以下この発明による電動パワーステアリング装置のいくつかの実施の形態について図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明による電動パワーステアリング装置の実施の形態1の全体構成図である。この実施の形態1に係る電動パワーステアリング装置は、自動車用の電動パワーステアリング装置であり、ステアリングハンドル1と、ステアリングシャフト2と、トルクセンサ3と、車速センサ4と、ECU5と、電気モータ6と、減速ギヤ7と、ラックピニオン機構8と、自動車の一対の前輪9と、車載バッテリ10を含んでいる。
ステアリングハンドル1は運転者による操舵トルクを受けて回転される。この操舵トルクは、ステアリングシャフト2を通じてラックピニオン機構8に伝達され、一対の前輪9を操舵する。トルクセンサ3は、ステアリングシャフト2に設けられ、操舵トルクを検出し、操舵トルク信号を出力する。このトルクセンサ3は操舵トルク検出手段を構成する。車速センサ4は、自動車の車速を検出し、車速信号を出力する。この車速センサ4は車速検出手段を構成する。電気モータ6は、減速ギヤ7を介してステアリングシャフト2に結合され、操舵トルクを補助する補助トルクをステアリングシャフト2に与える。ECU5は車載電子制御ユニットである。このECU5は、車載バッテリ10から給電を受けて電気モータ6に給電を行なう。このECU5には、トルクセンサ3で検出された操舵トルク信号と、車速センサ4で検出された車速信号が入力される。
図2は、ECU5の内部構成を示すブロック図である。このECU5は、インターフェイス回路501、502と、マイクロコンピュータ503と、リレー駆動回路504と、リレー505と、モータ電流検出抵抗506と、モータ電流検出回路507と、FET駆動回路508と、モータ駆動回路509と、モータ端子電圧検出回路510a、510bを含んでいる。インターフェイス回路501は、トルク信号入力用インターフェイス回路であり、トルクセンサ3に接続され、トルクセンサ3で検出された操舵トルク信号をマイクロコンピュータ503に入力する。インターフェイス502は、車速信号入力用インターフェイス回路であり、車速センサ4に接続され、車速センサ4で検出された車速信号をマイクロコンピュータ503に入力する。
モータ駆動回路509は、4つのトランジスタ509a〜509dをブリッジ回路として構成したものであり、このブリッジ回路の一方の枝路には、トランジスタ509a、509cが直列接続され、またその他方の枝路には、トランジスタ509b、509dが直列接続されている。トランジスタ509a、509cの接続点は、電気モータ6の端子61に接続され、トランジスタ509b、509dの接続点は、電気モータ6の端子62に接続される。トランジスタ509a、509bは、モータ電流検出抵抗506とリレー505を介して車載バッテリ10のプラス端子に接続される。トランジスタ509c、509dは、車載バッテリ10のマイナス端子に直接接続される。トランジスタ509a〜509dは、例えばFETにより構成される。
FET駆動回路508は、PWM制御回路として構成され、モータ駆動回路509の各トランジスタ509a〜509dのそれぞれにゲート駆動信号を供給する。このFET駆動回路508は、マイクロコンピュータ503により制御され、電気モータ6の駆動方向を選択して、電気モータ6が発生する補助トルクの方向を選択しながら、電気モータ6をPWM制御し、電気モータ6が発生する補助トルクの大きさを制御する。
モータ電流検出回路507は、モータ電流検出抵抗506の両端電圧に基づいて、電気モータ6に流れるモータ電流(実電流)Imrの検出電流値Imdを出力し、マイクロコンピュータ503に入力する。モータ端子電圧検出回路510aは、電気モータ6の端子61に接続され、この端子61の端子電圧V1を検出し、マイクロコンピュータ503に入力する。モータ端子電圧検出回路510bは、電気モータ6の端子62に接続され、この端子62の端子電圧V2を検出し、マイクロコンピュータ503に入力する。モータ端子電圧検出回路510a、510bは、モータ端子電圧検出手段を構成する。リレー駆動回路504は、マイクロコンピュータ503により制御され、リレー505をオン、オフ制御する。
図3は、マイクロコンピュータ503により実行されるメイン処理S100を示すフローチャートである。このメイン処理S100は、ステップS101〜S112を含む。このメイン処理S100は、所定の周期で繰返し実行される。これらのステップS101〜S112について、以下に説明する。
まず、ステップS101では、ECU5の初期チェックが実行される。このステップS101による初期チェックが完了した後、次のステップS102に進む。ステップS102では、リレー駆動回路504によりリレー505をオンにする。次のステップS103では、インターフェイス回路501により、トルクセンサ3で検出した操舵トルク信号を入力し、次のステップS104では、インターフェイス回路502により、車速センサ3で検出した車速信号を入力する。
次のステップS105では、目標電流演算処理が実行される。このステップS105では、電気モータ6のモータ実電流Imrに対する目標電流値Imtが演算される。この目標電流値Imtは、ステップS103、S104で入力された操舵トルク信号と車速信号に基づいて演算される。ステップS105は、目標電流決定手段を構成する。
図4は、ステップS105で演算される目標電流値Imtの特性図である。縦軸は目標電流値Imtを示し、横軸は操舵トルクを示す。目標電流値Imtと操舵トルクのプラス領域は、ステアリングハンドル1が右方向に操舵された領域を示し、また、目標電流値Imtと操舵トルクのマイナス領域は、ステアリングハンドル1が左方向に操舵された領域を示す。図4の第1象限には、ステアリングハンドル1が右方向に操舵された場合における目標電流値Imtと操舵トルクとの関係が、車速をパラメータとして示される。また図4の第3象限には、ステアリングハンドル1が左方向に操舵された場合における目標電流値Imtと操舵トルクとの関係が、車速をパラメータとして示される。
ステップS105の次のステップS106では、モータ電流検出回路507で検出された検出電流値Imdが入力される。次のステップS107では、ステップS105で演算し決定された目標電流値Imtと、ステップS106で入力された検出電流値Imdとに基づいて、電気モータ6のモータ電流制御を実行する。このステップS107は、モータ電流制御手段を構成する。
図5は、ステップS107により構成されるモータ電流制御手段の詳細を示すブロック図である。このモータ電流制御手段は、偏差演算処理手段520と、比例演算処理手段521と、積分演算処理手段522と、加算処理手段523と、デューティ変換処理手段524を含んだPI制御器である。偏差演算処理手段520は、目標電流値Imtと検出電流値Imdとの偏差ΔIを算出し、この偏差ΔIを比例演算処理手段521と積分演算処理手段522に入力する。比例演算処理手段521は偏差ΔIに対する比例演算を行ない、積分演算処理手段522は偏差ΔIに対する積分演算を行なう。加算処理手段523は、比例演算処理手段521による比例演算結果と、積分演算処理手段522による積分演算結果とを加算し、デューティ変換処理手段524は、加算処理手段523による加算結果に基づいてPWM制御のデューティ比Dutyを算出する。デューティ変換処理手段524は、モータ駆動手段を構成する。
モータ6の制御において、電気モータ6を右方向に駆動する場合には、デューティ変換処理手段524で算出されたPWM制御のデューティ比Dutyでトランジスタ509aをPWM駆動し、併せてトランジスタ509dを連続オンとし、残りのトランジスタ509b、509cを連続オフにする。この状態では、電気モータ6の端子61から端子62に向かって流れるモータ実電流Imrをフィードバック制御することができる。また、電気モータ6を左方向に駆動する場合には、デューティ変換処理手段524で算出されたPWM制御のデューティ比Dutyでトランジスタ509bをPWM駆動し、併せてトランジスタ509cを連続オンとし、残りのトランジスタ509a、509dを連続オフにする。この状態では、電気モータ6の端子62から端子61に向かって流れるモータ実電流Imrをフィードバック制御することができる。このフィードバック制御されたモータ実電流Imrにより、電気モータ6は補助トルクを発生し、この補助トルクは減速ギヤ7を介してステアリングシャフト2に伝達される。この電気モータ6による補助トルクは、ステアリングハンドル1に対する操舵トルクをアシストし、ステアリングハンドル1に対する操舵トルクを軽減することができる。
ステップS107の次のステップS108では、モータ端子電圧検出回路510a、510bから、電気モータ6の端子61、端子62におけるモータ端子電圧V1、V2が入力される。次のステップS109では、異常判定処理が実行される。このステップS109では、ステップS105で演算された目標電流値Imtと、ステップS108で入力された端子電圧V1、V2と、ステップS106で入力された検出電流値Imdとを用いて、モータ電流検出回路507の異常状態ABNが判定される。このステップS109は、異常判定手段を構成する。
ステップS109で判定されるモータ電流検出回路507の異常状態ABNとして、モータ電流検出回路507の地絡故障を想定する。このモータ電流検出回路507の地絡故障は、具体的には、マイクロコンピュータ503に対して検出電流値Imdを出力するモータ電流検出回路507の出力端子を含む出力部分の地絡故障である。この地絡故障が発生すると、検出電流値Imdが0[A]に固定される。このモータ電流検出回路507の地絡故障では、ステアリングハンドル1が右および左のいずれの方向に操舵されても、検出電流値Imdが0[A]に固定される。
ステップS109の次のステップS110では、ステップS109における異常判定により、異常確定フラグFlag2が1にセットされているかどうかが判定される。異常確定フラグFlag2が1にセットされ、ステップS110の判定結果がYesになれば、ステップS111、S112へ分岐し、ステップS111でモータ駆動回路509のすべてのトランジスタ509a〜509dをオフにし、ステップS112でリレー駆動回路504によりリレー505をオフとする。この状態は、ECU5の電源をオフとするまで維持される。異常確定フラグFlag2が0であり、ステップS110の判定結果がNoになれば、ステップS103にリターンし、ステップS103〜S110の動作を繰り返す。
