以下、本発明のエアバッグ装置の一実施の形態を図面を参照して説明する。
図1ないし図4において、1はエアバッグ装置で、このエアバッグ装置1は、カーテンエアバッグあるいは側突用エアバッグなどとも呼ばれるエアバッグ2を備え、図3及び図4に示すように、通常時には、車両である自動車の車体3の車室4のルーフサイド部5に配置され、側面衝突の衝撃を受けた際や横転の際などに、図5及び図6に示すように、上方から下方あるいはほぼ下方である所定方向に向かい、乗員の側方の所定面Sに沿って広く面状に展開し、被保護物である乗員を保護するようになっている。なお、以下の記載において、上下方向、前後方向などの方向は、車両の直進方向を基準とし、内側及び外側は、車室4から両側の外方に向かう方向を外側あるいは車外側、車外から車室4内に向かう方向を内側あるいは車内側として説明する。
そして、この自動車の車体3は、車室4内に乗員が着座可能な前席及び後席を備え、これら前席及び後席に対応して、それぞれ窓部を備えた図示しないドアが設けられている。また、車室4の両側には、前側から順に、Aピラーとも呼ばれるフロントピラー、Bピラーとも呼ばれるセンターピラー、Cピラーとも呼ばれるリアピラーが設けられている。そして、これら窓部、ドア及び各ピラーにより、車室4の両側部に側部としての所定面Sが構成されている。また、これらピラーの上側、すなわち窓部の一縁部である上縁部に、ルーフサイドレールなどとも呼ばれる被取付部材を構成する被取付面部である被設置部としての車体パネル15が設けられ、この車体パネル15を介して天井部としての天井パネル16が支持されている。
また、両側のフロントピラーの前側にはフロントガラス(フロントウインドシールド)が設けられ、両側のリアピラーの後側にはリアガラス(リアウインドシールド)が設けられている。そして、ルーフサイド部5は、天井パネル16の両側の縁部の部分から、この縁部といわば交差する方向に伸びるフロントピラーの一部あるいは全長、及び、必要に応じてリアピラーの一部あるいは全長にかかる部分に設定されている。
また、図示しないが、車体パネル15及び天井パネル16の車室4側の一部は、各ピラーの一部とともに、軟質すなわち変形可能な天井板であり室内装飾パネルであるヘッドライニング(ルーフライニング)により覆われている。また、ルーフサイド部5には、各座席の上方に位置して、グラブレールなどとも呼ばれる付属品である図示しないアシストグリップが設けられている。そして、フロントピラーからルーフサイド部5を介してリアピラーに係る部分に、エアバッグ装置1を構成する主カバー体である内装部材としての樹脂製のルーフガーニッシュ20及び調整カバー体としてのロアピラーガーニッシュ21が備えられているとともに、各ピラーの全長あるいは一部の車室4側には、それぞれ内装部材である第1のピラーガーニッシュ、第2のピラーガーニッシュ、及び端部カバー体としての第3のピラーガーニッシュ23が取り付けられ、これらピラーが覆われている。
そして、エアバッグ装置1は、カーテンエアバッグモジュールあるいはルーフサイドモジュールなどとも呼ばれるもので、図1及び図2などに示すように、エアバッグ2、ルーフガーニッシュ20、第3のピラーガーニッシュ23、及びロアピラーガーニッシュ21に加え、エアバッグ装置1を車体パネル15に取り付ける単数あるいは複数のブラケット25、このブラケット25に取り付けられる単数あるいは複数のヒンジ体26、折り畳んだエアバッグ2に沿って配置された案内体であるプロテクタ28、及びエアバッグ2にガスを供給するガス発生器であるインフレータ29などを組み合わせ、いわばサブアッセンブリーしてモジュールが構成され、このモジュールが車体パネル15のルーフサイド部5に沿って配置されている。すなわち、エアバッグ装置1及び折り畳まれたエアバッグの長手方向(図1における矢印A方向)は、ルーフサイド部5の長手方向である前後方向に沿って車体3に取り付けられ、すなわちルーフサイドに配置される。
