JP5163277B2 - 白金測温抵抗素子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、白金抵抗線又は白金抵抗膜よりなる感温部を有する白金測温抵抗素子の製造方法に関し、より詳しくは、炉内で行う熱処理の際の炉内パージガス中の酸素濃度や処理温度の最適化を行うことにより、抵抗値変化が少なく極めて安定な特性をもつ白金測温抵抗素子を構成できる製造方法に関する。
白金測温抵抗素子には、従来、白金抵抗線をコイル状にしてセラミックなどの絶縁碍子に封入したものや、白金抵抗膜を成膜して硝子等を盛り付けて封じるもの等が一般的である。具体的には、コイル状にした白金抵抗線をU字形に折り曲げ、複数の縦孔を有する円柱状の保持体の縦孔に挿通して引き出し、コイル状の部分を縦孔内に保持するとともに、保持体の一端面に釉薬を塗って白金抵抗線を仮止めし、次いで各縦孔に絶縁用の粉体を充填した後、保持体の他端面にも釉薬を塗り、炉内で加熱して封止することにより製造する(例えば、特許文献1参照。)。
また、白金抵抗膜を成膜して構成するものとしては、アルミナ基板に白金薄膜をスパッ夕やエレクトロンビーム装置を用いて着膜するとともに、レジストを塗布して所定パターンをもったマスクで露光・現像して、不要なレジストを除去した後、ドライエッチングまたはウェットエッチングでパターン以外の白金薄膜を除去し、レジストを除去して所定パターンの白金抵抗膜を形成し、ガラス等の保護膜を被覆形成して薄膜型白金測温抵抗素子を得る(例えば、特許文献2参照。)。
通常、これら白金測温抵抗素子を作製する際には、炉内で白金抵抗線や白金抵抗膜をアニールした後に釉薬やガラス等のフリットで封止するが、白金抵抗線や抵抗膜の汚染を防止するために、炉内にはアルゴン85%−酸素15%などの意図的に酸素を添加した混合ガスがパージされる。このパージガス中の少量の酸素は、白金抵抗線や抵抗膜を汚染から守るために存在し、その量について明解な基準は無かった。しかしながら、この酸素を含むパージガスは封止の際に上記保持体や白金抵抗膜と保護膜の間に残留することとなり、白金抵抗線や抵抗膜が酸化されることで抵抗値の変化を生じることとなる。
この白金の酸化による抵抗値の不確かさについて、従来は何ら議論されておらず、精密な温度測定では無視できない抵抗値変化が生じていた。これは白金抵抗線の酸化・還元の定量的な抵抗値変化のメカニズムが解明しておらず、製造上において炉内のパージガス中の酸素濃度の白金抵抗線の変化に対する知見が欠如していたためである。
特許第2517587号公報、第2図 特開2003−179276号公報
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、白金抵抗線の酸化・還元の定量的な抵抗値変化のメカニズムを解明し、これを応用することにより、使用温度領域において抵抗値変化の少ない安定した白金測温抵抗素子を得るための製造方法を提供する点にある。
本発明は、前述の課題解決のために、鋭意検討した結果、白金抵抗線からなる感温部を有する白金測温抵抗素子を保護管内に内装して封止した白金抵抗温度計の抵抗値の変化と白金の酸化ポテンシャル相図との関係について知見を得、それに基づき、白金測温抵抗素子それ自体における白金抵抗線又は白金抵抗膜の酸化・還元の定量的な抵抗値変化についてのメカニズムを以下のとおり解明した。
図1は、酸素分圧が0.1kPaおよび10kPaのときの酸化白金PtO2,PtOの酸化反応の酸化物生成自由エネルギー(Gibbsの自由エネルギー)を算出した白金の酸化に関する酸化ポテンシャル相図であり、Chemical Reaction and Equilibrium Software with Extensive Thermochemical Database,Outokumpu HSC Chemistry for Window,Ver.5.0により計算した。酸化白金は、ほかにもPt34などがあるが、この種の酸化白金は酸化物生成自由エネルギーがPtO2やPtOに比べて十分大きく、白金抵抗温度計の抵抗値の変化に直接は影響しないので省略した。図1の酸化ポテンシャル相図では、酸化環境の白金が300℃近傍のある温度での平衡状態ではPtO2が形成され、これらの温度より高温ではPtOが形成されるということをエネルギーバランスで示している。これらの化学的な相転移により、白金線の抵抗はこれらの温度近傍で変化することが分かる。この酸化膜が白金線の表面に限定されていれば、抵抗変化は平衡状態での抵抗値の変化に比べて小さいであろうことが推測できる。
