ここで、導電性接着剤は、一般的に導電フィラーとしてAgフィラーを使用している。このAgフィラーを使用した導電性接着剤は、現状では、貴金属電極を有する電子部品に対しては信頼性があり、車載用の電子装置などに採用されて実績を上げている。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、家電製品を始めとする多くの汎用電子装置に使用されているSnメッキ電極部品すなわちSn系の卑金属電極を有する電子部品を、このAgフィラーを使用した導電性接着剤を介して、回路基板上に接続する場合には、次のような問題が生じることがわかった。
それは、電子部品の卑金属電極と導電性接着剤との間の接続において、(1)接続抵抗の初期値の増大、(2)高温高湿下における接続抵抗の上昇、(3)高温下における接続強度の低下、という3つの問題である。これらの問題は、具体的には、本発明者らの実験結果として図2、図3、図4に示される。
図2は、150℃の高温放置試験における試験時間と部品接続抵抗との関係を示す図、図3は、85℃、85%RHの高温高湿試験における試験時間と部品接続抵抗との関係を示す図、図4は、150℃の高温放置試験における試験時間と部品接続強度との関係を示す図である。
これら図2〜図4において、白三角プロットは、Snからなる卑金属電極を有する電子部品の場合の結果であり、黒丸プロットは、Ag−Pdからなる貴金属電極を有する電子部品の場合の結果である。この貴金属電極の結果は、現状において信頼性の点で実績のあるものである。
これら図2〜図4に示されるように、Ag−Pdからなる貴金属電極を有する電子部品の場合に比べて、Snからなる卑金属電極を有する電子部品の場合は、接続抵抗の初期値の増大が見られ(図2参照)、高温高湿下における接続抵抗の上昇が見られ(図3参照)、高温下における接続強度の低下が見られる(図4参照)。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、回路基板上にSn系の卑金属電極を有する電子部品を接続するときに使用される導電性接着剤において、接続抵抗の初期値の低減、高温高湿下における接続抵抗の上昇の抑制、および、高温下における接続強度の確保を実現することを目的とする。また、そのような導電性接着剤を用いた電子装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、(1)接続抵抗の初期値の増大、(2)高温高湿下における接続抵抗の上昇、(3)高温下における接続強度の低下の3つの問題点について、鋭意検討を行った。この検討について、図10(a)、(b)、図11(a)〜(d)を参照して具体的に述べる。
図10において、(a)は導電性接着剤30を用いた一般的な電子装置の概略断面図であり、(b)は、(a)中の丸で囲んだA部における導電性接着剤30の硬化前の状態を示す拡大図である。
また、図11において、(a)は図1(b)に示される導電性接着剤30における樹脂31の収縮を示す図であり、(b)は導電性接着剤30における導電フィラーとしてのAgフィラー32の接触の様子を示す図であり、(c)は導電性接着剤30における高温高湿下の影響を示す図であり、(d)は導電性接着剤30における高温下の影響を示す図である。
図10(a)に示されるように、電子部品20はSn系の卑金属電極21を有しており、回路基板10上に搭載されて、回路基板10の電極11と卑金属電極21とが導電性接着剤30を介して電気的に接続されている。
図10(b)に示されるように、回路基板10上に電子部品20を搭載した状態で、硬化前の導電性接着剤30においては、樹脂31中にAgフィラー32が分散されている。この状態で、加熱を行い、導電性接着剤30すなわち樹脂31を硬化させることにより接続を行う。
加熱を行うと、図11(a)に示されるように、樹脂31が収縮し、図11(b)に示されるように、Agフィラー32同士、Agフィラー32と卑金属電極21、さらにはAgフィラー32と回路基板10の電極11とが接触もしくはトンネル効果によって、電気的導通がなされる。
ここにおいて、図10(b)に示されるように、もともと電子部品20のSn系の卑金属電極21の表面には酸化膜(つまり、初期酸化膜)21aが存在している。そして、この初期酸化膜21aにより、図10(b)に示されるように、Agフィラー32と卑金属電極21との間で導通不良が発生するため、上記した接続抵抗の初期値の増大という問題が生じると考えられる。
また、貴金属であるAgフィラー32のAgとSn系の卑金属電極21のSnとの間で電位差が大きいため、図11(c)に示されるように、高温高湿下ではガルバニック腐食により、卑金属電極21表面のSnが酸化され酸化膜21aが成長する。
そして、この酸化膜21aが絶縁膜としてAgフィラー32と卑金属電極21との間の導通不良を発生させるため、上記した高温高湿下における接続抵抗の上昇という問題が生じると考えられる。
また、図11(d)に示されるように、高温環境下では、樹脂31と卑金属電極21との界面近傍に、樹脂の劣化部31aが発生する。この劣化部31aは、熱によって樹脂31が劣化したり、組成変化した部分であり、FT−IRなどの組成分析により実験的に確認されている。この劣化部31aにより、樹脂31と卑金属電極21との界面強度が低下する影響が大きい。また、大阪大学菅沼教授は錫が銀に拡散し、合金化することで空隙ができる事で強度の低下が起こることを述べている。
