以下に、本発明に係るダイオードコネクタの一実施形態を、図2〜図4を参照して説明する。
ダイオードコネクタ30は、図2に示すように、カソード側リードフレーム31と、アノード側リードフレーム32と、ダイオードチップ33と、ブリッジ34と、パッケージ37と、で構成されている。また、図3に示すように、カソード側リードフレーム31とダイオードチップ33、ダイオードチップ33とブリッジ34、ブリッジ34とアノード側リードフレーム32、はそれぞれが互いにはんだ35で溶着して接合される。
カソード側リードフレーム31は、厚さ0.64mm程度の銅合金板を略L字に打ち抜き、その表面に銀メッキ処理が施された端子金具である。そのL字の短辺側には、ダイオードチップ33を実装するための電極部であって、ダイオードチップ33のチップサイズより一回り大きい結合部31aが設けられている。また、そのL字の長辺側は、図示しないコネクタソケットと接続するための端子部31bとなっている。
端子部31bは、コネクタソケットへのスムースな挿入を可能にするため、それぞれの角が面取りされており、また、コネクタソケットへの挿入後にダイオードコネクタ30が抜け落ちないようにするために、端子部31bの幅方向にそれぞれ対向して位置する側面には、コネクタソケットに掛止するための溝31cが設けられている。
アノード側リードフレーム32は、カソード側リードフレーム31と同様に、厚さ0.64mm程度の銅合金板を略I字上に打ち抜き、その表面に銀メッキ処理が施された端子金具である。アノード側リードフレーム32は、一方の端部にブリッジ34を接合するための電極部である円形の結合部32aが設けられており、また、他方の端部は、図示しないコネクタソケットと接続するための端子部32bとなっている。アノード側リードフレーム32は、カソード側リードフレーム31のL字の内側に、端子部31bと並行になるように、隙間39を介在して位置づけられている。
端子部32bは、カソード側リードフレーム31の端子部31bと同様に、コネクタソケットへのスムースな挿入を可能にするため、それぞれの角が面取りされており、また、コネクタソケットに挿入後にダイオードコネクタ30が抜け落ちないようにするために、端子部32bの幅方向にそれぞれ対向して位置する側面に、コネクタソケットに掛止するための溝32cが設けられている。
ダイオードチップ33は、薄膜状に形成されたN型半導体の一方の面上に酸化膜の層を成形し、その酸化膜の層の一部を取り除いてN型半導体上にP型半導体領域を設けたシリコン基板と、このシリコン基板のP型半導体領域側の面にP型半導体領域と接するように設けられたアノード側電極端子と、このシリコン基板のN型半導体側の面にN型半導体と接するように設けられたカソード側電極端子と、からなる、電流を一方向に流すための既存の半導体ディスクリート部品である。そして、カソード側電極端子は、カソード側リードフレーム31の結合部31aと接合されており、アノード側電極端子は、ブリッジ34の一方の端部と接合されている。
また、ダイオードチップ33は、電流が流れたときに0.8〜0.9V程度の順方向電圧降下が生じ、それに伴う電力損失によって発熱する。そして、通電に伴うダイオードチップ33の発熱特性は、そのチップサイズ(請求項のダイオードチップの種類に相当)毎に異なり、且つ、ダイオードチップ33が接合される、各リードフレーム31、32、及び、ブリッジ34のそれぞれの体積を合計した合計体積(以下、合計体積)によっても変化する。また、この発熱特性は、ダイオードコネクタに組み込まれるダイオードチップの個数(請求項のダイオードチップの種類に相当)によっても異なる。
ブリッジ34は、例えば、銅やアルミニウム等の導電性及び放熱性の高い金属(合金含む)を材料として、直方体状に形成されたリードフレーム接続用金属片である。ブリッジ34には、ダイオードチップ33の厚みを吸収するよう段差が設けられて形成されている。また、ブリッジ34の一方の端部には、ダイオードチップ33のアノード側電極端子が接続され、ブリッジ34の他方の端部には、アノード側リードフレーム32の結合部32aが接続される。つまり、ブリッジ34は、ダイオードチップ33を介して、カソード側リードフレーム31と、アノード側リードフレーム32と、を接続している。ブリッジ34は、カソード側リードフレーム31とアノード側リードフレーム32とを短絡しないように、パッケージ37に収容されて配設される。
はんだ35は、金属同士を接合する溶接に用いられるろう材の一種であり、電気回路に用いられるため高い導電性を有する既存のものである。また、本実施形態で用いるはんだ35は、鉛を含まないもの(鉛フリーはんだ)であり、図5に示す、鉛を含まないろう材の種類(合金組成)とその融点とを示す融点情報J1の中から選択されて用いられる。はんだ35は、ダイオードコネクタ30の組立時点ではフラックスを含有したペースト状であり、カソード側リードフレーム31の結合部31a、アノード側リードフレーム32の結合部32a、及び、ダイオードチップ33のアノード側電極端子に塗布される。そして、各リードフレーム31、32、ダイオードチップ33、及び、ブリッジ34、の各部材が、それぞれの接合箇所が重なるように、組み立てられる。そして、組み立てられた各部材がリフロー炉を通されることにより、はんだ35が溶融して、それぞれの部材が互いに接合される。
パッケージ37は、例えば、耐熱性及び絶縁性を有する合成樹脂を用いて、トランスファー成形法によって一体成形される。そして、パッケージ37は、ブリッジ34、カソード側リードフレーム31の結合部31a側の端部、及び、アノード側リードフレーム32の結合部32a側の端部、をそれぞれ内包するように配設され、これら内包された部材を保護及び絶縁するものである。カソード側リードフレーム31の端子部31b及びアノード側リードフレーム32の端子部32bは、図示しないコネクタソケットに挿入されるために、それぞれパッケージ37から突出している。パッケージ37の外形サイズは、ダイオードコネクタ30を実装する箇所の制約、例えば、自動車内のワイヤハーネス配索空間などの制約を受けて決定されている。
カソード側リードフレーム31、アノード側リードフレーム32、及び、ブリッジ34、は、ワイヤハーネス等を電気的に接続する部材として機能すると共に、通電によってダイオードチップ33から生じる発熱を放出するための放熱部材としても機能する。そして、ダイオードチップ33に接しているはんだ35、つまり、カソード側リードフレーム31とダイオードチップ33とを溶着しているはんだ35、及び、ダイオードチップ33とブリッジ34とを溶着しているはんだ35、それぞれが、ダイオードチップ33の発熱によって溶融しないように、合計体積が定められている。
本実施形態においては、合計体積と、ダイオードチップ33のチップサイズと、はんだ35の融点と、は、次の式を満たしている。
Ts=(−1.4)V+425 [ダイオードチップ 1.8mm角]・・・(A)
Ts=(−1.4)V+340 [ダイオードチップ 2.3mm角]・・・(B)
Ts=(−1.4)V+320 [ダイオードチップ 2.9mm角]・・・(C)
ただし、Tsははんだ35の融点、Vは合計体積
上記式(A)〜(C)は、ダイオードチップ33のチップサイズ毎に実測した、合計体積と、ダイオードチップの発熱温度と、の関係に関する相関グラフ(図6)から求めた相関式、即ち、相関情報である(実測方法等については後述する)。図6のグラフは、リードフレーム端子が2極且つダイオードチップが1つ(1素子)のダイオードコネクタにおいて、後述する許容過電流を通電して実測した値に基づくものである。
上記式(A)〜(C)の右辺は、ダイオードコネクタ30に所定の許容過電流(後述)を通電したときに生じるダイオードチップ33の発熱温度を示している。上記式(A)〜(C)の左辺は、はんだ35として用いられるろう材の種類の融点(厳密には融点よりわずかに低い温度)を示している。即ち、ダイオードチップ33の発熱温度(右辺)が、ろう材(即ち、はんだ35)の融点(左辺)と同一になるように、合計体積を設定することにより、ダイオードチップ33の発熱によるはんだ35の溶融を防ぎ、ダイオードチップ33と、カソード側リードフレーム31及びブリッジ34と、の接合がはずれることがないダイオードコネクタ30となる。さらには、必要最低限の合計体積となるダイオードコネクタ30を得ることができる。
所定の許容過電流とは、ダイオードコネクタ30が故障(特に、はんだ35溶融)せずにその機能を維持できる、定格電流を上回る電流値であり、例えば、ダイオードコネクタ30が組み込まれる回路に配設されたヒューズの溶断特性などから決定される。一例を挙げると、定格電流10Aのヒューズが配設された回路におけるダイオードコネクタ30の許容過電流として、20A/6秒間、30A/3秒間、40A/1秒間、60A/0.5秒間、等が設定される。
合計体積と、ダイオードチップ33のチップサイズと、はんだ35の種類と、の各部材の組み合わせの一例を挙げると、ダイオードチップ33の外形サイズが1.8mm角となり、合計体積が148mm3となり、はんだ35の種類がSn/Ag3.0/Cu0.5(融点218℃)となる。これら各部材は、上記式(A)を満足する。なお、この一例において、はんだ35の種類については、その融点が218℃以上のものであれば、他のはんだ種類でも用いることが可能である。
