JP2008238240A - アルミニウム合金板のプレス成形方法およびプレス成形装置 - Google Patents

アルミニウム合金板のプレス成形方法およびプレス成形装置 Download PDF

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Abstract

【課題】オイルパンなどの自動車部品やメンバー部品など、成形が難しい形状の大型パネルであっても、成形を可能とする、アルミニウム合金板のプレス成形方法およびプレス成形装置を提供することを目的とする。
【解決手段】上部の平面的な成形面(パンチ部位12、13)同士の断面高さが急変する段差部(パンチ部位14)を有する成形品パネルに、アルミニウム合金板30をプレス成形する方法であって、第一のパンチ11の断面高さが低い側のパンチ部位13の一部を、第二のパンチ15に分割して弾性的に支持し、成形開始時には、第一のパンチ11に対する第二のパンチ15の相対的な位置を予めダイス22側に変位させて、第二のパンチ15を板30における断面高さが低い側の成形面部位33と接触させる一方、成形の進行につれて、第二のパンチ15を弾性的に下降させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、オイルパンなどの成形が難しい大型形状の自動車メンバー部材(パネル)を成形可能とする、アルミニウム合金板のプレス成形方法およびプレス成形装置に関する。以下、アルミニウムをAlとも言う。
オイルパンなどの自動車部品や車体の骨格を形成するメンバー部品等には、周知の通り、鋼製(鋼板)パネルに代わり、アルミニウム合金製パネルも使用されている。これらアルミニウム合金製パネルは、鋼板と同様に、アルミニウム合金板 (ブランク、パネル成形用素材板) を金型によりプレス成形した、パネル成形品 (プレス成形品:以下、単にパネルとも言う) が使用されている。
こうした自動車部品、例えばオイルパンは、近年の自動車設計の多様化にもより、特にプレス成形が難しくなっている。この理由は、鋼板に比してアルミニウム合金板の成形性が劣ることと、これらオイルパンの形状自身に起因する。
図4に、オイルパンの代表的な形状例を斜視図で示す。図4のように、オイルパン1aは、パネル上部に平面的な成形面2、3を有し、これら成形面2、3同士の断面高さが急変する段差部(縦壁部)4を有するような成形品パネルである。5、6、7は、平面的な成形面2、3を囲む周囲の縦壁部で、5は側壁、6は後壁、7は前壁である。また、周囲を囲む平面的な成形面8はフランジ乃至余肉部である。
また、図5に、他の自動車メンバー部品1bの代表的な形状例を斜視図で示す。図5のように、自動車メンバー部品1bは、パネル上部に平面的な成形面2、3を有し、図5のオイルパンと同様に、これら成形面2、3同士の断面高さが急変する段差部(縦壁部)4を有する。なお、ここで、自動車メンバー部品1bはHAT型断面形状を有し、6、7は空間であり(あるいは後壁、前壁の場合もある)、両側の8、8はフランジ乃至余肉部である。
このようなパネル上部に平面的な成形面2、3を有し、かつ、これら成形面2、3の断面高さが急変するような段差部4を有する自動車部品、自動車メンバー部品を、アルミニウム合金板からプレス成形する場合、成形品パネルの成形面表面にしわが生じやすい。具体的には、前記図4や図5で示すように、断面高さが低い側の成形面(上面)3に9aとして、また、その側壁5の面(側面)に9bとして、各々しわが生じやすい。
このようなしわの発生は、平面的な成形面2、3同士の断面高さが急変するような段差部(縦壁部)4を有する、オイルパン1a乃至自動車メンバー部品1bを、アルミニウム合金板にて成形する場合に特有の問題である。
断面高さが低い側の成形面3に生じるしわ9aは、素材板相当部分が下死点近傍までパンチと接触せずに自由に変形するために生じる。また、側壁面(側面)5に生じるしわ9bは、段差部4の前後で側壁高さが異なるために、成形に伴う材料流入量にも差が生じ、この材料流入量の差を解消するために生じるしわである。このような成形面(上面)3や側壁面(側面)5の両方に、しわ9a、9bが発生する問題は、非接触部位を有する前記成形品パネル特有の問題である。即ち、このような段差部4の無いパネル成形品では、このような上面や側面の両方にしわが発生するような問題は生じにくい。
このようなオイルパン1aをプレス装置によりプレス成形する場合の、通常の方法を、プレス中の板およびプレス装置の状態を示す図8で説明する。図8はプレス途中におけるアルミニウム合金板の変形状態を表す断面図である。通常では、ダイス22とブランクホルダー(しわ押さえ部材)20とによって、アルミニウム合金板30の周縁部31(フランジ乃至余肉相当部分8)を挟持した上で、ボルスタ(基台)21上に固定されたパンチ11に向けて、ダイス22を相対的に移動(下降)させ、アルミニウム合金板30を成形する。
この際、成形中のアルミニウム合金板30において、オイルパン1aのパネル上部の平面的な成形面2相当部分は32、成形面3相当部分は33、これら成形面2、3同士の断面高さが急変する段差部(縦壁部)4相当部分は34である。また、後壁6相当部分は36、前壁7相当部分は37、側壁5相当部分は38(パンチ相当部分17c)、フランジ乃至余肉部8相当部分は周縁部31である。