そして、これらの検討結果から、まず一つ目の接続抵抗の初期値を低減するためには、もともと電子部品20のSn系の卑金属電極21の表面に存在する上記初期酸化膜21aの除去が必要であると考え、検討を進めた。
その結果、導電性接着剤の硬化剤として酸無水物、硬化促進剤としてイミダゾールを用いれば、これら酸無水物およびイミダゾールによる上記初期酸化膜21aの還元除去が実現されることが実験的にわかった(図2参照)。
なお、本発明者らは、この酸無水物およびイミダゾールによる還元作用について、共晶ハンダボールの表面に酸化膜を形成し、これを酸無水物およびイミダゾールと混合し、熱処理するという流れの中で、酸化膜形成後のハンダボールと、さらに熱処理後のハンダボールとで、DSC挙動を調べた。
このDSC分析では、ハンダボールの表面に酸化膜が多く存在するほど、融点が高温側にシフトする。酸無水物、イミダゾールにより還元されると共晶半田の融点温度に近づく。当該酸化膜の消失度合、すなわち酸無水物およびイミダゾールによる還元作用を確認することができ、実際に、その還元作用が確認された。
また、同じく、高温高湿下における接続抵抗の上昇を抑制するためには、電解質の役割を担う硬化された樹脂31の吸水率を下げることも効果的である。
そのため、本発明者らは、導電性接着剤の主剤としてナフタレン骨格を持つエポキシ樹脂を採用し、硬化剤として酸無水物およびフェノール樹脂を採用し、硬化促進剤としてイミダゾールを採用することで、硬化された樹脂31の吸水率を下げ、高純度化することで接続抵抗の上昇を軽減できると考えた。
また、二つ目の高温高湿下における接続抵抗の上昇を抑制するためには、導電性接着剤の導電フィラー32として貴なAgではなく、より卑な金属に置き換えることによりガルバニック腐食を抑制することが考えられる。しかし、金属としてはAgが導電性に優れるため導電フィラー32の機能を確保するためには、Agの採用はやめられない。
そこで、本発明者らは、導電フィラーとしてAgの導電性を活用しつつ、高温高湿下での接続抵抗値を抑制する検討を進めた結果、導電フィラーは、AgとAgよりも卑であってSnよりも貴である他の金属とからなるものとすれば、卑金属電極21と導電フィラー32との間の電位差を小さくでき、ガルバニック腐食が抑制されると考えた。
そして、検討を進めた結果、導電性接着剤において、導電フィラーを、AgとAgよりも卑であってSnよりも貴である他の金属とからなるものとし、主剤としてナフタレン骨格を持つエポキシ樹脂、硬化剤として酸無水物およびフェノール樹脂、硬化促進剤としてイミダゾールをそれぞれ採用すれば、高温高湿下における接続抵抗の上昇の抑制がなされることが実験的にわかった(図3参照)。
また、三つ目の高温下における接続強度を確保するためには、硬化された樹脂31において、接着強度に関与すると思われる官能基の変化がより少なく耐熱性があること、および、熱によるの体積変化がより小さくガラス転移点(Tg)が高いことが必要であると考え、検討を進めた。
その結果、導電性接着剤の主剤としてナフタレン骨格を持つエポキシ樹脂、硬化剤として酸無水物、硬化触媒としてイミダゾールを使用すれば、樹脂の高耐熱性、高Tgを実現することができ、それにより高温下における接続強度の確保がなされることが実験的にわかった(図4参照)。
また、上記検討結果にも示されているが、導電性接着剤の硬化剤としては、酸無水物およびフェノール樹脂を併用することが好ましい。
酸無水物は、上述したように、酸化膜の還元除去、硬化された樹脂31の高純度化および低吸水率化、高Tg化が実現でき、耐熱性や耐湿性の向上の点で有効である。しかし、酸無水物だけでは、導電性接着剤の印刷性や硬化後の樹脂の弾性を確保しにくいため、フェノール樹脂との併用が好ましい。
このことについて、さらに検討を進めた結果、硬化剤としてフェノールを併用することにより、硬化収縮応力を下げ、曲げ弾性率を上げることができることが実験的にわかった(図5、図6参照)。
そして、硬化収縮応力および曲げ弾性率は大きすぎても小さすぎても好ましくない。実用上、好ましい酸無水物とフェノール樹脂との比率は、酸無水物と前記フェノール樹脂とは併用でエポキシ当量比を0.8当量とし、その内訳として95/5〜5/95である。この比率範囲ならば、耐ヒートサイクル性向上に有効で、さらにペースト塗布適性となり、有効である。
また、硬化剤としての酸無水物およびフェノール樹脂の比率が上記の範囲であれば、導電性接着剤中のClイオン濃度を小さくでき、高純度化が適切に実現できるとともに、高Tg化による高耐熱化が適切に実現できる(図7および図8参照)。
請求項1に記載の発明は、このような検討結果に基づいて、創出されたものであり、回路基板(10)上にSn、SnCu、あるいはSnBiよりなる卑金属電極(21)を有する電子部品(20)を接続するときに使用される導電性接着剤において、主剤としてのナフタレン骨格を持つエポキシ樹脂と、硬化剤としての酸無水物およびフェノール樹脂と、硬化促進剤としてのイミダゾールと、導電フィラーとを含んでなり、前記導電フィラーは、AgとAgよりも卑であってSnよりも貴である他の金属とからなるものであり、前記酸無水物と前記フェノール樹脂とは併用でエポキシ当量比を0.8当量とし、その内訳として95/5〜5/95であることを特徴としている。
本発明によれば、上述した各成分の作用効果が適切に発揮されることにより、回路基板(10)上にSn系の卑金属電極(21)を有する電子部品(20)を接続するときに使用される導電性接着剤において、接続抵抗の初期値の低減、高温高湿下における接続抵抗の上昇の抑制、および、高温下における接続強度の確保を実現することができる。
