JP5158790B2 - プラスチック廃材の再資源化方法、プラスチック成形体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
に関する。
図1に示す例では、まず、プラスチック廃材回収工程(ステップS1)において、プラスチック廃材を回収する。プラスチック廃材は、家電製品と、OA機器と、電気電子部品とからなる群より選ばれる少なくともいずれかであることが好ましい。また、最近、拡大基調にあるフラットパネルディスプレイ(液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなど)が搭載された製品から回収されるプラスチック廃材にも適用でき、効率的なプラスチック廃材の再資源化を図ることができる。家電製品としては、エアコン、テレビ、冷蔵庫および洗濯機などからなる群から選ばれる製品が挙げられ、特に、液晶テレビ、複写機などに使用される難燃剤を使用するプラスチックからなる部材も含まれる。また、フラットパネルディスプレイが搭載された製品としては、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイおよび電子ペーパーから選ばれる少なくともいずれかであることが好ましい。
図1に示す例では、次に、回収されたプラスチック廃材から、異なる材質のもの(異材質物)を除去する(ステップS2)。プラスチック廃材が、ポリフェニレンエーテル樹脂とポリスチレン系樹脂とのアロイ材(PPE+PS)により構成される使用済み液晶テレビキャビネットである場合、この異材質物として、たとえばキャビネットに取り付けられたシール、ロゴバッチ、振動防止用テープ、コード結束用バンドなどが挙げられる。また、前部のキャビネットには塗装が施されていることが多いが、この塗膜も異材質物である。本発明のプラスチック廃材の再資源化方法では、これら異材質物の混入は物性低下の要因となるため除去することが好ましい。使用済み液晶テレビキャビネットから上述した異材質物を除去する方法としては、切削、研磨などの機械的方法や、薬品を用いた除去など、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を適宜使用することができる。
図1に示す例では、次に、破砕工程(ステップS3)において、上述したように異材質物を除去した後のプラスチック廃材を破砕して、プラスチック破砕物を得る。破砕方法としては、たとえばハンマー式破砕機、一軸破砕機、二軸破砕機、または裁断機などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。本発明のプラスチック廃材の再資源化方法では、当該破砕工程を含むことで、後の手順における作業性が向上するという利点がある。
図1に示す例では、次に、プラスチック破砕物を洗浄し、キャビネットに付着している汚れ、埃、異物などを除去する(ステップS4)。該破砕物を洗浄する方法としては、プラスチック破砕物同士をこすり合わせることにより異物などを除去する乾式方法や、水洗浄などの湿式方法が挙げられるが、その方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法を適宜使用することができる。
図1に示す例では、次に、洗浄したプラスチック破砕物を乾燥する(ステップS5)。好適な乾燥条件としては、たとえば80℃で4〜6時間程度の条件が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、乾燥設備についても、恒温器、除湿乾燥機、熱風乾燥機などが挙げられるが、これについても特に限定はされない。
図1に示す例では、次に、プラスチック廃材を構成するプラスチックと同じプラスチックのバージン材について、樹脂流動性を測定する(ステップS6)。得られた結果を数値化することが容易であることから、樹脂流動性として、メルトフローレート(MFR)およびスパイラルフローから選ばれる少なくともいずれかを測定することが、好ましい。メルトフローレートは溶液状態にあるポリマーの流動性を示す最も普及している尺度の一つで、溶液指数ともいう。押出式プラストメーターで、一定圧力、一定温度の下に、規定の寸法をもつノズル(オリフィス)から流出する量を測定し、g/10minの単位で表した指数である。一般にメルトフローレートの数値が大きいほど溶融時の流動性や加工性は良好であるが、引張強さ、耐ストレスクラッキング性が低下する傾向にある。一方、スパイラルフローは成形材料の金型中での流動性を評価する、射出成形の実用的な手法として用いられている。スパイラルフローでは、渦巻状の容易に完全充填しないほど長い流動長を持つ試験金型を用い、温度や圧力条件などを変えて射出成形し、本金型に充填した長さを計測して流動性を評価する。なお、この作業は事前に行っておくことが好ましく、その場合には、当該工程は省略することができる。
