JP5178263B2 - 熱式流量計およびその初期調整方法と初期調整装置 - Google Patents

熱式流量計およびその初期調整方法と初期調整装置 Download PDF

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Description

本発明は、熱式流量センサのロットによって異なる特性を調整し、平均的な特性に対するバラツキを小さくした熱式流量計およびその初期調整方法と初期調整装置に関する。
熱式流量センサは、例えば図5に示すようにシリコン基板(センサチップ)Bに形成した肉薄のダイヤフラムD上に、発熱素子Rhを間にして流体(ガス)の通流方向Fに一対の感温素子Ru,Rdを設けると共に、前記シリコン基板Bの周辺部に前記流体(ガス)の温度を検出する温度検出素子Rrを一体に設けた構造を有する。そしてダイヤフラムDがなすセンサ面に沿って通流する流体(ガス)による該センサ面近傍の温度分布の変化から前記流体(ガス)の流量(流速)を検出するように構成される。
ところで上記構造の熱式流量センサを、ガスの流路を垂直方向に形成した流量計本体に組み込んで構成される熱式流量計においては、発熱素子Rhが発する熱に起因する対流の影響を受けてガス通流方向(上下方向)の温度分布が変化し、前記一対の感温素子Ru,Rdの抵抗値変化として検出されるセンサ出力のゼロ点が変化することが否めない。尚、ガスの流路を水平方向に形成した流量計本体に組み込んで構成される熱式流量計においては、上述した対流の問題が生じることはない。
ちなみに上述したセンサ出力のゼロ点変化は、例えば図6に示すようにガス圧力の上昇に伴って大きくなり、またガス密度の高まりによっても大きくなる。そこで従来においては、圧力センサを用いて測定したガス圧力に応じて、或いはガスの種別(密度)に応じてセンサ出力のゼロ点補正を行っている(例えば特許文献1,2を参照)。
尚、熱式流量センサの特性には、例えば製造ロットの異なりに起因する個体性がある。これ故、熱式流量計には、一般的に熱式流量センサの出力に対するリニアライズ性(直線性)、感度の温度変化特性、流体圧力(密度)や温度差に起因する感度の変化特性、更には熱式流量センサを垂直に取り付けた場合におけるゼロ点変動等を補正する為の各種の補正機能が組み込まれる。
特開平11−190647号公報 特開2004−93179号公報
ところで熱式流量センサの検出特性には個体性が有るが、一般的には同一製造ロットにおける複数の熱式流量センサのゼロ点変化特性は略同一であると看做し得る。しかし図7に例示するように製造ロットの異なりに起因して熱式流量センサの検出特性(ゼロ点変化特性)にバラツキが生じることが否めない。しかもそのゼロ点変化特性のバラツキ幅は、ガス圧力が高くなるに従って大きくなる傾向にある。
しかしながら熱式流量計の設置現場において個々の熱式流量センサ毎にゼロ点変化特性を計測し、それに応じたゼロ点補正を行うことは極めて困難である。そもそも熱式流量計の設置現場においてガス圧力を変える等して熱式流量センサのゼロ点変化特性を計測すること自体が困難である。そこで従来一般的には、熱式流量センサの標準的(平均的)な特性を基準として定められたゼロ点補正テーブルを用いて個々の熱式流量センサに対するゼロ点補正を行うようにしている。しかし前述した特性のバラツキが原因して、却ってゼロ点変位が大きくなる虞があった。
また、例えば製造ロットの違いに起因して熱式流量センサが有する初期特性自体が異なるので、熱式流量計が備えた各種の補正機能を用いてその出力特性を補正するには、熱式流量センサの初期特性を予め各種条件下において個々に調べておくことが必要となる。しかも熱式流量センサの初期特性に応じた補正テーブルを準備することも非常に煩わしいと言う問題がある。
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、製造ロットの異なりに拘わることなく熱式流量センサのゼロ点変化特性を標準的(平均的)な特性に近付ける調整を施すことでバラツキを小さくし、これによって標準的(平均的)な特性を基準として定められたゼロ点補正テーブルを用いて簡易にゼロ点補正を施すことを可能とした熱式流量計およびその初期調整方法と初期調整装置を提供することにある。
