JP5164236B2 - イソチオシアナート誘導体、レドックス活性重合物、電極材料、リチウム電池 - Google Patents

イソチオシアナート誘導体、レドックス活性重合物、電極材料、リチウム電池 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化還元反応が可逆的に行われるレドックス活性重合物及びこの重合物を用いた電極に関するものであり、電池、エレクトロクロミック表示素子、センサー、メモリーなどの電気化学素子に使用することが可能であり、特に、リチウム電池の電極に用いた場合に、軽量で高エネルギー密度の電池が得られるようにする点に特徴を有するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、高出力、高エネルギー密度の新型電池として、リチウムの酸化、還元を利用した高起電力のリチウム二次電池が利用されるようになった。このようなリチウム二次電池においては、その正極材料として、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄、バナジウム、ニオプ等の金属酸化物が一般に使用される。
【0003】
しかし、このような金属酸化物を正極材料に用いた場合、その重量が大きくなると共にそのコストも高くつき、また反応電子数が少なく、単位重量当たりにおける容量が必ずしも十分であるとはいえず、高容量で高エネルギー密度のリチウム二次電池を得ることが困難であった。
【0004】
一方、最近においては、導電性高分子を電気化学素子として用い、これを軽量で高エネルギー密度の電池用電極材料や、大面積のエレクトロクロミック素子や、徽小電極を用いた生物化学センサーに利用することが検討され、従来、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセン、ポリチオフェン等の導電性高分子を電池の電極に使用することが研究されてきた。
【0005】
米国特許第4833048号明細書には、高容量で高エネルギー密度が得られる高分子として、有機ジスルフィド化合物を正極材料として使用することが開示されている。これは、有機ジスルフイド化合物のS−S結合を電解還元により切断して有機チオレートを形成し、有機ジスルフイドを有機チオレートの電解酸化により再形成するという可逆的な電極材料である。
【0006】
有機ジスルフィド化合物は、硫黄の酸化還元反応を利用して充放電を行うものであり、正極材料に使用して、高エネルギー密度のリチウム二次電池を得ることが検討されている。しかし、有機ジスルフィド化合物の場合、室温下での使用においては、酸化還元反応が遅くて、単独では大きな電流を取り出すことは困難で、充放電電流が小さくなり、絶縁体であり、室温では反応速度が小さく、100℃以上の高温での使用に限られる等の問題があった。また、還元時(放電時)に低分子状態であるため、電極外に溶解拡散してしまい、電極反応の効率劣化をもたらす。
【0007】
有機ジスルフィド化合物のこのような問題を解決する方法として、導篭性高分子を組み合わせることが、特開平4−264363号公報、特開平4−272659号公報、特開平4−359866号公報、特開平5−6708号公報、特開平5−82133号公報、特開平5−135767号公報、特開平5−135768号公報、特開平5−135769号公報、米国特許第5324599号明細書等に開示されている。
【0008】
特開平6−231752号公報は、有機ジスルフイド化合物のうち、特に、4,5ジアミノ−2,6−ジメルカプトピリミジンとπ電子共有系導電性高分子と複合した電極を、特開平7−57723号公報は、特に、7−メチル−2,6,8−トリメルカプトプリンとπ電子共有系導電性高分子と複合した電極を開示している。
【0009】
また、特開平5−74459号公報は、ジスルフィド基を有する導電性高分子を有する電極材料を、特開平5−314979号公報は、芳香族系炭素原子に硫黄原子を導入した有機硫黄芳香族系化合物からなる電極材料を、特開平6−283175号公報は、2,5−ジメルカプト1,3,4−チアジアゾール(DMcT)もしくはチオシアヌル酸の単独重合体または両者の共重合体からなる電極材料を開示している。
【0010】
さらに、特に、有機ジスルフイドの酸化還元速度を加速する役目を果たす導電性ポリマーであるポリアニリンとの複合体を用いた電極については、特開平8−8213021号公報、特開平8−222207号公報、特開平9−82329号公報、特開平9−106820号公報、特開平10−27615号公報に開示されており、2,5−ジメルカブト−1,3,4−チアジアゾール(DMcT)とポリアニリンとを複合化させることにより、有機ジスルフィド化合物を常温で作動する二次電池の正極材料として用いることが可能であることが示されている(「現代化学」1996年10月,第34〜41頁)。
