JP5167715B2 - 耐火物ライニング残存厚さ判定方法および装置 - Google Patents

耐火物ライニング残存厚さ判定方法および装置 Download PDF

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Description

本技術は、製鉄所内で溶銑を運搬するために使用されるトピードカー(混銑車)に関し、トピードカー内部の耐火物ライニングの残存厚さを判定する耐火物ライニング残存厚さ判定方法および装置に関するものである。
高炉で製造した溶銑を転炉などの製鋼設備に搬送する手段であるトピードカー(混銑車)は、内部に耐火物を施工したタンクを積載した貨車である。鉄道を使うため走行抵抗が小さく大量の溶銑を小さいエネルギーで搬送できることや、開口部が小さく大気中への熱放出が少ないので輸送時の温度低下が抑えられるなどのメリットがあり、製鉄業に広く利用されている。
一般にトピードカーの溶銑容器部分は、厚さ60mm程度の鉄皮で形成されているタンクと、タンクの内面に積み上げた耐火物の層(永久耐火物、ワーク耐火物)からなる耐火物ライニングで形成されている。耐火物のライニングは、合計で300mm程度の厚さとなるように形成されている。この耐火物のライニングは、溶銑の熱放出を抑え溶銑温度の低下を防ぐことに加えて、鉄皮と溶銑が直接接触して鉄皮が溶融、破損し、溶銑がタンク外部に流出するのを防ぐという役割も果たしている。とりわけ、溶銑のタンク外部への流出は線路設備などを著しく破損し、操業を長期にわたって停止させる原因となるので、その防止は非常に重要である。
ところでトピードカーを用いて溶銑の運搬を続けているうちに、高温の溶銑と接触する溶銑容器内部の耐火物には、溶損による厚み低下や、熱履歴による局所的な破損が発生してしまう。したがって、溶損しにくい耐火物材質の選定や熱履歴を受けたときに熱応力の集中が起きないように耐火物を施工することは、上述した溶銑の流出を防止するために重要である。また、溶銑の運搬中の突発的な溶銑流出を未然に予防するために、内部の耐火物ライニングの残存厚さを検知し、著しくその厚みが低下していた場合には、速やかにその使用を中止するという措置をとらなければならない。
しかしながら、トピードカーは開口部が一部にしかないので、外部から内部の耐火物ライニングの状態を直接監視することは極めて困難である。そのうえ、溶銑の運搬時の内部温度は常時600℃以上となっているために、溶銑容器内部に入っての検査や計測装置を用いた厚さ変化の追跡も困難であるという耐火物ライニングの監視・計測上の問題がある。
このような問題を解決する方法として、たとえば、特許文献1にはレーザー光を用いた内面プロフィール測定装置が紹介されている。しかしながら、この装置ではレーザー装置などの耐熱性に課題があるため、一旦トピードカー内部を冷却した状態で無ければ測定できないという課題がある。
また、特許文献2では、混銑車の湯あたり部におけるライニングの溶損状況を、レーザー距離計を用いて測定する測定方法が紹介されている。しかしながら、この方法でも開口部近辺しかライニング厚みを測定することが出来ず、耐火物ライニングの状態監視という目的に照らし合わせて不十分なものである。
また、特許文献3においては、高炉の出銑樋の溶損状況を調べるために樋付近に光ファイバーを設置する方法が紹介されている。しかし、光ファイバーの施工が困難であり、また使用中の破損が発生しやすく、その上測定装置が大きいなどの課題があり、この方法をトピードカーのように移動する対象に適用するのは困難である。
この他に、特許文献4、および特許文献5などでは、抵抗線などのセンサーをトピードカー耐火物内に埋設し、操業時、その信号を測定することによりライニングの溶損を把握する方法が紹介されている。これらの方法は、上述の光ファイバーを用いる方法よりは測定装置が小さくなるというメリットはあるもののものの、それでも依然として施工が困難でかつ使用中の破損が発生しやすいという課題がある。
