上記したファブリペロー干渉計では、エアギャップを介して上下に光学多層膜構造のミラーが配置された構造となっており、各ミラー構造体の電極間に印加した電圧に基づいて生じる静電気力により、エアギャップ上に架橋された上側のミラー構造体のメンブレンを変位させ、エアギャップにおけるミラー間の対向距離に応じた波長の光を選択的に透過させるようになっている。
しかしながら、上側のミラー構造体が静電気力により変位した状態で、上側のミラー構造体(メンブレンMEM)は撓んだ形状となり、エアギャップを介した両ミラー構造体の対向距離は、中央と端部とで異なるものとなる。したがって、両ミラー構造体におけるエアギャップを介して対向する部位全体をそれぞれミラーとし、対向部位全体を共振器として光を透過させる構造とすると、全体としてファブリペロー干渉計の透過波長の半値巾(FWHM)が大きくなってしまう(分解能が低下してしまう)。
これに対し、特許文献1に示されるファブリペロー干渉計では、複数個所に設けられた上側ミラー構造体の二酸化シリコン層のうち、中央領域に配置された部分が上記中央領域に対応しており、該中央領域のみ光を透過するように、基板の一面における中央領域を除く部分に金属層が設けられている。しかしながら、金属層を設けると、金属汚染の点から、金属層形成後の工程で高温プロセスを行うことができなくなり、製造プロセスが制限されてしまう。
また、金属層を、基板における一面とは反対側(裏面側)の面上に形成することも考えられる。しかしながら、エアギャップを形成するための犠牲層エッチングの前に金属層を形成する場合、エッチャントに対する耐性を有した材料を用いなければならない。一方、犠牲層エッチング後に金属層を形成する場合、エアギャップを架橋する上部側ミラー構造体のメンブレンなどを破壊しないように形成することが困難である。すなわち、この場合も、製造プロセスが制限されてしまう。
また、基板にリンやボロンなどをドーピングすることにより、上記金属層に相当する拡散領域を形成することも考えられる。しかしながら、いずれにせよ、基板に金属層(拡散領域)を形成する工程が必要となる。
なお、ファブリペロー干渉計が、赤外線検出素子とともに缶パッケージ部内に配置される構造では、缶パッケージ部に金属層を設けることも考えられる。しかしながら、ファブリペロー干渉計において光を透過させたい中央領域と、缶パッケージ部に設けた金属層との、高精度な位置合わせが必要となる。
また、特許文献1,2に示されるファブリペロー干渉計では、上側のミラー構造体を構成する二酸化シリコン層が、中央領域と、中央領域を取り囲む周辺領域にそれぞれ配置されており、二酸化シリコン層における中央領域の部分と周辺領域の部分とは、多結晶シリコン層同士が接した環状の部分により、構造的に分離されている。また、この環状部分は、二酸化シリコン層が存在しない分、エアギャップの変化方向の厚みが薄く、構造的に弱い薄状の部分となっている。このように、中央領域を取り囲む環状部分を、構造的に弱い薄状とすることで、上側のミラー構造体が変位した際に中央領域を平坦化し、これにより、透過波長の半値巾(FWHM)の増大を抑制するようにしている。
しかしながら、このようなファブリペロー干渉計では、周辺領域においても、上側のミラー構造体に光学多層膜構造のミラーが形成されており、この周辺領域に形成されたミラーは、下側のミラー構造体のミラーと対向している。すなわち、周辺領域においても、上側のミラーと下側のミラーとが対向してなる共振器が構成されている。したがって、光の透過範囲を制限する金属層が形成されていない(特許文献2)と、周辺領域から、中央領域とは異なる波長の光が透過されてしまう。
また、特許文献3に示されるファブリペロー干渉計では、両ミラー構造体の周辺領域が、多結晶シリコン層同士が互いに接触した構造となっており、中央領域に形成されたミラーのように、ミラー単体で、ファブリペロー干渉計の分光帯域(選択的に透過できる波長の帯域)と同等な波長範囲の反射帯域を有していない。そして、この周辺領域では、上記した分光帯域の一部において反射率が60%を下回るため、これにより、ファブリペロー干渉計は、両ミラー構造体の周辺領域を透過した光の影響も少なからず受けてしまう。このような周辺領域における反射率の波長依存性については、本発明者によって確認されている。
本発明は上記問題点に鑑み、光の透過範囲を制限する金属層を基板に設けることなく、透過波長の半値巾(FWHM)の小さなファブリペロー干渉計を提供することを目的とする。
上記目的を達成する為に請求項1に記載の発明では、第1ミラー構造体と第2ミラー構造体とのギャップを介した対向部位のうち、第1ミラー及び第2ミラーの形成された中央領域を除く領域である周辺領域の全域が、第1ミラーと第2ミラーの対向部位により選択的に透過できる帯域の光を反射する反射領域とされている。そして、反射領域では、ギャップが変化する方向(以下、単に変位方向と示す)に垂直な垂直方向の任意位置において、第1ミラー構造体及び第2ミラー構造体の一方のみに反射ミラーが形成され、この反射ミラーは、同一のミラー構造体におけるミラーと、同一の反射率及び反射帯域を有することを特徴とする。
このように、本発明によれば、中央領域における第1ミラー、第2ミラー、及びギャップからなる共振器により、ギャップに応じた所定波長の光を選択的に透過することができる。
一方、周辺領域では、垂直方向の任意位置において第1ミラー構造体及び第2ミラー構造体のいずれか一方のみ、且つ、周辺領域全域、に反射ミラーを設けている。ここで、第1ミラー及び第2ミラーは、ミラー単体で、ファブリペロー干渉計の上記共振器での分光帯域(選択的に透過できる波長の帯域)と同等な波長範囲の反射帯域を有する。また、反射ミラーは、同一のミラー構造体におけるミラーと同一の反射率及び反射帯域を有する。以上により、一方のミラー構造体に設けられた反射ミラー、該反射ミラーに対向する他方のミラー構造体の反射ミラーではない部分、及びギャップからなる共振器は、分光帯域の波長の光を高反射する構造となっている。すなわち、周辺領域全域が、分光帯域の光を反射する反射領域となっている。
したがって、本発明によれば、光の透過範囲を制限する金属層を基板に設けることなく、透過波長の半値巾(FWHM)の小さなファブリペロー干渉計を提供することができる。なお、反射ミラーは、基板上に配置されるミラー構造体に形成されており、換言すれば、従来の製造プロセスにおいて基板に金属層を設けるよりも後工程で反射ミラーが形成されている。したがって、光の透過範囲を制限する構造でありながら、従来よりも製造プロセスの制約を受けにくい構造となっている。
請求項2に記載のように、各ミラー構造体は、高屈折率材料からなり、変位方向において多層に配置された高屈折率層を有し、各ミラーは、多層に配置された高屈折率層間に、高屈折率材料よりも低屈折率の材料からなる低屈折率層が介在されてなる多層膜構造を有し、各電極は、周辺領域において、ギャップ側の高屈折率膜に不純物が導入されてなる部分をそれぞれ含んでいる。そして、反射ミラーは、同一のミラー構造体におけるミラーと同一の多層膜構造とされ、任意位置において反射ミラーと対向する他方のミラー構造体の部分は、低屈折率層が介在されず、多層に配置された高屈折率層が互いに接してなる構造とすることが好ましい。