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の導電性接着剤において、前記イミダゾールは、マイクロカプセル化されたものであることを特徴としている。
このように、イミダゾールをマイクロカプセル化すれば、導電性接着剤に熱をかける前に、硬化促進剤であるイミダゾールによる硬化が進行してしまうのを抑制することができ、好ましい。
ここで、請求項3に記載の発明のように、請求項1または請求項2に記載の導電性接着剤においては、前記フェノール樹脂としては、ノボラックフェノールを採用することができる。
また、請求項4に記載の発明のように、請求項1〜請求項3に記載の導電性接着剤において、前記導電フィラーと樹脂成分との配合比率は、重量比として82/18〜90/10であることが好ましい。
また、請求項5に記載の発明のように、請求項1〜請求項4に記載の導電性接着剤において、前記導電フィラーは、Agと前記他の金属との合金からなる合金フィラーであるものにできる。
ここで、この請求項5に記載の導電性接着剤においては、請求項6に記載の発明のように、前記合金フィラーの表面には、前記他の金属よりも貴な金属からなる粒径が1〜500nmであるナノサイズの微粒子がコーティングされていることが好ましい。
上記の合金フィラーは、Ag単独よりも卑であるため、酸化しやすく、当該合金フィラーと相手側との間の接続抵抗が大きくなりやすい。そこで、他の金属よりも貴な金属からなるからなる粒径が1〜500nmであるナノサイズの微粒子を合金フィラーにコーティングしてやれば、導電性接着剤の熱硬化によりナノサイズの微粒子が融着するので、上記の合金フィラー単独の場合よりもフィラー間にて十分な接続がなされ当該接続を確保しやすい。
また、請求項7に記載の発明のように、請求項1〜請求項4に記載の導電性接着剤において、前記導電フィラーは、Agからなる第1のフィラーと前記他の金属からなる第2のフィラーとの混合物であるものにできる。
ここで、この請求項7に記載の導電性接着剤においては、請求項8に記載の発明のように、前記第1のフィラーもしくは前記第2のフィラーの表面には、前記他の金属よりも貴な金属からなるからなる粒径が1〜500nmであるナノサイズの微粒子がコーティングされていることが好ましい。
その理由は、上記請求項6に記載の発明と同様であり、導電性接着剤の熱硬化によるナノサイズの微粒子の融着により、フィラー間における十分な接続がなされ当該接続を確保しやすい。
また、請求項9に記載の発明では、請求項1〜請求項7に記載の導電性接着剤において、さらに、前記他の金属よりも貴な金属からなる粒径が1〜500nmの微粒子が混合されており、この微粒子は、導電フィラー同士の間、導電フィラーと卑金属電極との間、あるいは、導電フィラーと回路基板の電極との間に介在していることを特徴としている。
本発明の作用効果も、上記請求項6に記載の発明と同様であり、導電性接着剤の熱硬化によるナノサイズの微粒子の融着により、導電フィラー同士の間、導電フィラーと卑金属電極との間、あるいは、導電フィラーと回路基板の電極との間における十分な接続がなされ当該接続を確保しやすい。
また、請求項10に記載の発明のように、請求項1〜請求項9に記載の導電性接着剤においては、前記他の金属としてはCuを採用することができる。
また、上述したように、導電性接着剤の主剤としてナフタレン骨格を持つエポキシ樹脂を採用し、硬化剤として酸無水物およびフェノール樹脂を採用し、硬化促進剤としてイミダゾールを採用することで、硬化された樹脂の吸水率を下げ、高純度化することで電気伝導度を軽減できる。
ここで、電気伝導度の軽減のために高純度化される樹脂の指標として、導電性接着剤中のClイオン濃度がある。
そして、請求項11に記載の発明のように、請求項1〜請求項10に記載の導電性接着剤においては、前記導電性接着剤中のClイオン濃度が10ppm以下であることが好ましい。
導電性接着剤中のClイオンが少ないということは、硬化された樹脂の高純度化がなされ電気伝導度が軽減されてガルバニック腐食が起こりにくくなるということである。
本発明者らの検討によれば、上記請求項1に記載の導電性接着剤において、導電性接着剤中のClイオン濃度が10ppm以下となっていることが実験的に確認されており(図8参照)、そのようなClイオン濃度であれば、ガルバニック腐食を適切に抑制することができ好ましい。
また、硬化された樹脂の吸水率としては、硬化後の導電性接着剤において、耐湿試験を行い、その試験前後の重量変化が吸水率に相当する。
請求項12に記載の発明では、請求項1〜請求項11に記載の導電性接着剤において、前記導電性接着剤を硬化した後の硬化物において、85℃、85RH%の環境で364時間放置する耐湿試験を行った後の重量変化が2%以下であることを特徴としている。
本発明者らの検討によれば、上記請求項1に記載の導電性接着剤において、このような耐湿試験による重量変化が2%以下となっていることが実験的に確認されている(図9参照)。
これは、導電性接着剤の主剤としてナフタレン骨格を持つエポキシ樹脂を採用し、硬化剤として酸無水物およびフェノール樹脂を採用し、硬化促進剤としてイミダゾールを採用することで、硬化された樹脂の吸水率が下がったことによると考えられる。