そのため通常の操業では、定期的にトピードカーの使用を順次中止して、耐火物を再施工するなどの方法がとられている。しかしながら、この方法では耐火物ライニングの厚さが十分であるのに無駄に再施工している場合や、その反対に局所的に破損が進行し再施工前に溶銑が流出してしまったりする場合などがあるという問題を抱えていた。そのため耐火物ライニングの厚さが所定値以上であることを確実に管理できる方法の開発が望まれていた。
このような課題を解決する手法として、トピードカーの外壁温度をサーモビューアーによって監視し、その温度が一定値以上(たとえば350℃以上)になった場合に、耐火物ライニングの厚さが薄くなったと判断する方法が開発されている(例えば、特許文献6参照。)。この方法と定期的な補修作業とを組み合わせることにより、耐火物ライニングの溶損による溶銑の流出は、かなりの程度まで防止することが可能となっている。
特開昭58−37507号公報 特開2005−337922号公報 特開2005−256099号公報 特開昭57−139284号公報 特開平1−129103号公報 実開平5−54529号公報
特許文献6に記載の方法を用いる場合、トピードカーの外壁温度は受銑してから測定するまでの時間、溶銑温度や外気温の影響を受け易く、外壁温度をサーモビューアーによって監視するにあたってはその影響を考慮した判定基準を設定する必要がある。しかしながら、多種多様に変化する環境に対して判定基準を設定することはきわめて困難であり、そのため判定基準が厳しくなりすぎて耐火物ライニングの厚さが十分な状態であったにもかかわらず耐火物ライニングの厚さを基準以下と判定する事態や、反対に基準が緩くなりすぎて検知が遅れ、その結果トピードカーから溶銑が漏れるなどの事態の発生が不可避である。
そのため、より確実に耐火物ライニングの残存厚さを判定できる、合理的な判定方法および装置の開発が求められている。
本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、容易に実施が可能であり、従来以上に確実にトピードカー内部の耐火物ライニングの残存厚さを判定できる耐火物ライニング残存厚さ判定方法および装置を提供することにある。
まず本発明者らは、上記の課題を解決するに当たってトピードカーの外壁温度と使用履歴との関係を詳細に調査した。その結果、トピードカーの外壁温度はその使用回数が多くなるにしたがって、外壁温度が全体的に上昇する傾向があることを把握した。そして、この外壁温度の変化を詳細に調査した結果、その外壁温度の変化はトピードカー内部の溶銑の有無によって時間変化すること、およびその外壁温度の時間変化の大きさがトピードカーの使用回数と相関があることを見出した。
そこで本発明者らは、トピードカーの使用回数と外壁温度の時間変化の大きさとの相関関係は、使用回数が多くなることによって耐火物の厚さが変化することによるのではないかと推定した。そこでこの推定を検証するために、耐火物ライニングの厚みを変えたトピードカーを作製し、外壁温度の時間変化を詳細に調査した。その結果、外壁温度の時間変化は、耐火物ライニングの厚さと密接な関係があることを見出した。本発明は、これらの知見をさらに鋭意検討した結果なされたものである。
すなわち、本発明の請求項1に係る発明は、トピードカー内部の耐火物ライニングの残存厚さを判定する耐火物ライニング残存厚さ判定方法であって、
トピードカー内の溶銑排出タイミングの前後(排出前t1(分)、排出後t2(分))でそれぞれ測定したトピードカー外壁温度(T1(℃)、T2(℃))の時間変化に基いて、前記耐火物ライニングの残存厚さを判定することを特徴とする耐火物ライニング残存厚さ判定方法である。
また、本発明の請求項2に係る発明は、請求項1に記載の耐火物ライニング残存厚さ判定方法において、前記t1(分)を、0≦t1(分) ≦60と、前記t2(分)を、30≦t2(分) ≦90と設定することを特徴とする耐火物ライニング残存厚さ判定方法である。
また、本発明の請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の耐火物ライニング残存厚さ判定方法において、
前記外壁温度の時間変化、δT(℃/分)=(T2−T1)/(t2t1)の絶対値|δT|に基いて、前記耐火物ライニングの残存厚さを判定することを特徴とする耐火物ライニング残存厚さ判定方法である。