上述した目的を達成するべく本発明に係る熱式流量計の初期調整方法は、ガスの通流方向に発熱素子を挟んで設けられた一対の感熱素子および前記ガスの温度を検出する温度検出素子を備えた熱式流量センサと、前記温度検出素子の出力に応じて前記発熱素子の発熱温度を制御するヒータ回路と、前記一対の感熱素子の出力から求めた前記ガスの流量を増幅して出力するセンサ回路とを備え、ガスの流路を垂直方向に形成した流量計本体に組み込まれる熱式流量計を、例えば工場出荷前に調整する初期調整方法であって、
前記発熱素子の抵抗値と前記温度検出素子の抵抗値とから前記発熱素子の発熱温度を求め、基準温度からの上記発熱温度のずれに応じて前記センサ回路の増幅利得を調整して前記熱式流量センサの圧力特性を予め設定された圧力特性に揃える調整工程を備えることを特徴としている。
ちなみに前記ヒータ回路は、前記発熱素子とこの発熱素子に直列接続された第1の固定抵抗、および前記温度検出素子とこの温度検出素子に直列接続された第2の固定抵抗を用いて形成される抵抗ブリッジ回路と、この抵抗ブリッジ回路の出力に応じて該ブリッジ回路の駆動電圧を制御する増幅器とからなり、
前記調整工程は、基準とする熱式流量計について予め求められた前記発熱素子の抵抗値と前記温度検出素子の抵抗値との比率と前記発熱素子の発熱温度との関係に従って、調整対象とする熱式流量計の前記発熱素子の抵抗値と前記温度検出素子の抵抗値との比率から前記発熱素子の発熱温度を求め、この発熱温度の基準温度に対するずれに相当する前記センサ回路の増幅利得のずれを求めて該センサ回路の増幅利得を調整することによって行われる。
尚、前記発熱温度の基準温度に対するずれについては、ずれ量を示す比率として求め、また前記センサ回路の増幅利得のずれについては、基準とする熱式流量計における前記センサ回路の増幅利得に対するずれ量を示す比率として求めるようにすれば良い。特に前記発熱温度の基準温度に対するずれに相当する前記センサ回路の増幅利得のずれについては、発熱温度のずれ比率が及ぼすセンサ出力の変化と、前記センサ回路の増幅利得のずれ比率が及ぼすセンサ出力の変化との相関に基づく比率として求めるようにすれば良い。
また本発明に係る熱式流量計は、前記発熱素子とこの発熱素子に直列接続された第1の固定抵抗、および前記温度検出素子とこの温度検出素子に直列接続された第2の固定抵抗を用いて形成される抵抗ブリッジ回路と、この抵抗ブリッジ回路の出力に応じて該ブリッジ回路の駆動電圧を制御する増幅器とにより構成されたヒータ回路を備えて構成される上述した熱式流量計において、
特に前記センサ回路が、前記ヒータ回路における前記温度検出素子と前記発熱素子との抵抗値比に応じた増幅利得に設定されていることを特徴としている。
そして本発明に係る熱式流量計の初期調整装置は、前述した構成の熱式流量計に対する初期調整装置であって、
基準とする熱式流量計について予め求められた前記発熱素子の抵抗値と前記温度検出素子の抵抗値との比率と前記発熱素子の発熱温度との関係を記述したテーブルと、
調整対象とする熱式流量計の前記発熱素子の抵抗値と前記温度検出素子の抵抗値との比率を求める比率検出手段と、
前記テーブルを参照して前記比率検出手段にて求められた前記抵抗値の比率に相当する前記発熱素子の発熱温度を求める発熱温度検出手段と、
この発熱温度検出手段にて求められた発熱温度の基準温度に対するずれを求める発熱温度のずれ検出手段と、
予め求められた前記発熱素子の発熱温度のずれ比率が及ぼすセンサ出力の変化と、前記センサ回路の増幅利得のずれ比率が及ぼすセンサ出力の変化との相関に基づいて、前記温度のずれに相当する前記センサ回路の増幅利得のずれを求めるずれ算定手段と、
算定された増幅利得のずれに応じて前記センサ回路の増幅利得を調整する、若しくは増幅利得の調整を指示する手段と