本実施形態によれば、ダイオードコネクタ30は、合計体積と、ダイオードチップ33のチップサイズと、はんだ35の融点と、が、上記式(A)〜(C)のうちいずれか一つを満たしているので、許容過電流が通電されたときでも、ダイオードチップ33の発熱温度によるはんだ35の溶融を防止でき、そのため、ダイオードチップ33と、カソード側リードフレーム31及びブリッジ34と、の接合がはずれることがない、信頼性の高いダイオードコネクタ30を得ることができる。
また、上記式(A)〜(C)の右辺と、上記式(A)〜(C)の左辺と、が等しくなるように、合計体積と、ダイオードチップ33の外形サイズと、はんだ35の種類と、を設定することにより、必要最低限の合計体積によりダイオードチップ33の放熱を満足するダイオードコネクタ30を得ることができるので、材料コストを低減したダイオードコネクタ30を得ることができる。
なお、本実施形態においては、上記式(A)〜(C)の左辺と右辺が等しくなるように、各部材を決定していたが、右辺が左辺を超えないよう、即ち、はんだ35の融点をダイオードチップ33の発熱温度が超えないように、各部材を決定してもよい。このように各部材を決定することで、はんだ35の融点に対して、ダイオードチップ33の発熱温度を低くすることができ、即ち、はんだ35の融点に対する発熱温度のマージンを設けることができる。
また、上述したダイオードコネクタ30は、一対のリードフレームを有するものであったが、これに限定するものではなく、3つ以上のリードフレームを有するダイオードコネクタでもよい。また、ブリッジについても、一対のリードフレームを跨いで配設されるものであったが、これに限定するものではなく、3つ以上のリードフレームを跨いで、それぞれを接続するように配設されるブリッジを有するダイオードコネクタでもよい。また、ダイオードチップの個数についても、1つに限らず、複数のダイオードチップを備えるダイオードコネクタでもよく、ダイオードチップのサイズについても、上述した1.8mm角、2.3mm角、又は、2.9mm角以外のサイズであってもよい。但し、各構成において適切に相関式を求める必要がある。
以下に、本発明に係るダイオードコネクタ設計装置の第1の実施形態を、図1、図5〜図7を参照して説明する。
図1にダイオードコネクタ設計装置の構成図を示す。ダイオードコネクタ設計装置1は、図2に示される、カソード側リードフレーム31と、アノード側リードフレーム32と、カソード側リードフレーム31上に配設されるダイオードチップ33と、ダイオードチップ33とアノード側リードフレーム32とを相互に接続するブリッジ34と、各リードフレーム31、32とダイオードチップ33とブリッジ34とを互いに溶着するはんだ35と、を有するダイオードコネクタ30を設計する装置であって、はんだ35として用いるろう材の種類と、各リードフレーム31、32及びブリッジ34の合計体積と、のいずれか一方の情報が入力されると、入力された情報と、予め記憶している、はんだ35として用いられる複数のろう材それぞれの融点に関する融点情報J1と、同じく予め記憶している、合計体積とダイオードチップ33の発熱温度との関係に関する相関情報と、に基づいて、ろう材の種類と合計体積とのうち他方を決定する装置である。
ダイオードコネクタ設計装置1は、図1に示すように、情報入力部11と、演算装置20と、表示部12と、を備えている。
情報入力部11は、請求項の入力手段に相当し、はんだ35として用いるろう材の種類と合計体積とのいずれか一方の情報を、演算装置20に入力するために用いられる。入力されるろう材の種類としては、図5に示す、鉛を含まないろう材の種類及びその融点に関する融点情報J1の中から選択される。ろう材の種類の入力は、各ろう材の種類に対応した番号が入力されることによって行われる。合計体積の入力は、体積の数値が入力されることによって行われる。また、入力される合計体積は、リードフレーム31、32、及び、ブリッジ34のそれぞれの体積を予め合算した数値であるが、これ以外にも、リードフレーム31、32、及び、ブリッジ34のそれぞれの体積を示す数値を個別に入力し、演算装置20内において、入力されたそれぞれの数値を合算するようにしてもよい。
また、情報入力部11は、ダイオードコネクタ設計装置1の各種操作を行うために用いられる。情報入力部11として、周知のキーボード、マウス、各種のスイッチや操作ボタンなどを用いることができる。さらに、情報入力部11として、ろう材の種類と合計体積とのいずれか一方の情報を、電子情報として記憶したHDD装置、CD−ROM駆動装置等の各種記憶装置を用いて、それらから読み出して入力してもよい。
演算装置20は、周知のCPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read−Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、を備えたコンピュータである。演算装置20は、図1に示すように、記憶手段としての記憶部21と、決定手段としての合計体積決定部22と、同じく決定手段としてのろう材種類決定部23と、を備えている。
記憶部21は、ダイオードコネクタ設計装置1を動作させるためのプログラムなどを記憶している。記憶部21は、情報入力部11から入力された、ろう材の種類又は合計体積を一旦記憶する。また、記憶部21は、図5に示す、鉛を含まない複数のろう材の種類とその融点とに関する融点情報J1が予め記憶されている。融点情報J1は、具体的には、ろう材の種類を示す合金組成と、そのろう材の種類が溶解し始める温度である固相線(即ち、融点。厳密には溶解し始める直前の温度が設定されている)と、そのろう材の種類が完全に溶解する温度である液相線と、そのろう材の種類に対応づけられた番号と、を互いに関連づけた情報である。
また、記憶部21は、チップサイズ1.8mm角のダイオードチップ33を有するダイオードコネクタ30について実測した、合計体積とダイオードチップ33の発熱温度との関係に関する相関グラフ(図6)から求めた相関式
Td=(−1.4)V+425 [ダイオードチップ 1.8mm角]・・・(D)
ただし、Tdはダイオードチップの発熱温度、Vは合計体積
を予め記憶している(実測方法等については後述する)。この相関式(D)は、請求項の相関情報に相当する。相関式は、チップの個数が複数の場合若しくは上述したチップサイズ以外の場合においても有効であり、これら各構成における相関式を適切に求めることで、それを用いた設計が可能である。また、相関情報として、上述したような相関式を用いているが、例えば、合計体積とダイオードチップ33の発熱温度との関係に関する相関表を用いるなど、本発明の目的に反しない限り、相関情報の形式は任意である。
記憶部21としては、上述したROM、及び、RAMが用いられるほか、コンピュータに備えられたHDD装置などの記憶装置を用いても良い。
合計体積決定部22は、情報入力部11にろう材の種類が入力されたとき、融点情報J1に基づいて、入力されたろう材の種類に応じた融点を算出し、算出したろう材の融点をダイオードチップ33の発熱温度として相関式(D)に適用して、合計体積を算出(決定)する。詳細には、以下の順に処理を行う。はじめに、記憶部21に一旦記憶されたろう材の種類と、融点情報J1とを照らし合わせて、そのろう材の種類の有する融点を取得する。つぎに、そのろう材の種類の融点を、ダイオードチップ33の発熱温度として、相関式(D)に適用して、合計体積を算出(決定)する。
ろう材種類決定部23は、情報入力部11に合計体積が入力されたとき、入力された合計体積を相関式(D)に適用してダイオードチップ33の発熱温度を算出し、算出したダイオードチップ33の発熱温度をろう材の融点として、融点情報J1に基づいて、ろう材の融点に応じたろう材の種類を決定する。詳細には、以下の順に処理を行う。はじめに、記憶部21に記憶されている合計体積を、相関式(D)に適用して、ダイオードチップ33の発熱温度を算出する。つぎに、融点情報J1の中から、算出したダイオードチップ33の発熱温度以上でそれに最も近い融点を有するろう材種類を選択(決定)する。
なお、合計体積決定部22及びろう材種類決定部23については、上述したコンピュータのCPUによって、上記機能が実現される。
表示部12は、ダイオードコネクタ設計装置1の作動状況や、決定した合計体積及び決定したろう材の種類などを表示する。表示部12として、周知のCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイや、液晶ディスプレイ等の各種表示装置を用いることができる。
次に、上述した演算装置20のCPUが実行する本発明に係る決定処理の一例を、図7に示すフローチャートを参照して説明する。
演算装置20のCPUは、電源が投入されると、所定の初期化処理等を実行したのち、ステップS110に進む。ステップS110では、情報入力部11に対して、ろう材の種類と合計体積とのいずれか一方が入力されたか否かを判定する。詳細には、記憶部21に、ろう材の種類と合計体積とのいずれか一方が記憶されているか否かを確認する。いずれか一方が記憶されていたときは、情報入力部11に対する入力があったものと判定してステップS120に進み(S110でY)、いずれも記憶されていなかったときは、情報入力部11に対する入力がないものと判定して、入力があるまでステップS110の処理を繰り返す(S110でN)。
ステップS120では、記憶部21に記憶されている、ろう材の種類と合計体積とのいずれか一方の情報を参照して、ろう材の種類又は合計体積のうちどちらが記憶されているか(即ち、どちらが情報入力部11から入力されたか)を判定する。ろう材の種類が記憶されていたときは、合計体積を決定するため、ステップS150に進み(S120でY)、合計体積が記憶されていたときは、ろう材の種類を決定するため、ステップS130に進む(S120でN)。
