JP5156242B2 - バインダーピッチおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、製鋼用黒鉛電極、アルミニウム製錬用電極などの炭素材料を製造する際に使用されるバインダーピッチで、軟化点の変動を抑えて粘度を低下させたバインダーピッチおよびその製造方法に関する。
軟ピッチとは、原料のコールタールから蒸留操作によりナフタリン油、アントラセン油などの低沸点油を留出させた残渣のことである。
この軟ピッチは、軟化点が40〜70℃と低く、軟質分が過剰であり、かつ重質分が不足するため、炭素電極材料などの炭素材料用のバインダーとして利用するには、通常300〜400℃で熱改質して所定の規格まで濃縮および重質化される。
このバインダーとして利用するピッチ(バインダーピッチ)は、軟化点以上の温度で骨材のフィラーコークスと混練する際、コークスの表面を良く濡らし、コークス中の開気孔への浸透性が良く、さらに炭化歩留まり(固定炭素)が高いほど、炭素材料の密度を増大させることができる。
コークスの表面を良く濡らし、コークス中の開気孔への浸透性を高めるには、混練温度におけるピッチの粘度を低下させるとよい。特許文献1には、軟ピッチ(軟化点40〜70℃)を330〜350℃の低温で軽度に重質化すると同時に、水蒸気の吹き込みにより低沸点油の分圧を下げ低沸点油を留出させて濃縮することで、ピッチの粘度が下がることを報告している。しかしながら、上記方法で調整したピッチは、軟化点を基準にしたときの固定炭素の低下がないようにすると重質化がすすみ、さらに低沸点油である軽質分の留出が少ない(軽質分の留出が不十分)ために粘度の低下が十分ではない。
また、特許文献2には、軟化点が60〜63℃の軟ピッチを380℃で熱処理してバインダーピッチを得る方法が記載されている。しかし、該方法では、熱処理時に水蒸気または窒素ガスの吹込みを行っていないので、該バインダーピッチの低沸点成分の含有量は、特開平7−197031に記載された低粘度ピッチよりも、多いと考えられる。
特許文献3には、低キノリン不溶分(QI)タールまたは脱QIピッチ(QI<0.5%)を原料として、バインダーピッチを製造する方法の技術が開示されている。したがって、フリーカーボン(1次QI)の少ないバインダーピッチが得られる。フリーカーボンの含有量が少ないと、炭素材料の焼成時に成形体から流出するピッチによりブリーズが焼成体に過度に付着したり、ピッチの炭化歩留まりが小さくなる。
特開平7−197031号公報 特開平9−151383号公報 特開平6−179875号公報
バインダーピッチは、低粘度ほどフィラーコークスの開気孔に浸透しやすく、フィラーコークスとの混練物の均一性が高まり作業性が良くなるが、前述の従来技術では、同一軟化点に対する粘度の低下は十分なものではなく、電極性能を向上させる効果はあまり期待できない。本発明では、軟化点を変動させることなく、および炭化歩留まり(固定炭素)を低下させることなく、ピッチの粘度を低下させることを目的とする。
本発明者らは、バインダーピッチの軟化点を変動させることなく、および炭化歩留まり(固定炭素)を低下させることなく、混練の際のバインダーピッチ粘度を低下させるには、バインダーピッチの分子量分布を狭く制御することにより可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は以下のとおりである。
(1)軟化点(t)が90〜120℃、
キノリン不溶分の含有量が5〜15質量%、
フリーカーボンの含有量が2質量%以上、
メソフェーズの含有量が7質量%以下、
かつ、軽質分、γレジンおよびβレジンの含有量が下記式(1)〜(4)を満足することを特徴とするバインダーピッチ。
Xl ≦ −0.3t + 57 ・・・式(1)
X2 ≧ 0.2t + 24 ・・・式(2)
X3 ≧ 0.1t + 9 ・・・式(3)
85 ≦ Xl+X2+X3 ≦ 95 ・・・式(4)
ただし、X1:軽質分の含有量(質量%)、X2:γレジンの含有量(質量%)、X3:βレジンの含有量(質量%)、t:軟化点(℃)である。
