以下、本発明を実施するための形態について説明する。本発明によるステージ装置は、様々な分野で用いることができ、特に半導体製造分野で検査などに用いられるSEMの試料ステージとして有用である。したがって以下では本発明をSEMの試料ステージに適用する場合の実施形態について説明する。
図1に、第1の実施形態に係るSEMの全体的な構成を模式化して示す。SEMは、真空ポンプ1による排気で真空状態にすることができるようにされた試料室2を備えている。試料室2は、その内部にステージ装置として試料ステージ3が設けられている。試料ステージ3は、その要部の斜視状態を模式化して示す図2にも見られるように、ベース4、センターテーブル5、およびトップテーブル6を備えている。
ベース4は、試料室2を形成する枠体に固定して設けられ、試料室2中で静止した状態にある。このベース4には、センターテーブル5の移動に対する案内を行う滑り案内部材(X滑り案内部材)であるXレール7が固定的に設けられている。
センターテーブル5は、図1や図2に矢印で示すX方向で移動するテーブルであり、その下面に設けられたスライダ8を介してXレール7に拘束されてX方向に移動できるようにされている。この場合、スライダ8とXレール7は、センターテーブル5についての案内手段を構成している。センターテーブル5のX動(X方向移動)は、Xボールねじ9を要素とする駆動機構によりなすようにされている。具体的には、Xボールねじ9のナットにXロッド10を接続し、またXロッド10をセンターテーブル5に接続する一方、Xボールねじ9のねじ軸にシャフト11を接続し、さらにシャフト11にモータ12を接続することで駆動機構が形成され、モータ12によるXボールねじ9の駆動でXロッド10がX方向に押し引きされて移動し、これに応じてセンターテーブル5が押し引きされて移動するようにされている。またセンターテーブル5は、その上面に、トップテーブル6の移動に対する案内を行う滑り案内部材(Y滑り案内部材)であるYレール13がXレール7と直交する状態にして固定的に設けられている。
トップテーブル6は、Y方向(X方向に直交する方向)で移動するテーブルであり、その下面に設けられたスライダ14を介してYレール13に拘束されてY方向に移動できるようにされている。この場合、スライダ14とYレール13は、トップテーブル6についての案内手段を構成している。トップテーブル6のY動(Y方向移動)は、センターテーブル5の場合と同様に形成される駆動機構によりなすようにされている。なお、図1や図2では、モータ29だけがトップテーブル6の駆動機構の要素として現れている。またトップテーブル6は、その上面に試料ホルダ15が固定状態で設けられ、この試料ホルダ15に試料、具体的にはウェーハ16を固定状態で載置できるようにされている。
センターテーブル5とトップテーブル6は、それらのX動やY動に関する位置決めがなされ、その各位置決めを通じて最終的に試料ホルダ15に載置のウェーハ16に位置決めを行わせる。ウェーハ16の位置決め、つまりステージ位置決めについての制御は、位置決め制御系でなされる。そのための位置決め制御系は、トップテーブル6に取り付けられたバーミラー17を用いたレーザ干渉などによりトップテーブル6の位置検出を行う位置検出器18で構成される位置検出系、および位置決め制御装置19により形成されている。こうした位置決め制御系における位置決め制御装置19は、位置検出系により検出されるウェーハ16の現在位置(これはセンターテーブル5とトップテーブル6それぞれの現在位置でもある)に基づいてモータ12やモータ29を駆動制御することでセンターテーブル5やトップテーブル6のX動やY動を制御し、また後述する第2のX制動機構31や第2のY制動機構33の動作状態を制御する。そのため位置決め制御装置19は、内蔵のメモリに格納してある制御プログラムに基づいて処理を実行することで上述のような制御を行えるようにされており、その制御プログラムには、モータ12やモータ29の駆動制御に機能するモータ制御部、および第2のX制動機構31や第2のY制動機構33の動作状態の制御に機能する制動制御部が含まれている。