そして、エアバッグ2は、サイドカーテンエアバッグ(SCAB)あるいは側突用エアバッグなどとも呼ばれるもので、各図においては模式的に示しているが、単数あるいは複数の基布を組み合わせ、例えば1枚の基布を折り返し、あるいは2枚の基布を重ねて外周部などを接合して、扁平な袋状に形成されたエアバッグ本体部31と、このエアバッグ本体部31の複数カ所から延設された取付片部32となどを備え、所定の折り畳み方法で前後方向を長手方向として細長く折り畳まれ、図示しない筒状あるいはひも状などの形状保持部材により形状を保持されている。そして、このエアバッグ2は、前後の座席の乗員を保護可能な、前後方向に長尺ないわゆる前後席用エアバッグであり、エアバッグ本体部31には、ガスが流入して膨張展開する袋状の膨張部と、エアバッグ本体部31の後端上部あるいは長手方向の中央上部など、本実施の形態では後端上部に位置して膨張部を外部に連通するガス導入口となどが設けられている。また、エアバッグ2の取付片部32は、エアバッグ本体部31の上縁部に連続して複数形成されている。そして、各取付片部32は、エアバッグ本体部31を構成する基布部と一体に形成され、エアバッグ本体部31から舌片状に突設されているとともに、先端部近傍に円孔状をなす取付片部取付孔32aが形成されている。また、エアバッグ2の前端部には、エアバッグ2とフロントピラーの前端部近傍とを連結するテザーベルト34が連結されている。
また、インフレータ29は、後席の後方あるいは上方に位置して収納され、本実施の形態ではリアピラーに沿って第3のピラーガーニッシュ23で覆われた円柱状の本体部29aを備え、接続管29bを介してエアバッグ2のガス導入口に接続されている。
そして、ルーフガーニッシュ20は、折り畳んだエアバッグ2を覆う内装部材であり、ルーフサイドガーニッシュ、あるいはルーフサイドトリムなどとも呼ばれるもので、弾性的に変形可能な合成樹脂にて一体に形成され、裏面側で折り畳まれたエアバッグ2を覆うとともに表面側が車室4内に露出するカバー本体部としてのガーニッシュ本体部41と、このガーニッシュ本体部41の上縁部から連続して一体に突設されたカバー取付部としてのガーニッシュ側取付部42とを備えている。そして、ガーニッシュ本体部41は、一端部である後端部の部分を除き、図3に示すように、下側部が下側に向かうにつれて外側に向かって滑らかに湾曲し、折り畳まれたエアバッグ2や車体パネル15などが車室4内に露出しないように覆う曲面状の下側板部41aが形成されている。また、この下側板部41aの裏面側には、外側である先端部近傍から、図示しない係止片部が爪状に突設されている。また、このガーニッシュ本体部41は、後端部の部分では、いわば下側部が切り取られた状態で、折り畳まれたエアバッグ2の下方の少なくとも一部を覆わずに開放する形状で、傾斜した平板状をなす側板部41bが形成されているとともに、この側板部41bの先端部には、複数の爪状の係合部41cが形成されている。
また、このルーフガーニッシュ20のガーニッシュ側取付部42は、図2に示すように、ガーニッシュ本体部41から外側に向かって延設された平板状の第1の取付片部44と、この第1の取付片部44の縁部の複数カ所から屈曲して上側に延設された第2の取付片部45とを備え、断面略L字状に形成されている。さらに、第2の取付片部45には、所定の間隔で円孔状の取付孔46が形成されているとともに、これら取付孔46の間の部分は屈曲され、補強用の凸条部47が形成されている。また、このガーニッシュ側取付部42の少なくとも第2の取付片部45の部分は、ヘッドライニングに覆われるようになっている。さらに、ガーニッシュ側取付部42には、第2の取付片部45同士の間の部分に位置して、図示しないアシストグリップに対向するアシストグリップ下側受部48が設けられている。
また、ブラケット25は、図2に示すように、ベースブラケットとも呼ばれ、車両の両側のルーフサイド部5に単数あるいは複数配置されねじなどの固定具にて取り付け固定されるもので、本実施の形態では、左右それぞれについて、エアバッグ装置1のほぼ全長にわたり一体的に延びる長尺なブラケット25が用いられている。そして、ブラケット25は、金属製で、例えば鉄板をプレス加工して、比較的剛性が大きく形成され、エアバッグ2の展開時にも変形しないように形成されている。そして、ブラケット25は、平板状をなすブラケット本体部である取付受部51と、ブラケット側取付部52と、付属品取付部であるアシストグリップ取付部53とが交互に形成されている。そして、取付受部51には、所定の間隔で、ねじ孔などを備えた複数のヒンジ体取付部54と、ねじ孔などを備えたプロテクタ取付部55と、ねじ孔などを備えたエアバッグ取付部56ととが形成されている。また、ブラケット側取付部52は、平板状をなして取付受部51とほぼ平行に、かつ、取付受部51よりも外側に位置し、円孔状の固定孔58が形成されている。また、アシストグリップ取付部53には、四角孔状の付属品取付孔であるアシストグリップ取付孔59が形成されている。