さて、図6は、図3のステップS109で実行される異常判定処理を示すフローチャートである。この異常判定処理S109も、所定の周期で繰返し実行される。この異常判定処理は、ステップS001、S002、S003を含む。ステップS002は異常検出処理を実行するステップであり、異常検出手段を構成する。このステップS002では、図3のステップS105で演算された目標電流値Imtと、ステップS106で入力された検出電流値Imdを用いて、目標電流値Imtが所定値Ithtを超え、しかも検出電流値Imdが所定値Ithd以下の状態をモータ電流検出回路507の異常状態ABNとして検出し、この異常状態ABNにおいて、異常検出カウンタcnt3をカウントアップする。ステップS003は異常確定処理を実行するステップであり、異常確定手段を構成する。このステップS003では、異常検出カウンタcnt3のカウント値、すなわちモータ電流検出回路507の異常状態ABNの積算時間値CIが、異常確定時間Tth3に達したときに、異常確定フラグFlag2を1にセットする異常確定処理が実行される。ステップS001は、異常確定の停止判定を実行するステップであり、異常確定の停止判定手段を構成する。このステップS001では、異常検出カウンタcnt3をクリアするか否かを判定し、ステップS003における異常確定を強制的に停止させるか否かを判定する異常確定の停止判定処理を実行する。
図7は、ステップS001における停止判定処理の詳細を示すフローチャートである。このステップS001における停止判定処理も所定の周期で繰返し実行される。この図7のフローチャートは、ステップS031〜S040を含んでいる。まず、ステップS031では、モータ印加電圧Vmが算出される。このモータ印加電圧Vmは、ステップS108で入力されたモータ端子電圧V1、V2を用いて、それらの差の電圧(V1−V2)をモータ印加電圧Vmとして算出する。すなわち、Vm=V1−V2である。ステップS031は、モータ印加電圧検出手段を構成する。
ステップS031の次のステップS032では、第1の停止判定条件Vm>Vmth1が成立しているか否かが判定される。具体的には、ステップS031で算出されたモータ印加電圧Vmが所定値Vmth1を超えているか否かが判定される。所定値Vmth1は、例えば3[V]とされる。このステップS032の判定結果に応じて、第1の停止判定条件成立カウンタcnt1が制御される。この停止判定条件成立カウンタcnt1は、マイクロコンピュータ503の中に構成される。Vm>Vmth1であり、ステップS032の判定結果がYesになれば、ステップS033に進み、停止判定条件成立カウンタcnt1がインクリメントされ、この停止判定条件成立カウンタcnt1のカウント値に1が加算される。Vm≦Vmth1であり、ステップS032の判定結果がNoになれば、ステップS034に進み、停止判定条件成立カウンタcnt1がクリアされ、この停止判定条件成立カウンタcnt1のカウント値が0とされる。
この第1の停止判定条件成立カウンタcnt1のカウント値は、第1の停止判定条件Vm>Vmth1が成立している状態が続く場合には順次カウントアップされ、この第1の停止判定条件が不成立となり、Vm≦Vmth1になれば、クリアされる。結果として、第1の停止判定条件成立カウンタcnt1のカウント値は、第1の停止判定条件Vm>Vmth1が継続して成立している持続時間を表わす。
ステップS033、S034からステップS035に進む。このステップS035では、第2の停止判定条件Vm<Vmth2が成立しているか否かが判定される。具体的には、ステップS031で算出されたモータ印加電圧Vmが所定値Vmth2未満であるか否かが判定される。所定値Vmth2は、所定値Vmth1と逆極性の値とされ、例えば−3[V]とされる。このステップS035の判定結果に応じて、第2の停止判定条件成立カウンタcnt2が制御される。この停止判定条件成立カウンタcnt2も、マイクロコンピュータ503の中に構成される。Vm<Vmth2であり、ステップS035の判定結果がYesになれば、ステップS036に進み、停止判定条件成立カウンタcnt2がインクリメントされ、この停止判定条件成立カウンタcnt2のカウント値に1が加算される。Vm≧Vmth2であり、ステップS035の判定結果がNoになれば、ステップS037に進み、停止判定条件成立カウンタcnt2がクリアされ、この停止判定条件成立カウンタcnt2のカウント値が0とされる。
この第2の停止判定条件成立カウンタcnt2のカウント値は、第2の停止判定条件Vm<Vmth2が成立している状態が続く場合には順次カウントアップされ、この第2の停止判定条件が不成立となり、Vm≧Vmth2になれば、クリアされる。結果として、第2の停止判定条件成立カウンタcnt2のカウント値は、第2の停止判定条件Vm<Vmth2が継続して成立している持続時間を表わす。
ステップS036、S037からステップS038に進む。このステップS038では、第1、第2の停止判定条件成立カウンタcnt1、cnt2のカウント値が、異常確定の停止判定時間Tth1と比較される。具体的には、第1、第2の停止判定条件成立カウンタcnt1、cnt2のカウント値が、cnt1≧Tth1またはcnt2≧Tth1となっているか否かが判定される。第1の停止判定条件成立カウンタcnt1のカウント値は、第1の停止判定条件Vm>Vmth1が成立している持続時間を表わし、また第2の停止判定成立カウンタcnt2のカウント値は、第2の停止判定条件Vm<Vmth2が成立している持続時間を表わすので、第1、第2の停止判定条件Vm>Vmth1、Vm<Vmth2が成立している持続時間の少なくとも一方が、異常確定の停止判定時間Tth1以上であるか否かが判定される。異常確定の停止判定時間Tth1は、例えば200[msec]とされる。このステップS038の判定結果に応じて、異常確定の停止判定フラグFlag1が制御される。この異常確定の停止判定フラグFlag1も、マイクロコンピュータ503の中に構成される。第1、第2の停止判定条件Vm>Vmth1、Vm<Vmth2が成立している持続時間の少なくとも一方が、異常確定の停止判定時間Tth1以上継続し、ステップS038の判定結果がYesになれば、ステップS039に進み、異常確定の停止判定フラグFlag1が1にセットされる。停止判定条件成立カウンタcnt1、cnt2の両方のカウント値が異常確定の停止判定時間Tth1より小さく、ステップS038の判定結果がNoになれば、ステップS040に進み、異常確定の停止判定フラグFlag1がクリアされ、異常確定の停止判定フラグFlag1が0とされる。異常確定の停止判定フラグFlag1が1にセットされると、異常検出カウンタcnt3によるモータ電流検出回路507の異常状態ABNの積分時間値CIの生成が抑制され、ステップS003による異常確定処理は強制的に停止される。
図8は、図6のステップS002による異常検出処理の詳細を示すフローチャートである。この図8のフローチャートは、ステップS051〜S055を含んでいる。まず、ステップS051では、異常確定の停止判定フラグFlag1が1にセットされているか否かが判定される。異常確定の停止判定フラグFlag1が1にセットされ、ステップS0051の判定結果がYesになれば、ステップS055に進む。停止判定フラグFlag1がクリアされていて、ステップS051の判定結果がNoになれば、ステップS052に進む。
ステップS052では、図3のステップS106で入力されたモータ電流の検出電流値Imdの絶対値を算出し、その値が所定値Ithd未満か否かが判定される。この所定値Ithdは、例えば2[A]とされる。検出電流値Imdの絶対値が所定値Ithd以上であり、ステップS052の判定結果がNoになれば、ステップS055に進む。検出電流値Imdの絶対値が所定値Ithd未満であり、ステップS052の判定結果がYesであれば、ステップS053に進む。ステップS052において、検出電流値Imdの絶対値を算出するのは、ステアリングハンドル1の右方向の操舵と左方向の操舵のいずれにも対応するためである。
ステップS053では、図3のステップS105で演算したモータ電流の目標電流値Imtの絶対値を算出し、その値が所定値Ithtを超えるか否かが判定される。所定値Ithtは、所定値Ithdよりも大きな値とされ、例えば5[A]とされる。目標電流値Imtの絶対値が所定値Itht以下であり、ステップS053の判定結果がNoになれば、endに至り、異常検出処理を終了する。目標電流値Imtの絶対値が所定値Ithtを超えていて、ステップS053の判定結果がYesであれば、ステップS054に進む。ステップS053において、目標電流値Imtの絶対値を算出するのは、ステアリングハンドル1の右方向の操舵と左方向の操舵のいずれにも対応するためである。
ステップS054とステップS055では、異常検出カウンタcnt3の制御が実行される。この異常検出カウンタcnt3も、マイクロコンピュータ503の中に構成される。ステップS054では、異常検出カウンタcnt3がインクリメントされ、異常検出カウンタcnt3のカウント値に1が加算される。ステップS055では、異常検出カウンタcnt3がクリアされ、そのカウント値が0とされる。
ステップS052、053の判定結果がともにYes、すなわち、検出電流値Imdの絶対値が所定値Ithd未満であり、しかも目標電流値Imtの絶対値が所定値Ithtを超えている状態では、モータ電流検出回路507が異常状態ABNにあると判定され、異常検出カウンタcnt3がインクリメントされ、異常検出カウンタcnt3のカウント値はカウントアップされる。しかし、この異常検出カウンタcnt3は、ステップS051の判定結果がYesとなったとき、またはステップS052の判定結果がNoとなったときには、クリアされる。またステップS052の判定結果がYesであり、ステップS051、S053の判定結果がNoとなったときには、異常検出カウンタのカウンタ値は保持される。結果として、異常検出カウンタcnt3のカウント値は、ステップS051の判定結果がNoである場合、すなわち異常確定の停止判定フラグFlag1がクリアされている状態において、モータ電流検出回路507の異常状態が継続し、ステップS052、053の判定結果がともにYesを継続する継続時間を表わし、モータ電流検出回路507の異常状態ABNの積分時間値CIを表わす。