を具備したことを特徴としている。
更に本発明に係る熱式流量計は、上述した初期調整装置を一体に組み込んだことを特徴としている。
熱式流量計に対する上述した初期調整においては、センサ出力のゼロ点変化特性(圧力特性)のバラツキの要因がヒータ回路における発熱素子の発熱温度およびセンサ回路の増幅利得(ゲイン)であり、発熱温度(ヒータ温度)の変化が圧力特性に及ぼす影響と、増幅利得(ゲイン)の変化が圧力特性に及ぼす影響との間に、或る相関があることに着目している。特に発熱温度(ヒータ温度)のずれと増幅利得(ゲイン)のずれとが前記圧力特性の変化に対して及ぼす影響が、所定の相関関係を有していることに着目している。
そこで本発明においてはヒータ温度に関与する前記ヒータ回路における発熱素子の抵抗値と温度検出素子の抵抗値との比に応じてセンサ回路の増幅利得(ゲイン)を調整するようにしている。そしてヒータ温度の影響を受けて変化する圧力特性を、センサ回路のゲイン調整により変化する圧力特性により相殺することで製造ロットによって異なる圧力特性のバラツキを抑えるものとなっている。この結果、前記熱式流量センサの検出特性(ゼロ点変化特性;圧力特性)のバラツキを抑えてそのゼロ点変化特性を一定化することができるので、熱式流量計の設置現場においては標準的(平均的)な特性を基準とするゼロ点補正テーブルを用いることで簡易にゼロ点補正を行うことが可能となる。
換言すれば製造ロットの拘わりなく熱式流量センサの検出特性(ゼロ点変化特性)を標準的(平均的)な特性に揃えることができるので、熱式流量計の設置現場において、その都度、ガス圧力を変える等して熱式流量センサのゼロ点変化特性を計測することなく、そのゼロ点補正を簡易に、しかも効果的に行うことが可能となる。
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る熱式流量計とその初期調整方法について説明する。尚、この熱式流量計は、センサチップ上にガスの通流方向に沿って発熱素子(ヒータ素子)Rhを挟んで設けた一対の感熱素子Ru,Rdの近傍の雰囲気温度を該センサチップに沿って通流するガスの温度よりも一定温度Tだけ高め、このときに前記一対の感熱素子Ru,Rdにより検出される温度差ΔTから前記流体の流量Qを求めるタイプのものである。
図1は本発明の一実施形態に係る熱式流量計の概略構成を示しており、1はシリコン等の半導体基板上に一対の感熱素子Ru,Rdと発熱素子(ヒータ素子)Rh、および温度検出素子Rrを形成した、例えば図5に示した素子構造の熱式流量センサである。この熱式流量センサ1の駆動回路は、基本的には上記温度検出素子Rrによって検出される雰囲気温度に応じて前記発熱素子Rhを発熱駆動して前記一対の感熱素子Ru,Rdの近傍の温度を一定温度Tだけ高くするヒータ回路3と、前記感熱素子Ru,Rdによりその近傍の温度Tu,Tdをそれぞれ検出し、これらの温度差ΔT(=Tu−Ud)を前記熱式流量センサ1に沿って通流する流体の流量Qとして求めるセンサ回路4とを備える。
具体的には前記センサ回路4は、前記発熱素子Rhを間にして流体の通流方向に設けられた一対の感熱素子Ru,Rd、および一対の固定抵抗体Rx,Ryを用いて構成された流量計測用の第1のブリッジ回路4aと、この第1のブリッジ回路4aにおける上記感熱素子Ru,Rdの抵抗値の変化に応じたブリッジ出力電圧(ブリッジ間電位差)を検出する差動増幅器4bとを備えて構成される。尚、この差動増幅器4bの増幅利得、ひいてはセンサ回路4のゲインは、該差動増幅器4bの帰還回路に設けられた抵抗Rfによって決定される。
また前記ヒータ回路3は、前記発熱素子Rhとこの発熱素子Rhに直列接続した第1の固定抵抗R1、および前記温度検出素子Rrとこの温度検出素子Rrに直列接続した第2の固定抵抗体R2を用い、これらの直列回路を並列接続して構成した温度制御用の第2のブリッジ回路3aと、電源電圧Vccを受けて上記ブリッジ回路3aの駆動電圧を可変するトランジスタ3bと、前記ブリッジ回路3aのブリッジ出力電圧(ブリッジ間電位差)を求め、このブリッジ出力電圧が零(0)となるように前記トランジスタ3bの作動を帰還制御する差動増幅器3cとを備えて構成される。この差動増幅器3cの出力による前記トランジスタ3bの帰還制御により前記発熱素子Rhの発熱温度Thが、前記温度検出素子Rrにて検出される周囲温度(雰囲気温度)よりも常に一定温度Tだけ高くなるように制御される。
