JP2007014987A - 金属板の液圧成形方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 特に、成形性が低いアルミニウム合金板であっても筒状に深絞り成形できる、金属板の液圧成形方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 成形される金属板4をダイ2としわ押さえ3とで挟み、金属板4に液圧を作用させるとともに、ポンチ1により金属板4を押して、筒状に深絞り成形を行なう、液圧成形方法であって、金属板4に絞り変形が生じるまでの成形初期段階においては、ポンチ1の反対側から金属板4を押す対向液圧をかけないとともに、前記液圧を金属板周縁部4aから金属板半径方向に向けて付加することによって、金属板4を半径方向に向けて押しつつ、ポンチ1により金属板4を押して成形する。
【選択図】 図1
【解決手段】 成形される金属板4をダイ2としわ押さえ3とで挟み、金属板4に液圧を作用させるとともに、ポンチ1により金属板4を押して、筒状に深絞り成形を行なう、液圧成形方法であって、金属板4に絞り変形が生じるまでの成形初期段階においては、ポンチ1の反対側から金属板4を押す対向液圧をかけないとともに、前記液圧を金属板周縁部4aから金属板半径方向に向けて付加することによって、金属板4を半径方向に向けて押しつつ、ポンチ1により金属板4を押して成形する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、特にアルミニウム合金板などの金属板を、筒状に深絞り成形する液圧成形方法に関する。
近年、排気ガス等による地球環境問題に対して、自動車などの輸送機の車体の軽量化による燃費の向上が追求されている。このため、特に、自動車の車体に対し、従来から使用されている鋼材に代わって、より軽量なアルミニウム合金材の適用が増加しつつある。例えば、自動車のフード、フェンダー、ドア、ルーフ、トランクリッドなどのパネル構造体の、アウタパネル (外板) やインナパネル(内板)にもアルミニウム合金板が使用されるようになっている。
しかし、アルミニウム合金板は鋼板に比して絞り成形性が劣るために、特に、インナパネルなどの筒状の深絞り成形(プレス成形)が難しい。このため、鋼板に比べて、深い成形品が得られない問題があった。例えば、自動車用のドアインナパネルでは、深さが100mmを超えるような深い成形が必要となるが、アルミニウム合金板では成形できない。
一方、従来から、これらアルミニウム合金板などの難成形金属板を成形したり、成形行程の数を減らして金型費用を削減する技術として、対向液圧成形法がある(特許文献1、2参照)。
通常の対向液圧成形は、例えば図4に示すように、ダイ2としわ押さえ3で素材金属板4を挟み、対向液圧作動液体5をダイ2内のポンチ1に対向する空間12に密閉充填する形で保持する。ここに金型であるポンチ1が対向液圧作動液体5の反対側から素材4を押して成形が行われる。
この際、ポンチ1の下降にともない対向液圧作動液体5に徐々に圧力がかかるので、金属板4はポンチ1と対向液圧作動液体5の液圧(静水圧)6に上下から押される形で成形される。
ただ、ここで、成形がより容易に行われ、成形限界を大きくするためには、ダイ2としわ押さえ3で金属板4が保持されながらも、加工に伴って、金属板4が、図4の両側(金属板4の周辺部側)から中央(筒成形側)に滑って移動する必要がある。通常の対向液圧成形では、これを助けるために、成形深さの進展に対応して液圧を制御することによって対処してきた。
通常の対向液圧成形では、液圧を付与することによるポンチ1と金属板4間の摩擦抵抗が大きくなる摩擦保持効果と、金属板4とダイ2、しわ押さえ(ブランクホルダー)3間の摩擦抵抗が減少する摩擦低減効果がある。前者の摩擦保持効果により素材の均一変形が促進され、後者の摩擦低減効果により金属板4の流入抵抗が減少して、金属板4の材料が流れ込みやすくなることによる。