図9は、図6のステップS003における異常確定処理の詳細を示すフローチャートである。この図9のフローチャートは、ステップS061〜S063を含む。ステップS061では、異常検出カウンタcnt3のカウント値が異常確定時間Tth3を超えているか否かが判定される。言い換えれば、異常確定の停止判定フラグFlag1がクリアされている状態において、モータ電流検出回路507の異常状態ABNが継続し、ステップS052、053の判定結果がともにYesを継続する継続時間、すなわちモータ電流検出回路507の異常状態ABNの積分時間値CIが、異常確定時間Tth3を超えているか否かが判定される。異常確定時間Tth3は、異常確定の停止判定時間Tth1より大きい値、例えば1[sec]とされる。異常検出カウンタcnt3のカウント値が異常確定時間Tth3を超えていて、ステップS061の判定結果がYesになれば、ステップS062に進み、異常確定フラグFlag2に1がセットされる。異常検出カウンタcnt3のカウント値が異常確定時間Tth3以下であり、ステップS061の判定結果がNoになれば、ステップS063に進み、異常確定フラグFlag2がクリアされ、0とされる。
次に、実施の形態1の動作を説明する。図10は、実施の形態1において、モータ電流検出回路507を含むすべての回路、機器が正常状態で、ステアリングハンドル1が右方向に操舵された場合における各種パラメータ(a)〜(l)の波形図である。この図10において、パラメータ(a)は図3のステップS103で入力された操舵トルクを表わす操舵トルク信号TRQ、パラメータ(b)は図3のステップS105で演算された目標電流値Imt、パラメータ(c)は図3のステップS106で入力された検出電流値Imd、パラメータ(d)は電気モータ6に実際に流れるモータ実電流Imr、パラメータ(e)は図3のステップS108で入力された電気モータ6の端子61の端子電圧V1、パラメータ(f)は図3のステップS108で入力された電気モータ6の端子62の端子電圧V2、パラメータ(g)は図7のステップS031で算出されたモータ印加電圧Vm、パラメータ(h)は第1の停止判定条件成立カウンタcnt1のカウント値、パラメータ(i)は第2の停止判定条件成立カウンタcnt2のカウント値、パラメータ(j)は異常確定の停止判定フラグFlag1、パラメータ(k)は異常検出カウンタcnt3のカウント値、パラメータ(l)は異常確定フラグFlag2をそれぞれ示す。パラメータ(a)〜(l)の各横軸は、共通な時間軸である。
タイミングポイントAからステアリングハンドル1が右方向に操舵されると、図10のパラメータ(a)に示すように、トルク信号TRQがプラス方向に増加し、それに伴なって図4に示す特性に従い、図10のパラメータ(b)に示すように目標電流値Imtもプラス方向に増加する。図3のステップS107におけるモータ電流制御に基づいて、図10のパラメータ(c)(d)に示すように、検出電流値Imd、モータ実電流Imrも目標電流値Imtに追従して変化する。また、ステップS107のモータ電流制御で算出されたPWM制御のデューティ比Dutyが、トランジスタ509aに反映されるので、図10のパラメータ(e)に示すように、端子電圧V1がモータ実電流Imrに追従して上昇している。トランジスタ509dはオン状態を維持するので、図10のパラメータ(f)に示すように、端子電圧V2は0[V]を維持する。
モータ印加電圧Vmは図10のパラメータ(g)に示すように増加し、このモータ印加電圧Vmが所定値Vmth1を超えたときに、停止判定条件成立カウンタcnt1はインクリメントを開始し、この停止判定条件成立カウンタcnt1のカウント値が停止判定時間Tth1以上となった時点で、図10のパラメータ(j)に示すように、異常確定の停止判定フラグFlag1が1にセットされる。停止判定条件成立カウンタcnt2は、モータ印加電圧Vmが所定値Vmth2未満ではないので、この停止判定条件成立カウンタcnt2のカウント値は、図10のパラメータ(i)に示すように、0を維持する。異常検出カウンタcnt3は、図8のステップS053の判定条件、すなわち目標電流値Imtの絶対値が所定値Ithtを超える条件と、ステップS052の判定条件、すなわち検出電流値Imdの絶対値が所定値Ithd未満である条件とが、同時に満足されないので、異常検出カウンタcnt3のカウント値も0を維持する。このため、異常確定フラグFlag2も、図10のパラメータ(l)に示すように、クリアされた状態を維持する。
このように、モータ電流検出回路507を含むすべての回路、機器が正常であれば、異常確定フラグFlag2は、クリアされた状態を維持し、異常確定フラグFlag2を1にセットするような異常判定が確定されることはない。
次に、モータ電流検出回路507が異常状態ABNとなり、検出電流値Imdが0[A]に固定している場合について図11を用いて説明する。図11において、各種パラメータ(a)〜(l)は、図10の対応するパラメータと同じである。検出電流値Imdが0[A]に固定されているので、図11のパラメータ(a)の操舵トルク信号TRQ、パラメータ(b)の目標電流値Imt、パラメータ(d)のモータ実電流Imr、パラメータ(e)のモータ端子電圧V1、およびパラメータ(g)のモータ端子電圧Vmは、振動状態となっている。
この振動状態の発生は、次の理由による。まず図3のステップS107では、目標電流値Imtと検出電流値Imdとが一致するように、電流フィードバック制御を行なうが、モータ電流検出回路507の出力部の地絡故障のために、検出電流値Imdが0[A]に固定されているので、PWM制御のデューティ比Dutyを増加させても、Imt>Imdの状態が継続する。このため、PWM制御のデューティ比Dutyはさらに増加を続け、モータ実電流Imrも増加を続ける。このモータ実電流Imrの増加に伴ない、電気モータ6が発生する補助トルクも増加を続けるが、この補助トルクが増加するのに伴なって、運転者からステアリングハンドル1に与えられる操舵トルクが低下する。補助トルクは本来必要な補助トルクよりも大き過ぎるので、操舵トルクは0付近まで低下する。操舵トルクが0付近まで低下すると、図4の特性から目標電流値Imtが0となり、PWM制御のデューティ比Dutyが低下し、モータ実電流Imrが低下する。モータ実電流Imrが低下すると、補助トルクが低下し、その結果、操舵トルクが増加し、トルク信号TRQが増加する。この動作を繰返すため、トルクフィードバック系が振動状態となり、図10のパラメータ(a)の操舵トルク信号TRQ、パラメータ(b)の目標電流値Imt、パラメータ(d)のモータ実電流Imr、パラメータ(e)のモータ端子電圧V1、およびパラメータ(g)のモータ端子電圧Vmは、振動状態となる。
この図11に示す場合には、パラメータ(g)に示すモータ印加電圧Vmが振動状態となり、このため、モータ印加電圧Vmが所定値Vmth1を超える期間B1と、それが所定値Vmth1以下となる期間B2とが交互に現われる。断続的に繰返される各期間B1では、モータ印加電圧Vmが所定値Vmth1を超えているので、停止判定条件成立カウンタcnt1がインクリメント動作し、また、断続的に繰返される各期間B2ではそれがクリアされ、この動作が繰返される。停止判定条件成立カウンタcnt2のカウント値は、モータ印加電圧Vmが所定値Vmth2以上であるので、パラメータ(i)に示すように、0に維持される。異常確定の停止判定時間Tth1は、トルクフィードバック系の振動周期より長い時間、例えば200[msec]に設定しているので、停止判定条件成立カウンタcnt1、cnt2のカウント値は、ともに停止判定時間Tth1に到達せず、その結果、パラメータ(j)に示す異常確定の停止判定フラグFlag1は0である。トルクフィードバック系の振動周期は、通常100[msec]前後である。
一方、パラメータ(b)に示すように、目標電流値Imtは、トルクフィードバック系の振動により、所定値Ithtを超える期間C1と、この所定値Itht以下となる期間C2を繰返す。検出電流値Imdは0[A]に固定されているので、検出電流値Imdは所定値Ithd未満の状態に維持される。断続的に繰返される各期間C1では、目標電流値Imtの絶対値が所定値Itht
を超え、しかも検出電流値Imdが所定値Ithd未満となるため、図8のステップS052、S053の判定結果がともにYesとなり、異常検出カウンタcnt3はインクリメント動作する。断続的に繰返される各期間C2では、目標電流値Imtの絶対値が所定値Itht以下であり、しかも検出電流値Imdの絶対値が所定値Ithd未満の状態であるため、ステップS052の判定結果はYes、ステップS053の判定結果はNoに分岐し、異常検出カウンタcnt3のカウント値は、変化することなく維持される。その結果、異常検出カウンタcnt3のカウント値は、図11のパラメータ(k)のように各期間C1において順次増大し、各期間C2において保持されるので、この異常検出カウンタcnt3のカウント値は、各期間C1を積分した異常状態ABNの積算時間値CIを表わす。そしてタイミングポイントEで異常検出カウンタcnt3のカウンタ値、言換えれば異常状態ABNの積分時間値CIが異常確定時間Tth3に達し、異常確定フラグFlag2が1にセットされる。異常確定フラグFlag2が1にセットされると、図3のステップS110でYesに分岐し、ステップS111、S112でモータ駆動回路509の各トランジスタ509a〜509dがオフし、リレー駆動回路504により、リレー505がオフとなる。