このように、反射ミラーの構造を、同一のミラー構造体におけるミラーと同一の光学多層膜構造とすると、ミラー形成と同一のプロセスで反射ミラーを形成することができる。したがって、製造プロセスを特に簡素化し、製造コストを低減することができる。また、反射ミラーが光学多層膜構造であるので、反射ミラーの形成により、金属汚染が生じることもない。
具体的には、請求項3に記載のように、反射ミラーが、第1ミラー構造体及び第2ミラー構造体の両方にそれぞれ形成され、第1ミラー構造体に形成された反射ミラーと、第2ミラー構造体に形成された反射ミラーとが、垂直方向において異なる位置に形成された構造を採用することが好ましい。
これによれば、1つのミラー構造体において、周辺領域の一部のみに反射ミラーを設ける構造でありながら、反射ミラー、他方のミラー構造体の反射ミラーでない部分、及びギャップからなる共振器、すなわち分光帯域の波長の光を高反射する共振器を、周辺領域全域においてより密に(好ましくは隙間無く)設けることができる。
特に請求項4に記載のように、低屈折率層が空気層であり、中央領域では、高屈折率層が互い接してなる接触部分により、各ミラーが複数個に分割されるとともに互いに連結され、周辺領域では、各ミラー構造体において、高屈折率層が互い接してなる接触部分により、反射ミラーが複数個に分割されるとともに互いに連結され、一方のミラー構造体の反射ミラーが、他方のミラー構造体の接触部分と対向する構造とすることが好ましい。
このように、低屈折率層として空気層(屈折率1)を採用すると、高屈折率層の屈折率nHと低屈折率層の屈折率nLとのn比(nH/nL)を大きくしてミラー自身の高反射な帯域を広げるとともに、ファブリペロー干渉計の分光帯域を広帯域とすることができる。反面、空気層を有するミラー(エアミラー)は機械的強度が低く、空気層上の高屈折率層に反りなどが生じる恐れがある。本発明では、部分的に高屈折率層同士が接する接触部分を設けてミラーを複数の領域に分割(細分化)しているため、エアミラーを採用しながらも、機械的強度を確保することができる。
また、高屈折率層同士が接する接触部分には、他方のミラー構造体の反射ミラーが対向しているので、周辺領域では、分光帯域の光を反射することができる。
また、反射ミラーも接触部分により細分化しているので、周辺領域においても、機械的強度を確保することができる。
また、請求項5に記載のように、低屈折率層が空気層であり、静電気力によって変位しない第1ミラー構造体における中央領域では、該領域全域にわたって1つの第1ミラーが形成され、静電気力によって変位する第2ミラー構造体における中央領域では、高屈折率層が互い接してなる接触部分により、第2ミラーが複数個に分割されるとともに互いに連結され、周辺領域では、各ミラー構造体において、高屈折率層が互い接してなる接触部分により、反射ミラーが複数個に分割されるとともに互いに連結され、一方のミラー構造体の反射ミラーが、他方のミラー構造体の接触部分と対向する構造としても良い。
このように、基板に固定される第1ミラー構造体の第1ミラーを、接触部分によって細分化されず、中央領域全域にわたって形成された1つのエアミラーとすると、中央領域における第2ミラー構造体の接触部分には、第1ミラー構造体の第1ミラーが対向することとなる。したがって、中央領域において、第2ミラー構造体側が接触部分である部分については、周辺領域同様、分光帯域の波長の光を反射させることができる。これにより、中央領域において、両ミラー構造体の接触部分が対向する構造に比べて、透過波長の半値巾(FWHM)を小さくすることができる。
また、基板に固定される第1ミラー構造体の第1ミラーを、接触部分によって細分化されず、中央領域全域にわたって形成された1つのエアミラーとすると、変位する側の第2ミラー構造体の第2ミラーを1つのエアミラーとする構造に比べて、静電気力が作用した際の、空気層上部の高屈折率層と空気層下部の高屈折率層との対向距離のばらつきを小さくすることができる。これによっても、透過波長の半値巾(FWHM)を小さくすることができる。
一方、請求項6に記載のように、反射ミラーは、周辺領域の全域にわたり、第1ミラー構造体及び第2ミラー構造体のうちの一方側のみに形成された構造を採用することもできる。これによれば、各ミラー構造体に反射ミラーがそれぞれ形成された構造に比べて、構造を簡素化することができる。
請求項7に記載のように、低屈折率層が空気層であり、中央領域では、高屈折率層が互い接してなる接触部分により、各ミラーが複数個に分割されるとともに互いに連結され、周辺領域では、高屈折率層が互い接してなる接触部分により、反射ミラーが複数個に分割された構造を採用しても良い。これによれば、請求項4に記載の発明の効果と同等の効果を期待することができる。
また、請求項8に記載のように、低屈折率層が空気層であり、第1ミラー構造体における中央領域では、該領域全域にわたって1つの第1ミラーが形成され、第2ミラー構造体における中央領域では、高屈折率層が互い接してなる接触部分により、第2ミラーが複数個に分割されるとともに互いに連結され、周辺領域では、高屈折率層が互い接してなる接触部分により、反射ミラーが複数個に分割された構造としても良い。これによれば、請求項5に記載の発明の効果と同等の効果を期待することができる。
その際、請求項9に記載のように、反射ミラーが、静電気力によって変位する側の第2ミラー構造体のみに形成された構造とすることが好ましい。
これによれば、第2ミラー構造体におけるギャップ上の部位全域(メンブレン全域)に、第2ミラーと反射ミラーとが形成された構造となる。すなわち、中央領域において周辺領域との境界付近に位置する第2ミラーには、周辺領域において中央領域との境界付近に位置する同一構造の反射ミラーが位置する。したがって、周辺領域に反射ミラーが存在しない構造(第1ミラー構造体側に反射ミラーが形成された構造)に比べて、第2ミラーの形成された中央領域と周辺領域との境界における中立軸の変化が小さく、境界部分に応力が集中しにくい構造となっている。これにより、例えば空気層上に位置する高屈折率層の部分の自重による応力や、第2ミラー構造体の膜応力が作用しても、中央領域において周辺領域との境界付近に位置する第2ミラーの、応力による変形を抑制することができる。そして、これにより、透過波長の半値巾(FWHM)を小さくすることができる。なお、静電気力によって変位しない側の第1ミラー構造体では、基板に固定されているため、反射ミラーの有無による差は殆ど見られない。
なお、請求項10に記載のように、第1ミラー構造体及び第2ミラー構造体において、高屈折率層が、シリコン及びゲルマニウムの少なくとも一方を含む半導体薄膜からなる構成とすると良い。