図8に示すように、成形途上のアルミニウム合金板の、断面高さが低い側のパネル成形面3に相当する部分33では、ダイス22あるいはパンチ11に接触しない部分の長さ(距離)は比較的長くなる。即ち、この板部分33の、ダイス22あるいはパンチ11に接触しない部分の長さは、ダイス22側の成形面25、26の肩R部に当接するBポイントから、パンチ11側の成形面13の肩R部に当接するCポイントまでと、比較的長くなる。これは、成形パネルにおける段差4(相当部分34)の存在、即ち、段差4の断面高さが高く、かつ急変するために、これに相当するダイス22の成形面25あるいはパンチ11の成形面14の高さが高く、かつこれらの高さが急変することによる。
このような場合、このBポイントからCポイントまでの板部分33(成形面3相当部分)は、下死点近傍までパンチ11乃至ダイス22と接触せずに自由に変形する。このため、BポイントからCポイントまでの板部分33(成形面3相当部分)は、成形中に作用する避けられない不均一な張力により、容易にしわを生じてしまう。この結果、前記図4や図5で示すように、板部分33が成形された、断面高さが低い側の成形面3の面に9aとしてしわが生じやすくなる。また、図8に見られるように、段差部4の前後で、成形面2、3の成形高さが異なる(成形高さの差が生じる)ために、成型時にはフランジ部からパンチ部へ向かう材料流入にも差が生じる。したがって、この材料流入量の差を解消するために、その側壁5の面にも9bとして、しわが生じやすくなる。
これに対する対策としては、図11にプレス装置の断面を部分的に示すように、ブランクホルダー20上に、ドロービード61、62を設けて、板30に対し張力を作用させる方法が一般的である。即ち、板30の周辺部に、このドロービード61、62を設けることで、プレス成形の早い段階から、板30に張力を加えることにより前記しわ発生を防止する方法が汎用されている。
また、この他、大きな折り曲げ部分を端部に有するようなアルミニウム合金フードアウタパネルをプレス成形する場合に、しわ押さえ開始前もしくはしわ押さえ開始時に、しわの原因となる凹部の発生が予想される、板の成形面中心部を予め成形することも提案されている(例えば、特許文献1参照) 。この方法では、板成形開始前またはしわ押え開始時に、パンチのパネル(製品)成形面の高さを、しわ押さえ部材の上面よりも所定寸法だけ高くして、板の成形面中心部を予め成形する。
更に、大きな折り曲げ部分を有し、この折り曲げ部分とパネル本体部分とを結ぶ輪郭線がパネル本体前方に向かって湾曲した形状を持つ自動車フードアウタパネルに、アルミニウム合金板をプレス成形する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照) 。即ち、この方法は、板端部の前記折り曲げ部分に相当する部分の内、プレス成形時のしわ押さえ面に相当する部分が、プレス成形時のしわ押さえ部材面形状に適応する形状になるように、前記アルミニウム合金板端部を予め曲げ加工して曲げ部を形成した後、この曲げ部のしわ押さえ面に相当する部分を含めてしわ押さえしながら、プレス成形する方法である。そして、前記アルミニウム合金板端部を予め曲げ加工を、パネル本体の成形のためのパンチ部分とは独立して動く、分割されたパンチによって行うことも提案されている。
特開2001-58218号公報 (全文) 特開2004-188445 号公報 (全文)
前記図11のような、素材板の周辺に形成されたドロービードを成形して張力を加える、汎用的なしわ発生防止方法では、本発明が対象とするオイルパンのような、成形深さが深く、上部の平面的な成形面同士の断面高さが急変する段差部を有する成形品では、板素材が成形中に破断する問題が生じやすい。このために、パネルのしわ抑止効果を十分に発揮できない。
即ち、素材板の周辺にドロービードを成形することで、素材板に張力を加え、成形面3に生じるしわ9a、側壁5に生じるしわ9bを低減させることができる。しかし、十分に、これらのしわを消せるだけの張力を加えると、本発明が対象とするオイルパンなどのような、成形深さが深く、断面高さが変化するような成形品に対しては、前記図8の成形品の角部、A、B、C、D、F、Gなどに、板厚減少や板の破断を招き、十分なしわ抑制効果が発揮されない。特に、しわ発生につながる前記BポイントからCポイントまでのアルミニウム合金板の33(成形面3相当部分)や側壁段差部分における、しわの防止と、破断の防止の両立は難しい。
以下、前記BポイントからCポイントまでのアルミニウム合金板の33(成形面3相当部分)を非接触部位(前記パネルの下死点近傍まで第一のパンチ11と接触しない部位)33とも言う。
このように、本発明が対象とするオイルパンなどの自動車部品やメンバー部品では、しわを防止するために必要なドロービードを設けると、この板厚減少の傾向が無視できないほどに大きくなる。この結果、素材板のパンチ肩部A、C、Fや、ダイスの肩部B、D、G等での割れが生じやすくなる。したがって、素材板の周辺に形成されたドロービードを成形する汎用的なしわ発生防止方法では、しわ発生防止と割れ発生防止とを両立させることができない。
また、特許文献1 の方法は、本発明が対象とするような、オイルパンなどの自動車部品やメンバー部品に対して、やはり、しわ発生につながる前記BポイントからCポイントまでのアルミニウム合金板の非接触部位(前記パネルの下死点近傍まで第一のパンチ11と接触しない部位)33(成形面3相当部分)の自由な変形を拘束できない。このため、しわ発生防止効果が薄い。
