が設けられている。
また、ガス電界電離イオン源1の真空容器68を真空排気するイオン源真空排気用ポンプ12が設けられている。真空容器68とイオン源真空排気用ポンプ12の間には真空遮断可能なバルブ69が配置されている。ざらにガス電界電離イオン源1の真空容器68にはイオン化すべきガスを吸着する材料として非蒸発ゲッター材料70を内包する真空室71が接続されている。また、非蒸発ゲッター材料には真空容器の外に加熱機構72および冷却機構73が備えられている。加熱機構は抵抗加熱、ランプ加熱などを原理としたもの、冷却機構は冷媒あるいはペルティエ素子を用いたものなどである。また、イオン源真空排気用ポンプ12と真空容器68および、非蒸発ゲッター材料70を内包する真空室71と真空容器68との間には真空遮断可能なバルブ74が配置されている。また、この非蒸発ゲッター材料を内包する真空室はガス配管25によって、イオン化室15と接続されている。また、非蒸発ゲッター材料70を内包する真空室71とイオン化室15との間には、イオン化すべきガスを選択的に透過する材料75によって遮断されており、さらに、真空遮断可能なバルブ76が配置されている。また、非蒸発ゲッター材料を内包する真空室には真空遮断可能なバルブ77を介して真空ポンプ78が接続されている。
さらにガス電界電離イオン源1は、エミッタティップ21の傾斜を変える圧電素子を用いた傾斜機構61を含み、これはエミッタベースマウント64に固定されている。これは、エミッタティップ先端の方向をイオンビーム照射軸14Aに精度良く合わせるために用いる。この角度軸調整により、イオンビームの歪みを少なくするという効果を奏する。
また、イオンビーム照射系は、上記ガス電界電離イオン源1から放出されたイオンを集束する集束レンズ5、該集束レンズを通過したイオンビーム14を制限する可動な第1アパーチャ6、該第1アパーチャを通過したイオンビームを走査あるいはアラインメントする第1偏向器35、該第1アパーチャを通過したイオンビームを偏向する第2偏向器7、該第1アパーチャを通過したイオンビーム14を制限する第2アパーチャ36、該第1アパーチャを通過したイオンビームを試料上に集束する対物レンズ8から構成される。
なお、図示していないが、イオンビーム照射系に質量分離器を導入する場合がある。また、集束レンズをイオンビーム照射軸14Aに対して傾斜できる構造を持たせる場合もある。傾斜機構は圧電素子で構成すれば比較的コンパクトに実現できる。
ここで第1偏向器とは、後で詳述するが、エミッタティップからのイオン放射パターンを得るためにイオンビームを走査する偏向器である。また、第1とは、イオン源から試料方向に最初の偏向器という意味である。ただし、第1偏向器と集束レンズ間に、第1偏向器の光学軸方向の長さに比べて短い偏向器を備え、これをイオンビームの偏向軸調整に用いる荷電粒子線装置としてもよい。
また、試料室3内には、試料9を載置する試料ステージ10、及び、二次粒子検出器11が設けられている。ガス電界電離イオン源1からのイオンビーム14は、イオンビーム照射系を経由して、試料9に照射される。試料9からの二次粒子は、二次粒子検出器11によって検出される。ここで、二次粒子検出器11で計測される信号量は、該第2アパーチャ36を通過したイオンビーム電流にほぼ比例している。
本例のイオン顕微鏡は、更に、試料室3を真空排気する試料室真空排気用ポンプ13を有する。また、図示してないが、試料室3にはイオンビームを照射したときの試料のチャージアップを中和するための電子銃や、試料近傍にエッチングやデポジションガスを供給するガス銃を設ける。
また、床20の上に配置された装置架台17の上には、防振機構19を介して、ベースプレート18が配置されている。電界電離イオン源1、カラム2、及び、試料室3は、ベースプレート18によって支持されている。
冷却機構4は、電界電離イオン源1の内部、エミッタティップ21、引き出し電極24などを冷却する。本実施例では、冷却経路はエミッタベースマウント64内部に配されている。なお、冷却機構4は例えばギフォード・マクマホン型(GM型)冷凍機を用いる場合には、床20には、図示してないがヘリウムガスを作業ガスとする圧縮機ユニット(コンプレッサ)が設置される。圧縮機ユニット(コンプレッサ)の振動は、床20を経由して、装置架台17に伝達される。装置架台17とベースプレート18との間には除振機構19が配置されており、床の高周波数の振動は電界電離イオン源1、イオンビーム照射系カラム2、真空試料室3などには伝達しにくいという特徴を持つ。従って、圧縮機ユニット(コンプレッサ)の振動が、床20を経由して、電界電離イオン源1、イオンビーム照射系カラム2、及び、試料室3に伝達しにくいという特徴を持つ。ここでは、床20の振動の原因として、冷凍機40及びコンプレッサ16を説明した。しかしながら、床20の振動の原因はこれに限定されるものではない。
また、防振機構19は、防振ゴム、バネ、ダンパ、又は、これらの組合せによって構成されてよい。