さらに、ヒンジ体26は、ブラケット25側とルーフガーニッシュ20側とを連結し、エアバッグ2の膨張展開時に、このエアバッグ2が膨張展開する圧力を受けて変形する部材であり、前側に位置する前側ヒンジ体26a、この前側ヒンジ体26aの後側に位置する中間側ヒンジ体26b、及びこの中間側ヒンジ体26bの後側に位置する後側ヒンジ体26cの3個を備えている。そして、各ヒンジ体26は、展開規制用ヒンジとも呼び得るもので、弾性的に変形可能な樹脂によりそれぞれ一体に形成することもできるが、本実施の形態では、金属製で、複数の金属板を溶接などして形成されている。そして、各ヒンジ体26は、それぞれヒンジ本体部60を複数備え、各ヒンジ本体部60は、板状をなす第1の取付部61と、この第1の取付部61に対向する板状をなす第2の取付部62と、これら第1の取付部61と第2の取付部62とを変形可能に連結するヒンジ屈曲部63とを備え、全体として断面略U字状に形成されている。さらに、これらヒンジ本体部60は、第2の取付部62に固着され前後に延設されたヒンジ連結部64により、互いに一体に連結されている。
そして、ヒンジ体26の第1の取付部61は、ブラケット25の取付受部51の内側面すなわち車室側に重ねて配置されるもので、ヒンジ体取付部54に位置合わせして、図3などに示す円孔状の第1の取付孔61aが形成されている。また、第2の取付部62は、ルーフガーニッシュ20の第2の取付片部45の外側面に重ねて配置されるもので、ねじ孔状などをなす第2の取付孔62aと、第1の取付部61の第1の取付孔に対向する円孔状の作業孔62bとが形成されている。なお、第2の取付孔62aは、作業孔62bに近接して隣接して配置される他、作業孔62bから離間してヒンジ連結部64の部分に配置されている。さらに、ヒンジ屈曲部63は、ヒンジ体26が主として変形する部分であり、第1の取付部61と第2の取付部62との基端側である上端部同士を円弧状に連結している。
さらに、プロテクタ28は、エアバッグの傷付き防止用カバーとも呼び得るもので、図2ないし図4に示すように、折り畳んだエアバッグ2の略全長あるいは一部に沿って配置され、本実施の形態では折り畳んだエアバッグ2の全長に沿うように配置され、合成樹脂にて一体に断面略L字状などに形成されている。すなわち、プロテクタ28は、折り畳んだエアバッグ2の外側から上側に沿うように滑らかな曲面板状に形成されたプロテクタ本体部としての案内部71を備えるとともに、案内部71と一体にこの案内部71の上側部から上方に突設された複数のプロテクタ側取付部73と、案内部71の上側部から上方に突設された図示しないアシストグリップに対向する2カ所のアシストグリップ上側受部74と、案内部71の下側部から内側に突設された複数のカバー先端支持部75とが形成されている。そして、案内部71には、図示しないが、折り畳まれたエアバッグ2の上側に沿う部分に、エアバッグ2の取付片部32が挿通する長手方向に沿った溝状の取付片部挿通部が形成されている。また、各プロテクタ側取付部73には、円孔状をなす取付孔73aが形成されている。さらに、案内部71には、図4に示すように、後端部の部分の上側部に連続し、ルーフガーニッシュ20のガーニッシュ側取付部42の裏面側に沿って立ち上げられた上片部77が形成されている。
また、第3のピラーガーニッシュ23は、例えば合成樹脂にて湾曲した板状に形成され、一体に形成され、図1及び図2に示すように、リアピラーの車内側に沿って配置され、このリアピラーを覆うとともに、このリアピラーに沿って配置されたインフレ−タ29の車内側を覆っている。すなわち、この第3のピラーガーニッシュ23は、ルーフガーニッシュ20の後端部の後側に接する端部位置Cを覆うとともに、この端部位置Cの下側に位置する端部下部位置Dを連続して覆っている。また、第3のピラーガーニッシュ23の裏面には、リアピラーに係合して固定される図示しないクリップが取り付けられている。