白金抵抗温度計のシース内に密封されているパージガス中の酸素は、従来から白金線を他の金属性不純物による汚染から守るため必要といわれ、室温で5kPa程度の分圧の酸素が白金抵抗温度計シースに入れられており、図1の酸化ポテンシャル相図によれば、室温の平衡状態でPtO2、300℃から450℃でPtOに変化し、それ以上の温度で白金と酸素に還元されることとなる。白金と酸素の集合の平衡状態は酸化物生成自由エネルギーで特性が決まり、酸化物生成自由エネルギーは温度tと酸素の分圧pにより決まる。白金抵抗温度計内の酸素の分圧は、通常、約10kPa以下に調整されており、ほとんどの白金抵抗温度計の酸化特性はこの図の二つの分圧線の間にある。
PtO2の化学反応は、下記式(1)になると考えられる。また、その反応の酸化物生成自由エネルギーΔGPtO2(T,p)は、下記式(2)で表される。ここで、pは酸素分圧、KPtO2(T)は温度Tでの化学平衡定数であり、Rは気体定数である。この式は、ΔGPtO2(T,p)<0の温度領域ではPtO2が安定で、化学反応は酸素が供給される限り、反応式(1)の右方向に常に進行することを示している。また、約400℃以上では、別の相転移があり、PtOの化学反応は、下記式(3)になると考えられ、その反応の酸化物生成自由エネルギーΔGPtO(T,p)は、下記式(4)で表される。これもまた、酸素分割pと温度Tに依存する。この反応の方向もΔGPtO(T,p)の符号で決まる。約500℃以上では、ΔGPtO(T,p)>0となり、PtOはPtとO2に分解する。
Pt+O2=PtO2 ・・・(1)
ΔGPtO2(T,p)=−RTln(KPtO2(T)/p) ・・・(2)
Pt+1/2O2=PtO ・・・(3)
ΔGPtO(T,p)=−RTln(KPtO(T)/p1/2) ・・・(4)
また、300℃以下では、上記反応はΔGPtO2(T,p)とΔGPtO(T,p)の大小で決まり、ΔGPtO2(T,p)がΔGPtO(T,p)より小さければ、PtO2が安定である。このため、PtOが安定なのは、400℃近傍の狭い温度領域である。つまり、図1のPtO2の線とクロスする部分からΔGPtO(T,p)=0までの温度領域のみである。
平衡状態においては、約10kPaの酸素ガスが封じてあれば1/10K程度の抵抗値の増加に寄与するはずであるが、室温での平衡化の速度は非常に遅く、また白金線表面の酸化膜が内部への酸化の拡散を制限すると推定されることから、実際の抵抗値の増加は平衡状態の抵抗値までになることはない。しかしながら、酸化白金は時間とともに増加して抵抗値のドリフトとして観測される。また、この酸化の反応速度は高温で大きくなる。よって、抵抗値のドリフトは精密温度測定の際の不確かさとなり、特に300℃以上においては測定の不確かさとして考慮する必要がある。
図1に示す酸化物生成自由エネルギーは、酸素分圧と温度に依存して白金の酸化・還元反応が制御されることを示し、ある分圧の二つの曲線が交差する点で相変化が発生しており、白金抵抗温度計が平衡状態であるとすれば、抵抗変化はこれらの曲線に基づいて推定できることが分かるが、本発明者は、白金抵抗温度計について白金線のパージガス中の酸素による酸化還元の特性(抵抗値変化)を調べる実験を行い、平衡状態とはならない実際の測定についても、図1の酸化ポテンシャル相図の酸化物生成自由エネルギーの線に沿って酸化・還元反応が生じ、白金抵抗温度計の抵抗値が変化することを確認した。
実験に用いた白金抵抗温度計は、図13に示す従来からの白金抵抗温度計と同様、石英シース内の石英巻き枠に白金線が単コイル状に巻かれた構造の白金抵抗温度計であり、シース内の酸素分圧を調整できるように改造した。実験には3本の白金抵抗温度計を使用し、これらは600℃以上の温度で約10時間保ち、感温部の白金線を還元させた。各白金抵抗温度計のパージガス中の酸素分圧は、それぞれ略2kPa(Y002)、2kPa(Y003)、略8kPa(S4742)に設定し,これらを200℃から500℃,600℃の適当な温度で、16時間から24時間加熱し、8時間ごとに水の三重点での抵抗値を測定した。
図2は、各白金抵抗温度計のある温度における酸化還元による白金抵抗温度計の抵抗値(熱平衡状態ではない)ドリフト量を計測したものであり、横軸は晒した温度、縦軸は還元したときからの抵抗値の変化を温度に換算した値である。抵抗値は約350℃〜400℃の温度で2つの相に分離されており、PtO2からPtOへ相転移していることが分かる。つまり、白金の二つの酸化相で各白金抵抗温度計の酸素分圧において図1と同様の酸化ポテンシャル相図を作成した場合に、交差する二つの曲線の交点の両側に相当する。また、約450℃〜530℃で抵抗値が減少しており、PtOからPtへ相転移していることが分かる。これは、同じく各白金抵抗温度計の酸素分圧において図1と同様の酸化ポテンシャル相図を作成した場合に、PtOの曲線とエネルギー0の線との交点の両側に相当する。図2から、各白金抵抗温度計の抵抗変化には二つのステップがあり、これらの白金抵抗温度計間の特性差は主に酸素分圧にある。
