JP5164921B2 - 乗務員状態推定装置及び乗務員運用支援システム - Google Patents

乗務員状態推定装置及び乗務員運用支援システム Download PDF

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Description

本発明は、鉄道における乗務員の現在位置を推定する乗務員状態推定装置、及びこれを利用した乗務員運用支援システムに関するものである。
列車の運行においては、予め定められたダイヤ通りに列車を運転することが求められるが、そのためには列車に乗務員、特に運転士を割り当てておくことが必要である。通常、計画ダイヤに合わせ、運用計画と呼ばれる乗務員毎の勤務スケジュールが策定されている。各乗務員は、運用計画に従って所定の列車を担当するために、列車に乗務したり、乗務以外の別の駅に移動(便乗と呼ぶ)したり、又は徒歩もしくは車等の別の手段で移動したりする。列車が正常に運行されていれば、乗務員は勤務スケジュール通りに移動又は乗務しているため、乗務員を管轄する所属区所及び指令所では特に乗務員の現在位置を意識する必要はない。しかし、事故又は災害等でダイヤが乱れると、計画ダイヤ通りに列車が走行できなくなり、さらに運休等が発生する場合もあることから、乗務員も所定の移動ができなくなるため、乗務員の運用計画も変更が必要になる。ところが、ダイヤ乱れにより乗務員の現在位置が分からなくなると、現在位置不明の乗務員に関する運用計画を作り直すことが困難になってしまう。
このような問題に対し、乗務員運用支援システム(又は乗務員運転整理システム、乗務員割当システムとも称する)が構築されている。これは、所属区所及び指令所による運用計画の変更を支援するシステムであり、主な機能は乗務員の勤務状況の把握、運用計画修正業務の効率化、乗務員への情報伝達等である。乗務員の勤務状況のひとつとして乗務員の位置を把握し、運用計画の修正を支援する技術として、例えば特許文献1が公開されている。
特許文献1に開示された技術では、乗車中の乗務員の位置は、運用計画に基づき乗務員が勤務を予定している列車の位置情報としていた。また、乗車中でない乗務員の位置は、GPS(Global Positioning System)技術を用いて、乗務員が保有するモバイル端末の位置情報としていた。さらに、ダイヤが乱れた場合は、モバイル端末の位置を乗車中でない乗務員の位置に用いて、次に乗務すべき列車を割り当てるようにしていた。
特開2004−338472号公報
従来の乗務員状態推定装置は以上のように構成されているので、予め定められた乗務員の運用計画を参照するために、当初の運用計画とは異なる列車に乗務員が乗車していても分からないという課題があった。また、乗務員の位置情報及び列車の位置情報には時刻情報が含まれておらず、位置情報取得後の乗務員及び列車の移動は考慮していないため、位置情報が古いものだと現在位置との差が増大してしまった。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、携帯端末から得られる乗務員位置の履歴と、列車の運行予定及び運行結果の情報から推定される列車の走行パターンから、どの乗務員がどの列車に乗車しているか又は下車しているかといった乗務員の状態を推定することを目的とする。
この発明に係る乗務員状態推定装置は、乗務員が保持する携帯端末から送信される端末位置及び位置情報取得時刻の情報を用いて、端末位置が表す当該乗務員の位置を線路上の相対位置を示すキロ程に変換し、位置情報取得時刻におけるキロ程の情報を当該乗務員の履歴として管理する乗務員情報管理部と、列車毎に、運行実績の情報を用いて現在時刻までの任意の時刻における列車の位置を示す実績走行パターンを作成すると共に、運行計画の情報を用いて現在時刻より先の任意の時刻における列車の位置を示す予測走行パターンを作成し、実績走行パターンと予測走行パターンを合わせて走行パターンとする列車走行推定部と、乗務員情報管理部が管理する乗務員の履歴と、列車走行推定部が作成した各走行パターンから、乗務員の位置情報取得時刻における乗車候補列車を推定する乗車列車推定部と、乗務員情報管理部が管理する乗務員の履歴と、乗車列車推定部が推定した乗車候補列車の走行パターンから、乗務員の状態を推定する乗務員状態推定部とを備えるようにしたものである。
