JP5175658B2 - 内燃機関の吸気装置 - Google Patents

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本発明は内燃機関の吸気装置に関し、特にエンジンの低速回転時に比べて高速回転時における吸気ダクトの通路有効断面積をより大きく確保できるようにした吸気装置に関するものである。
この種の吸気装置として例えば特許文献1,2に記載されているように、エンジンの高速回転時に十分な吸入空気量を確保するために、エアクリーナの吸気方向上流側に二つのダクトを並設するとともに、一方のダクトにはエンジンの低速回転時に当該ダクトの通路を閉塞しているバルブを設けて、エンジンの低速回転時には一つのダクトのみから吸気を行う一方で、高速回転時には上記バルブを開くことにより二つのダクトから吸気を行うようにしたものが提案されている。
特開2004−76657号公報 特開平11−82202号公報
特許文献1に記載されたものでは、負圧式のアクチュエータによりバルブを開閉する方式であるため、部品点数の増加によるコストアップが余儀なくされるほか、スペース的な面でも不利になりやすい。
また、特許文献2に記載されたものでは、ダクト内の負圧によりバルブ(開閉部材または弁体)を直接開閉する方式であり、ダクト内の負圧とバルブ自体の自己弾性力とが拮抗するかたちとなって、特定のエンジン回転数で一気にバルブが開かずに徐々に開き始めることになるため、特にエンジンの低速回転時において十分な吸気音の低減が図れないという問題がある。
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、アクチュエータを必要としない簡単な構造のもとで、エンジン高速回転時における十分な吸入空気量を確保しつつ、エンジン低速回転時における吸気音の低減を図った吸気装置を提供するものである。
発明は、エンジン吸気系に介装されたエアクリーナの吸気方向上流側に吸気ダクトとして共に一端が大気開放されたメインダクトと当該メインダクトよりも通路断面積の小さなバイパスダクトがそれぞれに接続されているとともに、上記メインダクト内には当該メインダクトの通路を開閉するバルブが配設されていて、このバルブは、エンジン低速回転時には上記メインダクト内の負圧により開方向に変位した状態でなおもその通路の閉状態を維持するようになっている一方、エンジン高速回転時にはそのメインダクト内の負圧により当該メインダクトの通路を一気に且つ大きく開いて上記バイパスダクトとともにエアクリーナへの吸気流入を許容するようになっていることを特徴とする。
ここで、エンジン低速回転時において負圧によるバルブの開方向への変位を許容しつつも、なおもその通路の閉状態を維持するようにしているのは、エンジンの低速回転から高速回転に移行した際に、バルブが負圧の変化に応じて徐々に開くのではなく、特定の回転数でバルブが一気に且つ大きく開くことを意図しているからにほかならない。
より具体的には、上記バルブは渦巻ばねにより閉方向への付勢力が付与されたヒンジ回転式で且つ断面流線形の翼形状のフラップを有していて、上記メインダクトの内壁には、エンジン低速回転時に開方向に変位したフラップと協働してなおもその通路の閉状態を維持する封止部を設けてあるものとする。
したがって、本発明では、エンジンの低速回転時にはダクト内に作用する負圧は相対的に小さく、この負圧の影響でバルブはわずかがら通路を開こうとするものの、なおもその通路の閉状態を維持することになる。そのために、メインダクトの通路はバルブによってなおも閉塞されたままであり、エアクリーナ側への吸気はバイパスダクトのみを通して行われることから、エンジンの低速回転時における吸気音の低減が図れることになる。
その一方、エンジンの高速回転時にはダクト内に作用する負圧は相対的に大きくなるため、エンジン回転数が特定の回転数に達した時点でバルブは上記負圧を受けて一気に且つ大きく開き、エアクリーナ側への吸気はバイパスダクトとメインダクトの双方を通して行われることから、エンジンの高速回転時における吸気量が十分に大きくなり、これによって吸気効率が大幅に向上することになる。
本発明によれば、アクチュエータを設けることなく単にバルブを設けるのみで、エンジン低速回転時の吸気音の低減とエンジン高速回転時の吸気量の増大による吸気効率の向上とを両立することができ、構造の簡素化とコストの低減を図ることが可能となる。
