JP4721423B2 - 成形方法及び成形用金型 - Google Patents
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この問題を克服するため、プレス成形法においてもいくつかの提案がなされている。例えば、特開2001−334315号公報(特許文献1)には、成形用金型から不活性ガスを噴出するようにし、成形の最終段階にポンチ内から不活性ガスを噴出して曲率半径の小さな隅部(アール部、R部という場合がある。)を成形する方法が提案されている。また、AEROSPACE AMERICA/MARCH 2000, VOL.38, NO.3, p28-29(非特許文献1)には、ポンチ内に放電成形用電極を設けて、成形の最終段階で放電成形により隅を成形する方法が提案されている。
また、一般的に自動車用部材などで用いられる複雑な形状を有する成形品は、一般的に成形工程を複数に分けて成形されることが多く、簡便で安価な成形用金型を用いて、より小さな曲率半径の隅部の成形が可能な成形方法が求められる。
本発明はかかる問題に鑑みなされたもので、簡便な成形用金型により、従来の成形方法に比して成形体の隅部の成形限界を向上させることができる成形方法及び同方法の実施に好適に用いることができる成形用金型を提供することを目的とする。
図1は、図6に示す平坦状の底壁51と側壁52とが曲面状の隅部53によって連成された有底筒状成形体(目標成形品)50を成形する成形用金型の実施形態である。
この成形用金型は、凹部成形面11を有するダイ1と、前記凹部成形面11と協働して前記成形体50を成形するポンチ2と、前記凹部成形面11の開口外周部に形成された板押さえ面12に素板(ブランク)Bを押圧する板押さえ部材6とを備えている。
まず、ポンチを下死点に下げた状態で、図1に示すように、ダイ1の板押さえ面12と板押さえ部材6との間に素板Bを押圧状態で挟持する。
次いで、ポンチ2の小径軸部を上昇させると、図2に示すように、ポンチ2の中型部3と、前記段差部25に係合した外型部4が共にダイ側に移動して、素板Bが深絞り成形され、平坦状の底壁61と側壁62とが、成形目標である有底筒状成形体50の隅部53の曲率半径よりも大きい曲率半径の曲面で形成された大径隅部63によって連成された中間成形体60を成形する。
前記中間成形体60が成形完了した後(図2に示す状態)、さらに外型部4の本体軸部32をダイ側へ移動させると、外型部4のみが上昇し、前記成形用ゴムリング5は、図3に示すように、前記中間成形体60の大径隅部63の内面と、前記中型部3の先端部外周面と、前記外型部4の上端面とで囲まれた空間部内に加圧状態で押し込められて変形し、ついには図3に示すように、前記大径隅部63がダイ1の隅部外面成形部16に加圧密着するように変形する。これによって、目標である有底筒状成形体50の底壁51と側壁52との間に曲率半径の小さい隅部53が成形される。前記成形用ゴムリング5の加圧変形により、大径隅部63は均等にダイ1の隅部外面成形部16に沿って変形するので、従来に比して高い成形限界での成形が可能になる。
この成形用金型では、ポンチ2Aの中型部3Aは、その上端部に設けた拡径部35と、その下方に延設された大径部36と、さらにその下方に延設された小径部37とで構成される。外型部4Aは、本体軸部40の上面に開口した凹部41を備え、前記凹部41の底面には中心孔42が設けられ、これらは外型部4Aに同心状に形成されている。前記中型部3Aの大径部36は前記凹部41に、小径部37は前記中心孔42に移動自在に装着される。また、成形用ゴムリング5Aが前記拡径部35の直下に装着され、その下端は前記外型部4Aの凹部41の外周上面に当接している。このため、ポンチ2Aの中型部3Aは、外型部4Aの上面に成形用ゴムリング5Aを介して上下方向に移動可能に載置された状態となっている。一方、前記凹部41には、保持用ゴムリング7Aが大径部36の下方に収容されている。
成形試験には、凹部成形面を有するダイ(図4のもの)と、この凹部成形面と協働して素板を成形する凸状成形面を有する従来形状のポンチ(隅部内面成形部(肩)の曲率半径Rが異なるものを2種)と、成形用ゴムリングを備えた実施例にかかるポンチ(図4のもの)を準備した。金型サイズ(単位はmm)は以下のとおりである。
(1) ダイ(全てのポンチに対して共通)
凹部成形面(側壁外面成形部)の内径:φ52.6、隅部外面成形部(ダイ肩)のR:6
(2) 従来ポンチ1
側壁内面成形部の外径:φ49、隅部内径成形部のR:10
(3) 従来ポンチ2
側壁内面成形部の外径がφ49、隅部内面成形部のR:5
(3) 実施例ポンチ
外型部の本体軸部の外径:φ49、凹部:内径φ30×深さ19、中心孔:内径φ10;中型部の大径部外径:φ29.95、小径部外径:φ9.95;成形用ゴムリングの材質:ウレタンゴム(Hs95)、内径:φ30、断面外径:φ8;保持用ゴムリングの材質:ウレタンゴム(Hs95)、内径:φ14、外径:φ26、厚さ:10
素板サイズ(単位mm)
φ90(DR1.8)、φ100(DR2.0)、φ102.5(DR2.05)、φ105(DR2.1)
成形条件A:従来ポンチ1を用いてDR2.05で1段成形した。
成形条件B:従来ポンチ2を用いてDR2.0で第1段成形した。
成形条件C:実施例ポンチを用いてDR2.05で1段成形した。