この発明に係る乗務員運用支援システムは、上記乗務員状態推定装置を適用して、乗務員状態推定装置で推定した乗務員の状態に基づき、実施ダイヤの乱れに応じて乗務員運用情報を変更するようにしたものである。
この発明によれば、携帯端末から送信される乗務員の位置の履歴と、列車の運行計画及び運行実績から推定される乗車候補列車の走行パターンから、乗務員の状態を推定するようにしたので、どの乗務員がどの列車に乗車しているか又は下車しているかといった乗務員の状態を推定することができる。
この発明によれば、乗務員運用支援システムに乗務員状態推定装置を適用するようにしたので、乗務員と直接連絡することなくその状態を把握することができる。よって、列車無線、電話又はファクシミリ等により乗務員に連絡する手間を省略できる。
この発明の実施の形態1に係る乗務員状態推定装置の構成を示すブロック図である。 図1に示す列車走行推定部が運行管理システムから得た運行実績を用いて作成した走行パターンを示す説明図である 実施の形態1の列車走行推定部の動作を示すフローチャートである。 実施の形態1の乗車列車推定部の動作を示すフローチャートである。 実施の形態1の乗務員状態推定部の動作を示すフローチャートである。 実施の形態1の乗務員状態推定部の乗務員状態推定結果の例示を示す説明図である。 実施の形態2の列車走行推定部が保持する運転曲線情報の一例を示す説明図である。 実施の形態2の列車走行推定部が運転曲線情報を用いて作成した走行パターンを示す説明図である。 実施の形態2の列車走行推定部の動作を示すフローチャートである。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る乗務員状態推定装置10の構成を示すブロック図である。乗務員状態推定装置10は、乗務員の位置を履歴として管理する乗務員情報管理部11と、運行中又は運行予定の各列車の走行パターンを作成する列車走行推定部12と、乗務員位置の履歴と走行パターンに基づいて乗務員が乗車している列車の候補を推定する乗車列車推定部13と、乗務員位置の履歴と乗車候補の列車に基づいて乗務員の状態を推定する乗務員状態推定部14とを備える。この乗務員状態推定装置10には、携帯端末20、GPS衛星30及び運行管理システム40から各種の情報が提供される。
乗務員状態推定装置10が状態推定対象とする乗務員は携帯端末20を保持している。この携帯端末20は、自端末を識別するための端末IDと、自端末を保持している乗務員を識別するための乗務員IDとを記憶する機能を有する。乗務員IDは、携帯端末20を支給された際に乗務員が入力する等の方法で設定すればよい。また、携帯端末20は、複数のGPS衛星30から発信される情報を受信して、自端末の現在位置(緯度及び経度)を算出し、端末位置情報として記憶する機能を有する。携帯端末20は、乗務員状態推定装置10からの要求に応じて、少なくとも端末ID、記憶している乗務員ID、端末位置情報、位置情報取得時刻を含めた乗務員位置情報を返信する。
乗務員状態推定装置10の乗務員情報管理部11は、複数の携帯端末20から受信した乗務員位置情報を、端末毎に乗務員位置の履歴として記憶及び管理する。また、乗務員情報管理部11は、乗務員が携帯端末20を操作して入力する、もしくは乗務員情報管理部11に対して管理者が入力する出勤・退勤情報に基づき、退勤から出勤までの乗務員状態を「勤務外」として管理する。
また、乗務員情報管理部11は、端末位置情報(一般的に緯度及び経度を含む)を「キロ程」に変換して、乗務員位置の履歴に含めて記憶及び管理する。即ち、乗務員位置の履歴には、乗務員ID毎に、端末ID、端末位置情報、位置情報取得時刻、乗務員位置のキロ程、並びに後述する乗務員状態推定部14が出力する状態推定結果及び状態推定時刻が含まれる。