図1に示す例では、次に、乾燥工程(ステップS5)で乾燥物として得られたプラスチック廃材の樹脂流動性を測定する(ステップS7)。当該工程においても、バージン材の樹脂流動性測定工程(ステップS6)について上述したのと同様の理由から、樹脂流動性として、MFRおよびスパイラルフローから選ばれる少なくともいずれかを測定することが、好ましい。当該工程において測定されたプラスチック廃材の樹脂流動性のデータと、上述したバージン材の樹脂流動性測定工程(ステップS6)において測定されたバージン材の樹脂流動性のデータとから、樹脂流動性の変化率の相関関係が分かり、この相関関係は難燃剤の必要添加量を決定するために有用な情報となる。
図1に示す例では、次に、上述したバージン材の樹脂流動性測定工程(ステップS6)およびプラスチック廃材の樹脂流動性測定工程(ステップS7)から得られたデータの相関関係を照合することで、プラスチック廃材(プラスチック破砕物)に添加する難燃剤の量を決定する(ステップS8)。本発明のプラスチック廃材の再資源化方法では、このように、樹脂流動性を測定して、難燃剤の劣化度を判定するようにすることで、再資源化時の難燃剤の添加量を決定することができる。樹脂流動性の測定は、従来の高速液体クロマトグラフやフーリエ変換赤外分光法に比べ、測定時間を大幅に短縮できるためプラスチック廃材を効率的に再資源化することができるとともに、難燃剤の最適添加量が分かるためリサイクルコスト削減につながるという利点がある。
次に、上述した難燃剤添加量決定工程(ステップS8)で決定された量の難燃剤を、プラスチック廃材に添加する(ステップS9)。当該工程において添加する難燃剤は、プラスチック廃材に含まれるものと同じ難燃剤であることが好ましい。これにより、異種難燃剤の混入を防ぐと共に、再度リサイクルを行う際に管理が容易であるという利点があるためである。このようにプラスチック廃材に含まれ、当該工程において添加され得る難燃剤としては、たとえばリン酸エステル系難燃剤、ハロゲン系難燃剤などが挙げられる。中でも、ハロゲン系難燃剤は、焼却時のダイオキシン発生の原因として懸念されることなどからリン酸エステル系難燃剤が好ましい。
図1に示す例では、次に、難燃剤を添加した後のプラスチック廃材(プラスチック破砕物)を加熱溶融し、成形用樹脂原料となるペレット状のプラスチック成形体を製造する(ステップS10)。なお、本発明は、上述した本発明のプラスチック廃材の再資源化方法を用いたプラスチック成形体の製造方法についても提供する。またさらに、本発明は、当該プラスチック成形体の製造方法により製造されたプラスチック成形体についても提供する。
現在、液晶テレビのキャビネット材などに使用されている、ポリフェニレンエーテル樹脂とスチレン系樹脂からなるアロイ樹脂である変性ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE+PS))は、市場されてからほとんど時間が経過していない(1年程度)。そのため、劣化判定のサンプルとして検討することは適切でないと考え、本発明者らはプラスチック廃材を下記手順で擬似的に作製した。
次に、実験例1で作製したPPE+PS廃材およびPPE+PSバージン材に含まれる難燃剤の定量分析を高速液体クロマトグラフ(高速GPC装置HLC−8220GPC、東ソー(株)製)にて実施した。なお、検量線を作成するため、リン酸エステル系難燃剤である(CR−741、大八化学工業(株)製)を使用した。高速液体クロマトグラフの生データを図2示す。図2より、保持時間12分過ぎあたりに難燃剤由来のピークが確認できる。投入時間に伴って難燃剤由来のピークの減少、低分子成分生成に起因して保持時間12.5分あたりにブロード状のピークが確認できる。
次に、実験例1で作製したPPE+PS廃材およびPPE+PSバージン材を用いて、ゲル浸透クロマトグラフによる分子量測定(高速GPC装置HLC−8220GPC、東ソー(株)製)を実施した。それぞれのPPE+PS廃材とPPE+PSバージン材の重量平均分子量(Mw)の測定結果を表3に示す。表3から、投入時間0h(バージン)、400h、800h、1200hサンプルのいずれにおいても重量平均分子量(Mw)の変化はほとんど無かった。これにより、PPE+PS樹脂自身の劣化はほとんど無いことが分かる。これにより、樹脂流動性の上昇はPPE+PS樹脂自身の分子量低下ではなく、難燃剤による劣化が主たる原因であることが分かる。