シリコン(屈折率3.45)及びゲルマニウム(屈折率4)の少なくとも一方を含む半導体薄膜は、波長2〜10μm程度の赤外光に対して透明であるので、赤外線ガス検出器の波長選択フィルターとして好適となる。また、高屈折率層の屈折率nHと低屈折率層の屈折率nLとのn比(nH/nL)を大きくして、ミラー自身の高反射な帯域を広げるとともに、ファブリペロー干渉計の分光帯域を広帯域とすることができる。
先ず、本発明の実施形態について説明する前に、本発明者が本発明を創作するに至った経緯を説明する。図1は、エアミラーを有する従来のファブリペロー干渉計の概略構成を示す平面図である。図2は、図1のII−II線に沿う断面図である。図3の(a)は波長と中央領域C1における透過率との関係を示す図、(b)はミラー単体での、波長と反射率との関係を示す図である。図4は、波長と周辺領域P1における反射率との関係を示す図である。
なお、図1及び図2に示すファブリペロー干渉計は、上記した本出願人による特許文献1(特開2008−134388号公報)に示されるものと基本構造が同じであるので、以下において詳細な説明は割愛する。また、ギャップに相当する空隙の変化方向(電圧を印加した際の第2ミラーM2の変位方向)、換言すれば基板10に対する第1ミラー構造体30の積層方向、を単に変位方向と示す。また、変位方向に垂直な方向を単に垂直方向と示す。また、平面形状とは、特に断りのない限り、上記垂直方向に沿う形状を示すものとする。
図1及び図2に示されるファブリペロー干渉計100は、MEMS技術を利用して形成されており、基板10としての例えば単結晶シリコンからなる平面矩形状の半導体基板と、基板10の一面上に配置された第1ミラー構造体30と、空隙(以下、エアギャップAGと示す)を介して第1ミラー構造体30上に対向配置され、エアギャップAGを架橋する部位がメンブレンMEMとされた第2ミラー構造体70と、を備えている。なお、図1及び図2に示されるファブリペロー干渉計100では、メンブレンMEM、換言すれば第1ミラー構造体30と第2ミラー構造体70とのエアギャップAGを介した対向部位、が平面円形状となっている。なお、以下においては、一方のミラー構造体30(70)における他方のミラー構造体70(30)との対向部位を、単にミラー構造体30(70)の対向部位と示すものとする。
第1ミラー構造体30は、例えばポリシリコンからなり、基板10の一面全面に絶縁膜11を介して積層された高屈折率下層31と、例えばポリシリコンからなり、該高屈折率下層31上に積層された高屈折率上層32とを含んでいる。そして、変位方向において、高屈折率下層31と高屈折率上層32との間に低屈折率層としての空気層33が介在された部位が、実際にミラーとして機能する光学多層膜構造の第1ミラーM1(エアミラー)となっている。この第1ミラーM1は、第1ミラー構造体30の対向部位のうち、中央領域C1に形成されている。また、中央領域C1において、第1ミラーM1は、高屈折率下層31に高屈折率上層32の一部位が接してなる接触部J1により複数個に分割(細分化)されている。すなわち、複数個の第1ミラーM1は、上記した接触部J1によって連結されて一体化している。なお、図2に示す符号34は、空気層33を形成するために犠牲層をエッチングするための貫通孔である。
一方、第1ミラー構造体30の対向部位のうち、中央領域C1を取り囲む周辺領域P1は、その全域が、高屈折率下層31に高屈折率上層32が接してなる接触部J1となっている。また、第1ミラー構造体30のうち、対向部位よりも外側の領域(外周領域)でも高屈折率下層31に高屈折率上層32が接しており、この外周領域における高屈折率上層32上の一部には、パッド35が形成されている。第1ミラー構造体30を構成する高屈折率層31,32のうちの少なくとも高屈折率上層32において、第1ミラーM1の形成部分を除く部分であって少なくとも周辺領域P1及び外周領域には、リンやボロンなどの不純物を導入してなる、図示しない電極配線が形成されている。そして、上記したパッド35は、この電極配線と電気的に接続されており、これらパッド35及び電極配線が、第1ミラー構造体30において、所定電位が印加される第1電極をなしている。なお、第1ミラーM1の形成部分に不純物を導入しないのは、不純物による光の吸収を避けるためである。
第2ミラー構造体70は、例えばポリシリコンからなり、エアギャップAGを架橋して支持体50上に配置された高屈折率下層71と、例えばポリシリコンからなり、高屈折率下層71上に積層された高屈折率上層72とを含んでいる。そして、変位方向において、高屈折率下層71と高屈折率上層72との間に、低屈折率層としての空気層73が介在された部位が、実際にミラーとして機能する光学多層膜構造の第2ミラーM2(エアミラー)となっている。この第2ミラーM2は、第2ミラー構造体70の対向部位のうち、中央領域C1に形成されている。また、中央領域C1において、第2ミラーM2は、高屈折率下層71に高屈折率上層72の一部位が接してなる接触部J2により複数個に分割(細分化)されている。すなわち、複数個の第2ミラーM2は、接触部J2によって連結されて一体化している。そして、中央領域C1では、ミラーM1,M2と接触部J1,J2のレイアウトが一致し、ミラーM1,M2同士が対向している。
このように、中央領域C1では、第1ミラー構造体30に第1ミラーM1及び接触部J1が形成され、第2ミラー構造体70に第2ミラーM2及び接触部J2が形成されており、ファブリペロー干渉計100のうち、中央領域C1が、エアギャップAGに応じて光を選択的に透過させる分光領域となっている。なお、図1及び図2に示す符号74は、空気層73を形成するために犠牲層をエッチングするための貫通孔である。
一方、第2ミラー構造体70の対向部位のうち、中央領域C1を取り囲む周辺領域P1では、エアギャップAGなどをエッチングにより形成するための貫通孔76の部分を除いて、高屈折率下層71に高屈折率上層72が接し、接触部J2となっている。なお、上記したメンブレンMEMは、第2ミラー構造体70において、中央領域C1と周辺領域P1の部分により構成されている。
また、第2ミラー構造体70のうち、対向部位よりも外側の領域(外周領域)でも、高屈折率下層71に高屈折率上層72が接しており、この外周領域における高屈折率上層72上の一部には、パッド75が形成されている。また、外周領域の一部には、第1ミラー構造体30のパッド35の形成領域に対応して支持体50とともに貫通形成された開口部51が設けられている。また、第2ミラー構造体70を構成する高屈折率層71,72において、第2ミラーM2の形成部分を除く部分であって少なくとも周辺領域P1及び外周領域には、リンやボロンなどの不純物を導入してなる、図示しない電極配線が形成されている。そして、上記したパッド75は、この電極配線と電気的に接続されており、これらパッド75及び電極配線が、第2ミラー構造体70において、所定電位が印加される第2電極をなしている。なお、第2ミラーM2の形成部分に不純物を導入しないのは、不純物による光の吸収を避けるためである。