また、請求項13に記載の発明では、請求項1〜請求項12に記載の導電性接着剤において、前記導電性接着剤を硬化した後の硬化物において、そのガラス転移温度が110〜160℃であることを特徴としている。
本発明者らの検討によれば、上記請求項1に記載の導電性接着剤において、硬化後の導電性接着剤のガラス転移温度が110℃〜160℃程度の高Tg化が図られていることが実験的に確認されている(図7参照)。
また、請求項14に記載の発明のように、請求項1〜請求項13に記載の導電性接着剤においては、前記導電フィラーは、前記導電フィラー同士にて、または、回路基板(10)の電極(11)もしくは電子部品(20)の卑金属電極(21)と融着するものにすることができる。
また、請求項15に記載の発明では、請求項1ないし請求項14のいずれか1つに記載の導電性接着剤(30)を介して、回路基板(10)上にSn、SnCu、あるいはSnBiよりなる卑金属電極(21)を有する電子部品(20)を搭載し、導電性接着剤(30)を加熱硬化することにより、電子部品(20)と回路基板(10)とを接続してなる電子装置が提供される。
それによれば、接続抵抗の初期値の低減、高温高湿下における接続抵抗の上昇の抑制、および、高温下における接続強度の確保を実現することのできる導電性接着剤を用いた電子装置を提供することができる。
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各図相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
図1(a)は、本発明の実施形態に係る導電性接着剤30を用いた電子装置S1の概略断面構成を示す図であり、(b)は、(a)中の丸で囲んだB部における導電性接着剤30の硬化前の状態を示す拡大図である。
回路基板10の上に電子部品20が搭載され、回路基板10の電極11と電子部品20の電極21とが導電性接着剤30を介して電気的に接続されている。なお、以下、回路基板10の電極11を基板電極11、電子部品20の電極21を部品電極21ということにする。
回路基板10は、セラミック基板やプリント基板、あるいはリードフレームなどを採用することができ、特に限定されるものではない。
基板電極11は、回路基板10の一面に形成されており、たとえば、Ag、AgSnおよびAgPdなどのAg系金属や、CuおよびCuNiなどのCu系金属や、Ni系金属、あるいはAu等の材料を用いた厚膜やめっきから構成されたものである。
電子部品20としては、コンデンサや抵抗、半導体素子などの表面実装部品を採用することができる。図1(a)に示される例では、電子部品20はチップコンデンサを用いた例として示してある。また、部品電極21はSn系の卑金属電極である。
このようなSn系の卑金属電極としての部品電極21としては、Sn、SnCu、SnBi、SnCuなどの金属などが挙げられる。ここでは、部品電極21は、めっきされたSn電極が用いられている。
導電性接着剤30は、主剤、硬化剤、硬化促進剤(硬化触媒)、カップリング剤、希釈剤を含有する樹脂31と導電フィラー32とからなる(図1(b)参照)。その使用材料は、還元効果機能を有する、高純度で低吸水率となる硬化物となる、耐熱性のある硬化物となるといった特徴を発現するもので、作業性・ペースト適性も考慮し選択したものである。
このような電子装置S1は、回路基板10上に電子部品20を搭載し、基板電極11上に導電性接着剤30を介して部品電極21を接触させ、導電性接着剤30を加熱硬化することにより、電子部品20と回路基板10とを接続することにより製造される。
本実施形態の導電性接着剤30について、さらに特徴点を中心に具体的に述べることとする。
この導電性接着剤30は、主剤としてのナフタレン骨格を持つエポキシ樹脂と、硬化剤としての酸無水物およびフェノール樹脂と、硬化促進剤としてのイミダゾールと、導電フィラー32とを含んでなり、導電フィラー32は、AgとAgよりも卑であってSnよりも貴である他の金属(たとえばCuなど)とからなるものであり、酸無水物とフェノール樹脂とは併用でエポキシ当量比を0.8当量とし、その内訳として95/5〜5/95である。
ここで、主剤として使用されるナフタレン骨格を持つエポキシ樹脂としては、作業性を考慮し液状のビスフェノール型エポキシ樹脂をはじめ、耐熱性を持たすためにビスフェノール樹脂中に固形のビフェニル型エポキシ樹脂および3官能フェノール型エポキシ樹脂を含む液状エポキシ樹脂や、ナフタレン骨格をもつ液状エポキシ樹脂などを採用することができる。
本例の導電性接着剤30では、特に耐湿性と耐熱性を考慮しナフタレン骨格をもつ液状エポキシ樹脂として、ジヒドロキシナフタレン・ジグリシジルエーテルを、主剤として採用している。
硬化剤として酸無水物を使用するのは、酸無水物は還元効果があることから、硬化物の高Tg化・低吸水率化・高純度物性を持たせるためである。ただし、酸無水物自身の吸湿による硬化性・特性劣化が起きないように、より低吸湿性の酸無水物を選択することが好ましい。
特に、本例では、好ましい酸無水物として、1−Isopropyl−4−methylbicyclo−[2.2.2]oct−5−ene−2,3−dicarboxylic anhydrideと、3,4−Dimethyl−6−(2−methyl−1−propenyl)−1,2,3,6−tetrahydrophthalic anhydrideとの混合物を採用している。
