JP5194611B2 - 板材のプレス成形方法及びプレス成形品 - Google Patents
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Description
ハイドロフォーム法は、対向液圧成形とも呼ばれ、非特許文献1で開示されている。また、特許文献1には、ハイドロフォーム法を用い、耐デント性を向上させる技術が開示されている。また、特許文献2には、ハイドロフオーム法を応用し、寸法精度の高い製品を作る方法が開示されている。さらに、特許文献3、4にも、ハイドロフオーム法を用いた成形技術が開示されている。
また、引用文献8には、小Rとした場合でも割れを防止する手法として、リストライクを用いる方法(リストライクによる成形法)が開示されている。
まず、ハイドロフォーム法で量産展開が難しい理由はその生産速度の低さにあり、通常のパンチ及びダイを用いた成形では、1分間に10枚〜15枚を成形できるのに対し、ハイドロフォーム法では、1分間に0.5枚の成形、多くて1枚の成形が限度である。
この対策として、特許文献3に開示されている技術では、液体の給排のロスを無くすことによりタイムロスを少なくするようにしているが、液体の給排自体が装置にあるために、通常のパンチ及びダイを用いた成形には遠く及ばない。
その他量産展開の阻害要因としては、成形される材料が液体で濡れて、作業環境が良くないことである。この対策として、非特許文献1には、ゴム膜を使用したハイドロフォーム法が提案されているが、やはり液体の出し入れが必要であり、プレスに時間がかかってしまう。
以上のように、従来技術には、自動車産業等において部品の量産に優れて、かつ、割れ、しわなく成形可能で、かつ耐デント性、張り剛性、寸法精度及び面品質を満たすパネルを作る技術は見当たらない。
すなわち、非特許文献3に開示されている成形方法では、成形部位の周囲を拘束してドアハンドル取り付け部を成形するため、ドアハンドル取り付け部に周囲の材料が流入できない。また、この成形を金型同士で行っていることから、ドアハンドル取り付け部の金型と材料が接触した部分の摩擦力のために、該金型が接した部分の板厚はほとんど減少しない。つまり、ドアハンドル取り付け部の底及びドアハンドル取り付け部の周囲からの材料供給がない状態となり、取り付け部深さが数mmを越える深さの場合、ドアハンドル取り付け部の角部で局所的な板厚減少が発生し、割れが発生してしまう。
このように、従来において、エンボスを成形する成形品について、外観品質を維持しつつ、量産を可能とした成形技術が見当たらない。
本発明は、前述した課題を解決することを目的とする。すなわち、本発明は、成形品の量産展開を可能にしつつも、要求される耐デント性、寸法精度、張り剛性、面品質を満たす成形品を提供することである。また、本発明は、エンボスを成形する成形品について、外観品質を維持しつつ、量産を可能にすることである。
また、本発明に係る請求項2に記載の板材のプレス成形方法は、請求項1に記載の板材のプレス成形方法において、前記封入体と金型とで前記板材を挟み、押圧して、前記板材を前記封入体と金型とでプレス成形することを特徴とする。
(第1の実施形態)
第1の実施形態は、本発明を適用した成形装置である。
(構成)
図1は、第1の実施形態の成形装置の構成を示す。この成形装置はいわゆるダブルアクション式の構造をなす。
図1(a)に示すように、成形装置は、プレスされる材料であるブランク100の成形時に該ブランク100(具体的には成形対象となる面)の外周部を押さえる略枠状の上下ブランクホルダ1,2、下側ブランクホルダ1が載置されている基台3、基台3を貫通し上下動するクッションピン4により支持されつつ、下側ブランクホルダ1の内側に配置されている駆動台5、駆動台5上に載置されつつ、下側ブランクホルダ1の内側に配置されている封入体6、及び上側ブランクホルダ2の内側に配置され、該上側ブランクホルダ2とは独立して上下動可能とされている凸型金型であるパンチ7を備えている。この成形装置は、いわゆるダイレスの成形装置として構成されている。ここで、ブランク100は、鋼板やアルミニウム合金板である。
また、上下ブランクホルダ1,2には適宜Rを設定している。具体的には、封入体6の破損を回避するために、下側ブランクホルダ1においてブランク100と封入体6とが接触する部分1a、すなわち、上側面と内側面とが交わる角部のRを2mm以上にしている。
図2及び図3に示すように、下側ブランクホルダ1と上側ブランクホルダ2とは平面視において略同形状である。図2に示すように、封入体6が内側に設置される下側ブランクホルダ1では、封入体6が局所変形してしまうのを避けるために、隣り合う内側面同士が交わる角部1bのRを3mm以上にしている。また、後述の他の実施形態のように、上側ブランクホルダ2の内側にも封入体6を設置する場合があるが、このような場合に対応して、上側ブランクホルダ2も、封入体6が局所変形してしまうのを避けるために、隣り合う内側面同士が交わる角部2bのRを3mm以上にしている。
パンチ7は、そのブランク100に対向する表面が、ブランク100から成形する成形品に応じた形状となっている。パンチ7は、図示しない駆動手段に取り付けられており、上下動するように支持されている。
封入体6は、流動性物質を封入容器に封入した構造となっている。
図4及び図5に示すように、封入容器6aは、2枚の略四角形の板状の粘弾性部材の外周部を張り合わせることで形成されている。
また、封入容器6aの肉厚(膜厚)は所定の厚さであることが好ましい。すなわち、封入体6がプレス成形時にクリアランス(例えば下側ブランクホルダ1とブランク100とのクリアランス)に入り込んで破損するのを回避でき、かつブランク100の変形への追従性を確保できる肉厚とし、例えば、その肉厚は0.5mm〜5mmであることが好ましい。