【0011】
しかし、この複合体においては、化学結合を伴うような化合物が新しくできるわけではないので、容量劣化を完全に抑えることはできない。また、電極内でもポリアニリンとDMcTの分離がおこり、電子の移動が阻まれ、電極反応速度が低下する可能性がある。
【0012】
その他、有機ジスルフイド電極のサイクル特性を向上させるために、有機ジスルフイドの金属錯体を使用すること(米国特許第5516598号明細書、米国特許第5665492号明細書、特開平9−259864号公報、特開平9−259865公報、特開平10−241661号公報、特開平10−241662号公報)や、電解酸化によりS−S結合を生成するS−Liイオン結合を有するリチウムチオレート化合物と導電性高分子との混合物よりなる正極を使用すること(特開平5−314964号公報)なども知られている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高容量で高エネルギー密度の電池や、大面積のエレクトロクロミック素子や、微小電極を用いた生物化学センサー等に好適に利用できる、低い温度においても酸化還元反応が適切に行われる新規なレドックス活性重合物ポリマーからなる可逆性電極材料を提供することを課題とするものであり、特に、電池の電極に使用した場合に、例えぱ室温においても適切な充放電反応が行われ、大きな電流での充放電が可能になると共に、高容量で高エネルギー密度の電池が得られるようにすることを課題とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、ポリマー側鎖にジスルフィド基を導入し、主鎖にジアミノ基を導入した新規化合物を開発することにより上記の課題を解決することに成功した。
【0015】
すなわち、本発明は、同一分子中にチオウレア基とイソチオシアナート基を有するイソチオシアナート誘導体を出発物質として重合、または、同一分子中にS―エーテル―チオウレア基とイソチオシアナート基を有するイソチオシアナート誘導体を出発物質として重合することで、ポリマー側鎖にジスルフィド基を導入し、主鎖にジアミノ基を導入した電極材料であって、還元形が下記の化学式9であり、酸化形が下記の化学式10であることを特徴とする可逆性レドックス活性重合物である。
【0016】
【化9】
Figure 0005164236
【0017】
式中において、Nは2以上の整数であり、R1は炭素数1から20の芳香族基、複素環、あるいはそれらの組み合わせからなる。さらにこれらの基に置換基として、アミノ基、ハロゲン基、水酸基、スルフオン基等が結合されていてもよい。
【0018】
【化10】
Figure 0005164236
【0019】
式中において、Nは2以上の整数であり、R1は炭素数1から20の芳香族基、複素環、あるいはそれらの組み合わせからなる。さらにこれらの基に置換基として、アミノ基、ハロゲン基、水酸基、スルフオン基等が結合されていてもよい。
【0020】
また、本発明は、ベンゼン環にチオウレア基とイソチオシアナート基を有するイソチオシアナート誘導体を出発物質として重合してなる、または、ベンゼン環にS―エーテル―チオウレア基とイソチオシアナート基を有するイソチオシアナート誘導体を出発物質として重合することで、ポリマー側鎖にジスルフィド基を導入し、主鎖にジアミノ基を導入した電極材料であって、還元形が下記の化学式11であり、酸化形が下記の化学式12であることを特徴とする可逆性レドックス活性重合物である。
【0021】
【化11】
Figure 0005164236
【0022】
式中において、nは2以上の整数であり、R1は低級アルキル基、アミノ基、ハロゲン基、水酸基、スルフオン基等があげられる。
【0023】
【化12】
Figure 0005164236
【0024】
式中において、Nは2以上の整数であり、R1は低級アルキル基、アミノ基、ハロゲン基、水酸基、スルフオン基等があげられる。
【0025】
上記の可逆性レドックス活性重合物の最も好ましい具体例は、4−イソチオシアネトフェニルチオ尿素が重合されてなるもの、およびS−ベンジル−4−イソチオシアネトフェニルチオ尿素がが重合されてなるものである。
【0026】