基本的には上述した如く構成される熱式流量計において本発明が特徴とする初期調整方法は、前記ヒータ回路3における発熱素子Rhと温度検出素子Rrの各抵抗値RH,RRを検出し、その抵抗値比[RR/RH]に応じて前記センサ回路4における帰還抵抗Rfを調整することでその増幅利得(ゲイン)を調整し、これによって熱式流量センサ1の圧力特性(ゼロ点変化特性)を標準的(平均的)な特性に揃えることを特徴としている。
このような初期調整を行う為の初期調整装置10は、例えばマイクロコンピュータを主体として構成され、図1に示すように抵抗測定器20にて前記ヒータ回路3における発熱素子Rhと温度検出素子Rrの各抵抗値RH,RRをそれぞれ検出し、その検出結果に応じて、予め準備された後述するテーブル30(31,32,33)を参照しながら発熱素子Rhと温度検出素子Rrとの抵抗値比[RR/RH]に応じた前記センサ回路4の増幅利得(ゲイン)を求めるように構成される。
尚、マイクロコンピュータを主体として構成される初期調整装置10は、基本的にはソフトウェアプログラムによって実現される比率検出手段11、発熱温度検出手段12、発熱温度のずれ検出手段13、増幅利得のずれ算定手段14、および増幅利得の調整指示手段15を備えたものからなる。しかしこれらの各手段11,12〜15を、専用のハードウェア回路として実現することも勿論可能である。
ちなみに前記比率検出手段11は、抵抗測定器20にて検出された前記ヒータ回路3における前記発熱素子Rhの抵抗値RHと前記温度検出素子Rrの抵抗値RRとから、その抵抗値比率[RR/RH]を求める役割を担う。また発熱温度検出手段12は、基準とする熱式流量計について予め求められた前記発熱素子Rhの抵抗値RHと前記温度検出素子Rrの抵抗値RRとの比率[RR/RH]と、前記発熱素子Rhの発熱温度Thとの関係[RR/RH−Th]を記述したテーブル31を参照して、前記比率検出手段11にて求められた前記抵抗値の比率[RR/RH]に相当する前記発熱素子Rhの発熱温度Thを求めるものである。
そして発熱温度のずれ検出手段13は、前記発熱温度検出手段12にて求められた発熱温度Thの基準温度Toに対するずれを、例えばずれ比率(%)として求める役割を担っている。また増幅利得のずれ算定手段14は、予め求められた前記発熱素子Rhの発熱温度Thのずれ比率が及ぼすセンサ出力の変化と、前記センサ回路4の増幅利得Gのずれ比率が及ぼすセンサ出力の変化との相関に基づいて、前記温度のずれに相当する前記センサ回路の増幅利得のずれ量を求める役割を担っている。そして増幅利得の調整指示手段15は、ずれ算定手段14にて求められた増幅利得のずれ量に応じて前記センサ回路4の増幅利得Gの調整を、つまりセンサ回路4の増幅利得Gを決定する前記帰還抵抗Rfの調整を指示するものとなっている。
この初期調整装置10による熱式流量計の初期調整について詳しく説明すると、この初期調整は熱式流量計の工場出荷前に、例えば図2に示す処理手順に従って進められる。即ち、この初期調整処理は熱式流量計にガスを通流しない状態において前記抵抗測定器20を用いて前記ヒータ回路3における前記発熱素子Rhの抵抗値RHと前記温度検出素子Rrの抵抗値RRとをオフラインで計測することから開始される[ステップS1]。そして前記比率検出手段11にて、前記抵抗測定器20にて検出された前記発熱素子Rhの抵抗値RHと前記温度検出素子Rrの抵抗値RRとの抵抗値比率[RR/RH]を計算し[ステップS2]、次いで発熱温度検出手段12にて上述した如く求められた抵抗値比率[RR/RH]に従ってテーブル31を参照し、前記ヒータ回路3を駆動したときの前記発熱素子Rhの発熱温度Thを求める[ステップS3]。