しかし、特に、アルミニウム合金板を対向液圧成形により深絞りする場合、後述する機構により、ポンチ1肩部に当接する金属板4の変形部分で破断しやすい。これは、アルミニウム合金板が鋼板に比して成形性が劣るためと、通常の対向液圧成形では、金属板4とダイ2、しわ押さえ(ブランクホルダー)3間の摩擦抵抗が大きいことによる。
これに対しては、摩擦抵抗を下げる材料側からの改善として、アルミニウム合金板の表面粗度を大きくする方法が提案されている(特許文献3参照)。この方法は、金属板4の表面粗度が大きいほど、ダイ2と金属板4の間に生じる隙間から対向液圧作動液体5が流出しやすくなる点、金属板4の表面粗度が大きいほど表面に塗布している潤滑油が保持されやすくなる点、などを利用して、摩擦係数を小さくしようとするものである。しかし、アルミニウム合金板の表面粗度を大きくすることは、成形品の品質や特性上に悪影響が生じるため、実効有る程度に表面粗度を大きくできない制約がある。
また、周液圧深絞り方法として、図5(a)に示す対向液圧の改善として、図5(b)に示すように、対向液圧において、パンチ1の押し込みにより加圧された液5を、ダイ2内に設けたバイパス8によって、金属板4の外周部4aに導く方法が提案されている(非特許文献1参照)。この方法は、金属板4の外周部4aに導かれた液9によって、金属板4を外周部4aから半径方向に押すとともに、液9による潤滑効果によって、金属板4とダイ2、しわ押さえ3間の摩擦抵抗を減少させようとするものである。
このような金属板4を外周部4aから半径方向に押す成形方法としては、図6に示すように、液圧ではなく、サイドツール13によって、機械的に金属板4を外周部4aから半径方向に押す成形方法も提案されている(非特許文献2参照)。
特公昭57−7809号公報(全文)
特開平9−24424号公報(全文)
特開平11−77177号公報(全文)
「塑性と加工」 (日本塑性加工学会誌) 第41巻、第471 号、390-394 頁、中村和彦「水圧を利用した脱潤滑油深絞り加工」
Journal of Materials Processing Technology 48(1995)、69-74 頁、Eiji Sato 他、「Square cup deep drawing of thick plate by multi-axial loading 」
前記した通り、通常の対向液圧成形方法では、成形の初期から、ポンチ1の反対側から金属板を押す対向液圧作動液体を用いる。この対向液圧作動液体における液圧の作用を図7に示す。図7のように、成形の初期段階では、対向液圧6はポンチ1と逆方向に作用し、対向液圧6の合力Fp は、パンチ1の肩部1a に当接し変形する、変形初期の金属板4a部分に対する張力Tpとして作用する。また、ダイス2の肩部2a に当接し変形する、変形初期の金属板4e部分に対する張力Tdとして作用する。この内、特に、張力Tpは、これら変形初期の金属板部分4aに引張応力を生じさせ、これらの金属板部分のダメージが大きくなり、この部分に割れが生じ、成形性を低下させる原因となる。
鋼板やステンレス鋼板は伸びやr値が高いために、変形初期において、負荷される上記張力Tp、Tdが大きくなっても破断することはない。しかし、伸びやr値が低いアルミニウム合金板は、特に、変形初期において、前記負荷される上記張力Tp、Tdが大きくなくても破断する可能性があり、また、大きくなった場合には、破断する可能性が高くなる。このため、特にアルミニウム合金板などの対向液圧成形法は、条件によっては、液圧を用いない従来のプレス成形方法と大差ない絞り成形性を示すため、一般には未だ十分に普及していない。
これに対して、図5(b)に示す前記周液圧深絞り方法では、周液圧で金属板4を外周部4aから半径方向に押すため、金属板4とダイ2、しわ押さえ3間の摩擦抵抗の減少からは有利である。しかし、通常の対向液圧成形方法と同様に、成形の初期から、ポンチ1の反対側から金属板を押す対向液圧作動液体を用いている。このため、負荷される上記張力Tp、Tdのダメージは同じであり、この張力Tp、Tdが負荷される限り、アルミニウム合金板の変形初期における、前記破断の可能性が避け難い。
