JP5162749B2 - アパタイト複合体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、基材の表面にアパタイト結晶が形成されてなるアパタイト複合体及びその製造方法に関する。
アパタイトは、骨や歯などの生体材料、カラム充填剤、環境汚染物質の吸着材料、血液浄化療法用の病因物質等の吸着材料、医用金属材料へのコーティング材料、各種細胞培養・組織工学用の足場材料などとして幅広く利用されている。そしてアパタイト結晶の性能を発揮させるために、その形態を制御することは重要である。
従来、アパタイト、特に水酸アパタイトの製造方法としては、(1)カルシウム塩とリン酸塩とを水溶液中で反応させる方法;(2)リン酸水素カルシウム(CaHPO)のスラリーにCaOまたはCa(OH)を加えて反応させる方法;(3)リン酸三カルシウム[Ca(PO]のスラリーにCaOを加えてアルカリ水溶液で加水分解させる方法;及び(4)水酸アパタイト、リン酸三カルシウムあるいはリン酸二カルシウムをアルカリ金属塩の存在下に焼成する方法などが知られている。
また、繊維状のアパタイトを得る方法については、いくつかの報告がされている(例えば特許文献1〜3、非特許文献1)。しかしながら、これらの文献には、アパタイト結晶を基材表面に形成させることについては記載されていない。
非特許文献2には、体内において、様々な組成の生体親和性のガラスと骨組織との界面でアパタイトの結晶が形成されることが記載されている。また、非特許文献3には、MgO−CaO−SiO−P−CaF系ガラスと接触させたアルミナ基板表面に、擬似体液中でアパタイトの結晶が形成されることが記載されている。しかしながら、これらの文献において形成されるアパタイト皮膜は、結晶粒子が堆積して形成されているものであり、特に配向性を有さないものである。
特許文献4及び非特許文献4には、NaO−CaO−B−SiO−P系ガラス粒子を、中性からアルカリ性のリン酸塩水溶液に浸漬してその表面に水酸アパタイトを形成させる方法が記載されている。しかしながら、当該文献には形成される結晶の形態を制御することについては記載されておらず、多孔質のアパタイト層が形成されているようである。また、アパタイト結晶の配向性については特に記載されていない。
特許文献5には、金属又はセラミックスからなる基材上にアパタイト粒子が堆積して皮膜が形成され、当該皮膜中のアパタイトの結晶のc軸方向が基材の表面に対して垂直方向に配向したアパタイト複合体が記載されている。特許文献5の実施例によれば、このアパタイト複合体は、チタン金属基材に対して水酸アパタイト粒子をプラズマ溶射してから熱処理する方法によって製造されている。
特開平5−17110号公報 特開2004−284933号公報 特開2003−93052号公報 米国特許第6709744号明細書 特開2006−131469号公報 M. Aizawa et al., J. Eur. Ceram. Soc., (2006), vol. 26, p. 501-507 L. L. Hench, J. Am. Cream. Soc., (1991), vol. 74, p. 1487-1510 K. Hata, T. Kokubo, T. Nakamura and T. Yamamuro, J. Am. Ceram. Soc., (1995), vol. 78, p. 1049-1053 W. Huang, D. E. Day, J. Mater. Sci.: Mater. Med., (2006), vol. 17, p. 583-596
本発明の目的は、形態の制御されたアパタイト結晶が基材の表面に形成されてなるアパタイト複合体を提供することである。また、そのようなアパタイト複合体を得るのに適した製造方法を提供することも本発明の目的である。
本発明は、カルシウム元素及びチタン元素を含有するガラス基材の表面に、棒状のアパタイト結晶が形成されてなるアパタイト複合体であって;
前記ガラス基材が酸化物ガラスであって、酸化物(CaO)のモル数基準で5〜50モル%のカルシウム元素を含むとともに、酸化物(TiO )のモル数として5〜60モル%のチタン元素を含み、かつ