さらに、ロアピラーガーニッシュ21は、いわばルーフガーニッシュ20の後端部の下部を別部材としたもので、例えば合成樹脂にて側面視で三角状の湾曲した板状に形成された本体部21aを備え、この本体部21aが、ルーフガーニッシュ20の後端部と第3のピラーガーニッシュ23とが突き合わされる部分の下側の角部が意匠状滑らかに連続するようにルーフサイド部5の車体パネル15を覆っている。すなわち、このロアピラーガーニッシュ21の本体部21aは、車室4から見て、ルーフガーニッシュ20の後端部の下側に連続するとともに、第3のピラーガーニッシュ23の端部下部位置Dの前側に連続するようになっている。また、このロアピラーガーニッシュ21は、本体部21aの後側に取付部21bが突設され、この取付部21bが、第3のピラーガーニッシュ23の裏面にねじあるいは接着などにて取り付けられている。さらに、これら本体部21a及び取付部21bの上側の縁部に連続する部分が車外側に向かって平板状に突設され、上面に案内面部21cが形成されている。この案内面部21cは、平面状で、車内側に向かって下方に傾斜するように形成されている。さらに、この案内面部21cには、ルーフガーニッシュ20の係合部41cが離脱可能に係合する係合受部21dが凹部として複数形成されている。また、案内面部21cの下面側は、リブ21eにより本体部21aに連結され補強されている。
そして、このロアピラーガーニッシュ21をルーフガーニッシュ20と組み合わせた状態では、図4に示すように、ロアピラーガーニッシュ21の案内面部21cとルーフガーニッシュ20の側板部41bとが、ルーフガーニッシュ20の下側板部41aと同様に、折り畳まれたエアバッグ2に近接して対向し、プロテクタ28の案内部71との間にエアバッグ2を収納するエアバッグ収納部を構成している。そして、このロアピラーガーニッシュ21の案内面部21cにより、折り畳まれたエアバッグ2の下部と、ルーフガーニッシュ20の下端末との距離が、エアバッグ2の全長にわたり同等となり、このエアバッグ収納部の容積すなわち断面積は、下側板部41aが配置される部分と、側板部41b及び案内面部21cが配置された部分とで、同等となるように設定されている。なお、この実施の形態では、下側板部41a及び案内面部21cのいずれについても、折り畳まれたエアバッグ2に当接するように設定されている。
次に、このエアバッグ装置1の組立動作及び車両への取付動作を説明する。
まず、予め前後方向を長手方向とする細長い所定の形状に折り畳まれたエアバッグ2をプロテクタ28の案内部71の内側かつ下側に沿わせるとともに、エアバッグ2の各取付片部32を取付片部挿通部から上側に引き出す。そして、エアバッグ2の取付片部32をブラケット25のエアバッグ取付部56に沿わせ、ビスなどの固定具を取付片部取付孔32aに挿入して取付片部32をエアバッグ取付部56に固定し、ブラケット25にエアバッグ2を取り付ける。また、プロテクタ28のプロテクタ側取付部73をブラケット25のプロテクタ取付部55に沿わせ、ビスなどの固定具を取付孔73aに挿入してプロテクタ側取付部73をプロテクタ取付部55に固定し、ブラケット25にプロテクタ28を取り付ける。
また、各ヒンジ体26、すなわち前側ヒンジ体26a、中間側ヒンジ体26b、及び後側ヒンジ体26cの3個のヒンジ体26について、ヒンジ本体部60の第1の取付部61をブラケット25のヒンジ体取付部54に沿わせ、作業孔62bから挿入したビスなどの第1の固定具81を、第1の取付部61の第1の取付孔61aに挿入し、さらに、ブラケット25のヒンジ体取付部54のねじ孔などに螺合して締め付け、各ヒンジ体26をブラケット25に組み付けて固定し、中間組立体を構成する。
次いで、この中間組立体の車内側に、ルーフガーニッシュ20をあてがい、車内側からルーフガーニッシュ20の第2の取付片部45の取付孔46に挿入したビスなどの図示しない第2の固定具をヒンジ体26の第2の取付孔62aに螺合して締め付け、ルーフガーニッシュ20をヒンジ体26に取り付け、すなわちヒンジ体26を介してルーフガーニッシュ20をブラケット25に取り付ける。