また、成形品の形状に応じて膜厚(肉厚)に分布を持たせても良い。例えば、封入容器6aにおいて、変形させたい部分の膜厚を他の部分よりも薄くする。例えば、封入容器6aにおいて、プレス成形品の中央部に対応する部位の膜厚を0.8mmにし、プレス成形品の周辺部に対応する部位の膜厚を1.0mmにする。これにより、封入容器6a全体を同じ膜厚で形成した場合と比較して、板厚減少率で0.8%の差が生じ(改善し)、耐デント性が7%向上する。
また、下側ブランクホルダ1との接触部分の肉厚は1mm〜2mmが好ましい。なお、摩擦状態、例えば下側ブランクホルダ1やブランク100との摩擦状態は、滑りが良くても悪くても(大きくても小さくても)問題はない。しかし、下側ブランクホルダ1やブランク100との間の摩擦状態を良好にするために、潤滑材を用いる場合には、封入容器6aの材質を考慮して潤滑材を決定する、または、潤滑材に応じて封入容器6aの材質を決定する必要がある。
なお、両面張り合わせにより封入容器6aを形成することに限定されるものではない。例えば、図4の矢示A−Aにおける断面として示す図7に示すように、完全に一体的に形成した、いわゆる風船型として封入容器6aを形成しても良く、図4の矢示A−Aにおける断面として示す図8に示すように、外周部にたて壁を設けた、いわゆるカマボコ型として封入容器6aを形成しても良い。
また、封入容器6aの形状は、プレス成形時に封入体6においてブランク100と接する面の圧力分布に影響するので、結果として、成形品の形状にも影響するようになる。このようなことから、例えば、成型品の形状に応じて封入容器6aの形状を選定しても良い。この場合、同時に、封入容器6aの構造に応じて下側ブランクホルダ1の形状も選定する必要がある。
また、封入容器6aの底面(プレス成形面と反対側の面)については、プレス成形に寄与しないため、プレス成形中に変形させる必要はないが、クリアランスへの吸い込みを抑制する必要があるので、該底面をゴム引布(布と粘弾性体とを組み合わせたもの)等の複合材により形成しても良い。
また、張り合わせ形状の封入体6(前記図5)や風船型の封入体6(前記図7)のような、たて壁がない、一体型の封入体6を用いる場合、その封入体6が載置される(取り付けられる)部位を該封入体6の形状に合致させても良い。
図9に示すように、封入体6が載置される部位をなす、駆動台5における封入体6の底面の取り付け面5aを湾曲した凹形状にする。これにより、ブランク100と該ブランク100が載置される下側ブランクホルダ1の内側面とで形成される角部110と、封入体6におけるプレス成形面(特に外周部)との距離Lを、プレス成形前でも短くすることができる。このようにすることで、封入体6のプレス成形面(特に外周部)がプレス成形過程で該角部に入り込むのを抑制して、封入体6の耐久性を向上させることができる。
封入体6を上下動させるためのクッションピン4は、油圧又は機械式により上下動する機構になっている。
成形装置は、前述のようにいわゆるダブルアクション式の構造をなしており、その動作は次のようになる。
図1(a)から図1(b)への変化として示すように、先ず、上側ブランクホルダ2を下方に移動させて、上側ブランクホルダ2と下側ブランクホルダ1で、ブランク100の外周部(成形対象面の周囲)を挟み込み、ブランク100を押さえる。続いて、図1(b)から図1(c)への変化として示すように、パンチ7を下方に移動させて、パンチ7と封入体6とでブランク100をプレスすることで、ブランク100をパンチ成形する。なお、このとき、封入体6は、変形して、ブランク100、下側ブランクホルダ1及び駆動台5で囲まれた空間内で、隅々まで広がった状態になる。
また、封入体6による張出成形を行った後に、パンチ成形することもできる。すなわち、図10(a)(前記図1(a)と同じ状態)から図10(b)への変化として示すように、上側ブランクホルダ2を下方に移動させて、上側ブランクホルダ2と下側ブランクホルダ1とで、ブランク100の外周部を挟み込んでから(前記図1(b)の状態を経た後)、クッションピン4を動作させて、駆動台5を上昇させる。このようにすることで、封入体6をブランク100に押し当てて、封入体6によりブランク100を張出成形する。続いて、図10(b)から図10(c)への変化として示すように、パンチ7を下方に移動させて、パンチ7と封入体6とでブランク100をプレスすることで、ブランク100をパンチ成形する。
作用及び効果は次のようになる。
前述のように、上側ブランクホルダ2と下側ブランクホルダ1とで、ブランク100の外周(成形対象面の周囲)を拘束し、流動性物質を封入した封入体6をブランク100に押圧して、ブランク100を変形させて成形している(前記図1(a)〜(c)や前記図10(a)〜(b)参照)。例えば、上側ブランクホルダ2と下側ブランクホルダ1とで外周を拘束したブランク100を、封入体6とパンチ7とで挟み、押圧して、ブランク100を封入体6とパンチ7とでプレス成形している(前記図1(a)〜(c)や前記図10(c)参照)。これにより、ダイに代えて封入体6を容易に設置でき、結果として、パンチ7と封入体6とによる成形時間を、パンチ及びダイを用いた通常の成形による成形時間と近づけることができ、成形品の量産展開が可能になる。そして、そのように成形品の量産展開を可能にしつつも、要求される耐デント性、寸法精度、張り剛性、面品質を満たすことができる。
すなわち、前記第1の実施形態では、張出成形を行った後にパンチ成形している。しかし、成形工程はこれら工程によるものに限定されるものではない。例えば、パンチ成形の後に、パンチ及びダイを用いて金型のみによる成形工程を追加して実施することもできる。また、封入体6を用いてパンチ成形を行っているが、この成形に代えてパンチ及びダイを用いて金型のみによる成形(ドロー成形)を実施することもできる。
