JP5177947B2 - 放熱性に優れた組電池および組電池ケース - Google Patents
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Description
この電気自動車やハイブリッドカーの駆動電源としては、大型の二次電池を積層した組電池が使用されており、この組電池は運転中に充放電を繰り返して発熱が生じるため、冷却空気を通風させて冷却しているが、組電池が過熱すると電池の充電/放電の性能が不安定になるので、放熱性に優れた組電池が求められている。
しかし、この方法は放射伝熱を利用して冷却する方法であり、向かい合わない上蓋、下蓋、向かい合わない側面の冷却には有効であるが、組電池として向い合う面はお互い高温になっているため、電池表面からの放射電熱の促進は原理的にできないという問題点があった。
また、特開2002−42753号公報には、電池間の電池ホルダに設けられたリブにより、冷却空気の流路を構成し電池の冷却を効率化する方法が開示されている。
しかし、この方法は、空気の対流伝熱による冷却のみで冷却能力を向上させるため、冷却空気の風量のアップが必要であり、風量をアップするとファンの騒音が大きくなるという問題点があり、大きな冷却能力向上は実現できなかった。
また、特開2000−228228号公報には、電池間の放熱路に複数のフィンが形成された冷却プレートを設置することによって、電池表面からの放射熱を吸収する方法が開示されている。
しかし、この方法では、フィンにより積極的に冷却空気の乱流を形成するため大きな圧力損失が発生し、冷却能力向上のためには高容量のファンが必要となるためファンの騒音が大きくなり、静粛性を要求される自動車用には適用できないという問題点があるうえ、フィンを形成した冷却プレートは製作コストが高く、組電池のコストアップ要因になっていた。
図1および図2において、電池1と隣り合う電池1との間には、冷却するための空気流路が設けられており、この空気流路を点線の矢印の方向に空気が流れて電池表面から放熱される。
放熱の形態としては、図2に示すように、空気の対流による対流伝熱と、電池間で熱を直接放射・吸収する放射伝熱の2つの伝熱形態がある。
しかし、図2における対流伝熱は、電池1の表面を流れる空気が層流域の場合、境界層が発達して伝熱性能が低くなり、しかも、伝熱面は電池1の側面の2面だけなので、十分な放熱を行うことができなかった。
また、電池間で熱を直接放射・吸収する放射伝熱は、電池1の双方が高温の場合には、伝熱効果がほとんどないという問題点があった。
(2)前記空気流路の中間部に熱を吸収する仕切板を設置することを特徴とする(1)に記載の放熱性、静粛性に優れた自動車用組電池。
(3)(1)または(2)に記載の組電池を収納する組電池ケースであって、該組電池ケースの内面および/または外面に高放射率の被覆を施すことを特徴とする放熱性、静粛性に優れた自動車用組電池ケース。
(4)前記組電池ケースの表面に曲面および/または矩形の加工を加えることを特徴とする(3)に記載の放熱性、静粛性に優れた自動車用組電池ケース。
(5)前記電池の表面に高い放射率の被覆を施すことを特徴とする(1)または(2)に記載の放熱性、静粛性に優れた自動車用組電池。
(6)前記仕切板に、高放射率の被覆を施し、および/または、高放射率の素材を用いることを特徴とする(1)、(2)、または、(5)のいずれかに記載の放熱性、静粛性に優れた自動車用組電池。
(7)前記仕切板に熱伝導性の高い素材を用い、かつ、該仕切板を前記電池の積層面より大きくすることを特徴とする(1)、(2)、(5)、または、(6)のいずれかに記載の放熱性、静粛性に優れた自動車用組電池。
図3は、本発明の組電池の第1の実施形態を例示する図である。
二次電池を組み合わせた組電池の冷却は、積層する電池と電池の間に冷却のための空気流路を設けることが一般的であるが、自動車用の場合、冷却風量は静粛性を確保するため抑制され流路を流れる冷却空気は層流領域で流される。
この場合、フィン等で乱流を形成することは困難であり、速度勾配が大きく、撹乱が少ないため熱の授受が小さいため高い熱伝達係数を得ることは困難である。
また、層流領域では、電池表面の流速が遅いため伝熱を阻害する境界層が発達し、高い熱伝達係数を得ることは困難である。
そこで、発明者等は、電池と電池の間隔を短縮することで、境界層の発達を防止できることに着目し、空気流路の間隔を理論的に求められる境界層厚みより狭くすることにより高い熱伝達係数が得られることを見出した。
即ち、図3における空気流路の間隔(D)と理論境界層厚み(d)との関係が下記(A)式を満足することによって、熱伝達係数を著しく高めることができる。
D<d ・・・(A)
図3において、電池1の表面に流れる空気は、空気流路内の平均流速より遅い境界層を形成する。
この層流における境界層厚み(d)は、理論的に(B)式により求めることができる。