更に、特許文献2の方法は、パネル稜線部を、分割パンチにより、板の前後方向(車体長手方向)への曲げ加工により形成する点がユニークである。しかし、この板の前後方向の曲げ加工条件や分割パンチの設計条件の設定が難しく、この点で実用的ではない問題がある。
一方、これらの成形上の問題が依然ある中で、ベークハード性やリサイクル性に優れ、耐力が高いAl−Mg−Si系(6000系)などのアルミニウム合金板の自動車車体アウタパネルへの適用のニーズは、地球環境保護のための自動車の軽量化やエネルギー吸収性による車体安全性強化の必要性のために、益々高まっている。
本発明はこのような事情に着目して、オイルパンなどの自動車部品や、自動車メンバー部品であって、成形が難しい形状の大型パネルを成形可能とする、アルミニウム合金板のプレス成形方法およびプレス成形装置を提供しようとするものである。
上記目的を達成するための、本発明アルミニウム合金板のプレス成形方法の要旨は、上部の平面的な成形面同士の断面高さが急変する段差部を有する成形品パネルに、アルミニウム合金板をプレス成形する方法であって、パネルを成形する第一のパンチの前記平面的な成形面のうちの断面高さが低い側の成形面に相当するパンチ部位の一部を、第二のパンチに分割して、この第二のパンチを第一のパンチに対して別個に変位できるように弾性的に支持し、ダイス外周に設けられたしわ押さえ面と、それに相対して設けられたブランクホルダーにより、アルミニウム合金板の外周部を挟持した上で、第一のパンチとダイスとを相対的に移動させて、アルミニウム合金板をプレス成形するに際し、プレス成形開始時には、第一のパンチに対する第二のパンチの相対的な位置を、プレス下死点での第一のパンチに対する第二のパンチの相対的な位置に比べて、予めダイス側に変位させて、第二のパンチをアルミニウム合金板における前記断面高さが低い側の成形面部位と接触させる一方、第一のパンチによる成形が進むにつれて、第一のパンチとダイスとの相対的な接近によるダイスの圧縮力を作用させて、第二のパンチを弾性的に下降させることである。本発明が対象とする成形品パネルは、自動車のメンバー部品であることが好ましい。また、この自動車のメンバー部品はオイルパンであることが好ましい。
また、上記目的を達成するための、本発明アルミニウム合金板のプレス成形装置の要旨は、上記要旨あるいは後述する好ましい態様のいずれかのアルミニウム合金板のプレス成形方法に用いるプレス成形装置であって、ダイス外周に設けられたしわ押さえ面と、それに相対して設けられたブランクホルダーにより板の外周部を挟持した上で、パンチとダイスとを相対的に移動させて板をプレス成形するものであり、第一のパンチの前記平面的な成形面のうちの断面高さが低い側の成形面に相当するパンチ部位の一部を、第二のパンチに分割して、この第二のパンチを第一のパンチに対して別個に変位できるように弾性的に支持したことである。
本発明では、上記要旨のように、前記パネルの中央部を成形する第一のパンチに対して、これと別個に変位できる第二のパンチを少なくとも一つ以上用いて、前記図8における、アルミニウム合金板における前記断面高さが低い側の成形面部位、即ち、非接触部位(前記パネルの下死点近傍まで第一のパンチ11と接触しない部位)と接触させる。
これによって、この非接触部位に張力を発生させ、しわ発生につながる前記BポイントからCポイントまでの板部位33(成形面3相当部分)の自由な変形を拘束するとともに張力を加え、この板非接触部位33におけるしわ9a発生を防止することを特徴とする。また、第二のパンチの作用により、側壁にも上下方向の張力が新たに加わり、それによって、側壁部のしわ9bを防止することも可能となる。
即ち、本発明では、先ず、プレス成形装置において、前記パネルを成形する第一のパンチの前記平面的な成形面のうちの、断面高さが低い側の成形面に相当するパンチ部位の一部を、第二のパンチに分割し、この第二のパンチは第一のパンチに対して別個に変位できるように弾性的に支持されるように構成する。
以上のプレス成形装置構成を前提として、本発明では、第一のパンチが、ダイスとの協働でアルミニウム合金板を成形する際に、プレス成形開始時に、第一のパンチに対する第二のパンチの相対的位置を、プレス下死点での相対的位置に比べて予めダイス側に変位させる。言い換えると、プレス成形開始時には、第一のパンチに対する第二のパンチの相対的な位置が、プレス下死点での第一のパンチに対する第二のパンチの相対的な位置に比べて、ダイス側に変位しているように、これらパンチ同士を連動させる。
これによって、プレス成形開始時には、前記図8における、アルミニウム合金板における前記断面高さが低い側の成形面部位、即ち板非接触部位33と弾性的に接触させる一方、第一のパンチによる成形が進むにつれて、第二のパンチを弾性的に下降させる。
したがって、第一のパンチがダイスとの協働でアルミニウム合金板を成形する際に、第二のパンチが、プレス成形開始時には(成形の早い段階には)、前記図8における、アルミニウム合金板における前記断面高さが低い側の成形面部位(板非接触部位)33と接触あるいは更に進んでこの部位を成形する。これによって、アルミニウム合金板における前記断面高さが低い側の成形面部位33および側壁部38に与える張力を作用(付与、制御)させるとともに、しわを防止することが可能となる。