また、本発明の請求項4に係る発明は、請求項3に記載の耐火物ライニング残存厚さ判定方法において、前記絶対値|δT|が、判定しようとする所定の残存厚さwに基き予め設定した閾値σ以下である場合に、前記耐火物ライニングの残存厚さは、前記残存厚さw以上であると判定することを特徴とする耐火物ライニング残存厚さ判定方法である。
また、本発明の請求項5に係る発明は、請求項4に記載の耐火物ライニング残存厚さ判定方法において、前記閾値σが0.5、および前記残存厚さwが150mmであることを特徴とする耐火物ライニング残存厚さ判定方法である。
さらに、本発明の請求項6に係る発明は、トピードカー内部の耐火物ライニングの残存厚さを判定する耐火物ライニング残存厚さ判定装置であって、
トピードカーの外壁温度を測定する温度センサからの測定信号を、外壁温度測定値として演算処理する温度解析部と、
前記外壁温度測定値から溶銑排出タイミングの前後での外壁温度の時間変化を算出して、算出した外壁温度の時間変化と予め設定した判定基準値とを比較して耐火物ライニング残存厚さが所定値以上かどうかの判定を行う演算・判定部とを備えることを特徴とする耐火物ライニング残存厚さ判定装置である。
本発明によれば、トピードカー内部の耐火物ライニングの損耗状況を適切に判断できるようになり、その結果、溶銑温度や外気温など環境の影響を受けることなく確実に耐火物ライニングの厚さが基準値以下となったことを検知できるようになる。
これにより、耐火物ライニングの損耗が進行していない状態で基準値以下と判定することがなくなり、トピードカーの補修コストを低減できる。また、損耗が著しく進行した状態であるにもかかわらず耐火物ライニングの損耗を検知できず溶銑の漏洩が発生するなどの事態を回避することが可能となる。
以下、本発明の一実施形態を説明する。まず、本発明の重要な要素であるトピードカーの外壁温度の測定について説明する。
外壁温度の測定方法としては、トピードカーの外壁に温度を測定する部材、例えば熱電対や小型の温度計などを直接接触させて測定する方法、サーモグラフなどトピードカーの外壁から輻射される電磁波を検出することによって非接触で測定する方法などがあるが、本発明においては、そのいずれの方法を用いても構わない。もちろん、それ以外の方法であってもトピードカーの外壁温度を正確に測定できるのであれば、その方法を用いても構わない。
特に、非接触での測定方法は、トピードカーとの触車、噴出した溶銑との接触などによる測定作業者の受傷を原理的に防止することが可能であるため、作業者の安全上好ましい。このような非接触で温度を測定する方法としては、上述したサーモグラフなどの方法が挙げられる。
ところで、一般的にトピードカーの外壁温度には温度分布が存在する。したがって、温度の測定は複数箇所で行なうことが好ましい。複数箇所の温度を測定した場合、測定温度として、平均温度を採用する方法、最大温度を採用する方法、あるいは所定の場所を決め、それを代表温度として採用する方法、あるいは分布から計算される、それ以外の値を採用する方法など種々あるが、本発明においては、いずれの方法で求められる温度を用いても構わない。一般に耐火物ライニングの厚みが薄くなると、その近くの外壁温度は周囲よりも高くなる傾向がある。そのため。最大温度を外壁温度とすると局所的な耐火物ライニングの厚みの変化を検知することが可能となる。
本発明では、ライニング厚みが所定値以上であるかを外壁温度の時間変化で判定するようにしている。したがって、一回目の測定は出来る限り外壁温度が高い状態でなされるべきであり、このため本発明ではt1を10≦t1(分) ≦60を好適な範囲としている。
本発明においては、外壁温度の測定は溶銑の排出時点をはさむのであれば任意の時点で行ってよい。なお、本発明では、1回目の測定を溶銑が排出される60分前から直前まで、すなわち0≦t1(分) ≦60とすることが好ましい。さらに好ましくは60分前から10分前まで、すなわち10≦t1(分) ≦60とすることが好ましい。
また、2回目の測定は溶銑が排出されてから30分以降、90分以前、すなわち30≦t2(分) ≦90、さらに好ましくは30分以降、60分以前、すなわち30≦t2(分) ≦60とすることが好ましい。以下、これらの理由を説明する。