このような光学多層膜構造のミラーM1,M2を用いたファブリペロー干渉計100では、図3(a)に示す、ファブリペロー干渉計100の中央領域C1において、光を選択的に透過できる波長の帯域(分光帯域)と、図3(b)に示す、ミラーM1,M2単体での高反射な帯域(反射率が60%以上の波長域)とがほぼ一致する。すなわち、ファブリペロー干渉計100の分光帯域は、ミラーM1,M2単体の反射帯域に対応している。
また、対をなすミラー構造体30,70のうち、第2ミラー構造体70のメンブレンMEMのみが、静電気力により変位可能な構造となっている。そして、第1ミラー構造体30側の第1電極と第2ミラー構造体70側の第2電極の間に印加された電圧に基づいて生じる静電気力により、メンブレンMEMが変位してエアギャップAGが変化する。これにより、図3(a)に示すように、第1ミラーM1と第2ミラーM2との対向距離(ミラー間のエアギャップAGの間隔)に応じた、分光帯域内の波長λ0の光を選択的に透過させるようになっている。
本発明者は、このようなファブリペロー干渉計100についてさらに検討を進めた。その結果、第1ミラー構造体30及び第2ミラー構造体70の周辺領域P1、すなわち、高屈折率層31,32が接してなる接触部J1と、高屈折率層71,72が接してなる接触部J2とが、エアギャップAGを介して対向配置された部分(共振器)では、図4に示すように、上記した分光帯域の一部において、その反射率が、高反射の基準となる60%を下回り、且つ、波長依存性が顕著になることが明らかとなった。このように、周辺領域P1の反射率が低いと、ファブリペロー干渉計100において、周辺領域P1を透過した光が少なからず影響し、全体としてファブリペロー干渉計100の透過波長の半値巾(FWHM)が大きくなってしまう。本発明は、このような検討に基づくものであり、以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図5は、第1実施形態に係るファブリペロー干渉計の概略構成を示す断面図であり、上記した図2に対応している。図6は、波長と周辺領域P1における反射率との関係を示す図である。図6においては、実線が本実施形態に係るファブリペロー干渉計、破線は比較例としての従来のファブリペロー干渉計(図4と同値)を示している。なお、以下においては、上記図1及び図2に示した要素と同一の要素には、同一の符号を付与するものとする。
図5に示すように、本実施形態に係るファブリペロー干渉計100は、図1に示したファブリペロー干渉計100と基本構造が同じであり、大きく異なる点は、第1ミラー構造体30における周辺領域P1の全域に反射ミラーRM1が形成されている点である。なお、「周辺領域の全域に形成されている」とは、垂直方向において、「周辺領域の全ての領域に隙間なく形成されている」状態がより好ましく、「周辺領域の全域に分散して位置し、大部分を占める」、すなわち「周辺領域のほぼ全域に形成されている」状態も含まれる。
すなわち、本実施形態に係るファブリペロー干渉計100も、基板10、第1ミラー構造体30、支持体50を介して第1ミラー構造体30上に配置された第2ミラー構造体70、を備えている。そして、第1ミラー構造体30側の第1電極(パッド35を含む)と第2ミラー構造体70側の第2電極(パッド75を含む)との間に印加する電圧に基づいて生じる静電気力により、第2ミラー構造体70のメンブレンMEMが変位し、エアギャップAGが変化するように構成されている。
本実施形態でも、基板10として、例えば単結晶シリコンからなる半導体基板を採用しており、この基板10の一面上に、第1ミラー構造体30が配置(固定)されている。第1ミラー構造体30は、空気よりも屈折率の高い材料、例えばシリコン(屈折率3.45)及びゲルマニウム(屈折率4)の少なくとも一方を含む半導体薄膜からなり、基板10の一面全面に絶縁膜11を介して積層された高屈折率下層31と、該高屈折率下層31と同じくシリコンなどの高屈折率材料からなり、高屈折率下層31上に積層された高屈折率上層32とを有している。このような半導体薄膜は、波長2〜10μm程度の赤外光に対して透明であるので、赤外線ガス検出器の波長選択フィルターに好適である。本実施形態では、高屈折率層31,32として、ともにポリシリコンを採用している。
第1ミラー構造体30における平面円形状の対向部位のうち、中央領域C1には、変位方向において、高屈折率下層31と高屈折率上層32との間に低屈折率層としての空気層33が介在されてなる光学多層膜構造の第1ミラーM1が形成されている。また、中央領域C1において、第1ミラーM1は、高屈折率下層31に高屈折率上層32の一部位が接してなる接触部J1により複数個に分割(細分化)されており、各第1ミラーM1は上記接触部J1によって連結されている。
このように、低屈折率層として空気層33(屈折率1)を採用すると、上記した高屈折率層の屈折率nHと低屈折率層の屈折率nLとのn比(nH/nL)を大きくして、ミラー単体での高反射な帯域(反射帯域)を広げるとともに、ファブリペロー干渉計100の分光帯域を広帯域とすることができる。また、部分的に高屈折率層31,32同士が接する接触部J1を設けて第1ミラーM1を複数の領域に分割(細分化)しているため、空気層33を有するエアミラーを採用しながらも、機械的強度を確保することができる。
また、中央領域C1における第1ミラーM1及び接触部J1のレイアウトは、後述する第2ミラー構造体70の中央領域C1における第2ミラーM2及び接触部J2のレイアウトと一致している。第1ミラーM1を構成する空気層33は、高屈折率上層32により、上面が覆われるとともに側面が囲まれた構造となっている。高屈折率上層32のうち、空気層33の側面を囲む側壁部32aは、垂直方向における空気層33の巾が、変位方向において高屈折率下層31に近づくほど広くなる態様の傾斜を有している。詳しくは、その傾斜角度が略45°となっている。そして、第1ミラーM1のうち、高屈折率上層32の空気層33上面を覆う部位32b(高屈折率下層31に平行な部位)に対応する部分が、主にミラーとして機能する部位となっている。
また、中央領域C1において、接触部J1により分割された各第1ミラーM1の平面形状、換言すれば空気層33の上面形状は、図1に例示した第2ミラー構造体70の第2ミラーM2同様、六角形となっている。すなわち、空気層33が六角錘台形状となっている。そして、中央領域C1における接触部J1は、ハニカム状となっている。
さらに、図5に示すように、第1ミラー構造体30の対向部位のうち、中央領域C1を取り囲む周辺領域P1の全域には、分光帯域の波長の光に対して高反射な特性(反射率60%以上)を示す反射ミラーRM1が形成されている。この反射ミラーRM1としては、第1ミラー構造体30における第1ミラーM1と同一の反射率及び反射帯域を有する構成であれば採用することができる。反射ミラーRM1の形成範囲である周辺領域P1の全域とは、上記した通りである。したがって、垂直方向において、周辺領域P1の全ての領域をカバーするように、1つの大きなミラーを採用しても良い。