以上のような試料室2の上部には、電子線源となる電子銃20、電子銃20からの電子線21の軌道を変える偏向器22、電子線21を収束させる電子レンズ23、ウェーハ16から放射される二次電子24を取り込むための二次電子検出器25などが鏡筒26に組み込まれて設けられている。また二次電子検出器25からの信号を画像化処理して二次電子像を生成する制御部27が設けられ、さらに制御部27で生成した二次電子像などを表示するモニター28が設けられている。
以上は、SEMにおける一般的で構成で、本発明による特徴的な構成は、試料ステージ3に制動機構が設けられていることである。制動機構は、固定的制動用と動的制動用のそれぞれが設けられる。具体的には、図2に示すように、センターテーブル5については、固定的制動用である第1の制動機構として第1のX制動機構30が設けられ、動的制動用である第2の制動機構として第2のX制動機構31が設けられ、トップテーブル6については、固定的制動用である第1の制動機構として第1のY制動機構32が設けられ、動的制動用である第2の制動機構として第2のY制動機構33が設けられている。
ここで、固定的制動とは、センターテーブル5やトップテーブル6と静止要素(これは相対的なものであり、センターテーブル5に対してはベース4となり、トップテーブル6に対してはセンターテーブル5となる)の間に一定の摩擦力による静的な制動を固定的に加えることである。このような固定的制動は、試料ステージ3の機械剛性を高め、それにより振動やドリフトを低減させる。一方、動的制動とは、センターテーブル5やトップテーブル6を停止する際に、その停止タイミングに合せてセンターテーブル5やトップテーブル6に制動を加えること、つまりセンターテーブル5やトップテーブル6を停止させる際に駆動される制動のことである。このような動的制動は、センターテーブル5やトップテーブル6の高精度な位置決めを可能とし、ドリフトの低減も可能とする。こうした固定的制動と動的制動を組み合わせて用いることにより、それぞれの短所による悪影響を効果的に抑制しつつそれぞれの長所を活かすことができ、より高いレベルでの振動やドリフトの低減および位置決め精度が可能となる。
第1のX制動機構30は、ベース4(これはセンターテーブル5に対する静止要素)に設けられたXブレーキレール34における被摩擦面との間で発生させる摩擦力により制動力を得るようにされており、その制動力により、センターテーブル5に対し静的な制動を固定的に加えるようにされている。この場合、Xブレーキレール34は、第1のX制動機構30の制動用摩擦力を発生させるための被摩擦面を与える要素であり、X方向に延びるようにしてベース4に設けられている。
第2のX制動機構31は、ベース4に設けられたXブレーキレール35との間に発生させる摩擦力により制動力を得るようにされており、その制動力により、センターテーブル5に対しその停止タイミングで制動を加えてセンターテーブル5を停止状態にするようにされている。この場合、Xブレーキレール35は、第2のX制動機構31の制動用摩擦力を発生させるための被摩擦面を与える要素であり、X方向に延びるようにしてベース4に設けられている。
第1のY制動機構32は、センターテーブル5(これはトップテーブル6に対する静止要素)に設けられたYブレーキレール36との間に発生させる摩擦力により制動力を得るようにされており、その制動力により、トップテーブル6に対し静的な制動を固定的に加えるようにされている。この場合、Yブレーキレール36は、第1のY制動機構32の制動用摩擦力を発生させるための被摩擦面を与える要素であり、Y方向に延びるようにしてセンターテーブル5に設けられている。