図2を参照して、本発明による荷電粒子顕微鏡のガス電界電離イオン源1の一例のエミッタティップ周辺の構成を更に詳細に説明する。本例のガス電界電離イオン源は、エミッタティップ21、1対のフィラメント22、フィラメントマウント23、及び、エミッタベースマウント64を有する。エミッタティップ21は、フィラメント22に接続されている。フィラメントマウント23は、絶縁物などを挟んで、エミッタベースマウント64に固定されている。これにより、エミッタティップ21には高電圧を印加できる。また、イオン源真空容器68には、イオンビームが通過する作動排気孔67がある。
本例の電界電離イオン源は、更に、引き出し電極24、円筒状の側壁28、及び、天板29を有する。引き出し電極24はエミッタティップ21に対向して配置され、イオンビーム14が通るための開口部27を有する。なお、引き出し電極には高電圧を印加できる。
側壁28及び天板29は、エミッタティップ21を囲んでいる。引き出し電極24、側壁28、天板29、絶縁材63、及び、フィラメントマウント23によって囲まれる空間を、ガス分子のイオン化室15と呼ぶ。なお、イオン化室はエミッタティップ周辺のガス圧力を高めるための部屋であり、その壁を構成する要素に限定されるものではない。
また、ガス分子イオン化室15にはガス供給配管25が接続されている。このガス供給配管25によって、エミッタティップ21に、イオンとなるべきガス(イオン化ガス)が供給される。本実施例では、イオンとなるべきガス(イオン化ガス)は、水素である。
ガス分子イオン化室15は、引き出し電極24の孔27とガス供給配管25を除いて、密閉されている。ガス供給配管25を経由してイオン化室内には供給されたガスは、引き出し電極の孔27とガス供給配管25以外の領域から漏洩することは無い。引き出し電極24の開口部27の面積を十分小さくすることによって、ガス分子イオン化室内を高い気密性及び密閉性を保持することができる。引き出し電極24の開口部を、例えば円形孔27とすると、その直径は、例えば、0.3mmである。それによって、ガス供給管25からガスイオン化室15にイオン化ガスを供給すると、ガスイオン化室15のガス圧力は真空容器のガス圧力よりも少なくとも1桁以上大きくなる。それによってイオンビームが真空中のガスと衝突して中性化する割合が減少し、大電流のイオンビームを生成することができる。また、作動排気孔67の直径は例えば、2mmである。これによって、イオン源から放出されたイオンビームが通過するイオン照射系の真空容器の真空度を向上することができる。これにより、イオンビームがイオン照射系真空容器内のガスに衝突して中性化する割合を減少させる。すなわち、試料に到達する電流を増加させる。なお、図2ではエミッタティップ21の冷却機構については省略した。
次に、エミッタティップ21の構造及び作製方法を説明する。先ず、直径約100〜400μm、軸方位<111>のタングステン線を用意し、その先端を鋭利に成形する。それによって、曲率半径が数10nmの先端を有するエミッタティップが得られる。このエミッタティップの先端に、別の真空容器注でイリジウムを真空蒸着させる。次に、高温加熱下にて、白金原子をエミッタティップの先端に移動させる。それによって、イリジウム原子によるナノメートルオーダのピラミッド型構造が形成される。これをナノピラミッドと呼ぶことにする。ナノピラミッドは、典型的には、先端に1個の原子を有し、その下に3個又は6個の原子の層を有し、さらにその下に10個以上の原子の層を有する。
なお、本例では、タングステンの細線を用いたがモリブデンの細線を用いることもできる。また、本例では、イリジウムの被覆を用いたが、白金、レニウム、オスミウム、パラジュウム、ロジュウム等の被覆を用いることもできる。
また、エミッタティップの先端にナノピラミッドを形成する方法として、他に、真空中での電界蒸発、ガスエッチィング、イオンビーム照射等を用いてもよい。このような方法によって、タングステン線、又はモリブデン線先端にタングステン原子又はモリブデン原子ナノピラミッドを形成することができる。例えば<111>のタングステン線を用いた場合には、先端が3個のタングステン原子で構成されるのが特徴となる。また、これとは別に、白金、イリジウム、レニウム、オスミウム、パラジュウム、ロジュウムなどの、細線の先端に真空中でのエッチング作用により同様なナノピラミッドを形成してもよい。これらの原子オーダの鋭利な先端構造をもつエミッタティップをナノティップと呼ぶことにする。
上述のように、本実施例によるガス電界電離イオン源のエミッタティップ21の特徴は、ナノピラミッドにある。エミッタティップ21の先端に形成される電界強度を調整することによって、エミッタティップの先端の1個の原子の近傍でヘリウムイオンを生成させることができる。従って、イオンが放出される領域、即ち、イオン光源は極めて狭い領域であり、ナノメータ以下である。このように、非常に限定された領域からイオンを発生させることによって、ビーム径を1nm以下とすることができる。そのため、イオン源の単位面積及び単位立体角当たりの電流値は大きくなる。これは試料上で微細径・大電流のイオンビームを得るためには重要な特性である。