薄膜X線回折測定において、前記アパタイト結晶の(002)面に帰属される回折ピークの積分面積強度が、該アパタイト結晶の(211)面に帰属される回折ピークの積分面積強度の5倍以上であることを特徴とするアパタイト複合体である。このとき、前記結晶の長手方向の平均長さが0.5〜100μmであることが好ましく、前記結晶のアスペクト比が3以上であることが好ましい。また、前記結晶が相互に隙間を空けて前記基材の表面に形成されていることが好ましく、前記結晶が前記基材の表面から垂直方向に立っていることも好ましい。
上記アパタイト複合体において、アパタイト結晶が形成された面の水に対する接触角が10度以下であるか、あるいは水滴を隙間に吸収すること好ましい。
また、本発明は、前記ガラス基材を、リン酸イオンの含有量が0.002〜1MでpHが2〜5.5のリン酸塩水溶液に浸漬し、前記ガラス基材の表面にアパタイト結晶を形成させることを特徴とする上記アパタイト複合体の製造方法である
本発明のアパタイト複合体は、形態の制御されたアパタイト結晶が基材の表面に形成されているので、形成された結晶の形状や配向性を生かして高度な機能発現が期待される。また、本発明の製造方法によれば、そのようなアパタイト複合体を容易に製造することができる。
本発明のアパタイト複合体は、カルシウム元素を含有する基材の表面に、棒状のアパタイト結晶が形成されてなるものである。基材の表面に棒状の結晶が配列されることにより、基材表面に様々な機能を付与できることが期待される。ここで、「棒状(ロッド状)」とは、繊維状、針状、柱状なども含む概念であって、一方向に長い形状を全て含むものである。形成されるアパタイト結晶のアスペクト比は3以上であることが好ましい。アスペクト比はより好適には5以上であり、さらに好適には10以上である。アスペクト比が大きすぎる場合には、基材上に立っている棒状結晶が倒れたり傾いたりしやすく、配向性の高い結晶を得ることが困難になる。したがって、アスペクト比は通常500以下である。ここで、アスペクト比とは、棒状結晶における「長さ/直径」の比率である。
本発明のアパタイト複合体におけるアパタイト結晶の長手方向の平均長さは、0.5〜100μmであることが好ましい。従来の製造方法においては、基材の表面に形成されるアパタイト結晶の寸法は、それほど大きくない場合が多かった。これに対し、本発明では、大きな寸法のアパタイト結晶を基材上に成長させられることが一つの特徴である。アパタイト結晶の寸法が大きい方が、形態に由来する機能の発現を明確にしやすい。前記平均長さが1μm以上であることがより好ましく、2μm以上であることがさらに好ましく、5μm以上であることが特に好ましい。一方、前記平均長さが長すぎる場合には、基材上に立っている棒状結晶が倒れたり傾いたりしやすく、配向性の高い結晶を得ることが困難になる。前記平均長さは、より好適には50μm以下である。
本発明のアパタイト複合体において、アパタイト結晶が、相互に隙間を空けて前記基材の表面に形成されていることが好ましい。隙間を空けて形成されることによって、表面積が大きくなり、機能を発現させるのに有利になる。そして、アパタイト結晶が、前記基材の表面から垂直方向に立っていることが好ましい。棒状のアパタイト結晶が配向しながら基材表面に形成されることによって表面積が大きく、均質な表面形態とすることができる。
アパタイト結晶の配向性については、具体的には、薄膜X線回折(TF−XRD)測定において、アパタイト結晶の(002)面に帰属される回折ピークの積分面積強度が、アパタイト結晶の(211)面に帰属される回折ピークの積分面積強度よりも大きいことが好ましい。すなわち、両者の積分面積強度の比(002/211)が1以上であることが好ましい。なお、無配向のアパタイト結晶について薄膜X線回折測定した場合の比(002/211)は0.3である。比(002/211)はより好適には2以上であり、さらに好適には5以上であり、特に好適には10以上であり、最適には20以上である。後に説明する実施例では、比(002/211)が30を超えるような極めて高度に配向したアパタイト結晶の形成されたアパタイト複合体も得られていて驚きである。
アパタイト結晶の(002)面に帰属される回折ピークの積分面積強度が、アパタイト結晶の(211)面に帰属される回折ピークの積分面積強度よりも大きいということは、アパタイト結晶のc軸が基材の表面に対して垂直の方向に向いているということである。すなわち、c軸と垂直な面であるc面が優先的に最表面に出ており、c軸と平行な面であるa面が棒状結晶の側面を構成している。一般に、c面は細胞増殖因子などの塩基性蛋白質の吸着に有利と考えられていて、a面は酸性蛋白質の吸着に有利と考えられている。したがって、このように規則正しく配列することによって、表面での選択的な吸着と、隙間での選択的な吸着とを発現させることも可能であり、例えば、組織工学用細胞培養担体としての応用も期待される。
