JP5159684B2 - 熱硬化性樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、熱硬化性樹脂組成物に関する。
電子機器の高性能化、多機能化に伴い、プリント配線板において、より高電圧、高電流量に対応できる基板として、回路厚の高い基板が求められている。これまで40μm程度の厚膜が作製されているが、さらに高厚膜の塗膜が求められるようになっている。
一般的に、プリント配線板用絶縁材の乾燥塗膜を作製する場合、基板上に樹脂組成物を塗布し、吊り下げ乾燥を行う。しかし、乾燥時に吊り下げた基板上の樹脂の重みでダレることにより、塗膜が不均一になる場合がある。そのため、樹脂組成物にダレ防止剤を添加し、チキソ性を付与することでダレを防止する。例えば、特許文献1は、微粒子からなる疎水性ヒュームドシリカとポリカルボン酸アミドとを分散液中に含む組成物をダレ防止剤として使用することを開示している。
しかし、ダレ防止剤を添加しても、樹脂組成物の経時変化により、吊り下げ乾燥時には樹脂組成物中のチキソ性が低くなり、比較的厚く塗布した場合にダレを防止することができなかった。逆に、経時変化を考慮してダレ止め剤を添加しても、添加初期の時点で厚膜塗布した際に、泡が多く発生し、良好な乾燥、硬化塗膜が得られない。また、他の方法として、薄い塗膜を何度も重ね塗りを行うという方法もあるが、工程数が多く生産性も低いという点で問題がある。
特許第2774065号
本発明者らは、厚膜の塗膜形成において一般的に用いられるダレ防止剤を使用したが、ダレ防止効果は十分でなかった。ダレ防止剤の併用も試みたが、比較的厚い塗膜の形成については、ダレ防止効果が充分ではなかった(後述の実施例の比較例2参照)。そこで、ダレ防止効果を高めるべく鋭意検討した結果、熱硬化性樹脂組成物のダレ防止剤として親水性ヒュームドシリカとポリカルボン酸アミドを併用すると、比較的厚みのある塗膜の作製も可能なダレ防止効果があることを見出した。
しかし、親水性ヒュームドシリカとポリカルボン酸アミドを含む熱硬化性樹脂組成物は、経時的にダレ防止効果が失われ、組成物の保存安定性が充分でないという新たな問題が生じた(後述の実施例の比較例1参照)。
そこで本発明は、ダレ防止効果と保存安定性に優れた熱硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、ダレ防止剤として親水性ヒュームドシリカとポリカルボン酸アミドを併用した際、比較的厚みのある塗膜の作製においてもダレ防止効果があることを見出した。
しかし、これらのダレ防止剤と熱硬化性樹脂や硬化剤等を一つの液体として作製すると、樹脂組成物を作製した時点から経時変化が起こり、保存安定性が非常に悪いことが分かった。そのため、発明者らは鋭意研究の結果、本発明の熱硬化性樹脂組成物において、少なくとも親水性ヒュームドシリカとポリカルボン酸アマイドを樹脂組成物の使用時まで別々に保存することにより、保存安定性及びダレ防止効果を保持できることを見出し、本発明を完成させるに至った(後述の実施例の実施例1および2、および比較例1参照)。
すなわち、本発明は、以下の熱硬化性樹脂組成物を提供する。
(1)熱硬化性樹脂、硬化剤、親水性ヒュームドシリカ及びポリカルボン酸アミドを含む熱硬化性樹脂組成物であって、前記親水性ヒュームドシリカとポリカルボン酸アミドを分離して保存することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
(2)前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂であることを特徴とする(1)に記載の熱硬化性樹脂組成物。
(3)前記硬化剤がフェノール樹脂であることを特徴とする(1)に記載の熱硬化性樹脂組成物。
(4)50μm以上の乾燥膜厚の形成に用いることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに1つに記載の熱硬化性樹脂組成物。
本発明の熱硬化性樹脂組成物によれば、ダレ防止剤は親水性ヒュームドシリカとポリカルボン酸アミドからなり、この2種を別々に保存して、使用前に混合することで、ダレ防止効果および組成物の保存安定性を高めることができる。
以下、本発明の熱硬化性樹脂組成物について説明する。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂および硬化剤を含む組成物と、親水性ヒュームドシリカおよびポリカルボン酸アミドからなるダレ防止剤との組み合わせを含み、前記親水性ヒュームドシリカおよびポリカルボン酸アミドが、1液で保存されることなく、別々に保存されることを特徴とする。すなわち、本発明の熱硬化性樹脂組成物において、親水性ヒュームドシリカおよびポリカルボン酸アミドは、互いに非共存状態にあり、少なくとも二液に別々に存在する。