また、以下では、金型の違い(パンチ、ダイ)、金型(パンチ、ダイ)の配置の違い、成形装置の方式の違い(ダブルアクション式、シングルアクション式)について、複数の実施形態を挙げて説明しているが、それら実施形態では、金型や封入体6(形状や材質等)は、特に言及しない限り、前記第1の実施形態で用いたものと同一のものである。
次に第2の実施形態を説明する。
前記第1の実施形態では、封入体6をブランク100に対して下方に配置している。しかし、封入体6をブランク100に対して下方に配置することに限定されるものではない。第2の実施形態では、封入体6をブランク100の上方に配置している。
(構成)
図11は、第2の実施形態の成形装置の構成を示す。
図11に示すように、第2の実施形態の成形装置の構成は、前記第1の実施形態の成形装置の構成と同様であり、上下ブランクホルダ1,2、基台3、上下動するクッションピン4により支持されている駆動台5、封入体6及びパンチ7を備えている。
動作、作用及び効果は次のようになる。
図11(a)から図11(b)への変化として示すように、先ず、上側ブランクホルダ2を下方に移動させて、上側ブランクホルダ2と下側ブランクホルダ1とで、ブランク100の外周部を挟み込んで、ブランク100を押さえる。続いて、図11(b)から図11(c)への変化として示すように、封入体6を下方に移動させて、パンチ7と封入体6とでブランク100をプレスすることで、ブランク100をパンチ成形する。
以上のような成形により、前記第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。すなわち例えば、成形時間を、パンチ及びダイを用いた通常の成形による成形時間と近づけることができ、成形品の量産展開を可能にすることができる。
次に第3の実施形態を説明する。
前記第1及び第2の実施形態では、ダイに代えて封入体6を用いてプレス成形している。これに対して、第3の実施形態では、パンチ7に代えて封入体6を用いてプレス成形している。
(構成)
図13は、第3の実施形態の成形装置の構成を示す。
図13に示すように、第3の実施形態の成形装置の構成は、第1及び第2の実施形態の成形装置の構成と同様であり、上下ブランクホルダ1,2、基台3、上下動するクッションピン4により支持されている駆動台5及び封入体6を備えている。そして、パンチ7に代えて封入体6を設けるとともに、凹型であるダイ8を備えている。すなわち、第3の実施形態の成形装置は、いわゆるパンチレスの成形装置として構成されている。さらに、第3の実施形態の成形装置では、前記第1の実施形態と同様に、ブランク100の下側に封入体6を配置、すなわち、下側ブランクホルダ1の内側に封入体6を配置している。
動作、作用及び効果は次のようになる。
図13(a)から図13(b)への変化として示すように、先ず、上側ブランクホルダ2を下方に移動させて、上側ブランクホルダ2と下側ブランクホルダ1とで、ブランク100の外周部を挟み込み、ブランク100を押さえる。続いて、図13(b)から図13(c)への変化として示すように、ダイ8を下方に移動させて、ダイ8と封入体6とでブランク100をプレスすることで、ブランク100をダイ成形する。
以上のような成形により、前記第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。すなわち例えば、成形時間を、パンチ及びダイを用いた通常の成形による成形時間と近づけることができ、成形品の量産展開を可能にすることができる。
次に第4の実施形態を説明する。
前記第3の実施形態では、封入体6をブランク100に対して下方に配置している。これに対して、第4の実施形態では、封入体6をブランク100の上方に配置している。
(構成)
図15は、第4実施形態の成形装置の構成を示す。
図15に示すように、第4の実施形態の成形装置の構成は、前記第3の実施形態の成形装置の構成と同様であり、上下ブランクホルダ1,2、基台3、上下動するクッションピン4により支持されている駆動台5、封入体6及びダイ8を備えている。
しかし、第4の実施形態の成形装置では、図15に示すように、ブランク100の上側に封入体6を配置、すなわち、上側ブランクホルダ2の内側に封入体6を配置し、ブランク100の下側にダイ8を配置、すなわち、下側ブランクホルダ1の内側にダイ8を配置している。
動作、作用及び効果は次のようになる。
図15(a)から図15(b)への変化として示すように、先ず、上側ブランクホルダ2を下方に移動させて、上側ブランクホルダ2と下側ブランクホルダ1とで、ブランク100の外周部を挟み込み、ブランク100を押さえる。続いて、図15(b)から図15(c)への変化として示すように、封入体6を下方に移動させて、ダイ8と封入体6とでブランク100をプレスすることで、ブランク100をダイ成形する。
以上のような成形により、前記第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。すなわち例えば、成形時間を、パンチ及びダイを用いた通常の成形による成形時間と近づけることができ、成形品の量産展開を可能にすることができる。
次に第5の実施形態を説明する。
前記第1〜第4の実施形態の成形装置は、いわゆるダブルアクション式の構造をなしている。しかし、成形装置は、ダブルアクション式として構成されることに限定されるものではない。第5の実施形態の成形装置は、いわゆるシングルアクション式の構造をなしている。
図17は、第5の実施形態の成形装置の構成を示す。
図17に示すように、成形装置は、プレス機の上下のボルスター21,22、上下のボルスター21,22それぞれに、互いに対向するように取り付けられている略枠状の上下ブランクホルダ23,24、下側ボルスター21に対して下側ブランクホルダ23を支持するクッションピン25、下側ブランクホルダ23の内側に配置されつつ下側ボルスター21に固定されている支持台26、支持台26上に載置されつつ、下側ブランクホルダ23の内側に配置されている封入体27(前記図4〜図8に示すような構造の封入体)、及び上側ブランクホルダ24の内側に配置されつつ上側ボルスター22に固定されているパンチ28を備えている。