また、硬化剤としては、導電性接着剤30の印刷性や硬化物の弾性を考慮し、酸無水物とフェノール樹脂との併用したものを採用する。フェノール樹脂としては、ノボラックフェノールが好ましく、そのノボラックフェノールとしては作業性も考慮し、より低粘度のアリルフェノールがより好ましい。
そして、硬化剤である酸無水物とフェノール樹脂とは、併用でエポキシ当量比を0.8当量とし、その内訳として95/5〜5/95とすることが好ましく、特に酸無水物とフェノール樹脂との比は、50/50がより好ましい。
硬化触媒は、還元性とペーストポットライフと硬化性を考慮し、硬化性のやや遅い粉状のイミダゾールかマイクロカプセル化されたイミダゾールを採用し、その添加量は3〜12重量%とする。特に、本例では、好ましいものとして、ビスフェノールA型エポキシ樹脂に分散されたマイクロカプセル化イミダゾールを採用する。
また、限定するものではないが、カップリング剤としては、本例では、エポキシ基を含有するシランカップリング剤を採用し、添加量は0.5重量%とする。希釈剤としては、たとえば、非アルコール系の反応性希釈剤および溶剤を採用するが、特に本例では、環状脂肪族エポキシ樹脂を採用する。
また、導電フィラー32は、上述したように、AgとAgよりも卑であってSnよりも貴である他の金属(たとえばCuなど)とからなるものであるが、当該他の金属は、Ag−Sn間の電位差緩和の目的で含まれている。
また、導電性接着剤30において、この導電フィラー32と樹脂31成分との配合比率は、重量比として82/18〜90/10であり、特に本例では、好ましい比として88/12としている。
具体的に、導電フィラー32としては、Agと他の金属との合金からなる合金フィラーであるものや、Agからなる第1のフィラーと他の金属からなる第2のフィラーとの混合物であるものを採用することができる。ここで、上記各フィラーの形状は、特に限定しないが、たとえばフレーク状とすることができる。
本例では、導電フィラー32は、Agと他の金属であるCuとの合金すなわちAgCu合金からなるフレーク状の合金フィラーである。ここで、AgとCuとの比率は、Ag/Cu=60/40〜95/5の範囲が望ましい。
また、図1(b)に示されるように、導電フィラー32である合金フィラーの表面には、他の金属よりも貴な金属からなる微粒子33がコーティングされているものであってもよい。
なお、本例では、導電フィラー32は、Agと他の金属との合金フィラーであり、その表面に上記微粒子33がコーティングされているが、導電フィラー32を、上述のように第1のフィラーと第2のフィラーとから構成されたものにした場合には、第1のフィラーもしくは第2のフィラーの表面に、上記微粒子33がコーティングされているものであってもよい。
この微粒子33は、たとえば、その粒径が1〜500nmであるナノサイズのAg粒子を、合金フィラー表面にコーティングしたものにでき、導電経路を補助する目的で設けられるものである。そのため、微粒子33はコーティングされたものでなくてもよく、導電フィラー32の間に混合されていてもよい。そして、微粒子33の比率は、フィラーの30%以下程度である。
上述したように、本例の導電フィラー32は、AgとCuとの合金フィラーであり、その表面にAgからなる微粒子33がコーティングされている。より具体的には、本例の導電フィラー32は、Ag70Cu30合金のフレーク状フィラーであって、その表面にナノサイズのAgを15±5%コートしたものである。
そして、このような本例の導電フィラー32においては、比表面積:0.5±0.3[m2/g]、Tap密度:3.5±1.5[g/m3]であり、粒径については、D50:5±2[um]、D90:10±3[um]である。
ここで、上述してきた本例の導電性接着剤30の硬化条件について述べておく。本例の導電性接着剤30は、ナノサイズまたはサブミクロンサイズのAg微粒子33をコートした導電フィラー32を有するものであり、このAg微粒子33は、120℃〜250℃程度の低温で融着機能を発揮することが可能である。
また、搭載する電子部品20の耐熱性はリフロー条件までしか保証されない。また、本例の導電性接着剤30における樹脂31は150℃程度で硬化反応が促進することと、樹脂31中のボイドの原因となる反応性希釈剤の揮発を行なうためには、100℃でプリヒートしておくことが有効である。
また、電子部品20の部品電極21がSnであるので、Snの融点(231℃)以上まで上げると、接続抵抗が劣化し、部品接続強度評価を行なうと破壊部位が接続界面となることもわかっている。
以上のことを考慮すると、本例の導電性接着剤30の硬化は、100℃/30分→150℃/60分、または、100℃/30分→200℃/1分→150℃/60分、または、100℃/30分→150℃/60分→200℃/1分、といった条件で行うことが望ましい。さらに、導電フィラー32がAgCu合金であり、Cuの酸化を抑制するためには、硬化は窒素(N2)雰囲気で行うことが望ましい。
以上述べてきたように、本実施形態によれば、回路基板10上にSn系の卑金属電極21を有する電子部品20を接続するときに使用される導電性接着剤30において、主剤としてのナフタレン骨格を持つエポキシ樹脂と、硬化剤としての酸無水物およびフェノール樹脂と、硬化促進剤としてのイミダゾールと、導電フィラー32とを含んでなり、導電フィラー32は、AgとAgよりも卑であってSnよりも貴である他の金属とからなるものであり、前記酸無水物と前記フェノール樹脂とは併用でエポキシ当量比を0.8当量とし、その内訳として95/5〜5/95であることを特徴とする導電性接着剤30が提供される。