上述のとおり、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、例えば次のような保存がなされる。
(1)1液に熱硬化性樹脂および硬化剤を含有する熱硬化性樹脂組成物の場合
(1−1)親水性ヒュームドシリカが、熱硬化性樹脂および硬化剤を含む1液に含有され、ポリカルボン酸アミドが前記1液とは別の溶剤に含有される。
(1−2)ポリカルボン酸アミドが、熱硬化性樹脂および硬化剤を含む1液に含有され、親水性ヒュームドシリカが前記1液とは別の溶剤に含有される。
(1−3)親水性ヒュームドシリカは、熱硬化性樹脂および硬化剤を含む1液とは別の溶剤に含有され、ポリカルボン酸アミドは、更に別の溶剤に含有される。
(2)熱硬化性樹脂および硬化剤を2液の溶剤として別々に保存する熱硬化性樹脂組成物の場合
(2−1)親水性ヒュームドシリカが、熱硬化性樹脂を含む溶剤に含有され、ポリカルボン酸アミドが、硬化剤を含む溶剤に含有される。
(2−2)親水性ヒュームドシリカが、熱硬化性樹脂を含む溶剤に含有され、ポリカルボン酸アミドが、熱硬化性樹脂を含む溶剤や硬化剤を含む溶剤に含有されず、そのほかの溶剤に含有される。
(2−3)ポリカルボン酸アミドが、熱硬化性樹脂を含む溶剤に含有され、親水性ヒュームドシリカが、硬化剤を含む溶剤に含有される。
(2−4)ポリカルボン酸アミドが、熱硬化性樹脂を含む溶剤に含有され、親水性ヒュームドシリカが、熱硬化性樹脂を含む溶剤や硬化剤を含む溶剤には含有されず、そのほかの溶剤が含有される。
(2−5)親水性ヒュームドシリカが、熱硬化性樹脂を含む溶剤や硬化剤を含む溶剤に含有されず、別の溶液に含有され、ポリカルボン酸アミドが、更に別の溶剤に含有される。
上記(1)と(2)のパターンのうち、(2)は硬化反応を簡便に行うことができるため好ましい。(2)のパターンのうち、理論上は熱硬化性樹脂と硬化剤以外の溶剤にダレ防止剤の一方を含有させることも可能だが、工程が増えるため、現実的ではない。
好ましい態様によれば、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂および硬化剤を二液として含む組成物と、親水性ヒュームドシリカおよびポリカルボン酸アミドからなるタレ防止剤との組み合わせを含み、前記親水性ヒュームドシリカおよびポリカルボン酸アミドが、前記二液に別々に存在する。すなわち、好ましい態様によれば、本発明の熱硬化性樹脂組成物において、親水性ヒュームドシリカおよびポリカルボン酸アミドの一方が、熱硬化性樹脂を含む溶剤および硬化剤を含む溶剤の一方に存在し、親水性ヒュームドシリカおよびポリカルボン酸アミドの他方が、熱硬化性樹脂を含む溶剤および硬化剤を含む溶剤の他方に存在する。
また、熱硬化性樹脂を含む溶剤と硬化剤を含む溶剤のどちらにダレ防止剤を入れても良いが、親水性ヒュームドシリカとポリカルボン酸アミドのダレ防止剤同士を1液に入れて保存することは避けた方が良い。
親水性ヒュームドシリカとポリカルボン酸アミドを1液中に混合保存した際に保存安定性が悪くなる理由は明確ではないが、親水性シリカ表面は極性系樹脂によるぬれが起こりやすく、シリカの増粘機構である水素結合を阻害するため粘度低下が起こり経時にて変化(保存安定性の悪化)が起きているのではないかと考えられる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、親水性ヒュームドシリカとポリカルボン酸アミドをダレ防止剤として使用し、硬化反応の直前にこれらが混合されるよう、それぞれを別の溶剤に含有させることにより、ダレ防止効果を高めることができるとともに、その効果を損失することなく熱硬化性樹脂組成物を安定に保存することができる。このため、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、好ましくは50μm〜150μm、より好ましくは70μm〜130μmの乾燥厚膜の形成に好適に用いることができる。すなわち、本発明の熱硬化性樹脂組成物を使用すれば、厚膜塗布時にダレの発生しない乾燥、硬化塗膜を得ることができる。
以下、本発明の熱硬化性樹脂組成物の各成分と配合量について説明する。
親水性ヒュームドシリカは、疎水化処理(シランまたはシロキサンによる化学的処理)が施されていないヒュームドシリカを指す(ヒュームドシリカは、本来親水性であり、粒子表面のSiに-OHが結合したシラノール基が形成されている)。よって、本発明において親水性ヒュームドシリカは、公知の手法により作製されたヒュームドシリカを使用してもよいし、市販のヒュームドシリカ、たとえば日本アエロジル株式会社により販売される親水性ヒュームドシリカ(品名:AEROSIL 50、90G、130、200、200V、200CF、200FAD、300、300CF、380)を使用してもよい。