以上のような構成をなす成形装置は、シングルアクション式として次のように動作する。
上側ボルスター22を下方に移動させることで、その移動過程で、先ず、図17(a)から図17(b)への変化として示すように、上側ブランクホルダ24と下側ブランクホルダ23とによりブランク100の外周部が挟み込まれる。その後、図17(b)から図17(c)への変化として示すように、下側ブランクホルダ23が上側ブランクホルダ24によりさらに下方に押し込まれることで、クッションピン25の長さが短くなり(クッションピン25が沈んでいき)、その過程で、パンチ28と封入体27とでブランク100がプレスされ、ブランク100がパンチ成形される。
以上のような成形により、前記第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。すなわち例えば、成形時間を、パンチ及びダイを用いた通常の成形による成形時間と近づけることができ、成形品の量産展開を可能にすることができる。
次に第6の実施形態を説明する。
前記第5の実施形態では、封入体27をブランク100に対して下方に配置している。これに対して、第6の実施形態では、封入体27をブランク100の上方に配置している。
(構成)
図20は、第6の実施形態の成形装置の構成を示す。
図20に示すように、第6の実施形態の成形装置の構成は、前記第5の実施形態の成形装置の構成と同様であり、上下のボルスター21,22、上下ブランクホルダ23,24、クッションピン25、支持台26、封入体27及びパンチ28を備えている。
しかし、第6の実施形態の成形装置では、図20に示すように、ブランク100に対して上側に封入体27を配置、すなわち、上側ブランクホルダ24の内側に封入体27を配置し、ブランク100の下側にパンチ28を配置、すなわち、下側ブランクホルダ23の内側にパンチ28を配置している。
動作、作用及び効果は次のようになる。
上側ボルスター22を下方に移動させることで、その移動過程で、先ず、図20(a)から図20(b)への変化として示すように、上側ブランクホルダ24と下側ブランクホルダ23とによりブランク100の外周部が挟み込まれる。その後、図20(b)から図20(c)への変化として示すように、下側ブランクホルダ23が上側ブランクホルダ24によりさらに下方に押し込まれることで、クッションピン25の長さが短くなり(クッションピン25が沈んでいき)、その過程で、パンチ28が下側ブランクホルダ23の上端面位置よりも上方に突出するようになり、パンチ28と封入体27とでブランク100がプレスされ、ブランク100がパンチ成形される。
以上のような成形により、前記第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。すなわち例えば、成形時間を、パンチ及びダイを用いた通常の成形による成形時間と近づけることができ、成形品の量産展開を可能にすることができる。
次に第7の実施形態を説明する。
前記第5及び第6の実施形態では、ダイに代えて封入体27を用いてプレス成形している。これに対して、第7の実施形態では、パンチ28に代えて封入体27を用いてプレス成形している。
(構成)
図21は、第7の実施形態の成形装置の構成を示す。
図21に示すように、第7の実施形態の成形装置の構成は、第5及び第6の実施形態の成形装置の構成と同様であり、上下のボルスター21,22、上下ブランクホルダ23,24、クッションピン25、支持台26及び封入体27を備えている。そして、パンチ28に代えて封入体27を設けていることに対応して、ダイ29を備えている。
さらに、第7の実施形態の成形装置では、前記第5の実施形態と同様に、ブランク100の下側に封入体27を配置、すなわち、下側ブランクホルダ23の内側に封入体27を配置している。
動作、作用及び効果は次のようになる。
上側ボルスター22を下方に移動させることで、その移動過程で、先ず、図21(a)から図21(b)への変化として示すように、上側ブランクホルダ24と下側ブランクホルダ23とによりブランク100の外周部が挟み込まれる。その後、図21(b)から図21(c)への変化として示すように、下側ブランクホルダ23が上側ブランクホルダ24によりさらに下方に押し込まれることで、クッションピン25の長さが短くなり(クッションピン25が沈んでいき)、その過程で、ダイ29と封入体27とでブランク100がプレスされ、ブランク100がダイ成形される。
以上のような成形により、前記第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。すなわち例えば、成形時間を、パンチ及びダイを用いた通常の成形による成形時間と近づけることができ、成形品の量産展開を可能にすることができる。
次に第8の実施形態を説明する。
前記第7の実施形態では、封入体27をブランク100に対して下方に配置している。これに対して、第8の実施形態では、封入体27をブランク100の上方に配置している。
(構成)
図23は、第8の実施形態の成形装置の構成を示す。
図23に示すように、第8の実施形態の成形装置の構成は、前記第7の実施形態の成形装置の構成と同様であり、上下のボルスター21,22、上下ブランクホルダ23,24、クッションピン25、支持台26、封入体27及びダイ29を備えている。
しかし、第8の実施形態の成形装置では、図23に示すように、ブランク100の上側に封入体27を配置、すなわち、上側ブランクホルダ24の内側に封入体27を配置し、ブランク100の下側にダイ29を配置、すなわち、下側ブランクホルダ23の内側にダイ29を配置している。