次に、モータ電流検出回路507を含む各回路および機器が正常な状態において、ステアリングハンドル1を高速操舵した場合について、図12を用いて説明する。図12で各種パラメータ(a)〜(l)は、図10の対応するパラメータと同じである。図12でも、タイミングポイントAからステアリングハンドル1を右方向に操舵した場合を示す。ステアリングハンドル1を右方向に操舵することにより、プラス方向に目標電流値Imtが増加する。ステップS107におけるモータ電流制御は、目標電流値Imtと検出電流値Imdが一致するように電流フィードバックを行なうが、この場合にはステアリングハンドル1を高速操舵しているので、電気モータ6内で発生される発電電圧(逆起電力)が大きく、このため図12のパラメータ(d)に示すようにモータ実電流Imrがほぼ0となるため、検出電流値Imdも0[A]となり、その結果、PWM制御のデユーティ比Dutyが急増する。このPWM制御のデユーティ比Dutyが急増することにより、モータ端子電圧V1も図12のパラメータ(e)に示すように急増し、その結果、モータ印加電圧Vmも図12のパラメータ(g)に示すように急増している。この状況では、図12に示すように、パラメータ(a)に示す操舵トルク信号TRQ、パラメータ(b)に示す目標電流値Imt、パラメータ(e)に示すモータ端子電圧V1、およびパラメータ(g)に示すモータ印加電圧Vmは、時間とともに単調変化、すなわち時間とともに単調増加する。
このような状況では、先ず、パラメータ(g)に示す期間Bにおいて、モータ印加電圧Vmが所定値Vmth1を超えるので、停止判定条件成立カウンタcnt1がインクリメント動作し、停止判定時間Tth1の経過後に、停止判定フラグFlag1が、パラメータ(j)に示すように1にセットされる。また、パラメータ(b)に示す期間Cでは、目標電流値Imtが所定値Ithtを超え、しかも検出電流値Imdが所定値Ithd未満である条件が成立するので、異常検出カウンタcnt3がインクリメント動作する。しかし、パラメータ(j)に示す停止判定フラグFlag1が1となった以降、異常検出カウンタcnt3はパラメータ(k)に示すようにクリアされるので、結果として、モータ電流検出回路507の異常状態ABNの積分時間値CIの生成は抑えられ、モータ電流検出回路507の異常確定には至らず、異常判定フラグFlag2は1にセットされない。異常確定時間Tth3は、停止判定時間Tth1より大きい値、例えば1[sec]に設定しているので、異常検出カウンタcnt3は、パラメータ(k)に示すように、異常確定時間Tth3に達する前にクリアされ、確実に、モータ電流検出回路507の異常確定を回避することができる。
この実施の形態1では、上述のように動作するので、モータ電流検出回路507の異常状態ABNによって検出電流値Imdが0[A]となる場合には、異常判定フラグFlag2をセットして異常確定を行ない、モータ駆動回路509をオフ、リレー505をオフすることで、マニュアルステアリングにすることができる。一方、高速操舵によって検出電流値Imdが、ほぼ0[A]となる場合には、異常判定プラグFlag2をセットせず、異常確定を回避するので、誤った異常検出は起こらず、パワーステアリングの制御を継続させることができる。
なお、上記説明では、ステアリング1が右操舵される場合について説明したが、左操舵される場合でも同様に機能する。
実施の形態1と対比される比較例について説明する。この比較例では、図2におけるモータ端子電圧検出回路510a、510bは設けられず、図3におけるステップS108も省略され、図6におけるステップS001も省略され、図8におけるステップS051も省略され、またステップS053の判定結果がNoとなったときに、異常検出カウンタcnt3がクリアされる。この比較例の動作について図13を参照して説明する。図13の各種パラメータ(a)〜(d)、(k)、(l)は、図11の対応するパラメータ(a)〜(d)、(k)、(l)と同じである。この比較例では、目標電流値Imtが所定値Ithtを超えた各期間C1において、異常検出カウンタcnt3がインクリメントされるが、目標電流値Imtが所定値Itht以下になった各期間C2において、異常検出カウンタcnt3がクリアされるため、この異常検出カウンタcnt3のカウント値から、異常状態の積分時間値CIを得ることができず、実施の形態1のように、モータ電流検出回路507の出力部が地絡故障した場合にも、異常確定フラグFlag2を1にセットすることができない。
以上のように実施の形態1に係る電動パワーステアリング装置では、目標電流値Imtの絶対値が所定値Ithtを超え、しかも検出電流値Imdの絶対値が所定値Ithd未満の状態をモータ電流検出回路507の異常状態ABNとして検出する異常検出手段S002と、前記異常状態ABNが断続的に繰返される状態で、前記異常状態ABNの積算時間値CIが異常確定時間Tth3に達したときに、モータ電流検出回路507の異常を確定する異常確定手段S003と、電気モータ6のモータ印加電圧Vmを検出するモータ印加電圧検出手段S031と、モータ印加電圧Vmが所定値Vmth1を超えた状態が停止判定時間Tth1継続したときに、前記異常状態ABNの積算時間値CIの生成を抑え、異常確定手段S003による異常確定を強制的に停止させる停止判定手段S001を備えるので、安価な構成で、モータ電流検出回路507の異常状態ABNを高速操舵状態から区別して、異常確定することができる。
実施の形態2.
この発明による電動パワーステアリング装置の実施の形態2では、実施の形態1における図8に示す異常検出処理S002が、図14に示す異常検出処理S002に置き換えられる。図1に示す電動パワーステアリング装置の全体構成、図2に示すECU5の内部構成、図3に示すメイン処理S100、図5に示すモータ電流制御手段、図6に示す異常判定処理S109、図7に示す停止判定処理S001、および図9に示す異常確定処理S003は、この実施の形態2でも、実施の形態1と同じである。言い換えれば、図6のステップS002における異常検出処理が、実施の形態1では、図8に示すフローチャートに従って実行されたが、この図8に代わり、実施の形態2では、図14に示すフローチャートに従って実行される。その他は実施の形態1と同じである。
図14のフローチャートでは、図8のフローチャートにおけるステップS053が、ステップS057に変更される。その他は、図8のフローチャートと同じである。図14のステップS057では、図5のデューティ変換処理手段524で得られる電気モータ6に対するPWM制御のデューティ比Dutyが、所定値Dthと比較され、PWM制御のデューティ比Dutyが所定値Dthを超えているか否か、すなわちDuty>Dthであるか否かが判定される。所定値Dthは、例えば90%とされる。ステップS057の判定結果がYesであれば、ステップS054に進み、異常検出カウンタcnt3がインクリメントされる。ステップS057の判定結果がNoであれば、endに進み、異常検出処理を終了する。なお、図8と同様に、ステップS051の判定結果がYesになれば、またステップS052の判定結果がNoになれば、異常検出カウンタcnt3がクリアされる。ステップS052、S057の判定結果がともにYesとなる状態、言換えれば、PWM制御のデューティ比Dutyが所定値Dthを超え、しかも検出電流値Imdの絶対値が所定値Ithd未満である条件が成立すれば、モータ電流検出回路507の異常状態ABNが検出される。
次に、電流検出回路507が異常状態ABNとなり、検出電流値Imdが0[A]に固定している場合の動作について、図15を用いて説明する。図15において、パラメータ(m)は図5のデューティ変換手段524で算出したPWM制御のデューティ比Dutyであり、他の各パラメータ(a)〜(l)は、図11の対応するパラメータと同じである。
検出電流値Imdが0[A]に固定される結果、図11に示す場合と同様に、トルクフィードバック系が振動状態となり、その結果、パラメータ(a)の操舵トルク信号TRQ、パラメータ(b)の目標電流値Imt、パラメータ(d)のモータ実電流Imr、パラメータ(e)のモータ端子電圧V1、パラメータ(g)のモータ印加電圧Vm、およびパラメータ(m)のPWM制御のデューティ比Dutyは、それぞれ振動状態となる。
図15に示す場合にも、パラメータ(g)に示すモータ印加電圧Vmが振動状態となり、このため、モータ印加電圧Vmが所定値Vmth1を超える期間B1と、それが所定値Vmth1以下となる期間B2とが交互に現われる。断続的に繰返される各期間B1では、モータ印加電圧Vmが所定値Vmth1を超えているので、停止判定条件成立カウンタcnt1がインクリメント動作し、また、断続的に繰返される各期間B2ではそれがクリアされ、この動作が繰返される。停止判定条件成立カウンタcnt2のカウント値は、モータ印加電圧Vmが所定値Vmth2以上であるので、パラメータ(i)に示すように、0に維持される。停止判定フラグFlag1は、各期間B1の持続時間が停止判定時間Tth1以上にならないので、1にセットされることはなく、0に維持される。
パラメータ(m)に示すPWM制御のデューティ比Dutyも振動するので、PWM制御のデューティ比Dutyが所定値Dthを超える期間C1と、それが所定値Dth以下となる期間C2が交互に現われる。断続的に繰返される各期間C1ではPWM制御のデューティ比Dutyが所定値Dthを超え、しかも検出電流値Imdが所定値Ithd未満であるため、ステップS052、S057の判定結果がともにYesとなり、モータ電流検出回路507の異常状態ABNが検出され、異常検出カウンタcnt3はインクリメント動作する。断続的に繰返される各期間C2では、PWM制御のデューティ比Dutyが所定値Dth以下であり、しかも検出電流値Imdが所定値Ithd未満の状態であるため、ステップS052はYes、ステップS057はNoに分岐し、異常検出カウンタcnt3のカウント値はクリアされることなく、保持される。その結果、異常検出カウンタcnt3のカウンタ値は、パラメータ(k)に示すように、モータ電流検出回路507の異常状態ABNの積分時間値CIを表わす。そしてタイミングポイントEで、異常検出カウンタcnt3のカウント値、すなわちモータ電流検出回路507の異常状態ABNの積分時間値CIが異常確定時間Tth3に達し、異常確定フラグFlag2が1にセットされる。異常確定フラグFlag2が1にセットされると、図3のステップS110でYesに分岐し、ステップS111、S112で、モータ駆動回路509
のすべてのトランジスタ509a〜509dがオフされ、リレー505がオフされる。
次に、モータ電流検出回路507を含むすべての回路、機器が正常な状態で、ステアリングハンドル1を高速操舵した場合、電気モータ6の発電電圧(逆起電力)でモータ電流Imrがほぼ0[A]になるが、この場合の動作について、図16を用いて説明する。図16の各種パラメータ(a)〜(m)は、図15の対応する各パラメータと同じである。