本実施形態では、反射ミラーRM1として、第1ミラーM1と同一の光学多層膜構造、すなわち、高屈折率層31,32間に空気層33が介在されてなる平面六角形のエアミラーを採用している。そして、反射ミラーRM1も、部分的に高屈折率層31,32同士が接する接触部J1により、複数個に分割(細分化)されている。したがって、反射ミラーRM1としてエアミラー構造を採用しながらも、第1ミラー構造体30において周辺領域P1の機械的強度が確保されている。また、図5に示す符号36は、周辺領域P1に形成された反射ミラーRM1において、高屈折率上層32の空気層33上面を覆う部位32bの一部に形成された貫通孔であり、この貫通孔36も、貫通孔34同様、空気層33を形成すべく犠牲層(例えば二酸化シリコン)をエッチングするためのものである。
特に本実施形態では、反射ミラーRM1が、平面形状だけでなく、変位方向及び垂直方向の大きさも第1ミラーM1とほぼ等しく、図5に示すように、垂直方向のうちの一方向において、ミラーM1,RM1が所定ピッチをもって(所定巾の接触部J1を介して)繰り返し形成されている。隣接するミラー(第1ミラーM1間、第1ミラーM1と反射ミラーRM1、反射ミラーRM1間)を連結する接触部J1の短手側の巾は、図1に第2ミラーM2及び接触部J2にて例示したもの同様、上記短手方向におけるミラーM1,RM1の巾に比べて十分に狭くなっている。すなわち、本実施形態では、周辺領域P1に反射ミラーRM1及び接触部J1が形成された構造を採用しながらも、実質的に、周辺領域P1のほぼ全域が反射ミラーRM1となっている。換言すれば、第1ミラー構造体30の対向部位においては、対向部位のほぼ全域を、ミラー(第1ミラーM1及び反射ミラーRM1)が占めている。
なお、第1ミラー構造体30のうち、対向部位よりも外側の領域(外周領域)でも高屈折率下層31に高屈折率上層32が接しており、この外周領域における高屈折率上層32上の一部には、Au/Cr等からなるパッド35が形成されている。また、高屈折率層31,32のうちの少なくとも高屈折率上層32において、第1ミラーM1の形成部分を除く部分であって少なくとも周辺領域P1及び外周領域には、リンやボロンなどの不純物を導入してなる、図示しない電極配線が形成されている。そして、上記したパッド35は、この電極配線と電気的に接続(オーミック接触)されており、これらパッド35及び電極配線が、第1ミラー構造体30において、所定電位が印加される第1電極をなしている。本実施形態では、周辺領域P1における高屈折率上層32全域、すなわち、周辺領域P1における反射ミラーRM1及び接触部J1に、電極配線が形成されている。なお、電極配線は、中央領域C1の接触部J1に形成されても良い。また、第1ミラーM1は、第1電極と電気的に結合された構造(同電位となる構造)としても良いし、第1電極と電気的に絶縁分離された構造(例えばpn接合分離)としても良い。なお、反射ミラーRM1については、不純物が導入されても、光の透過を抑制する方向に働くので特に問題ない。
この第1ミラー構造体30における高屈折率上層32上には、中央領域C1及び周辺領域P1を除く部位に支持体50が配置されている。この支持体50は、第1ミラー構造体30上に第2ミラー構造体70を支持するとともに、第1ミラー構造体30と第2ミラー構造体70との間に、エアギャップAGを構成するためのスペーサとしての機能を果たすものである。本実施形態では、支持体50が二酸化シリコンからなり、第2ミラー構造体70のメンブレンMEMに対応する部位が、エアギャップAGを形成すべくくり抜かれた構造となっている。また、メンブレンMEMよりも外側の部位にも、パッド35を形成するための開口部51が形成されている。
一方、第2ミラー構造体70は、図1及び図2に示した第2ミラー構造体70と同じ構造となっている。具体的には、第2ミラー構造体70も、第1ミラー構造体30同様、空気よりも屈折率の高い材料、例えばシリコン及びゲルマニウムの少なくとも一方を含む半導体薄膜からなる高屈折率下層71と、該高屈折率下層71と同じくシリコンなどの高屈折率材料からなり、高屈折率下層71上に積層された高屈折率上層72とを有している。本実施形態では、高屈折率層71,72として、ともにポリシリコンを採用している。
第2ミラー構造体70における平面円形状の対向部位のうち、中央領域C1には、変位方向において、高屈折率下層71と高屈折率上層72との間に低屈折率層としての空気層73が介在されてなる光学多層膜構造の第2ミラーM2が形成されている。また、中央領域C1において、第2ミラーM2は、高屈折率下層71に高屈折率上層72が接してなる接触部J2により複数個に分割(細分化)されており、各第2ミラーM2は上記接触部J2によって連結されている。これら第2ミラーM2及び接触部J2のレイアウトは、上記したように、第1ミラー構造体30の第1ミラーM1及び接触部J1のレイアウトと一致している。すなわち、第2ミラーM2も、空気層73が、高屈折率上層72により、上面が覆われるとともに側面が囲まれた平面六角形状となっており、接触部J2がハニカム状となっている。そして、高屈折率上層72のうち、空気層73の側面を囲む側壁部72aは傾斜を有しており、第2ミラーM2のうち、空気層73上面を覆う部位72bに対応する部分が、主にミラーとして機能する部位となっている。
このように、ファブリペロー干渉計100では、中央領域C1において、エアギャップAGを介して対向配置された第1ミラーM1及び第2ミラーM2により共振器が構成され、この共振器にて共振された所定波長の光を選択的に透過するようになっている。
第2ミラー構造体70の対向部位のうち、中央領域C1を取り囲む周辺領域P1では、エアギャップAGなどをエッチングにより形成するための貫通孔76の部分を除いて、高屈折率下層71に高屈折率上層72が接し、接触部J2となっている。この周辺領域P1における接触部J2は、支持体50に支持された外周領域と中央領域C1とを連結している。このように、第2ミラー構造体70の周辺領域P1には、分光帯域の波長の光に対して高反射な特性(反射率60%以上)を示す反射ミラーが形成されておらず、全域が接触部J2となっている。