一方、前記図6に示した、金属板4を機械的に外周部4aから半径方向に押す成形方法は、変形初期において、対向液圧を用いない。このため、前記対向液圧による、変形初期における破断の可能性が無い点は有利であると言える。
しかし、このように機械的に金属板4を外周部4aから半径方向に押す場合、前記図6に示すように、角筒の深絞り成形を行なう場合、矩形の金属板における、矩形を構成する各辺の中央部を押すこととなる。このため、角筒の各辺を構成する(角筒の各辺に相当する)金属板各辺の中央部ではダイ内への金属板材料の流入量が大きくなる。その一方で、金属板材料の流入が必要な各辺の角部(コーナー部)では、金属板材料の流入量が減る、金属板材料流れ込みの不均一(アンバランス)が生じる。この結果、却って、割れやしわの発生が多くなる。
また、成形される金属板4が円形形状などでは、機械的に金属板4を外周部4aから半径方向に押せないために、前記図6に示す通り、サイドツール13に合わせて、成形される金属板を予め加工する必要性があり、工程が煩雑となる。
本発明は、これら従来の対向液圧成形方法や周液圧深絞り方法が有する問題点に鑑みてなされたもので、特に、成形性が低いアルミニウム合金板であっても筒状に深絞り成形できる、金属板の液圧成形方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための、本発明の金属板の液圧成形方法の要旨は、成形される金属板をダイとしわ押さえとで挟み、金属板に液圧を作用させるとともに、ポンチにより金属板を押して、筒状に深絞り成形を行なう、液圧成形方法であって、金属板に絞り変形が生じるまでの成形初期段階においては、ポンチの反対側から金属板を押す対向液圧をかけないとともに、前記液圧を金属板周縁部から金属板半径方向に向けて付加し、金属板を半径方向に向けて押しつつ、ポンチにより金属板を押して成形することである。
本発明者らの知見によれば、アルミニウム合金板などの難成形材料では、前記した通り、特に、上記金属板に絞り変形が生じるまでの成形初期段階における対向液圧による前記板の破断が問題となる。言い換えると、この変形初期における破断発生防止こそが重要で、この変形初期における破断発生さえ防止できれば(乗り越えれば)、続く変形後期における筒状の深絞り成形は、対向液圧や周液圧のいずれを使用しようと、うまく成形することができる。
このため、本発明では、少なくとも、金属板に絞り変形が生じるまでの成形初期段階(以下、金属板の変形初期とも言う)においては、従来の対向液圧成形方法や周液圧深絞り方法とは異なり、ポンチの反対側から金属板を押す対向液圧作動液体を用いず、対向液圧をかけない。これによって、本発明では、先ず、前記した対向液圧の負荷張力Tp、Tdによる、金属板の変形初期における破断発生を回避する。即ち、絞り成形の可否を律する成形初期の段階について見ると、従来の対向液圧や周液圧深絞りは、パンチ肩部の素材金属板への引張り応力をむしろ増大させるように働くため、金属板の絞り比の改善に対して、むしろ逆効果になる。
その一方で、本発明では、金属板の変形初期においては、前記液圧を金属板周縁部のみから金属板半径方向に向けて付加すること(以下、周液圧付加とも言う)によって、金属板を半径方向に向けて押しつつ、金属板外周部から成形品中央部に向かう方向に力を加える。このように、金属板(ブランク)外周端への液圧付与の効果のみを残した成形性にすることで、液圧で金属板を成形品中央部へと押しやり、ポンチから金属板へ伝達される成形荷重を減らすことができ、絞り成形性を改善できる。
これによって、本発明によれば、アルミニウム合金板などの変形初期における破断発生を防止する。即ち、前記金属板外周部から成形品中央部に向かう方向の力によって、絞り変形が助長され、成形性が向上する。言い換えると、本発明によれば金属板外周に作用させる液圧により、金属板周辺部の素材が絞り成形品の中央に押しこまれる機構が働く。このため、金属板中央のポンチ (パンチ) で板を成形する荷重が少なくて済み、結果として、通常2.0程度であるアルミの絞り比を2.2以上にまで高めることが出来る。また、深さ100mmを超える筒状形状が絞り成形でき、前記した自動車のインナパネルなどへの成形が可能となる。
