JP7396415B1 - プレス成形品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
なお、本明細書において例えば「パンチ肩R部」と表記した際には、成形品の部位を意味し、「パンチ肩」と表記した際には金型の部位を意味する。
このようなプレス成形品をプレス成形した場合、天板部における凹状湾曲部の底部及びその近傍のパンチ肩R部に連続する縦壁部の先端部が伸びフランジ変形となる。そのため、当該部位に板厚が減少し割れが発生しやすくなり、また、天板部の凹状湾曲部の底部及びその近傍のパンチ肩R部の板厚が増加して座屈(しわ、折れ込み)が発生しやすくなる。
一方、本発明が対象としているプレス成形品は、少なくとも、側面視で凹状に湾曲する凹状湾曲部を有する天板部と、該天板部からパンチ肩R部を介して連続する縦壁部を有するプレス成形品である。
このように、特許文献1が対象としているプレス成形品と本願発明が対象としているプレス成形品とは、形状が異なっている。
前記天板部と同方向に湾曲する中間天板部と、前記パンチ肩R部に相当する部位に形成された稜線部に連続して形成された段差からなるステップ形状部と、該ステップ形状部に連続して外方に延出すると共に前記中間天板部と同方向に湾曲する外方面部と、を有する中間成形品をプレス成形する第1成形工程と、
前記中間成形品を前記プレス成形品にプレス成形する第2成形工程と、を備えたことを特徴とするものである。
本発明が対象としているプレス成形品1は、少なくとも、側面視で凹状に湾曲する凹状湾曲部を有する天板部3と、天板部3からパンチ肩R部5を介して連続する縦壁部7を有するものであり、その一例が図7に示す断面L字形状のものである。
図8は、本発明が対象とするプレス成形品1を1工程でプレス成形する場合に用いる従来の金型を示している。
従来の金型は、凹状湾曲部を有するパンチ9と、パンチ9と同様の凹状湾曲部を有するパッド11と、ダイ13を備えており、金属板であるブランク15をパッド11とパンチ9で押さえて天板部3に凹状湾曲部を成形しつつ、ダイ13を相対的に移動させて縦壁部7を成形していた。
なお、図9の[28mmup]等の数値は成形下死点までの板厚を考慮したパンチ9のパンチ肩33とダイ顎部13a(図8、[2mmup]の図参照)とのプレス成形方向の隙間である。例えば、[28mmup]のときのパンチ9のパンチ肩33とダイ顎部13aとの隙間はプレス成形品1の板厚+28mmとなる。
図10に示されるように、凹状湾曲部の底部に連続する縦壁部7の先端部位は伸びフランジ変形となって、最大板厚減少率が12.3%と大きくなり割れが発生しやすい。
他方、パンチ肩R部5の最大板厚増加率が10.0%と大きく、しわが発生し折れ込みに至る。
また、天板部3が凹状に湾曲しているため、凹状湾曲部に連続する縦壁部7が凹状湾曲部の左右に拡がって伸びフランジ変形となり、湾曲の底部に連続する縦壁部7の先端に大きな張力が作用して、板厚が減少して割れやすくなる。
すなわち、[28mmup]の成形初期において、ブランク15をパンチ9のパンチ肩33に接触させることができれば、ブランク15がパンチ9に接触しないまま成形方向に腰折れすることがなく、従来のようなしわや折れ込みを防止できると考えた。
さらに、目標形状の縦壁部7を成形する際の縦壁部7の成形高さを低くできれば、伸びフランジ変形量が少なくなって割れが発生しにくくなると考えた。
中間成形品19は、プレス成形品1の天板部3と同方向に湾曲する中間天板部21と、パンチ肩R部5に相当する部位に形成された稜線部23と、該稜線部23に連続して形成された段差からなるステップ形状部17を備えている。図2はプレス成形品1の天板部3と同形状の中間天板部21を備えた例である。また、ステップ形状部17に連続して外方に延出すると共に中間天板部21と同方向に湾曲する外方面部25を備えている。外方面部25は第2成形工程で縦壁部7に成形される。
図2は、外方面部25が中間天板部21と平行になっている例であるが、本発明においては、外方面部25は中間天板部21と同方向に湾曲すればよく、中間天板部21と曲率が同じである必要はない。また、中間天板部21は、第2成形工程でプレス成形品1の天板部3の湾曲となれば良いため、目標形状であるプレス成形品1の天板部3の形状と完全に一致する必要はない。
以下、中間成形品19が図2に示す形状の場合を例に挙げて、図1に基づいて第1成形工程と第2成形工程を詳細に説明する。
第1成形工程では、図1(a)に示すように、ステップ成形パンチ27とステップ成形ダイ29を用いる。これらステップ成形パンチ27とステップ成形ダイ29により、中間天板部21、ステップ形状部17、及び外方面部25を有する中間成形品19をプレス成形する。
なお、中間成形品19の稜線部23の曲率半径は、プレス成形品1のパンチ肩R部5の曲率半径と同じかそれ以上であることが好ましい。これによって、第2成形工程において、稜線部23がパンチ9のパンチ肩33に接触しやすくなるからである。