なお、白金、レニウム、オスミウム、イリジウム、パラジュウム、ロジュウム、などを用いて、先端原子1個のナノピラミッドが形成された場合には、同様に単位面積・単位立体角から放出される電流すなわちイオン源輝度を大きくすることができ、イオン顕微鏡の試料上のビーム径を小さくしたり、電流を増大したりするのに好適となる。ただし、エミッタティップが十分冷却され、かつガス供給が十分な場合には、必ずしも先端を1個に形成する必要はなく、3個、6個、7個、10個などの原子数であっても十分な性能を発揮できる。特に、4個以上の10個未満の原子で先端を構成する場合には、イオン源輝度を高くでき、かつ先端原子が蒸発しにくく安定した動作が可能であることを本願発明者は見出した。
図3は、図1に示した本発明によるイオン顕微鏡の制御装置の例を示す。本例の制御装置は、ガス電界電離イオン源1を制御する電界電離イオン源制御装置91、冷凍機40を制御する冷凍機制御装置92、非蒸発ゲッター材料の加熱機構および冷却機構などの温度制御装置191、ガス電界電離イオン源周辺に配置された複数の真空遮断可能なバルブ69、74、76、77、の開閉を制御するバルブ制御装置192、集束レンズ5および対物レンズを制御するレンズ制御装置93、可動な第1アパーチャ6を制御する第1アパーチャ制御装置94、第1偏向器を制御する第1偏向器制御装置195、第2偏向器を制御する第2偏向器制御装置95、二次粒子検出器11を制御する二次電子検出器制御装置96、試料ステージ10を制御する試料ステージ制御装置97、試料室真空排気用ポンプ13を制御する真空排気用ポンプ制御装置98、及び、演算装置を含む計算処理装置99を有する。計算処理装置99は画像表示部を備える。画像表示部は、二次粒子検出器11の検出信号から生成された画像、及び、入力手段によって入力した情報を表示する。
試料ステージ10は、試料9を試料載置面内にて直交2方向へ直線移動させる機構、試料9を試料載置面に垂直な方向への直線移動させる機構、及び、試料9を試料載置面内にて回転させる機構を有する。試料ステージ10は、更に、試料9を傾斜軸周りに回転させることによりイオンビーム14の試料9への照射角度を可変できる傾斜機能を備える。これらの制御は計算処理装置99からの指令によって、試料ステージ制御装置97によって実行される。
次に、本例の電界電離イオン源の動作を説明する。ここでは、イオン化ガスは水素であるとして説明する。まず、非蒸発ゲッター材料70に十分に水素を吸蔵させる。次に、イオン源真空排気用ポンプ12によって真空容器68内を真空排気する。そして、非蒸発ゲッター材料を内包する真空室71と真空容器68との間の真空遮断可能なバルブ74を閉じる。
真空排気後、十分な時間が経過した後、冷凍機4を運転する。それによってエミッタティップ21、および引き出し電極24等が冷却される。
次に真空排気用ポンプ12と真空容器間の真空遮断可能なバルブ69を閉じる。そして、非蒸発ゲッター材料を加熱し、吸蔵されている水素ガスを脱離させる。なお、従来、非蒸発ゲッターあるいは水素吸蔵合金から脱離した水素ガスは十分な純度をもつと考えられていたが、このときに同時に脱離する酸素、窒素などの不純物ガスがイオン化室に導入されると、エミッタティップに吸着して水素イオンビームが不安定になることを、本願発明者は見出した。 そこで、非蒸発ゲッター材料あるいは水素吸蔵合金から脱離したガスを、水素を選択的に透過する膜75、例えばパラジウム膜を用いて純化して、ガス供給配管25を通して水素ガスをガス分子イオン化室15に導入する。なお、このときに非蒸発ゲッター材料の温度を制御することにより、脱離量、すなわちイオン化室の内の水素ガス圧力を適度に調整することができるという効果を奏する。
上述のように、ガス分子イオン化室内は高い真空度を有する。従って、エミッタティップ21によって生成されたイオンビームがガス分子イオン化室内の残留ガスと衝突して中性化する割合が少なくなる。そのため、大電流のイオンビームを生成することができる。また、高温の水素ガス分子が引き出し電極と衝突する個数は減少する。そのため、エミッタティップ、及び、引き出し電極の冷却温度を下げることができる。したがって、大電流のイオンビームを試料に照射できる。
次に、エミッタティップ21と引き出し電極24の間に電圧を印加する。エミッタティップの先端に強電界が形成される。ガス供給配管25から供給された水素が、強電界によってエミッタティップ面に引っ張られる。水素は、最も電界の強いエミッタティップ21の先端近傍に到達する。そこで水素が電界電離し、水素イオンビームが生成される。水素イオンビームは、引き出し電極24の孔27を経由して、イオンビーム照射系に導かれる。
ここでイオン化室の内に導入した水素ガス、すなわちエミッタティップ周辺に供給した水素ガスのうち、イオン化しなかった水素ガスを、本明細書ではエミッタティップで使用されなかったガスと表現する。