この実験から、平衡状態ではない実際の測定環境下においても、白金は図1の酸化ポテンシャル相図に従って酸素と反応していることが確認された。すなわち、白金からPtO2,PtO2からPtO、PtOからPtという反応が、図1の酸化物生成自由エネルギーの線に沿って起こっており、シース内の酸素分圧により抵抗値変化の特性が影響を受けることが確認された。抵抗値の増加の理由としては、PtO2が2PtOへ化学変化することにより白金の伝導電子の数が減少すること、および温度上昇による化学変化の促進が原因と考えられる。
図3は、実験により得られた200℃から570℃での酸化還元による初期のドリフトの変化を示しており、縦軸は個々の温度でのドリフトレイトの標準不確かさを示している。ドリフトレイトは、PtO2の領域では遅く、PtOの領域では速い。このことから、PtOの温度域での酸化は、PtO2の温度域より速いと考えられる。また、酸化は既に200℃以下でも進んでいることを示している。
本発明者は、以上のとおり白金抵抗温度計のパージガス中の酸素と白金線とが、白金の酸化ポテンシャル相図に従って反応しており、パージガス中の酸素の分圧によってその抵抗値変化の特性が決まるといった知見に基づき、さらに種々の条件下における実験、検討を重ねた結果、白金抵抗線や抵抗膜を備える感温部を封止材で封止して白金測温抵抗素子を作製する際に、封止前の感温部を炉内で白金の還元温度まで内部温度を上げてアニールした後、炉内のパージガスを酸素分圧1kPa以下の不活性ガスに置換した状態で封止することにより、全温域にわたって極めて安定な白金測温抵抗素子を実現でき、また、白金表面をPtO2に充分酸化させることで抵抗値変化の少ない安定な素子を実現可能となり、その場合において封止の際の炉内雰囲気ガスの酸素量を、使用温度領域で上記PtO2の酸化状態になるような分圧であれば、必ずしも1kPaに抑えることなく、当該使用温度領域において安定して使用できる白金測温抵抗素子を実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、白金抵抗線又は白金抵抗膜よりなる感温部を封止材で封止して構成される白金測温抵抗素子の製造方法であって、封止前の前記白金抵抗線又は白金抵抗膜よりなる感温部を、酸素を含む不活性ガスでパージした炉内において、白金の酸化物生成自由エネルギーから求められる当該パージガス中の酸素分圧における白金の還元状態の温度領域まで昇温した後、前記炉内のパージガスを酸素分圧1kPa以下の不活性ガスに置換し、その状態で前記感温部を封止してなり、前記酸素が1kPa以下の分圧における白金の酸化物生成自由エネルギーから求められる白金の還元状態の温度領域まで安定して使用可能としたことを特徴とする白金測温抵抗素子の製造方法を提供する。尚、本出願においてパージガスの酸素分圧とは、室温下での分圧をいう。
また、本発明は、白金抵抗線又は白金抵抗膜よりなる感温部を有する白金測温抵抗素子の製造方法であって、前記白金抵抗線又は白金抵抗膜よりなる感温部を、酸素を含む不活性ガスでパージした炉内において、白金の酸化物生成自由エネルギーから求められる当該パージガス中の酸素分圧における白金の還元状態の温度領域まで昇温した後、前記炉内のパージガスを酸素分圧1kPa以下の不活性ガスに置換し、その状態で、該パージガス中の1kPa以下の酸素の分圧における白金の酸化物生成自由エネルギーから求められるPtO2の酸化状態の温度領域まで炉内の温度を下げた後、炉内のパージガスを酸素を含むガスとし、前記感温部の白金抵抗線又は白金抵抗膜の表面をPtO2に充分酸化させてなることを特徴とする白金測温抵抗素子の製造方法をも提供する。
ここで、前記感温部の白金抵抗線又は白金抵抗膜の表面をPtO2に充分酸化させた後、さらに炉内のパージガスを当該白金測温抵抗素子の使用温度領域が前記PtO2の酸化状態の温度領域に収まるような酸素分圧のガスに置換した状態で前記感温部を封止することにより、前記PtO2の酸化状態の使用温度領域で安定して使用可能とすることが好ましい。
また、前記感温部の白金抵抗線又は白金抵抗膜の表面をPtO2に酸化させるために、前記酸素を含むガスを、酸素100%のガスとすることが好ましい。
また、前記白金の還元状態の温度領域及び前記PtO2状態の温度領域を、それぞれ白金の酸化物生成自由エネルギーのポテンシャル図を用いて求めることが好ましい。
さらに、前記置換により炉内にパージされる酸素1kPa以下の不活性ガスを、酸素が略0%又は微量含んだ不活性ガスとすることが好ましい。
より具体的には、前記酸素が略0%の不活性ガスとして、所定の高純度不活性ガスを更に酸素ゲッター内を通過させて得たものを用いることが好ましい。
また、本発明は、上記の各製造方法により作製してなる白金測温抵抗素子をも提供する。