この結果、本発明が対象とするオイルパンなどをアルミニウム合金板からプレス成形する場合でも、前記自由変形部位あるいは側壁部38に張力を作用させ、しわを防止することができる。即ち、前記図4、5などのように、パネル上部に平面的な成形面2、3を有し、かつ、これら成形面2、3の断面高さが急変するような段差部4を有する自動車部品や自動車メンバー部品をアルミニウム合金板からプレス成形する場合でも、しわを防止することができる。
このため、成形の比較的初期から発生するしわに対しても、抑制効果を発揮でき、前記した図4、5などで示した、成形面3の面のしわ9a、また、側壁5の面のしわ9bの発生を各々防止できる。
そして、本発明では、以上説明したしわ抑制の作用効果(第二のパンチによる素材板の拘束と張力付与の機能)の他に、第二のパンチによる、製品(成形パネル)の破断を防止できる効果も有している。即ち、第二のパンチは、第一のパンチによる成形工程の早い段階から、素材板の板非接触部位33と弾性的に接触するので、パンチから素材板に加わる成形力の一部を、第二のパンチより伝えることができる。
従来の成形方法では、成形の前半ではパンチから素材板に加わる成形力は、第一のパンチの成形面12のみから伝えられる。このため、図8のA、Fなどの部位に高い応力集中が生じ、場合によっては、これらの部位に破断が生じる。一方、本発明では、図1に見られるように、第二のパンチと素材板とは、パンチ上面の成形面16でも接触するために、金型から素材板に成形力を伝える範囲が広くなり、これらのA、Fなどの部位でも応力集中を低減できる。
言い換えると、本発明では、成形初期において素材板と接する、パンチの面積を大きくでき、パンチから素材板への荷重伝達(成形力伝達)がより広い範囲でなされ、成形途中の割れを防止できる。
この結果、成形工程中のしわ発生を防止するとともに、成形初期においては、パンチ肩部などでの破断を防止できる。また、張力レベルを一定値以下に制御できることで、下死点近くにおいて、材料が極端に板厚減少し、破断することを防止できる。
以上のように、本発明では、前記難成形におけるしわ発生防止と割れ発生防止とを両立させることができ、オイルパンや自動車メンバー部品のアルミニウム合金製パネルであって、成形が難しい形状の大型パネルであっても、成形が可能となる。
以下に本発明の実施の形態について図を用いて詳細に説明する。
(プレス装置の基本構成)
先ず、本発明プレス装置を図1〜3を用いて説明する。図1、2は、上型であるダイス22と、下型である第一の本体パンチ11、第二のパンチ15、18、およびブランクホルダー(しわ押さえ部材)20とを組み合わせた態様を示している。
図1、2において、第二のパンチ15、18を除く、これらプレス装置の基本動作は従来と同じである。即ち、ダイス22とブランクホルダー(しわ押さえ部材)20とによって、アルミニウム合金板30の周縁部31(フランジ乃至余肉相当部分8)を挟持した上で、ボルスタ(基台)21上に固定されたパンチ11に向けて、ダイス22を相対的に移動(下降)させ、アルミニウム合金板30をオイルパンなど自動車部品やメンバー部品のアルミニウム合金製パネルに成形する。
なお、プレス装置は、前提として、下側のパンチ11は、ボルスタ21に固定されて動かず、成形は、上側のダイス22の方が下降して行なうものである。この点、下側のパンチ11側を上昇させるようにしても良く、要は、パンチ11とダイス22とが相対的に移動するものであれば良い。
ここで、第一のパンチ11は、本体パンチとして、アルミニウム合金板30の各相当部分、オイルパンのパネル上部の平面的な成形面2の相当部分32、成形面3の相当部分33、これら成形面2、3同士の断面高さが急変する段差部(縦壁部)4の相当部分34、後壁6の相当部分36、前壁7の相当部分37、側壁5の相当部分38を各々成形する。
このため、第一のパンチ11は、上記アルミニウム合金板30の各相当部分に接触する成形面を有する。具体的には、平面状の成形面12(板32部分に接触)、平面状の成形面13(板33部分に接触)、段差状(縦壁状)の成形面14(板34部分に接触)、縦壁状の成形面17a(板36部分に接触)、縦壁状の成形面17b(板37部分に接触)、縦壁状の側壁成形面17c(板38部分に接触)などを有する。
(分割パンチ構成)
図1において、第一のパンチ11から分割された第二のパンチ15は、パネルを成形する第一の本体パンチ11の、成形パネルにおける前記平面的な成形面2、3のうちの、断面高さが低い側の成形面3に相当するパンチ部位13の一部を分割して形成されている。この第二のパンチ15は、第一のパンチ11に対して別個に(独立して)変位できるように、バネ40などの弾性体(弾性支持機構)によって弾性的に支持されるように構成する。
図2は、第二のパンチを15と18の2個を順に並べて設けた以外は、図1のプレス装置と同じ構成である。これら第二のパンチ15、18は、各々バネ40などの弾性体(弾性支持機構)によって弾性的に支持される。
前記図4、5で示した、パネル上部に平面的な成形面2、3を有し、かつ、これら成形面2、3の断面高さが急変するような段差部4を有する自動車部品やメンバー部品では、成形途上のアルミニウム合金板の、ダイス22あるいはパンチ11に接触しない部分の長さが比較的長くなる。
即ち、図8に示す通常の(従来の)単一のパンチを用いた成形方法では、成形途上のアルミニウム合金板の、断面高さが低い側のパネル成形面3に相当する板非接触部位33では、ダイス22あるいはパンチ11に接触しない部分の長さが比較的長くなる。図8において、この板非接触部位33の、ダイス22あるいはパンチ11に接触しない部分の長さは、ダイス22側の成形面25、26の肩R部に当接するBポイントから、パンチ11側の成形面13の肩R部に当接するCポイントまでである。