次に、本例のイオン顕微鏡のイオンビーム照射系の動作を説明する。イオンビーム照射系の動作は、計算処理装置99からの指令により制御される。ガス電界電離イオン源1によって生成されたイオンビーム14は、集束レンズ5によって集束され、ビーム制限アパーチャ6によって、ビーム径が制限され、対物レンズ8によって、集束される。集束されたビームは、試料ステージ10上の試料9の上に走査されながら、照射される。
試料から放出された二次粒子は、二次粒子検出器11によって検出する。二次粒子検出器11からの信号は、輝度変調され、計算処理装置99に送られる。計算処理装置99は、走査イオン顕微鏡像を生成し、それを画像表示部に表示する。こうして、試料表面の高分解能観察を実現することができる。
イオンビーム照射系の質量分離器を動作させて、水素原子2個以上から構成される分子イオンビームを除去して、プロトンビームのみを選択して試料に照射すると、イオンビームの径が小さくなり、より高分解能観察が実現するという効果を奏する。
また、電界電離イオン源、イオンビーム照射系および試料室などの真空チャンバ材質を磁性材料で構成させ外部磁気をシールドするとイオンビームの径が小さくなり、より高分解能観察が実現するという効果を奏する。
また、エミッタティップの傾斜を変える傾斜機構を省略した装置構成とした場合、エミッタティップ先端から放出されるイオンビームの方向に合わせて集束レンズの傾斜を調整すれば、集束レンズでのイオンビームの歪みを小さくでき、イオンビームの径が小さくなり、より高分解能観察が実現するという効果を奏する。また,エミッタティップ21の傾斜機構を省略できるので、イオン源構造を単純化できる、ひいては低コストの装置を実現できるという効果を奏する。
さらに、別の真空装置でエミッタティップからのイオン放出パターンを観察して、エミッタティップの傾斜方向を精密に調整しておき、次に本実施例装置に導入すれば、エミッタティップの傾斜を変える傾斜機構を省略するか、あるいは、傾斜範囲を小さくすることができる。このことによりイオン源構造を単純化できる、ひいては低コストの装置を実現できるという効果を奏する。
ところで、ガス分子イオン化室に導入された水素ガスは、一部はイオンビームとして試料に照射されるが、水素ガスのほとんどは真空ポンプによって排気されてしまう。そこで、本実施例では、まず、非蒸発ゲッター材料70を内包する真空室71とイオン化室15との間の真空遮断可能なバルブ76を閉じ、次に、非蒸発ゲッター材料を内包する真空室71とガス電界電離イオン源の真空容器68の間の真空遮断可能なバルブ74を開ける。また、真空ポンプとガス電界電離イオン源の真空容器の間の真空遮断可能なバルブも閉める。すると、真空容器内の水素ガスは非蒸発ゲッター材料に吸着される。このときに非蒸発ゲッター材料を冷却しておくと吸着の効率が高くなり、水素ガスの回収効率、ひいては利用効率が高くなるという効果を奏する。また、このとき、非蒸発ゲッター材料を内包する真空室71は水素のみならず窒素および酸素などの不純物ガスなども高効率に吸着する。すなわち、真空容器68の真空ポンプとして動作させることになる。これにより、エミッタティップ21に不純物ガスが吸着しないようにしてイオンビームを安定化するという効果を奏する。また、このときに非蒸発ゲッター材料を内包する真空室71には、酸素、窒素などの不純物ガスが残留しているので、これを真空ポンプによって排気する。また、非蒸発ゲッター材料の冷却機構は、ガス脱離モードの加熱から、急速にガス吸着モードに転換させることができる、すなわち、時間的に効率の良い装置動作が可能になるという効果を奏する。
非蒸発ゲッター材料に十分水素が回収された場合には、上述したように非蒸発ゲッター材料を内包する真空室とガス電界電離イオン源の真空容器の間の真空遮断可能なバルブ74を閉じて、非蒸発ゲッター材料を加熱すれば吸収された水素ガスを脱離させる。なお、このときに同時に非蒸発ゲッター材料を内包する真空室も加熱すると、水素ガスあるいは不純物ガスを真空室の壁に吸着させること少ないため、より効率的な水素ガスの回収が可能になる。そして、回収した水素ガスを、最終的にイオン化室に導入すれば、水素イオンビーム放出ができることになる。これにより、水素ガスの循環利用が可能になる。すなわち、水素ガスが大気に排気される量を少なくして、その多くを水素イオンビームとして利用できるのである。
また、作動排気孔67の直径は例えば、2mmと小さくする。これによって、イオン源からイオン照射系の真空容器へ通過する水素ガスの量を少なくすることができる、すなわち,水素ガスの回収効率を向上させるという効果を奏する。特に作動排気孔のコンダクタンスを水素ガス回収ポンプのコンダクタンスと比べて少なくとも2桁以上小さくすると効率の良い回収が可能になる。
以上の実施例によると、イオン化ガスの利用効率が高く、経済効率がよく、ひいては地球環境保護と整合性の良いガス電界電離イオン源が提供されるという効果を奏する。
さらに、以上の実施例によると、上記イオン化すべきガスを吸着する材料の温度制御装置を備えることにより、吸着量および脱離量を制御することができるため、より効率的なイオン化ガスの利用が可能になるガス電界電離イオン源が提供されるという効果を奏する。