ここで、フリーカーボンの含有量はキノリン不溶分中のフリーカーボンの含有量(1次QI)であり、βレジンは、キノリン可溶かつトルエン不溶の成分、γレジンは、トルエン可溶かつヘキサン不溶の成分、軽質分はヘキサン可溶の成分であり、Xl+X2+X3はキノリン可溶分を示す。なお、前記フリーカーボンの含有量と前記メソフェーズの含有量の和が前記キノリン不溶分の含有量になる。
(2)上記バインダーピッチの160℃における粘度(η)が下記式(5)を満足することを特徴とする上記(1)に記載のバインダーピッチ。
η ≦ 0.3e0.08t ・・・式(5)
ただし、η:バインダーピッチの160℃の粘度(mPa・s)、t:軟化点(℃)。なお、上記式(1)、(2)、(3)および(5)の右辺は、軟化点を℃の単位で測定した値を代入して計算する。
(3)軟化点が85〜120℃の範囲に調整された濃縮ピッチを、350〜400℃の温度で熱改質してバインダーピッチを得ることを特徴とするバインダーピッチの製造方法。
(4)上記濃縮ピッチが、コールタールの減圧蒸留で得られることを特徴とする上記(3)に記載のバインダーピッチの製造方法。
(5)上記バインダーピッチが、上記(1)または2に記載のバインダーピッチであることを特徴とする上記(3)または(4)に記載のバインダーピッチの製造方法。
本発明のバインダーピッチは、製鋼用黒鉛電極、アルミニウム製錬用電極などの炭素材料を製造する際に使用されるバインダーピッチで、軟化点を変動させることなく粘度が低いので、フィラーコークスの開気孔に浸透しやすく、フィラーコークスとの混練物の均一性が高まり、優れた製鋼用黒鉛電極、アルミニウム製錬用電極などの炭素材料となるバインダーピッチとして有用である。
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
コールタールは、瀝青炭、亜瀝青炭などの石炭をコークス炉において1100〜1350℃で乾留したときに発生するガスを冷却、凝縮させて回収したものである。石炭の種類、コークス炉の操業条件によって異なるが、一般に石炭から3〜5質量%のコールタールが回収される。
軟ピッチはコールタールの蒸留残渣として得られるもので、多環芳香族化合物の混合物である。その分子量は100〜10000程度と広く分布し、平均分子量は300〜1000程度である。
軟ピッチやバインダーピッチの特性の指標としては、軟化点t(℃)、固定炭素FC(質量%)、キノリン不溶分QI(質量%)、トルエン不溶分TI(質量%)が通常用いられ、JIS K2425により測定法が規定されている。さらに、ヘキサン不溶分HI(質量%)、フィラーコークスとの混練温度における粘度も重要な指標として用いられる。
軟化点は、軟ピッチやバインダーピッチの流動性が発現する指標で、バインダーピッチとフィラーコークスの混練物を成形する工程で重要となる。バインダーピッチの軟化点は、炭素材料を製造する設備の能力などで制約され、90〜120℃の範囲で定められている。
固定炭素は、炭化歩留まりを示す指標で、一般に軟化点と正の相関がある。上記軟化点の範囲では、通常55〜65質量%である。
キノリン不溶分は重質分の成分で、石炭を乾留する際に生成する気相析出炭素であるフリーカーボン(粒径1μm以下程度)と、ピッチの熱改質の際に生成する分子量が約1200以上に高分子化した粒径1〜50μm程度のサイズを有するメソフェーズから成り、前者は1次QI、後者は2次QIとも呼ばれる。キノリン不溶分は5〜15質量%が好ましく、より好ましくは6〜12質量%である。キノリン不溶分が5質量%未満であると、炭素材料の焼成時に成形体から流出するピッチによりブリーズが焼成体に過度に付着したり、ピッチの炭化歩留まりが小さくなる。キノリン不溶分が15質量%超えであると、ピッチの粘度が高くなりフィラーコークスとの混練に支障がでる。
また、フリーカーボン(1次QI)は原料タール由来のため、少なくとも2質量%以上通常含まれ、量が少ないと前記したようにブリーズが焼成体に過度に付着したり、ピッチの炭素歩留が小さくなる。メソフェーズ(2次QI)は熱改質により生成するため、7質量%以下にすることで、バインダーピッチがフィラーコークスの開気孔へ浸透しやすくなり、混練時の粉砕で生成するシェル状メソフェーズがフィラーコークス表面に付着してフィラーコークスの充填性が悪くなり密度の低下を防止する。