さらに、この状態で、ルーフガーニッシュ20のガーニッシュ本体部41の下側に設けた係止片部が、プロテクタ28のカバー先端支持部75に係脱可能に係合して支持される。
さらに、ブラケット25のアシストグリップ取付部53に、図示しないアシストグリップを取り付ける。
このようにして、ブラケット25に、エアバッグ2、ルーフガーニッシュ20、プロテクタ28、及びヒンジ体26、さらにはアシストグリップが取り付けられたモジュールであるエアバッグ装置1、いわばサブアッセンブリーされたカーテンエアバッグモジュールが構成される。
また、ロアピラーガーニッシュ21は第3のピラーガーニッシュ23に接続しておく。
そして、このモジュール化されたエアバッグ装置1を車体3に取り付ける際は、機械あるいは作業者により、ブラケット25をルーフサイド部5に沿わせた状態で保持し、ブラケット25を、図示しないビスあるいはリベットなどの固着具を固定孔58に挿入して車体パネル15に固定して車体に取り付けるとともに、このブラケット25すなわちモジュールの取付作業の前後いずれかに、インフレータの接続管をエアバッグ2に接続し、インフレータを車体3側に備えた制御装置に電気的に接続する。
そして、第3のピラーガーニッシュ23を、リアピラーに係合などして取り付ける。同時に、ロアピラーガーニッシュ21がルーフガーニッシュ20の後端部の下部に配置され、係合部41cと係合受部21dとが係合して、ロアピラーガーニッシュ21とルーフガーニッシュ20とが隙間無く接続される。
このようにして、エアバッグ装置1の車体3への取付作業が完了する。
そして、このエアバッグ装置1及びヘッドライニングを車体3へ取り付けた状態では、ルーフガーニッシュ20のガーニッシュ側取付部42は、ヘッドライニングにより覆われて車室4側に露出しないとともに、ヘッドライニングの面とガーニッシュ本体部41の面とがほぼ面一に連続するようになっている。
次に、エアバッグ2の展開動作を説明する。
車両の側面衝突あるいは横転などの際には、制御装置によりインフレータ29が作動し、このインフレータ29から噴射されるガスが接続管29bを介しガス導入口からエアバッグ本体部31内の膨張部に導入される。すると、前後方向を長手方向として細長く折り畳まれたエアバッグ2のエアバッグ本体部31の膨張部は、図3及び図4に示す状態から、ルーフガーニッシュ20を押動して係止片部とカバー先端支持部75との係合を解除し、また、係合部41cと係合受部21dとの係合を解除して、図5及び図6に示すように、ルーフガーニッシュ20を押しのけながら膨張展開し、所定面Sに沿った所定方向である下方あるいは略下方に迅速にカーテン状に膨張展開して、窓部及びセンターピラーなどを覆い、乗員とセンターピラーなどとの衝突の衝撃を緩和するとともに、乗員の車外放出を防止して保護する。
そして、このエアバッグ2の膨張展開の際、樹脂製のルーフガーニッシュ20が弾性的に変形するとともに、ヒンジ体26のヒンジ本体部60がエアバッグ2の折り畳みの長手方向と交差する方向に開くように変形して、ルーフガーニッシュ20がヒンジ体26を回転軸として開く方向に回動する移動を許容し、エアバッグ2の展開初期の大きな衝撃を吸収しつつ、下方に向かうエアバッグ2の突出口を円滑に形成し、エアバッグ2を円滑に展開させる。このように、ルーフガーニッシュ20の変形のみならず、ヒンジ体26が変形してルーフガーニッシュ20全体の移動を許容することにより、エアバッグ2の展開初期の大きな衝撃を吸収するため、ルーフガーニッシュ20を保護し安定した適切な変形を可能とし、エアバッグ2を円滑に展開できる。すなわち、極端な高温時には、樹脂製のルーフガーニッシュ20の剛性が低下し、柔らかくなる場合があるが、ヒンジ体26の変形でエアバッグ2の展開初期の大きな衝撃を吸収することにより、ルーフガーニッシュ20の所望外の過度の変形を抑制できる。また、極端な低温時には、樹脂製のルーフガーニッシュ20の剛性が大きくなり、すなわち固くなって変形しにくくなる場合があるが、ヒンジ体26の変形でエアバッグ2の展開初期の大きな衝撃を吸収することにより、ルーフガーニッシュ20を保護できるため、ルーフガーニッシュ20に特殊な材料などを用いる必要がなく、製造コストを低減できる。このようにして、広い温度範囲で、樹脂製のルーフガーニッシュ20の挙動を容易に適切に制御できる。