第2のY制動機構33は、センターテーブル5に設けられたYブレーキレール37との間で必要時に発生させられる摩擦により制動力を得るようにされており、その制動力により、トップテーブル6に対しその停止タイミングで制動を加えてトップテーブル6を停止状態にするようにされている。この場合、Yブレーキレール37は、第2のY制動機構33の制動用摩擦力を発生させるための被摩擦面を与える要素であり、Y方向に延びるようにしてセンターテーブル5に設けられている。
以下では、以上のようなSEMによりなされるウェーハ16の検査、より具体的にはウェーハ16に形成されている素子や集積回路における各種パターンの形状や寸法の検査について概略を説明する。まず検査の概略について説明する。
位置決め制御装置19は、検査を実行する上で必要となる情報を有している。例えば検査対象となるパターンのチップ(素子や集積回路のチップ)上での位置に関する情報や検査対象となるチップのウェーハ上での位置に関する情報などのパターン位置情報、それにパターンに関する寸法計測項目(パターン線幅やピッチなど)に関する情報などがその例である。この場合、パターン位置情報は、適宜に設定される座標を用いて記述され、また順次に検査すべきパターンやチップの検査順序と関係付けて記述されることになる。
検査を実行する際には、まずパターン位置情報に基づいて位置決め制御装置19が試料ステージ3におけるセンターテーブル5やトップテーブル6のX動やY動を制御し、また第2のX制動機構31の動作状態を制御することでウェーハ16に必要な位置決め(ステージ位置決め)をなさせる。それからその位置決め状態で電子線21をウェーハ16に照射するとともに偏向器22で走査して数万倍から数十万倍の二次電子像を取得し、それをモニター28に表示する。そして二次電子像の明暗の変化からパターンのエッジを検出してパターンの形状を判別し、検査対象のパターンにおける所定の寸法計測項目について寸法値を求める。こうした検査処理は、1回の位置決めで処理できる範囲を終えるごとに位置決めを繰返しながら進められることになる。
次に、ステージ位置決めについて説明する。ステージ位置決めにおける制御は位置決め制御装置19が行う。位置決め制御装置19によるステージ位置決め制御は、図3にその流れを示すように、ステップS10〜S70の各処理過程を基本的なものとして含む。
まずステップS10で現在位置の検出がなされる。現在位置の検出では、位置決め制御装置19が位置検出器18を用いて試料ステージ3におけるウェーハ16の現在位置(より具体的には、現在のテージ位置決め制御で対象になっているウェーハ16におけるパターンやチップの現在位置)を検出する。ステップS20では、目標位置の読込みがなされる。目標位置の読込みは、位置決め制御装置19が上述のパターン位置情報を読み込むことでなされる。ここで、パターン位置情報には、上述のように、検査順序情報が含まれているので、位置決め制御装置19は、その検査順序にしたがってパターン位置情報を読み込むことになる。ステップS30では、ブレーキOFFがなされる。このブレーキOFFでは、動的制動用である第2の制動機構(第2のX制動機構31、第2のY制動機構33)による制動が解除される。
ステップS40では、目標位置への移動がなされる。目標位置への移動は、ステップS20で読み込んだ目標位置とステップS10で検出した現在位置の偏差に応じてセンターテーブル5やトップテーブル6にX動やY動をなさせることで行われる。
ステップS50では、現在位置を検出する。この現在位置の検出では、ステップS40で行った目標位置への移動動作後の現在位置を検出する。ステップS60では、ステージ位置決め状態が許容範囲にあるかを判定する。この処理では、ステップS50で検出した現在位置と目標位置の偏差が予め設定の許容範囲にあるかを判定する。許容範囲でないと判定された場合には、ステップS40に戻り、それ以降の処理を繰り返す。一方、許容範囲であると判定された場合には、ステップS70に進む。ステップS70では、ブレーキONがなされる。具体的には、ステップS30で解除した第2の制動機構による制動を作動させてセンターテーブル5やトップテーブル6に制動を加える。このステップS70でのブレーキONがなされると位置決めが終了となる。