第2ミラー構造体70のうち、対向部位(すなわちメンブレンMEM)よりも外側の外周領域では、高屈折率下層71に高屈折率上層72が接しており、この外周領域における高屈折率上層72上の一部には、Au/Cr等からなるパッド75が形成されている。また、外周領域の一部には、支持体50に連通して開口する開口部51が設けられている。また、第2ミラー構造体70を構成する高屈折率層71,72において、第2ミラーM2の形成部分を除く部分であって少なくとも周辺領域P1及び外周領域には、リンやボロンなどの不純物を導入してなる、図示しない電極配線が形成されている。そして、上記したパッド75は、この電極配線と電気的に接続(オーミック接触)されており、これらパッド75及び電極配線が、第2ミラー構造体70において、所定電位が印加される第2電極をなしている。本実施形態では、周辺領域P1における高屈折率下層71全域に、電極配線が形成されている。なお、電極配線は、中央領域C1の接触部J2に形成されても良い。また、第2ミラーM2は、第2電極と電気的に結合された構造(同電位となる構造)としても良いし、第2電極と電気的に絶縁分離された構造(例えばpn接合分離)としても良い。
次に、本実施形態に係るファブリペロー干渉計100の特徴部分の効果について説明する。
先ず、第1ミラー構造体30の周辺領域P1には、その全域に分光帯域の波長の光に対して高反射な特性を示す反射ミラーRM1が形成されている。一方、第2ミラー構造体70の周辺領域P1には、分光帯域の波長の光に対して高反射な特性を示す反射ミラーが形成されず、その全域が接触部J2となっている。すなわち、周辺領域P1では、垂直方向の任意位置において、第1ミラー構造体30のみに、同一のミラー構造体30における第1ミラーM1と同一の光学多層膜構造を有する反射ミラーRM1が形成されている。そして、反射ミラーRM1は、高屈折率層71,72同士が接してなる接触部J2と対向しており、これにより、周辺領域P1の全域が、分光帯域の波長の光を反射する反射領域となっている。
このように、周辺領域P1では、第1ミラー構造体30のみ、且つ、周辺領域P1全域に、第1ミラーM1と同一の光学多層膜構造を有する反射ミラーRM1が設けられている。上記図3(a),(b)に示したように、ミラーM1,M2は、単体でファブリペロー干渉計100の中央領域C1の分光帯域と同等な波長範囲の反射帯域を有するため、反射ミラーM1も、分光帯域と同等な波長範囲の反射帯域を有する。そして、周辺領域P1において、エアギャップAGを介して対向配置された反射ミラーRM1及び接触部J2による共振器は、分光帯域の波長の光を干渉によって弱め合い、結果、高反射する構造となっている。この点については、図6に示すように、本発明者によって確認されている。図6に実線で示す本実施形態の周辺領域P1の反射率は、分光帯域の全域で60%以上、ほぼ全域で80%以上となっており、破線で示す従来構造の周辺領域P1の反射率よりも、ほぼ全域で高反射となっている。
以上から、本実施形態に係るファブリペロー干渉計100は、光の透過範囲を制限する金属層を基板10に設けることなく、周辺領域P1からの、中央領域C1とは異なる波長の光の透過を抑制することができる。すなわち、透過波長の半値巾(FWHM)の小さなファブリペロー干渉計100となっている。
また、反射ミラーRM1を第1ミラー構造体30のみに設けるので、ファブリペロー干渉計100の構造を簡素化することができる。
また、本実施形態では、基板10上に配置されるミラー構造体30,70の上記共振器により、周辺領域P1での不要な光の透過を抑制するのに対し、従来では、基板10に形成された金属層を採用している。したがって、光の透過範囲を制限する構造でありながら、従来の金属層よりも後工程で共振器を形成するため、従来よりも製造プロセスの制約を受けにくい構造となっている。
特に本実施形態では、反射ミラーRM1の構造を、第1ミラー構造体30における第1ミラーM1と同一の光学多層膜構造としているので、第1ミラーM1形成と同一のプロセス(換言すれば、第1ミラーM1と同一のタイミング)で反射ミラーRM1を形成することができる。したがって、製造プロセスを特に簡素化し、製造コストを低減することができる。空気層33は、犠牲層をエッチングしてなるが、この犠牲層のパターニングの際のマスクを、反射ミラーRM1の分、変更するだけで良い。したがって、分光領域としての中央領域C1に対して、反射領域としての周辺領域P1を位置精度よく形成することができる。また、反射ミラーRM1が光学多層膜構造であるので、反射ミラーRM1の形成により、金属汚染が生じることもない。
なお、上記したファブリペロー干渉計100の製造方法については、上記した本出願人による特許文献1(特開2008−134388号公報)に示された製造方法と基本的に同じであるため、その記載を省略する。異なる点は、上記したように、エッチングにより除去されて空気層33となる犠牲層パターニング用のマスクパターンである。
また、本実施形態では、反射ミラーRM1を、同じミラー構造体30の第1ミラーM1と同じ光学多層膜構造であって、且つ、大きさも同じとし、垂直方向のうちの一方向において、ミラーM1,RM1が所定巾の接触部J1を介して繰り返し形成される例を示した。しかしながら、反射ミラーRM1を、第1ミラーM1に対して、平面形状や垂直方向の長さの異なるものとしても良い。また、中央領域C1と周辺領域P1とで接触部J1の巾を異なるものとしても良い。さらには、周辺領域P1内で、接触部J1の巾を部分的に異なるものとしても良い。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を、図7に基づいて説明する。図7は、第2実施形態に係るファブリペロー干渉計の概略構成を示す断面図であり、第1実施形態に示した図5に対応している。
図7に示すファブリペロー干渉計100は、周辺領域P1の構造が、第1実施形態に示したファブリペロー干渉計100と逆の構造となっている。すなわち、本実施形態では、第2ミラー構造体70の周辺領域P1全域に、分光帯域の波長の光に対して高反射となる特性を示す反射ミラーRM2が形成されている。一方、第1ミラー構造体30の周辺領域P1には、上記した反射ミラーRM1が形成されず、高屈折率層31,32同士が接してなる接触部J1が形成されている。また、反射ミラーRM2を、同じミラー構造体70の第2ミラーM2と同じ光学多層膜構造(エアミラー)であって、且つ、大きさも同じとしており、垂直方向のうちの一方向において、ミラーM2,RM2は、所定巾の接触部J2を介して繰り返し形成されている。なお、図7に示す符号77は、周辺領域P1に形成された反射ミラーRM2において、高屈折率上層72の空気層73上面を覆う部位72bの一部に形成された貫通孔であり、この貫通孔77も、貫通孔74同様、空気層73を形成すべく犠牲層(例えば二酸化シリコン)をエッチングするためのものである。
このような構造のファブリペロー干渉計100についても、第1実施形態に示したファブリペロー干渉計100と同様の効果を期待することができる。