溶銑が入った状態のトピードカーでは、外壁温度が徐々に上昇していくことが知られているが、本発明者らは、本発明を行うにあたって様々な検証を行った結果、溶銑を排出した後も外壁温度は緩やかに上昇し続け、しばらく後に低下し始める傾向があることを見出した。これは次のように考えることが出来る。
すなわち、(1)まず、トピードカーに充填された溶銑によって耐火物ライニングが加熱され熱を蓄積した状態になる。(2)次に、溶銑が排出されると耐火物の加熱は停止する。しかし、この時点ではまだ耐火物には熱が蓄積されているため、この蓄積された熱が鉄皮側に伝わり、鉄皮の温度を上昇させる。(3)しばらくたつと、耐火物ライニングの温度が低下し熱平衡に到達し、さらには鉄皮やトピードカー内壁からの放熱によって耐火物ライニングや鉄皮の温度も低下し始め、最終的には平衡温度に到達する。
本発明者らの調査によると、上述の(2)で説明した外壁温度の上昇は、排出時点から0分〜90分の間で観察されるとともに、この時間は耐火物ライニングの厚みに依存することが分った。そして、その時間は耐火物ライニングの厚みが小さいほど短くなり、ライニング厚みが下限値となった場合で10分程度発生することを確認した。
また上記(3)で説明した温度上昇の停止時期は、上述したように耐火物ライニングの厚みに依存するが、使用開始時点では溶銑排出から最大で90分程度後、所定厚みが下限値となった時点では30分程度後である。本発明は、外壁温度の時間変化を基にライニング厚みが所定値以上であるかどうかを判定する方法であるので、より正確に判定するために2回目の測定は溶銑排出の30分後から90分以内、すなわち30≦t2(分)≦90とすることが好ましい。一般的な操業条件では使用開始時点で溶銑排出の60分程度後に、外壁の温度低下が始まるので2回目の測定は溶銑排出の30分後から60分以内、すなわち30≦t2(分)≦60とすることがより好ましい。
なお、本発明においては、1回目と2回目の測定間隔δt(分)=t2+t1については特に規定しないが、トピードカーの外壁温度の変化は比較的緩慢なのでδt(分)を小さくした場合、正確に判定するためには温度の測定精度を高める必要がある。しかしながら、実操業においては外気温の影響などもあり温度を高精度で測定するのは現実的でない。そのためδt(分)は30(分)以上とすることが好ましい。また、本発明においては温度の測定を3回以上行って、上述と同様に平均温度ならびに温度変化を求めた場合においても、勿論有効である。
なお、本発明の特徴は、従来は溶銑が充填されているときに外壁温度で判定していたのに対して、溶銑排出前後でのトピードカーの外壁温度の時間変化を用いて判定するようにしたことにある。この結果、測定環境、運用条件、測定条件などの因子の影響を排除することができる。その上、本発明では、温度測定器(例えば、トピードカーが溶銑を排出する箇所に往復する経路上に温度測定器を少なくとも1台設置)および判定処理を行う判定器を設置するだけで、実施することが可能なので、過大な設備投資なしに、的確にトピードカー内部の耐火物の厚みが規定値以上となっていることが判定できるようになった。
次に、本発明において、トピードカーの外壁温度の時間変化δT(℃/分)=(T2-T1)/(t2+t1)値が0.5℃/分以下の場合、耐火物の厚みが基準値を上回っていると判定すると規定した理由を説明する。
溶銑が充填されていない状態でのトピードカー外壁の温度は、耐火物ライニングが溶銑からうけた熱量、耐火物ライニングの伝熱量、トピードカー外壁からの抜熱量の総和によって決定される。この中でも、耐火物ライニングの伝熱量がトピードカー外壁の温度変化に与える影響はとりわけ大きい。耐火物ライニングの伝熱は、耐火物の材質に加え、その厚みに強く影響され、耐火物ライニングが厚いほど伝熱量は小さくなる。
このため、トピードカーの外壁温度の時間変化δは、耐火物ライニングの厚みが基準値以上にあるかどうかを判定するに適した量である。また、最適な条件での操業をできるだけ維持するように行われる実操業では、溶銑から受けた熱量、トピードカーの外壁からの抜熱はほぼ一定とみなせるので、トピードカー外壁の温度変化は、耐火物ライニングの伝熱量の大きさを反映している。さらにトピードカー外壁の平均温度は、たとえば天候条件やトピードカー内部の溶銑温度、流動状況などの影響を強く受けてしまうのに対して、温度変化はそれらの影響が打ち消されるという特徴がある。そこで、本発明では厚みを測定する手法とトピードカーの外壁の温度変化を採用している。