さらに、本発明は、正極、固形電解質、およぴ負極を有し、正極材料が、上記の可逆性レドックス活性重合物を含むことを特徴とするリチウム二次電池である。またさらには、本発明は、上記の可逆性レドックス活性重合物の製造方法に関するものである。
【0027】
レドックス活性重合物の出発物質となる、同一分子中にチオウレア基とイソチオシアナート基を有するイソチオシアナート誘導体は、イソチオシアネートメチルチ尿素、2−イソチオシナートエチルチオ尿素、2−イソチオシアナートビニルチオ尿素、3−イソチオシアナト−シクロペンチル−チオ尿素、5−イソチオシアナート−チオフェン−2−イルーチオ尿素、5−イソチオシアナート−1−H−ピロール−2−イルーチオ尿素、6−イソチオシアナトナフタレン2−イルーチオ尿素が好ましい。
【0028】
レドックス活性重合物の出発物質となる、同一分子中にS―エーテル―チオウレア基とイソチオシアナート基を有するイソチオシアナート誘導体は、S−ベンジル−イソチオシアネートメチルチ尿素、S−エチル−2−イソチオシナートエチルチオ尿素、S−プロピル−2−イソチオシアナートビニルチオ尿素、S−ベンジル−3−イソチオシアナト−シクロペンチル−チオ尿素、S−エチル−5−イソチオシアナート−チオフェン−2−イルーチオ尿素、S−ベンジル−5−イソチオシアナート−1−H−ピロール−2−イルーチオ尿素、S−ベンジル−6−イソチオシアナトナフタレン2−イルーチオ尿素が好ましい。
【0029】
本発明の可逆性レドックス活性重合物は、ジスルフィド(S−S)結合を反応容易な五員環に組み込み、さらにπ共役可能なポリマー骨格にジアミンを組み込むことで、従来の電極材料にない大容量を得ることができた。さらに容量劣化や反応速度の本質的な改善をもたらすことができた。
【0030】
本発明の可逆性レドックス活性重合物の酸化還元反応の機構は、上記の式9,10で示すS−S<−>SHの反応とジアミン<−>ジイミンの反応の二つの部位で起こることが想定される。その酸化還元機能について説明すると、化学式9で示すポリマーは、2個のSにHが結合した還元形となり、化学式10で示すポリマーは、S−S結合した酸化形となる。Sの相手は、Hだけでなく、一般に金属M(LiやNa)でもよい。化学式13で、R3=Hの場合、その理論容量は、このユニット(Mw=194)がS−Sによる2電子反応するとすると259mAh/g、さらに、ジアミンの部分でユニット当たりさらに2電子反応する518mAh/gとなる。以上の値は、高容量材料である有機ジスルフィド化合物と同程度かそれを上回る値である。
化学式13示すポリマーは、合成の都合で保護基R2を導入した構造であり、保護基は化学的にも電気化学的にも取り除くことが可能なので、保護基を導入したまま、電極材料として使用することができる。そして、最初の電池反応で保護基を脱離させ、以降は、化学式9と化学式10の形での酸化還元反応が繰り返される。
【0031】
【化13】
Figure 0005164236
【0032】
(式中において、nは2以上の整数であり、炭素数1から20の芳香族環、複素環、あるいはそれらの組み合わせからなる。さらにこれらの基に置換基として、アミノ基、ハロゲン基、水酸基、スルフオン基等が結合されていてもよい。R2はチオウレアの硫黄部に導入する保護基である。この保護基としては、メチル、エチル、フェニルベンジル、ターシャルブチル等の低級アルキル基があげられる。)さらに、本発明のレドックス活性重合物は、従来の有機ジスルフィド化合物で課題となっていた容量劣化や反応速度の本質的な改善をもたらすことができた。つまり、還元時にS-S結合が開裂しても、従来の有機ジスルフィド化合物のようにポリマー主鎖が分解し低分子化するわけではなく、硫黄はチオールあるいはチオケトの形で側鎖として残るので、電解質溶液への溶解拡散に伴う容量劣化などがない。また、通常の無機化合物のような結晶構造の崩壊にともなう容量劣化もない。
【0033】
本発明のレドックス活性重合物の硫黄は分子内で、硫黄原子は酸化還元時に分子内で反応し易い隣り合った位置に存在しているため、反応が容易に進行する。π共役骨格に硫黄原子や窒素原子が結合しているため、電荷移動速度が速くなる。酸化時のジスルフイド基を含む複素環は、偽芳香族性を示すことが報告されており、このようなπ電子豊富な環であるため、その電子移動速度が速くなることが期待される。
その上、酸化状態では、π共役ポリマーとなるため導電性を期待できる。
【0034】