ステップS130では、記憶部21に記憶されている合計体積を、予め記憶部21に記憶されている相関式(D)に適用して、ダイオードチップ33の発熱温度を算出する。算出後、ステップS140に進む。
ステップS140では、ステップS130で算出したダイオードチップ33の発熱温度を、ろう材の融点として、予め記憶部21に記憶されている融点情報J1に照らし合わせて、その温度以上で最も近い融点を有するろう材の種類を選択(決定)する。そして、ステップS170に進む。
ステップS150では、記憶部21に記憶されているろう材の種類を、予め記憶部21に記憶されている融点情報J1に照らし合わせて、そのろう材の種類の融点を取得する。取得後、ステップS160に進む。
ステップS160では、ステップS150で取得したろう材の種類の融点を、ダイオードチップ33の発熱温度として、相関式(D)に適用して、合計体積を算出(決定)する。そして、ステップS170に進む。
ステップS170では、ステップS140で決定したろう材種類、又は、ステップS160で決定した合計体積を、表示部12に表示する。そして、本フローチャートの処理を終了する。
なお、ステップS130、S140がろう材種類決定部23に相当し、ステップS150、S160が合計体積決定部22に相当する。そして、合計体積決定部22及びろう材種類決定部23が、請求項の決定手段に相当する。
次に、上述したダイオードコネクタ設計装置1における、本発明に係る決定処理動作の一例を説明する。
ダイオードコネクタ設計装置1は、情報入力部11に、ろう材の種類を示す情報、例えば、図5の融点情報J1に含まれるSn/Ag0.3/Cu0.7の合金組成のろう材を示す番号である「7」が入力されると、入力された番号「7」をインデックスとして、融点情報J1から、そのろう材の種類の有する融点「218℃」を取得する。次に、取得した融点「218℃」を、ダイオードチップ33の発熱温度として、相関式(D)に適用して、合計体積「148mm3」を算出する。そして、算出した合計体積を表示部12に表示する。
また、ダイオードコネクタ設計装置1は、情報入力部11に、合計体積「130mm3」が入力されると、入力された合計体積を相関式(D)に適用して、ダイオードチップ33の発熱温度「243℃」を算出する。次に、算出した発熱温度以上で最も近い融点を有するろう材の種類を融点情報J1から選択し、その結果、番号「11」のSn/Sb10の合金組成のろう材の種類を選択する。そして、選択されたろう材種類の番号及び合金組成を表示部12に表示する。
また、ダイオードコネクタ設計装置1にて、ろう材の種類に対する合計体積、又は、合計体積に対するろう材の種類、を決定してダイオードコネクタ30を設計したのち、その設計したダイオードコネクタ30の実試験において放熱特性等の測定を行い、その測定結果から、合計体積及びろう材の種類の変更が必要であることが判明したときは、再度、変更した合計体積とろう材の種類とのいずれか一方をダイオードコネクタ設計装置1に入力して、合計体積とろう材の種類とのうちの他方を再度決定する。この再度の入力においては、最初に入力したろう材の種類と合計体積とのいずれか一方と同じものを入力する必要はなく、他方を入力して再度の設計を行っても良い。
以上より、第1の実施形態によれば、記憶部21に記憶された融点情報J1及び相関式(D)から、ろう材の種類とそのろう材を用いるために必要な合計体積との関係を得ることができるので、情報入力部11から、ろう材の種類と合計体積とのいずれか一方が入力されると、入力された一方と、融点情報J1及び相関式(D)と、に基づいて、ろう材の種類と合計体積とのうち他方を決定することができる。例えば、従来のダイオードコネクタに用いていたリードフレーム31、32及びブリッジ34の合計体積を算出して、ダイオードコネクタ設計装置1に入力することにより、それらを用いるための最適なろう材の種類、即ち、はんだ35を決定することができるので、従来部品を流用したダイオードコネクタ30の設計が容易にできる。また、従来部品を流用した設計ができるので、リードフレーム31、32やブリッジ34の金型代の削減や量産効果によるコストダウンができる。よって、設計コスト及び材料コストを削減することができる。また、相関式(D)は、許容過電流に基づいて求められているので、許容過電流に耐えうる必要最小限の合計体積となるダイオードコネクタを設計することができる。
また、相関式(D)が一次関数で表され、この相関式(D)に、ダイオードチップ33の発熱温度と、リードフレーム及びブリッジの合計体積と、のいずれか一方を適用することで、他方を算出することができるので、発熱温度に対する合計体積、又は、合計体積に対する発熱温度、を容易に算出することができる。そのため、一方の情報に対して、必要十分な他方の情報を容易に算出することができ、ダイオードコネクタの設計を容易且つ最適に行うことができる。
また、実測に基づく相関式(D)を用いているので、ダイオードコネクタ設計装置1で設計したダイオードコネクタ30は、その実動作において、その放熱性能が設計から大きく外れることがない。そのため、ダイオードコネクタ30の実動作の結果から、合計体積又ははんだ(ろう材)の種類に変更が必要となったとしても、それらを大きく変更する必要がないため、実動作の結果を設計にフィードバックする設計サイクルを短縮することができ、設計コストを低減することができる。
なお、第1の実施形態においては、情報入力部11に、ろう材の種類と合計体積とのいずれか一方を入力するものであったが、ろう材の種類と共に、リードフレーム又はブリッジのいずれか一方の体積を入力するようにして、ろう材の種類、融点情報J1、及び、相関式(D)、に基づいて決定した合計体積から、入力されたリードフレーム又はブリッジのいずれか一方の体積を差し引いた値を、リードフレーム又はブリッジのうち他方の体積として、表示部12への表示等を行っても良い。
以下に、本発明に係るダイオードコネクタ設計装置の第2の実施形態を、図1、図8を参照して説明する。
ダイオードコネクタ設計装置2は、第1の実施形態と同様に、図2に示すダイオードコネクタ30を設計するための装置である。また、ダイオードコネクタ設計装置2は、図1に示すように、情報入力部51と、演算装置60と、表示部12と、を備えている。なお、表示部12については第1の実施形態と同一であるためその説明を省略する。
情報入力部51は、請求項の入力手段に相当し、はんだ35として用いるろう材の種類と合計体積とのいずれか一方の情報と、ダイオードコネクタ設計装置2で決定される他方の情報に対応した制約条件と、を、演算装置60に入力するために用いられる。制約条件とは、ろう材の種類又は合計体積の決定に係る条件であり、合計体積に対しては、ダイオードコネクタ30のパッケージ37に許容される外形サイズ(縦、横、高さ)であり、ろう材の種類に対しては、図5の融点情報J1の中から予め選択された複数のろう材の種類の候補(以下、ろう材の候補)である。情報入力部51は、上記以外は第1の実施形態の情報入力部11と同一であるため、それら説明は省略する。
演算装置60は、周知のCPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read−Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、を備えたコンピュータである。演算装置60は、図1に示すように、記憶手段としての記憶部61と、決定手段としての合計体積決定部62と、同じく決定手段としてのろう材種類決定部63と、を備えている。
記憶部61は、ダイオードコネクタ設計装置2を動作させるためのプログラムなどを記憶している。記憶部61は、情報入力部51から入力された、ろう材の種類又は合計体積と、制約条件と、を一旦記憶する。
また、記憶部61は、ダイオードチップ33のチップサイズが異なるダイオードコネクタ毎に実測した、合計体積とダイオードチップ33の発熱温度との関係に関する相関グラフ(図6)から求めた相関式
Td=(−1.4)V+425 [ダイオードチップ 1.8mm角]・・・(D)
Td=(−1.4)V+340 [ダイオードチップ 2.3mm角]・・・(E)
Td=(−1.4)V+320 [ダイオードチップ 2.9mm角]・・・(F)
ただし、Tdはダイオードチップの発熱温度、Vは合計体積
を予め記憶している(相関式(D)は再掲。実測方法等については後述する)。
この相関式(D)は、1.8mm角のチップサイズのダイオードチップ33に対応するものであり、相関式(E)は、2.3mm角のチップサイズのダイオードチップ33に対応するものであり、相関式(F)は、2.9mm角のチップサイズのダイオードチップ33に対応するものである。そして、これら相関式は、請求項の相関情報に相当し、ダイオードチップ種類(チップサイズ)毎に異なるものとなっている。また、相関式は、チップの個数によっても異なる。相関式は、チップの個数が複数の場合若しくは上述したチップサイズ以外の場合においても有効であり、これら各構成における相関式を適切に求めることで、それを用いた設計が可能である。