次に、判定基準を0.5℃/分以下と規定したことについて説明する。本発明者らは、トピードカーの運用サイクル、一回の輸送量、経済的な内部耐火物の施工方法を鋭意検討し、さらにいくつかのケースについて温度変化と耐火物ライニングの厚みの関係を鋭意調査した。この結果、規定厚み範囲(300〜150mm)である場合には、温度変化は0.5℃/分以下であることを見出し、0.5℃/分以下と規定している。なお、本発明では0.5℃/分以下とした判定基準の下限値は特に規定しないものの、実用的な耐火物の施工条件を考慮すると、0.1℃/分以上が実用的な下限となる。
また、本発明においてはトピードカーの外壁の平均温度については特に規定しないが、一般にトピードカーの鉄皮と呼ばれる材料には400℃付近から急速に強度が低下する炭素鋼が用いられていることを考慮すると400℃以下であることが好ましい。これ以上となると鉄皮の強度が低下し、内部の溶鋼静圧や移動時の衝撃などにより鉄皮を変形させ、ひいては内部耐火物の変形、脱落を引き起こし、最終的には溶銑と鉄皮の接触による溶銑漏れの原因を引き起こす危険性がある。さらに、本発明においてはこの下限温度も特に規定しないが、サーモグラフィを用いる場合、使用環境、内部の耐火物施工の状況にも依存するが、150℃から250℃が実用的な下限となる。
以上説明したように、本発明による基準を適用することにより、トピードカー内部の耐火物の損耗状況を適切に判断できるようになり、その結果、溶銑温度や外気温など環境の影響を受けることなく確実に耐火物ライニングの厚みが基準値以下となったことを検知できるようになる。その結果、耐火物の損耗が進行していない状態で基準値以下と判定する、反対に損耗が著しく進行した状態であるにもかかわらず耐火物の損耗を検知できず溶銑の漏洩が発生するなどの事態を回避することを可能となる。
トピードカー内部の耐火物ライニングの溶損度合いの判定を、本発明方法と、比較方法とを用いて複数のケースで行なった。図1は、本実施例に係る耐火物ライニング残存厚さ判定装置の一例を示す図である。図中、1はトピードカー、2はレール、3は温度センサ、4は温度解析部、5は演算・判定部、6は耐火物ライニング残存厚さ判定装置、および7は表示装置をそれぞれ表す。
レール2上のトピードカー1の外壁温度を、側面から温度センサ3で測定し、その測定信号を耐火物ライニング残存厚さ判定装置6に送る。送られた温度信号は、耐火物ライニング残存厚さ判定装置6内の温度解析部4で外壁温度測定値として演算処理されたのちに、演算・判定部5で上述した外壁温度の時間変化|δT|を算出して、判定基準値と比較をして耐火物ライニング残存厚さが所定値以上かどうかの判定を行い、その結果を表示装置7に表示する。なお、温度センサ3については、実線で示した温度センサ3の反対側に、図1に破線で示したように、温度センサ3をもう一台設置するようにすれば、トピードカー1の左右の外壁温度を一度に測定・判定することができる。
本実施例では、使用開始時の耐火物ライニングの厚さが300mm、一回当たり450tの溶銑を移送可能なトピードカーを対象に、溶銑を入れた場合について、耐火物ライニングの厚さが所定値以上であるかどうかの判定を行なった。なお、この場合のトピードカーの耐火物ライニングの使用下限厚さは、150mmである。外壁温度の測定は、トピードカー外壁をサーモグラフィで観察する方法によって行った。外壁温度に平均値を適用した場合と、最大値を適用した場合の2ケースについて判定を行なった。受銑する溶銑量は1チャージあたり350〜450t、溶銑の平均温度は1400℃であった。
表1に、9ケースでの比較結果を示す。2回の外壁温度測定を行ない、受銑後経過時間t1(分)の外壁温度T1(℃)、受銑後経過時間t2(分)の外壁温度T2(℃)を測定し、平均温度T、外壁温度の時間変化|δT|を算出して、No.1〜9のケースについて本発明の方法で耐火物ライニングの厚さが所定値以上であるかを判定した。耐火物ライニングの厚さが所定値以上であると判定した場合に○印を、所定値未満であると判定した場合に×印を付して、表1に結果を併せて示す。