動作、作用及び効果は次のようになる。
上側ボルスター22を下方に移動させることで、その移動過程で、先ず、図23(a)から図23(b)への変化として示すように、上側ブランクホルダ24と下側ブランクホルダ23とによりブランク100の外周部が挟み込まれる。その後、図23(b)から図23(c)への変化として示すように、下側ブランクホルダ23が上側ブランクホルダ24によりさらに下方に押し込まれることで、クッションピン25の長さが短くなり(クッションピン25が沈んでいき)、その過程で、ダイ29と封入体27とでブランク100がプレスされ、ブランク100がダイ成形される。
以上、本発明の第1〜第8の実施形態を説明した。しかし、次のような構成により本発明を実現することもできる。
すなわち、前記実施形態では、流動性物質を予め装填した封入体を成形装置に着脱するようにしている。しかし、これに限定されるものではない。すなわち、成形装置に流動性物質を装填していない封入容器を先ず設置しておき、その設置後の封入容器に、プレス成形開始前に、流動性物質を装填するようにする。
図25に示すように、パイプ51の先端部51aを該パイプ51の直径よりも大きい円盤状(例えば金属性の金具)として、封入体27(封入容器)に取り付ける。その一方で、パイプ51が挿通される部位、本例では、支持台26にパイプ挿通孔26aを設けるとともに、支持台26の表面、すなわち、封入体27が接している面でのパイプ挿通孔26aの形状を、パイプ51の円盤状の先端部51aが嵌合するような凹溝状にする。
また、前記実施形態では、プレス成形品として、自動車のフード、フェンダー、サイドパネル、ドア、ルーフ、バックドア及びトランクリッドのいずれかのアウタ部品又はインナ部品を挙げている。しかし、これに限定されるものではない。例えば、他のプレス成形品として、トラックや自動二輸車等の自動車、冷蔵庫や洗濯機等の家電製品の部品等、金型により成形可能な物が挙げられる。
次に第9の実施形態を説明する。
第9の実施形態は、本発明を適用したエンボス成形用の成形装置である。このエンボス成形用の成形装置は、例えば、車体のプレス成形品における、燃料給油ロ形成部位、ドアハンドル取り付け部位又はナンバープレート取り付け部位等のエンボスを成形できる。
(構成)
図26は、第9の実施形態の成形装置の構成を示す。本実施形態では、成形装置は、例えばパンチ及びダイを用いて通常成形されたブランク(成形途中の成形品)にエンボスを成形するように構成されている。
パッド64は、有底の略四角枠形状とされており、上側ボルスター62には、このパッド64の外周面を囲むように案内部66が設けられており、この案内部66によりパッド64が上下方向でその移動が案内されている。
図27はパッド64の平面図であり、図28(a)は図27の矢示B−Bにおけるパッド64の断面図であり、図28(b)は図27の矢示C−Cにおけるパッド64の断面図である。
図28に示すように、パッド64において、底面をなす上壁64cの中央部には、支持部材67が挿通される開口部64dを設けている。パッド64の下端面形状は、下側金型63(特に後述の凹部63aの周囲)に対応する(合致する)ような形状になっている。
また、図26に示すように、案内部66内であって、このパッド64の上壁64cと上側ボルスター62との間には、所定の弾性力に設定されたスプリング68が設置されている。
なお、この下側金型63とパッド64とは、成形時のしわを抑えるしわ抑え板としても機能している。
図29は下側金型63の平面図であり、図30(a)は図29の矢示B−Bにおける下側金型63の断面図であり、図30(b)は図29の矢示C−Cにおける下側金型63の断面図である。
図29及び図30に示すように、下側金型63には適宜Rを設定している。具体的には、図29及び図30に示すように、ブランク100が局所変形してしまうのを避けるために、下側金型63の凹部63cにおいてブランク100と接触する角部、すなわち隣り合う内側面同士が交わる角部63bのR(平面視のR)を2mm以上にしている。また、下側金型63において、載置面(上側面)と凹部63cの立設する内側面とが交わる角部63aのR(断面視のR)を2mm以上にしている。具体的には、角部63aのRは2.5mm以上が好ましい。
また、封入容器の肉厚(膜厚)を、例えば図28(b)に示す設置台67aの外周面とパッド64の内側面との間のクリアランスXを基準にして決定するものとし、例えば0.5mm〜5mmにする。
動作は次のようになる。
ブランク100に対し通常のプレス成形をした後に、エンボス成形をしている。すなわち、第一工程で、エンボス加工をしない通常成形を行ない、続く第二工程で、通常成形したブランク100に対して封入体65を用いてエンボスを成形している。
図31(a)は、第一工程として通常成形を行う成形装置の構成例を示す。ここでは、成形装置は、シングルアクション式が採用されて、パンチ31及びダイ32でプレス成形するように構成されている。この成形装置では、パンチ31上にブランク100を載置した後、上側ボルスター22を下方に移動させることで、その移動過程で、上側ブランクホルダ24と下側ブランクホルダ23とによりブランク100の外周部(成形対象部位の周囲)が挟み込まれる。その後、下側ブランクホルダ23が上側ブランクホルダ24によりさらに下方に押し込まれることで、クッションピン25の長さが短くなり(クッションピン25が沈んでいき)、その過程で、パンチ31とダイ32とでブランク100がプレスされ、ブランク100がパンチ成形される。