本発明の可逆性電極材料(レドックス活性重合物)である新規レドックス活性重合物は、同一分子中にチオウレア基とイソチオシアナート基を有するイソチオシアナート誘導体の重付加反応によって製造することができ、出発物質を無極性、中極性、極性溶媒で還流すれぱよいが、このままでは、反応性が低いため、反応の効率を上げるために、実際は、チオウレアのチオケト基にアルキル基等を保護基として導入してS−エーテルとして反応性を高め、ポリマーを合成する。
【0035】
S−エーテルとして導入した保護基は、酸化又は還元により取り除くことができるので、後の化学、電気化学処理により、あるいはそのまま電池反応により取り除くことができる。
【0036】
上記の合成方法により、こうして新規合成されたポリマー側鎖の硫黄原子は、酸化されると分子内でジスルフイド結合した時に、五員環(複素環)芳香環を形成するような位置にジスルフイド基を導入する。酸化時のジスルフイド基を含む複素環は、偽芳香族性を示すことが報告されており、このようなπ電子豊富な環であるため、その電子移動速度が速くなることが期待される。
【0037】
本発明の可逆性レドックス活性重合物を用いて電極を作製するにあたっては、可逆性レドックス活性重合物に導電材料、イオン伝導材料、バインダー等を必要に応じて加える。導電材料としては、金属粉末、炭素材料、導電性高分子等を用いることができる。例えば金属粉末としては、ニッケル、ステンレス鋼等が用いられ、炭素材料としてはアセチレンブラック,気相成長炭素,グラファイト等が用いられ、導電性高分子としては、ポリアニリン,ポリビロール,ポリパラフエニレン,ポリアセチレン及ぴこれらの誘導体等が用いられる。
【0038】
また、イオン伝導材料としては、無機イオン固体電解質や有機イオン固体電解質が用いられ、有機イオン固体電解質としては、例えぱ、ポリゴチレンオキサイド(PEO),ポリアクリロニトリル(PAN)及ぴこれらの誘導体に電解質塩を含有させたポリマーや、電解質溶液を含浸させたゲル状ポリマー等を用いることができる。
【0039】
また、バインダーとしては、例えぱ、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の電極の作製に通常用いられるポリマーを使用することができる。
【0040】
さらに、上記の可逆性レドックス活性重合物を用いて電極を作製するにあたっては、必要に応じて、2,5−ジメルカブト−1,3−チアジアゾール(DMcT)等の他の有機ジスルフィド化合物や硫黄を混合させたり、また電極の比表面積を大きくしたり、その製膜性を向上させるために、ゼオライト、ウイスカー等の繊維状や粒子状の固形物を混合させることも可能である。
【0041】
また、上記の可逆性レドックス活性重合物を用いて電極を作製する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えぱ、上記の可逆性レドックス活性重合物に導電材料等を加えて乳鉢で混合した合剤を集電体等に塗布して形成したり、プレス機械で押し固めて成形する等の方法を用いることができる。
【0042】
本発明の電極材料は、リチウム二次電池の正極材料として好適に使用することができる。上記の可逆性レドックス活性重合物を用いて作製した電極をリチウム二次電池の正極に使用する場合、負極や電解質には従来より一般に使用されている公知のものを用いることができる。負極としては、例えぱ、リチウム金属、リチウム合金、リチウムの吸蔵・放出が可能な炭素材料や無機材料、アルミニウムまたはアルミニウム含有合金と炭素とを主成分とする組成物等で構成されたものを用いることができる。
【0043】
また、電解質としては、例えぱ、エチレンカーボネート等の有機溶媒に電解質塩としてLiCl04等のリチウム化合物を溶解させた液体や、無機材料を用いた固体電解質や、ポリマーを用いた固体電解質等を用いることができ、また、ポリマーに上記の液体を含浸させてゲル状にしたゲル状ポリマー電解質を使用することも可能である。
【0044】
なお、この発明の可逆性レドックス活性重合物や電極材料は電池の電極に用いる他に、発色退色速度の速いエレクトロクロミック素子や、応答速度の速いグルコースセンサー等のセンサーや、書き込み・読み出し速度が速い電気化学アナログメモリー等に用いることもできる。
【0045】
【実施例】
以下、この発明の実施例に係る1,2,4−ジチアゾリウム−ジアミノベンゼンポリマーの合成方法について、電池の電極材料に用いた場合を例に具体的に説明する。なお、本発明の可逆性レドックス活性重合物の用途は、下記の実施例に示す電池の電極に限定されるものではなく、可逆性レドックス活性重合物の特性を利用するその他の用途にも当然適用されるものである。
【0046】