以上にしてなる本願発明は、封止前の前記白金抵抗線又は白金抵抗膜よりなる感温部を、酸素を含む不活性ガスでパージした炉内において、白金の酸化物生成自由エネルギーから求められる当該パージガス中の酸素分圧における白金の還元状態の温度領域まで昇温し、これにより酸素を含んだ清浄な高温雰囲気下で、白金抵抗線等の純度(抵抗比)のアップと白金抵抗線の残留歪取りアニールが行われ、抵抗値が安定する素地ができた上で、前記炉内のパージガスを酸素分圧1kPa以下の不活性ガスに置換し、その状態で前記感温部を封止したので、封止された感温部内に残留するガスの酸素分圧が1kPa以下となり、温度にかかわらず抵抗変化の少ない安定した特性が得られる。
あるいは、炉内のパージガスを酸素分圧1kPa以下の不活性ガスに置換した状態で、封止するのではなく、該パージガス中の1kPa以下の酸素の分圧における白金の酸化物生成自由エネルギーから求められるPtO2の酸化状態の温度領域まで炉内の温度を下げた後、炉内のパージガスを酸素を含むガスとし、前記感温部の白金抵抗線又は白金抵抗膜の表面をPtO2に充分酸化させたので、最終的に封止するものであっても、封止しないものであっても、抵抗変化の少ない安定した特性が得られる。
特に、前記感温部の白金抵抗線又は白金抵抗膜の表面をPtO2に充分酸化させた後、さらに炉内のパージガスを当該白金測温抵抗素子の使用温度領域が前記PtO2の酸化状態の温度領域に収まるような酸素分圧のガスに置換した状態で前記感温部を封止することとすれば、前記PtO2の酸化状態の使用温度領域で安定して使用できる白金測温抵抗素子を提供できる。
また、白金の還元状態の温度領域及びPtO2状態の温度領域は、それぞれ酸化物生成自由エネルギーに基づく白金の酸化ポテンシャル相図を用いて効率よく求めることができる。
また、パージされる酸素1kPa以下の不活性ガスとしては、より好ましくは酸素が略0%又は微量(10Pa程度以下の分圧)の不活性ガスとすることで、当該置換ガスの状態で感温部を封止する場合にはより抵抗値の安定した白金抵抗温度計が提供でき、封止するのではなく更に酸化させる上記のケースにあっては、酸化温度まで降温させる際のPtO領域での酸化反応スピードが抑えられるため、PtOの発生を抑えて純粋なPtO2として酸化させることができ、抵抗値を安定化させることが可能となる。
また、酸素略0%の不活性ガスについては、酸素0.2ppm〜数ppmを含む高純度不活性ガスを、更にスポンジチタンなどの酸素ゲッター内を通過させることで、効率よく得ることができる。
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
図11は、第1実施形態の製造手順を示すステップ図、図12は第2実施形態の製造手順を示すステップ図であり、図13は実験1〜3に使用した白金抵抗温度計の構造、図14は本実施形態で使用するガスパージ可能な加熱炉(チャンバー装着型)の例を示している。本発明の白金測温抵抗素子は、白金抵抗線または白金抵抗膜からなる感温部を有するものであれば、どのような構造でもよく、その構成部材(保持体、基板、フリット等)の素材についても従来から用いられている素材を広く適用できる。また、チャンバー内のパージガスに用いる不活性ガスとしては、アルゴンや窒素、ヘリウム、ネオンなどが好適に用いられるが特に限定されない。
まず、第1実施形態に係る白金測温抵抗素子の製造方法を、図11及び図14に基づき説明する。
チャンバー装着型加熱炉1は、図14に示すように、真空・ガス置換装置9に接続され、パージガスの酸素濃度(分圧)を調整可能な透明石英製のチャンバー2と、その内部に設置されたサセプター(ガイド)5に案内されてチャンバー内に進退可能に装着される透明石英製のトレイ4と、該チャンバー2を内装し、ランプ加熱装置6を備えた炉体3とより構成されており、ランプ加熱装置6の出力を調節することで急速加熱や徐冷など昇温・降温形態を変えることができる。このチャンバー2内に、フリットを加熱熔融する前の素子をトレイ4に載せて装着し、ランプ加熱装置6で加熱することにより封止することができる。
なお、本実施形態では、図14に示すようにチャンバーを構成した例を示したが、このチャンバーと加熱炉を兼ねたものとしてもよいし、その他の構成部材についても、従来から使用されている加熱装置を広く使用することができる。また、本例では、パージガスが素子内に通気できる状態で予め熔融前のフリットを設けたものをトレイに載せてチャンバー内に入れているが、このようなフリット等を予め設けるのではなく、ロボットハンド等により封止の工程の際に取り付けて熔融させるようにしても勿論よい。