続いて、エンボス加工を行う。すなわち、図31(b)に示すように、前述のように通常成形により全体をプレス成形したブランク100(成形途中の成形品)を、下側金型63上に載置し、上側ボルスター62を下方に移動させる。その移動過程で、上側パッド64と下側金型63とによりブランク100の内周側における一部であるエンボス成形対象部位の周囲が挟み込まれる。その後、図31(b)から図31(c)への変化として示すように、さらには、詳細構成で示す図32(a)から図32(b)への変化としても示すように、スプリング68の付勢力に抗して上側パッド64が押し上げられることで、該上側パッド64の内側に配置されていた封入体65によりブランク100のブランク成形対象部位が下方に押し込まれる。これにより、封入体65と下側金型63の凹部63cとでブランク100のブランク成形対象部位がプレスされて(エンボス加工されて)、ブランク100の内周側に凹形状のエンボスが成形される。以上のような成形工程により、例えば、通常成形でドアアウタが成形され、エンボス成形でそのドアアウタにドアハンドル取り付け部が成形される。
作用及び効果は次のようになる。
前述のように、全体を成形したブランク100におけるエンボス成形対象部位の周囲を上側パッド64及び下側金型63で拘束するとともに、封入体65を該ブランク100に押圧して、エンボスを成形している。
図33は、面ひずみの発生メカニズムのひとつを例示したものであり、エンボス100a内への材料の流入によりエンボスコーナー部100bに縮みの成分が発生し面ひずみを引き起こす。
このように、各角部63a付近の面品質を確保しつつ、Rを極めて小さい値にまで制御できるので、デザイン上、Rを小さく抑える必要がある製品にも対応でき、良好な品質の製品を提供することができる。すなわち、Rを6mm以下とした場合でも、安定した品質の成形品を提供できる。
すなわち、前記第9の実施形態では、支持部67を介して上側ボルスター22に対して封入体65を固定するとともに、成形過程で該封入体65を収容する上側パッド64が押し上げられようにすることで、封入体65をブランク100に押し込み、エンボスを成形している。しかし、これに限定されるものではない。例えば、封入体65を支持する支持部を油圧等により伸縮する手段で構成することもできる。
図34に示すように、成形装置をシングルアクション式を採用して構成するとともに、上側ボルスター22にダイ32、及び加圧シリンダー等で構成された駆動支持部71に支持された封入体65を備える。
ダイ32の成形面は、パンチ31の成形面に対応した形状になっており、ダイ32において、ブランク100のエンボス成形対象部位に対応する部位に駆動支持部71及び封入体65を配置している。
一方、パンチ31の成形面(ブランク100の載置面)には、前記実施形態で説明した下側金型63と同様に、エンボス加工用の凹部31aが形成されている。凹部31aは、成形面において、ブランク100のエンボス成形対象部位に対応した位置に形成されている。
また、第一工程直後から連続して開始されるエンボス成形過程中は、ブランク100のエンボス成形対象部位の周囲がダイ32とパンチ31(凹部31aの周囲)とで挟み込まれているので、該エンボス成形対象部位の周囲の面ひずみの発生を抑制することもできる。
次に実施例を説明する。
(1)先ず、前記第1〜第8の実施形態に対応する実施例を説明する。すなわち、ブランク全体に対するプレス成形を行った実施例である。
図36は、プレスに供した供試材のA,B,Cの材料特性を示す。
ここで、図36中、YPは降伏強さ(MPa)であり、TSは引っ張り強さ(MPa)であり、ELは全伸び(%)である。
図36に示すように、340MPa級鋼板から590MPa級鋼板(供試材A=340MPa級鋼板、供試材B=440MPa級鋼板、供試材C=590MPa級鋼板)を用いている。そして、これらの鋼板に対して、自動車のドアアウタの金型でプレス成形を行った。そして、パンチ及びダイ(両方金型、例えば前記図19(c)のような金型の用い方)による通常成形と、本発明を適用した、封入体による成形(封入体成形)とで比較した。
ここで、封入体に装填する流動性物質として、洗浄油を用い、封入容器の材質として、洗浄油に対して耐油性のある合成ゴムを用いている。また、本発明を適用した封入体成形の成形速度、その比較例となる通常成形の成形速度は、ともに10枚/1分とした。
図37に示すように、通常成形では、供試材B,Cでしわが発生し、供試材Cでは割れも発生した。これに対して、封入体成形では、供試材A,B,C全てについても、しわも割れも発生しない結果となった。
ここで、通常成形は、従来技術であるパンチとダイの両側が金型による成形となるため、ブランクに金型が接触した後は、摩擦によりブランク(供試材)が動き難くなると考えられ、そのために成形品に割れが発生しやすくなっている。これに対して、封入体成形では、封入体がブランクに追従して変形すると考えられるため、ブランクが均一に伸び、割れにくくなる。また、封入体成形では、流動性物質が空間に充填されるように封入体が変形するために、プレス開始当初から供試材をパンチ又はダイに押し付けることが可能になり、しわを抑制できると考えられる。
図40は、440MPa級鋼板(供試材B)の断面形状(ビード端からの距離とパネル高さとの関係)を測定した結果、すなわち、寸法精度の評価結果を示す。
図41に示すように、通常成形品の形状は、中央部分(ビード端からの距離が500mmの付近)で、板厚減少率が1%未満になっているのに対して、本発明品(封入体成形品)では、中央部分(ビード端からの距離が500mmの付近)で、板厚減少率が1%以上になっている。また、本発明品(封入体成形品)では、通常成形品と比較して、板厚減少率の変化が少なく、板厚分布の均一性が高くなっている。具体的には、板厚減少率の最大値と最小値との差(偏差)では、通常成形品では、9.5%になっているのに対して、本発明品(封入体成形品)では、5%以下、具体的には2.5%になっている。
図42に示すように、本発明品(封入体成形品)では、通常成形品と比較して、板厚分布の均一性が高いために、へこみが少なく、張り剛性が高くなっている。