d=6.02×(ν×x/V)1/2・・・(B)
ここに、ν:動粘性係数(m2/sec)
x:平板の前縁からの距離(m)
V:流速(m/sec)
このように、本発明によれば、乱流を発生させるフィンを形成すること無く高い伝達係数が得られ、しかも圧力損失を低くすることができる。
なお、本発明においては、空気流路の間隔の絶対値は問わないが、後述の実施例から判断すると、4mm未満が好ましく、さらに、0.5〜2mmが好ましい範囲である。
図4および図5は、本発明における組電池の第2の実施形態を例示する図である。
図4および図5において、1は電池、2は仕切板を示す。
図4および図5において、電池1は、積層されて組電池を構成しており、この電池1の間には、冷却空気を通すための冷却流路が設けられている。
本実施形態においては、この空気流路の中間部に熱を吸収する仕切板2を設置することを特徴とする。
図5に示すように、冷却空気による対流伝熱は、電池の表面だけでなく、仕切板2の表面からも空気に熱伝達されることから、伝熱面積を前述の図2に示す従来の伝熱面積の2倍に増加させることができるため、冷却能力が著しく向上する。
すなわち、電池1が持っている熱は、電池⇒仕切板⇒空気と伝わり、これは等価的に電池からの放熱を空気で抜熱したことになり、仕切板2を設けることによる伝熱面積の拡大によって著しい冷却効果を実現することができ、その結果、組電池の充電/放電性能を安定化させることができる。
なお、図4および図5における空気流路の間隔は、電池1と仕切板2との間隔D´として、このD´が前記(A)式を満足すればよい。
図6において、電池を積層して構成した組電池1´は、組電池ケース4の中に収納される。
この際、組電池1´からの発熱は、放射伝熱によって、組電池ケース4に伝わり、外部に放熱される。
そこで、組電池1´を収納する組電池ケースの内面および/または外面に高放射率の被覆を施すことにより、この放射伝熱を著しく向上させることが好ましい。
本発明においては、高放射率の被覆方法は問わないが、材料入手の容易性と施工性の観点から、例えば、放射率が0.5以上でカーボンブラック等の高放射率材料を含有する塗料を塗布する方法が好ましい。
さらに、前記組電池ケース4の表面に曲面および/または矩形の加工を加えることが好ましい。
組電池ケース4の表面に曲面および/または矩形の加工を加えることによって、組電池ケース4の表面積を大きくして伝熱面積を増加させることができるうえ、表面を流れる空気の流れを乱すことによって、空気による対流熱伝達を促進することができる。
さらに、前記仕切板2に、高放射率の被覆を施し、および/または、高放射率の素材を用いることによって、電池からの放射伝熱をさらに向上させることができる。
本発明においては、高放射率の被覆方法は問わないが、材料入手の容易性と施工性の観点から、例えば、放射率が0.5以上でカーボンブラック等の高放射率材料を含有する塗料を塗布する方法が好ましい。
また本発明においては、高放射率の素材は問わないが、絶縁性、材料入手の容易性、および加工性の観点から、例えば、放射率が0.5以上の黒色ポリプロピレンが好ましい。
本発明においては、高熱伝導性の素材・構成は問わないが、絶縁性、材料入手の容易性、および、加工性の観点から、例えば、熱伝導性が45w/m2k以上の金属材料の絶縁処理を施したものが好ましい。
図7において、5は給気ダクト、6は電池アッパーケース、7は電池ロアケース、8は排気口を示し、組電池ケースは上記の電池アッパーケース6と電池ロアーケース7によって構成されている。
冷却空気は、空気の供給ヘッダーとしての役割を果たす給気ダクト5を通じて組電池に冷却空気を均一に供給する。冷却空気は電池アッパーケース6に吹き込まれ、内部に収納された組電池を冷却した後、電池ロアケース7に設けられた排気口8から排気される。このように組電池ケースに冷却空気を送風することによって、電池からの発熱による電池の温度上昇を防止することができ、その結果、組電池の充電/放電性能を安定化させることができる。
熱交換した空気はロアケースに集められ排気口から排気される。
図8に示すように、電池を積層して構成された組電池1´は、アッパーケース6およびロアーケース7から構成される組電池ケース内に収納される。
図9は、組電池の積層と収納方法を例示する図である。
組電池1´は電池と電池の間に表面および裏面に凹凸が設けられた仕切板2を介して積層される。
この凹凸によって、仕切板2の表面と裏面に空気流路を確保することができ、組電池は、電池と仕切板2との間に冷却空気が流れることによって冷却される。
また、この仕切板と同様に表面に凹凸の設けられた板を、組電池1´と組電池ケースの内面との間に設けることにより、電池の絶縁と、空気流路の確保を行うことができる。
まず、電池と電池或いは電池と仕切板の流路を流れる冷却空気の平均流速を1.5m/s一定とし、電池と電池或いは電池と仕切り板の間隔を0.5mmから8mmまで変化させたときの、(1)仕切板無し、(2)仕切り板有、(3)仕切板+電池表面に高放射率塗装を被覆した場合の、電池から空気に抜熱された熱量と電池側面温度と空気温度差から求めた、熱伝達係数(W/m2k)の関係を示す。