親水性ヒュームドシリカの一次平均粒子径は、約7〜30nmであることが好ましく、比表面積は、380〜50m2/gであることが好ましい。後述のアエロジル#200は、一次平均粒子径が約12nmであり、比表面積が200±25m2/gである。一次平均粒子径は、公知の方法で測定が可能であり、例えばレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することができ、比表面積は、公知の方法で測定が可能であり、例えば気体吸着法(BET法)を用いて測定することができる。
親水性ヒュームドシリカは、高温火炎加水分解法/四塩化ケイ素の酸水素焔中での高温加水分解により製造することができる(日本アエロジルより)。
親水性ヒュームドシリカは、熱硬化性樹脂100質量部に対して、一般に2〜10質量部、好ましくは3〜7質量部で使用することができる。親水性ヒュームドシリカを2質量部未満で使用すると、厚膜(Dry 70μm)で塗布した時、経時においてダレが多くなる傾向があり、10質量部を超えると、泡が多く発生し抜けが悪くなる傾向がある。また、厚膜(Dry 70μm)での安定性を考えると、3質量部を以上添加することが望ましい。親水性ヒュームドシリカは、一般に組成物全体中樹脂不揮発分中1.5〜7.4質量%、好ましくは2.2〜5.2質量%の量で含有される。
ポリカルボン酸アミドは、当該技術分野でダレ止め効果が知られているものを使用することができ、たとえばByk-405、Byk-R 606、Byk-R 605(ビックケミー社製、いずれも商品名)等を使用することができる。
ポリカルボン酸アミドは、親水性ヒュームドシリカに対して、一般に10質量%から100質量%、好ましくは15〜50質量%で使用することができる。後述の実施例では、ポリカルボン酸アミドは、親水性ヒュームドシリカに対して、約17質量%で使用した。
ポリカルボン酸アミドの添加量が多いと硬化性に影響が現れるため望ましくない。ポリカルボン酸アミドは、一般に組成物全体中樹脂中0.15〜7.42質量%、好ましくは樹脂中0.22〜5.2質量%の量で含有される。
熱硬化性樹脂としては、任意の熱硬化性樹脂、すなわちエポキシ樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェノール樹脂、ポリシアネート樹脂、ポリエステル樹脂、熱硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂、マレイミド樹脂、ブロックイソシアネート樹脂、キシレン樹脂を使用することができ、好ましくはエポキシ樹脂が使用される。
前記エポキシ樹脂としては、1分子中に少なくとも2つのエポキシ基を有する公知慣用の多官能エポキシ樹脂が使用できる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフダレン型エポキシ樹脂、カテコール型エポキシ樹脂、ジシロクペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、トリフェニルメタン骨格を有するエポキシ樹脂、ザイロック型エポキシ樹脂、アミノエポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、CTBN変性エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、臭素原子含有エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ樹脂、プロピレングリコール又はポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、フェニル−1,3−ジグリシジルエーテル、ビフェニル−4,4’−ジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコール又はプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
熱硬化性樹脂は、一般に組成物全体中50〜99.95質量%、好ましくは60〜90質量%の量で含有される。
硬化剤としては、熱硬化性樹脂を硬化させることが知られているものを使用することができ、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂の場合、公知のエポキシ硬化剤を使用することができる。