まず、本実施形態によれば、導電性接着剤30の硬化剤として酸無水物、硬化促進剤としてイミダゾールを用いれば、これら酸無水物およびイミダゾールによって、部品電極21の表面に形成されている初期酸化膜21aの還元除去が実現される。
なお、本発明者らは、この酸無水物およびイミダゾールによる還元作用について、共晶ハンダボールの表面に酸化膜を形成し、これを酸無水物およびイミダゾールと混合し、熱処理するという流れの中で、酸化膜形成後のハンダボールと、さらに熱処理後のハンダボールとで、DSC挙動を調べた。
このDSC分析では、ハンダボールの表面に酸化膜が多く存在するほど、融点が高温側にシフトする。酸無水物、イミダゾールにより還元されると共晶半田の融点温度に近づくため、当該酸化膜の消失度合、すなわち酸無水物およびイミダゾールによる還元作用を確認することができ、実際に、その還元作用が確認された。
本実施形態では、図1(b)にはSn電極である部品電極21の表面にSn酸化膜21aが形成されているが、この酸化膜21aは、硬化剤としての酸無水物、硬化促進剤としてのイミダゾールによって、還元され除去される。
そのため、導電フィラー32とSn系の卑金属電極である部品電極21との間で導通が確保され、接続抵抗の初期値の低減がなされる。このことについての具体的な効果は、本実施形態の導電性接着剤30として例示されたものについて確認され、その結果が図2に示される。
図2は、150℃の高温放置試験における試験時間(放置時間)と部品接続抵抗との関係を示す図である。図2において、白丸プロットは、本実施形態の導電性接着剤30とSn電極からなる部品電極21とを接合した場合の結果である。
また、図2中、白三角プロットは、従来の一般的なAgフィラーを使用した導電性接着剤とSnからなる卑金属電極を有する電子部品とを接合した場合(従来−卑金属)の結果であり、黒丸プロットは、従来の一般的なAgフィラーを使用した導電性接着剤とAg−Pdからなる貴金属電極を有する電子部品とを接合した場合(貴金属)の結果である。この貴金属電極の結果は、現状において信頼性の点で実績のあるものである。
図2に示されるように、本実施形態の場合は、従来の導電性接着剤を卑金属電極に接続する場合に比べて、接続抵抗の初期値の低減が実現されており、貴金属電極の場合と同様に実用レベルが確保されている。
また、上記特徴点を有する本実施形態の導電性接着剤30によれば、導電フィラー32を、AgとAgよりも卑であってSnよりも貴である他の金属とからなるものとしているため、卑金属電極である部品電極21と導電フィラー32との間の電位差を小さくでき、ガルバニック腐食が抑制される。
また、主剤としてナフタレン骨格を持つエポキシ樹脂を採用し、硬化剤として酸無水物およびフェノール樹脂を採用し、硬化促進剤としてイミダゾールを採用することで、硬化された樹脂31の吸水率を下げ、高純度化することで電気伝導度を軽減できる。
これらのことから、卑金属電極である部品電極21表面のSnの酸化を抑制することができ、高温高湿下における接続抵抗の上昇の抑制がなされる。このことについての具体的な効果は、本実施形態の導電性接着剤30として例示されたものについて確認され、その結果が図3に示される。
図3は、85℃、85%RHの高温高湿試験における試験時間と部品接続抵抗との関係を示す図である。図3において、白丸プロットは、本実施形態の導電性接着剤30とSn電極からなる部品電極21とを接合した場合の結果である。
また、図3中、白三角プロットは、従来の一般的なAgフィラーを使用した導電性接着剤とSnからなる卑金属電極を有する電子部品とを接合した場合(従来−卑金属)の結果であり、黒丸プロットは、従来の一般的なAgフィラーを使用した導電性接着剤とAg−Pdからなる貴金属電極を有する電子部品とを接合した場合(貴金属)の結果である。この貴金属電極の結果は、現状において信頼性の点で実績のあるものである。
図3に示されるように、本実施形態の場合は、従来の導電性接着剤を卑金属電極に接続する場合に比べて、高温高湿下における接続抵抗の上昇の抑制が実現されており、貴金属電極の場合と同様に実用レベルが確保されている。
また、上記特徴点を有する本実施形態の導電性接着剤30によれば、主剤としてナフタレン骨格を持つエポキシ樹脂、硬化剤として酸無水物、硬化触媒としてイミダゾールを使用すれば、樹脂の高耐熱性、高Tgを実現することができ、樹脂31の熱による劣化を抑制し、それにより高温下における接続強度の確保がなされる。
このことについての具体的な効果は、本実施形態の導電性接着剤30として例示されたものについて確認され、その結果が図4に示される。
図4は、150℃の高温放置試験における試験時間と部品接続強度との関係を示す図である。図4において、白丸プロットは、本実施形態の導電性接着剤30とSn電極からなる部品電極21とを接合した場合の結果である。ここで、部品接続強度は引っ張り強度である。
また、図4中、白三角プロットは、従来の一般的なAgフィラーを使用した導電性接着剤とSnからなる卑金属電極を有する電子部品とを接合した場合(従来−卑金属)の結果であり、黒丸プロットは、従来の一般的なAgフィラーを使用した導電性接着剤とAg−Pdからなる貴金属電極を有する電子部品とを接合した場合(貴金属)の結果である。この貴金属電極の結果は、現状において信頼性の点で実績のあるものである。