また、記憶部61は、使用する相関式を記憶するための相関式情報領域を有し、初期状態において、相関式情報領域には相関式(D)を示す情報が格納されている。また、記憶部61は、制約条件として入力されたダイオードコネクタ30のパッケージ37の外形サイズから、合計体積の許容値を算出するための許容値算出情報を記憶している。許容値算出情報は、具体的には、ダイオードコネクタ30のパッケージ37による絶縁に最低限必要な肉厚値であり、本実施形態においては、その値として「1.0mm」が記憶されており、パッケージ37の縦、横、高さからこの肉厚値を差し引いた値を掛け合わせて得た体積が合計体積に許容される最大値(合計体積の許容値)となる。この肉厚値は、設計するダイオードコネクタ30毎に変更してもよく、また、これ以外にも、許容値算出情報として、パッケージ37の外形寸法から算出されるその体積に対する割合などを用いても良い。記憶部61は、上記以外は第1の実施形態の記憶部21と同一であるため、それら説明は省略する。
合計体積決定部62は、情報入力部51にろう材の種類が入力されたとき、融点情報J1に基づいて、入力されたろう材の種類に応じた融点を算出し、算出したろう材の融点をダイオードチップ33の発熱温度として相関式(D)に適用して、合計体積を算出(決定)する。そして、算出した合計体積が制約条件を満足するか否かを判定し、それを満足すれば処理を終了し、それを満足しなければ、制約条件を満足するまで相関式を順次(E)、(F)と変更して、合計体積の算出を繰り返し行う。
合計体積決定部62は、詳細には、以下の順に処理を行う。はじめに、記憶部61に一旦記憶されたろう材の種類と、融点情報J1とを照らし合わせて、そのろう材の種類の有する融点を取得する。つぎに、そのろう材の種類の融点を、ダイオードチップ33の発熱温度として、相関式(D)に適用して、合計体積を算出する。次に、許容値算出情報を用いて、記憶部61に一旦記憶された制約条件であるダイオードコネクタ30のパッケージ37の許容外形サイズから合計体積の許容値を算出し、その許容値と算出された合計体積とを比較する。そして、算出された合計体積の方が許容値より小さいときは合計体積が決定され、算出された合計体積の方が許容値より大きければ、相関式(D)を相関式(E)に変更して、再度合計体積を算出し、再度合計体積の許容値と比較する。そして、再度算出された合計体積の方が許容値より小さいときは合計体積が決定され、再度算出された合計体積の方が許容値より大きければ、相関式(E)を相関式(F)に変更して、再々度合計体積を算出(決定)する。
ろう材種類決定部63は、情報入力部11に合計体積が入力されたとき、入力された合計体積を相関式(D)に適用してダイオードチップ33の発熱温度を算出し、算出したダイオードチップ33の発熱温度をろう材の融点として、融点情報J1に基づいて、ろう材の融点に応じたろう材の種類を決定する。そして、決定したろう材の種類が、制約条件を満足するか否かを判定し、それを満足すれば処理を終了し、それを満足しなければ、制約条件を満足するまで相関式を順次(E)、(F)と変更して、ろう材種類の決定を繰り返し行う。
ろう材種類決定部63は、詳細には、以下の順に処理を行う。はじめに、記憶部61に記憶されている合計体積を、相関式(D)に適用して、ダイオードチップ33の発熱温度を算出する。つぎに、融点情報J1の中から、算出したダイオードチップ33の発熱温度以上でそれに最も近い融点を有するろう材種類を選択する。そして、選択したろう材の種類が、制約条件であるろう材の候補の中に含まれるか否かを判定する。選択したろう材がろう材の候補に含まれるときは、ろう材の種類を決定して処理を終了し、ろう材の候補に含まれないときは、相関式を(D)を相関式(E)に変更して、再度ダイオードチップ33の発熱温度を算出し、再度ろう材種類を選択したのち、再度選択したろう材の種類が、ろう材の候補の中に含まれるか否かを再度判定する。再度選択したろう材がろう材の候補に含まれるときは、ろう材の種類を決定して処理を終了し、ろう材の候補に含まれないときは、相関式を(E)を相関式(F)に変更して、再々度ダイオードチップ33の発熱温度を算出し、再々度ろう材種類を選択(決定)する。
次に、上述した演算装置60のCPUが実行する本発明に係る決定処理の一例を、図8に示すフローチャートを参照して説明する。なお、ステップS170、については、第1の実施形態と同一であるため、その説明を省略する。
演算装置60のCPUは、電源が投入されると、所定の初期化処理等を実行したのち、ステップS111に進む。ステップS111では、情報入力部51に対して、ろう材の種類と合計体積とのいずれか一方と、他方に対応する制約条件と、が入力されたか否かを判定する。詳細には、記憶部61に、ろう材の種類と合計体積とのいずれか一方が記憶されているか否かを確認し、さらに、他方に対応する制約条件が記憶されているか否かを確認する。ろう材の種類と合計体積とのいずれか一方と制約条件とが共に記憶されていたときは、情報入力部51に対する入力があったものと判定してステップS121に進み(S111でY)、ろう材の種類と合計体積とのいずれか一方と制約条件とのうちどちらか一方でも記憶されていなかったときは、情報入力部51に対する入力がないものと判定して、入力があるまでステップS111の処理を繰り返す(S111でN)。
ステップS121では、記憶部61に記憶されている、ろう材の種類と合計体積とのいずれか一方の情報を参照して、ろう材の種類又は合計体積のうちどちらが記憶されているか(即ち、どちらが情報入力部61から入力されたか)を判定する。ろう材の種類が記憶されていたときは、合計体積を決定するため、ステップS151に進み(S121でY)、合計体積が記憶されていたときは、ろう材の種類を決定するため、ステップS131に進む(S121でN)。
ステップS131では、記憶部61の相関式情報領域を参照して、使用する相関式を示す情報を取得し、取得した相関式を示す情報に基づいて、予め記憶部61に記憶されている複数の相関式の中から、使用する相関式を選択する。そして、記憶部61に記憶されている合計体積を、選択した相関式に適用して、ダイオードチップ33の発熱温度を算出する。算出後、ステップS141に進む。
ステップS141では、ステップS131で算出したダイオードチップ33の発熱温度を、ろう材の融点として、予め記憶部61に記憶されている融点情報J1に照らし合わせて、その温度以上で最も近い融点を有するろう材の種類を選択する。そして、ステップS143に進む。
ステップS143では、制約条件を満足するか否かを判定する。詳細には、ステップS141で決定したろう材の種類が、記憶部61に記憶されている制約条件であるろう材の候補の中に含まれているか否かを判定し、含まれている場合は、ろう材の種類が決定されたものとして、ステップS170に進み(S143でY)、含まれていない場合は、相関式を変更するため、ステップS145に進む(S143でN)。
ステップS145では、相関式情報領域に格納されている相関式を示す情報を、チップサイズが一段階大きいダイオードチップ33に関する相関式を示す情報に変更する。即ち、相関式(D)を示す情報が格納されていたときは、相関式(E)を示す情報に変更する。相関式(E)を示す情報が格納されていたときは、相関式(F)を示す情報に変更する。そして、再度、ろう材種類を選択するため、ステップS131に進む。
ステップS151では、記憶部61に記憶されているろう材の種類を、予め記憶部61に記憶されている融点情報J1に照らし合わせて、そのろう材の種類の融点を取得する。取得後、ステップS161に進む。
ステップS161では、記憶部61の相関式情報領域を参照して、使用する相関式を示す情報を取得し、取得した相関式を示す情報に基づいて、予め記憶部61に記憶されている複数の相関式の中から、使用する相関式を選択する。そして、ステップS151で取得したろう材の種類の融点を、ダイオードチップ33の発熱温度として、選択した相関式に適用して、合計体積を算出する。そして、ステップS163に進む。
ステップS163では、制約条件を満足するか否かを判定する。詳細には、ステップS161で算出した合計体積が、記憶部61に記憶されているダイオードコネクタ30のパッケージ37の許容外形サイズに許容値算出情報を適用して導き出される合計体積の許容値(許容外形サイズ(縦、横、高さ)から絶縁に最低限必要な肉厚1.0mmを差し引いて算出される体積)以下であるか否かを判定し、許容値以下の場合は、合計体積が決定されたものとして、ステップS170に進み(S163でY)、許容値を超える場合は、相関式を変更するため、ステップS165に進む(S163でN)。
ステップS165では、相関式情報領域に格納されている相関式を示す情報を、チップサイズが一段階大きいダイオードチップ33に関する相関式を示す情報に変更する。即ち、相関式(D)を示す情報が格納されていたときは、相関式(E)を示す情報に変更する。相関式(E)を示す情報が格納されていたときは、相関式(F)を示す情報に変更する。そして、再度、合計体積を算出するため、ステップS161に進む。
なお、ステップS131、S141、S143、S145がろう材種類決定部63に相当し、ステップS151、S161、S163、S165が合計体積決定部62に相当する。そして、合計体積決定部62及びろう材種類決定部63が、請求項の決定手段に相当する。
次に、上述したダイオードコネクタ設計装置2における、本発明に係る決定処理動作の一例を説明する。
ダイオードコネクタ設計装置2は、情報入力部51に、ろう材の種類を示す情報、例えば、図5の融点情報J1に含まれるSn/Zn9.0の合金組成のろう材を示す番号である「21」と、制約条件であるダイオードコネクタ30のパッケージ37の許容外形サイズ、例えば、縦6mm、横5.5mm、高さ5mm、と、が入力されると、入力された番号「21」をインデックスとして、融点情報J1から、そのろう材の種類の有する融点「199℃」を取得する。