図16は、タイミングポイントAから、ステアリングハンドル1を右方向に操舵した場合を示す。ステアリングハンドル1を右方向に操舵することで実施の形態1と同様に、プラス方向に目標電流値Imtが増加する。ステップS107のモータ電流制御では、目標電流値Imtと検出電流値Imdが一致するように電流フィードバックを行なうが、高速操舵しているので、電気モータ6の発電電圧が大きく、パラメータ(d)に示すようにモータ実電流Imrがほぼ0となるので、パラメータ(c)に示す検出電流値Imdもほぼ0[A]となり、その結果、パラメータ(m)に示すように、PWM制御のデユーティ比Dutyが急増する。このPWM制御のデユーティ比Dutyが急増することで、パラメータ(e)に示すモータ端子電圧V1も急増し、パラメータ(g)に示すモータ印加電圧Vmも急増している。この状況では、図16に示すように、パラメータ(a)に示す操舵トルク信号TRQ、パラメータ(b)に示す目標電流値Imt、パラメータ(m)に示すPWM制御のデユーティ比Duty、パラメータ(e)に示すモータ端子電圧V1、およびパラメータ(g)に示すモータ印加電圧Vmは、時間とともに単調変化,すなわち時間とともに単調増加する。
このような状況では、先ず、パラメータ(g)に示す期間Bにおいて、モータ印加電圧Vmが所定値Vmth1を超えるので、停止判定条件成立カウンタcnt1がインクリメント動作し、停止判定時間Tth1の経過後に、パラメータ(j)に示すように、停止判定フラグFlag1が1にセットされる。また、パラメータ(m)に示す期間Cでは、PWM制御デューティDutyが所定値Dthを超え、しかも検出電流値Imdが所定値Ithd以下となる条件が成立するので、図14の異常検出カウンタcnt3がインクリメント動作するが、パラメータ(j)に示す停止判定フラグFlag1が1となった以降、異常検出カウンタcnt3はクリアされるので、結果として、モータ電流検出回路507の異常状態ABNの積分時間値CIの生成が抑制され、モータ電流検出回路507の異常確定には至らない。異常確定時間Tth3は、停止判定時間Tth1、例えば200[msec]より大きい値、例えば1[sec]に設定しているので、異常検出カウンタcnt3は異常確定時間Tth3に達する前にクリアされ、確実に、モータ電流検出回路507の異常確定を回避することができる。
このように、実施の形態2でも、実施の形態1と同様に、モータ電流検出回路507の異常状態ABNによって検出電流値Imdが0[A]となる場合には、その異常確定を行ない、モータ駆動回路509の各トランジスタ509a〜509dをオフ、リレー505をオフすることでマニュアルステアリングにすることができる。一方、高速操舵によって検出電流値Imdがほぼ0[A]となる場合は、誤検出せずパワーステアリングの制御を継続させることができる。
なお上記では、右操舵について説明したが、左操舵でも同様に機能し、同様の効果を得ることができる。
以上のように、実施の形態2に係る電動パワーステアリング装置では、PWM制御のデューティ比Dutyが所定値Dthを超え、しかも検出電流値Imdの絶対値が所定値Ithd未満の状態をモータ電流検出回路507の異常状態ABNとして検出する異常検出手段S002と、前記異常状態ABNが断続的に繰返される状態で、前記異常状態ABNの積算時間値CIが異常確定時間Tth3に達したときに、モータ電流検出回路507の異常を確定する異常確定手段S003と、電気モータ6のモータ印加電圧Vmを検出するモータ印加電圧検出手段S031と、前記モータ印加電圧Vmが所定値Vmth1を超えた状態が停止判定時間Tth1継続したときに、前記異常状態ABNの積算時間値CIの生成を抑え、前記異常確定手段S003による異常確定を強制的に停止させる停止判定手段S003を備えるので、安価な構成で、モータ電流検出回路507の異常状態ABNを高速操舵状態から区別して、異常確定することができる。
実施の形態3.
この発明による電動パワーステアリング装置の実施の形態3では、実施の形態1における図7に示す停止判定処理S001が、図17に示す停止判定処理S001に置き換えられる。図1に示す電動パワーステアリング装置の全体構成、図2に示すECU5の内部構成、図3に示すメイン処理S100、図5に示すモータ電流制御手段、図6に示す異常判定処理S109、図8に示す異常検出処理S002、および図9に示す異常確定処理S003は、この実施の形態3でも、実施の形態1と同じである。言換えれば、図6のステップS001における停止判定処理が、実施の形態1では、図7に示すフローチャートに従って実行されたが、この図7に代わり、実施の形態3では、図17に示すフローチャートに従って実行される。その他は実施の形態1と同じである。
図17のフローチャートでは、図7のフローチャートにおけるステップS031が省略され、ステップS032が、ステップS072に変更され、またステップS035がステップS075に変更される。その他は、図7のフローチャートと同じである。図17のステップS072では、図3のステップS108で入力されるモータ端子電圧V1が、所定値V1thと比較され、V1>V1thであるか否かが判定される。ステップS072の判定結果がYesであれば、ステップS033に進み、第1の停止判定条件成立カウンタcnt1がインクリメントされ、ステップS072の判定結果がNoであれば、ステップS034に進み、停止判定条件成立カウンタcnt1がクリアされる。図17のステップS075では、図3のステップS108で入力されるモータ端子電圧V2が、所定値V2thと比較され、V2>V2thであるか否かが判定される。ステップS075の判定結果がYesであれば、ステップS036に進み、第2の停止判定条件成立カウンタcnt2がインクリメントされ、ステップS075の判定結果がNoであれば、ステップS037に進み、停止判定条件成立カウンタcnt2がクリアされる。なお、図7と同様に、ステップS038において、停止判定条件成立カウンタcnt1、cnt2のカウント値が停止判定時間Tth1と比較され、cnt1≧Tth1またはcnt2≧Tth1が成立するか否か判定される。ステップS038の判定結果がYesになれば、ステップS039に進み、停止判定フラグFlag1が1にセットされ、ステップS038の判定結果がNoになれば、ステップS040に進み、停止判定フラグFlag1がクリアされる。
次に、モータ電流検出回路507が異常状態ABNとなり、検出電流値Imdが0[A]に固定している場合の動作について、図18を用いて説明する。図18において、各種パラメータ(a)〜(f)、(h)〜(l)は、図11の対応する各パラメータと同じである。この図18も、ステアリングハンドル1が、タイミングポイントAから右方向に操舵された場合を示す。
検出電流値Imdが0[A]に固定されると、実施の形態1と同様に、トルクフィードバック系が振動状態となり、その結果、パラメータ(a)に示す操舵トルク信号TRQ、パラメータ(b)に示す目標電流値Imt、パラメータ(d)に示すモータ実電流Imr、およびパラメータ(e)に示すモータ端子電圧V1が振動状態となる。
パラメータ(b)に示す目標電流値Imtが振動するので、目標電流値Imtが所定値Ithtを超える期間C1と、それが所定値Itht以下となる期間C2が交互に現われる。断続的に繰返される各期間C1では、目標電流値Imtが所定値Ithtを超え、しかも検出電流値Imdが所定値Ithd未満であり、モータ電流検出回路507の異常状態ABNが検出されるため、図8のステップS052、S053の判定結果はともにYesとなり、異常検出カウンタcnt3はインクリメント動作する。断続的に繰返される各期間C2では、目標電流値Imtが所定値Itht以下であり、しかも検出電流値Imdが所定値Ithd未満であるため、ステップS052の判定結果がYes、ステップS053の判定結果がNoとなり、異常検出カウンタcnt3はクリアされることなく、そのカウント値を保持する。その結果、パラメータ(k)に示す異常検出カウンタcnt3のカウンタ値は、モータ電流検出回路507の異常状態ABNの積分時間値CIを表わす。そしてタイミングポイントEで、異常検出カウンタcnt3のカウント値、すなわちモータ電流検出回路507の異常状態ABNの積分時間値CIが異常確定時間Tth3に達し、異常確定フラグFlag2が1にセットされる。異常確定フラグFlag2が1にセットされると、図3のステップS110でYesに分岐し、ステップS111、S112で、モータ駆動回路509のすべてのトランジスタ509a〜509dがオフされ、リレー505がオフされる。
次に、モータ電流検出回路507を含む各回路、機器が正常な状態において高速操舵した場合、電気モータ6の発電電圧(逆起電力)でモータ実電流Imrがほぼ0[A]になるが、この場合の動作について図19を用いて説明する。図19の各種パラメータ(a)〜(f)、(h)〜(l)は、図18の対応するパラメータと同じである。図19は、タイミングポイントAから、ステアリングハンドル1を右方向に操舵した場合を示す。ステアリングハンドル1を右方向に操舵することで実施の形態1と同様に、パラメータ(b)に示す目標電流値Imtがプラス方向に増加する。図3のステップS107によるモータ電流制御は、目標電流値Imtと検出電流値Imdが一致するように電流フィードバックを行なうが、高速操舵しているので、電気モータ6の発電電圧が大きく、パラメータ(d)に示すようにモータ実電流Imrがほぼ0[A]となり、パラメータ(c)に示す検出電流値Imdも0[A]となり、その結果、PWM制御のデユーティ比Dutyが急増する。PWM制御のデユーティ比Dutyが急増することで、パラメータ(e)に示すモータ端子電圧V1も急増している。この状況では、図19に示すように、パラメータ(a)に示す操舵トルク信号TRQ、パラメータ(b)に示す目標電流値Imt、およびパラメータ(e)に示すモータ端子電圧V1は、時間とともに単調変化、すなわち時間とともに単調増加する。