また、比較方法での判定は、2回目の測定時の外壁温度(T2)を用いて耐火物ライニングの厚さを判定した結果である。2回目の測定時の外壁温度(T2)が350℃超えとなった場合、ライニングの厚さが所定値を下回ったと判定した。さらに、実測判定とは、溶銑排出後に対象のトピードカートピードカーを冷却し、内部の耐火物ライニングの厚さを実測して判定した結果である。
Figure 0005167715
表1において、No.1〜5では、本発明方法を用いても比較方法を用いても判定結果は同じであり、実測判定結果と同じ正しい判定ができていることがわかる。しかし、No.6においては、実測判定は×であり、耐火物ライニングの厚さは所定値未満との判定であるのに、比較方法では所定値以上の○と誤判定している。これに対して本発明方法を用いた場合は×と、正確に判定できていることがわかる。
またNo.7は、2回目の測定を排出から5分後に行った場合、No.8は、2回目の測定を排出から120分後に行った場合である。どちらのケースも本発明方法では実測判定結果と同じ×であるのに対して、比較方法では○と誤判定している。
ただし、この場合、仮に温度測定誤差が5℃あったとすれば、本発明方法でも誤判定する可能性がある。従って、本発明方法では2回目の測定を30分以降90分以内とすることが好ましいことが分る。
また、No.9のケースは、本発明方法で測定間隔を20分とした場合である。本発明方法で誤判定している。このケースと他のケースも合わせて考慮して、測定間隔は30分とした方が好ましいことが分る。
本実施例に係る耐火物ライニング残存厚さ判定装置の一例を示す図である。
符号の説明
1 トピードカー
2 レール
3 温度センサ
4 温度解析部
5 演算・判定部
6 耐火物ライニング残存厚さ判定装置
7 表示装置

Claims (6)

  1. トピードカー内部の耐火物ライニングの残存厚さを判定する耐火物ライニング残存厚さ判定方法であって、
    トピードカー内の溶銑排出タイミングの前後(排出前t1(分)、排出後t2(分))でそれぞれ測定したトピードカー外壁温度(T1(℃)、T2(℃))の時間変化に基いて、前記耐火物ライニングの残存厚さを判定することを特徴とする耐火物ライニング残存厚さ判定方法。
  2. 請求項1に記載の耐火物ライニング残存厚さ判定方法において、
    前記t1(分)を、0≦t1(分) ≦60と、
    前記t2(分)を、30≦t2(分) ≦90と設定することを特徴とする耐火物ライニング残存厚さ判定方法。
  3. 請求項1または2に記載の耐火物ライニング残存厚さ判定方法において、
    前記外壁温度の時間変化、δT(℃/分)=(T2−T1)/(t2t1)の絶対値|δT|に基いて、前記耐火物ライニングの残存厚さを判定することを特徴とする耐火物ライニング残存厚さ判定方法。
  4. 請求項3に記載の耐火物ライニング残存厚さ判定方法において、
    前記絶対値|δT|が、判定しようとする所定の残存厚さwに基き予め設定した閾値σ以下である場合に、
    前記耐火物ライニングの残存厚さは、前記残存厚さw以上であると判定することを特徴とする耐火物ライニング残存厚さ判定方法。
  5. 請求項4に記載の耐火物ライニング残存厚さ判定方法において、
    前記閾値σが0.5、および前記残存厚さwが150mmであることを特徴とする耐火物ライニング残存厚さ判定方法。
  6. トピードカー内部の耐火物ライニングの残存厚さを判定する耐火物ライニング残存厚さ判定装置であって、
    トピードカーの外壁温度を測定する温度センサからの測定信号を、外壁温度測定値として演算処理する温度解析部と、
    前記外壁温度測定値から溶銑排出タイミングの前後での外壁温度の時間変化を算出して、算出した外壁温度の時間変化と予め設定した判定基準値とを比較して耐火物ライニング残存厚さが所定値以上かどうかの判定を行う演算・判定部とを備えることを特徴とする耐火物ライニング残存厚さ判定装置。
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