従来において、このBポイントからCポイントまでの板非接触部位33(成形面3相当部分)が、下死点近傍までパンチ11乃至ダイス22と接触せずに自由に変形する場合には、この板非接触部位33は、前記した通り、不均一に引張られることによる肉余りが生じやすくなる。この結果、前記図4や図5で示すように、板非接触部位33が成形された、断面高さが低い側の成形面3の面(上面)にしわ9aが生じる。また、その側壁5の面(側面)にも、平面的な成形面2、3の高さが大きく異なることから、材料流入の大きさも急変し、この流入差を解消するためのしわ9bが生じる。
(分割パンチの機能)
これに対して、図1、2における、第二のパンチ15および/または18は、第一のパンチに対する相対的位置として、プレス下死点での相対的位置に比べて、成形開始時には、ダイス22側に予め変位させるように、弾性的に支持させている。
このような第二のパンチの構成によって、図1、2における、第二のパンチ15および/または18は、プレス成形前半、特にプレス成形開始時に、上記BポイントからCポイントまでの板非接触部位33(成形面3相当部分)と弾性的に接触をもつ。具体的には、この板非接触部位33は、パンチ11本体側の肩R部A、ダイス22側の成形面25、26の肩R部に当接するBポイント、第二のパンチ15の肩R部のEポイント(E1、E2のポイント)、第一のパンチ11側の成形面13の肩R部に当接するCポイント、ダイアール部のDポイントDで、金型との接触をもつ。
この結果、前記上記BポイントからCポイントまでの板非接触部位33(成形面3相当部分)が、下死点近傍まで金型と接触しない長さは、大幅に短くなる。また、上記BポイントからCポイントまでの板非接触部位33を含めて、プレス成形前半の成形中の板に対して、右上がりに傾いた斜めの矢印で示す方向に、適当な張力が付与される。
このため、上記板非接触部位33(成形面3相当部分)の自由変形は抑制され、成形中に、この板非接触部位33が、不均一に引張られたり、かつ、材料流入による肉余りが生じたりすることが抑制される。この効果は、断面高さが低い側の成形面3の面側(上面側)にも、その側壁5の面側(側面側)にも両方発揮される。この結果、前記図4や図5で示したような、断面高さが低い側の成形面3の面(上面)に9aとして、その側壁5の面(側面)にも9bとして、各々発生するしわが抑制される。
(分割パンチの態様)
以上の機能(効果)を発揮するために、第二のパンチ15は、図1、2のように、パネルを成形する第一の本体パンチ11の断面高さが低い側の成形面3に相当するパンチ部位13の面内(上記板非接触部位33に対応する面内)の一部を分割する形で、第一のパンチ11から分割する必要がある。
分割パンチの他の態様を示す、図3のように、パンチ部位13の面内であれば、第二のパンチ15を、必ずしも段差形成面14の近傍に設ける必要はなく、段差形成面14から、ある程度離れたパンチ部位13の部位を分割しても良い。
これに対して、例えば、図9のように、第一の本体パンチ11の断面高さが高い側の成形面2に相当するパンチ部位12の一部を分割して、バネ51により支持した分割パンチ50とした場合には、特に上記板非接触部位33から位置的に外れている。このため、上記板非接触部位33部分に、第二のパンチ50が接触せず、この部分の自由変形を防止できない。この結果、後述する実施例の通り、上記分割パンチの機能(効果)が発揮されず、断面高さが低い側の成形面3の面側(上面側)にも、その側壁5の面側(側面側)にも両方、しわ9a、9bが各々発生しやすくなる。
また、分割パンチ15の代わりに、図10のように、ダイス22側の成形面を分割して、分割ダイス52とした場合、後述する実施例の通り、上記分割パンチの効果は、断面高さが低い側の成形面3の面側(上面側)には発揮されるものの、その側壁5の面側(側面側)には発揮されず、これら両方に効果を発揮することができない。この結果、この成形面3の面側(上面側)のしわ9aの発生は抑制されるものの、断面高さが低い側の成形面3の側壁5の面(側面)のしわ9bの発生は抑制されない。
なお、この図10では、ダイス22側の成形面24(断面高さが低い側のパネル成形面3に相当する成形面)を分割して、分割ダイス52とし、バネ53により弾性的に支持している。
設ける第二のパンチ15の数や間隔、成形面の大きさなどは、断面高さが低い側のパネル成形面3や、これに相当するパンチ成形面13の大きさや形状に応じて、上記した機能(効果)が発揮できるように適宜設計する。例えば、図2のパンチ成形面13が図1よりも大きい乃至長さが長い場合に、図1と同等の張力を成形中の板(特に上記BポイントからCポイントまでの板非接触部位33)に付与したい場合に、図2のように、設ける第二のパンチ15の数を増す。また、図2のパンチ成形面13は図1と同じ大きさ乃至長さだが、パネル形状精度の要求が、図1の場合よりも厳しいなどの場合に、より細かく張力をかけて制御するために、図2のように、設ける第二のパンチ15の数を増す。
(分割パンチの支持機構)
これら第二のパンチ15、18の支持は、各々バネ40などの弾性体(弾性支持機構)によって、弾性的に行う。このバネ40による弾性的支持によって、第二のパンチ15、18を、第一のパンチ11に対して別個に変位できるようにすることができる。即ち、成形前半、特に成形開始時の、第一のパンチ11に対する第二のパンチ15、18の相対的な位置を、プレス下死点での第一のパンチ11に対する第二のパンチ15、18の相対的な位置に比べて、ダイス側に予め変位させることができる。この結果、第二のパンチ15、18をアルミニウム合金板における断面高さが低い側の成形面部位33と、弾性的に接触させることができる。