キロ程は、鉄道分野で多く利用されており、路線毎の、特定地点からの線路上の距離を表す。端末位置情報をキロ程に変換するために、乗務員情報管理部11は、対象となっている路線を緯度経度の折れ線で表現したデジタルマップデータを保持している。キロ程への変換方法は、カーナビゲーションシステム等で利用されている手法を用いればよく、端末位置をこの端末位置に最も近いデジタルマップ上の線分に射影し、線分を構成する両端点に記録されているキロ程情報から、比例配分することによってキロ程が求められる。
運行管理システム40は軌道回路等から構成され、運行中の列車の位置、及び列車の駅への着発実績時刻を把握している。また、運行管理システム40は、予め作成された実施ダイヤを保有し、この実施ダイヤと列車の現在位置又は駅への着発実績とを比較して、列車の遅れが発生した場合には自システムを使用する指令員に即時報知する。さらに、運行管理システム40は、指令員の入力操作に基づき、列車の遅れを早期に復旧させるために実施ダイヤを変更する運転整理情報を作成する。運行管理システム40は、実施ダイヤ、運行実績及び運転整理情報を乗務員状態推定装置10に出力する。
実施ダイヤは、当日走行予定の列車に関して、少なくとも列車番号、種別、始発駅から終着駅までの各駅の計画上の到着時刻及び出発時刻が記載されている。
また、運行実績は、少なくとも実施ダイヤと同じ項目を含み、計画上の到着時刻及び出発時刻の代わりに、駅への到着及び出発が発生する度に実績時刻が記載される形式となっている。
また、運転整理情報は、少なくとも列車の運休情報、臨時列車のダイヤ等を含む。
乗務員状態推定装置10の列車走行推定部12は、運行管理システム40から実施ダイヤ、運行実績、及び運転整理情報を入手して保持すると共に、予め保持しているパターン予測パラメータを用いて列車走行推定処理を行って、処理結果として得られる予測走行パターンと運行実績(実績走行パターン)とを合わせて走行パターンとして保持する。この列車走行推定処理の詳細は後述する。
走行パターンは、実施ダイヤと同じ項目を含み、計画上の到着時刻及び出発時刻の代わりに、実績が発生した駅では実績時刻が記載され、未だ実績が発生していない駅では予測時刻が記載される。そのため、列車が定時運行している限りでは、実施ダイヤと走行パターンは同じ到着時刻及び出発時刻になる。
また、パターン予測パラメータは、少なくとも列車種別毎及び駅毎に、標準的な停車時分及び駅間の走行時分を定義している。
乗車列車推定部13は、乗務員情報管理部11で管理している状態推定対象の乗務員位置の履歴と、列車走行推定部12で保持している各列車の走行パターンを比較して、最も類似性の高い列車を状態推定対象の乗務員の乗車候補列車と推定する。
乗務員状態推定部14は、状態推定対象の乗務員が、乗車列車推定部13で推定した乗車候補列車に乗っているのか、下車しているのかといった状態を推定する。状態推定結果は乗務員情報管理部11に出力され、乗務員情報管理部11が管理する。
次に、乗務員状態推定装置10の動作を説明する。
先ず、列車走行推定部12の動作を説明する。図2は、列車走行推定部12が運行管理システム40から得た運行実績を用いて作成した走行パターンを示す説明図である。図2に示す走行パターンは、横軸に時刻を示し、縦軸にA駅〜E駅の位置を示す。現在時刻13:27とすると、C駅出発が最新の着発イベント発生実績であり、運行管理システム40が管理する現在時刻までの運行実績を実線で示す。列車走行推定部12は、最新の着発イベントが発生したC駅からC駅〜D駅間の標準走行時分、D駅での標準停車時分、及びD駅〜E駅間の標準走行時分を順次加算することで、走行予測パターン(図2に破線で示す)を作成する。以下、図2の走行パターンを作成する例を用いて、列車走行推定処理を説明する。
図3は、列車走行推定部12の列車走行推定処理の動作を示すフローチャートである。列車走行推定部12は、先ずステップST1で、運行管理システム40の運行実績から推定対象列車tの列車状態、後方駅s、種別pを抽出する。列車状態には、少なくとも最新のイベント(駅への到着又は出発)が含まれる。後方駅sとは、推定対象列車tが駅に停車中の場合は当該駅を指し、駅を出発して次駅に到着していない場合は出発した駅を指す。種別pとは、普通、快速等、停車駅に関わる実施ダイヤの種類に加え、特急型車両、普通型車両等、駅間の走行時分が異なる可能性のある分類を示す。
