JP5168439B2 - 圧電素子、圧電アクチュエーター、インクジェット式記録ヘッド、およびインクジェットプリンター - Google Patents
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ペロブスカイト型酸化物からなり、かつ、マルチドメイン構造を有する圧電体膜を含む。
前記圧電体膜は、モザイク構造を有することができる。
ペロブスカイト型酸化物からなる圧電体膜を含み、
前記ペロブスカイト型酸化物において、Aサイトに優先的に位置するイオンをAサイトイオンとし、Bサイトに優先的に位置するイオンをBサイトイオンとした場合に、前記Aサイトイオンは、前記Bサイトイオンと相互置換されていることができる。
前記Aサイトイオンの価数は、前記Bサイトイオンの価数と等しいことができる。
AサイトイオンとBサイトイオンのイオン半径比は2.0〜2.5であることができる。
Aサイトイオンは鉛イオン(Pb2+)であることができる。
前記ペロブスカイト型酸化物は、Pb(Mg,Nb)O3−xPbTiO3であることができる。
前記Aサイトイオンは、鉛イオン(Pb2+)であり、
前記Bサイトイオンは、マグネシウムイオン(Mg2+)であることができる。
本実施の形態にかかる圧電体膜は、ペロブスカイト型酸化物からなる。ペロブスカイト型とは、図1(a)、図1(b)に示すような結晶構造を有するもので、図1(a)、図1(b)においてAで示す位置をAサイト、Bに示す位置をBサイト、Oで示す位置をOサイトという。本実施の形態では、Aサイトに優先的に位置するイオンをAサイトイオンといい、Bサイトに優先的に位置するイオンをBサイトイオンという。たとえばPb(Mg,Nb)O3−xPbTiO3(以下、PMN−PTとする。)において、AサイトイオンはPb2+であり、BサイトイオンはMg2+、Ti4+およびNb5+である。なお、OサイトにはO2−が位置している。圧電体膜を構成するペロブスカイト型酸化物には、単純ペロブスカイト型酸化物、複合ペロブスカイト型酸化物が含まれる。また、圧電体膜はリラクサー材料からなることもできる。
2.1.試料の作製
Bridgman法により(001)配向のPMN−xPT(x=32、37at%)単結晶を作製した。評価用電極としてAgを形成し、1kV/mmの電界で分極処理を施した。
得られた試料について、以下の評価を行った。
PMN−32PTおよびPMN−37PTの単結晶を用いて、電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)、および誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP−AES)により定量分析を行った。ICP−AESの前処理として、試料を硝酸、弗化水素酸および過塩素酸で加水分解し、希硝酸および希弗化水素酸で加温溶解してろ別した。ろ液は希硝酸で定容とした。不溶解分は硝酸および硫酸で加熱分解し、希硝酸および希弗化水素酸で加温溶解して定容とした。定量分析の結果を用いてPMN−32PTおよびPMN−37PTのBサイトを基準とした化学式を決定した。
(1−0.32)〔Pb0.99(Mg0.33Nb0.67)O3.16〕−0.32Pb0.99TiO3.16
であった。
(1−0.37)〔Pb1.00(Mg0.33Nb0.67)O3.02〕−0.37Pb1.00TiO3.02
であった。
角度分解電子チャンネリングX線分光法とは、試料に電子線を複数の入射方向から照射し、試料から発生した特性X線を利用して結晶構造を解析する手法である。この測定手法では、電子線を試料に照射して試料内で強い回折が生じると、入射した電子は試料内部で透過波や回折波の間で散乱を繰り返し、結晶の特定の部位に振幅極大をもつ幾つかのブロッホ波成分に分岐する。それぞれのブロッホ波成分の励起振幅は電子線の入射方位に依存しており、あるブロッホ波成分が強く励起されると、入射電子は結晶の特定の部位に集中してすすむチャンネリングをおこし、そこに存在する元素からの特性X線シグナルが強められる。この測定によって、特定の結晶サイトに位置する元素の種類とその量に関する情報を得ることができる。
t=(rA+rO)/√2(rB+rO)