一方、バネ40による弾性的支持によって、第一のパンチ11による成形が進むにつれ、第一のパンチ11とダイス22との相対的な接近に応じて、第二のパンチ15、18に、ダイス22によって上方から圧縮力を作用させ、第二のパンチ15、18を弾性的に下降させる(下方に沈み込ませる)ことができる。このため、プレス下死点では、第二のパンチ15、18のダイスに対する相対位置が、プレス成形中に比べて、第一のパンチ11側の方に移動する。これによって、所定の成形面の高さの差を有する製品形状が得られる。
バネ40による第二のパンチ15、18の弾性的支持によって、成形が進行するにつれて、第二のパンチのダイスに向かう移動を停止させ、ダイスとの間に板を挟持した状態を維持しながら成形することができる。
また、このような弾性的支持の態様は、第二のパンチとバネやダイクッションなどの弾性支持機構(手段)とを組み合わせることで可能であり、比較的単純な金型構成で達成可能であり、設備上好ましい。これに対して、第一のパンチに対して、第二のパンチの変位を独立的に制御するような機構を設けた場合、プレス装置は設備的に複雑になる。
(プレス装置の具体的な態様)
図1、2において、パンチ11は、ボルスタ上に剛体的に取り付けられる。一方第二のパンチ15、18は、前記したバネ40や、あるいはガススプリングなどの弾性体を介して、ボルスタ21に結合されており、第二のパンチ15、18に上方から圧縮力が作用すれば下方に沈み込む構造となっている。別の態様として、第二のパンチ15を、前記した通り、複数個設け、各々別個の油圧などの駆動装置を介して、上型に対して、各々別個に進退可能(昇降可能)なように構成しても良い。
上型のダイス22は、昇降装置に連結されたスライド( 図示しない) に取り付けられている。ダイス22は、成形品中央の成形面2、3や段差4に各々相当する、24、26(成形面2、3に相当)、25(段差4に相当)などの成形面を各々有している。
また、ダイス22の最外周部には、下型のブランクホルダー(しわ押さえ部材)20のしわ押さえ面(上面)20a、20aと各々対向する位置に、外枠状のしわ押さえ面(成形品周縁部のフランジ8に相当)27、27が形成されている。ブランクホルダー20は、クッションピン23により保持されており、プレス装置の下部の油圧機構で発生する上向きの力が、クッションピン23を介して、ブランクホルダー20に伝えられ、しわ押さえ力としてブランクを保持するのに使われる。
(成形の具体的な態様)
図1、2を用いて、本発明アルミニウム合金板のプレス成形の具体的な態様を説明する。
図1、2のプレス装置にアルミニウム合金板30をセットした成形開始前の状態では、板30の最周縁部31が、ダイス22の周辺部に位置するしわ押さえ面27、27と、ブランクホルダー20、20のしわ押さえ面20a、20aとによって、適当なしわ押さえ力で挟持される。このしわ押さえ力は、通常のアルミニウム合金板のプレス成形で用いられる範囲で良い。ここで、ブランクホルダー20は、アルミニウム合金板30がセットされる前は、各々クッションピン23により、上限位置に保持されている。
(成形前半:第二のパンチの作用)
図1、2のように、例えば、ダイス22が成形の下死点位置より上方65mmの位置まで下降した状態では、このダイス22の下降にあわせて、ブランクホルダー20、20は、その一部であるしわ押さえ面20a、20aと、ダイス22の周辺に位置するしわ押さえ面27、27との協働により、アルミニウム合金板30を挟持した状態のまま、沈み込む動きをする。
この状態で、第一のパンチ11の成形開始に引き続き、第二のパンチ15が前記板非接触部位33との接触、あるいは成形を開始する。このために、第二のパンチ15、18を、できるだけ早いタイミングで、板非接触部位33への接触あるいは成形を開始すべく、予めダイス22側に向けて変位させた状態としている。即ち、第一のパンチ11に対する第二のパンチ15の相対的な位置を、プレス下死点での第一のパンチ11に対する第二のパンチ15の相対的な位置に比べて、ダイス22側に予め変位させている。
ここで、前記非接触部位を解消して、素材板に与える張力を制御できるとともに、素材板のしわ変形を防止する効果を発揮さえできれば、第二のパンチ15、18を、板非接触部位33へ、単に接触させるか、あるいは積極的にこの部位を成形するかは、適宜選択される。但し、通常のプレス成形条件では、前記非接触部位(前記パネルの下死点近傍まで第一のパンチと接触しない部位)と単に接触するだけではなく、更に進んでこの部位を成形する方が好ましい。この部位を成形する方が、前記非接触部位を解消して、素材板に与える張力を制御するとともに、素材板端部のしわ変形を防止できる効果を発揮しやすいからである。
(第一パンチによる板の成形)
ダイス22は第一のパンチ11に向かって引き続き下降し、第一のパンチ11による板30の成形が進行する。即ち、第一のパンチ11の製品形成面12、13、14などが、ダイスの製品形成面24、25、26などとの協働で、板を前記パネル部位2、3、4に成形する。