以下に、図面を用いて、本発明成形方法を説明する。図1(a)は、本発明成形方法に用いる成形装置(プレス)を示す説明図、図1(b)は図1(a)の要部拡大図である。図2は、図1の成形装置によって成形した角筒成形品を示す説明図である。
(前提)
図1(a)に示す成形装置の構成は、基本的には、図4に示した前記通常の対向液圧成形装置と同じである。即ち、図1(a)の成形装置は、金型であるダイ2、しわ押さえ3、ポンチ1から構成される。
図1(a)に示す成形装置の構成は、基本的には、図4に示した前記通常の対向液圧成形装置と同じである。即ち、図1(a)の成形装置は、金型であるダイ2、しわ押さえ3、ポンチ1から構成される。
また、この図1(a)の成形装置を用いた成形工程も、ダイ2としわ押さえ3で素材金属板4を挟み、金型であるポンチ1が素材金属板4を押して成形を行う点では、通常のプレス成形工程と同じであり、前記通常の対向液圧成形方法とも共通する。
(成形初期段階)
円筒や角筒などへの筒状深絞り成形(変形)では、素材金属板(ブランク)4中央部に押し当てるポンチ1からの成形力により、外周部分の金属板材料を成形品中央のくぼみ(ダイ2内)に引き寄せる変形(絞り変形)で、成形品の成形高さを得る。
円筒や角筒などへの筒状深絞り成形(変形)では、素材金属板(ブランク)4中央部に押し当てるポンチ1からの成形力により、外周部分の金属板材料を成形品中央のくぼみ(ダイ2内)に引き寄せる変形(絞り変形)で、成形品の成形高さを得る。
筒状深絞り成形(変形)の可否は、外周部分の金属板材料を引き寄せるために加えられる前記成形力に、ポンチ1肩部近傍の素材金属板が耐えられるか否かで決まる。
ポンチ1肩部近傍の素材金属板が耐えられるか否かは、変形初期で決まり、これに素材金属板が耐えた後の変形後期では、円滑に外周部分の金属板材料の引き寄せが行なわれて、成形(変形)が進行する。
(対向液圧との関係)
ここで、本発明では、少なくとも、金属板4に絞り変形が生じるまでの成形初期段階において、ポンチ1の反対側から金属板4を押す対向液圧作動液体を用いず、対向液圧をかけない。このため、金属板4の変形初期においては、対向液圧作動液体をダイ2内のポンチ1に対向する空間12には密閉充填しない。これによって、前記した対向液圧の負荷張力Tp、Tdを無くし、金属板の変形初期における破断発生を回避する。
ここで、本発明では、少なくとも、金属板4に絞り変形が生じるまでの成形初期段階において、ポンチ1の反対側から金属板4を押す対向液圧作動液体を用いず、対向液圧をかけない。このため、金属板4の変形初期においては、対向液圧作動液体をダイ2内のポンチ1に対向する空間12には密閉充填しない。これによって、前記した対向液圧の負荷張力Tp、Tdを無くし、金属板の変形初期における破断発生を回避する。
なお、本発明で言う金属板4に絞り変形が生じるまでの成形初期段階とは、図1において、ポンチ1によって上から押された金属板4の周辺部4aが成形品の中央に向かって移動を開始するとともに、金属板4の中央部4bに点線で示すたわみ変形が生じ始めた状態を言う。言い換えると、金属板4のダイ2としわ押さえ3とで挟まれる領域全体に、変形(成形)が生じ始めた状態を言う。
(周液圧)
その一方で、本発明では、金属板4の変形初期においては、液圧11を、金属板周縁部4aのみから、金属板4の半径方向に向けて付加する。これによって、金属板外周部から、成形品中央部に向かう方向に力が加わる。この力によって、上記した絞り変形が助長される。この結果、金属板4に押し当てるポンチ1からの成形力が、通常の成形に比して小さくて済む。したがって、ポンチ1肩部近傍の素材金属板がアルミニウム合金板であっても、前記成形力に耐えられるようになり、成形性が向上する。