さらに、このエアバッグ2の膨張展開の際、ルーフガーニッシュ20の後端部を除く部分では、エアバッグ2は、ガーニッシュ本体部41の下側板部41aを押圧し、この下側板部41a及びプロテクタ28の案内部71に案内されながら膨張展開し、ルーフガーニッシュ20の後端部の部分では、エアバッグ2は、ガーニッシュ本体部41の側板部41bを押圧し、この側板部41b、プロテクタ28の案内部71及びロアピラーガーニッシュ21の案内面部21cに案内されながら膨張展開する。
そして、ロアピラーガーニッシュ21の案内面部21cにより、折り畳まれたエアバッグ2の下部と、ルーフガーニッシュ20の下端末との距離が、ルーフガーニッシュ20の後端部の部分を含め、エアバッグ2の全長及びルーフガーニッシュ20の全長にわたり同等となり、エアバッグ2の全長にわたり、ルーフガーニッシュ20が同時に展開する。すなわち、ロアピラーガーニッシュ21の案内面部21cを設けたため、ルーフガーニッシュ20の後端部に形成される大きな空間部が無くなり、ルーフガーニッシュ20の後端部において、ルーフガーニッシュ20、さらにはエアバッグ2の展開速度が速められている。
このように、本実施の形態によれば、自動車のルーフサイド部5に配置されるいわゆる前後席用のカーテンエアバッグ装置であるエアバッグ装置1であって、細長く折り畳まれたエアバッグ2を長手方向に沿ってルーフガーニッシュ20で覆った構成について、エアバッグ2の膨張展開時に、ルーフガーニッシュ20を全長にわたり後端部まで同時に展開し、これによりエアバッグ2を全長にわたり後端部まで均一に円滑迅速に展開するとの好ましい挙動を容易に安定して実現でき、乗員を保護することができる。
すなわち、前後席用のカーテンエアバッグ装置に用いられるガーニッシュについては、通常、リアピラーを覆う第3のピラーガーニッシュ23に滑らかに連続して外観を向上するため、後端部において下側に膨出するように形成され、エアバッグ2の下側に他の部分にはないあるいは他の部分より大きい空間部が形成される。そして、ルーフガーニッシュ20の後端部までをエアバッグ2が膨張展開する保護域とする構成では、エアバッグ2の膨張展開時に、後端部以外の部分では、直ちにエアバッグ2に押動されてガーニッシュが展開するのに、後端部では、エアバッグ2が空間部を埋めるように展開した後、ガーニッシュを押動するため、後端部のガーニッシュの展開が遅れる傾向が生じる。これに対して本実施の形態では、ルーフガーニッシュ20の高さ寸法は全長にわたりほぼ一定とし、後端部の下部にルーフガーニッシュ20とは別部材のロアピラーガーニッシュ21を取り付け、このロアピラーガーニッシュ21の案内面部21cをエアバッグ2に対向させている。
そこで、本実施の形態では、ロアピラーガーニッシュ21を設けたため、ルーフガーニッシュ20の部分から、第3のピラーガーニッシュ23に滑らかに連続するカバー体を維持し、外観を向上できるとともに、エアバッグ2の膨張展開時には、ロアピラーガーニッシュ21の案内面部21cがエアバッグ2に対向して空間部を埋めているように機能し、ルーフガーニッシュ20の内側で大きく膨張展開することなく、ルーフガーニッシュ20の他の部分と同様の時間でエアバッグ2がルーフガーニッシュ20を押し開き、円滑迅速に展開させることができる。
すなわち、ロアピラーガーニッシュ21の案内面部21cは、折り畳まれたエアバッグ2と下側板部41aの内面との間の空間の容積と、折り畳まれたエアバッグ2と案内面部21cとの間の空間の容積とが等しくなるように設けたため、第3のピラーガーニッシュ23に近接する後端部と、他の部分とで、エアバッグ2がルーフガーニッシュ20を同時に押し開き、円滑迅速にエアバッグ2を膨張展開させることができる。
さらに、ロアピラーガーニッシュ21の案内面部21cを車室4内側に向かって傾斜する傾斜面とすることにより、この案内面部21cでエアバッグ2を案内し、安定した展開挙動で円滑迅速に展開させることができる。