ここで、ステージ位置決めは、X方向のステージ位置決めとY方向のステージ位置決めの組合せでなされる。X方向とY方向それぞれのステージ位置決めは基本的には同様で、以上のようなステージ位置決め制御は、X方向とY方向のいずれにもあてはまる。ただし、X方向とY方向それぞれに対するステージ位置決め制御は並列的に進められ、X方向、Y方向のいずれかで最終的な位置決め状態が得られれば、その時点でステージ位置決めが完了となる。
以下では、制動機構の具体的な構成例について説明する。なお、第1のX制動機構30と第1のY制動機構32は、いずれも固定的制動用の第1の制動機構であり、基本的には同一な構成とされており、また第2のX制動機構31と第2のY制動機構33は、いずれも動的制動用の第2の制動機構であり、基本的には同一な構成とされている。したがって以下では、第1のX制動機構30と第2のX制動機構31についてだけ説明し、第1のY制動機構32と第2のY制動機構33についてはその説明を援用するものとする。
まず第1のX制動機構30について説明する。図4に、第1のX制動機構30の構成を断面図にして示す。第1のX制動機構30は、固定部材40、圧縮ばね41、板状ばね42、摺動部材43、およびばねホルダ44を主な要素として構成されている。
固定部材40は、全体として細長いブロック状に形成され、両端部に組付け用段部40aが設けられ、また圧縮ばね41の設置用である凹部が中間部に設けられている。この固定部材40は、Xブレーキレール34の延在方向と同じ方向に向けてセンターテーブル5に固定される。
圧縮ばね41は、上下方向でばね力を発揮する状態にして固定部材40にその設置用凹部において組み込まれている。この圧縮ばね41は、複数で設けるのが通常で、図の例でもそのようにされている。
板状ばね42は、可撓部材であり、圧縮ばね41の付勢力(ばね力)を受けて撓むようにして固定部材40に取り付けられている。具体的には、固定部材40の下面に固定的に取り付けられている。
摺動部材43は、板状ばね42を介して圧縮ばね41の付勢力を受けるようにして固定部材40に取り付けられている。具体的には、板状ばね42の中央部下面に取り付けられ、その状態で板状ばね42を介して圧縮ばね41の付勢力を受けるようにされている。
ばねホルダ44は、圧縮ばね41を保持する部材であり、図示せぬばね保持穴が設けられ、その保持穴で圧縮ばね41を一定の状態で保持するようにされ、板状ばね42の中央部上面に取り付けられている。
こうした構成の第1のX制動機構30による固定的制動は、以下のようにして発揮される。摺動部材43は、板ばね42により水平方向の動きを拘束されており、この拘束により、後述のようにして摺動部材43がXブレーキレール34に押し付けられた状態で摺動部材43に作用する水平方向の力が圧縮ばね41に影響するのを避けることができるようにされている。そして上記拘束状態にある摺動部材43に対し圧縮ばね41が板ばね42を下方に撓ませつつ付勢力を加えている。このため摺動部材43は、ベース4に固定のXブレーキレール34の上面(被摩擦面)に圧縮ばね41の付勢力に応じた押付け力で定常的に押し付けられる状態となり、これによりセンターテーブル5とベース4の間に一定の摩擦力による静的な制動が固定的に得られることになる。つまりベース4によるセンターテーブル5に対する固定的制動がなされることになる。
ここで、図4の例では調整ボルト45を設けてある。この調整ボルト45は、必要時(第1のX制動機構30をセンターテーブル5に組付ける前や第1のX制動機構30をセンターテーブル5から取り外した際)に圧縮ばね41の付勢力が板ばね42に加わらないようにするのに用いられる。そのために調整ボルト45は、ばねホルダ44に設けてある図示せぬねじ孔に螺合できるようにされており、その螺合状態でばねホルダ44を固定部材40に対して拘束し、その拘束により圧縮ばね41の付勢力が板ばね42に加わらないようにする。一方、図4のように第1のX制動機構30がセンターテーブル5に組付けられている状態では、上記の螺合状態を解除することでばねホルダ44の拘束が解かれ、圧縮ばね41の付勢力が板ばね42に加わり、したがって摺動部材43に加わるようになる。