図1〜3は本発明に係る吸気装置が前提とする基本技術を示していて、特に図1はエアクリーナ1を主要素とする吸気装置全体の概略構造を模式的に示している。
図1に示すように、エアクリーナ1の吸気方向下流側はスロットルバルブ2や図示しないコレクタを介してエンジンのシリンダブロックに接続されるとともに、エアクリーナ1の吸気方向上流側には吸気ダクトとしてそれぞれに独立したメインダクト3とバイパスダクト4を並列に接続してあり、各ダクト3,4の一端は外部に開口している。なお、図1の符号5はエアクリーナ1のエレメントを示す。
ここで、メインダクト3およびバイパスダクト4は共に例えば角筒状のものであり、その有効断面積はバイパスダクト4よりもメインダクト3の方が大きくなるように形成してある。そして、メインダクト3の内部には例えばフラップ式のバルブ6を設けてあり、このバルブ6によってメインダクト3の通路3aが開閉可能となっている。
図2,3は上記バルブ6の詳細を示し、メインダクト3内には弁体としてそのメインダクト3に内接するかわずかな隙間をもつ矩形板状のフラップ7を設けてあり、このフラップ7はシャフト8に固定してあるとともに、シャフト8はメインダクト3を貫通するようにして当該メインダクト3に回転可能に両持ち支持させてある。これにより、フラップ7はヒンジ回転式のものとなっていて、フラップ7の回動変位に伴いメインダクト3の通路3aが開閉可能となっている。
シャフト8の一端には渦巻ばね9を配置してある。この渦巻ばね9はその内端部をシャフト8またはフラップ7の根元部に固定してあるとともに、外端部をメインダクト3に固定してあり、その巻き締まり方向の付勢力をもってフラップ7を閉方向(図3で時計回り方向)に付勢している。図3ではフラップ7の直立姿勢位置が閉止位置P1となっていて、ストッパ10との当接によりフラップ7が閉止位置P1に位置決めされるようになっている。
また、メインダクト3の内周であって且つ閉止位置P1近傍においてフラップ7の先端と対向する位置には封止部としてスロープ突起部11を付設してある。このスロープ突起部11は閉止位置P1からフラップ7の開方向(図3の反時計回り方向)の所定区間にわたってその厚みが漸次大きくなるように、且つフラップ7の先端と対向する面を円弧面11aとして形成してある。この円弧面11aはフラップ7の開閉動作(回動変位)に伴いそのフラップ7の先端が描く軌跡とほぼ一致するように形成してあり、フラップ7の先端が円弧面11aと対向しているかぎりにおいてはそのフラップ7の位置にかかわらず当該フラップ7の閉止状態が維持または継続されるように設定してある。
したがって、このように構成された吸気装置によれば、エンジンの低速回転時においては、エンジン吸気系の一部であるエアクリーナ1やメインダクト3およびバイパスダクト4内での吸入負圧は相対的に小さく、フラップ7はその吸入負圧の影響で図3の(A)に示すように閉止位置P1からわずかに開方向に回動変位するものの初期変位位置P2に保持され、スロープ突起部11から離れるまでには至らない。そのために、フラップ7が閉止位置P1から開方向にわずかに回動変位して初期変位位置P2にあったとしても、スロープ突起部11から離れないかぎりはなおも閉止状態が維持または継続されている。
このフラップ7による閉止状態とは、エンジンの低速回転時において図1のメインダクト3の通路3aが完全に閉鎖されていて、バイパスダクト4の通路4aのみが開いている状態にほかならず、メインダクト3は吸気ダクトとしては何ら機能しないため、バイパスダクト4のみによって吸気が行われる。その結果、吸気ダクトとしての有効断面積が小さくなるとともに、従来のようにフラップ7が例えば小開度にある場合と比べて吸気音の発生が抑制されて、吸気音の低減の上で有利となる。
その一方、エンジンの高速回転に移行した場合には、吸入負圧が一気に増大することから、図3の(B)に示すようにフラップ7が一気に且つ大きく回動変位して大開度位置P3に至ることから、これをもってそのメインダクト3の通路3aを大きく開き、バイパスダクト4およびメインダクト3の双方を通して吸気が行われることになる。これにより、高速回転に必要十分な吸気量が確保され、吸気効率が向上することになる。
さらに、エンジンが高速回転から低速回転に移行した場合には、直ちに図3の(A)の状態となる。