実施例1 S−ベンジル−4−イソチオシアナト−フェニルチオ尿素を出発物とした、S−ベンジル化ポリ(1フェニル−2,4−ジチオビウレット)の合成(1)下記の反応式で示す4−イソチオシアナト−フェニルチオ尿素の合成
【0047】
【化14】
Figure 0005164236
【0048】
1,4−ジイソチオシアナトベンゼン2gをTHF200mlに溶解し、この溶液に室温下、攪拌しながら、NH3水溶液0.5g滴下した。この混合溶液を30時間連続室温で攪拌し反応させた。反応溶液をろ過し、ろ液をエバポレートしたのち、酢酸エチルを展開溶媒として、オープンクロマトで分離、分取した。溶液をエバポレートし、目的物の4−イソチオシアナト−フェニルチオ尿素を75%の収率で得た。
(2)下記の反応式で示すS-ベンジル−4−イソチオシアナト−フェニルチオ尿素の合成
【0049】
【化15】
Figure 0005164236
【0050】
4−イソチオシアナト−フェニルチオ尿素1.6gをTHF20mlに溶解し、塩化ベンジル1.5gをさらに加え、5時間加熱還流した。反応溶液を室温冷却後、エバポレートし、粘調溶液を得た。この溶液にNa−OH粉末460mgを純粋20mlに溶解したアルカリ溶液を加え攪拌した。この溶液を分液ロートに加え、Ether/H20抽出した。EtherにMgSO4を加えて、脱水処理し、エバポレート
して、目的物S−ベンジル−4−イソチオシアナト−フェニルチオ尿素を85%の収率で得た。
(3)下記の反応式で示すS-ベンジル化ポリ(1フェニル−2,4−ジチオビウレット)の合成
【0051】
【化16】
Figure 0005164236
【0052】
S−ベンジル−4−イソチオシアナト−フェニルチオ尿素1.0gをTHF50mlを溶解し、5日連続で加熱還流した。反応後、析出物を、アセトン、エタノール、THFの順で洗浄ろ過した。こうしてS−ベンジル化ポリ(1フェニル−2,4−ジチオビウレット)550mgを得た。
(4)1,2,4−ジチアゾリウム−ジアミノベンゼンポリマーの合成
S−ベンジル化ポリ(1フェニル−2,4−ジチオビウレット)と酸化剤を反応させるか、電気化学的に酸化反応させて目的の1,2,4−ジチアゾリウムジアミノベンゼンポリマーを得ることができるが、本実施例では、S−ベンジル化ポリ(1−フェニル−2,4ジチオビウレット)を用いて電池電極を作成し、電池を組立てた後電池反応を行わせて1,2,4ジチアゾリウム−ジアミノベンゼンポリマーを合成した。
【0053】
実施例2 4−イソチオシアナト−フェニルチオ尿素を出発物とした、1,2,4−ジチアゾリウムジアミノベンゼンポリマーの合成
(1)下記の反応式で示す4−イソチオシアナト−フェニルチオ尿素の合成
【0054】
【化17】
Figure 0005164236
【0055】
1,4−ジイソチオシアナトベンゼン2gをTHF200mlに溶解し、この溶液に室温下、攪拌しながら、NH3水溶液0.5g滴下した。この混合溶液を30時間連続室温で攪拌し反応させた。反応溶液をろ過し、ろ液をエバポレートしたのち、酢酸エチルを展開溶媒として、オープンクロマトで分離、分取した。溶液をエバポレートし、目的物の4−イソチオシアナト−フェニルチオ尿素を75%の収率で得た。
(2)下記の反応式で示す1,2,4−ジチアゾリウムジアミノベンゼンポリマーの合成
【0056】
【化18】
Figure 0005164236
【0057】
S−ベンジル−4−イソチオシアナト−フェニルチオ尿素1gをTHF50mlに溶解し、さらにNaOH粉末100mgを加え、5日連続で加熱還流した。反応後、析出物を、希HCl水溶液に加え、析出沈殿させたのち、沈殿物をろ過した。ろ紙上の固形物をアセトン、エタノール、THFの順で洗浄ろ過した。こうして1,2,4−ジチアゾリウムジアミノベンゼンポリマー300mgを得た。
【0058】
実施例3 評価用電極作成
(A)S−ベンジル化ポリ(1−フェニル−2,4−ジチオビウレット)電極
S−ベンジル化ポリ(1−フェニル−2,4−ジチオビウレット)の粉末0.4gを乳鉢上でよく粉砕した。これにアセチレンプラック0.4gを数回に分けて加え,粉砕混合した。さらにPVDFを0.1g加え,よく混合した後にDMF50mlを加えて混練し混合溶液を得た。この溶液を、大きさ10×10cm、厚さ38ミクロンのチタン箔上に印刷した後、80℃で3時間真空加熱処理を行った。これを1×1cmに切出し評価用電極とした。
(B)1,2,4−ジチアゾリウムジアミノベンゼンポリマー電極