次に、第2のX制動機構31について説明する。第2のX制動機構31は、動的制動用であり、センターテーブル5を停止する際に、その停止タイミングでセンターテーブル5に制動を加えるのに機能する。したがって第2のX制動機構31は、必要時に制動を発揮できるようにする制動駆動手段、つまり第2のX制動機構31の摩擦面(これは後述のブレーキパッド60で与えられる)とXブレーキレール35の被摩擦面の間に両者を非押接とするために非接触とするギャップがあって摩擦を生じていない制動解除状態から必要時に制動用摩擦力を発生させるために第2のX制動機構31の摩擦面をXブレーキレール35の被摩擦面に押し付けるように駆動する制動駆動手段を必要とし、またその制動駆動手段による制動発揮動作をできるだけ高速で行えるようにすることが望まれる。
こうした要求に応えるために本実施形態では、電圧の印加により伸縮変位を生じることで高速に駆動力を発生させることのできるアクチェータ、具体的にはピエゾ素子を駆動力源とするピエゾアクチェータを用いて制動駆動手段を構成するようにしている。ただ、ピエゾアクチェータで制動駆動手段を構成するについては、ピエゾアクチェータの特性に関連して1つの問題がある。
ピエゾアクチェータは、電圧の印加により変位と力を発生するが、その変位と力が両立しないという特性を有している。つまり大きな変位を許容すれば、得られる力が小さくなり、大きな力を得ようとすれば、変位を小さくする必要があるという特性である。
ピエゾアクチェータの最大発生荷重は、理論的に無限の堅さで固定した場合(先端部が変位しないように拘束した場合)に加えた電圧に応じて起動した際の力となる。この力は、一般的にブロッキングフォースとも呼ばれているもので、加える電圧にほぼ比例する。また発生力はピエゾ素子の断面積に概ね比例している。一方、無負荷状態(f=0)では、加えた電圧に応じて最大の変位(δ)が発生する。最大の変位は、ピエゾ素子の積層長さにほぼ比例する。発生変位のオーダは積層全長の約0.1%(1000分の1)である。仮に、ピエゾアクチェータの全長を50mmとすると約0.05mmの変位であり、僅かな量である。
こうしたことから、仮にピエゾアクチェータの可動部先端(変位部先端)にブレーキパッドを装着する構造のブレーキユニットとして制動機構を構成した場合、そのブレーキパッドがピエゾアクチェータで駆動されることで押し付けられることになる被摩擦面とブレーキパッドの間の制動解除状態時のギャップを高精度に管理しなくてはならない。すなわち制動解除状態時のギャップに変動があると、ピエゾアクチェータで発生する制動駆動力、つまりブレーキパッドの押付け力が変化してしまい、そのために制動特性が安定しないことになってしまうということである。
本実施形態では、以上のようなピエゾアクチェータの特性に関連し、ピエゾアクチェータによる制動駆動手段に逆レバー構造(逆てこ構造)を組み込むようにしている。すなわち逆レバー構造によりピエゾアクチェータによる制動駆動動作を拡大して利用できるようにし、これにより上述のギャップ管理問題を効果的に緩和できるようにしている。
図5と図6に、第2のX制動機構31の構成の例を示す。図5は、第2のX制動機構31の外観を斜視状態で示し、図6は、第2のX制動機構31を各構成部品に分解した状態を斜視状態で示している。こられの図に見られるように、第2のX制動機構31は、ピエゾアクチェータ50、レバープレート51、ホルダ52、およびブレーキパッドユニット53を主な要素として構成されている。
ピエゾアクチェータ50は、その内部に図示を省略のピエゾ素子を積層状態で実装した構造とされ、それらのピエゾ素子に電圧を印加することにより先端部の伸縮変位部50aに軸方向で伸縮変位を発生させるようにされ、さらに伸縮変位部50aに当接ヘッド54が組付けられている。