次に、取得した融点「199℃」を、ダイオードチップ33の発熱温度として、相関式(D)に適用して、合計体積「161mm3」を算出する。そして、算出した合計体積「161mm3」と、ダイオードコネクタ30のパッケージ37の許容外形サイズから求めた合計体積の許容値「90mm3」と、を比較する。算出した合計体積の方が大きいので、相関式(D)を相関式(E)に変更する。
次に、相関式(E)を用いて、再度、合計体積を算出する。合計体積は「101mm3」になる。そして、再度算出した合計体積「101mm3」と、合計体積の許容値「90mm3」と、を比較する。再度算出した合計体積の方が大きいので、相関式(E)を相関式(F)に変更する。
次に、相関式(F)を用いて、再々度、合計体積を算出する。合計体積は「86mm3」になる。そして、再々度算出した合計体積「86mm3」と、合計体積の許容値「90mm3」と、を比較する。再々度算出した合計体積の方が小さいので、合計体積を決定する。そして、決定した合計体積を表示部12に表示して、動作を終了する。
また、ダイオードコネクタ設計装置2は、情報入力部51に、合計体積「100mm3」と、制約条件であるろう材の候補、例えば、「番号20、Sn/Zn8.0/Bi3.0」、「番号21、Sn/Zn9.0」、が入力されると、入力された合計体積を相関式(D)に適用して、ダイオードチップ33の発熱温度「285℃」を算出する。次に、算出した発熱温度以上の融点を有するろう材の種類を、融点情報J1から選択する。その結果、該当するろう材の種類が存在しない。そのため、ろう材の候補の中にも該当するろう材は存在しないので、相関式(D)を相関式(E)に変更する。
次に、相関式(E)を用いて、再度ダイオードチップ33の発熱温度を算出する。算出した発熱温度は「200℃」となる。そして、算出した発熱温度以上で最も近い融点を有するろう材の種類を、融点情報J1から選択する。選択されたろう材の種類は「番号14、16、17(融点206℃)」となる。そして、この選択されたろう材の種類の中から、ろう材の候補に該当するものがあるかを判定する。該当するものがないので、相関式(E)を相関式(F)に変更する。
次に、相関式(F)を用いて、再々度ダイオードチップ33の発熱温度を算出する。算出した発熱温度は「180℃」となる。そして、算出した発熱温度以上で最も近い融点を有するろう材の種類を、融点情報J1から選択する。選択されたろう材の種類は「番号20(融点187℃)」となる。そして、この選択されたろう材の種類の中から、ろう材の候補に該当するものがあるかを判定する。そして、ろう材の種類の番号20が該当するので、ろう材の種類として、「番号20」を決定する。そして、決定したろう材の種類を表示部12に表示して、動作を終了する。
また、ダイオードコネクタ設計装置2にて、ろう材の種類に対する合計体積、又は、合計体積に対するろう材の種類、を決定してダイオードコネクタ30を設計したのち、その設計したダイオードコネクタ30の実試験において放熱特性等の測定を行い、その測定結果から、合計体積及びろう材の種類の変更が必要であることが判明したときは、再度、変更した合計体積とろう材の種類とのいずれか一方と、それぞれに対応する制約条件と、をダイオードコネクタ設計装置2に入力して、合計体積とろう材の種類とのうちの他方を決定する。この再度の入力においては、最初に入力したろう材の種類と合計体積とのいずれか一方と同じものを入力する必要はなく、他方を入力して再度の設計を行っても良い。また、制約条件を変更して入力してもよい。
以上より、第2の実施形態によれば、記憶部61に記憶された融点情報J1及び相関式(D)〜(F)から、ろう材の種類とそのろう材を用いるために必要な合計体積との関係を得ることができるので、情報入力部51から、ろう材の種類と合計体積とのいずれか一方が入力されると、入力された一方と、融点情報J1及び相関式(D)〜(F)と、に基づいて、ろう材の種類と合計体積とのうち他方を決定することができる。例えば、従来のダイオードコネクタに用いていたリードフレーム31、32及びブリッジ34の合計体積を算出して、ダイオードコネクタ設計装置2に入力することにより、それらを用いるための最適なろう材の種類、即ち、はんだ35を決定することができるので、従来部品を流用したダイオードコネクタ30の設計が容易にできる。また、従来部品を流用した設計ができるので、リードフレーム31、32やブリッジ34の金型代の削減や量産効果によるコストダウンができる。よって、設計コスト及び材料コストを削減することができる。さらに、ろう材の種類と合計体積と、に加えて、制約条件として、ダイオードコネクタ30の許容外形サイズ、若しくは、ろう材の種類の候補、を入力して、これらの制約条件を満足するように、ダイオードコネクタ30の設計ができる。そのため、制約条件が付加されたダイオードコネクタ30を容易且つ最適に設計することができる。また、相関式(D)〜(F)は、許容過電流に基づいて求められているので、許容過電流に耐えうる必要最小限の合計体積となるダイオードコネクタを設計することができる。
また、相関式(D)〜(F)が一次関数で表され、この相関式(D)〜(F)に、ダイオードチップ33の発熱温度と、リードフレーム31、32及びブリッジ34の合計体積と、のいずれか一方を適用することで、他方を算出することができるので、発熱温度に対する合計体積、又は、合計体積に対する発熱温度、を容易に算出することができる。そのため、一方の情報に対して、必要十分な他方の情報を容易に算出することができ、ダイオードコネクタの設計を容易且つ最適に行うことができる。
また、ダイオードチップ33のチップサイズ毎に異なる相関式を記憶しているので、外形サイズの異なるそれぞれのダイオードチップ33を用いたダイオードコネクタの設計を行うことができ、多くの種類のダイオードコネクタを設計することができる。また、あるチップサイズのダイオードチップ33を用いた設計を行ったときに、そのダイオードチップ33に対応する相関式を満足できなかったときは、そのダイオードチップ33をチップサイズの異なる他のダイオードチップ33に置き換えて設計することが可能となる。そのため、ダイオードチップ33の置き換えによって、より幅広い条件に対応することが可能となり、外形サイズへの要求仕様が厳しいダイオードコネクタ30の設計を容易に行うことができる。
また、実測に基づく相関式(D)〜(F)を用いているので、ダイオードコネクタ設計装置2で設計したダイオードコネクタ30は、その実動作において、その放熱性能が設計から大きく外れることがない。そのため、ダイオードコネクタ30の実動作の結果から、合計体積又ははんだの種類に変更が必要となったとしても、それらを大きく変更する必要がないため、実動作の結果を設計にフィードバックする設計サイクルを短縮することができ、設計コストを低減することができる。
なお、第2の実施形態においては、情報入力部51に、ろう材の種類と合計体積とのいずれか一方と、それぞれに対応する制約条件と、を入力するものであったが、ろう材の種類と共に、リードフレーム31、32又はブリッジ34のいずれか一方の体積を入力するようにして、ろう材の種類、融点情報J1、及び、相関式(D)〜(F)、に基づいて決定した合計体積から、入力されたリードフレーム又はブリッジのいずれか一方の体積を差し引いて、リードフレーム又はブリッジのうち他方の体積として、表示部12への表示等を行っても良い。
以下に、本発明に係るダイオードコネクタ設計装置の第3の実施形態を、図11〜図13を参照して説明する。
ダイオードコネクタ設計装置3は、第1の実施形態と同様に、図2に示すダイオードコネクタ30を設計するための装置であり、使用するろう材の種類とダイオードコネクタ30の品名とを入力することにより、リードフレーム31、32及びブリッジ34の合計体積の最小値及び最大値を算出するものである。また、ダイオードコネクタ設計装置3は、図11に示すように、情報入力部55と、演算装置65と、表示部12と、を備えている。なお、表示部12については第1の実施形態と同一であるためその説明を省略する。
情報入力部55は、請求項の入力手段に相当し、はんだ35として用いるろう材の種類とダイオードコネクタ30の品名と、を、演算装置65に入力するために用いられる。ダイオードコネクタ30の品名は、ダイオードコネクタ30の外形サイズ毎に設定されており、また、その品名にはダイオードコネクタ30に許容される最大の合計体積(合計体積の許容最大値)が関連づけられている。情報入力部55は、上記以外は第1の実施形態の情報入力部11と同一であるため、それら説明は省略する。
演算装置65は、周知のCPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read−Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、を備えたコンピュータである。演算装置65は、図11に示すように、記憶手段としての記憶部66と、決定手段としての合計体積決定部67と、を備えている。
記憶部66は、ダイオードコネクタ設計装置3を動作させるためのプログラムなどを記憶している。記憶部66は、情報入力部55から入力された、ろう材の種類と、ダイオードコネクタ30の品名と、を一旦記憶する。