さらに、以上の実施例によると、上記イオン化すべきガスを吸着する材料の加熱および冷却装置を備えることにより、加熱により大量の脱離が可能にする、および冷却により大量の吸着が可能にすることにより効率的なイオン化ガスの利用が可能になるガス電界電離イオン源が提供されるという効果を奏する。
さらに、以上の実施例によると、上記イオン化すべきガスを吸着する材料に予めイオン化すべきガスを吸蔵させておいた後に、前記ガス電界電離イオン源を真空排気することにより、大量のガスを真空装置内に導入することができ、寿命の長いガス電界電離イオン源が提供されるという効果を奏する。
さらに、以上の実施例によると、イオン化すべきガスを吸着する材料を非蒸発ゲッター材料とすることで、真空容器の真空度を向上して、針状のイオンエミッタへの不純物ガス吸着を低下させイオンビームを安定化させ、さらにイオン化ガスの利用効率が高いガス電界電離イオン源が提供されるという効果を奏する。
さらに、以上の実施例によると、イオン化すべきガスを吸着する材料と、エミッタティップとの間に、イオン化すべきガスを選択的に透過する材料を配置することによって、イオン化すべきガスを吸着する材料から脱離したガスから不純物ガスをとり除くことによって、針状のイオンエミッタへの不純物ガス吸着を低下させイオンビームを安定化させ、さらにイオン化ガスの利用効率が高いガス電界電離イオン源が提供されるという効果を奏する。これは、特にイオン化すべきガスを吸着する材料から、ガスを脱離させるときに、同時に不純物ガスが放出される現象がイオンビームの安定性に影響するという従来では検討されていなかった課題を本願発明者が見出した成果である。
さらに、以上の実施例によると、イオン化すべきガスを吸着する材料と真空容器との間に真空遮断可能なバルブを配置することによって、イオン化すべきガスを吸着する材料から、ガスを脱離させるときに同時に放出される不純物ガスが、真空容器に導入されることを防ぎ、針状のイオンエミッタへの不純物ガス吸着を低下させイオンビームを安定化させ、さらにイオン化ガスの利用効率が高いガス電界電離イオン源が提供されるという効果を奏する。
さらに、以上の実施例によると、前記真空遮断可能なバルブによって区切られ、その内部にイオン化すべきガスを吸着する材料を含む真空室を真空排気する真空ポンプを配置することによって、イオン化すべきガスを吸着する材料から、ガスを脱離させるときに同時に放出される不純物ガスを排出することができ、真空容器を高真空に保持できるという効果を奏する。
さらに、以上の実施例によると、イオン化すべきガスを水素とすることにより、吸着効率が高く、また吸蔵効率が高いため、イオン化ガスの利用効率がより高いガス電界電離イオン源が提供されるという効果を奏する。また、水素イオンビームを試料に照射したとき、ヘリウムなどに比べて試料ダメージが少ないという効果を奏する。
さらに、以上の実施例によると、上記したガス電界電離イオン源において、エミッタティップの先端を原子で構成されるナノピラミッドとすることにより、イオン化領域が制限されるため、より高輝度のイオン源が形成され、より高分解能の試料観察ができるという効果を奏する。また、このときには全イオン電流はより少なくなるので、イオン化ガスを循環利用することで、イオン化ガスの利用効率がより高いガス電界電離イオン源が提供されるという効果を奏する。
さらに、以上の実施例によると、真空容器内に、イオンを生成する針状のエミッタティップと、 前記エミッタティップに対向して設けられた引き出し電極と、前記エミッタティップを囲むように構成されたイオン化室とを有し、針状のエミッタティップからイオンビームを引き出すガス電界電離イオン源において、 前記真空容器と結合された非蒸発ゲッター材料を内蔵する第一の真空ポンプと、 非蒸発ゲッター材料を加熱する機構と、 前記真空容器と前記第一の真空ポンプとの間に真空遮断可能なバルブと、 真空遮断された前記真空ポンプを排気する第二の真空ポンプと、 前記真空ポンプと前記イオン化室とを結合する配管とを有し、 さらに前記配管途中に水素選択透過膜を有することを特徴とするガス電界電離イオン源とすることで、イオン化ガスの利用効率が高く、経済効率がよく、ひいては地球環境保護と整合性の良いガス電界電離イオン源が提供されるという効果を奏する。
さらに、以上の実施例によると、上記ガス電界電離イオン源と、イオン源から放出されたイオンビームを集束する集束レンズと、該集束レンズを通過した前記イオンビームを偏向する偏向器と、前記イオンビームを試料に照射して、試料から放出される二次粒子を検出する二次粒子検出器を有することを特徴とする荷電粒子顕微鏡とすることで、イオン化ガスの利用効率が高く、経済効率がよく、ひいては地球環境保護と整合性の良い荷電粒子顕微鏡が提供されるという効果を奏する。