このような状況では、先ず、パラメータ(e)に示す期間Bにおいて、電気モータ6の端子61におけるモータ端子電圧V1が所定値V1thを超えるので、図17のステップS072の判定結果がYesとなり、停止判定条件成立カウンタcnt1がインクリメント動作し、停止判定時間Tth1の経過後、停止判定フラグFlag1が1にセットされる。また、パラメータ(b)に示す期間Cでは、目標電流値Imtが所定値Ithtを超え、しかも検出電流値Imdが所定値Ithd未満である条件が成立するので、図8の異常検出カウンタcnt3がインクリメント動作するが、パラメータ(j)に示す停止判定フラグFlag1が1にセットされた以降、異常検出カウンタcnt3はクリアされるので、結果として、モータ電流検出回路507の異常状態ABNの積分時間値CIの生成が抑制され、モータ電流検出回路507の異常確定には至らない。異常確定時間Tth3は停止判定時間Tth1、例えば200[msec]より大きい値、例えば例えば1[sec]に設定しているので、異常検出カウンタcnt3は異常確定時間Tth3に達する前にクリアされ、確実に、モータ電流検出回路507の異常確定を回避することができる。
このように、実施の形態3でも、実施の形態1と同様に、モータ電流検出回路507の異常状態ABNによって検出電流値Imdが0[A]となる場合には異常確定を行ない、モータ駆動回路509の各トランジスタ509a〜509dをオフ、リレー505をオフすることで、マニュアルステアリングにすることができる。一方、高速操舵によって検出電流値Imdがほぼ0[A]となる場合には、誤検出せずパワーステアリングの制御を継続させることができる。
上記は右操舵について説明したが、左方向に操舵した場合は、モータ端子電圧V1とモータ端子電圧V2が、上記と逆の動作となり、同様の効果を得ることができる。この左操舵では、モータ端子電圧V1が右操舵におけるモータ端子電圧V2と同様に変化し、モータ端子電圧V2が右操舵におけるモータ端子電圧V1と同様に変化する。
なお、図17に示す実施の形態3における停止判定処理S001は、実施の形態2における停止判定処理にも適用することができる。この場合には、実施の形態2で使用された図7に示す停止判定処理S001が、図17に示す停止判定処理S001に置き換えられる。
実施の形態4.
この発明による電動パワーステアリング装置の実施の形態4では、実施の形態1における図2に示すECU5の内部構成が、図20に示す内部構成に置き換えられ、実施の形態1における図3に示すメイン処理S100が、図21に示すメイン処理S100に置き換えられ、また、実施の形態1における図7に示す停止判定処理S001が、図22に示す停止判定処理S001に置き換えられる。図1に示す電動パワーステアリング装置の全体構成、図5に示すモータ電流制御手段、図6に示す異常判定処理S109、図8に示す異常検出処理S002、および図9に示す異常確定処理S003は、この実施の形態4でも、実施の形態1と同じである。
実施の形態4では、ECU5が図20に示すように構成される。この図20を図2と比較すると、バッテリ電圧検出回路511が追加され、モータ端子電圧検出回路510a、510bが削除されている。実施の形態4におけるECU5の内部構成は、その他は、図2に示すECU5の内部構成と同じである。バッテリ電圧検出回路511は、リレー505とモータ電流検出抵抗506との間に接続され、車載バッテリ10のプラス端子の電圧を検出する。
実施の形態4では、マイクロコンピュータ503が実行する図21のメイン処理S100において、図3に示すメイン処理S100におけるステップS108がステップS113に置き換えられる。実施の形態4で実行される図21のメイン処理S100は、その他は図3のメイン処理S100と同じである。このステップS113では、バッテリ電圧検出回路511を用いて、車載バッテリ10のプラス端子におけるバッテリ電圧VBがマイクロコンピュータ503に入力される。
実施の形態4では、停止判定処理S001が、図22に示すフローチャートに従って実行される。この図22に示すフローチャートは、7つのステップS081、S082、S033、S034、S088、S039、S040を含む。ステップS033、S034、S039、S040は、図7と同じである。ステップS081では、図21のメイン処理S100のステップS113で入力されたバッテリ電圧VBを用いて、このバッテリ電圧VBとPWM制御のデューティ比Dutyとの積VB×Dutyが演算され、この積VB×Dutyが、電気モータ6のモータ印加電圧Vmとされる。次のステップS082では、モータ印加電圧Vmが所定値Vthを超えているか否かが判定される。このステップS082の判定結果により、停止判定条件成立カウンタcnt1が制御される。ステップS082の判定結果がYesになれば、ステップS033に進み、停止判定条件成立カウンタcnt1がインクリメントされ、そのカウンタ値に1が加算される。ステップS082の判定結果がNoになれば、ステップS034に進み、停止判定条件成立カウンタcnt1がクリアされる。
停止判定条件成立カウンタcnt1のカウント値は、停止判定条件Vm>Vthが成立している状態が続く場合には順次カウントアップされ、この停止判定条件が不成立となり、Vm≦Vthになれば、クリアされる。結果として、停止判定条件成立カウンタcnt1のカウント値は、停止判定条件Vm>Vthが継続して成立している持続時間を表わす。
ステップS033、S034からステップS088に進む。ステップS088では、停止判定条件成立カウンタcnt1のカウンタ値が、停止判定時間Tth1と比較される。具体的には、停止判定条件成立カウンタcnt1のカウント値が、cnt1≧Tth1となっているか否かが判定される。停止判定条件成立カウンタcnt1のカウント値は、停止判定条件Vm>Vthが成立している持続時間を表わすので、停止判定条件Vm>Vthが成立している持続時間が、異常確定の停止判定時間Tth1以上であるか否かが判定される。異常確定の停止判定時間Tth1は、例えば200[msec]とされる。このステップS088の判定結果に応じて、異常確定の停止判定フラグFlag1が制御される。この異常確定の停止判定フラグFlag1も、マイクロコンピュータ503の中に構成される。停止判定条件Vm>Vthが成立している持続時間が、異常確定の停止判定時間Tth1以上継続し、ステップS088の判定結果がYesになれば、ステップS039に進み、異常確定の停止判定フラグFlag1が1にセットされる。停止判定条件成立カウンタcnt1のカウント値が異常確定の停止判定時間Tth1より小さく、ステップS088の判定結果がNoになれば、ステップS040に進み、異常確定の停止判定フラグFlag1がクリアされ、異常確定の停止判定フラグFlag1が0とされる。異常確定の停止判定フラグFlag1が1にセットされると、ステップS003による異常確定処理は強制的に停止される。
次に、モータ電流検出回路507が異常状態ABNとなり、検出電流値Imdが0[A]に固定されている場合の動作について、図23を用いて説明する。図23において、パラメータ(n)はバッテリ電圧VBを示し、その他のパラメータ(a)〜(d)、(g)〜(l)は、図11の対応するパラメータと同じであり、パラメータ(m)は、図15の対応するパラメータと同じである。
検出電流値Imdが0[A]に固定されると、実施の形態1と同様にトルクフィードバック系が振動状態となり、その結果、パラメータ(a)に示す操舵トルク信号TRQ、パラメータ(b)に示す目標電流値Imt、パラメータ(d)に示すモータ実電流Imr、パラメータ(m)に示すPWM制御のデューティ比Dutyが振動し、またバッテリ電圧VBとPWM制御のデューティ比Dutyから算出したパラメータ(m)に示すモータ印加電圧(Vm)も振動状態となる。
パラメータ(b)に示す目標電流値Imtが振動するので、目標電流値Imtが所定値Ithtを超える期間C1と、それが所定値Itht以下となる期間C2が交互に現われる。断続的に繰返される各期間C1では、目標電流値Imtが所定値Ithtを超え、しかも検出電流値Imdが所定値Ithd未満である条件が成立するため、モータ電流検出回路507の異常状態ABNが検出され、図8のステップS052、ステップS053の判定結果はともにYesとなり、異常検出カウンタcnt3はインクリメント動作する。断続的に繰返される各期間C2では、目標電流値Imtが所定値Itht以下であり、しかも検出電流値Imdが所定値Ithd未満であるため、ステップS052の判定結果はYes、ステップS053の判定結果はNoとなり、異常検出カウンタcnt3のカウント値はクリアされることなく、保持される。その結果、図23のパラメータ(k)に示す異常検出カウンタcnt3のカウンタ値は、モータ電流検出回路507の異常状態ABNの積分時間値CIを表わす。そしてタイミングポイントEで、異常検出カウンタcnt3のカウント値、すなわちモータ電流検出回路507の異常状態ABNの積分時間値CIが異常確定時間Tth3に達し、パラメータ(l)に示すよう
に、異常確定フラグFlag2が1にセットされる。異常確定フラグFlag2が1にセットされると、図21のステップS110でYesに分岐し、ステップS111、S112で、モータ駆動回路509のすべてのトランジスタ509a〜509dがオフされ、リレー505がオフされる。
次に、モータ電流検出回路507を含むすべての回路、機器が正常な状態で高速操舵した場合、電気モータ6の発電電圧(逆起電力)でモータ電流Imrがほぼ0[A]になるが、この場合の動作について、図24を用いて説明する。図24の各種パラメータ(a)〜(d)、(g)〜(n)は、図23の対応するパラメータと同じである。
図24は、タイミングポイントAから、ステアリングハンドル1を右方向に操舵した場合を示す。ステアリングハンドル1を右方向に操舵することで、実施の形態1と同様に、パラメータ(b)に示す目標電流値Imtがプラス方向に増加する。図21のステップS107によるモータ電流制御は、目標電流値Imtと検出電流値Imdが一致するように電流フィードバックを行なうが、高速操舵しているので、電気モータ6の発電電圧が大きく、パラメータ(d)に示すモータ実電流Imrがほぼ0[A]となるため、パラメータ(c)に示す検出電流値Imdも0[A]となり、その結果、PWM制御のデユーティ比Dutyがパラメータ(m)に示すように急増する。このPWM制御のデユーティ比Dutyが急増することで、バッテリ電圧VBとPWMのデユーティ比Dutyから算出したモータ印加電圧Vmもパラメータ(g)に示すように急増している。この状況では、図24に示すように、パラメータ(a)に示す操舵トルク信号TRQ、パラメータ(b)に示す目標電流値Imt、パラメータ(m)に示すPWM制御のデユーティ比Duty、およびパラメータ(g)に示すモータ印加電圧Vmは、時間とともに単調変化、すなわち時間とともに単調増加する。