ここで、先のエンジンの低速回転時において、メインダクト3の閉止状態を維持するために、図3の(A)のようなフラップ7の回動を許容することなく閉止位置P1にフラップ7を留めておこうとすると、渦巻ばね9のばね力のみをもって吸入負圧に対抗せざるを得ないことになる。この渦巻ばね9のばね力の増大化は、先に述べたエンジンの高速回転時にフラップ7を回動変位させてメインダクト3の通路3aを開く際の抵抗の増大となる。これは、フラップ7の開度が大きくなればなるほどそのフラップ7を閉止位置P1に引き戻そうとする渦巻ばね9のばね力が大きくなることを意味する。その結果、エンジンの高速回転時において、フラップ7の十分な開度ひいては吸入空気量が確保できず、吸気効率が低下することになる。
これに対して図3に示した構造では、エンジンの低速回転時において、図3の(A)に示すように開方向へのフラップ7のわずかな回動変位、すなわち初期変位位置P2までの回動変位を許容しながらも、スロープ突起部11があることによってメインダクト3の通路3aの閉止状態が維持されている。そのために、このエンジン低速回転時におけるフラップ7の開度分だけ相対的に渦巻ばね9のばね力を小さくすることが可能であり、結果的には、エンジンの高速回転時においてフラップ7を一気に且つより大きく回動変位させて、フラップ7の十分な開度ひいては吸入空気量が確保することができて、吸気効率が向上することになる。
このように図3の構造によれば、渦巻ばね9にて付勢されたフラップ7とスロープ突起部11との組み合わせというきわめて簡単な構成でありながら、エンジン低速回転時の吸気音の低減とエンジン高速回転時の吸気効率の向上とを両立することが可能となる。
図4は図1〜3の構造を前提とした本発明に係る吸気装置の具体的な実施の形態を示す図であり、図1〜3と共通する部分には同一符号を付してある。
この実施の形態では、バルブ6の弁体として機能するフラップ12を翼形状のように断面流線形に形成したものである。このようにフラップ12の断面形状を流線形に形成した本実施の形態では、エンジンの高速回転時においてフラップ12が吸入負圧により回動変位する際に、空気の流れによってフラップ12に揚力Fが発生し、フラップ12をより大きく回動変位させることが可能となる。
したがって、この実施の形態によれば、先の基本技術と同様の効果が得られるほか、メインダクト3の全閉状態から全開状態への移行が一気に且つ開度変化が大きくなる点で先の基本技術のものより有利となる。
本発明に係る吸気装置が前提とする基本技術を示す全体の概略説明図。 図1に示したバルブ部分の断面説明図。 図1に示したバルブ部分の拡大図で、(A)はバルブ閉状態の作動説明図、(B)はバルブ開状態の作動説明図。 本発明に係る吸気装置の具体的な実施の形態を示す図で、(A)はバルブ閉状態の作動説明図、(B)はバルブ開状態の作動説明図。
符号の説明
1…エアクリーナ
3…メインダクト
3a…通路
4…バイパスダクト
6…バルブ
7…フラップ
9…渦巻ばね
11…スロープ突起部(封止部)
12…フラップ
P1…閉止位置
P2…初期変位位置
P3…大開度位置

Claims (1)

  1. エンジン吸気系に介装されたエアクリーナの吸気方向上流側に吸気ダクトとして共に一端が大気開放されたメインダクトと当該メインダクトよりも通路断面積の小さなバイパスダクトがそれぞれに接続されているとともに、
    上記メインダクト内には当該メインダクトの通路を開閉するバルブが配設されていて、
    このバルブは、渦巻ばねにより閉方向への付勢力が付与されたヒンジ回転式で且つ断面流線形の翼形状のフラップを有していて、エンジン低速回転時には上記メインダクト内の負圧により開方向に変位した状態でなおもその通路の閉状態を維持するようになっている一方、エンジン高速回転時にはそのメインダクト内の負圧により当該メインダクトの通路を一気に且つ大きく開いて上記バイパスダクトとともにエアクリーナへの吸気流入を許容するようになっていて、
    さらに、上記メインダクトの内壁には、エンジン低速回転時に開方向に変位したフラップと協働してなおもその通路の閉状態を維持する封止部を設けてあることを特徴とする内燃機関の吸気装置。
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