この際、前記した通り、既に板非接触部位33と接触乃至板非接触部位33の成形を開始している第二のパンチ15、18によって、第一のパンチ11により成形される板30は、パンチ11本体側の肩R部A、ダイス22側の成形面25、26の肩R部に当接するBポイント、第二のパンチ15、18側の成形面16、19の肩R部に当接するE1、E2ポイント、パンチ11側の成形面13の肩R部に当接するCポイント、ダイアール部のDポイントで、金型との接触をもち、拘束される。
これによって、第一のパンチ11が、ダイス22との協働で、アルミニウム合金板30を成形する際に、板非接触部位33に対し、金型から張力を与えて拘束しながら成形することが可能となる。このため、本発明が対象とするオイルパンなど、前記した図4、5などのように、パネル上部に平面的な成形面2、3を有し、かつ、これら成形面2、3の断面高さが急変するような段差部4を有する自動車部品やメンバー部品をアルミニウム合金板からプレス成形する場合でも、前記自由変形部位を解消して、この板(成形中のパネル)の領域全般に亙って、張力を作用させることができる。
この結果、成形の比較的初期から発生するしわに対しても、抑制効果を発揮でき、前記した図4、5などで示した、成形面3の面のしわ9a、また、側壁5の面のしわ9bの発生を各々防止できる。また、パンチから素材板に加わる成形荷重は、第一のパンチ11の成形面12に加えて、第二のパンチ15、18側の成形面16、19からも伝わり、金型の肩部A、Fなどでの板部位の応力集中が緩和され、破断を防止できる。
(成形後半:成形下死点近傍)
上記した状態以降で、引き続き、ダイス22が第一パンチ11に向かって、成形下死点から32mm上方の位置まで移動(下降)した場合を説明する。この状態では、第二のパンチ15、18によるしわ抑制作用、即ち、第二パンチ15、18による板非接触部位33への接触あるいは成形の機能は、接触あるいは成形の進行とともに増大する。そして、ダイス22の成形面26と、第二のパンチ15、18の成形面16、19とが、板非接触部位33を隙間なく挟持する位置で最大となる。
しかし、この機能は、これ以降の成形工程で、さらに増大させる必要は無く、それ以降はほぼ同程度で良い。即ち、上記第一のパンチ11が、ダイス22に向かって32mmまで相対的に移動(上昇)した状態より以降は、同程度の張力を与えるだけでよい。前記した通り、成形面3の上面のしわ9a、また、側壁5の側面のしわ9bが発生するか否かは、第一のパンチ11による上記成形工程の前半で決まる。
(第二のパンチの下降)
一方、本発明では、この成形工程の後半では、成形品製品の最終形状を得るために、成形が進行してダイス22が下死点に近づくにつれて、第二のパンチ15、18を弾性的に下降させる。この弾性的な下降自体は、第一のパンチ11とダイス22との相対的な接近に応じて、ダイス22によって、第二のパンチ15、18に上方から圧縮力を作用させれば可能である。即ち、第二のパンチ15、18を支持するバネ40が、ダイス22の上方からの圧縮力によって縮み、第二のパンチ15、18を弾性的に下降させる(下方に沈み込ませる)ことができる。
第二のパンチ15、18の弾性的な下降によって、プレス下死点では、第二のパンチ15、18のダイスに対する相対位置が、プレス成形中に比べて、第一のパンチ11側の方に移動する。最終的には、第二のパンチ15、18は、下方へ降下しきった位置で停止し、製品形状と同じ段差を形成しつつ、パネルへの成形を終了させる。これによって、第二のパンチの作用により、プレス成形中の成形金型の形状が、最終製品形状と違っているにもかかわらず、最終製品形状パネルを精度よくプレス成形できる。
以上のように成形されたパネル成形品は、部分的な成形や、トリミング加工されるなどして、オイルパンなどの自動車部品やメンバー部品パネルに仕上げられる。
本発明では、以上説明したように、パネル成形時のしわ発生防止と割れ発生防止とを両立させることができる。この結果、本発明によれば、オイルパンなどの自動車部品やメンバー部品など、成形が難しい形状の大型パネルであっても、成形が可能となる。
(アルミニウム合金)
本発明で用いるアルミニウム合金は、剛性、強度、成形性、耐食性など、パネル用途の要求特性に応じた、AA乃至JIS規格に規定される乃至含まれる、3000系、5000系、6000系、7000系などから選択されるアルミニウム合金材料が適宜選択される。
以下に、本発明の実施例を説明する。AA5182−O材のアルミニウム合金板を、図4に示した形状のオイルパン1aに絞り成形した。そして、成形品のしわ発生状況を調査した。
このアルミニウム合金板の0.2%耐力は130MPa、引張強さは250MPa、伸びは30%、板厚は1.0mmとした。また、成形した、オイルパン1aの各部の形状、寸法は図6(a)、(b)に示す通りとした。図6で表示している数値の単位はmmである。
発明例で使用したプレス装置はパンチを分割したプレス装置10(単動型メカニカルプレス機)を用い、発明例1は図1、発明例2は図3のプレス装置を各々用いた。また、比較例1は図8の従来の一体パンチによるプレス装置を用いた。比較例2は図10のプレス装置を用いた。比較例3は図9のプレス装置を用いた。材料と金型間の潤滑には、市販の洗浄防錆油(粘度3.9cSt)を用い、成形速度は5spmとし、しわ押さえ力は200kNとした。
発明例の成形方法は、前記した段落0067〜0079の具体的な態様とした。ここで、第一のパンチ11に対する第二のパンチ15の相対的な位置を、プレス下死点での第一のパンチ11に対する第二のパンチ15の相対的な位置に比べて、ダイス22側に予め70mmだけ変位させた。これによって、第一のパンチ11による素材板の成形に引き続き、第二のパンチ15を、板非接触部位33への接触あるいは成形を開始すべく、予め浮かせた状態とした。