エポキシ硬化剤としては、従来公知の各種エポキシ樹脂硬化剤もしくはエポキシ樹脂硬化促進剤を配合することができる。例えば、フェノール樹脂、イミダゾール化合物、酸無水物、脂肪族アミン、脂環族ポリアミン、芳香族ポリアミン、第3級アミン、ジシアンジアミド、グアニジン類、又はこれらのエポキシアダクトやマイクロカプセル化したもののほか、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスフォニウム、テトラフェニルボレート等の有機ホスフィン系化合物、DBUもしくはその誘導体など、硬化剤もしくは硬化促進剤の如何に拘らず、公知慣用のものを単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。これらのエポキシ硬化剤は、エポキシ樹脂100質量部に対して、0.05〜70質量部の範囲で配合することが好ましい。その配合量が上記範囲よりも少ないと硬化不足となり、一方、上記範囲を超えて多量に配合しても硬化促進効果を増大させることはなく、却って耐熱性や機械強度を損なう問題が生じ易いので好ましくない。
前記したエポキシ硬化剤の中でも、フェノール樹脂やイミダゾール化合物が好ましい。フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、Xylok型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、クレゾール/ナフトール樹脂、ポリビニルフェノール類など公知慣用のものを、単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
フェノール樹脂の配合量についてはエポキシ樹脂1当量に対して0.5〜1.3フェノール性水酸基当量のフェノール樹脂を配合する事が望ましい。
また、イミダゾール化合物は、組成物中の溶剤を乾燥するときの温度域(80℃〜130℃)では反応が緩やかで、硬化時の温度域(150℃〜200℃)では充分に反応を進めることができ、硬化物の物性を充分発現させる点で好ましい。また、イミダゾール化合物は、銅回路及び銅箔との密着性に優れている点でも好ましい。特に好ましいものの具体例としては、2−エチル4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、ビス(2−エチル−4−メチル−イミダゾール)、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4 ,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、トリアジン付加型イミダゾール等が挙げられ、単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
更に本発明の熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、フィラーや着色剤等の添加物を配合することができる。
以下に実施例および比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではないことはもとよりである。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
1.熱硬化性樹脂組成物の調製および外観試験
表1に記載される処方で、熱硬化性樹脂組成物を調製した。表1に記載される組成物は、主剤の液体と硬化剤の液体からなる。
(実施例1)
主剤に、エポキシ樹脂100質量部に対して、ダレ止め剤の親水性のヒュームドシリカ(AEROSIL#200)を3質量部添加した。
硬化剤に、フェノール樹脂35質量部に対して、添加剤としてポリカルボン酸アミド(Byk-405)1質量部添加した。主剤と硬化剤をそれぞれ攪拌もしくはロールミルにて分散作製し、塗布直前に主剤と硬化剤を混合しPMAにて約50dPa・sまで希釈し、120μmの厚膜で回路厚100μmの基板に塗布後、吊り下げで110℃35分乾燥後、目視によりダレ性の確認(外観試験)を行った。
(実施例2)
主剤に、エポキシ樹脂100質量部に対して、ポリカルボン酸アミド(Byk-405)を1質量部添加した。
硬化剤に、フェノール樹脂35質量部に対して、ダレ止め剤として親水性のヒュームドシリカ(AEROSIL#200)を3質量部添加した。
実施例1と同様に厚膜にてダレ性の確認(外観試験)を行った。
(比較例1)
主剤に、エポキシ樹脂100質量部に対して、親水性ヒュームドシリカ(AEROSIL#200)を3質量部とポリカルボン酸アミド(Byk-405)を1質量部添加し実施例1と同様に熱硬化性樹脂組成物を作製し、同様に厚膜にてダレ性の確認(外観試験)を行った。
(比較例2)
比較例1の親水性ヒュームドシリカの替わりに疎水性(ジメチルジクロロシラン処理)ヒュームドシリカ(AEROSIL R-974)を使用し、実施例1と同様に厚膜でのダレ性の確認(外観試験)を行った。