以下、アパタイト複合体の製造方法について説明する。好適な製造方法は、カルシウム元素を含有する基材をpH6以下のリン酸塩水溶液に浸漬し、前記基材の表面にアパタイト結晶を形成させることを特徴とするアパタイト複合体の製造方法である。
本発明で用いられる基材は、カルシウム元素を含有するものである。リン酸塩水溶液に浸漬した際にリン酸イオンと反応してリン酸カルシウムを生成することの可能なカルシウム元素を含んでいることが必要である。したがって、リン酸塩水溶液に基材を浸漬した際に、水溶液中にカルシウムイオンとして溶出することの可能なカルシウム元素を含んでいることが好ましい。
カルシウム元素を含有する基材は特に限定されず、ガラス、セラミックス、樹脂、塩、金属などを用いることができる。また、これらの複合材料を用いることもでき、例えばガラス粉末や金属塩を樹脂中に分散させたりしたものを用いることもできる。なかでも、適当な速度でカルシウムイオンを均一に溶出させることが容易なガラスが好適である。ガラスとしては、酸化物ガラスが好適に用いられる。また、酸化物セラミックスを用いることもできる。酸化物ガラスを用いる場合にカルシウム元素(CaOとして含有)以外に含有することが好ましい成分としては、ホウ素元素(Bとして含有)やケイ素元素(SiOとして含有)が挙げられる。これらの元素の酸化物は酸化カルシウムとともに酸化物ガラスを形成することが容易だからである。また、ナトリウム元素(NaOとして含有)などのアルカリ金属元素や、マグネシウム元素(MgOとして含有)などのアルカリ土類金属元素を含有していてもよい。これらの元素の配合比を調整することによって、リン酸塩水溶液中へのカルシウムイオンの溶出速度をコントロールすることも可能であり、アパタイト結晶の形態を制御することも可能である。カルシウム元素の好適な含有量は、酸化物ガラス又は酸化物セラミックスの場合、上記酸化物(CaO)のモル数基準で5〜50モル%である。カルシウム元素の含有量の下限値は、より好適には10モル%であり、さらに好適には20モル%である。一方、カルシウム元素の含有量の上限値は、より好適には45モル%であり、さらに好適には40モル%である。
また、基材がチタン元素を含有することも好ましい。基材がチタン元素を含有することによって、高度に配向した棒状のアパタイト結晶を容易に得ることができる。その理由は必ずしも明らかではないが、以下のようなメカニズムによって高度な配向性が得られていると考えられる。すなわち、リン酸塩水溶液中に、カルシウム元素とチタン元素とを含有する基材を浸漬すると、カルシウムイオンの溶出に伴って基材表面にはチタニアゲル層が形成され、それがアパタイト結晶が成長するための土台となり、高度の配向性を有するアパタイト結晶がチタニアゲル層に対して垂直方向に成長したと考えられる。実際に、試料断面についてX線分析を行った写真から、アパタイト結晶のすぐ下側の層には、基材よりも多くのチタン元素が存在していることが確かめられている。ここで、酸化物ガラス又は酸化物セラミックスを基材とする場合には、チタン元素は酸化物(TiO)として含有されることになる。チタン元素の好適な含有量は、酸化物ガラスの場合、上記酸化物(TiO)のモル数として5〜60モル%である。チタン元素の含有量の下限値は、より好適には10モル%であり、さらに好適には20モル%である。一方、チタン元素の含有量の上限値は、より好適には45モル%であり、さらに好適には40モル%である。
ガラスは、それのみで基材として用いてもよいが、他の材料の表面にコーティングしたものを基材として用いてもよい。例えば金属製の成形品の表面にカルシウム元素を含有するガラスをコーティングしてから、リン酸塩水溶液に浸漬してアパタイト結晶を形成するような方法を採用すれば、金属製の成形品の表面に配向した棒状のアパタイト結晶を形成することも可能であり、各種インプラントなどとして有用である。コーティングしたガラスを熱処理して結晶化させてからリン酸塩水溶液に浸漬することもできる。