図4に示されるように、本実施形態の場合は、従来の導電性接着剤を卑金属電極に接続する場合に比べて、高温下における接続強度の確保が実現されており、貴金属電極の場合と同様に実用レベルが確保されている。
なお、この接続強度試験において、最終的な破壊形態は、本実施形態および貴金属の場合は、母材破壊であり、従来の導電性接着剤を非金属電極に接続する場合は、Sn界面剥離であった。
また、上述したが、本実施形態の導電性接着剤30では、硬化剤として、酸無水物およびフェノール樹脂が併用されている。
酸無水物は、上述したように、酸化膜の還元除去、硬化された樹脂31の高純度化および低吸水率化、高Tg化が実現でき、耐熱性や耐湿性の向上の点で有効である。しかし、酸無水物だけでは、導電性接着剤30の印刷性や硬化後の樹脂31の弾性を確保しにくいため、フェノール樹脂との併用が好ましい。
本発明者らの検討によれば、硬化剤としてフェノールを併用することにより、硬化収縮応力を下げ、曲げ弾性率を上げることができることが実験的にわかった。その実験結果の一例を図5、図6に示す。
図5は、フェノール樹脂(Ph)/酸無水物(Anh)の比率と硬化収縮力との関係を示す図、図6は、フェノール樹脂(Ph)/酸無水物(Anh)の比率と曲げ最大応力および曲げ弾性率との関係を示す図である。ここで、硬化収縮力については、カバーガラスの反り試験より求め、曲げ最大応力および曲げ弾性率については、3点支持の曲げ強度試験より求めた。
樹脂31の収縮による導電フィラー32同士の接触確保や上記の印刷性、弾性確保などの点から、導電性接着剤30の硬化収縮応力および曲げ弾性率は大きすぎても小さすぎても好ましくない。
図5および図6に示される結果をふまえて、実用上、好ましい酸無水物とフェノール樹脂との比率は、酸無水物とフェノール樹脂とは併用でエポキシ当量比を0.8当量とし、その内訳として95/5〜5/95である。この比率範囲ならば、耐ヒートサイクル性向上に有効で、さらにペースト塗布適性となり、有効である。
また、硬化剤としての酸無水物およびフェノール樹脂の比率が上記の範囲であれば、導電性接着剤30中のClイオン濃度を小さくでき、高純度化が適切に実現できるとともに、高Tg化による高耐熱化が適切に実現できる。これらのことについての具体的な実験結果が、図7および図8に示される。
図7は、フェノール樹脂(Ph)/酸無水物(Anh)の比率とガラス転移温度との関係を示す図、図8は、フェノール樹脂(Ph)/酸無水物(Anh)の比率とClイオン濃度との関係を示す図である。
ここで、Clイオン濃度の測定方法について述べておく。イオンクロマトグラフ分析法により、測定する。測定手順を以下に示す。
[導電性接着剤塗布]
耐熱テープにてマスクを施したテフロン(登録商標)シート上の全面に、導電性接着剤30を厚さを均一に薄くのばした形状で塗布する。
[導電性接着剤硬化]
上記塗布された導電性接着剤30を、恒温槽にて、所定の硬化条件(たとえば、150±5℃,60±5min)で硬化させる。
[硬化膜の粉砕]
硬化され硬化膜となった導電性接着剤30を、恒温槽から取り出した後、室温に戻してから、導電性接着剤30の硬化膜をテフロン(登録商標)シートから剥がしてポリエチレン製の袋に入れ、袋の中でおおよそ5mm□の形状になるように砕き、粉砕粉とする。
[抽出液の作製]
上記粉砕粉0.5±0.1gを、キャップ付きのテフロン(登録商標)容器に入れ、超純水20mLを加えた後キャップをして、プレッシャクッカ試験(121℃、2atm)を20h実施した後、室温に戻した抽出液を試験液とする。
[測定]
測定器(装置:島津製作所製イオンクロマトグラフHIC−6A相当)により、試験液のCl濃度を測定し、得られたチャートの定量計算値を40倍したものを導電性接着剤のCl濃度とする。
まず、図7に示されるように、上記特徴点を有する本実施形態の導電性接着剤30によれば、導電性接着剤を硬化した後の硬化物において、そのガラス転移温度が110℃〜160℃程度の高Tg化が図られている。これは、本実施形態では、主剤としてナフタレン骨格を持つエポキシ樹脂、硬化剤として酸無水物、硬化触媒としてイミダゾールを採用しているためである。
また、上述したが、導電性接着剤中のClイオン濃度は、電気伝導度の軽減のために高純度化される樹脂の指標となる。そして、図8に示されるように、上記特徴点を有する本実施形態の導電性接着剤30によれば、導電性接着剤中のClイオン濃度が10ppm以下となっている。
導電性接着剤中のClイオンが少ないということは、硬化された樹脂の高純度化がなされ電気伝導度が軽減されてガルバニック腐食が起こりにくくなるということである。そして、本実施形態の導電性接着剤30では、10ppm以下の低いClイオン濃度を実現しており、ガルバニック腐食を適切に抑制できている。
これは、上述したように、導電性接着剤30の主剤としてナフタレン骨格を持つエポキシ樹脂を採用し、硬化剤として酸無水物およびフェノール樹脂を採用し、硬化促進剤としてイミダゾールを採用したことによる。また、このような樹脂構成とすることで、硬化された樹脂の吸水率も下げることができる。
この吸水率を下げることは、電気伝導度の軽減につながり上記ガルバニック腐食の抑制につながる。この吸水率の低減についての具体的な実験結果を、図9に示す。
図9は、高温高湿放置時間と吸水率との関係を示す図である。この図9において、硬化された樹脂の吸水率としては、硬化後の導電性接着剤において、耐湿試験を行い、その試験前後の重量変化が吸水率に相当する。