本実施形態の製造方法の手順は、封止部にガラス等のフリット又は釉薬を塗膜した状態の感温部を作製する工程S1と、熱を加えて封止する前の素子をトレイ4に載せて炉内に設けた石英チャンバー2内にトレイ4ごと挿入してチャンバー2をシールする炉内設置工程S2と、炉内のチャンバー2に不活性ガスと酸素とを含むパージガスを封入するガス封入工程S3と、白金の酸化物生成自由エネルギーから求められる前記パージガス中の酸素の分圧における白金の還元状態の温度領域まで、チャンバー2内部温度を上げる昇温工程S4と、パージガスを、酸素が1kPa以下の不活性ガスに置換するガス置換工程S5と、この置換した状態でフリット熔融温度までランプ加熱装置6で炉内(チャンバー2内)を急速に加熱し、感温部の封止部を封止するフリット熔融工程S6とを少なくとも備えており、これにより酸素1kPa以下の分圧における白金の酸化物生成自由エネルギーから求められる白金の還元状態の温度領域まで安定して使用可能としたことを特徴としている。
ガス封入工程S3から昇温工程S4までのパージガスには、素子の保持体や基板等の各部、特に白金抵抗線や白金抵抗膜の表面などに付着している不純物を酸化除去するために適当な量の酸素が含まれている。この酸素量は、還元状態の温度まで昇温させる昇温工程S4の際に、フリットや釉薬が溶けない程度の温度に抑えることができるように、その酸素分圧を白金の酸化ポテンシャル相図を用いて調整されることとなる。昇温工程S4は、上記のとおり、炉内のチャンバー2に封入されているパージガスの酸素分圧と上記白金の酸化物生成自由エネルギーに基づく白金の酸化ポテンシャル相図とより求められるPt還元温度領域までの昇温を行い、酸素を含んだ清浄な高温雰囲気下で上記不純物の除去とともに白金抵抗線や抵抗膜の表面の酸化物から酸素を除去還元し、クリアな白金線にすると同時に、白金抵抗線や抵抗膜の残留歪取りアニールとしての効果により白金抵抗線や抵抗膜の抵抗比を上げ、いわゆる「純度」をアップさせるために行われる。このガス封入工程S3から昇温工程S4は複数回、繰り返し行ってもよい。また、昇温工程S4のためのガス封入工程S3よりも以前の段階で、より低温でのアニールやガス置換を繰り返して前処理を行っておくことがより好ましい実施例である。
そして、昇温工程S4を終了した後、ガス置換工程S5において最終封じるパージガスに置換することとなるが、本発明ではこのパージガスの酸素分圧を1kPa以下に抑えることで、これがフリット熔融工程S6で感温部を封じた際に内部に残存し、酸化・還元の両温度領域にまたがって使用しても抵抗値変化が小さく再現性の高い白金測温抵抗素子が得られるのである。酸素分圧は、好ましくは微量、具体的には10Pa以下、より好ましくは1Pa以下、さらに好ましくは0.1Pa以下に設定され、より望ましくは、例えば所定の高純度不活性ガスを更に酸素ゲッター内を通過させて得た略0%の酸素濃度に設定される。
次に、第2実施形態に係る白金測温抵抗素子の製造方法を、図12及び図14に基づき説明する。
チャンバー装着型加熱炉1は、上記第1実施形態と同様のものを例示して説明する。本実施形態の製造方法の手順は、封止部にガラス等のフリット又は釉薬を塗膜した状態の感温部を作製する工程S1と、熱を加えて封止する前の素子をトレイ4に載せて炉内に設けた石英チャンバー2内にトレイ4ごと挿入してチャンバー2をシールする炉内設置工程S2と、炉内のチャンバー2に不活性ガスと酸素とを含むパージガスを封入するガス封入工程S3と、白金の酸化物生成自由エネルギーから求められる前記パージガス中の酸素の分圧における白金の還元状態の温度領域まで、チャンバー2内部温度を上げる昇温工程S4と、パージガスを、酸素が1kPa以下の不活性ガスに置換するガス置換工程S5と、この置換した状態で、該パージガス中の1kPa以下の酸素の分圧における白金の酸化物生成自由エネルギーから求められるPtO2の酸化状態の温度領域まで炉内の温度を下げる降温工程S6と、その状態で炉内のパージガスを酸素を含むガスとし、前記感温部の白金抵抗線又は白金抵抗膜の表面をPtO2に充分酸化させる酸化工程S7と、さらに炉内のパージガスを当該白金測温抵抗素子の使用温度領域が前記PtO2の酸化状態の温度領域に収まるような酸素分圧のガスに置換するガス調整工程S8と、このガス調整した状態でフリット熔融温度までランプ加熱装置6で炉内(チャンバー2内)を急速に加熱し、感温部の封止部を封止するフリット熔融工程S9とを少なくとも備えており、これにより最終調整されたガスが感温部の保持体や基板上に残存し、前記PtO2の酸化状態の使用温度領域で安定して使用可能となる。