カルシウム元素を含有する基材を浸漬するリン酸塩水溶液は、リン酸イオンを含有するものであればよいが、好適にはそのpHが6以下である。弱酸性領域のpHであることによって、大きなアパタイト結晶の生成が容易である。中性からアルカリ性領域のpHである場合には、アパタイト結晶の成長が不十分となる。pHは、より好適には5.5以下であり、さらに好適には5以下である。一方、pHは通常2以上である。なお、浸漬操作中に、ガラス成分の溶出によってpHが変動することがあるが、ここでいうリン酸塩水溶液のpHは、浸漬を開始する際のリン酸塩水溶液のpHのことである。結晶の形成される最初が特に重要なので、浸漬を開始する際のリン酸塩水溶液のpHを調整することが重要である。
また、リン酸塩水溶液のリン酸イオンの含有量は、0.0002〜1M(モル/L)であることが好ましい。リン酸イオンの含有量は多すぎても少なすぎてもアパタイト結晶の成長が不十分となる。リン酸イオンの含有量の下限値は、より好適には0.0005Mであり、さらに好適には0.002Mである。一方、リン酸イオンの含有量の上限値は、より好適には0.5Mであり、さらに好適には0.2Mである。リン酸塩水溶液を調整するために使用されるリン酸塩は特に限定されないが、アルカリ金属の酸性塩であることが好ましい。なかでもリン酸二水素ナトリウム(NaHPO)が好適に用いられる。
浸漬する際のリン酸塩水溶液の温度は特に限定されず、20〜100℃程度の温度が採用される。結晶の成長速度を考慮すれば、温度が高い方が好ましく、40℃以上であることがより好ましく、60℃以上であることがさらに好ましい。水溶液が沸騰すると作業性が低下するので、98℃以下であることがより好ましい。浸漬時間は特に限定されないが、通常30分〜30日程度の時間、浸漬される。
こうして浸漬することによって、前述のような特徴ある形態を有するアパタイト結晶を形成することができる。浸漬後は、洗浄、乾燥などの処理を必要に応じて施してから、各種の用途に用いられる。
こうして得られたアパタイト複合体は、骨や歯などの生体材料、カラム充填剤、環境汚染物質の吸着材料、血液浄化療法用の病因物質等の吸着材料、医用金属材料へのコーティング材料、各種細胞培養・組織工学用の足場材料などとして幅広く利用することができる。
以下、実施例を用いて本発明を説明する。実施例中、以下の試験方法にしたがって試験を行った。
(1)TF−XRD測定方法
薄膜X線回折(Thin-film X-ray Diffraction)の測定は、薄膜アタッチメントをつけた理学株式会社製X線回折装置「RINT2500」を用いて以下の条件で行った。
ステップ幅:0.02
計数時間:1.0秒
電圧:40kV
電流:200mA
発散スリット:1.00mm
発散縦:10.00mm
散乱スリット:1.00mm
受光スリット:0.8mm
固定角度:1.000°
走査軸:2θ
測定FT:ステップスキャン
(2)SEM観察方法
試料の表面に30nmの金コーティングを施した後、日本電子株式会社製走査型電子顕微鏡(SEM)「JSM-6300CX」(加速電圧20kV)を用いて、試料表面の形態を観察した。また、場合により、当該電子顕微鏡に装着されたエネルギー分散型X線分析装置(エダックス・ジャパン株式会社製)にて、EDX(Energy dispersive X-ray analysis)による元素分析も行った。
(3)静的接触角測定方法
試料表面の蒸留水に対する静的接触角を、協和界面科学株式会社製自動接触角計「CA-V」を用いて測定した。
実施例1
CaCO、B及びTiOを出発原料として、10NaO・20CaO・40B・30TiO(モル%)ガラスが30g得られるようにバッチを調製し、乳鉢で30分間撹拌した。溶融温度を1400℃として、白金製るつぼに前記バッチを数回に分けてチャージし、30分間清澄した。その後、融液を流し出して急冷し、得られたガラスを粉砕した後、ふるいで150〜300μm程度の大きさに揃えた。得られた粉末状ガラス試料1.0gを、0.1Mの3種類のリン酸塩水溶液(NaPO水溶液:pH12、NaHPO水溶液:pH9.2、NaHPO水溶液:pH4.4)40mLに80℃で7日間浸漬した。浸漬後の試片は蒸留水で穏やかに洗浄して自然乾燥させた。浸漬後の試片の表面構造は、粉末X線回折(XRD)で調べ、SEMで試料表面に析出した結晶の形態を観察した。粉末X線回折法による測定は、理学株式会社製X線回折装置「RINT2500」を用いて、2θ/θスキャンで、電圧値40kV、電流値200mAで行った。