尚、テーブル31は、前述したように基準とする熱式流量計について予め求められた前記発熱素子Rhの抵抗値RHと前記温度検出素子Rrの抵抗値RRとの抵抗値比率[RR/RH]と、前記発熱素子Rhの発熱温度Thとの関係[RR/RH−Th]を記述したものであり、その関係[RR/RH−Th]は一般的には図3に示すように比例関係にある。ちなみに前記抵抗値比率[RR/RH]は、例えば発熱温度Thを60℃とする場合には一般的には[9.5]程度であり、例えば抵抗値比率[RR/RH]が[9.4]のときには発熱温度Thが54℃、抵抗値比率[RR/RH]が[9.6]のときには発熱温度Thが66℃となる。従って抵抗値比率[RR/RH]が求められれば、これに相当する発熱素子Rhの発熱温度Thを求めることができる。
しかる後、このようにして求められた発熱素子Rhの発熱温度Thが、例えば60℃として設定される基準温度Toに対してどの程度のずれを有するか、前記温度ずれ検出手段13にてそのずれ温度比率ΔT(%)を求める[ステップS4]。そしてテーブル32を参照し、上記ずれ温度比率ΔT(%)が及ぼすセンサ出力の変化を相殺し得る前記センサ回路4の増幅利得(ゲイン)のずれ比率ΔG(%)を求める[ステップS5]。
ちなみに前記テーブル32は、基準となる熱式流量センサにおいて予め求められた、例えば図4に特性aとして示すような前記発熱素子Rhの発熱温度Thのずれ比率ΔT(%)が及ぼすセンサ出力の変化と、図4に特性bとして示すような前記センサ回路4の増幅利得Gのずれ比率ΔG(%)が及ぼすセンサ出力の変化とを記述したものである。従ってこのテーブル32を参照することでずれ温度比率ΔT(%)が及ぼすセンサ出力の変化(変化率)を求めることができ、またこのセンサ出力の変化(変化率)を相殺することのできる増幅利得Gのずれ比率ΔG(%)を逆引きすることができる。
尚、図4に示すセンサ出力の変化特性a,bから、汎用の熱式流量センサにおいては、例えば発熱温度Thの1%の変化に対してセンサ出力が相対的に[1.33]に変化し、また増幅利得(ゲイン)Gの1%の変化に対してセンサ出力が相対的に[0.67]に変化することが確認できた。そしてヒータ回路3における発熱温度Thの変化率ΔT(%)が、センサ回路4における増幅利得Gの変化率ΔG(%)に比較して、センサ出力の変化に対して略2倍の影響力を有することが確認できた。つまりセンサ出力の変化勾配に略2倍の差があることが確認できた。従って簡略的には、前述した抵抗値比率[RR/RH]から求められた発熱温度Thのずれ比率ΔT(%)が、例えば2%である場合、これによって変化するセンサ出力の変化分を相殺し得る増幅利得Gの変化率ΔG(%)を−4%として求めることも可能である。つまり発熱温度Thのずれ比率ΔT(%)の値に[−2]なる定数を掛け合わせ、これによってセンサ出力の変化を相殺し得る増幅利得Gのずれ率ΔG(%)を求めるようにしても良い。
しかる後、上述した如く求めた増幅利得Gのずれ率ΔG(%)に従い、センサ回路4に設定すべき増幅利得Gを計算する[ステップS6]。そしてセンサ回路4の増幅利得(ゲイン)Gと、その増幅利得(ゲイン)Gを決定する前述した帰還抵抗Rfの値とを記述したテーブル33を参照して前記センサ回路4の増幅利得(ゲイン)Gを前記変化率ΔG(%)だけ変化させるに必要な帰還抵抗Rfの値を求める[ステップS7]。そしてこの帰還抵抗Rfの値を指示値として帰還抵抗Rfを調整し、センサ回路4の増幅利得(ゲイン)Gを設定する[ステップS8]。
従って熱式流量計に対して上述した如き初期調整を施せば、製造ロットによって異なる熱式流量センサ1での発熱温度Thのバラツキに起因して変化するゼロ点変化特性を、センサ回路4における帰還抵抗Rfの初期調整によって簡易に標準的(平均的)な熱式流量センサのゼロ点変化特性に揃えることができる。しかも発熱素子Rhの抵抗値RHと温度検出素子Rrの抵抗値RRとの比、つまり抵抗値比[RR/RH]から求められる上記発熱素子Rhの発熱温度Thに従い、その発熱温度Thのずれ量に相応する増幅利得Gのずれ量を求めるだけで簡易に帰還抵抗Rfを調整し、増幅利得Gを適正に設定してゼロ点変化特性に揃えることができる。従って熱式流量計の設置現場において、熱式流量計が備えるゼロ点補正機能を活用するだけで、予め求められているゼロ点補正テーブルを参照する等してそのゼロ点補正を簡易に実行することが可能となる。しかも上述した初期調整については、熱式流量計にガスを通流することなく実施することができるので、調整作業自体が簡単である等の効果が奏せられる。