レバープレート51は、ピエゾアクチェータ50の制動駆動動作を拡大してブレーキパッドユニット53に伝える逆レバー構造における駆動伝達レバーであり、実効長さがL2である長尺の作用点側アーム部51aと実効長さがL1である短尺の力点側アーム部51bを有するL字形のプレート状に形成されている。またレバープレート51は、L字形の角部に支点用孔51cが設けられ、この支点用孔51cにスリーブ55を介装させた状態で支点用ボルト56を通せるようにされている。さらにレバープレート51は、力点側アーム部51bの端部に駆動力受け部51dが設けられ、この駆動力受け部51dを介してピエゾアクチェータ50の制動駆動作用(制動駆動力ないし制動駆動動作)を受けることができるようにされている。
ホルダ52は、ピエゾアクチェータ50とレバープレート51の連結に介在する連結介在部材である。そのためにホルダ52は、締結部52aが設けられ、この締結部52aの締結孔52bにピエゾアクチェータ50の先端側を挿入してボルト57で締め付けることでピエゾアクチェータ50を組付けるようにされている。またホルダ52は、ねじ孔52cが設けられ、このねじ孔52cにレバープレート51の支点用ボルト56を螺合させることで、レバープレート51を組付けるようにされている。
以上のようにホルダ52に組付けられたピエゾアクチェータ50とレバープレート51は、ピエゾアクチェータ50の当接ヘッド54がレバープレート51の駆動力受け部51dに当接するように連結する状態になり、この状態でピエゾアクチェータ50の制動駆動作用がレバープレート51に伝わるようになっている。
こうした伝達構造は、ピエゾアクチェータ50の伸縮変位部50aの伸び変位には有効であるが縮み変位には有効でない。そこで縮み変位伝達についての補助手段としてボールプランジャ58を設ける。ボールプランジャ58は、先端が球状に形成され、また内部に圧縮ばね(図示せず)を有する。このボールプランジャ58は、締結部52aの締結孔52bに対向するようにしてホルダ52に設けられている組付け孔52dを介してホルダ52に組付けられる。そしてこの組付け状態にあって、ホルダ52に対し上述のような組付け状態にあるレバープレート51の駆動力受け部51dに球状先端を当接させ、それにより駆動力受け部51dを上記圧縮ばねの付勢力でピエゾアクチェータ50の側に付勢するようにされている。つまりピエゾアクチェータ50の伸縮変位部50aに生じる縮み変位に駆動力受け部51dを追随させるようになっている。
ブレーキパッドユニット53は、ブレーキパッド60、圧縮ばねホルダ61およびL型ブラケット62を主な要素として構成されている。
ブレーキパッド60は、Xブレーキレール35の被摩擦面に押接してXブレーキレール35との間で制動用の摩擦力を得るのに機能する要素であり、凸形球面状とされた押接面60aを有した平板状に形成されている。
圧縮ばねホルダ61は、ブレーキパッド60を付勢するための圧縮ばね63を保持する要素であり、保持穴61aが設けられ、この保持穴61aで圧縮ばね63を保持するようにされている。図の例では、保持穴61aが4個設けられ、したがって圧縮ばね63を4個保持できるようにされている。この圧縮ばねホルダ61は、ボルト64(図6では1本だけを示してあるが、実際には4本が用いられる)によりブレーキパッド60を支持しており、その状態で圧縮ばね63によりブレーキパッド60を付勢できるようにしている。
L型ブラケット62は、ブレーキパッドユニット53のレバープレート51への連結に介在する要素であり、レバープレート51の連結に用いられるレバー連結面部62aと圧縮ばねホルダ61の固定に用いられるホルダ固定面部62bをL字形に組み合わせた構造とされている。
以上のような第2のX制動機構31では、ピエゾアクチェータ50の制動駆動動作がレバープレート51により作用点側アーム部51aの実効長さL2と力点側アーム部51bの実効長さL1の比率に応じた比率で拡大されてブレーキパッド60に伝えられる。このため、例えばピエゾアクチェータ50の全長が50mmである場合に伸縮変位部50aに可能な0.05mm程度といった僅かな伸び変位でも大きな制動駆動動作量を得ることができ、制動解除状態においてブレーキパッド60とXブレーキレール35の間に必要なギャップg(図9参照)の管理にラフ性を許容できるようになる。