このような状況では、パラメータ(g)に示す期間Bで、モータ印加電圧Vmが所定値Vthを超えるので、停止判定条件カウンタcnt1がインクリメント動作し、停止判定時間Tth1の経過後に、停止判定フラグFlag1が1にセットされる。また、パラメータ(b)に示す期間Cでは、目標電流値Imtが所定値Ithtを超え、しかも検出電流値Imdが所定値Ithd以下の条件が成立するので、図8の異常検出カウンタcnt3がインクリメント動作するが、停止判定フラグFlag1が1にセットされた以降、異常検出カウンタcnt3はクリアされるので、結果として、モータ電流検出回路507の異常状態ABNの積分時間値CIの生成が抑制され、モータ電流検出回路507の異常確定には至らない。異常確定時間Tth3は、停止判定時間Tth1、例えば200[msec]より大きい値、例えば1[sec]に設定しているので、異常検出カウンタcnt3は異常確定時間Tth3に達する前にクリアされ、確実に、モータ電流検出回路507の異常確定を回避することができる。
このように、実施の形態4でも、実施の形態1と同様に、モータ電流検出回路507の異常状態ABNによって検出電流値Imdが0[A]となる場合には、異常確定を行ない、モータ駆動回路509の各トランジスタ509a〜509dをオフ、リレー505をオフすることでマニュアルステアリングにすることができる。一方、高速操舵によって検出電流値Imdがほぼ0[A]となる場合には、誤検出せずパワーステアリングの制御を継続させることができる。
なお、図22に示す実施の形態4における停止判定処理S001は、実施の形態2にも適用することができる。この場合には、実施の形態2で使用された図2に示すECU5の内部構成が、図20に置き換えられ、図3に示すメイン処理S100が図21のメイン処理S100に置き換えられ、また、図7に示す停止判定処理S001が、図22に示す停止判定処理S001に置き換えられる。
実施の形態5.
この発明による電動パワーステアリング装置の実施の形態5では、実施の形態1における図7に示す停止判定処理S001が、図25に示す停止判定処理S001に置き換えられる。図1に示す電動パワーステアリング装置の全体構成、図2に示すECU5の内部構成、図3に示すメイン処理S100、図5に示すモータ電流制御手段、図6に示す異常判定処理S109、図8に示す異常検出処理S002、および図9に示す異常確定処理S003は、この実施の形態5でも、実施の形態1と同じである。言換えれば、図6のステップS001における停止判定処理が、実施の形態1では、図7に示すフローチャートに従って実行されたが、この図7に代わり、実施の形態5では、図25に示すフローチャートに従って実行される。その他は実施の形態1と同じである。
図25のフローチャートでは、図7のフローチャートにおけるステップS031が省略され、ステップS032が、ステップS092に置き換えられ、またステップS035がステップS095に置き換えられる。その他は、図7のフローチャートと同じである。図25のステップS092では、図3のステップS103で入力される操舵トルクを表わす操舵トルク信号TRQが、所定値TRth1と比較され、操舵トルク信号TRQが所定値TRth1を超えているか否か、すなわちTRQ>TRth1であるか否かが判定される。ステップS092の判定結果がYesであれば、ステップS033に進み、第1の停止判定条件成立カウンタcnt1がインクリメントされ、ステップS092の判定結果がNoであれば、ステップS034に進み、停止判定条件成立カウンタcnt1がクリアされる。図25のステップS095では、図3のステップS103で入力される操舵トルクを表わす操舵トルク信号TRQが、所定値TRth2と比較され、操舵トルク信号TRQが所定値TRth2未満か否か、すなわちTRQ<TRth2であるか否かが判定される。ステップS095の判定結果がYesであれば、ステップS036に進み、第2の停止判定条件成立カウンタcnt2がインクリメントされ、ステップS095の判定結果がNoであれば、ステップS037に進み、停止判定条件成立カウンタcnt2がクリアされる。なお、図7と同様に、ステップS038において、停止判定条件成立カウンタcnt1、cnt2のカウント値が停止判定時間Tth1と比較され、cnt1≧Tth1またはcnt2≧Tth1が成立するか否か判定される。ステップS038の判定結果がYesになれば、ステップS039に進み、停止判定フラグFlag1が1にセットされ、ステップS038の判定結果がNoになれば、ステップS040に進み、停止判定フラグFlag1がクリアされる。
次に、電流検出回路507が異常状態ABNとなり、検出電流値Imdが0[A]に固定している場合の動作について、図26を用いて説明する。図26のパラメータ(a)〜(d)、(h)〜(l)は、図10、11の対応するパラメータと同じである。
検出電流値Imdが0[A]に固定されると、実施の形態1と同様に、トルクフィードバック系が振動状態となり、その結果、パラメータ(a)に示す操舵トルク信号TRQ、パラメータ(b)に示す目標電流値Imt、およびパラメータ(d)に示すモータ実電流Imrが振動状態となる。
パラメータ(b)に示す目標電流値Imtが振動するので、目標電流値Imtが所定値Ithtを超える期間C1と、それが所定値Itht以下となる期間C2が交互に現われる。断続的に繰返される各期間C1では、目標電流値Imtが所定値Ithtを超え、しかも検出電流値Imdが所定値Ithd未満である条件が成立するため、モータ電流検出回路507の異常状態ABNが検出され、図8のステップS052、ステップS053の判定結果はともにYesとなり、異常検出カウンタcnt3はインクリメント動作する。断続的に繰返される各期間C2では、目標電流値Imtが所定値Itht以下であり、しかも検出電流値Imdが所定値Ithd未満であるため、ステップS052の判定結果はYes、ステップS053の判定結果はNoとなり、異常検出カウンタcnt3のカウント値はクリアされることなく、保持される。その結果、図26のパラメータ(k)に示す異常検出カウンタcnt3のカウンタ値は、モータ電流検出回路507の異常状態ABNの積分時間値CIを表わす。そしてタイミングポイントEで、異常検出カウンタcnt3のカウント値、すなわちモータ電流検出回路507の異常状態ABNの積分時間値CIが異常確定時間Tth3に達し、パラメータ(l)に示すように、異常確定フラグFlag2が1にセットされる。異常確定フラグFlag2が1にセットされると、図21のステップS110でYesに分岐し、ステップS111、S112で、モータ駆動回路509のすべてのトランジスタ509a〜509dがオフされ、リレー505がオフされる。
次に、モータ電流検出回路507を含む各回路、機器が正常な状態で高速操舵した場合、電気モータ6の発電電圧(逆起電力)でモータ電流Imrがほぼ0[A]になるが、この場合の動作について図27を用いて説明する。図27の各パラメータ(a)〜(d)、(h)〜(l)は、図26の対応するパラメータと同じである。
図27は、タイミングポイントAから、ステアリングハンドル1を右方向に操舵した場合を示す。ステアリングハンドル1を右方向に操舵することで、実施の形態1と同様に、パラメータ(b)に示す目標電流値Imtがプラス方向に増加する。図3のステップS107によるモータ電流制御は、目標電流値Imtと検出電流値Imdが一致するように電流フィードバック制御を行なうが、高速操舵しているので、電気モータ6の発電電圧が大きく、パラメータ(d)に示すモータ実電流Imrがほぼ0[A]となるため、パラメータ(c)に示す検出電流値Imdも0[A]となり、補助トルク不足となる。その結果、パラメータ(a)に示す操舵トルク信号TRQが急増している。この状況では、図27に示すように、パラメータ(a)に示す操舵トルク信号TRQ、およびパラメータ(b)に示す目標電流値Imtは、時間とともに単調変化、すなわち時間とともに単調増加している。
このような状況では、先ず、パラメータ(a)に示す期間Bで、操舵トルク信号TRQが所定値TRth1を越えるので、第1の停止判定条件成立カウンタcnt1がインクリメント動作し、停止判定時間Tth1の経過後に、停止判定フラグFlag1が1にセットされる。また、パラメータ(b)に示す期間Cでは、目標電流値Imtが所定値Ithtを超え、しかも検出電流値Imdが所定値Ithd未満である条件が成立するので、図8の異常検出カウンタcnt3がインクリメント動作するが、停止判定フラグFlag1が1にセットされた以降、異常検出カウンタcnt3はクリアされるので、結果として、モータ電流検出回路507の異常状態ABNの積分時間値CIの生成が抑制され、モータ電流検出回路507の異常確定には至らない。異常確定時間Tth3は、停止判定時間Tth1、例えば200[msec]より大きい値、例えば1[sec]に設定しているので、異常検出カウンタcnt3は異常確定時間Tth3に達する前にクリアされ、確実に、モータ電流検出回路507の異常確定を回避することができる。
このように、実施の形態5でも、実施の形態1と同様に、モータ電流検出回路507の異常状態ABNによって検出電流値Imdが0[A]となる場合には、異常確定を行ない、モータ駆動回路509の各トランジスタ509a〜509dをオフ、リレー505をオフすることで、マニュアルステアリングにすることができる。一方、高速操舵によって検出電流値Imdがほぼ0[A]となる場合には、誤検出せずパワーステアリングの制御を継続させることができる。
この実施の形態5による電動パワーステアリング装置では、目標電流値Imtの絶対値が所定値Tthtを超え、しかも検出電流値Imdの絶対値が所定値Ithd未満の状態をモータ電流検出回路507の異常状態ABNとして検出する異常検出手段S002と、前記異常状態ABNが断続する状態で、前記異常状態の積算時間値CIが異常確定時間Tth3に達したときに、モータ電流検出回路507の異常を確定する異常確定手段S003と、操舵トルク信号TRQが所定値TRth1を超えた状態が停止判定時間Tth1継続したときに、前記異常状態ABNの積算時間値CIの生成を抑え、前記異常確定手段S003による異常確定を強制的に停止させる停止判定手段S001とを備えるので、安価な構成で、モータ電流検出回路507の異常状態ABNを高速操舵状態から区別して、異常確定することができる。
実施の形態6.