その一方で、本発明では、金属板4の変形初期においては、液圧11を、金属板周縁部4aのみから、金属板4の半径方向に向けて付加する。これによって、金属板外周部から、成形品中央部に向かう方向に力が加わる。この力によって、上記した絞り変形が助長される。この結果、金属板4に押し当てるポンチ1からの成形力が、通常の成形に比して小さくて済む。したがって、ポンチ1肩部近傍の素材金属板がアルミニウム合金板であっても、前記成形力に耐えられるようになり、成形性が向上する。
このような周液圧の付加は、液圧作動液体を、金属板周縁部4aの外周位置に設けられた閉空間10に、密閉充填することによって行なう。この閉空間10に密閉充填された液圧作動液体は、対向液圧などの他の液圧駆動部とは独立した油圧回路を経由して液圧を付与する。特に、対向液圧を併用する場合には、周液圧を対向液圧とは独立した油圧回路とすることによって、成形において各々の液圧をかけるタイミングや液圧量を各々制御できる。これら対向液圧などの液圧作動液体は、通常の対向液圧成形方法同様、潤滑油であっても水であっても良い。
この閉空間10は、ダイ2とポンチ1との間の空間であって、金属板周縁部4aの外周位置に、例えば、ダイ2の端部縦壁2aによって仕切られ(シールされ)て構成される。
この密閉充填された液圧作動液体は、金属板4をポンチ1によって上から押すことによって圧縮され、金属板周縁部4aから金属板を半径方向に向けて押し、金属板外周部から成形品中央部に向かう方向の力となる。
以上説明した、本発明の周液圧付加効果は、金属材料によらず発揮される。鋼板やステンレス鋼板などの元々筒状深絞り性に優れた金属板であっても、より深い(高い)筒状に深絞りできる。また、これよりも伸びやr値が低いアルミニウム合金板でも、深絞りの成形工程を増すことなく、より深い(高い)筒状に深絞りできる。
(成形後期段階)
前記した通り、特に、アルミニウム合金板などの難成形材料では、この変形初期における破断発生防止が重要である。この変形初期における破断発生さえ防止できれば、続く変形後期(成形後期段階)における筒状への深絞り成形は、対向液圧や周液圧のいずれを使用しようと、あるいは使用しない場合でも、筒状の深絞り成形を行なうことができる。
前記した通り、特に、アルミニウム合金板などの難成形材料では、この変形初期における破断発生防止が重要である。この変形初期における破断発生さえ防止できれば、続く変形後期(成形後期段階)における筒状への深絞り成形は、対向液圧や周液圧のいずれを使用しようと、あるいは使用しない場合でも、筒状の深絞り成形を行なうことができる。
したがって、成形後期段階では、対向液圧作動液体を用いずに、本発明における周液圧を引き続き使用しても良い。また、通常の対向液圧成形のように、対向液圧作動液体をダイ2内のポンチ1に対向する空間12に密閉充填する形で保持し、引き続き、ポンチ1を対向液圧作動液体の反対側から金属板4を押して成形を行っても良い。
(角筒成形)
図2の角筒成形品(あるいは角筒への成形途中の金属板)20を用いて、角筒成形の場合の要領を以下に説明する。角筒の深絞り成形を行なう場合、角筒20の各辺を構成する(角筒の各辺に相当する)金属板各辺の、中央部4cと角部(コーナー部)4dとでは、ダイ内への金属板材料の流入量が異なる。角部(コーナー部)4dの金属板材料の流入量は、その両側から流入する中央部4cからの金属板材料の流入に阻まれ、必然的に少なくなる。
図2の角筒成形品(あるいは角筒への成形途中の金属板)20を用いて、角筒成形の場合の要領を以下に説明する。角筒の深絞り成形を行なう場合、角筒20の各辺を構成する(角筒の各辺に相当する)金属板各辺の、中央部4cと角部(コーナー部)4dとでは、ダイ内への金属板材料の流入量が異なる。角部(コーナー部)4dの金属板材料の流入量は、その両側から流入する中央部4cからの金属板材料の流入に阻まれ、必然的に少なくなる。
即ち、中央部4cの金属板材料の流入量は多く、角部(コーナー部)4dの金属板材料の流入量は少なくなる、金属板材料流れ込みの不均一(アンバランス)が生じる。この結果、角筒成形の場合には、このような金属板材料流れ込みの不均一による割れやしわの発生が多くなる。因みに、これは角筒特有の問題であり、円筒の場合には、このような金属板材料流れ込みの不均一は生じない。