また、記憶部66は、ダイオードチップ33のチップサイズが異なるダイオードコネクタ毎に実測した、合計体積とダイオードチップ33の発熱温度との関係に関する相関グラフ(図6)から求めた相関式
Td=(−1.4)V+425 [ダイオードチップ 1.8mm角]・・・(D)
Td=(−1.4)V+340 [ダイオードチップ 2.3mm角]・・・(E)
Td=(−1.4)V+320 [ダイオードチップ 2.9mm角]・・・(F)
ただし、Tdはダイオードチップの発熱温度、Vは合計体積
を予め記憶している(相関式(D)〜(F)は再掲。実測方法等については後述する)。
この相関式(D)は、1.8mm角のチップサイズのダイオードチップ33に対応するものであり、相関式(E)は、2.3mm角のチップサイズのダイオードチップ33に対応するものであり、相関式(F)は、2.9mm角のチップサイズのダイオードチップ33に対応するものである。そして、これら相関式は、請求項の相関情報に相当し、ダイオードチップ種類(チップサイズ)毎に異なるものとなっている。また、相関式は、チップの個数によっても異なる。相関式は、チップの個数が複数の場合若しくは上述したチップサイズ以外の場合においても有効であり、これら各構成における相関式を適切に求めることで、それを用いた設計が可能である。
また、記憶部66は、使用する相関式を記憶するための相関式情報領域を有し、初期状態において、相関式情報領域には相関式(D)を示す情報が格納されている。また、記憶部66は、図12に示す、合計体積制約情報R3を記憶している。合計体積制約情報R3には、ダイオードコネクタ30の品名と、その品名において予め求められた合計体積の許容最大値とを関連づけた情報である。また、合計体積の許容最大値には、例えば、ダイオードコネクタのパッケージの外形サイズ(縦、横、高さ)から絶縁に必要な肉厚(例えば、1.0mm)を差し引いた値を、それぞれ掛け合わせて得た体積値、あるいは、パッケージの外形サイズに対して所定の割合(例えば、65%)となる体積値、などを予め算出して設定している。記憶部66は、上記以外は第1の実施形態の記憶部21と同一であるため、それら説明は省略する。
合計体積決定部67は、情報入力部55にろう材の種類が入力されたとき、融点情報J1に基づいて、入力されたろう材の種類に応じた融点を算出し、算出したろう材の融点をダイオードチップ33の発熱温度として相関式(D)に適用して、合計体積を算出(決定)する。そして、情報入力部55に入力されたダイオードコネクタ30の品名と合計体積制約情報R3とに基づいて、合計体積の許容最大値を求める。そして、算出した合計体積が許容最大値以下か否かを判定し、算出した合計体積が許容最大値以下であれば処理を終了し、さもなければ、算出した合計体積が許容最大値以下になるまで相関式を順次(E)、(F)と変更して、合計体積の算出を繰り返し行う。また、上記以外にも、使用するダイオードチップ33のチップサイズ及び個数が予め決められている場合は、それに対応する1つの相関式のみ用いて合計体積を算出しても良い。
合計体積決定部67は、詳細には、以下の順に処理を行う。はじめに、記憶部66に一旦記憶されたろう材の種類と、融点情報J1とを照らし合わせて、そのろう材の種類の有する融点を取得する。つぎに、そのろう材の種類の融点を、ダイオードチップ33の発熱温度として、相関式(D)に適用して、合計体積を算出する。次に、合計体積制約情報を用いて、記憶部66に一旦記憶されたダイオードコネクタ30の品名における合計体積の許容最大値を取得し、その許容値と算出された合計体積とを比較する。そして、算出された合計体積が許容最大値以下のときは合計体積が決定され、算出された合計体積の方が許容最大値より大きければ、相関式(D)を相関式(E)に変更して、再度合計体積を算出し、再度合計体積の許容最大値と比較する。そして、再度算出された合計体積の方が許容最大値以下のときは合計体積が決定され、再度算出された合計体積の方が許容最大値より大きければ、相関式(E)を相関式(F)に変更して、再々度合計体積を算出(決定)する。
次に、上述した演算装置65のCPUが実行する本発明に係る決定処理の一例を、図13に示すフローチャートを参照して説明する。
演算装置65のCPUは、電源が投入されると、所定の初期化処理等を実行したのち、ステップS211に進む。ステップS211では、情報入力部55に対して、ろう材の種類とダイオードコネクタ30の品名とが入力されたか否かを判定する。詳細には、記憶部66に、ろう材の種類とダイオードコネクタ30の品名とが記憶されているか否かを確認する。ろう材の種類とダイオードコネクタ30の品名とが共に記憶されていたときは、情報入力部55に対する入力があったものと判定してステップS251に進み(S211でY)、ろう材の種類とダイオードコネクタ30の品名とのうちどちらか一方でも記憶されていなかったときは、情報入力部55に対する入力がないものと判定して、入力があるまでステップS211の処理を繰り返す(S211でN)。
ステップS251では、記憶部66に記憶されているろう材の種類を、予め記憶部66に記憶されている融点情報J1に照らし合わせて、そのろう材の種類の融点を取得する。取得後、ステップS261に進む。
ステップS261では、記憶部66の相関式情報領域を参照して、使用する相関式を示す情報を取得し、取得した相関式を示す情報に基づいて、予め記憶部66に記憶されている複数の相関式の中から、使用する相関式を選択する。そして、ステップS251で取得したろう材の種類の融点を、ダイオードチップ33の発熱温度として、選択した相関式に適用して、合計体積を算出する。そして、ステップS262に進む。
ステップS262では、記憶部66に記憶されているダイオードコネクタ30の品名を、予め記憶部66に記憶されている合計体積制約情報R3に照らし合わせて、その品名に対応する合計体積の許容最大値を取得する。取得後、ステップS263に進む。
ステップS263では、ステップS261で算出した合計体積が、ステップS262で取得した合計体積の許容最大値以下であるか否かを判定し、算出した合計体積が許容最大値以下の場合は、合計体積が決定されたものとして、ステップS170に進み(S263でY)、許容最大値を超える場合は、相関式を変更するため、ステップS265に進む(S263でN)。
ステップS265では、相関式情報領域に格納されている相関式を示す情報を、チップサイズが一段階大きいダイオードチップ33に関する相関式を示す情報に変更する。即ち、相関式(D)を示す情報が格納されていたときは、相関式(E)を示す情報に変更する。相関式(E)を示す情報が格納されていたときは、相関式(F)を示す情報に変更する。そして、再度、合計体積を算出するため、ステップS261に進む。
ステップS270では、ステップS263で決定した合計体積を、合計体積の最小値として表示部12に表示し、そして、ステップS262で取得した合計体積の許容最大値を、合計体積の最大値として表示部12に表示する。そして、本フローチャートの処理を終了する。
なお、ステップS251、S261、S262、S263、S265が合計体積決定部67に相当する。そして、合計体積決定部62が、請求項の決定手段に相当する。
次に、上述したダイオードコネクタ設計装置3における、本発明に係る決定処理動作の一例を説明する。
ダイオードコネクタ設計装置3は、情報入力部55に、ろう材の種類を示す情報、例えば、図5の融点情報J1に含まれるSn/Zn9.0の合金組成のろう材を示す番号である「21」と、ダイオードコネクタ30の品名「DC−SS」と、が入力されると、入力された番号「21」をインデックスとして、融点情報J1から、そのろう材の種類の有する融点「199℃」を取得する。そして、取得した融点「199℃」を、ダイオードチップ33の発熱温度として、相関式(D)に適用して、合計体積「161mm3」を算出する。次に、入力されたダイオードコネクタ30の品名「DC−SS」をインデックスとして、合計体積制約情報R3から、合計体積の許容最大値「90mm3」を取得する。そして算出した合計体積「161mm3」と、合計体積の許容最大値「90mm3」と、を比較する。算出した合計体積の方が大きいので、相関式(D)を相関式(E)に変更する。
次に、相関式(E)を用いて、再度、合計体積を算出する。合計体積は「101mm3」になる。そして、再度算出した合計体積「101mm3」と、合計体積の許容最大値「90mm3」と、を比較する。再度算出した合計体積の方が大きいので、相関式(E)を相関式(F)に変更する。
次に、相関式(F)を用いて、再々度、合計体積を算出する。合計体積は「86mm3」になる。そして、再々度算出した合計体積「86mm3」と、合計体積の許容最大値「90mm3」と、を比較する。再々度算出した合計体積の方が小さいので、合計体積を決定する。そして、決定した合計体積「86mm3」を、合計体積の最小値として表示部12に表示し、合計体積の許容最大値「90mm3」を、合計体積の最大値として表示部12に表示して、動作を終了する。
以上より、本実施形態によれば、ろう材の種類とダイオードコネクタ30の品名とが入力されると、その入力されたろう材の種類と、融点情報J1と、相関式(D)〜(E)と、に基づいて、必要となる合計体積(即ち、合計体積の最小値)を決定し、そして、入力されたダイオードコネクタ30の品名と合計体積制約情報R3とに基づいて合計体積の許容最大値を決定するので、予めダイオードコネクタ30におけるリードフレーム31、32とブリッジ34との合計体積の最小値及び最大値を求めることができ、その最大値及び最小値によって規定される範囲に含まれるように、合計体積を決定することで、はんだ35が溶融することがなく、合計体積(即ち、外形サイズ)の制約を満足するダイオードコネクタ30を設計することができる。また、特に、許容過電流に基づく相関式(D)〜(E)を用いているので、許容過電流に耐えうるダイオードコネクタ30を設計することができる。