ステップST2で、列車走行推定部12は、列車状態が前回取得した状態から更新されているか判断し、更新がなければ列車走行推定処理を終了する(ステップST2“No”)。これ以降の処理では、列車走行推定部12が種別pを考慮し、列車tの走行時分を種別pに応じて区別した走行パターンを作成していく。
列車状態が更新されていれば(ステップST2“Yes”)、続くステップST3で列車走行推定部12が、最新イベントが駅到着かどうかを判断する。駅到着ならば(ステップST3“s駅到着”)、列車走行推定部12は続くステップST4にて後方駅sにおける種別pの駅停車時分Ts(t、p、s)をパターン予測パラメータから取得して、最新イベントの駅到着実績時刻に加算することで、駅出発予測時刻Td(t、p、s)を計算する。
最新イベントが駅到着でなく出発ならば(ステップST3“s駅出発”)、又はステップST4の処理後、列車走行推定部12はステップST5にて、種別pにおける先行駅s+1までの駅間走行時分Tr(t、p、s)をパターン予測パラメータから取得して、駅出発実績(又は予測)時刻Td(t、p、s)に加算することで、先行駅到着予測時刻Ta(t、p、s+1)を計算する。
列車走行推定部12は続くステップST6にて駅を1つ進め、ステップST7で終着駅まで到着したか判断する。終着駅まで到着していなければ(ステップST7“No”)、列車走行推定部12は再びステップST4に戻って次の駅の着発予測時刻を順次計算し、終着駅まで到着していれば(ステップST7“Yes”)、列車走行推定部12は列車走行推定処理を終了する。一度作成された予測走行パターンは、次回処理で更新されるまで、運行実績と合わせて走行パターンとして列車走行推定部12に保持される。
なお、運行管理システム40から運転整理情報が出力されて列車の運行計画に変更等が生じている場合には、列車走行推定部12は、運転整理情報の内容を反映して駅出発予測時刻及び先行駅到着予測時刻を計算する。
次に、乗車列車推定部13の動作を説明する。図4は、乗車列車推定部13の動作を示すフローチャートである。乗車列車推定部13は先ずステップST11で、乗務員情報管理部11の管理する乗務員位置の履歴から状態推定対象の乗務員の乗務員位置及び位置情報取得時刻を取得する。次に、乗車列車推定部13はステップST12で、位置情報取得時刻に対象路線を運行している列車のリスト(列車数N)を、列車走行推定部12で保持している走行パターンから抽出する。さらに、乗車列車推定部13は続くステップST13で変数nを初期化した後、ステップST14で変数nをインクリメントして、ステップST15において、N個のうちn番目の列車の走行パターンを列車走行推定部12から取得する。
続くステップST16で、乗車列車推定部13が走行パターンと乗務員位置の類似度を算出する。算出方法としては、走行パターンを構成する駅間走行区間又は駅停車時間を示す線分に対して、乗務員位置の履歴に記載されている乗務員位置のキロ程及び位置情報取得時刻を示す点に最も近い線分を選択し、その距離を類似度とする方法がある。又はこれ以外の数学的手法であってもよい。
乗車列車推定部13は、ステップST17でN番目の列車までの各類似度を算出したか確認し、全て完了していれば(ステップST17“Yes”)、続くステップST18で最も類似度の高い列車を選択して一連の処理を終了する。全て完了していなければ(ステップST17“No”)、乗車列車推定部13は再びステップST14に戻って変数nをインクリメントし、次の列車の類似度を算出する。
次に、乗務員状態推定部14の動作を説明する。図5は、乗務員状態推定部14の動作を示すフローチャートである。乗務員状態推定部14は、先ずステップST21で、状態推定対象の乗務員の状態を乗務員情報管理部11から取得する。乗務員の状態は少なくとも「乗車中」、「下車」、「勤務外」があり、さらに「車便乗中」、「休憩」、「待機」が含まれていてもよい。本実施の形態ではこれら全ての状態を含む場合を説明する。また、状態推定対象の乗務員の状態が「乗車中」であれば、乗車中の列車番号も同時に記憶されているものとする。