成形試験には、凹部成形面を有するダイと、この凹部成形面と協働して素板を成形する凸状成形面を有する従来形状のポンチ(隅部内面成形部(肩)の曲率半径Rが異なるものを2種)と、成形用ゴムリングを備えた実施例にかかるポンチを準備した。成形用金型の構造は基本的に実施例1と同様であるが、ダイの凹部成形面、ポンチの側壁内面成形部の平面形状は正方形であり、金型サイズ(単位はmm)は以下のとおりである。
(1) ダイ(全てのポンチに対して共通)
凹部成形面(側壁外面成形部)の対向面間の幅:48.52×48.52、コーナー部外面成形部のR:8、隅部外面成形部(ダイ肩)のR:4、
(2) 従来ポンチ1
側壁内面成形部の対向面間の外幅:45×45、コーナー部内面成形部のR:7、隅部内面成形部のR:10、
(3) 従来ポンチ2
側壁内面成形部の対向面間の外幅:45×45、コーナー部内面成形部のR:7、隅部内面成形部のR:3、
(3) 実施例ポンチ
外型部の本体軸部(平面視正方形)の対向面間の外幅:45×45、凹部(平面視正方形)の対向面間の内幅:25.95×25.95×深さ19、中心孔:内径φ10;中型部の大径部(平面視正方形)の対向面間の外幅:25.9×25.9、小径部外径:φ9.95;成形用ゴムリング(平面視正方形)の材質:ウレタンゴム(Hs95)、対向辺間の内幅:26×26、断面外径:φ8mm;保持用ゴムリングの材質:ウレタンゴム(Hs95)、内径:φ14mm、外径:φ22、厚さ:10mm
図8に示すように、平面形状が8角形で、絞り比(DR:素板板幅L/ポンチ(側壁外面成形部)外幅))が1.75〜2.0となる下記サイズの素板(6022アルミニウム合金、板厚1.0mm)を準備し、上記ダイと従来ポンチ2を用いて、種々の絞り比で、板押さえ力200kgf 、パンチ速度100mm/sec の下で深絞りを行った。その結果、隅部に破断が生じない限界絞り比は、1.75であった。また、従来ポンチ1で曲率半径の大きな隅部を有する中間成形体を成形した後、従来パンチ2で仕上成形した結果、やはり絞り比が1.75以上の成形では隅部に破断が生じた。
素板サイズ(板幅L、単位mm)
78.5(DR1.75)、81.5(DR1.8)、85.5(DR1.9)、87.75(DR1.95)、90.0(DR2.0)
成形条件A:従来ポンチ1を用いてDR2.0で1段成形した。
成形条件B:従来ポンチ2を用いてDR1.75で1段成形した。
成形条件C:実施例ポンチを用いてDR2.0で1段成形した。
2、2A ポンチ
3、3A 中型部
4,4A 外型部
5、5A 成形用ゴムリング(成形用弾性部材)
7、7A 保持用ゴムリング(保持用弾性部材)
16 隅部外面成形部
Claims (3)
- 平坦状の底壁と側壁とが曲面状の隅部によって連成された成形体の成形方法であって、
前記成形体の成形目標の底壁、側壁、隅部の外面をそれぞれ成形する底壁外面成形部と、側壁外面成形部と、隅部外面成形部とが凹状に連成された凹部成形面を備えたダイと、
前記ダイの底壁外面成形部と協働して前記底壁の内面を成形する底壁内面成形部を備えた中型部と、前記中型部の外側に設けられ、前記ダイの側壁外面成形部と協働して前記側壁の内面を成形する側壁内面成形部とを備えた外型部と、前記中型部の端部に配置された成形用弾性部材を備え、前記凹部成形面と協働して成形目標の成形体を成形するポンチとを備えた成形用金型を準備し、
前記ダイとポンチの中型部と外型部とによって、前記成形体の成形目標に対して隅部及びその近傍のみが相違し、平坦状の底壁と側壁とが前記成形体の成形目標の隅部の曲率半径よりも大きい曲率半径を有する大径隅部によって連成された中間成形体を成形し、
前記外型部をダイ側に移動させることで前記成形用弾性部材を加圧変形させて、前記大径隅部のみを前記ダイの隅部外面成形部に密着変形させて前記中間成形体から成形目標の成形体を成形する、成形方法。 - 平坦状の底壁と側壁とが曲面状の隅部によって連成された成形体を成形する成形用金型であって、
前記成形体の成形目標の底壁、側壁、隅部の外面をそれぞれ成形する底壁外面成形部と、側壁外面成形部と、隅部外面成形部とが凹状に連成された凹部成形面を備えたダイと、
前記凹部成形面と協働して成形目標の成形体を成形するポンチとを備え、
前記ポンチは、前記ダイの底壁外面成形部と協働して前記底壁の内面を成形する底壁内面成形部を備えた中型部と、前記中型部の外側に設けられ、前記ダイの側壁外面成形部と協働して前記側壁の内面を成形する側壁内面成形部とを備えた外型部と、前記中型部の端部に配置された成形用弾性部材を備え、
前記ダイとポンチの中型部と外型部とによって、前記成形体の成形目標に対して隅部及びその近傍のみが相違し、平坦状の底壁と側壁とが前記成形体の成形目標の隅部の曲率半径よりも大きい曲率半径を有する大径隅部によって連成された中間成形体を成形した後、前記外型部をダイ側に移動させることで前記大径隅部のみが前記ダイの隅部外面成形部に加圧密着されるように前記成形用弾性部材を加圧変形して前記中間成形体から成形目標の成形体を成形する、成形用金型。 - 前記ポンチの外型部はダイに対して移動自在とされ、前記中型部は前記外型部に保持用弾性部材を介して保持され、前記保持用弾性部材は、前記中型部が中間成形体の底壁を成形した後、圧縮変形して前記外型部の移動を許容する、請求項2に記載した成形用金型。
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