また、相関式(D)〜(F)が一次関数で表され、この相関式(D)〜(F)に、ダイオードチップ33の発熱温度(即ち、ろう材の融点)を適用することで、リードフレーム31、32及びブリッジ34の合計体積を算出することができるので、発熱温度に対する合計体積を容易に算出することができる。そのため、ダイオードチップ33の発熱温度に対する、必要十分な合計体積を容易に算出することができ、ダイオードコネクタの設計を容易且つ最適に行うことができる。
また、ダイオードチップ33のチップサイズ毎に異なる相関式を記憶しているので、外形サイズの異なるそれぞれのダイオードチップ33を用いたダイオードコネクタの設計を行うことができ、多くの種類のダイオードコネクタを設計することができる。また、あるチップサイズのダイオードチップ33を用いた設計を行ったときに、そのダイオードチップ33に対応する相関式を満足できなかったときは、そのダイオードチップ33をチップサイズの異なる他のダイオードチップ33に置き換えて設計することが可能となる。そのため、ダイオードチップ33の置き換えによって、より幅広い条件に対応することが可能となり、例えば、外形サイズへの要求仕様が厳しいダイオードコネクタ30の設計を容易に行うことができる。
また、実測に基づく相関式(D)〜(F)を用いているので、ダイオードコネクタ設計装置3で設計したダイオードコネクタ30は、その実動作において、その放熱性能が設計から大きく外れることがない。そのため、ダイオードコネクタ30の実動作の結果から、合計体積又ははんだの種類に変更が必要となったとしても、それらを大きく変更する必要がないため、実動作の結果を設計にフィードバックする設計サイクルを短縮することができ、設計コストを低減することができる。
なお、上述した第3の実施形態では、3つの相関式を記憶部66に記憶して、相関式に基づいて算出される合計体積が、許容最大値を超える場合は順次大きいチップサイズの相関式に変更するものであったが、これに限定するものではなく、相関式を1つのみ記憶し、その相関式に基づいて算出される合計体積が、許容最大値を超える場合は、エラーを出力して処理を終了するものなどであってもよい。また、初期状態において、相関式情報領域に、相関式(D)以外を示す情報を格納しても良い。
また、上述した第3の実施形態では、使用するろう材の種類を入力し、融点情報J1からこのろう材の融点を取得するものであったが、これに限定するものではなく、例えば、使用するろう材の種類に対応する融点を直接入力して、融点情報J1を参照することなく、入力された融点を用いて本発明に係る処理を行っても良い。
なお、上述した第1、第2、第3の実施形態では、合計体積決定部22、62、82において、ろう材の融点を、ダイオードチップ33の発熱温度として、合計体積を算出することで、必要最小限の合計体積を求めることができるが、例えば、ろう材の融点に対して10℃程度のマージンを設定し、ろう材の融点から10℃低い温度をダイオードチップ33の発熱温度として、合計体積を算出しても良い。そのようにすることで、合計体積は増加するものの、ダイオードコネクタ30の実動作時の発熱マージンを設けることができる。
また、上述した第1、第2の実施形態では、ろう材種類決定部23、63において、算出したダイオードチップ33の発熱温度以上でそれに最も近い融点を有するろう材種類を選択しており、例えば、同一の融点を有するろう材の種類が複数ある場合は、それら複数のろう材の種類が選択される。なお、同一の融点を有するろう材の種類において、コスト順などによって、それらの優先順位を予め記憶部21、61に記憶しておき、その優先順位に従って選択をおこなってもよい。また、選択するろう材の種類は、算出したダイオードチップ33の発熱温度以上あればよいので、それに最も近い融点を有するろう材ではなく、ダイオードチップ33の発熱温度以上のろう材の種類の中からもっとも安価のものを選択するなどしてもよい。
また、上述した第1、第2、第3の実施形態では、一対のリードフレームを有するダイオードコネクタを設計する装置に関するものであったが、これに限定するものではなく、3つ以上のリードフレームを有するダイオードコネクタの設計にも適用が可能なものである。また、ブリッジについても、一対のリードフレームを跨いで配設されるものであったが、これに限定するものではなく、3つ以上のリードフレームを跨いで、それぞれを接続するように配設されるブリッジを有するダイオードコネクタの設計にも適用が可能なものである。なお、上記適用を行う場合は、それぞれのダイオードコネクタと同等の構成において、実測を行い、相関式を予め求めて、各ダイオードコネクタ設計装置の記憶部に記憶しておく必要がある。
次に、上述した各実施形態で用いている相関式について、図9〜図11を参照して説明する。
本発明者は、ダイオードチップ33のチップサイズがそれぞれ異なるダイオードコネクタ30を複数作製し、それらダイオードコネクタ30に対して、所定の許容過電流を通電して、そのときのダイオードチップ33の最大発熱温度を測定した。そして、この測定結果を用いて、カソード側リードフレーム31、アノード側リードフレーム32、及び、ブリッジ34の合計体積と、ダイオードチップ33の発熱温度と、の関係に関する相関グラフ(図6)に表し、この相関グラフに基づいて、上述した各実施形態で用いている各相関式を導き出した。
図9は、上記測定に用いた測定構成である。Isは一定の電流をダイオードコネクタ30に通電するための定電流源であり、既存の直流電圧電流発生器を用いている。この直流電圧電流発生器の正極をアノード側リードフレーム32に、負極をカソード側リードフレーム31に、それぞれ定格電流80Aの被覆導線を用いて直接接続して、回路を形成している。そして、ダイオードコネクタ30における電圧降下を測定するための電圧計VMを、アノード側リードフレーム32とカソード側リードフレーム31とに跨って、ダイオードコネクタ30に並列に接続している。
ダイオードチップ33の発熱温度の測定は以下のように行う。測定対象となるダイオードコネクタ30として、ダイオードチップ33のチップサイズ1.8mm角、2.3mm角、2.9mm角、毎に、それぞれの合計体積が50mm3、100mm3、150mm3、200mm3、となるものを作製する。また、各ダイオードチップ33は、その発熱温度とアノード−カソード間の電圧降下とに相関関係を有しており、この相関関係情報(例えば、相関グラフなど)を、あらかじめダイオードチップの製造者から入手、若しくは、実測などして準備する。そして、このダイオードコネクタ30において必要とされる許容過電流を設定し、具体的には、このダイオードコネクタ30は、定格電流10Aのヒューズが配設された回路に組み込まれるものであり、そのヒューズの溶断特性に基づいて、20Aの電流を6秒間、30Aの電流を3秒間、40Aの電流を1秒間、60Aの電流を0.5秒間、とする許容過電流を設定している。そして、上記測定構成において、ダイオードコネクタ30に上記各許容過電流を通電し、電圧計VMによって測定した電圧降下と上記相関関係とに基づいて、ダイオードチップ33の発熱温度を測定する。
(実施例1)
測定は、上述した測定構成を用いて、上記各ダイオードコネクタ30について実施した。測定方法は、ダイオードコネクタ30に対して、上述した許容過電流を通電して、それぞれの許容過電流の通電時におけるダイオードチップ33の発熱温度のピーク値(最大値)を測定した。そして、ダイオードチップ33の各チップサイズにおいて、合計体積毎に、発熱温度のピーク値が最も大きいものをダイオードチップ33の最大発熱温度として抽出した。その抽出データR2を、図10に示す。そして、この抽出データR2を、ダイオードチップ33のチップサイズ毎に、グラフに表したものが、図6に示す相関グラフである。
この図6に示す相関グラフについて考察する。各グラフは、合計体積が増加するにしたがって、最大発熱温度が一定の割合で減少、即ち、線形的変化をしており、このグラフが一次関数で示されることがわかる。また、ダイオードチップ33のチップサイズが大きくなるにしたがって、グラフ全体が下方に位置しているので、チップサイズが大きいほど、小さい合計体積で放熱が可能なことが判る。また、各グラフは、互いに平行であるので、ダイオードチップ33のチップサイズにかかわらず、合計体積の変化に対するダイオードチップ33の最大発熱温度の変化の割合は一定であることがわかる。
そして、これら相関グラフに基づいて、それぞれに対応する一次関数を求めると、上述した相関式(D)〜(F)を導き出すことができる。つまり、ダイオードチップ33の各チップサイズにおける、合計体積の変化に対するダイオードチップ33の発熱温度の変化を示す温度係数(即ち、グラフの傾き)が(−1.4)となり、そして、ダイオードチップ33単体(即ち、合計体積が0)での発熱温度を示す温度定数が、チップサイズ1.8mm角における温度定数が425、チップサイズ2.3mm角における温度定数が340、チップサイズ2.9mm角における温度定数が320、となる。