取得した情報に基づき、乗務員状態推定部14は続くステップST22で、乗務員が「乗車中」かどうかを判定する。乗車中の場合(ステップST22“Yes”)、乗務員状態推定部14は乗車中の列車番号も同時に取得し、続くステップST23において、この列車番号に該当する列車の走行パターンを列車走行推定部12から取得する。
ステップST24で、乗務員状態推定部14は取得した走行パターンから、現在時刻における列車位置を算出し、現在時刻の列車位置が予め設定した閾値を越えているか判定する。この閾値は、駅位置に対し、列車位置がどれくらい離れているかを判断するための値である。例えば、ある駅のキロ程が10km、閾値が0.1kmの場合、列車位置が9.9km〜10.1kmの間にあれば当該列車が停車中と判定される。
閾値を越えていれば(ステップST24“Yes”)、乗務員状態推定部14は、当該列車が駅を発車して走行中であると判断し、乗務員状態は引き続き当該列車に「乗車中」と推定して処理を終了する。
閾値を越えていなければ(ステップST24“No”)、乗務員状態推定部14は、当該列車が停車中であると判断し(ステップST25)、状態推定対象の乗務員位置の履歴から乗務員の位置及び移動速度を求めて停車中の当該列車に引き続き乗車しているか否かを判定する(ステップST26)。乗務員状態推定部14は、乗務員の位置及び移動速度が閾値を越えていれば「乗車中」と推定し(ステップST26“Yes”)、閾値を越えていなければ「下車」と推定して(ステップST26“No”)、処理を終了する。
一方、ステップST22において乗務員情報管理部11から取得した乗務員の状態が「乗車中」でなければ(ステップST22“No”)、乗務員状態推定部14はステップST27において乗車列車推定部13が推定した乗車候補列車を取得し、当該乗車候補列車の位置と乗務員位置とを位置情報取得時刻において比較する(ステップST28)。列車の位置と乗務員位置とが閾値を越えていなければ(ステップST28“No”)、乗務員状態推定部14は乗務員が当該列車に「乗車中」と推定して処理を終了する。
閾値を越えていれば(ステップST28“Yes”)、乗務員状態推定部14は、乗務員が乗車候補列車に乗車しているのではないと判断し、続くステップST29にて、乗務員状態推定部14が保持する近傍の主要道路の地図情報(デジタルマップデータ)を用いて、乗務員位置が線路と近傍道路のどちらに近いか、自動車で移動していると推定可能な移動速度かどうか判断し、乗務員位置が線路より近傍道路に近く移動速度が閾値を越えていれば「車便乗中」と推定し(ステップST29“Yes”)、乗務員位置が近傍道路より線路に近く移動速度が閾値を越えていなければ駅近傍に留まっている(即ち「休憩」又は「待機」)と推定して(ステップST29“No”)、処理を終了する。
なお、乗務員状態推定部14は、乗務員情報管理部11に記憶されている状態推定対象の乗務員についての状態推定結果及び状態推定時刻を、「乗車中」と推定した場合には推定結果「乗車中」及び乗車中の列車番号並びに推定した時刻に更新し、「下車」、「車便乗中」、「休憩」又は「待機」と推定した場合には各推定結果及び推定した時刻に更新する。
乗務員状態推定装置10の一連の処理によって、端末位置の移動実績に応じて、乗務員がどの列車に乗っているか、あるいはどの駅で下車しているかを推定することが可能となる。図6は、乗務員状態推定部14による状態推定結果の例示を示す説明図である。図6に示す走行パターンは、横軸に時刻を示し、縦軸にA駅〜E駅の位置を示す。現在時刻13:31とすると、列車A,B,Cの現在時刻までの運行実績をそれぞれ実線で示し、列車走行推定部12が推定した走行予測パターンをそれぞれ破線で示す。また、現在時刻までに、状態推定対象の乗務員が所持する携帯端末20の位置を乗務員位置として一点鎖線で示し、そこへ乗務員状態推定部14が推定した状態推定結果及び状態推定時刻に基づく推定結果を重ねて示す。図6によれば、状態推定対象の乗務員は、A駅から列車Aに乗車と推定され、続いてC駅で下車と推定され、C駅から列車Bに乗車と推定される。従って、現在、乗務員は列車Bに乗車中と推定でき、現在の乗務員の状態を把握することができる。