の関係式が得られる。PMN−32PTにおいて、各サイトの格子占有率からt値を算出するとt≒0.91、一方、Pb2+とMg2+の置換がない状態では、t≒0.97となり、置換により歪むことが理解される。また、結晶の対称性低下は酸素八面体の傾きの大きさに結びつきBサイトイオン変位とTolerance factorから、置換により対称性が低下していることが確認された。
高分解能エネルギーフィルタTEM(Transmission Electron Microscopy)法によりPMN−32PTのドメイン構造解析を行った。
図9は、PMN−32PTのヒステリシス特性を示すバラフライ曲線を示す。これによると、ヒステリシスが若干現れているため、エンジニアードドメインから若干ずれていることが確認された。晶系が単斜晶の場合、正方晶の分極軸[001]と斜方晶の分極軸[101]をつなぐ直線上、あるいは正方晶の分極軸[001]と菱面体晶の分極軸[111]をつなぐ直線上に分極軸が存在することから、斜方晶あるいは菱面体晶からのずれが大きくなる程ヒステリシスが増大する。図9に示すヒステリシス特性によって、斜方晶あるいは菱面体晶に近似した単斜晶構造であることが確認された。
3.1.インクジェット式記録ヘッド
次に、圧電素子を用いたインクジェット式記録ヘッドについて説明する。図10は、圧電素子を用いたインクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す側断面図であり、図11は、このインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図である。なお、図11は、通常使用される状態とは上下逆に示したものである。
次に、本実施の形態におけるインクジェット式記録ヘッド50の動作について説明する。本実施の形態におけるヘッド50は、圧電素子駆動回路を介して所定の吐出信号が入力されていない状態、すなわち、圧電部54の下部電極4と上部電極6との間に電圧が印加されていない状態では、図12に示すように圧電体膜5に変形が生じない。このため、弾性膜55にも変形が生じず、キャビティー521には容積変化が生じない。したがって、ノズル511からインク滴は吐出されない。
次に、本実施の形態におけるインクジェット式記録ヘッド50の製造方法の一例について説明する。
本実施の形態にかかるインクジェット式記録ヘッド50によれば、前述したように、圧電部54が良好な圧電特性を有することで効率的なインクの吐出が可能となっていることから、ノズル511の高密度化などが可能となる。したがって、高密度印刷や高速印刷が可能となる。さらには、ヘッド全体の小型化を図ることができる。
次に、上述のインクジェット式記録ヘッド50を備えたインクジェットプリンターについて説明する。図14は、本発明のインクジェットプリンター600を、紙等に印刷する一般的なプリンターに適用した場合の一実施形態を示す概略構成図である。なお、以下の説明では、図14中の上側を「上部」、下側を「下部」と言う。
Claims (8)
- [001]方位に分極処理されたペロブスカイト型酸化物からなり、かつ、配向の異なるドメインが混在している単結晶であって、[001]方位に沿ったドメイン壁を境界としたマルチドメイン構造を有する圧電体膜を含み、
前記ペロブスカイト型酸化物は、[001]配向のPb(Mg,Nb)O3−xPbTiO3(x=32at%、37at%)であり、
前記圧電体膜は、互いに隣接するドメインがわずかに異なる配向(1度以下)を有する構造であるモザイク構造を有する、圧電素子。 - 請求項1において、
前記ペロブスカイト型酸化物において、Aサイトに優先的に位置するイオンをAサイトイオンとし、Bサイトに優先的に位置するイオンをBサイトイオンとした場合に、前記Aサイトイオンの価数は、前記Bサイトイオンの価数と等しい、圧電素子。 - 請求項2において、
前記Aサイトイオンと前記Bサイトイオンのイオン半径比は2.0〜2.5である、圧電素子。 - 請求項2または3において、
前記Aサイトイオンは鉛イオン(Pb2+)である、圧電素子。 - 請求項2ないし4のいずれかにおいて、
前記Bサイトイオンは、マグネシウムイオン(Mg2+)である、圧電素子。 - 請求項1ないし5のいずれかに記載の圧電素子を有する、圧電アクチュエーター。
- 請求項1ないし5のいずれかに記載の圧電素子を有する、インクジェット式記録ヘッド。
- 請求項7に記載のインクジェット式記録ヘッドを有する、インクジェットプリンター。
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