さらに、以上の実施例によると、上記ガス電界電離イオン源において、エミッタティップ周辺にガスを供給し、ガス電界電離イオン源でイオン化しなかったガスを前記イオン化すべきガスを吸着する材料で吸着し、次に吸着したガスを再放出させ、これを前記エミッタティップ周辺に供給し、前記ガス電界電離イオン源からイオンビームを引き出し、これを用いて試料の観察または分析すること特徴とする荷電粒子顕微鏡法とすることで、イオン化ガスの利用効率が高く、経済効率がよく、ひいては地球環境保護と整合性の良い荷電粒子顕微鏡法が提供されるという効果を奏する。
なお、本実施例では、水素ガスについて述べたが、酸素、窒素、ヘリウム、アルゴンなどを、それぞれのガスを効率よく吸着する材料を用いれば、その他のガスでも本発明は適用可能である。
次に、上記ガス電界電離イオン源について、イオン化すべきガスを吸着する材料を内包する真空室と、真空容器との間に真空遮断可能なバルブの組を少なくとも2組もつ実施例について、図4を用いて説明する。
尚、実施例1と重複する内容についての説明は省略する。
本実施例では、図に示すように、図4の右側および左側に、イオン化すべきガスを吸着する材料を内包する真空室71と、真空容器との間に真空遮断可能なバルブ74を配置する。片側のオン化すべきガスを吸着する材料を使用する方法は上記で述べた方法と同じである。すなわち、第一の非蒸発ゲッター材料70を加熱し、吸蔵されている水素ガスを脱離させ、水素ガスを選択的に透過する膜を用いてこれを純化して、ガス供給配管25を通して水素ガスをガス分子イオン化室15に導入する。次に、エミッタティップ21と引き出し電極24の間に電圧を印加して水素イオンビームを生成させる。
その後は、第一の非蒸発ゲッター材料を内包する真空室とガス電界電離イオン源の真空容器の間の真空遮断可能なバルブ74と、第二の非蒸発ゲッター材料を内包する真空室とガス電界電離イオン源の真空容器の間の真空遮断可能なバルブ84とは交互に開閉を繰り返して動作させる。すなわち、第一の非蒸発ゲッター材料70が真空ポンプとして動作している時は、第一の非蒸発ゲッター材料を内包する真空室とガス電界電離イオン源の真空容器の間の第一の真空遮断可能なバルブ74は開けて、第二の非蒸発ゲッター材料80は水素ガス脱離モードであり、第二の真空遮断可能なバルブ84は閉じる。逆に、第一の非蒸発ゲッター材料を水素ガス脱離モードとして動作させている時は、第一の真空遮断可能なバルブ74は閉じて、第二の非蒸発ゲッター材料が真空ポンプとして動作している時は、第二の真空遮断可能なバルブ84は開ける。
以上の実施例によると、上記したガス上記したガス電界電離イオン源において、イオン化すべきガスを吸着する材料と真空容器との間に真空遮断可能なバルブの組を少なくとも2組以上配置することによって、一つめのイオン化すべきガスを吸着する材料から、ガスを脱離させるとき、真空容器との間の真空遮断可能なバルブを閉じて、別の真空遮断可能なバルブを開けて、真空容器中の真空度を保つことができ、針状のイオンエミッタへの不純物ガス吸着を低下させイオンビームを安定化させ、さらにイオン化ガスの利用効率が高いガス電界電離イオン源が提供されるという効果を奏する。
以上の実施例によると、イオン化ガスの利用効率が高く、経済効率がよく、ひいては地球環境保護と整合性の良いガス電界電離イオン源が提供されるという効果を奏する。
次に、エミッタティップの先端が原子で構成されるナノピラミッドであり、該針状のエミッタティップからイオンビームまたは電子を引き出すハイブリッド粒子源を用いて、試料表面、試料加工、および試料内部の観察を駆使した複合的な試料解析が可能な荷電粒子顕微鏡について、図5を用いて説明する。
尚、実施例1、2と重複する内容についての説明は省略する。
本実施例の荷電粒子顕微鏡は、エミッタティップの先端が原子で構成されるナノピラミッドであり、該針状のエミッタティップからイオンビームまたは電子を引き出すハイブリッド粒子源301、電子ビームおよびイオンビームを試料に照射するハイブリッド照射系302、試料台303、試料から放出される二次粒子を検出する二次粒子検出器304、および試料を透過した荷電粒子を結像する光学系305などからなる。また、エミッタティップには、正の高電圧、および負の高電圧電源のいずれかを選択して接続可能である。すなわち、正の高電圧を印加した場合には正のイオンビーム、負の高電圧を印加した場合には、電子ビームをエミッタティップから引き出すことができる。また、ハイブリッド粒子源には、少なくとも2種類以上のガスが導入可能である。すなわち、水素、ヘリウムのいずれか一つと、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素、酸素のうちのいずれか一つを加えた少なくとも2種類のガス種を導入可能である。
本荷電粒子顕微鏡では、エミッタティップからネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素、酸素のうちのいずれか一つのイオンビームを引き出し、これを試料に照射して試料を加工できる。また、該針状のエミッタティップから水素、ヘリウムのいずれか一つのイオンビームを引き出し、試料表面を観察することができる。また、該針状のエミッタティップから電子を引き出し、これを試料に照射して試料を透過した電子を結像することにより試料内部情報を得ることができる。これにより、試料を大気に暴露することなく、試料の複合的な解析が可能になる。