また、本実施形態では、静電気力によって変位する側の第2ミラー構造体70において、ミラーM2,RM2が、所定巾の接触部J2を介して繰り返し形成されている。すなわち、中央領域C1において周辺領域P1との境界付近に位置する第2ミラーM2の近傍には、周辺領域P1において中央領域C1との境界付近に形成された同一構造の反射ミラーRM1が位置している。したがって、第2ミラー構造体70の周辺領域P1に反射ミラーRM2が存在しない構造(第1実施形態に示した構造)に比べて、第2ミラーM2の形成された中央領域C1と周辺領域P1との境界における中立軸の変化が小さく、境界部分に応力が集中しにくい構造となっている。これにより、例えば空気層73上に位置する高屈折率上層72の部分72bの自重による応力や、第2ミラー構造体70の膜応力が作用しても、中央領域C1において周辺領域P1との境界付近に位置する第2ミラーM2の、応力による変形を抑制することができる。結果、透過波長の半値巾(FWHM)を小さくすることができる。なお、静電気力によって変位しない側の第1ミラー構造体30では、該構造体30がメンブレンMEMを有しておらず、基板10に固定されているため、反射ミラーRM1の有無による差は殆ど見られない。
なお、上記したファブリペロー干渉計100の製造方法も、上記した本出願人による特許文献1(特開2008−134388号公報)に示された製造方法と基本的に同じであるため、その記載を省略する。異なる点は、エッチングにより除去されて空気層73となる犠牲層パターニング用のマスクパターンである。
また、第2ミラー構造体70に反射ミラーRM2が形成される構成は、上記例に限定されるものではなく、反射ミラーRM2を、第2ミラーM2に対して、平面形状や垂直方向の長さの異なるものとしても良い。また、中央領域C1と周辺領域P1とで接触部J2の巾を異なるものとしても良い。さらには、周辺領域P1内で、接触部J2の巾を部分的に異なるものとしても良い。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態を、図8及び図9に基づいて説明する。図8は、第3実施形態に係るファブリペロー干渉計の概略構成を示す断面図であり、第1実施形態に示した図5に対応している。図9は、周辺領域P1における光の反射を示す図であり、(a)は比較例としての第1実施形態に示した構造、(b)は本実施形態に示す構造にかかる図である。
図8に示すファブリペロー干渉計100では、分光帯域の波長の光に対して高反射となる特性を示す反射ミラーRM1が第1ミラー構造体30の周辺領域P1に形成され、分光帯域の波長の光に対して高反射となる特性を示す反射ミラーRM2が第2ミラー構造体70の周辺領域P1に形成されている。すなわち、周辺領域P1において、両ミラー構造体30,70に反射ミラーRM1,RM2が形成されている。
また、上記実施形態同様、各反射ミラーRM1,RM2が、同一のミラー構造体30,70におけるミラーM1,M2と同一の光学多層膜構造となっている。そして、第1ミラー構造体30に形成された反射ミラーRM1と、第2ミラー構造体70に形成された反射ミラーRM2とが、垂直方向において異なる位置に形成されている。詳しくは、第1ミラー構造体30の第1電極と第2ミラー構造体70の第2電極との間に電圧が印加されない状態で、図8に示すように、第1ミラー構造体30の反射ミラーRM1が、第2ミラー構造体70の接触部J2と対向し、第2ミラー構造体70の反射ミラーRM2が、第1ミラー構造体30の接触部J1と対向している。したがって、周辺領域P1において、隣り合う反射ミラーRM1,RM2を連結する接触部J1,J2の巾は、上記実施形態に示す周辺領域P1の接触部J1,J2の巾よりも広くなっている。
ここで、「一方のミラー構造体における反射ミラーが、他方のミラー構造体の接触部と対向する」とは、少なくとも各反射ミラーRM1,RM2において、空気層33,73の上面を覆う部位32b,72b同士が重ならない位置関係を示す。好ましくは側壁部32a,72aも含めた反射ミラーRM1,RM2全体で、互いに重ならないような位置関係とすると良い。図8に示す例では、二点鎖線で示すように、垂直方向の一方向において、反射ミラーRM1と、隣り合う反射ミラーRM2を連結する接触部J2の巾とがほぼ一致している。同様に、反射ミラーRM2と、隣り合う反射ミラーRM1を連結する接触部J1の巾とがほぼ一致している。
このような構成を採用することにより、図8に示すファブリペロー干渉計100は、周辺領域P1における垂直方向の任意位置において、第1ミラー構造体30及び第2ミラー構造体70の一方のみに反射ミラーRM1,RM2が形成され、且つ、反射ミラーRM1と反射ミラーRM2を合わせて、周辺領域P1全域に反射ミラーRM1,RM2が形成(配置)された構造となっている。すなわち、周辺領域P1の全域が、分光帯域の波長の光に対して高反射な特性を示す反射領域となっている。
したがって、本実施形態に係るファブリペロー干渉計100についても、第1実施形態に示したファブリペロー干渉計100と同様の効果を期待することができる。
また、上記した各実施形態では、図9(a)に示すように、一方のミラー構造体のみに反射ミラー(図9(a)では第1ミラー構造体30に反射ミラーRM1)が形成され、反射ミラー(RM1)の構造をエアミラー構造とし、且つ、反射ミラー(RM1)を接触部(J1)にて細分化する構造を採用している。したがって、エアギャップAGを介して反射ミラー(RM1)と接触部(J1)が対向配置されてなる共振器の部分では、分光帯域の波長の光を反射できるものの、エアギャップAGを介して接触部J1,J2が対向配置されてなる共振器の部分では、少なからず光が透過してしまう。なお、図9(a)では、透過と反射を説明するために、接触部J1の巾を実際の巾よりも広く図示している。
これに対し、本実施形態では、図9(b)に示すように、両ミラー構造体30,70それぞれに、細分化されたエアミラー構造の反射ミラーRM1,RM2を形成し、且つ、一方のミラー構造体の反射ミラー(例えば第1ミラー構造体30の反射ミラーRM1)に、他方のミラー構造体の接触部(例えば第2ミラー構造体70の接触部J2)を対向させている。すなわち、図9(a)に示すファブリペロー干渉計100に比べ、エアギャップAGを介して反射ミラーRM1(RM2)と接触部J2(J1)が対向配置されてなる共振器を、周辺領域P1全域において、より密に設けている。換言すれば、周辺領域P1において、接触部J1,J2が対向する部分をより少なくしている(好ましくは無くしている)。以上により、周辺領域P1において、分光帯域の波長の光を反射させることができる部分をより増して、ファブリペロー干渉計100の透過波長の半値巾(FWHM)の増大を効果的に抑制することができる。