図43に示すように、本発明品(封入体成形品)では、通常成形品と比較して、デント深さが小さく、耐デント性が高くなっている。これは、本発明品(封入体成形品)では、通常成形品と比較して、板厚減少率が高くなっていることから、加工硬化により、耐デント性が高くなったと考えられる。
同図中に示すように、ハンドル取り付け部位周辺に面ひずみとして示した箇所(丸で囲った箇所)に面ひずみが発生しているので、その面ひずみの発生部位を通るように、測定ラインに沿って連続的に3点曲率を測定した。
ここで、図45は、3点曲率測定器の構成を示す。同図(a)は正面図であり、同図(b)は側面図である。3点曲率測定器のゲージレングスlは50mmである。このような3点曲率測定器により、ゲージレングスl内の曲線の最大値と最小値との差を得て、その差を基に面ひずみを定量評価している。なお、レーザー形状測定でも、ゲージレングスl=50mm相当に設定して、3点曲率を測定することもできる。
図46に示すように、本発明品(封入体成形品)では、通常成形品と比較して、ハンドル長手方向で曲率の変化が小さく、面ひずみが大幅に小さくなっている。具体的には、本発明品(封入体成形品)について、曲率の最大値と最小値との差が、0.0004(1/mm)以下、詳しくは0.0002(1/mm)付近になっている。
図47に示すように、本発明品(封入体成形品)では、通常成形品と比較して、供試材A,B,Cとで、面ひずみ量に変化はなく、すなわち、高強度材ほど(供試材B,C)、面ひずみの抑制効果が大きくなっている。具体的には、通常成形品では、供試材A,B,C全てについて、面ひずみ量が0.0002(1/mm)よりも大きくなっているのに対して、本発明品(封入体成形品)では、供試材A,B,C全てについて、面ひずみ量が0.0002(1/mm)付近になっている。例えば、本発明品では、成形の均一性が高いため、さらには、封入体により静水圧で押し付けるため、面ひずみ量が抑えられ、0.0002(1/mm)付近になると考えられる。このように、面ひずみ量を抑えることができることで、金型修正の工数を不要にできる。
図48は、プレスに供した供試材のA,B,C,Dの材料特性を示す。
図48に示すように、270MPa級鋼板から590MPa級鋼板(供試材A=270MPa級鋼板、供試材B=340MPa級鋼板、供試材C=440MPa級鋼板、供試材D=590MPa級鋼板)を用いている。そして、これらの鋼板に対して、車体のサイドパネルのフューエルインレット部(燃料給油口部)や車体のドアアウタのドアハンドル取り付け部を成形することに関し、パンチ及びダイ(両方金型)による通常成形と、本発明を適用した、封入体によるエンボス成形とで比較した。
図49(a)は、フューエルインレット部201が成形されたサイドパネル200の形状を示し、同図(b)は、同図(a)に示す矢示D−Dにおけるフューエルインレット部201の断面形状を示す。
同図(a)に示すフューエルインレット部201の外周領域Eについて面ひずみの状態を評価し、同図(b)に示すように、割れ危険部となるフューエルインレット部201の外周角部(断面観でRを設けた角部)202について割れの状態を評価した。そして、その評価を、そのR(以下、断面Rという。)を3.0mmといった大きい値とした場合と、該断面Rを1.5mmといった小さい値とした場合とについて行った。
同図(a)に示すように、断面Rを3.0mmとした場合には、本発明品(封入体成形)では、供試材A,B,Cの全てについて割れがない結果となり、面ひずみも全て良好(面ひずみなし又は品質上問題がない程度)となる結果となった。これに対して、通常成形品では、供試材A,Bについては、面ひずみが不可(品質上の問題となる面ひずみが発生)となる結果となり、供試材Cについては、割れが発生する結果となった。なお、割れが発生した場合には、面ひずみを評価することができない(NGの結果となる)。
さらに、定量評価を行った。その評価対象を、本発明品(封入体成形)については、供試材Aを用いて断面Rを3.0mmとしてフューエルインレット部201を成形したもの(前記図50(a)で割れがなく、面ひずみが良好なもの)とし、通常成形品については、供試材Aを用いて断面Rを3.0mmとしてフューエルインレット部201を成形したもの(前記図50(a)で割れはないが、面ひずみが不可とされたもの)とした。
なお、曲率プロファイルの測定については、前記ブランク全体に対するプレス成形の実施例と同様に、ゲージレングスlを50mmとした3点曲率測定器を用いて行った。
図52に示すように、本発明品(封入体成形品)では、特に、フューエルインレット部201の長手方向の端部付近で、曲率の変化が、通常成形品ついての曲率の変化よりも小さくなっている。具体的には、本発明品(封入体成形品)の曲率の最大値と最小値との差Y1が、通常成形品の曲率の最大値と最小値との差Y2よりも小さく、0.0004(1/mm)以下、詳しくは0.00015(1/mm)付近になっている。このように、曲率プロファイルの測定でも、本発明品(封入体成形品)が、通常成形品に比べて、面ひずみが問題とはならない結果を得た。
図53に示すように、本発明品(封入体成形品)では、通常成形品と比較して、全般で板厚分布を均一にせしめており、特に、フューエルインレット部201の外周角部付近(D−D断面で20mm、180mm付近)で、板厚減少率がより小さく抑えられている。具体的には、板厚減少率の最大値と最小値との差(偏差)では、通常成形品では、23%になっているのに対して、本発明品(封入体成形品)では、10%以下、具体的には約9%になっている。このような結果から、本発明品(封入体成形品)では、封入体で成形することにより、通常成形品に比べ板厚分布の均一性が良好となり、かつ板厚減少率の大きい断面R近傍の板厚減少率を抑制したことから、プレスのバラつきにより変動があったとしても連続プレスで割れが発生しなかったと推測される。