βレジンは重質分の成分で、キノリンに可溶かつトルエンに不溶であり、分子量が約800〜約1200の多環芳香族化合物である。βレジンはピッチに粘りを与えるため焼成前の成形体に形状維持性を付与し、さらに炭化時に強い粘結性を示す。
γレジンは、トルエンに可溶かつヘキサンに不溶の成分で、分子量が約300〜約800の多環芳香族化合物である。γレジンは、βレジンと同様に炭化時の粘結性に強く影響する。
軽質分は、ヘキサン可溶の成分で、分子量が約300以下の多環芳香族化合物である。この軽質分は、ピッチに流動性を与える可塑剤の役割をはたす。軽質分の炭化歩留まりは約10質量%と非常に小さく、焼成過程で大部分が揮発する。
バインダーピッチの粘度は、フィラーコークスと混練する温度において重要である。混練温度は、バインダーピッチの軟化点よりも約50℃高い150〜170℃が好ましいが、混練設備の能力で制約されるため、通常155〜165℃である。この温度で溶融したバインダーピッチは、フィラーコークスの開気孔中への浸透およびフィラーコークス粒子の充填性を高めて炭素材料の密度を向上させるため、低粘度であるほどその効果は大きい。
ここで、軟ピッチから軽質分を蒸留で留出させて濃縮したピッチ(濃縮ピッチ)は、粘度の対数と軟化点に図1に示すような直線関係があり、一例として式(6)で表すことができる。濃縮は軽質分を取り除くのみの操作であるため、同一のコールタールから調整される全てのピッチは、式(6)の粘度よりも必ず大きな値となる。なお、粘度は代表的な混練温度である160℃の値とした。tは軟化点(℃)である。
濃縮ピッチの160℃の粘度(mPa・s)= 0.3e0.077t ・・・式(6)
次に、特許文献1に記載の方法で製造したバインダーピッチを図1にプロットすると、160℃の粘度は式(6)の境界線よりも大きい領域に集合することがわかる。このように特許文献1に記載の方法で製造したバインダーピッチの粘度が濃縮ピッチよりも大きくなるのは、軽質分および重質分の比率が濃縮ピッチよりも高いためである。したがって、ピッチの分子量分布を狭めることにより、式(6)以上かつ式(5)を満たす領域に存在するような、バインダーピッチとして利用できるものを調整することが可能となる。
バインダーピッチの分子量分布を狭める方法は、軽質分を少なくし、かつ重質分を必要以上に多くしないことが肝要である。
軽質分を少なくするには、後述の熱改質用の原料のピッチとして、90〜120℃よりも0〜5℃低い軟化点まで軟ピッチを濃縮したピッチを用いるのが好ましく、より好ましくは1〜4℃低い軟化点まで濃縮したピッチを用いるのがよい。この濃縮ピッチの軟化点は、熱改質後の軟化点より5℃を超えて低いと、後述の熱改質のときに濃縮操作も必要となってしまう。また、熱改質後の軟化点を超えていると、熱改質後に所望の軟化点へ調整することができない。
軟ピッチの濃縮は、蒸留塔内を減圧にすることが好ましく、軽質分を効率よくかつシャープに留出させることが可能となる。蒸留条件は、温度を250〜350℃、圧力を10〜500hPaにすることが好ましく、より好ましくは温度を270〜330℃、圧力を20〜300hPaとする。温度が250℃未満であると、軽質分の留出効率が悪くなり、350℃超えであると多環芳香族化合物の重縮合反応による重質化が起こってしまう。圧力が10hPa未満は設備上の制約が発生し、500hPa超えは軽質分の留出効率が悪くなる。一方、常圧下で水蒸気、窒素などのガスを流して軽質分を留出させることもできるが、減圧蒸留よりも留出効率が悪く、さらに軽質分を十分に留出できない短所がある。