本発明における周液圧を使用する場合でも、このような角筒成形における、金属板材料流れ込みの不均一は、同様に生じる。したがって、このような角筒成形の場合には、前記金属板材料流れ込みの均一化を図るために、図2に示すように、ドロービード(溝)13を、金属板材料の流入量が多くなる中央部4cに設けることが好ましい。
このドロービード13は、金属板材料の流入に対する抵抗を増し、中央部4cにおける金属板材料の流入量を抑制し、角部4dの金属板材料の流入量とバランスさせる効果がある。このため、角筒成形における、金属板材料流れ込みの不均一による割れやしわの発生が抑制される。ドロービード13は、このような効果を発揮するために、金属板の深絞り成形条件に応じて、設置部位、その深さや幅、長さが設計される。
以下に本発明の実施例を説明する。本発明成形方法や、通常の深絞り成形方法、対向液圧深絞り成形方法など種々の成形方法で、同じアルミニウム合金板を円筒深絞り成形した際の成形性を評価した。
アルミニウム合金板は、板厚1mmのJIS5182(Mg:4.5質量%、Mn:0.3質量%)合金O材(0.2%耐力:145MPa、伸び:21%)を用いた。成形品は、Φ50mmの円筒絞り成形品とした。
成形性評価は、深絞り性の評価として代表的な限界絞り比(L.D.R:Limiting.Drawing.Ratio)を求めて、その比較で行なった。この限界絞り比は、割れずに絞り込める成形可能な最大の円形ブランクの直径をポンチの直径で除した値で表示している。なお、成形は各例とも、同一直径のブランクに対して5回行い、この5回の試験中に、割れが発生せずに、3回以上絞り込めれば成形可能とし、更に直径を大きくした円形ブランクを同様に成形評価していくことを繰り返した。そして、この5回の試験中に、割れが発生せずに、絞り込める回数が3回未満であれば、これ以上のブランク径の成形は不可と評価して、その前の時点でのブランク径を割れずに絞り込める最大の径とした。
発明例は、図1の成形装置を用いて、アルミニウム合金板に絞り変形が生じるまでの成形初期段階において、ポンチ1の反対側からは対向液圧をかけず、本発明における周液圧のみを用いて、ポンチ1によって成形した。そして、成形後期段階でも、対向液圧をかけず、本発明における周液圧のみを引き続き付加した。この際の周液圧は、金属板周縁部4aの外周位置に設けられた閉空間10に、市販の潤滑由を密閉充填して付加した。付加した周液圧は、40MPa、20MPaの2通りとし、発明例は2通りとも、この周液圧のレベルのみを変え、他の条件を同じとして成形を行なった。
比較例は、図1の成形装置で、本発明周液圧を用いない、通常の深絞り成形を行なった。また、図4の成形装置を用いた、従来の対向液圧深絞り成形を行なった(市販の潤滑由、液圧:20MPa)。更に、成形初期段階において、本発明周液圧(20MPa)を用いるとともに、上記対向液圧(市販の潤滑由、液圧:20MPa)をも付与した比較例でも、成形を行なった。
成形条件として、上記各例とも、パンチ1、ダイ2、しわ押さえ(ブランクホルダ)3の表面は鏡面仕上げとした。また、しわ押さえ力(BHF)は、周液圧がしわ押さえ3を上方に押し上げる力を除いた、実質的に板を下方に押しつける力が10kNになるように設定した。これらの他の成形条件は発明例と比較例とも同じとして成形を行なった。
これらの各成形方法の限界絞り比を図3に示す。図3の通り、本発明の周液圧によれば、限界絞り比は、周液圧40MPaの例が2.36、20MPaの例が2.28である。これに対して、通常の深絞り成形では限界絞り比は2.0、対向液圧深絞り成形では2.05である。また、成形初期段階において、本発明周液圧を用いるとともに、上記対向液圧をも付与した比較例の限界絞り比は2.10である。