以上のように、実施の形態1によれば、乗務員が保持する携帯端末20から送信される端末位置及び位置情報取得時刻の情報を用いて、端末位置が表す当該乗務員の位置を線路上の相対位置を示すキロ程に変換し、位置情報取得時刻におけるキロ程の情報を当該乗務員の履歴として管理する乗務員情報管理部11と、列車毎に、運行実績の情報を用いて現在時刻までの任意の時刻における列車の位置を示す実績走行パターンを作成すると共に、運行計画の情報を用いて現在時刻より先の任意の時刻における列車の位置を示す予測走行パターンを作成し、実績走行パターンと予測走行パターンを合わせて走行パターンとする列車走行推定部12と、乗務員情報管理部11が管理する乗務員の履歴と、列車走行推定部12が作成した各走行パターンから、乗務員の位置情報取得時刻における乗車候補列車を推定する乗車列車推定部13と、乗務員情報管理部11が管理する乗務員の履歴と、乗車列車推定部12が推定した乗車候補列車の走行パターンから、乗務員の状態を推定する乗務員状態推定部14とを備えるように構成した。
このため、実施ダイヤが乱れた場合でも、乗務員がどの列車に乗っているか、あるいはどの駅で下車しているかを推定することができる。また、地上装置である乗務員状態推定装置10によって各列車に乗車している乗務員の推定ができるため、乗務員状態把握のための対応設備を列車に設置する必要がない。
さらに、携帯端末20から乗務員位置情報の送信が遅れた場合でも、乗車列車推定部13が位置情報取得時刻における列車の走行パターンと乗務員位置とを比較して乗車候補列車を推定するので、古い乗務員位置情報に基づいて誤った列車を候補として推定することを防止できる。また、逆に、乗車候補列車の現在位置を走行パターンから算出すれば、乗務員の現在位置を推定することができる。
実施の形態2.
上記実施の形態1では、列車走行推定部12がパターン予測パラメータを用いて、走行パターンを駅毎の列車の着発で表現していた。しかし、実際には、列車が駅を出発する際は必ず速度0から加速し、駅に到着する前にはこれまでの速度から減速を開始して最終的に速度0になる。このような速度の変動は、運転曲線と呼ばれるデータによって予め標準的な変動パターンが規定されている。そこで、本実施の形態2では、この運転曲線情報を、任意の地点での通過時刻及び速度情報で表現するパターン予測パラメータとして列車走行推定部12が保持し、走行パターンのうち駅間を走行する区間に、運転曲線情報に基づく位置−時刻−速度情報を追加することで、実際の走行に近い精細化した走行パターンを得る。以降、この任意の地点での通過時刻及び速度情報を表現するパターン予測パラメータを、状態変化点とする。なお、実施の形態2の乗務員状態推定装置10は、図1に示す乗務員状態推定装置10と図面上の構成が同一であるので、以下では図1を援用して実施の形態2を説明する。
図7は、運転曲線情報の一例を示す説明図である。図7において、縦軸は速度を示し、横軸はC駅〜D駅間の位置を示し、実線が運転曲線を示す。列車はC駅(地点A1)とD駅(地点A10)の間を、複数の速度制限区間B1,B2,B3を考慮しながら、地点A1〜A4まで加速して走行し、地点A4〜A5間を定速で走行し、地点A5〜A10まで減速して走行する。
図8は、実施の形態2の列車走行推定部12が、図7の運転曲線情報を用いて作成した走行パターンの一例を示す説明図である。図8に示す走行パターンは、横軸に時刻を示し、縦軸にC駅〜D駅の位置を示す。列車走行推定部12が図7の運転曲線をパターン予測パラメータに用いて、任意の時刻での列車位置を算出して走行パターンを作成すると、図8に実線で示すように駅間の走行パターンが折れ線で表現される。なお、破線で示した直線の走行パターンは、上記実施の形態1の列車走行推定部12で作成した場合に相当する。
図9は、実施の形態2の列車走行推定部の動作を示すフローチャートであり、運転曲線情報を用いて走行パターンを作成する処理を示す。図9のステップST31〜ST34,ST39,ST40の各処理は、図3のステップST1〜ST4,ST6,ST7の各処理と同じであるため、説明を省略する。続く、ステップST35〜38で、列車走行推定部12が、列車tのs駅とs+1駅の間の走行時分を計算する。