成形品のしわ発生の評価は、成形面3の上面のしわ9a、また、側壁5の側面のしわ9bの両方に対して、発生状況を各々目視にて評点し、各成形試験5回の平均評点数が高いものを良品とした。上面のしわ9aの評点は、重なりしわが複数発生の場合を1点、重なりしわが1本発生のみの場合を3点、重なりしわが発生していない場合を5点とした。側面のしわ9bの評点は、重なりしわが1本でも発生の場合を1点、深さ5mm以上のしわが発生の場合を2点、深さ5mm以下、3mmmを超えるしわが発生の場合を3点、深さ3mm以下のしわが発生の場合を4点、いずれのしわも無い場合を5点とした。
図7に示す通り、発明例1、2では、上面のしわ9aの評点が5であり、しわが発生しておらず、側面のしわ9bも評点が3であり、しわが深さ5mm以下に抑制されている。
これに対して、比較例3は上面のしわ9aの評点が3であり、重なりしわが発生している。比較例1は上面のしわ9a、側面のしわ9bともに、評点が1であり、この両方の面にしわが発生している。比較例2は上面のしわ9aの評点が1であり、特に側面のしわ9bが発生している。
なお、成形品の割れも各々目視にて評価した結果、発明例、比較例ともに割れは発生していなかった。これらの実施例から、本発明成形方法の、難成形パネルを成形するに際してのしわを抑制する効果が裏付けられる。
本発明によれば、以上説明したように、パネル成形時のしわ発生防止と割れ発生防止とを両立させることができる。この結果、オイルパンなどの自動車部品やメンバー部品など、成形が難しい形状の大型パネルであっても、成形が可能となる。このため、自動車部品やメンバー部品用途に、成形素材としてのアルミニウム合金板の用途を大きく拡大するものであり、工業的な価値が大きい。
本発明の一態様を示すプレス装置の断面図である。 本発明の他の態様を示すプレス装置の断面図である。 本発明のパンチ分割の他の態様を示すパンチの断面図である。 オイルパンの一態様を示す斜視図である。 他の自動車部品の一態様を示す斜視図である。 成形試験したオイルパンの形状を示す斜視図である。 成形試験した各オイルパン例のしわ発生の評点を示す斜視図である。 従来の成形方法の一態様を示すプレス装置の断面図である。 パンチ分割の他の態様である比較例を示すパンチの断面図である。 パンチ分割の他の態様である比較例を示すパンチの断面図である。 従来の成形方法を示すプレス装置の部分断面図である。
符号の説明
1:オイルパン、2、3:成形面上面、4:段差部、
5、6、7:側壁(縦壁)、8:フランジ、9:しわ、10:プレス装置、
11:第一のパンチ、12、13、14、17:パンチ成形面、
15、18、50、52:第二のパンチ、16、19:第二のパンチ成形面、
40、51、53:バネ、20:ブランクホルダー、21:ボルスタ、
22:ダイス、23:クッションピン、24、25、26:ダイス成形面、
30:板、31:板の最周縁部、32〜37:板の成形面、

Claims (4)

  1. 上部の平面的な成形面同士の断面高さが急変する段差部を有する成形品パネルに、アルミニウム合金板をプレス成形する方法であって、パネルを成形する第一のパンチの前記平面的な成形面のうちの断面高さが低い側の成形面に相当するパンチ部位の一部を、第二のパンチに分割して、この第二のパンチを第一のパンチに対して別個に変位できるように弾性的に支持し、ダイス外周に設けられたしわ押さえ面と、それに相対して設けられたブランクホルダーにより、アルミニウム合金板の外周部を挟持した上で、第一のパンチとダイスとを相対的に移動させて、アルミニウム合金板をプレス成形するに際し、プレス成形開始時には、第一のパンチに対する第二のパンチの相対的な位置を、プレス下死点での第一のパンチに対する第二のパンチの相対的な位置に比べて、予めダイス側に変位させて、第二のパンチをアルミニウム合金板における前記断面高さが低い側の成形面部位と接触させる一方、第一のパンチによる成形が進むにつれて、第一のパンチとダイスとの相対的な接近によるダイスの圧縮力を作用させて、第二のパンチを弾性的に下降させることを特徴とするアルミニウム合金板のプレス成形方法。
  2. 前記成形品パネルが自動車のメンバー部品である請求項1に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法。
  3. 前記自動車のメンバー部品がオイルパンである請求項2に記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法。
  4. 請求項1から3のいずれかのアルミニウム合金板のプレス成形方法に用いるプレス成形装置であって、ダイス外周に設けられたしわ押さえ面と、それに相対して設けられたブランクホルダーにより板の外周部を挟持した上で、パンチとダイスとを相対的に移動させて板をプレス成形するものであり、第一のパンチの前記平面的な成形面のうちの断面高さが低い側の成形面に相当するパンチ部位の一部を、第二のパンチに分割して、この第二のパンチを第一のパンチに対して別個に変位できるように弾性的に支持したことを特徴とするアルミニウム合金板のプレス成形装置。
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