尚、仕切り板は黒色ホ゜リフ゜ロヒ゜レン・厚み=1mm・放射率0.8、電池への高放射塗装は厚み=3μm・放射率0.9とした。
図10に示すように、電池と電池或いは電池と仕切り板の間隔(D)が4mm未満において、著しく高い熱伝達係数を示しており、前述の(B)式で求めた理論境界厚み(d)は4.0〜5.6mmなので、本発明の条件である(A)式を満足すれば、著しく高い熱伝達係数が得られることが確認された。
さらに、電池と電池或いは電池と仕切り板の間隔(D)が0.5〜2mmの範囲において、熱伝達係数が最大となり、さらに好ましい範囲である。下限を0.5mmとするのは、電池と電池或いは電池と仕切り板の間隔(D)が0.5mm未満では、圧損が大きくなり過ぎるからである。
従来は、熱伝達係数は流速に依存することが知られており、流路の間隔と熱伝達係数とにこのような相関があることは常識的には考えられなかったが、発明者等は、鋭意検討の結果、流路の間隔が熱伝達係数と大きな影響があることを見出し本発明に想到したものである。
次に、下記の実験条件にて、風量と熱伝達係数との関係を調べた。
<実験条件>
・電池と仕切板の流路間隔=1mm(仕切板が無い場合は電池間=2mm)
・仕切板:黒色ホ゜リフ゜ロヒ゜レン・厚み=1mm・放射率0.8
・電池への高放射塗装は厚み=3μm・放射率0.9
・任意の冷却空気風量=100%
<実験結果>
図11は、冷却実験の結果、電池から空気に抜熱された熱量と電池側面温度と空気温度差から求めた、熱伝達係数(W/m2k)の関係を示す図である。
図11において、▲印は仕切板無し+電池への高放射塗装無し(比較例)、■印は仕切板有り+電池への高放射塗装無し(本発明例)、◆印は仕切板有り+電池への高放射塗装有り(本発明例)を示す。
図12は、冷却実験に用いた高放射塗装を示す図である。
従来の亜鉛めっき鋼板の表面に化成処理を施し、放熱を向上させたい面に吸熱性皮膜を塗布する。
塗装鋼板タイプは、吸熱性皮膜は片面のみとし、外面には意匠性塗膜層を塗布することによって、表面の意匠性を確保しつつ、裏面からの放熱を向上させることができる。
また、一般タイプは、吸熱性皮膜を両面に塗布することにより、表裏両面からの放熱を向上させることができる。
図13に示す箱の上面を高吸熱性鋼板として、この箱の中に投入熱量10W一定のヒーターを設置し、ヒーターから20mm上方に熱電対を置き、時間の経過とともに熱電対の温度変化を測定する。
図14は、放熱実験結果を示す図である。
図14において、◇印は従来の亜鉛めっき鋼板を示し、■印は高吸熱性鋼板を示す。
図14からわかるように、高吸熱性鋼板は、従来の亜鉛めっき鋼板に比べて約10℃ほど温度上昇が小さいことが確認された。
1´・・・組電池、
2・・・仕切板、
3・・・フィン、
4・・・組電池ケース、
5・・・給気ダクト、
6・・・電池アッパーケース、
7・・・電池ロアーケース、
8・・・排気口、
9・・・給気口、
Claims (7)
- 電気自動車やハイブリッドカーの駆動電源として使用される二次電池を積層した自動車用組電池であって、前記積層する電池と電池との間に層流領域の一定の平均流速で冷却空気を通すための空気流路を設け、該空気流路の間隔を層流領域の一定の平均流速で理論的に求められる境界層厚みより狭くすることを特徴とする放熱性、静粛性に優れた自動車用組電池。
- 前記空気流路の中間部に熱を吸収する仕切板を設置することを特徴とする請求項1に記載の放熱性、静粛性に優れた自動車用組電池。
- 請求項1または請求項2に記載の組電池を収納する組電池ケースであって、該組電池ケースの内面および/または外面に高放射率の被覆を施すことを特徴とする放熱性、静粛性に優れた自動車用組電池ケース。
- 前記組電池ケースの表面に曲面および/または矩形の加工を加えることを特徴とする請求項3に記載の放熱性、静粛性に優れた自動車用組電池ケース。
- 前記電池の表面に高い放射率の被覆を施すことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放熱性、静粛性に優れた自動車用組電池。
- 前記仕切板に、高放射率の被覆を施し、および/または、高放射率の素材を用いることを特徴とする請求項1、請求項2、または、請求項5のいずれかに記載の放熱性、静粛性に優れた自動車用組電池。
- 前記仕切板に熱伝導性の高い素材を用い、かつ、該仕切板を前記電池の積層面より大きくすることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項5、または、請求項6のいずれかに記載の放熱性、静粛性に優れた自動車用組電池。
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