先ずステップST35では、最新実績取得位置よりも前方にある、最も近い状態変化点P(s、n)を取得し、最新実績取得位置からP(s、n)までの走行時分を計算する。以降、ステップST36〜ST37で、状態変化点が次駅s+1に到達するまで、走行時分の計算を進める。続くステップST38で、計算した全ての変化点間の走行時分を積算し、最新実績取得時分に加えることで、先行駅到着予測時刻Ta(t、p、s+1)を得る。
図8において、現在時刻に携帯端末20から得られた乗務員位置情報(列車Bに乗車)が○印の位置だった場合、運転曲線を考慮しない破線の走行パターンでは列車Bより列車Aの方が類似度が高いため、乗車列車推定部13は、乗務員の乗車候補列車が列車Aだと推定してしまう。一方、運転曲線を考慮した実線の走行パターンであれば乗車候補列車が列車Bだと正しく推定できる。さらに、乗務員状態推定部14が、精細化した走行パターンから求めた列車速度を乗務員の移動速度と比較すれば、乗務員が乗車候補列車に確かに乗車中であることを正しく推定できる。
また、運転曲線によれば列車は駅近傍になると速度を落とすため、図4のステップST24において、乗務員状態推定部14が列車位置だけでなく、運転曲線情報から推定可能な列車速度も考慮することで、列車が停止中か否かの判定をより精度よくできる。
以上のように、実施の形態2によれば、列車走行推定部12が、線路上の列車の速度変動を規定した運転曲線情報に基づいて、各列車の走行パターンを精細化し、乗務員状態推定部14は、列車走行推定部12で精細化した走行パターンから任意の時刻における列車の速度を推定し、乗務員情報管理部11が管理する乗務員の履歴から推定される当該乗務員の移動速度と比較して状態を推定するように構成した。このため、乗務員がどの列車に乗車しているか、より高い精度で推定することができる。
なお、運行管理システム40によっては駅中間の列車の在線位置を管理するものもある。この場合には、乗務員状態推定装置10の列車走行推定部12が運行管理システム40から列車在線位置情報を入手して、列車在線位置情報の履歴と運転曲線情報とを組み合わせて走行パターンを作成してもよい。この結果、列車位置の推定精度を向上させることができる。
実施の形態3.
上記実施の形態2では、列車走行推定部12が運転曲線情報に基づいて精細化した走行パターンを作成したが、実際の列車の運行では遅延等が発生するため、運転曲線情報に基づく走行パターンであっても実際の列車の走行とのずれが大きくなる場合がある。例えば、先行する列車が何らかの原因で通常より遅延して走行すると、追突を防ぐために、信号システムが後続列車に通常よりも低速で走行させる信号又は停止信号を指示して後続列車を走行パターンより遅延して走行させるといった場合である。そこで、本実施の形態3では、実施ダイヤが乱れた場合の信号システムの挙動に対応するために、列車走行推定部12が信号システムの挙動を模擬して、先行列車の走行パターンから速度に応じた距離を確保して後続列車の走行パターンを作成する。
具体的には、図9に示すステップST35で、列車走行推定部12が、列車tの先行列車t−1の運転曲線情報を取得し、信号システムの挙動を模擬して列車tに指示する信号遷移情報を計算する。列車tの状態変化点P(s、n)に指定された速度と、当該地点における信号遷移情報が示す制限速度の下位速度を、当該状態変化点P(s、n)における速度と読みかえ、変化点間の走行時分を計算する。以下、ステップST36〜ST37を繰り返し、ステップST38にて先行駅到着予測時刻Ta(t、p、s+1)を得る。
以上のように、実施の形態3によれば、列車走行推定部12が、先行列車の走行状態に応じて変化する信号システムからの信号状態を模擬し、後続列車の走行パターンを当該模擬した信号状態に基づいて作成するように構成した。このため、信号システムの挙動を模擬して先行列車の走行パターンから速度に応じた距離を確保するように後続列車の走行パターンを作成することにより、列車が遅延して走行している場合にも、精度よく走行パターンを作成できる。
実施の形態4.