なお、本発明者は、合計体積とダイオードチップの発熱温度との関係について実測を行い、それぞれの相関式を導き出しているが、これに限定されるものではなく、例えば、リードフレーム及びブリッジの合計表面積とダイオードチップの発熱温度との関係等について、相関式を導き出して、ダイオードコネクタの設計に用いても良い。ただし、ダイオードコネクタにおいては、外形サイズやコストの制約等があるので、リードフレーム及びブリッジの形状を大きく変更することができない。そのため、放熱効率を高めるために表面積を大きくすることが容易ではない。したがって、合計表面積より、合計体積との相関式を用いる方がより現実に即している。また、本発明者は、ダイオードチップのチップサイズ毎に相関式を求めているが、例えば、リードフレーム及びブリッジの素材として用いられる、互いに放熱特性の異なる合金毎に相関式を求めても良い。また、実測によらず、例えば、コンピュータ上での熱解析(シミュレーション)などを用いて相関式をも求めても良い。
また、本発明者は、上記測定において過電流を通電したときのダイオードチップ33の発熱温度ピーク値(最大値)を測定して、合計体積との相関関係を求めているが、これに限らず、通常動作における最大電流が定常的に流れているときの最大発熱温度を測定して、その最大発熱温度と合計体積との相関関係を求めるなど、ダイオードコネクタ30の使用状況等に応じて、相関関係を適宜決定することができる。
また、本発明に係るダイオードコネクタ設計方法を用いて、パッケージの外形サイズが制約されているダイオードコネクタにおいて、リードフレーム及びブリッジの合計体積が取りうる最大値及び最小値を求めることができる。
一例を挙げると、まず、ダイオードコネクタに使用するろう材の融点(厳密には融点よりわずかに低い温度)を取得して、該ダイオードコネクタのチップサイズに係る相関式に当てはめ、合計体積の最小値を算出する。次に、パッケージの外形サイズに基づき、例えば、絶縁に必要な最低限の肉厚を各サイズから差し引くなどして、許容可能な合計体積の最大値(合計体積の最大許容値)を算出する。なお、使用可能なろう材の種類が複数あるときは、それらの中で最も融点が低いものを選択し、使用するダイオードチップに係る相関式に当てはめて、合計体積の最小値を算出しても良い。つまり、最も低い融点のろう材に対して許容過電流に耐えうる合計体積であれば、より融点の高い他のろう材を使用したときでも許容過電流に耐えうるものとなる。
このようにして、リードフレーム及びブリッジの合計体積が取りうる範囲を求めることで、その数値範囲に当てはまるようにリードフレーム及びブリッジを設計すれば、外形サイズの制約を満足すると共に、許容過電流に耐えうるダイオードコネクタが得られるので、許容過電流が通電されてもはんだが溶融することのない信頼性の高いダイオードコネクタを容易に設計することができる。
次に、上述した本発明に係る第3の実施形態のダイオードコネクタ設計装置3を用いて、リードフレーム及びブリッジの合計体積が取りうる範囲を定めたダイオードコネクタを示す。なお、以下に示す、ダイオードコネクタ設計装置3で設計した各ダイオードコネクタにおいては、予めダイオードコネクタの品名、ダイオードチップのチップサイズ及び個数、並びに、使用するはんだの種類(即ち、はんだ(ろう材)の融点)が定められており、それぞれの構成における相関式を用いて設計を行った。
図14に示すように、ダイオードコネクタ30は、定格電流1.5Aであり、2つのリードフレーム31、32と、リードフレーム31に実装されたチップサイズ2.3mm角の1つのダイオードチップ(不図示)と、該ダイオードチップを介して、2つのリードフレーム31、32とを接続するブリッジ37と、2つのリードフレーム31、32の一部と、ブリッジ34と、を内包するように配設されたパッケージ37と、を有しており、それぞれのリードフレーム31、32とダイオードチップとブリッジ34とが、融点が190.2℃以上はんだによって接合されている。そして、このダイオードコネクタの品名は「DC−S」であり、図12の合計体積制約情報R3に示すように、パッケージ37の最大外形サイズが、縦9.5mm、横7.8mm、高さ5.2mmに制限されており、その合計体積の許容最大値は243mm3である(パッケージ37において絶縁に必要な最低限の肉厚を1.0mmに設定して算出)。また、図6に示す相関グラフから、このダイオードコネクタ30における、合計体積Vとはんだ融点Tsとの関係を示す相関式は、
Ts≧(−1.4)V+340 ・・・(G)
である。これらから、図14に示すダイオードコネクタ30において、最低限必要とされる合計体積の最小値は107mm3となり、合計体積の最大値は243mm3となる。
図15に示すように、ダイオードコネクタ70は、定格電流1.5Aであり、3つのリードフレーム71、72、73と、リードフレーム71、73に実装されたチップサイズ2.3mm角の2つのダイオードチップ(不図示)と、該ダイオードチップを介して、3つのリードフレーム71、72、73とを接続するブリッジ74と、3つのリードフレーム71、72、73の一部と、ブリッジ74と、を内包するように配設されたパッケージ77と、を有しており、それぞれのリードフレーム71、72、73とダイオードチップとブリッジ74とが、融点が182.2℃以上のはんだによって接合されている。そして、このダイオードコネクタの品名は「DC−M」であり、図12の合計体積制約情報R3に示すように、パッケージ77の最大外形サイズが、縦9.5mm、横11.8mm、高さ5.2mmに制限されており、その合計体積の許容最大値は386mm3である(パッケージ77において絶縁に必要な最低限の肉厚を1.0mmに設定)。また、図18に示す相関グラフから、このダイオードコネクタ70における、合計体積Vとはんだ融点Tsとの関係を示す相関式は、
Ts≧(−1.2)V+300 ・・・(H)
である。これらから、図15に示すダイオードコネクタ70において、最低限必要とされる合計体積の最小値は98.2mm3となり、合計体積の最大値は386mm3となる。なお、図18に示す相関グラフは、リードフレーム端子が3極且つダイオードチップが2つ(2素子)のダイオードコネクタにおいて、図6に示す相関グラフと同様に、許容過電流を通電して実測した値に基づくものである。
図16に示すように、ダイオードコネクタ80は、定格電流1.5Aであり、4つのリードフレーム81、82、83、84と、リードフレーム81、82、84に実装されたチップサイズ2.3mm角の3つのダイオードチップ(不図示)と、該ダイオードチップを介して、4つのリードフレーム81、82、83、84とを接続するブリッジ86と、4つのリードフレーム81、82、83、84の一部と、ブリッジ86と、を内包するように配設されたパッケージ87と、を有しており、それぞれのリードフレーム81、82、83、84とダイオードチップとブリッジ86とが、融点が163.0℃以上のはんだによって接合されている。そして、このダイオードコネクタの品名は「DC−L」であり、図12の合計体積制約情報R3に示すように、パッケージ87の最大外形サイズが、縦9.5mm、横15.8mm、高さ5.2mmに制限されており、その合計体積の許容最大値は528mm3である(パッケージ87において絶縁に必要な最低限の肉厚を1.0mmに設定)。また、図19に示す相関グラフから、このダイオードコネクタ80における、合計体積Vとはんだ融点Tsとの関係を示す相関式は、
Ts≧(−1.2)V+325 ・・・(I)
である。これらから、図16に示すダイオードコネクタ80において、最低限必要とされる合計体積の最小値は135mm3となり、合計体積の最大値は528mm3となる。図19に示す相関グラフは、リードフレーム端子が4極且つダイオードチップが3つ(3素子)のダイオードコネクタにおいて、図6に示す相関グラフと同様に、許容過電流を通電して実測した値に基づくものである。
図17に示すように、ダイオードコネクタ90は、定格電流3Aであり、2つのリードフレーム91、92と、リードフレーム91に実装されたチップサイズ2.9mm角の1つのダイオードチップ(不図示)と、該ダイオードチップを介して、2つのリードフレーム91、92とを接続するブリッジ97と、2つのリードフレーム91、92の一部と、ブリッジ94と、を内包するように配設されたパッケージ97と、を有しており、それぞれのリードフレーム91、92とダイオードチップとブリッジ94とが、融点が126.8℃以上のはんだによって接合されている。そして、このダイオードコネクタの品名は「DC−T」であり、図12の合計体積制約情報R3に示すように、パッケージ97の最大外形サイズが、縦11.8mm、横7.8mm、高さ5.2mm(リブを含めると6.2mm)に制限されており、その合計体積の許容最大値は308mm3である。また、図6に示す相関グラフから、このダイオードコネクタ90における、合計体積Vとはんだ融点Tsとの関係を示す相関式は、
Ts≧(−1.4)V+320 ・・・(J)
である。これらから、図17に示すダイオードコネクタ90において、最低限必要とされる合計体積の最小値138mm3となり、合計体積の最大値は308mm3となる。
上記ダイオードコネクタ30、70、80、90によれば、リードフレーム及びブリッジが取りうる合計体積の最小値及び最大値が定められているので、リードフレーム及びブリッジの合計体積がこの最小値及び最大値で規定される範囲内となるように合計体積を決定することで、通電によってはんだが溶融することがなく且つ合計体積、即ち、外形サイズの制約を満たすダイオードコネクタを得ることができる。
なお、上述した各実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。