以上の実施例では、エミッタティップの先端が原子で構成されるナノピラミッドであり、該針状のエミッタティップからイオンビームまたは電子を引き出すハイブリッド粒子源と、該ハイブリッド粒子源からの荷電粒子を試料上に導くための荷電粒子照射光学系と、 前記試料から放出される二次粒子を検出する二次粒子検出器と、 前記試料を透過した荷電粒子を結像する荷電粒子結像光学系と、 前記エミッタティップの近傍にガスを供給するガス供給管と、を有し、 前記ガスは水素、ヘリウムのいずれか一つと、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素、酸素のうちのいずれか一つを加えた少なくとも2種類のガス種を選択可能であり、前記針状のエミッタティップには正の高電圧、および負の高電圧電源のいずれかを選択して接続可能であるハイブリッド荷電粒子顕微鏡とすることで、水素、ヘリウムのいずれか一つのビームで試料極表面の観察ができ、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素、酸素のうちのいずれか一つのイオンビームで試料を加工し、電子ビームを試料に照射して、試料を透過した電子を検出することにより試料内部の観察が可能である荷電粒子顕微鏡が提供されるという効果を奏する。特に、ナノピラミッドエミッタティップを用いることにより、極微小径イオンビームおよび極微小径電子ビームが得られるため、サブナノメータオーダの試料情報解析が可能な荷電粒子顕微鏡が提供されるという効果を奏する。
さらに、以上の実施例では、エミッタティップの先端が原子で構成されるナノピラミッドであり、該針状のエミッタティップからネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素、酸素のうちのいずれか一つのイオンビームを引き出し、これを試料に照射して試料を加工し、該針状のエミッタティップから水素、ヘリウムのいずれか一つのイオンビームを引き出し、試料表面を観察し、該針状のエミッタティップから電子を引き出し、これを試料に照射して試料を透過した電子を結像することにより試料内部情報を得るハイブリッド荷電粒子線顕微鏡法とすることで、試料表面、試料加工、および試料内部の観察を駆使した複合的な試料解析が可能になるという効果を奏する。特に、ナノピラミッドエミッタティップを用いることにより、極微小径イオンビームおよび極微小径電子ビームを駆使した試料情報解析が可能な荷電粒子顕微鏡法が提供されるという効果を奏する。
1…ガス電界電離イオン源、2…イオンビーム照射系カラム、3…試料室、4…冷却機構、5…集束レンズ、6…可動アパーチャ、7…偏向器、8…対物レンズ、9…試料、10…試料ステージ、11…二次粒子検出器、12…イオン源真空排気用ポンプ、13…試料室真空排気用ポンプ、14…イオンビーム、14A…光軸、15…ガス分子イオン化室、16…コンプレッサ、17…装置架台、18…ベースプレート、19…防振機構、20…床、21…エミッタティップ、22…フィラメント、23…フィラメントマウント、24…引き出し電極、25…ガス供給配管、27…開口部、28…側壁、29…天板、35…第1偏向器、36…第2アパーチャ、64…エミッタベースマウント、67…差動排気孔、68…真空容器、69…真空遮断可能なバルブ、70…非蒸発ゲッター材料、71…真空室、72…加熱機構、73…冷却機構、74…真空遮断可能なバルブ、75…イオン化すべきガスを選択的に透過する材料、76…真空遮断可能なバルブ、77…真空遮断可能なバルブ、78…真空ポンプ、91…電界電離イオン源制御装置、92…冷凍機制御装置、93…レンズ制御装置、94…第一アパーチャ制御装置、95…イオンビーム走査制御装置、96…二次電子検出器制御装置、97…試料ステージ制御装置、98…真空排気用ポンプ制御装置、99…計算処理装置、195…第一偏向器制御装置、196…温度制御装置、

Claims (17)

  1. 真空容器と、
    該真空容器内の排気を行う第1のポンプと、
    前記真空容器内に配置されたエミッタティップと、
    該エミッタティップに対向して設けられた引き出し電極と、
    前記エミッタティップにガスを供給するガス供給手段と、
    を有する荷電粒子顕微鏡において、
    前記ガス供給手段は、前記エミッタティップで使用されなかったガスを循環させる第2のポンプを有し、
    前記第2のポンプは、前記ガスを吸着するガス吸着材料を有していることを特徴とする荷電粒子顕微鏡。
  2. 請求項1に記載の荷電粒子顕微鏡において、
    前記ガス吸着材料の温度を制御する温度制御手段を備えることを特徴とする荷電粒子顕微鏡。
  3. 請求項1に記載の荷電粒子顕微鏡において、