(比較例3)
主剤に、エポキシ樹脂100質量部に対して、親水性ヒュームドシリカ(AEROSIL#200)を3質量部添加し実施例1と同様に熱硬化性樹脂組成物を作製した。実施例1と同様に厚膜にてダレ性の確認(外観試験)を行った。
(比較例4)
主剤に、エポキシ樹脂100質量部に対して、ポリカルボン酸アミド(Byk-405)を1質量部添加し実施例1と同様に熱硬化性樹脂組成物を作製した。実施例1と同様に厚膜でのダレ性の確認(外観試験)を行った。
(比較例5)
硬化剤に、エポキシ樹脂100質量部に対して、ダレ止め剤として親水性のヒュームドシリカ(AEROSIL#200)を3質量部添加し実施例1と同様に熱硬化性樹脂組成物を作製した。実施例1と同様に厚膜でのダレ性の確認(外観試験)を行った。
Figure 0005159684
2.ダレ性試験
試験方法
1.銅張り積層板に評線を引く
2.測定サンプルをシリンジにて一定量(0.1ml)計り取る
3.計り取ったサンプルを銅張り積層板の評線上に垂らし、基板をラックに立て掛ける
4.熱風循環式乾燥炉にて乾燥する。
評価方法
乾燥後、評線からのダレの長さを測定する。
外観試験およびダレ性試験の結果を以下の表に示す。表中、「初期」は、主剤の液体パック、硬化剤をそれぞれ作製し、作製後速やかに混合して基板に塗布した場合の結果であり、「室温/90日」は、主剤、硬化剤をそれぞれ作製し、90日間室温で保管した後、混合して基板に塗布した場合の結果である。
Figure 0005159684
実施例1および2の組成物では、親水性ヒュームドシリカおよびポリカルボン酸アミドは、主剤または硬化剤にそれぞれ分離して存在する。実施例1および2の組成物は、主剤と硬化剤の作製後に速やかに混合した場合も、90日間室温で保管した後に混合した場合の何れについても、厚膜塗布時にダレ・ムラが認められなかった。
一方、比較例1の組成物では、親水性ヒュームドシリカとポリカルボン酸アミドが、主剤に一緒に含有されている。比較例1の組成物は、主剤と硬化剤の作製後に速やかに混合した場合、ダレ・ムラが認められなかったが、主剤と硬化剤を90日間室温で保管した後に混合した場合、全面にダレ・ムラが認められた。
比較例2の組成物は、主剤に疎水性ヒュームドシリカとポリカルボン酸アミドを含有しており、上述の先行技術文献(特許第2774065号明細書)に対応する組成物である。比較例2の組成物は、主剤と硬化剤の作製後に速やかに混合した場合も、全面にダレ・ムラが認められた。
比較例3の組成物は、親水性ヒュームドシリカのみを主剤に含む組成物であるが、主剤と硬化剤の作製後に速やかに混合した場合、ダレ・ムラが認められなかったが、主剤と硬化剤を90日間室温で保管した後に混合した場合、一部にダレ・ムラが認められた。
比較例4の組成物は、ポリカルボン酸アミドのみを主剤に含む組成物であるが、主剤と硬化剤の作製後に速やかに混合した場合も、全面にダレ・ムラが認められた。
比較例5の組成物は、親水性ヒュームドシリカのみを硬化剤に含む組成物であるが、主剤と硬化剤の作製後に速やかに混合した場合、ダレ・ムラが認められなかったが、主剤と硬化剤を90日間室温で保管した後に混合した場合、全面にダレ・ムラが認められた。
このように、親水性ヒュームドシリカとポリカルボン酸アミドの併用は、疎水性ヒュームドシリカとポリカルボン酸アミドを併用した場合より高いダレ防止効果が得られた。また、ダレ防止剤として親水性ヒュームドシリカとポリカルボン酸アミドを併用した際、これらを一つの液体中で保存するとダレ防止効果が失われるのに対し、両者を使用前まで分離して保存することにより、ダレ防止効果を安定に保持することできた。
以上の結果から、親水性ヒュームドシリカとポリカルボン酸アミドの組合せが、ダレ防止剤として有用であり、さらに樹脂組成物の経時変化を抑えるために、親水性ヒュームドシリカとポリカルボン酸アミドをそれぞれ分離して保存することで、より厚みのある塗膜をダレやムラもなく、一度の塗布乾燥工程で作製できることが分かった。

Claims (2)

  1. (i)エポキシ樹脂(ii)フェノール樹脂及びイミダゾール化合物の少なくとも1種からなる硬化剤、(iii)親水性ヒュームドシリカ、並びに(iv)ポリカルボン酸アミドを含む熱硬化性樹脂組成物であって、前記親水性ヒュームドシリカとポリカルボン酸アミドを分離して保存することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
  2. 50μm以上の乾燥膜厚の形成に用いることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
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