第2成形工程では、図1(b)に示すように、目標形状であるプレス成形品1を成形するパンチ9とパッド11とダイ13を用いる。図1(b)に示すものは、従来例として図8に示したものと同様である。そして、パンチ9の上に中間成形品19を載せ、パッド11で押さえて、ダイ13をパンチ9側に相対移動させることにより、外方面部25を縦壁部7に成形し、目標形状であるプレス成形品1に成形する。
なお、[28mmup]等の数値は、前述した図9の場合と同様に、成形下死点までの板厚を考慮したパンチ肩33とダイ顎部13aのプレス成形方向の隙間である。したがって、[28mmup]のときのパンチ肩33とダイ顎部13aとの隙間はプレス成形品1の板厚+28mmとなる。
このように、中間成形品19のステップ形状部17がパンチ肩33に沿うことで、これ以降の成形過程での稜線部23の変形量が抑えられ、板厚増加が抑制されて腰折れが防止される。
このため、伸びフランジ変形による板厚減少が抑制され、割れ発生を防止できる。
図4(a)に示すように、第1成形工程では稜線部23で最大板厚増加率が3.1%であり、また外方面部25で最大板厚減少率が3.7%であった。
また、図4(b)に示すように、第2成形工程ではパンチ肩R部5で最大板厚増加率が3.1%であり、縦壁部7の先端部位で最大板厚減少率が10.8%であった。
また、縦壁部7の先端部位の最大板厚減少率は、従来例が12.3%であったのに対して、本実施の形態では10.8%と低減した。よって、伸びフランジ変形に伴う割れが抑制できることがわかる。
板厚1.4mm、980MPa級鋼板を用いて、図6に示すように、側面視で凹形状に湾曲する天板部3と、天板部3に連続する縦壁部7を有するプレス成形品1のプレス成形解析を行い、板厚分布を求めた。プレス成形品1の各部の寸法は図6に示す通りである。
プレス成形解析は、図8に示した1工程で行う従来例の他、中間成形品19(図2)における外方面部25の形状を変えて行い、目標形状であるプレス成形品1の稜線部23の最大板厚増加率と縦壁先端部での最大板厚減少率を求めた。
なお、図6のプレス成形品1において、最大板厚増加率が8%を超えるとしわや折れ込みが発生し、最大板厚減少率が12.0%を超えると割れが発生することがわかっている。
解析結果を表1に示す。
表1において、ステップ高さ(mm)として、中間天板部21の凹状湾曲底部の位置でのステップ形状部17の高さと、中間成形品19の端部におけるステップ形状部17の高さとを示した。
また、縦壁先端部における最大板厚減少率は12.3%であり、割れが発生した。
比較例であるNo.2は、中間成形品19の外方面部25について、特許文献1と同様に天板部3方向に凸状山形形状とした場合である。この場合、中間成形品19をプレス成形中に、凸状山形形状にした外方面部25の先端で割れが発生し、プレス成形を中止せざるを得なかった。
また、No.3からNo.11のいずれも、目標形状のパンチ肩R部5での最大板厚増加率はしわが発生する8%より小さくてしわ発生が防止でき、また目標形状の縦壁先端部位の最大板厚減少率は12.0%以下であり、割れ発生も防止できた。
特に、No.7からNo.9のように、中間成形品19のステップ高さを10mm~15mmとすることで、目標形状におけるパンチ肩R部5の最大板厚増加率が著しく低減して、確実にしわや折れ込みを防止できるとともに、目標形状における縦壁先端部位における最大板厚減少率も低減して、割れを確実に防止できることが分かった。
3 天板部
5 パンチ肩R部
7 縦壁部
9 パンチ
11 パッド
13 ダイ
13a ダイ顎部
13b ダイ肩
15 ブランク
17 ステップ形状部
19 中間成形品
21 中間天板部
23 稜線部
25 外方面部
27 ステップ成形パンチ
29 ステップ成形ダイ
31 ダイ(他の態様)
31a ダイ顎部
31b ダイ肩
33 パンチ肩
Claims (2)
- 少なくとも、側面視で凹状に湾曲する凹状湾曲部を有する天板部と、該天板部からパンチ肩R部を介して連続する縦壁部を有するプレス成形品の製造方法であって、
前記天板部と同方向に湾曲する中間天板部と、前記パンチ肩R部に相当する部位に形成された稜線部に連続して形成された段差からなるステップ形状部と、該ステップ形状部に連続して外方に延出すると共に前記中間天板部と同方向に湾曲する外方面部と、を有する中間成形品をプレス成形する第1成形工程と、
前記中間成形品を前記プレス成形品にプレス成形する第2成形工程と、を備えたことを特徴とするプレス成形品の製造方法。 - 前記中間成形品の前記稜線部の曲率半径が、前記プレス成形品のパンチ肩R部の曲率半径と同じかそれ以上であることを特徴とする請求項1に記載のプレス成形品の製造方法。
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