ここで、耐湿試験は、フィラーなしの樹脂成分のみで硬化塗膜を作製し、初期重量と、85℃、85RH%の環境で364時間放置する耐湿試験を行った後の重量とを測定し、その重量変化を吸水率(%)として求めたものである。
図9において、白丸プロットは、本実施形態の導電性接着剤30の主剤であるナフタレン系エポキシ樹脂の結果を示し、黒丸プロットは、比較例として従来の導電性接着剤の主剤であるビスフェノール系エポキシ樹脂の結果を示す。
この図9に示されるように、本実施形態のナフタレン系エポキシ樹脂では、重量変化すなわち吸水率が1%程度以下に低減されている。つまり、実質的に、本実施形態の導電性接着剤30は、硬化した後の硬化物において、85℃、85RH%の環境で364時間放置する耐湿試験を行った後の重量変化が2%以下であるものにできる。
以上のように、上記特徴点を有する本実施形態の導電性接着剤30によれば、上述した各成分の作用効果が適切に発揮されることにより、回路基板10上にSn系の卑金属電極21を有する電子部品20を接続するときに使用される導電性接着剤において、接続抵抗の初期値の低減、高温高湿下における接続抵抗の上昇の抑制、および、高温下における接続強度の確保を実現することができる。
また、上述したが、本実施形態の導電性接着剤30においては、イミダゾールをマイクロカプセル化されたものとすることも特徴である。
このように、イミダゾールをマイクロカプセル化すれば、導電性接着剤に熱をかける前に、硬化促進剤であるイミダゾールによる硬化が進行してしまうのを抑制することができ、好ましい。
また、本実施形態の導電性接着剤30においては、フェノール樹脂としてノボラックフェノールを採用することも特徴の一つである。
また、本実施形態の導電性接着剤30においては、導電フィラー32と樹脂成分31との配合比率を、重量比として82/18〜90/10とすることも特徴点である。
また、本実施形態の導電性接着剤30において、導電フィラー32は、Agと上記他の金属との合金からなる合金フィラーであるものにできることも特徴点である。
さらに、この合金フィラーの表面に、上記他の金属よりも貴な金属からなる微粒子33がコーティングされていることが好ましいとしている。
上記の合金フィラーは、Ag単独よりも卑であるため、酸化しやすく、当該合金フィラーと相手側との間の接続抵抗が大きくなりやすい。そこで、他の金属よりも貴な金属からなるからなる微粒子33を合金フィラーにコーティングしてやれば、導電性接着剤の熱硬化により微粒子33が融着するので、上記の合金フィラー単独の場合よりもフィラー間にて十分な接続がなされ当該接続を確保しやすい。
また、上述したが、本実施形態の導電性接着剤30において、導電フィラー32は、Agからなる第1のフィラーと上記他の金属からなる第2のフィラーとの混合物であるものにできる。
ここで、上述したが、この第1のフィラーもしくは第2のフィラーの表面に、上記他の金属よりも貴な金属からなるからなる微粒子33がコーティングされていることが好ましいとしている。
その理由は、上記合金フィラー32表面への微粒子33のコーティングを行った構成と同様であり、導電性接着剤30の熱硬化による微粒子33の融着により、フィラー間における十分な接続がなされ当該接続を確保しやすい。
また、上述したが、本実施形態の導電性接着剤30においては、微粒子33をコーティングする代わりに、導電フィラーの間に微粒子を混合されているものとしてもよい。
それによる作用効果も、上記合金フィラー32表面への微粒子33のコーティングを行った構成と同様であり、導電性接着剤30の熱硬化による微粒子33の融着により、フィラー間における十分な接続がなされ当該接続を確保しやすい。
このように、本実施形態のの導電性接着剤30においては、導電フィラーは、導電フィラー同士にて、または、回路基板10の電極11もしくは電子部品20の卑金属電極21と融着するものにすることができる。
また、本実施形態においては、上述した各種の特徴点を有する導電性接着剤30を介して、回路基板10上にSn系の卑金属電極21を有する電子部品20を搭載し、導電性接着剤30を加熱硬化することにより、電子部品20と回路基板10とを接続してなる電子装置S1が提供される。
それによれば、接続抵抗の初期値の低減、高温高湿下における接続抵抗の上昇の抑制、および、高温下における接続強度の確保を実現することのできる導電性接着剤30を用いた電子装置S1を提供することができる。
(他の実施形態)
なお、上記実施形態では、電子部品としてチップコンデンサを用いた例を図示してあるが、電子部品としてはコンデンサや抵抗、半導体素子等の表面実装部品等を採用することができる。
また、上記実施形態では、回路基板10上に電子部品20を搭載し、回路基板10の電極11と電子部品20の電極21とを導電性接着剤30を介して接続しているが、このように実装を行った後、さらにパッケージ工程を行ってもよい。
たとえば、図示しないが、図1に示される実装構造において、さらに基板(部品実装基板)にAlからなる放熱板を貼り付け、さらにこの放熱板とケースを接着し、その後シリコーンゲルで封止した構造としてもよい。
ただし、パッケージ形態は、上記のものに限定されるものではなく、シリコーンゲルはあってもなくてもよいし、他の防湿コート材料に置き換えてもよい。
また、たとえば、上記図1において、電子部品20の回路基板10への接続部またはその周辺部をアンダーフィル樹脂によって補強するようにしてもよい。また、モールド樹脂による封止構造を採用してもよい。