因みに、深絞り用冷延鋼板の、前記通常の深絞り成形における限界絞り比は約2.2程度であった。したがって、アルミニウム合金板の深絞り成形において、通常の深絞り成形、対向液圧深絞り成形、また、成形初期段階において周液圧を用いるとともに対向液圧をも付与した比較例などの限界絞り比は、いずれも深絞り用冷延鋼板に比して低い。これに対して、本発明の周液圧によれば、アルミニウム合金板の深絞り成形において、深絞り用冷延鋼板以上の成形性が得られていることになる。以上の結果から、本発明の効果が裏付けられる。
以上説明したように、本発明によれば、特に、成形性が低いアルミニウム合金板であっても、深絞り用冷延鋼板と同等以上に、筒状に深絞り成形できる、金属板の液圧成形方法を提供できる。この結果、例えば、自動車などのパネル構造体へのアルミニウム合金板の成形および適用を可能にし、パネル構造体の軽量化などを一層促進することができる。
1:ポンチ、2:ダイ、3:しわ押さえ、4:金属板、5:対向液圧作動液体、6、7、10:ダイ端部、11:液圧、12:ダイ内空間、13:ビード
Claims (4)
- 成形される金属板をダイとしわ押さえとで挟み、金属板に液圧を作用させるとともに、ポンチにより金属板を押して、筒状に深絞り成形を行なう液圧成形方法であって、金属板に絞り変形が生じるまでの成形初期段階においては、ポンチの反対側から金属板を押す対向液圧をかけないとともに、前記液圧を金属板周縁部から金属板半径方向に向けて付加し、金属板を半径方向に向けて押しつつ、ポンチにより金属板を押して成形することを特徴とする金属板の液圧成形方法。
- 前記筒状が角筒状であり、成形される金属板を矩形とし、この矩形を構成する各辺の中央部にドロービードを設ける一方、矩形を構成する各辺の各角部にはドロービードを設けず、前記各辺の中央部ではダイ内への金属板材料の流入を規制するとともに、前記各辺の角部ではダイ内への金属板材料の流入を促進する請求項1に記載された金属板の液圧成形方法。
- 前記金属板がアルミニウム合金板である請求項1または2に記載された金属板の液圧成形方法。
- 前記アルミニウム合金板が自動車用パネルに深絞り成形される請求項3に記載された金属板の液圧成形方法。
Priority Applications (1)
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JP2005199021A JP2007014987A (ja) | 2005-07-07 | 2005-07-07 | 金属板の液圧成形方法 |
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EP1950952A2 (en) | 2007-01-25 | 2008-07-30 | NEC Corporation | Video image delivering apparatus, video image delivering system, and video image delivering method for delivering video image depending on position |
JP2008246555A (ja) * | 2007-03-30 | 2008-10-16 | Kobe Steel Ltd | プレス成形用ブランクおよびプレス成形方法 |
JP2009056473A (ja) * | 2007-08-30 | 2009-03-19 | Nisshin Steel Co Ltd | 金属板の円筒深絞り加工方法 |
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JP2015174105A (ja) * | 2014-03-14 | 2015-10-05 | 日産自動車株式会社 | 絞り成形装置及び絞り成形方法 |
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2005
- 2005-07-07 JP JP2005199021A patent/JP2007014987A/ja active Pending
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