上述の濃縮ピッチは、重質分の一つであるβレジンが不足している場合があるため、熱改質によりピッチを構成する多環芳香族化合物を重質化させる。熱改質条件としては、温度を350〜400℃、時間を0.5〜8時間とするのが好ましく、より好ましくは360〜390℃、1〜5時間である。温度が350℃未満では、多環芳香族化合物の重縮合反応による重質化が起こりにくく、400℃超えでは重質化の進行が速いため粘度が式(5)を超えてしまい、さらにメソフェーズ含有量が大幅に増えてしまう。また、時間が0.5時間未満では重質化反応が充分に進行せず、8時間を超えると重質化が進みすぎて粘度が式(5)を超えてしまう。
ところで、ピッチの分子量分布は、キノリン可溶分について電解脱離型質量スペクトル(FD−MS)やゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)などにより測定が試みられているが、操作方法が難しく再現性に乏しいなどの問題がある。そこで、キノリン不溶分を5〜15質量%に固定したピッチにおいては、ピッチ粘度は主としてキノリン可溶分の分子量分布に支配されることに着目し、簡便かつ間接的な指標として、キノリン可溶分を構成する軽質分、γレジン、βレジンの含有量のバランスを考える。すなわち、分子量分布を狭くするには、特許文献1に記載の方法で製造したバインダーピッチよりも軽質分及びβレジンを少なくし、かつγレジンを多くするように調整すればよい。すなわち、図2〜4に示すように、軽質分の含有量は式(1)の領域、γレジンの含有量は式(2)の領域、βレジンの含有量は式(3)の領域になるように調整することで達成することができる。なおβレジンについては、不足するとピッチの粘りが十分発現しないために焼成前の成形体が変形したり、炭素材料の密度や強度の低下を引き起こす恐れがあるため、式(3)の境界線は最低必要量を意味する。
以上により、
軟化点(t)が90〜120℃、
キノリン不溶分の含有量が5〜15質量%、
フリーカーボンの含有量が2質量%以上、
メソフェーズの含有量が7質量%以下、
かつ、軽質分、γレジンおよびβレジンの含有量が下記式(1)〜(4)を満足することを特徴とするバインダーピッチ。
Xl ≦ −0.3t + 57 ・・・式(1)
X2 ≧ 0.2t + 24 ・・・式(2)
X3 ≧ 0.1t + 9 ・・・式(3)
85 ≦ Xl+X2+X3 ≦ 95 ・・・式(4)
を満たすバインダーピッチは、160℃における粘度が式(5)を満たすという効果を有する。すなわち本発明により、炭素材料用の低粘度のバインダーピッチの調整が可能となる。
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(試験方法)
[軟化点]
JlS K2425に準拠した環球法により測定した。まず、840μm(20メッシュ)篩下のサンプルを推定軟化点より50℃を超えない温度で加熱溶解して、φ16×H6.4mmの環に注いで固化させる。次にこの環を試料棚に置き、環の中央部にφ9.525mm、重さ3.5gの鋼球を置く。この棚をグリセリン中に浸し、浴温を5℃/分で上昇させ、サンプルが軟化して鋼球が環の25.4mm下にある底板に達したときの温度を軟化点とした。
[キノリン不溶分]
JlS K2425に準拠した方法により測定した。まず、250μm(60メッシュ)篩下のサンプル1gを、75℃のキノリン20mlに30分溶解した。次に、可溶分を吸引濾過により取り除き、残分をキノリンおよびアセトンで洗浄、乾燥、秤量してキノリン不溶分を算出した。
[トルエン不溶分]
JIS K2425に準拠した方法により測定した。まず、250μm(60メッシュ)篩下のサンプル2gを、温トルエン100mlに混ぜ、還流操作により30分加熱溶解した。次に、熱いうちに可溶分を吸引濾過により取り除き、残分をトルエンおよびアセトンで洗浄、乾燥、秤量してトルエン不溶分を算出した。
[ヘキサン不溶分]
トルエン不溶分の測定法に準拠して測定した。まず、45μm(330メッシュ)篩下のサンプル2gを、温へキサン100mlに混ぜ、還流操作により30分加熱溶解した。このときオイルバスの温度は80℃とした。次に、熱いうちに可溶分を吸引濾過により取り除き、残分をヘキサンで洗浄、乾燥、秤量してヘキサン不溶分を算出し、軽質分をヘキサン可溶分として求めた。
[固定炭素]