粉末X線回折測定の結果を図1に示す。全ての回折ピークは水酸アパタイト(PDF#72-1243)に帰属された。水酸アパタイトに帰属される回折ピークの強度は、0.1MのNaHPO水溶液に浸漬した試片がもっとも強かった。0.1MのNaHPO水溶液に浸漬した試片のSEM写真を図2に示す。図2からわかるように、NaHPO水溶液に浸漬した試片のアパタイト結晶は長さ20μmのロッド状に成長しており、基板のガラス面に対してほぼ垂直に立っていることがわかる。アパタイト結晶の直径は約0.5μmであり、そのアスペクト比は約40である。ここで、SEM観察と同時に元素分析を行ったところ、アパタイト結晶のすぐ下側の層には、ガラス基材よりも多くのチタン元素が存在していることが確認された。このことから、浸漬操作中におけるガラス基材の表面にはチタニアゲル層が形成していたと考えられる。一方、NaPO水溶液とNaHPO水溶液に浸漬した場合には、水酸アパタイトに帰属されるX線回折パターンのピーク強度が低く、SEM写真でもアパタイト結晶の形態が観察できなかった。したがって、これらの水溶液に浸漬した場合に得られるアパタイトは、低結晶性で配向性がないと考えられる。このことから、10NaO・20CaO・40B・30TiOガラス表面でのアパタイト核形成と結晶成長には、pH9やpH12付近のアルカリ性のリン酸塩水溶液よりもむしろ、pH4付近の弱酸性のリン酸塩水溶液が有効であることがわかった。
実施例2
CaCO、B及びTiOを出発原料として、34CaO・46B・20TiO(モル%)ガラスが30g得られるようにバッチを調製し、乳鉢で30分間撹拌した。溶融温度を1400℃として、白金製るつぼに前記バッチを数回に分けてチャージし、30分間清澄した。その後、融液を流し出し、ステンレス板で素早くプレスして急冷し、板状のガラスを得た。得られた板状のガラスを鏡面研磨しガラス試片とした。
NaHPO・2HOを蒸留水に溶解して、0.1、0.01、0.001及び0.0001M(モル/L)のNaHPO水溶液を調製した。各濃度での水溶液のpH値は、それぞれ4.4、4.7、5.1及び5.9であった。ガラス試片を、その表面積1mmあたり0.5mLのNaHPO水溶液に浸漬し、80℃の恒温槽で7日間静置した。浸漬後の試片は蒸留水で穏やかに洗浄し自然乾燥させた。浸漬後の試片の表面構造をTF−XRDを用いて調べ、SEMで試料表面に析出した結晶の形態を観察した。
各濃度のNaHPO水溶液に浸漬した場合のTF−XRDのチャートを図3にまとめて示す。また、0.01MのNaHPO水溶液に浸漬した場合のチャート(Ap−G)と、無配向の水酸アパタイト粉末のチャート(Ap−P)と、水酸アパタイトのPDFデータ(PDF#72-1243)とを併せて図4に示す。NaHPO水溶液に浸漬して得られた全ての試料の回折ピークは水酸アパタイトに帰属され、無配向性水酸アパタイト粉末のX線回折と比較すると明らかに(002)面のピーク強度が高く、(211)面と(300)面のピーク強度が低かった。
0.01MのNaHPO水溶液に浸漬した場合では、(002)面の回折ピークの積分面積強度と(211)面の回折ピークの積分面積強度の比(002/211)は32であった。一方、無配向性の水酸アパタイト試料における比(002/211)は、0.3である。これらを比較すれば、32/0.3=107倍の相違となり、ガラス試片表面からアパタイト結晶がc軸に垂直な方向に、高度に配向して成長していることを示している。0.01MのNaHPO水溶液に浸漬した試料をSEM観察したところ、長さ約20μm、直径0.4〜0.6μmのロッド状の水酸アパタイト結晶が、ガラス全面に均一に相互に隙間を空けて、表面に対しほぼ垂直方向に成長し、配列していることがわかった。得られた結晶のアスペクト比は約40である。アパタイト結晶が形成された面を斜め上方からSEM観察した写真を図5に示す。
