JP5178096B2 - 金属板の円筒深絞り加工方法 - Google Patents
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Description
深絞り加工方法ではプレス装置が用いられ、加工対象の薄板ブランクをプレス機械のダイス上にブランクホルダーで固定し、ブランクホルダーにしわ押え力を加えながらパンチを下降,上昇させることにより、ブランクをパンチ形状に変形させるものである。
そして、プレス機械のプレス方式としては、従来、油圧プレスとメカプレスの二方式が採用されている。
さらに最近では、例えば特許文献1に見られるように、駆動源にACサーボモータを用いてスライドモーションを任意に設定可能なサーボプレスも使用されている。
中田裕康著,「プレスの理論と実際」,(株)コロナ社,1973年2月20日,p.171
リンクモーションプレスは、プレス加工の速度依存性を利用して絞り性を向上させたり、成形性を向上させたりすることができる。しかし、リンクモーションプレスのスライドの変位,速度変化などの特性は、通常リンクの構造や寸法割合などによって決定されている。このため、通常スライドモーションは1パターンのみで、様々な深さの絞り加工に対して全てに対応するには限界がある。
メカプレスに対して、最近、使用頻度が高くなっているサーボプレスは、駆動源にACサーボモータを用いているため、スライドの正転、逆転、停止、速度切替え等を、任意に行うことができる。また、打抜き時の加工速度を遅くすることによって騒音の低減や、型寿命の向上なども期待できる。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、ブランクに限界絞り比近くの円筒深絞り加工を施す際、金型条件等を考慮しつつ、成形速度を早くして生産性を高めた金属板の円筒深絞り加工方法を提供することを目的とする。
この方法により、絞り比:2.0〜2.3で深絞り加工を行うこともできる。
本発明方法により、サーボプレスを用いて油圧プレス並みの加工性を有し、メカプレス以上の生産性で加工を行うことが可能となり、結果的に作業コストの低減化に資することになる。
一般に絞り加工時の成形速度が速くなると、歪みが周囲に伝播するよりも先に変形が進行するため、局部的に歪みが集中して割れに到る場合が多い。単に絞り加工中の成形速度を遅くするだけでは、油圧プレスと同様、生産性が悪くなる。
検討の結果、被加工金属板の板厚に比べてパンチの肩半径、すなわちRpが大きく、ダイスの肩半径、すなわちRdが小さい金型条件で深絞り加工を行う際には、加工終期に壁割れが発生しやすくなるので、加工終期の成形速度を遅くすることにより深絞り成形性が向上することがわかった。
以下に、その詳細を説明する。
ところで、深絞り加工時における代表的な割れは、パンチ肩部での割れである。通常、パンチ肩部の破断耐力と縮みフランジ部の変形抵抗力の大小関係によって割れが発生するかどうかが決まってくる。一般的に、パンチ肩部の破断耐力が縮みフランジ部の変形抵抗力よりも大きい場合は割れずに加工でき、縮みフランジ部の変形抵抗力がパンチ肩部の破断耐力よりも大きい場合はパンチ肩部で割れが発生する。
パンチの肩半径(Rp)が十分に大きい場合には、パンチ肩部でのひずみの集中が起こり難いために、加工初期でのパンチ肩部での割れが発生し難くなっていると推測される。
このような壁割れは、加工速度を遅くすることにより抑えることができる。すなわち、加工速度を遅くすることにより歪みの局部的な集中を避け、かつ加工発熱を抑え、その結果として被加工材料の破断耐力の低下が抑制され、壁割れの発生が抑制される。
詳細は実施例の記載に譲るが、パンチの肩半径(Rp)がダイスの肩半径(Rd)に比べてRp/Rd≧3.0の関係にあるとき、パンチ肩部への歪みの集中が抑制され、パンチ肩部での割れが発生し難い。
また、ダイスの肩半径(Rd)が被加工金属板の板厚に対して大きいと、ダイス肩部での曲げ・曲げ戻し変形が小さくなるため、壁割れが発生し難くなる。
この詳細も実施例の記載に譲るが、ダイスの肩半径(Rd)が被加工金属板の板厚の3倍以下となると壁割れが発生しやすくなる。
このように、壁割れが発生しやすいような条件下で深絞り加工を行う際、成形速度を最初から最後まで一定速度とするのではなく、加工初期における成形速度を速くして生産性を高めるとともに、加工中期以降の壁割れが発生しやすい領域においては加工速度を遅くして加工熱の発生を抑えて破断耐力の低下を抑制して壁割れを発生させることなく、成形性を向上させたものである。その結果として、生産性の低下を招くことなく優れた成形性を確保することができる。
加工初期における成形速度は、200mm/秒程度とすることが好ましい。また、加工速度を遅くした際の成形速度は10mm/秒程度とすることが好ましい。加工初期における成形速度を、200mm/秒程度と速くすることにより、1ストロークの加工時間全体もメカプレス法と同程度となり、遜色のない生産性を確保することができる。
金型には、パンチ径:φ100mm、ダイス径:φ102.5mm及び104mmであって、ダイR及びパンチRを種々変更したものを用いた。
そして、φ200〜230mmのブランクに、140kNのしわ押え力を付与して絞り抜けるまでの円筒深絞り加工を、スライド速度を200mm/秒と10mm/秒とで、各種タイミングで変更して行った。
なお、表3の速度切替えタイミングとは、スライド速度を200mm/秒から10mm/秒に切り替えるタイミングのことであり、例えば2/3の場合、成形高さがパンチ径の2/3になった時点でスライド速度を切り替えている。
また、表3中、何の問題なく成形できたものを○で、パンチ肩部に破断が起きたものを△で、そして壁に割れが発生したものを▲で示している。
試験No.2は、問題なく成形できているが、速度切替タイミングが1/2と速いために加工時間を要し生産性が低下している。
したがって、速度切替タイミングは、成形高さがパンチ径の2/3に近い時点とすることが好ましい。
Claims (2)
- ダイスとブランクホルダーにより固定された被加工金属板にパンチを押し込んで円筒深絞り加工する際に、ダイスの肩半径をRd,パンチの肩半径をRpとするとき、Rdを被加工金属板の板厚の3倍以下、かつRp/Rd≧3.0の金型条件で、加工初期ではパンチ押込み速度を速く、パンチの押込みによる成形高さが2/3×パンチ径の位置に達する以前の時点で、パンチ押込み速度を加工初期の速度よりも遅くすることを特徴とする金属板の円筒深絞り加工方法。
- 絞り比:2.0〜2.3の深絞りを施す請求項1に記載の金属板の円筒深絞り加工方法。
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