1,2,4−ジチアゾリウムジアミノベンゼンポリマーの粉末0.4gを乳鉢上でよく粉砕した。これにアセチレンプラック0.4gを数回に分けて加え,粉砕混合した。さらにPVDFを0.1g加え,よく混合した後にDMF50mlを加えて混練し混合溶液を得た。この溶液を、大きさ10×10cm、厚さ38ミクロンのチタン箔上に印刷した後、80℃で3時間真空加熱処理を行った。これを1×1cmに切出し評価用電極とした。
【0059】
評価用電極を正極、金属リチウムを負極と参照極とし、三極式のビーカー型のモデル電池を作成した。電解質溶液にはLiCl04をプロピレンカーボネートに溶解し、1Mに調整したものを用いた。電池の作成は全て窒素ガスフローのグロープボックス内で行った。電池反応は、放電下限1.75V、充電上限4.5V、電流値0.1mAの定電流充電反応を行った。AのS−ベンジル化ポリ(1−フェニル−2,4−ジチオビウレット)電極を正極に用いた電池をモデル電池A、Bの1,2,4−ジチアゾリウムジアミノベンゼンポリマー電極をを正極に用いた電池をモデル電池Bとした。BのS−ベンジル化ポリ(1−フェニル−2,4−ジチオビウレット)電池に関しては電池反応を行わせながら1,2,4−ジチアゾリウム−ジアミノベンゼンポリマーを正極に形成した。
【0060】
実施例4 評価用電極作成電池特性の測定結果
A、Bの放電時における放電特性を調べ、その結果を図1に示す。電池Aでは3回目以降の放電曲線は同様の形状を示し、活物質当たり220mAh/gと従来の電極材料にない大きな容量を示した。電池Bでは最初から大きな放電容量240mAh/gと従来の電極材料にない大きな容量を示した。また、充放電反応が繰り返し可能であることが確認出来た。なお、電池Aの放電1、2回目の放電曲線の形状は3回目以降とは異なり放電容量も小さかった。
【0061】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明における可逆性レドックス活性重合物は、ポリマー側鎖にジスルフィド基と主鎖にジアミンを導入したものであり、酸化還元能を有する新規ポリマーとしての優れた特性を有しており、この可逆性レドックス活性重合物において電子の移動がスムーズに行われ、この可逆性レドックス活性重合物を電池の電極、特にリチウム二次電池の正極材料として用いた場合、大きな電流での充放電が可能になると共に、高容量で高エネルギー密度の電池が得られるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の可逆性レドックス活性重合物を正極材料としたリチウム二次電池の放電容量を示す説明図である。

Claims (4)

  1. 一般式が化学式2で表される、同一分子中にS―エーテル―チオウレア基とイソチオシアナート基を有するイソチオシアナート誘導体。
    Figure 0005164236
    (式中のRは炭素数1から20の芳香族環、ピロール、又はチオフェンである。さらに、これらの基の置換基として、アミノ基、ハロゲン基、水酸基が結合されていてもよい。
    式中のRはチオウレアの硫黄部に導入する保護基である。この保護基は、メチル基、エチル基、ベンジル基、又は、ターシャリーブチル基である。)
  2. 請求項1記載のイソチオシアナート誘導体が重合されてなることを特徴とする化学式4で表される構造を有することを特徴とするレドックス活性重合物。
    Figure 0005164236
    (式中において、nは、2以上の整数であり、Rは、炭素数1から20の芳香族環、ピロール、又はチオフェンである。さらにこれらの基に置換基として、アミノ基、ハロゲン基、水酸基が結合されていてもよい。式中のRはチオウレアの硫黄部に導入する保護基である。この保護基としては、メチル基、エチル基、ベンジル基、又は、ターシャリーブチル基である。)
  3. 化学式5で表される、ベンゼン環にチオウレア基とイソチオシアナート基を有するイソチオシアナート誘導体。
    Figure 0005164236
    (式中において、R水素、メチル基、エチル基、アミノ基、ハロゲン基、又は、水酸基である。)
  4. 化学式6で表される、ベンゼン環にS―エーテル―チオウレア基とイソチオシアナート基を有する請求項1記載のイソチオシアナート誘導体。
    Figure 0005164236
    (式中において、R水素、メチル基、エチル基、アミノ基、ハロゲン基、又は、水酸基であり、Rはチオウレアの硫黄部に導入する保護基である。この保護基は、メチル基、エチル基、ベンジル基、又は、ターシャリーブチル基である。)
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