この発明による電動パワーステアリング装置の実施の形態6は、図7に示す実施の形態1における停止判定処理S001を、図25に示す実施の形態5における停止判定処理S001に置き換え、また、図8に示す実施の形態1における異常検出処理S002を、図14に示す実施の形態2における異常検出処理S002に置き換えたものである。図1に示す電動パワーステアリング装置の全体構成、図2に示すECU5の内部構成、図3に示すメイン処理S100、図5に示すモータ電流制御手段、図6に示す異常判定処理S109、および図9に示す異常確定処理S003は、この実施の形態6でも、実施の形態1と同じである。
この実施の形態6において、モータ電流検出回路507が異常状態ABNとなり、検出電流値Imdが0[A]に固定されている場合の動作について、図28を用いて説明する。図28の各パラメータ(a)〜(d)、(h)〜(l)は、図10、11の対応するパラメータと同じであり、パラメータ(m)は、図15の対応するパラメータと同じである。
検出電流値Imdが0[A]に固定されると、実施の形態1と同様に、トルクフィードバック系が振動状態となり、その結果、パラメータ(a)に示す操舵トルク信号TRQ、パラメータ(b)に示す目標電流値Imt、パラメータ(d)に示すモータ実電流Imr、およびパラメータ(m)に示すPWM制御のデューティ比Dutyが振動状態となる。
パラメータ(m)に示すPWM制御のデューティDutyも振動するので、PWM制御のデューティDutyが所定値Dthを超える期間C1と、それが所定値Dth以下となる期間C2が交互に現われる。断続的に繰返される各期間C1では、デューティ比Dutyが所定値Dthを超え、しかも検出電流値Imdが所定値Ithd未満である条件が成立するため、モータ電流検出回路507の異常状態ABNが検出され、図14のステップS052、ステップS057の判定結果はともにYesとなり、異常検出カウンタcnt3はインクリメント動作する。断続的に繰返される各期間C2では、デューティ比Dutyが所定値Dth以下であり、しかも検出電流値Imdが所定値Ithd未満であるため、ステップS052の判定結果はYes、ステップS057の判定結果はNoとなり、異常検出カウンタcnt3のカウント値はクリアされることなく、保持される。その結果、図28のパラメータ(k)に示す異常検出カウンタcnt3のカウンタ値は、モータ電流検出回路507の異常状態ABNの積分時間値CIを表わす。そしてタイミングポイントEで、異常検出カウンタcnt3のカウント値、すなわちモータ電流検出回路507の異常状態ABNの積分時間値CIが異常確定時間Tth3に達し、パラメータ(l)に示すように、異常確定フラグFlag2が1にセットされる。異常確定フラグFlag2が1にセットされると、図21のステップS110でYesに分岐し、ステップS111、S112で、モータ駆動回路509のすべてのトランジスタ509a〜509dがオフされ、リレー505がオフされる。
次に、モータ電流検出回路507を含む各回路、機器が正常な状態で高速操舵した場合、電気モータの発電電圧(逆起電力)でモータ電流Imrがほぼ0[A]になるが、この場合の動作について図29を用いて説明する。図29の各パラメータ(a)〜(d)、(h)〜(m)は、図28の対応するパラメータと同じである。
図29は、タイミングポイントAから、ステアリングハンドル1を右方向に操舵した場合を示す。ステアリングハンドル1を右方向に操舵することで、実施の形態1と同様に、パラメータ(b)に示す目標電流値Imtがプラス方向に増加する。図3のステップS107によるモータ電流制御は、目標電流値Imtと検出電流値Imdが一致するように電流フィードバック制御を行なうが、高速操舵しているので、電気モータ6の発電電圧が大きく、パラメータ(d)に示すように、モータ実電流Imrがほぼ0[A]となるため、パラメータ(c)に示す検出電流値Imdも0[A]となり、その結果、パラメータ(m)に示すように、PWM制御のデユーティ比Dutyが急増する。この状況では、図29に示すように、パラメータ(a)に示す操舵トルク信号TRQ、パラメータ(b)に示す目標電流値Imt、およびパラメータ(m)に示すPWM制御のデユーティ比Dutyは、時間とともに単調変化、すなわち時間とともに単調増加する。
このような状況では、パラメータ(a)に示す期間Bで、操舵トルクTRQが所定値TRth1を越えるので、停止判定条件成立カウンタcnt1がインクリメント動作し、停止判定時間Tth1の経過後に、停止判定フラグFlag1が1にセットされる。また、パラメータ(m)に示す期間Cでは、パラメータ(c)に示すPWM制御のデューティDutyが所定値Dthを超え、しかもパラメータ(c)に示す検出電流値Imdが所定値Ithd未満となる条件が成立するので、図14の異常検出カウンタcnt3がインクリメント動作するが、パラメータ(j)に示す停止判定フラグFlag1が1にセットされた以降、異常検出カウンタcnt3はクリアされるので、結果として、パラメータ(k)に示すように、モータ電流検出回路507の異常状態ABNの積分時間値CIの生成が抑制され、パラメータ(k)に示すように、モータ電流検出回路507の異常確定には至らない。異常確定時間Tth3は停止判定時間Tth1、例えば200[msec]より大きい値、例えば1[sec]に設定しているので、異常検出カウンタcnt3は異常確定時間Tth3に達する前にクリアされ、確実に、モータ電流検出回路507の異常確定を回避することができる。
このように、実施の形態6でも、実施の形態1と同様に、モータ電流検出回路507の異常状態ABNによって検出電流値Imdが0[A]となる場合には、異常確定を行ない、モータ駆動回路509の各トランジスタ509a〜509dをオフ、リレー505をオフすることで、マニュアルステアリングにすることができる。一方、高速操舵によって検出電流値Imdがほぼ0[A]となる場合には、誤検出せずパワーステアリングの制御を継続させることができる。
実施の形態4について、図20に示すようにECU5の内部にバッテリ電圧検出回路507を加え、図21に示すメイン処理S100のようにバッテリ電圧VBを入力するステップS113を使用し、図22に示す判定停止処理S001のように、バッテリ電圧VBとPWM制御デューティDutyからモータ印加電圧Vmを算出するステップS081を使用する構成は、実施の形態6にも適用することができる。
この実施の形態6による電動パワーステアリング装置では、PWM制御のデューティ比Dutyが所定値Dthを超え、しかも検出電流値Imdの絶対値が所定値Ithd未満の状態をモータ電流検出回路507の異常状態ABNとして検出する異常検出手段S002と、前記異常状態ABNが
断続的に繰返される状態で、前記異常状態ABNの積算時間値CIが異常確定時間Tth3に
達したとき、モータ電流検出回路507の異常を確定する異常確定手段S003と、操舵トルク信号TRQが所定値TRth1を超えた状態が停止判定時間Tth1継続したときに、前記異常状態ABNの積算時間値CIの生成を抑え、前記異常確定手段S003による異常確定を強制的に停止させる停止判定手段S001とを備えるので、安価な構成で、モータ電流検出回路507の異常状態ABNを高速操舵状態から区別して、異常確定することができる。
なお、実施の形態1〜6では、モータ電流検出回路507の故障に加えて、電気モータ6の断線故障も検出することができる。この電気モータ6の断線故障は、モータ実電流Imrが流れない断線故障である。この場合にも、検出電流値Imdは0[A]に固定されるが、この場合には操舵トルク信号TRQ、目標電流値Imt、およびモータ実電流Imrも0に固定されるので、これらが0に固定されたことを検出することにより、モータ電流検出回路507の異常状態ABNと区別して検出することが可能である。