本実施形態では、上記第1実施形態と同様、酸素を含むガス雰囲気で還元領域まで炉内を昇温し、白金線や白金抵抗膜に付着している不純物の除去、PtOなどの表面の還元、残留歪取りアニールによる純度アップさせた後、PtO2領域まで温度を下げる際に通過するPtO領域において、白金線や白金抵抗膜の表面にできるだけPtOを生じさせないために、酸素分圧を低く設定した状態でPtO2まで降温させるといった手順を採用している。具体的には、昇温後のガス置換工程S5において、酸素分圧が1kPa以下の低酸素量のガスに置換し、その状態で降温させている。この際の酸素分圧はできるだけ低い方がPtO領域を速やかに通過でき、好ましくは微量、具体的には10Pa以下、より好ましくは1Pa以下、さらに好ましくは0.1Pa以下に設定され、より望ましくは、例えば所定の高純度不活性ガスを更に酸素ゲッター内を通過させて得た略0%の酸素濃度に設定される。
降温工程S6において、PtO2領域は、前記置換された低酸素量ガスの酸素分圧と酸化物生成自由エネルギーに基づく白金の酸化ポテンシャル相図から求められ、さらにPtO領域をより速やかに通過させるべく、その降温速度が速くなるように冷却することが好ましい。そして、酸化工程S7においては、PtO2領域まで降温させた状態で、酸素濃度の高いパージガスに置換して白金線表面を十分に酸化させるが、その際の酸素濃度はほぼ100%濃度のガスを用いることが好ましい。
そして、封止前の最終のガス調整工程S8においては、上記第1実施形態の場合と異なり炉内(チャンバー内)のパージガス中の酸素分圧は1kPa以下に設定するのではなく、使用温度領域が上記PtO2の領域に収まる(PtOに状態変化しない)分圧とするためには、パージガスの酸素分圧を1kPaより大きく設定することが必要がある。例えば、低温から300℃近くまでの温度領域を使用領域とするのであれば、図1に示した白金の酸化ポテンシャル相図から酸素分圧は10kPa程度以上に調整される。
尚、本例ではフリットを設けて熔融工程S9において感温部を封止する例について説明したが、この第2実施形態のように十分酸化させた後にPtO2領域で使用するように構成する例においては、このような感温部の封止は必ずしも必要ではなく、封止しない感温部を有する白金測温抵抗素子を保護管内に装着した白金抵抗温度計において、保護管内にパージするガスの酸素分圧を上記のとおり最終調整するガス(S8)の酸素分圧と同様に設定しておけば、PtO2の領域に収まる使用温度領域において、安定して使用できる白金測温抵抗素子を提供できるのである。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
(実験1)
上記第1実施形態の製造方法により作製される白金測温抵抗素子の特性の参考となるように、感温部を封止せずに保護管内に装着した図13に示す白金抵抗温度計を用いて、本発明の参考となる高温域での酸化・還元特性を調べる実験を行った。以下の実験1〜3はいずれも図13の白金抵抗温度計を用いた実験であるが、感温部をフリットや釉薬で封止するか、あるいは封止せずに保護管内に封止するのかが異なるだけであり、素子自体の特性については同様の傾向を示すことが予測でき、実施例とも代替しうる参考となる実験である。図13の白金抵抗温度計101は、十字状の巻枠104に直状の白金抵抗線120を巻き付けることによりコイル状に形成した単コイル巻きで感温部102を構成し、これを保護管103内に挿着して内部にパージガスGをパージして封止した従来公知のものである。
参考例1の酸素分圧は約0.1Paの微量であり、比較例1の酸素分圧は室温で4kPaである。ガス置換前の還元・アニールの温度は670℃で10時間行った。参考例1は高純度アルゴン(酸素分圧約0.1Pa程度)をパージガスとして置換したものであり、比較例1は酸素分圧を室温で4kPaになるように、アルゴンとともに全圧が約900℃で100kPa以下程度、室温で約25kPa程度となるように調整した。
まず、各白金抵抗温度計を420℃で100時間以上、400℃で100時間以上保ち、定期的に室温に冷却して水の三重点で各温度における抵抗値を測定した。測定結果を図4に示す。比較例1(4kPa)では、420℃及び400℃でのさらした時間とともに抵抗値が増加しつつある。図1の酸化ポテンシャル相図から分かるようにこの温度領域でΔGPtO(T,p)が負であり、シース内のO2を消費して、白金線の中でPtOになって広がっている。一方、参考例1(約0.1Pa)では、420℃及び400℃において、抵抗値がほぼ1mK以内で一定に維持されている。酸素分圧約0.1Paでは、ΔGPtOおよびΔGPtO2ともに420℃および400℃で正となり、白金線は酸化していない。この2本の白金抵抗温度計の差の結果は、シース内の酸素分圧が抵抗値の変化に大きく寄与していることを示し、酸素分圧約0.1Paでは酸化に対しては極めて安定であり、400℃以上の温度域の精密測定にも適していることが分かる。