上記実施の形態1〜3では乗務員状態推定装置10に関して説明してきたが、この乗務員状態推定装置10で得られる乗務員状態の推定結果は、乗務員運用を変更する際に必要な情報である。そこで、鉄道乗務員の運用計画の変更を支援する乗務員運用支援システムに、上記実施の形態1〜3の乗務員状態推定装置10を接続して、運用計画の変更の際に乗務員の状態推定結果を用い、運行ダイヤの乱れに応じて乗務員運用情報を変更するように構成してもよい。なお、乗務員運用支援システムは公知のシステムを用いればよく、ここでの詳細な説明は省略する。
以上のように、実施の形態4によれば、乗務員運用支援システムに乗務員状態推定装置10を適用して、乗務員状態推定装置10で推定した乗務員の状態に基づき、実施ダイヤの乱れに応じて乗務員運用情報を変更するように構成した。このため、乗務員状態推定装置10の乗務員状態推定結果を用いれば、乗務員と直接連絡することなく乗務員状態を把握することができる。この結果、従来の乗務員運用支援システムにおいて列車無線、電話又はファクシミリ等によって乗務員に直接連絡して乗務員状態を把握していた手間を省略し、連絡のための時間を不要とすることができる。
10 乗務員状態推定装置、11 乗務員情報管理部、12 列車走行推定部、13 乗車列車推定部、14 乗務員状態推定部、20 携帯端末、30 GPS衛星、40 運行管理システム。

Claims (8)

  1. 鉄道乗務員の状態を把握するための乗務員状態推定装置において、
    乗務員が保持する携帯端末から送信される端末位置及び位置情報取得時刻の情報を用いて、端末位置が表す当該乗務員の位置を線路上の相対位置を示すキロ程に変換し、位置情報取得時刻におけるキロ程の情報を当該乗務員の履歴として管理する乗務員情報管理部と、
    列車毎に、運行実績の情報を用いて現在時刻までの任意の時刻における列車の位置を示す実績走行パターンを作成すると共に、運行計画の情報を用いて現在時刻より先の任意の時刻における列車の位置を示す予測走行パターンを作成し、前記実績走行パターンと前記予測走行パターンを合わせて走行パターンとする列車走行推定部と、
    前記乗務員情報管理部が管理する乗務員の履歴と、前記列車走行推定部が作成した各走行パターンから、前記乗務員の前記位置情報取得時刻における乗車候補列車を推定する乗車列車推定部と、
    前記乗務員情報管理部が管理する乗務員の履歴と、前記乗車列車推定部が推定した乗車候補列車の走行パターンから、前記乗務員の状態を推定する乗務員状態推定部とを備えることを特徴とする乗務員状態推定装置。
  2. 列車走行推定部は、線路上の列車の速度変動を規定した運転曲線情報に基づいて、各列車の走行パターンを精細化し、
    乗務員状態推定部は、前記列車走行推定部で精細化した走行パターンから任意の時刻における列車の速度を推定し、乗務員情報管理部が管理する乗務員の履歴から推定される当該乗務員の移動速度と比較して状態を推定することを特徴とする請求項1記載の乗務員状態推定装置。
  3. 列車走行推定部は、駅中間の列車在線位置の情報に基づいて、各列車の走行パターンを作成することを特徴とする請求項2記載の乗務員状態推定装置。
  4. 列車走行推定部は、先行列車の走行状態に応じて変化する信号システムからの信号状態を模擬し、後続列車の走行パターンを当該模擬した信号状態に基づいて作成することを特徴とする請求項2または請求項3記載の乗務員状態推定装置。
  5. 乗務員情報管理部は、乗務員の状態を当該乗務員の履歴と合わせて管理し、乗務員状態推定部が推定した乗務員の状態に更新することを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の乗務員状態推定装置。
  6. 現在位置を取得し、端末位置及び位置情報取得時刻の情報として乗務員情報管理部に送信する携帯端末と、
    各列車の運行計画の情報を保持すると共に当該各列車の運行実績を把握して、運行計画及び運行実績の情報として列車走行推定部に出力する運行管理システムとを備えることを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載の乗務員状態推定装置。
  7. 請求項1から請求項6のうちのいずれか1項記載の乗務員状態推定装置を適用した、鉄道乗務員の運用計画の変更を支援する乗務員運用支援システム。
  8. 乗務員状態推定装置で推定した乗務員の状態に基づき、実施ダイヤの乱れに応じて乗務員運用情報を変更することを特徴とする請求項7記載の乗務員運用支援システム。
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