0.01MのNaHPO水溶液に浸漬して、アパタイト結晶の形成された試料表面の静的接触角は10度以下(測定不能)であり、超親水性を示した。ただし、試料表面は隙間を空けてアパタイト結晶が配列された構造であるので、この接触角の測定結果は、結晶間に隙間があって、その隙間に水滴が吸収された結果かもしれない。しかしながら、そのような狭い空間を濡らすことができるのは生成した結晶表面自体が親水性であるためであると考えられる。なお、チタン元素を含まないNaO−CaO−B系ガラスを基材として、同様にリン酸塩水溶液に浸漬する試験を行ったところ、低配向性のアパタイト結晶が形成されたが、その場合の静的接触角は60°以上であった。したがって、表面の構造によって親水性になっている可能性がある。また、市販の緻密な水酸アパタイト焼結体の静的接触角は81°であり、市販のバルクの多孔質水酸アパタイトでは、水滴を即座に吸収するために接触角が測定不能であった。すなわち、本実施例で得られた試料は、バルクの多孔質水酸アパタイトと同様に水に対する親和性を示すことがわかった。
NaHPO水溶液の濃度の影響に関して、以下検討する。図3に示されるように、NaHPO水溶液の濃度が0.0001Mではアパタイト結晶の回折ピークが観察されなかったが、0.001M、0.01Mと濃度が上昇するにつれて、アパタイト結晶に帰属されるピーク強度が大きくなった。しかしながら、0.1Mまで濃度が高くなると、むしろピーク強度は低下した。また、配向性については、NaHPO水溶液の濃度0.01Mでは、比(002/211)が32倍であり、極めて高度に配向していた。濃度0.1Mでは比(002/211)が24倍であり、高度に配向していた。また、濃度0.001Mでは比(002/211)が4.6倍であり、十分に配向していた。
また、同じガラスを用い、0.001MのNaHPO水溶液に、80℃で7日間浸漬する代わりに、80℃で2時間だけ浸漬した試料を作成した。こうして得られた試料のアパタイト結晶が形成された面を斜め上方からSEM観察した写真を図6に示す。この写真によれば、比較的低濃度の水溶液に短時間浸漬した場合には、比較的小さい結晶が形成されることがわかる。そして、棒状の結晶が相互に隙間を空けて前記基材の表面から垂直方向に立っていることがわかる。
実施例1において、3種類のリン酸塩水溶液に浸漬した試料の粉末X線回折測定の結果をまとめて示した図である。 実施例1において、0.1MのNaHPO水溶液に7日間浸漬した試料のSEM写真である。 実施例2において、各濃度のNaHPO水溶液に浸漬した試料のTF−XRD測定の結果をまとめて示した図である。 実施例2において、0.01MのNaHPO水溶液に浸漬した試料と、無配向の水酸アパタイト試料とのTF−XRD測定の結果を、水酸アパタイトのPDFデータとともに示した図である。 実施例2において、0.01MのNaHPO水溶液に7日間浸漬した試料のSEM写真である。 実施例2において、0.001MのNaHPO水溶液に2時間浸漬した試料のSEM写真である。

Claims (7)

  1. カルシウム元素及びチタン元素を含有するガラス基材の表面に、棒状のアパタイト結晶が形成されてなるアパタイト複合体であって;
    前記ガラス基材が酸化物ガラスであって、酸化物(CaO)のモル数基準で5〜50モル%のカルシウム元素を含むとともに、酸化物(TiO )のモル数として5〜60モル%のチタン元素を含み、かつ
    薄膜X線回折測定において、前記アパタイト結晶の(002)面に帰属される回折ピークの積分面積強度が、該アパタイト結晶の(211)面に帰属される回折ピークの積分面積強度の5倍以上であることを特徴とするアパタイト複合体。
  2. 前記結晶の長手方向の平均長さが0.5〜100μmである請求項1記載のアパタイト複合体。
  3. 前記結晶のアスペクト比が3以上である請求項1又は2記載のアパタイト複合体。
  4. 前記結晶が、前記基材の表面から垂直方向に立っている請求項1〜のいずれか記載のアパタイト複合体。
  5. 前記結晶が、相互に隙間を空けて前記基材の表面に形成されている請求項1〜のいずれか記載のアパタイト複合体。
  6. アパタイト結晶が形成された面の水に対する接触角が10度以下であるか、あるいは水滴を前記隙間に吸収する請求項5に記載のアパタイト複合体。
  7. 前記ガラス基材を、リン酸イオンの含有量が0.002〜1MでpHが2〜5.5のリン酸塩水溶液に浸漬し、前記ガラス基材の表面にアパタイト結晶を形成させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載のアパタイト複合体の製造方法。
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