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば帰還抵抗Rfの調整については、帰還抵抗Rfとして抵抗値可変型の抵抗器を用いることも可能であるが、標準的に装備される固定抵抗に調整用抵抗を並列接続したり、予め並列接続されている調整用抵抗を切り離す等して抵抗値の調整を行うことも可能である。更には前述した如く求められる増幅利得Gに応じた抵抗値の固定抵抗を選定し、この固定抵抗を前記差動増幅器A2の帰還回路に接続してセンサ回路4を構成するようにしても良い。
また熱式流量計に前述した初期調整装置10を一体に組み込むことも可能である。その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
本発明の一実施形態に係る熱式流量計の概略構成図。 本発明の一実施形態に係る熱式流量計の初期調整方法の処理手順を示す図。 抵抗値比[RR/RH]と発熱温度Thとの関係を示す図。 発熱温度Thのずれ比率ΔT(%)および増幅利得Gのずれ比率ΔG(%)が及ぼすセンサ出力の変化を対比して示す図。 熱式流量センサの概略構成図。 密度と圧力によって変化する熱式流量センサのゼロ点変化特性を示す図。 製造ロットによって異なる熱式流量センサのゼロ点変化特性のバラツキを示す図。
符号の説明
1 熱式流量センサ
3 ヒータ回路
4 センサ回路
Rh 発熱素子
Rr 温度検出素子
R1,R2 固定抵抗
Ru,Rd 感熱素子
Rx,Ry 固定抵抗

Claims (6)

  1. ガスの通流方向に発熱素子を挟んで設けられた一対の感熱素子および前記ガスの温度を検出する温度検出素子を備えた熱式流量センサと、前記温度検出素子の出力に応じて前記発熱素子の発熱温度を制御するヒータ回路と、前記一対の感熱素子の出力から求めた前記ガスの流量を増幅して出力するセンサ回路とを備え、ガスの流路を垂直方向に形成した流量計本体に組み込まれる熱式流量計の初期調整方法であって、
    前記ヒータ回路は、前記発熱素子とこの発熱素子に直列接続された第1の固定抵抗、および前記温度検出素子とこの温度検出素子に直列接続された第2の固定抵抗を用いて形成される抵抗ブリッジ回路と、この抵抗ブリッジ回路の出力に応じて該ブリッジ回路の駆動電圧を制御する増幅器とからなり、
    基準とする熱式流量計について予め求められた前記発熱素子の抵抗値と前記温度検出素子の抵抗値との比率と前記発熱素子の発熱温度との関係に従って、調整対象とする熱式流量計の前記発熱素子の抵抗値と前記温度検出素子の抵抗値との比率から前記発熱素子の発熱温度を求め、この発熱温度の基準温度に対するずれに相当する前記センサ回路の増幅利得のずれを求めて該センサ回路の増幅利得を調整して前記熱式流量センサの圧力特性を予め設定された圧力特性に揃える調整工程を備えることを特徴とする熱式流量計の初期調整方法。
  2. 前記発熱温度の基準温度に対するずれは、ずれ量を示す比率として求められるものであって、
    前記センサ回路の増幅利得のずれは、基準とする熱式流量計における前記センサ回路の増幅利得に対するずれ量を示す比率として求められるものである請求項に記載の熱式流量計の初期調整方法。
  3. 前記発熱温度の基準温度に対するずれに相当する前記センサ回路の増幅利得のずれは、発熱温度のずれ比率が及ぼすセンサ出力の変化と、前記センサ回路の増幅利得のずれ比率が及ぼすセンサ出力の変化との相関に基づく比率として求められるものである請求項に記載の熱式流量計の初期調整方法。