次に、実験例1で得たメルトフローレートを横軸に、実験例2で得た難燃剤含有率を縦軸に取り作成したグラフを図3に示す。図3のグラフよりメルトフローレートの増加と共に難燃剤含有率が減少しており、これらの比例関係が成立しており、このことから相関が取れていることが分かる。これにより、メルトフローレートの値から難燃剤添加量を算出することができることが理解される。
次に、実験例1で作製したPPE+PS廃材のペレットを除湿乾燥機((株)松井製作所製)にて乾燥後、実験例4から得られた結果から必要量の難燃剤を添加し、スクリュー径25mm、L/D=26の二軸溶融混練押出機((株)テクノベル製))を用いて、設定温度260℃で加熱溶融混練するとともに押出成形し、ペレタイザーを用いてカットし、ペレット状のプラスチック成形体(以下、「PPE+PS再生材」)を得た。次に、除湿乾燥機((株)松井製作所製)にて乾燥後、このPPE+PS再生材のペレットを10トン射出成形機(日精樹脂工業(株)製)のホッパーに投入し、成形温度250℃、金型温度60℃、冷却時間30秒の射出成形条件で、ASTM準拠の物性測定用試験片を作製した。また、面衝撃強度測定のために、厚み3mmの物性測定用試験片も作製した。そして、これら各試験片を用いて、後述する引張強度、伸び、曲げ強度、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度、面衝撃強度を測定した。併せて、比較対象として、同一材のPPE+PSバージン材についても、同様に物性測定を行った。
(1)引張強度(MPa)および伸び(%)
JIS K7113の規定に準拠して、引張破断点降伏強さ、引張破断点伸びとしてそれぞれ測定した。なお、「引張強度」、「伸び」とは、材料を一定の速度で引張、応力と歪との関係を求めるもので、伸長された材料は、はじめに弾性変形をし、その後塑性変形をはじめ、極大強度に達し、さらに降伏点を超えるとネッキングを生じ、破断に至る。応力の一番大きいところ(最大点応力)を「引張強度」、破断したときの歪(破断点伸び)を「伸び」としている。
JIS K7203の規定に準拠してそれぞれ測定した。なお、「曲げ強度」、「曲げ弾性率」とは、2点で支えた試験片の中心に応力をかけることにより、応力と歪との関係を求めるものである。応力の一番大きいところを「曲げ強度」、応力−歪曲線の傾きを「曲げ弾性率」としている。
JIS K7110の規定に準拠して測定した。
JIS K7211の規定に準拠して測定した。
次に、PPE+PS再生材を乾燥後、10トン射出成形機により実験例5と同様の条件で燃焼試験用試験片を作製した。そして、これら各試験片を用いて、UL94V規格に準拠した燃焼試験を行った。なお、比較のためにPPE+PSバージン材、PPE+PS廃材についても同様の試験片を作製し燃焼試験を行った。燃焼試験の結果を表6に示す。表6から、PPE+PS再生材はいずれもPPE+PSバージン材と同等のV−0であり、良好な難燃性が得られたことが分かる。一方で、PPE+PS廃材は投入時間400hではV−0であったが、800h、1200hではV−1となり難燃性の低下が確認されたことが分かる。
Claims (6)
- ポリフェニレンエーテル樹脂とポリスチレン系樹脂とのポリマーアロイである変性ポリフェニレンエーテル樹脂であるプラスチック廃材の樹脂流動性を測定する工程と、
測定されたプラスチック廃材の樹脂流動性が増加した場合に、応じた量のビスフェノールAビスジフェニルホスフェートおよびレゾルシノールビスジフェニルホスフェートから選ばれる少なくともいずれかであるリン酸エステル系難燃剤を添加して、再資源化されたプラスチックの難燃性を改善する工程とを含む、プラスチック廃材の再資源化方法。 - 樹脂流動性として、メルトフローレートおよびスパイラルフローから選ばれる少なくともいずれかを測定する、請求項1に記載のプラスチック廃材の再資源化方法。
- プラスチック廃材が、家電製品と、OA機器と、電気電子部品とからなる群より選ばれる少なくともいずれかである、請求項1または2に記載のプラスチック廃材の再資源化方法。
- プラスチック廃材が、フラットパネルディスプレイが搭載された製品の部品である、請求項1〜3のいずれかに記載のプラスチック廃材の再資源化方法。
- フラットパネルディスプレイが搭載された製品が、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイおよび電子ペーパーから選ばれる少なくともいずれかである、請求項4に記載のプラスチック廃材の再資源化方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のプラスチック廃材の再資源化方法を含む、プラスチック成形体の製造方法。
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