ここで、レバープレート51によるピエゾアクチェータ50の制動駆動動作の拡大は、ピエゾアクチェータ50が発生させる制動駆動力をL1/L2の比率で縮小させることになる。しかし、この縮小による制動駆動力の低下は、ピエゾアクチェータ50に大きな伸び変位を生じさせることによる制動駆動力の低下に比べて小さなもので済み、しかもピエゾアクチェータ50は、例えばピエゾ素子が10mm角の断面を有する場合であれば、数千ニュートンの制動駆動力を得ることが可能であり、実用上で問題になることはない。
また以上のような第2のX制動機構31では、ブレーキパッド60を圧縮ばね63で付勢するようにしている。つまりブレーキパッド60とレバープレート51の間に圧縮ばね63を介在させ、ピエゾアクチェータ50の制動駆動力をレバープレート51と圧縮ばね63を介してブレーキパッド60に加えるようにしている。このため制動作動時にブレーキパッド60に加わる力がピエゾアクチェータ50に悪影響を及ぼすのを効果的に避けることができる。すなわちピエゾ素子を積層して形成したピエゾアクチェータ50は、一般的特性として、軸方向の力に対しては大きな抗力があるが、引張りや曲げあるいはねじりに対して弱いという性質を持っている。そのため制動作動時にブレーキパッド60に加わる力がピエゾアクチェータ50に直接伝わる場合であると、その力で引張りや曲げなどを生じてピエゾアクチェータ50が損傷される可能性がある。こうしたピエゾアクチェータ50の特性にあって、上述のようにピエゾアクチェータ50とブレーキパッド60の間にレバープレート51と圧縮ばね63を介在させる構造であると、レーキパッド60からの力が直接にピエゾアクチェータ50に伝わるのを効果的に避けることができ、これによりピエゾアクチェータ50に損傷原因となる力が加わるのを防ぐことができる。
以下では、第1のX制動機構30と第2のX制動機構31それぞれのセンターテーブル5への組付け構造について説明する。なお以下で説明する組付け構造は、第1のY制動機構32と第2のY制動機構33にも同様に当てはまる。
図7に、第1のX制動機構30のセンターテーブル5への組付け構造を示す。センターテーブル5には、組付け開口70が設けられている。組付け開口70は、第1のX制動機構30の固定部材40の外形に対応する形状に形成され、固定部材40の両端部の組付け用段部40aに対応する組付け受け段部70aが両端部に設けられている。このようなセンターテーブル5に第1のX制動機構30を組付けるには、組付け開口70に第1のX制動機構30を嵌めこみ、それから組付け用段部40aに設けてあるボルト孔40bを通したボルト71を組付け受け段部70aに設けてあるねじ孔70bに締め込むことで第1のX制動機構30を固定する。このようにセンターテーブル5に組付けられた第1のX制動機構30は、摺動部材43がXブレーキレール34の上面における被摩擦面に一定の押接力で押接することになる。
図8に、第2のX制動機構31のセンターテーブル5への組付け構造を示す。センターテーブル5には、確認用開口72が設けられるとともに、第2のX制動機構31をそのホルダ52においてねじ止めするためのボルト孔73が設けられている。このようなセンターテーブル5に第2のX制動機構31を組付けるには、確認用開口72にブレーキパッドユニット53がセンターテーブル5の下面側から臨む状態にし、それからボルト孔73を通したボルト68をホルダ52に設けてあるねじ孔52eに締め込むことで第2のX制動機構31をセンターテーブル5の下面に固定する。このようにセンターテーブル5に組付けられた第2のX制動機構31は、ブレーキパッド60がXブレーキレール35の側面における被摩擦面に対し所定のギャップをもって近接する状態になり、そのブレーキパッド60の状態を確認用開口72から確認できるようになっている。