図54に示すように、本発明品(封入体成形品)では、通常成形品と比較して、供試材A,B,Cで面ひずみ量に大きな変化はなく、すなわち、高強度材ほど(供試材B,C)、面ひずみの抑制効果が大きくなっている。
図55(a)は、ドアアウタのドアハンドル取り付け部211が成形されたドアアウタ210の形状を示し、同図(b)は、同図(a)に示す矢示F−Fにおけるドアハンドル取り付け部211の断面形状を示す。
同図(a)に示すドアハンドル取り付け部211の外周領域Gについて面ひずみの状態を評価し、同図(b)に示すように、割れ危険部となるドアハンドル取り付け部211の外周角部(断面Rを設けた角部)212について割れの状態を評価した。そして、その評価を、該断面Rを4.0mmといった大きい値とした場合と、該断面Rを2.0mmといった小さい値とした場合とについて行った。
同図(a)に示すように、断面Rを4.0mmとした場合には、本発明品(封入体成形)では、供試材B,C,Dの全てについて割れがない結果となり、面ひずみも全て良好となる結果となった。これに対して、通常成形品では、供試材B,Cについては、面ひずみが不可となる結果となり、供試材Dについては、割れが発生する結果となった。
さらに、定量評価を行った。その評価対象を、本発明品(封入体成形)については、供試材Bを用いて断面Rを4.0mmとしてドアハンドル取り付け部211を成形したもの(前記図56(a)で割れがなく、面ひずみが良好なもの)とし、通常成形品については、供試材Bを用いて断面Rを4.0mmとしてドアハンドル取り付け部211を成形したもの(前記図56(a)で割れはないが、面ひずみが不可とされたもの)とした。
なお、曲率プロファイルの測定については、前記ブランク全体に対するプレス成形の実施例と同様に、ゲージレングスlを50mmとした3点曲率測定器を用いて行った。
図58に示すように、本発明品(封入体成形品)では、特に、ドアハンドル取り付け部211の長手方向の端部付近で、曲率の変化が、通常成形品についての曲率の変化よりも小さくなっている。具体的には、本発明品(封入体成形品)の曲率の最大値と最小値との差Y3が、通常成形品の曲率の最大値と最小値との差Y4よりも小さく、0.0004(1/mm)以下、詳しくは0.00015(1/mm)付近になっている。このように、曲率プロファイルの測定でも、本発明品(封入体成形品)が、通常成形品に比べて、面ひずみが問題とはならない結果を得た。
図59に示すように、本発明品(封入体成形品)では、通常成形品と比較して、全般で板厚分布を均一にせしめており、特に、ドアハンドル取り付け部211の外周角部付近(F−F断面で20mm、120mm付近)で、板厚減少率がより小さく抑えられている。具体的には、板厚減少率の最大値と最小値との差(偏差)では、通常成形品では、18%になっているのに対して、本発明品(封入体成形品)では、10%以下、具体的には約5%になっている。このような結果から、本発明品(封入体成形品)では、板厚減少率がより小さく抑えられていることで、割れが発生しなかったと推測できる。
図60は、供試材B,C,Dについての、降伏強さYSと面ひずみ量(曲率の最大値と最小値との差)との関係を示す。
図60に示すように、本発明品(封入体成形品)では、通常成形品と比較して、供試材B,C,Dで面ひずみ量に変化はなく、すなわち、高強度材ほど(供試材C,D)、面ひずみの抑制効果が大きくなっている。
すなわち、先ず、エンボス部100aを板材(ブランク100)で拘束手段(例えばパッドと金型とによる拘束)により拘束される面100cに垂直な断面でみた場合に、該断面内に存在する半径Rの2つのR肩部(エンボス肩)100d1,100d2間の直線距離である線長をl0とし、該断面内にてエンボス部100aの表面に沿って得られる両R肩部100d1,100d2間の距離をl1として、プレス成形前後のエンボス部100aの線長差比Lを下記(1)式として定義する。
L=(l1−l0)/l0 ・・・(1)
D=Lmax+(t/(2R+t)) ・・・(2)
ここで、形状係数Dは、エンボス部100aのR肩部100d1,100d2近傍の最大ひずみ量を示す値となる。また、右辺第2項(t/(2R+t))は、線長差比Lの最大値LmaxでのR肩部100d1,100d2の曲げによる板厚表層のひずみを示す値となる。
D>7・TS−0.6 ・・・(3)
すなわち、前記(3)式を満たす条件下では、通常成形をしても品質が良好なプレス成形品を得ることはできないが、封入体成形では、品質な良好なプレス成形品を得ることができる。
ここで、図69及び図70は、材料強度TSと形状係数Dとの関係を示す。図69は、前記図62〜図68内に示す封入体成形品について結果であり、図70は、前記図62〜図68内に示す通常成形品について結果である。また、図69及び図70それぞれにおいて、(a)はフューエルインレット部についての結果であり、(b)はドアハンドル取り付け部についての結果である。
Claims (3)
- 板材における成形対象面の周囲を拘束し、粘弾性部材または弾性部材の外周面を張り合わせることで形成された粘弾性部材のみまたは弾性部材のみからなる封入容器に流動性物質を封入した封入体、あるいは粘弾性部材または弾性部材を風船型とした粘弾性部材のみまたは弾性部材のみからなる封入容器に流動性物質を封入した封入体を前記成形対象面に押圧して、前記板材を成形することを特徴とする板材のプレス成形方法。
- 前記封入体と金型とで前記板材を挟み、押圧して、前記板材を前記封入体と金型とでプレス成形することを特徴とする請求項1に記載の板材のプレス成形方法。
- 前記板材のエンボス成形対象面の周囲を拘束し、前記封入体を前記エンボス成形対象面に押圧して、凹形状のエンボスを成形することを特徴とする請求項1又は2に記載の板材のプレス成形方法。
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