  4. ガスの通流方向に発熱素子を挟んで設けられた一対の感熱素子および前記ガスの温度を検出する温度検出素子を備えた熱式流量センサと、前記温度検出素子の出力に応じて前記発熱素子の発熱温度を制御するヒータ回路と、前記一対の感熱素子の出力から求められる前記ガスの流量を増幅して出力するセンサ回路とを備え、ガスの流路を垂直方向に形成した流量計本体に組み込まれる熱式流量計であって、
    前記ヒータ回路は、前記発熱素子とこの発熱素子に直列接続された第1の固定抵抗、および前記温度検出素子とこの温度検出素子に直列接続された第2の固定抵抗を用いて形成される抵抗ブリッジ回路と、この抵抗ブリッジ回路の出力に応じて該ブリッジ回路の駆動電圧を制御する増幅器とからなり、
    前記センサ回路は、基準とする熱式流量計について予め求められた前記発熱素子の抵抗値と前記温度検出素子の抵抗値との比率と前記発熱素子の発熱温度との関係に従って、前記発熱素子の抵抗値と前記温度検出素子の抵抗値との比率から前記発熱素子の発熱温度を求め、この発熱温度の基準温度に対するずれに相当する増幅利得のずれを求め、そのずれに応じて増幅利得が調整されていることを特徴とする熱式流量計。
  5. ガスの通流方向に発熱素子を挟んで設けられた一対の感熱素子および前記ガスの温度を検出する温度検出素子を備えた熱式流量センサと、前記温度検出素子の出力に応じて前記発熱素子の発熱温度を制御するヒータ回路と、前記一対の感熱素子の出力から求められる前記ガスの流量を増幅して出力するセンサ回路とを備えて前記ガスの流路を垂直方向に形成した流量計本体に組み込まれ、
    前記ヒータ回路を、前記発熱素子とこの発熱素子に直列接続された第1の固定抵抗、および前記温度検出素子とこの温度検出素子に直列接続された第2の固定抵抗を用いて形成される抵抗ブリッジ回路と、この抵抗ブリッジ回路の出力に応じて該ブリッジ回路の駆動電圧を制御する増幅器とにより構成した熱式流量計の初期調整装置であって、
    基準とする熱式流量計について予め求められた前記発熱素子の抵抗値と前記温度検出素子の抵抗値との比率と前記発熱素子の発熱温度との関係を記述したテーブルと、
    調整対象とする熱式流量計の前記発熱素子の抵抗値と前記温度検出素子の抵抗値との比率を求める比率検出手段と、
    前記テーブルを参照して前記比率検出手段にて求められた前記抵抗値の比率に相当する前記発熱素子の発熱温度を求める発熱温度検出手段と、
    この発熱温度検出手段にて求められた発熱温度の基準温度に対するずれを求める発熱温度のずれ検出手段と、
    予め求められた前記発熱素子の発熱温度のずれ比率が及ぼすセンサ出力の変化と、前記センサ回路の増幅利得のずれ比率が及ぼすセンサ出力の変化との相関に基づいて、前記温度のずれに相当する前記センサ回路の増幅利得のずれを求めるずれ算定手段と、
    算定された増幅利得のずれに応じて前記センサ回路の増幅利得を調整する、若しくは増幅利得の調整を指示する手段と
    を具備したことを特徴とする熱式流量計の初期調整装置。
  6. ガスの通流方向に発熱素子を挟んで設けられた一対の感熱素子および前記ガスの温度を検出する温度検出素子を備えた熱式流量センサと、前記温度検出素子の出力に応じて前記発熱素子の発熱温度を制御するヒータ回路と、前記一対の感熱素子の出力から求められる前記ガスの流量を増幅して出力するセンサ回路とを備えて、ガスの流路を垂直方向に形成した流量計本体に組み込まれ、
    前記ヒータ回路を、前記発熱素子とこの発熱素子に直列接続された第1の固定抵抗、および前記温度検出素子とこの温度検出素子に直列接続された第2の固定抵抗を用いて形成される抵抗ブリッジ回路と、この抵抗ブリッジ回路の出力に応じて該ブリッジ回路の駆動電圧を制御する増幅器とにより構成した熱式流量計であって、
    請求項に記載の熱式流量計の初期調整装置を一体に組み込んだことを特徴とする熱式流量計。
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