以下では他の実施形態について説明する。第2の実施形態では、固定的制動用の第1の制動機構と動的制動用の第2の制動機構に1本のブレーキレールを共用させるようにする。図9に、第1のX制動機構30と第2のX制動機構31にXブレーキレール35を共用させる例を示す。第1のX制動機構30は、摺動部材43(図9では見えない状態になっている)をブレーキレールの上面に押接させている。一方、第2のX制動機構31は、制動解除状態にあってブレーキパッド60をXブレーキレール35の側面に僅かなギャップgを空けて近接させており、この状態からブレーキパッド60をXブレーキレール35の側面に押接させることで制動状態となるようにされている。
第3の実施形態では、動的制動用の第2の制動機構をブレーキレールの上面に作用させるようにする。図10に、第2のX制動機構31をXブレーキレール35の上面に作用させる例を示す。図10の例では、図6におけるL型ブラケット62に替えてT型ブラケット75を用い、これによりブレーキパッドユニット53の向きを変えることで、Xブレーキレール35の上面にブレーキパッド60を押接させることができるようにしている。
第4の実施形態では、第1の実施形態における第2のX制動機構31のブレーキパッドユニット53に改変を加える。図11に、第4の実施形態における第2のX制動機構80を各構成部品に分解した状態を斜視状態で示す。本実施形態の第2のX制動機構80は、基本的には第2のX制動機構31と同様で、そのブレーキパッドユニット81に特徴がある。具体的には、図6の圧縮ばねホルダ61に替えて圧縮ばねホルダ82を用いている点、および可撓部材である板ばね83を加えている点で第2のX制動機構31におけるブレーキパッドユニット53と相違している。
圧縮ばねホルダ82は、図6の圧縮ばねホルダ61より細長く形成され、圧縮ばねホルダ61における保持穴61aと同様な保持穴82aが設けられるとともに、両端部に段部82bが設けられている。板ばね83は、幅と長さを圧縮ばねホルダ82とほぼ同じにされており、圧縮ばねホルダ82の保持穴82aに対応させるようにしてばね通し孔83aが設けられている。この板ばね83は、段部82bを介して圧縮ばねホルダ82にねじ止めで固定されるとともに、ブレーキパッド60にもその裏面側にねじ止めで固定される。つまりブレーキパッド60は、板ばね83を介して圧縮ばねホルダ82に固定されている。このような板ばね83を加えたことにより、ブレーキパッド60の押し付け方向に直交する方向のせん断力に対する剛性を高めることができ、より安定的な制動を行えるようになる。ここで、本実施形態では、板ばね83にばね通し孔83aを設けているが、これは必ずしも必要でない。すなわち圧縮ばね63を板ばね83と圧縮ばねホルダ82の間に収めるようにし、圧縮ばね63の付勢が板ばね83を介してブレーキパッド60に伝わるようにする構造とすることも可能である。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、これらは代表的な例に過ぎず、本発明はその趣旨を逸脱することのない範囲で様々な形態で実施することができる。例えば以上の実施形態はいずれもSEMにおける試料ステージに関した場合であったが、これに限られず、本発明は様々な用途のステージ装置に適用することができる。また以上の各実施形態では、動的制動用の第2の制動機構における制動駆動手段の駆動源をピエゾアクチェータで形成するようにしていたが、これに限られず、ピエゾアクチェータ以外のアクチェータを用いることも可能である。ただ、その場合でもピエゾアクチェータと同程度の高速動作を可能とするアクチェータを用いるのが望ましい。また以上の各実施形態では、静止要素にブレーキレールを設け、そのブレーキレールで被摩擦面を得るようにしていたが、必ずしもこのようにする必要はなく、ブレーキレール以外で被摩擦面を得るようにすることも可能である。