次に、上記酸化特性の抵抗変化の測定の後、参考例1(約0.1Pa)、比較例1(4kPa)を230〜420℃の温度領域で1000時間以上使用した後、480℃及び510℃で等温還元の測定を行った。等温還元の結果を図5に示す。比較例1は、酸化ポテンシャル相図において480℃でΔGPtO(T)がほぼΔGPtO(T)=0の線を横切っており、抵抗値は図5に示すようにほぼ一定でPtOとPtが平衡している。しかし、510℃ではΔGPtO(T)>0となり、PtOが還元されることにより抵抗値が急激に減少していることが分かる。一方、参考例1の抵抗値は、480℃及び510℃で一定である。以上の実験1の結果、酸素分圧4kPaの白金抵抗温度計では大きな抵抗値変化を酸化、還元で示すが、酸素分圧が低い約0.1Paの白金抵抗温度計では、どのような温度でも安定であることが分かる。これにより本発明に係る白金測温抵抗素子においても、同様に封止材で感温部を封止する前に還元状態まで昇温させ、その後、酸素分圧が低いガス雰囲気下で封止することにより、広い温度領域で安定して使用できる素子を作製できることが分かる。
(実験2)
次に、最終調整する酸素分圧をより細かく複数に設定した参考例、比較例の白金抵抗温度計を用いて等温酸化特性を調べる実験を行った。酸素分圧の異なる5種の白金抵抗温度計として参考例2(約0.1Pa)、参考例3(0.8kPa)、比較例2(2kPa)、比較例3(4kPa)、比較例4(8kPa)を用意し、それぞれガス置換前の還元・アニールの温度は670℃で10時間行った。各白金抵抗温度計のカッコ内の数値は、それぞれ室温での酸素分圧である。図6は、230℃における各白金抵抗温度計の抵抗値変化、図7は、420℃における各白金抵抗温度計(比較例4を除く)の抵抗値変化を測定した結果を示している。
図6に示すように、参考例2(約0.1Pa)、参考例3(0.8kPa)のような低酸素分圧では、230℃でのドリフトは比較的小さいが、比較例2(2kPa)、比較例3(4kPa)、比較例4(8kPa)では、230℃の低温でさえ安定ではない。特に、比較例3(4kPa)や比較例4(8kPa)は大きく、60mKまたはそれ以上の抵抗変化となってしまう。一方、図7に示すように、参考例2(約0.1Pa)、参考例3(0.8kPa)の低酸素分圧では、420℃でさえ安定していることが分かる。比較例2(2kPa)は、420℃では比較的安定したが、230℃で抵抗値ドリフトが見られた。このことは、酸素分圧は酸化に非常に敏感であることを示している。酸素分圧は、使われる温度領域によって調整する必要があり、全温度領域で可能な白金抵抗温度計は1kPa以下の低酸素分圧に調整する必要があることが分かる。
実験1、2から分かるように、白金抵抗温度計の抵抗値のドリフトが、酸化物生成自由エネルギーにより制御されているPtO2とPtOの化学反応による限り、高い酸素分圧の白金抵抗温度計は400℃以上で使うとき大きな抵抗値の変化を示す。一方、低い酸素分圧、例えば1kPa以下の白金抵抗温度計では、白金線が汚染されない限り酸化に対しては安定である。よって、本発明に係る白金測温抵抗素子の製造方法においても、感温部をフリットや釉薬の封止材で封じる前の炉内(チャンバー内)の酸素は1kPaより低くすべきである。
(実験3)
次に、上記第2実施形態の製造方法により作製される白金測温抵抗素子の特性の参考となるように、充分な酸化を行うことによる安定度について実験を行った。まず、低温域での酸化特性を調べる実験を行うべく、3種の白金抵抗温度計Y002(2kPa)、Y003(2kPa)、S4742(8kPa)を用意し、それぞれ650℃で約15時間還元した後、100℃及び150℃で、3日〜4日間保った。白金抵抗温度計の抵抗値を水の三重点で定期的に測定した。図8は、100℃における各白金抵抗温度計の抵抗値変化、図9は、150℃における各白金抵抗温度計の抵抗値変化を測定した結果を示している。抵抗値はこの温度でも、図1のPtO2の曲線に従って、ゆっくりドリフトしている。抵抗値の変化から、酸化白金は白金線表面の数層と推定される。しかし、抵抗値は連続的に増加しており、酸化層は拡大している。
酸化ポテンシャル相図に従うなら、白金の酸化による白金抵抗温度計の抵抗値のドリフトは避けられないが、酸化によるドリフトは、室温ではそれほど速くはない。もし、白金抵抗温度計がある酸化状態に制御できるなら、限られた温度用域では長期にわたって安定度を確保できるであろう。この観点から、充分酸化させた白金線の安定度を測った。結果を図10に示す。この実験では、上記3本の白金抵抗温度計を、420℃で約15時間保ち、その後、白金線を十分酸化させるために、−20℃/h程度のスピードでゆっくり冷却させた。その後、水の三重点での抵抗値を測定した。最初の数時間はドリフトが見られたが、その後、抵抗は安定してきた。この実験3の結果により、十分に酸化させた白金線は比較的安定であり、使用温度領域で上記PtO2酸化状態となる分圧であれば1kPa以上でも安定して使用できることが分かる。これにより、本発明に係る白金測温抵抗素子の場合においても、封止材で封じる前の感温部を炉内やチャンバー内でPtO2に十分酸化させ、その状態を維持する酸素分圧のガス雰囲気のもとで封じることで、安定して使用できることが分かる。