なお、第1実施形態に示したファブリペロー干渉計100の第1ミラー構造体30(図5参照)と第2実施形態に示したファブリペロー干渉計100の第2ミラー構造体70(図7参照)とを単に組み合わせた構造としても良い。しかしながら、この場合、僅かではあるが、周辺領域P1における中央領域C1との境界付近において、接触部J1,J2同士が対向することとなる。これに対し、図8に示す例では、第1ミラー構造体30において、中央領域C1と周辺領域P1との境界付近の第1ミラーM1及び反射ミラーRM1を一体化し、1つのエアミラーとしている。すなわち、上記ミラーは、その一部が中央領域C1に位置し、残りの部分が周辺領域P1に位置している。一方、第2ミラー構造体70では、周辺領域P1における中央領域C1との境界付近には、第1ミラーM1と反射ミラーRM1とを連結する接触部J2が存在している。このような構造を採用すると、周辺領域P1における中央領域C1との境界付近においても、反射ミラーRM1と接触部J2とを対向させることができる。なお、図8では、第1ミラー構造体30にて、中央領域C1と周辺領域P1との境界付近の第1ミラーM1及び反射ミラーRM1を一体化する例を示したが、ミラー構造体30,70の一方において、ミラーと反射ミラーとを一体化すれば良いので、中央領域C1と周辺領域P1との境界付近の第2ミラーM2及び反射ミラーRM2を一体化し、この反射ミラーRM2に、第1ミラー構造体30の接触部J1を対向させても良い。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態を、図10及び図11に基づいて説明する。図10は、第4実施形態に係るファブリペロー干渉計の概略構成を示す断面図である。図11は、中央領域C1における光の透過を示す図であり、(a)は第3実施形態に示した構造、(b)は本実施形態に示す構造にかかる図である。
図10に示すファブリペロー干渉計100は、第3実施形態に示した図8とほぼ同じ構造となっており、異なる点は、静電気力によって変位しない第1ミラー構造体30の中央領域C1に、該領域C1全域にわたって1つの第1ミラーM1が形成されている点である。また、中央領域C1に形成された1つの第1ミラーM1は、第3実施形態同様、周辺領域P1における中央領域C1との境界付近に位置する反射ミラーRM1と一体化されている。このようなファブリペロー干渉計100についても、第3実施形態に示したファブリペロー干渉計100と同様の効果を期待することができる。
また、変位する側の第2ミラー構造体70の第2ミラーM2を1つのエアミラーとする構造とすると、静電気力が作用した際に、第2ミラー構造体70のメンブレンMEMが撓むため、1つの第2ミラーM2内において、高屈折率上層72のうちの空気層73の上面を覆う部位72bと高屈折率下層71との対向距離にばらつきが生じてしまう。これに対し、図10に示す例では、基板10に固定された第1ミラー構造体30の第1ミラーM1が、接触部J1によって細分化されず、中央領域C1全域にわたって形成された1つのエアミラーとなっている。したがって、静電気力が作用しても変形しないので、高屈折率上層32のうちの空気層33の上面を覆う部位32bと高屈折率下層31との対向距離のばらつきを小さい。これによっても、透過波長の半値巾(FWHM)を小さくすることができる。
また、第3実施形態では、図11(a)に示すように、中央領域C1において、各ミラーM1,M2が対向しており、エアギャップAGを介してミラーM1,M2が対向配置されてなる共振器の部分から透過される波長λ1の光が、中央領域C1、ひいてはファブリペロー干渉計100から主として透過される光となっている。しかしながら、ミラーM1,M2をそれぞれ細分化する接触部J1,J2も互いに対向しているため、エアギャップAGを介して接触部J1,J2が対向配置されてなる共振器の部分から、波長λ1とは異なる波長λ2の光も透過されることとなる。この波長λ2の光は、波長λ1の光よりも強度は低いものの、ファブリペロー干渉計100の透過光として少なからず影響する。
これに対し、本実施形態では、図11(b)に示すように、基板10に固定される第1ミラー構造体30の第1ミラーM1を接触部J1によって細分化せず、中央領域C1全域にわたって形成された1つのエアミラーとしている。これにより、中央領域C1では、各ミラーM1,M2が対向してなる共振器の部分と、第1ミラーM1と接触部J2が対向してなる共振器の部分とが存在している。第1ミラーM1と接触部J2が対向してなる共振器の部分では、上記実施形態で示した周辺領域P1同様、分光帯域の波長の光を反射させることができるので、これにより、中央領域C1において、透過波長の半値巾(FWHM)をより小さくすることができる。
なお、第1ミラー構造体30の第1ミラーM1を1つとする構造については、ミラー構造体30,70の一方の周辺領域P1のみに反射ミラーRM1,RM2を設ける構造にも適用することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
本実施形態では、各ミラーM1,M2,RM1,RM2の平面形状が六角形である例を示した。しかしながら、上記平面形状に特に限定されるものではない。
本実施形態(第4実施形態の第1ミラーM1を除く)では、各ミラーM1,M2,RM1,RM2が接触部J1,J2により細分化されている例を示した。しかしながら、ミラーM1,M2,RM1,RM2を、それぞれ1つのミラーとしても良い。さらには、第1ミラーM1と反射ミラーRM1、第2ミラーM2と反射ミラーRM2とを、それぞれ一体化した1つのミラーとしても良い。
本実施形態では、第1ミラーM1と反射ミラーRM1が同一の光学多層膜構造とされ、第2ミラーM2と反射ミラーRM2が同一の光学多層膜構造とされる例を示した。しかしながら、反射ミラーRM1は、同一の第1ミラー構造体30における第1ミラーM1と同一の反射率及び反射帯域を有するものであれば良い。また、反射ミラーRM2は、同一の第2ミラー構造体70における第2ミラーM2と同一の反射率及び反射帯域を有するものであれば良い。すなわち、同一の光学多層膜構造に限定されるものではない。しかしながら、同一の光学多層膜構造としたほうが、製造プロセスを簡素化することができるので好ましい。
本実施形態では、基板10として、一面に絶縁膜11の形成された半導体基板の例を示した。しかしながら、基板10としては上記例に限定されるものではなく、ガラスなどの絶縁基板を採用することも可能である。その場合、絶縁膜11を不要とすることができる。
本実施形態では、各ミラーM1,M2,RM1,RM2として、高屈折率層間に低屈折率層としての空気層を介在させてなる光学多層膜構造のエアミラーの例を示した。しかしながら、ミラーの構成は上記例に限定されるものではない。低屈折率層としては、空気層33,73に代えて、シリコン酸化膜などの固体、液体、空気以外の気体、ゾル、ゲル、真空などを採用しても良い。固体、液体、ゾル、ゲルなど、高屈折率上層32,72を支持できる部材を採用する場合、特に第1実施形態及び第2実施形態のように、一方のミラー構造体のみに反射ミラーを設ける構造において、周辺領域P1全域をカバーする1つの反射ミラーを形成しやすくなる。
本実施形態では、光学多層膜構造の第1ミラーM1及び第2ミラーM2を構成する各膜の厚さについて特に言及しなかった。しかしながら、ミラーM1,M2を構成する高屈折率層31,32,71,72と空気層(低屈折率層)33,73の厚みを、光学長で、所定の検出対象波長に対して全て1/4程度とすると、吸収スペクトルの半値巾(FWHM)を小さくし、ひいては検出精度を向上することができる。