また、ロアピラーガーニッシュ21は、ルーフガーニッシュ20とは別体としたが、ロアピラーガーニッシュ21の案内面部21cに設けた係合受部21dと、ルーフガーニッシュ20に設けた係合部41cとを離反可能に係合したため、エアバッグ2の展開を可能としつつ、ルーフガーニッシュ20とロアピラーガーニッシュ21とを容易に剛性を高く安定して連結でき、隙間の寸法管理を容易にして外観を向上できる。
さらに、ロアピラーガーニッシュ21を設けることにより、ルーフガーニッシュ20の形状にかかわらず、エアバッグ2が均一に展開する保護域を車両後方に拡大できる。
このように、ロアピラーガーニッシュ21を設けることにより、ルーフガーニッシュ20とエアバッグ2との隙間関係をフロント側からリア側まで一定に設定することにより、ルーフガーニッシュ20の展開速度を早めるとともに制御を容易にでき、ルーフガーニッシュ20の意匠やエアバッグ2の配置に影響されず、ルーフガーニッシュ20の様々な形状やエアバッグ2の配置に対して、ルーフガーニッシュ20及びエアバッグ2の全長にわたる一定の展開速度を容易に実現できる。すなわち、ロアピラーガーニッシュ21を設けることにより、ルーフガーニッシュ20及び第3のピラーガーニッシュ23を含むカバー体のデザインの自由度を向上できるとともに、エアバッグ2の配置の自由度を向上できる。
また、本実施の形態では、エアバッグ2の膨張展開時に、エアバッグ2がルーフガーニッシュ20を押動すると、ヒンジ体26が変形してルーフガーニッシュ20の移動を許容し、エアバッグ2の展開初期の大きな衝撃を吸収するため、ルーフガーニッシュ20を保護できる。
また、ブラケット25に、エアバッグ2、プロテクタ28、ヒンジ体26、及びルーフガーニッシュ20を一体的に組み合わせてモジュールを構成することにより、第3のピラーガーニッシュ23及びロアピラーガーニッシュ21を除き、エアバッグ装置1をモジュール化でき、車体3側へ取り付ける部品点数を削減し、取付作業を容易にして、エアバッグ装置1の車体3への取付作業のコストを低減できる。すなわち、細長く折り畳んだ長尺なエアバッグ2を備えたカーテンエアバッグであるエアバッグ装置1の車体3への取り付けには、肩より上の作業が必要であるが、本実施の形態によれば、作業効率が良く、車両への組み付け作業性を向上して設置作業を容易にでき、肩より上の作業時間を削減して、作業者への負担を小さくできる。
また、エアバッグ装置1は、折り畳んだエアバッグ2の長手方向に沿ってルーフガーニッシュ20とプロテクタ28とで包まれるようにして覆われ、エアバッグ2の収納時及び展開時に、エアバッグ2が車体パネル15などの車体3側の部材に干渉することを抑制して、エアバッグ2を保護できるとともに、展開過程においてエアバッグ2の展開方向を案内できる。
このようにして、細長く折り畳んだ長尺なエアバッグ2を備えるとともに、このエアバッグ2を内装材であるルーフガーニッシュ20で覆ったカーテンエアバッグについて、製造コストを低減できるとともに、展開特性を容易に良好にできる。
なお、上記の実施の形態では、ロアピラーガーニッシュ21は、他の部材とは別体としたが、この構成に限られず、例えば、図7に示すように、第3のピラーガーニッシュ23に一体に連続して形成することもできる。この構成によれば、部品点数及び取り付け工数を削減し、製造コスト及び車体への取り付け作業のコストを低減できる。
また、上記の構成では、調整カバー体は、後端部の第3のピラーガーニッシュ23に接するロアピラーガーニッシュ21としたが、前端部の第1のピラーガーニッシュに接する部分に設け、車両の前方にエアバッグ2の保護域を拡大することもできる。
また、ブラケット25、ルーフガーニッシュ20及びプロテクタ28は、エアバッグ2の全長にわたり一体に形成する他、長手方向などに分割して形成することもできる。
また、ヒンジ体26についても、上記の構成に限られず、適宜の形状あるいは金属あるいは樹脂など適宜の材質を用いることができる。さらに、長手方向に沿った回動軸を有し、この回動軸を中心に複数の部材が回動して変形するヒンジ体とすることもできる。さらに、このヒンジ体26の変形範囲、すなわち、ルーフガーニッシュ20の移動範囲を規制する規制部材を設けることもできる。