    前記ガス吸着材料を加熱させる手段及び冷却する温度制御手段を備えたことを特徴とする荷電粒子顕微鏡。
  4. 請求項1に記載の荷電粒子顕微鏡において、
    前記ガス吸着材料にあらかじめガスを吸着させ、前記第1のポンプを駆動させることを特徴とする荷電粒子顕微鏡。
  5. 請求項1に記載の荷電粒子顕微鏡において、
    前記ガス吸着材料が、非蒸発ゲッター材料であることを特徴とする荷電粒子顕微鏡。
  6. 請求項1に記載の荷電粒子顕微鏡において、
    前記ガス供給手段は、前記真空容器から前記ガス吸着材料が収納されている第1の真空室へのガス流路である第1の流路と、
    前記第1の真空室から前記真空容器へのガス流路である第2の流路と、
    前記第2の流路にガスを選択的に透過するガス選択透過手段と、
    を有することを特徴とする荷電粒子顕微鏡。
  7. 請求項6に記載の荷電粒子顕微鏡において、
    前記第1の流路には、バルブが配置されていることを特徴とする荷電粒子顕微鏡。
  8. 請求項6に記載の荷電粒子顕微鏡において、
    前記第1の流路及び前記第2の流路には、バルブが形成されていることを特徴とする荷電粒子顕微鏡。
  9. 請求項6に記載の荷電粒子顕微鏡において、
    前記第1の真空室には第3のポンプを設けたことを特徴とする荷電粒子顕微鏡。
  10. 請求項6に記載の荷電粒子顕微鏡において、
    前記ガス選択透過手段は、水素選択透過膜であることを特徴とする荷電粒子顕微鏡。
  11. 請求項1に記載の荷電粒子顕微鏡において、
    前記ガスは、水素であることを特徴とする荷電粒子顕微鏡。
  12. 請求項1に記載の荷電粒子顕微鏡において、
    前記ガスは、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンの少なくとも1つを含むことを特徴とする荷電粒子顕微鏡。
  13. 請求項1に記載の荷電粒子顕微鏡において、
    前記エミッタティップをナノピラミッドで構成したことを特徴とする荷電粒子顕微鏡。
  14. 真空容器と、
    該真空容器内の排気を行う第1のポンプと、
    前記真空容器内に配置されたエミッタティップと、
    該エミッタティップに対向して設けられた引き出し電極と、
    前記エミッタティップにガスを供給するガス供給手段と、
    前記エミッタティップから放出されたイオンビームを集束する集束レンズと、
    該集束レンズを通過した前記イオンビームを偏向する偏向器と、
    前記イオンビームを試料に照射して、前記試料から放出される二次粒子を検出する二次粒子検出器と、
    を有するイオン顕微鏡において、
    前記ガス供給手段は、前記エミッタティップで使用されなかったガスを循環させる第2のポンプを有し、
    前記第2のポンプは、前記ガスを吸着するガス吸着材料を有していることを特徴とするイオン顕微鏡。
  15. 真空容器と、
    該真空容器内の排気を行う第1のポンプと、
    前記真空容器内に配置されたエミッタティップと、
    該エミッタティップに対向して設けられた引き出し電極と、
    前記エミッタティップにガスを供給するガス供給手段と、
    前記エミッタティップから放出された荷電粒子ビームを集束する集束レンズと、
    該集束レンズを通過した前記荷電粒子ビームを偏向する偏向器と、
    前記荷電粒子ビームを試料に照射して、前記試料から放出される二次粒子を検出する二次粒子検出器と、
    を有する荷電粒子顕微鏡において、
    前記エミッタティップには、正の電圧又は負の電圧を選択的に印加することができ、
    前記ガス供給手段は、前記エミッタティップで使用されなかったガスを循環させる第2のポンプを有し、
    前記第2のポンプは、前記ガスを吸着するガス吸着材料を有していることを特徴とする荷電粒子顕微鏡。
  16. 請求項15に記載の荷電粒子顕微鏡において、
    前記ガスは水素、ヘリウムのいずれか一つと、
    ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素、酸素のうちの少なくともいずれか一つを加えたものであることを特徴とする荷電粒子顕微鏡。
  17. 請求項15に記載の荷電粒子顕微鏡において、
    前記エミッタティップによってネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素、酸素のうちの少なくとも一つのガスによるイオンビームを利用して試料を加工するモードと、
    前記エミッタティップによって水素、ヘリウムのいずれか一つのガスによるイオンビームを利用して試料を観察するモードと、
    前記エミッタティップによって生じた電子ビームを利用して試料を観察するモードを選択できる選択手段を備えたことを特徴とする荷電粒子顕微鏡。
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