酸素分圧0.1kPaおよび10kPaの白金の酸化物生成自由エネルギーを算出した酸化ポテンシャル相図。 ある温度における酸化還元による白金抵抗温度計の抵抗値ドリフト量を計測した図。 200℃から570℃での酸化還元による初期ドリフト変化量を示す図。 参考例1、比較例1を420℃で100時間以上、400℃で100時間以上保って抵抗値を測定した結果を示す図。 参考例1、比較例1を230〜420℃の温度領域で1000時間以上使用した後、480℃及び510℃で等温還元させた際の抵抗値を測定した結果を示す図。 参考例2、3、比較例2〜4の230℃における抵抗値変化を測定した結果を示す図。 参考例2、3、比較例2、3の420℃における抵抗値変化を測定した結果を示す図。 100℃における各白金抵抗温度計の抵抗値変化を測定した結果を示す図。 150℃における各白金抵抗温度計の抵抗値変化を測定した結果を示す図。 各白金抵抗温度計を420℃で約15時間保った後、白金線を十分酸化させるために冷却して抵抗値を測定した結果を示す図。 第1実施形態の製造手順を示すフロー図。 第2実施形態の製造手順を示すフロー図。 本発明の参考となる実験1〜3に用いた白金抵抗温度計を示す説明図。 ガスパージ可能な加熱炉(チャンバー装着型)の例を示す説明図。
符号の説明
1 加熱炉
2 チャンバー
3 炉体
4 トレイ
5 サセプター(ガイド材)
6 ランプ加熱装置
7 反射鏡
8 シール
9 真空・ガス置換装置
10 白金測温抵抗素子
101 白金抵抗温度計
102 感温部
103 保護管
104 巻枠
120 白金線
G パージガス

Claims (8)

  1. 白金抵抗線又は白金抵抗膜よりなる感温部を封止材で封止して構成される白金測温抵抗素子の製造方法であって、封止前の前記白金抵抗線又は白金抵抗膜よりなる感温部を、酸素を含む不活性ガスでパージした炉内において、白金の酸化物生成自由エネルギーから求められる当該パージガス中の酸素分圧における白金の還元状態の温度領域まで昇温した後、前記炉内のパージガスを酸素分圧1kPa以下の不活性ガスに置換し、その状態で前記感温部を封止してなり、前記酸素が1kPa以下の分圧における白金の酸化物生成自由エネルギーから求められる白金の還元状態の温度領域まで安定して使用可能としたことを特徴とする白金測温抵抗素子の製造方法。
  2. 白金抵抗線又は白金抵抗膜よりなる感温部を有する白金測温抵抗素子の製造方法であって、前記白金抵抗線又は白金抵抗膜よりなる感温部を、酸素を含む不活性ガスでパージした炉内において、白金の酸化物生成自由エネルギーから求められる当該パージガス中の酸素分圧における白金の還元状態の温度領域まで昇温した後、前記炉内のパージガスを酸素分圧1kPa以下の不活性ガスに置換し、その状態で、該パージガス中の1kPa以下の酸素の分圧における白金の酸化物生成自由エネルギーから求められるPtO2の酸化状態の温度領域まで炉内の温度を下げた後、炉内のパージガスを酸素を含むガスとし、前記感温部の白金抵抗線又は白金抵抗膜の表面をPtO2に充分酸化させてなることを特徴とする白金測温抵抗素子の製造方法。
  3. 前記感温部の白金抵抗線又は白金抵抗膜の表面をPtO2に充分酸化させた後、さらに炉内のパージガスを当該白金測温抵抗素子の使用温度領域が前記PtO2の酸化状態の温度領域に収まるような酸素分圧のガスに置換した状態で前記感温部を封止することにより、前記PtO2の酸化状態の使用温度領域で安定して使用可能とした請求項2記載の白金測温抵抗素子の製造方法。
  4. 前記感温部の白金抵抗線又は白金抵抗膜の表面をPtO2に酸化させるために、前記酸素を含むガスを、酸素100%のガスとした請求項2又は3記載の白金測温抵抗素子の製造方法。
  5. 前記白金の還元状態の温度領域及び前記PtO2状態の温度領域を、それぞれ白金の酸化物生成自由エネルギーのポテンシャル図を用いて求めた請求項1〜4の何れか1項に記載の白金測温抵抗素子の製造方法。
  6. 前記置換により炉内にパージされる酸素1kPa以下の不活性ガスを、酸素が略0%又は微量含んだ不活性ガスとした請求項1〜5の何れか1項に記載の白金測温抵抗素子の製造方法。
  7. 前記酸素が略0%の不活性ガスとして、所定の高純度不活性ガスを更に酸素ゲッター内を通過させて得たものを用いた請求項6記載の白金測温抵抗素子の製造方法。
  8. 請求項1〜7の何れか1項に記載の製造方法により作製してなる白金測温抵抗素子。
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