JIS K2425に準拠した方法により測定した。まず、250μm(60メッシュ)篩下のサンプル1gを、磁器落としふた付るつぼに入れ、ふたをしないで430℃に保った電気炉中で30分加熱して揮発分を除去した。次に、ふたをして磁器B型るつぼ内に置き、周囲をコークス粒で敷き詰めてふたをかぶせたあと、800℃に保った電気炉中で30分加熱し、冷却後、秤量して固定炭素を算出した。
[粘度]
ASTM D5018に準拠した方法により、Brookfield社製のデジタル回転粘時計(MODEL:DV−2+)を用いて測定した。まず、840μm(20メッシュ)篩下のサンプル11gを専用チャンバーに入れ、160℃に保ったサーモコンテナー内で溶融させる。次に、スピンドルを溶融したサンプルに浸し、スピンドルが160℃に到達したら、回転速度をトルク値が100%近くになるように合わせ、そのときの粘度を読み取った。
[メソフェーズ含有量、フリーカーボン含有量]
Thermo Quest社製の元素分析計(MODEL:EA1110−CHNS−0)を用いて測定した。まず、250μm(60メッシュ)篩下のピッチ5mgを専用セルに入れ、サンプルを完全燃焼することで生成するCO、HOガスを定量し、C/H(mol比)を算出した。
フリーカーボン(1次QI)のC/Hを3.5(mol比)、メソフェーズ(2次QI)のC/Hを2.1(mol比)とし、キノリン不溶分のC/H値を実測して、式(7)、式(8)からキノリン不溶分中のメソフェーズの含有量を求め、この値からバインダーピッチ中のメソフェーズの含有量を計算した。
キノリン不溶分の量からメソフェーズの量を差し引いた値をフリーカーボン量とした。
(キノリン不溶分のC/H)=3.5×(フリーカーボンの含有量/キノリン不溶分の含有量)+2.1×(メソフェーズの含有量/キノリン不溶分の含有量)・・・式(7)
(フリーカーボンの含有量)+(メソフェーズの含有量)=(キノリン不溶分の含有量)・・・式(8)
ここで、フリーカーボンの含有量、メソフェーズの含有量、キノリン不溶分の含有量の単位は質量%である。
(実施例1)
高炉用コークス炉(JFEスチール(株)西日本製鉄所)から発生するキノリン不溶分5.2質量%、トルエン不溶分9.0質量%のコールタールを原料タールとし、蒸留により軟化点55.4℃、キノリン不溶分6.7質量%、トルエン不溶分13.8質量%の軟ピッチを得た。
次に、この軟ピッチ2000gをステンレス製の容器に入れ、容器内圧50hPa、温度315℃の条件で減圧蒸留し、軟化点88.5℃、キノリン不溶分7.6質量%、トルエン不溶分18.6質量%の濃縮ピッチを調整した。
さらに、この濃縮ピッチ1500gをステンレス製の容器に入れ、容器内圧を常圧とし、温度380℃、保持時間3時間の条件で熱改質し、軟化点90.0℃、キノリン不溶分8.2質量%、トルエン不溶分28.3質量%、ヘキサン不溶分71.4質量%、固定炭素56.5質量%のバインダーピッチ(熱改質ピッチ)を得た。このバインダーピッチの160℃における粘度は360mPa・sであった。また、キノリン不溶分のC/Hは3.40であった。結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1において、濃縮ピッチの軟化点を93.5℃に調整し、熱改質の保持時間を4時としたこと以外は、実施例1と同じ方法にてバインダーピッチ(熱改質ピッチ)を得た。このバインダーピッチは、軟化点97.0℃、キノリン不溶分8.4質量%、トルエン不溶分28.7質量%、ヘキサン不溶分74.7質量%、固定炭素59.1質量%、160℃における粘度は630mPa・sであった。また、キノリン不溶分のC/Hは3.38であった。結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1において、濃縮ピッチの軟化点を96.1℃に調整し、熱改質の温度を360℃、熱改質の保持時間を4時間としたこと以外は、実施例1と同じ方法にてバインダーピッチ(熱改質ピッチ)を得た。このバインダーピッチは、軟化点96.4℃、キノリン不溶分8.4質量%、トルエン不溶分28.0質量%、ヘキサン不溶分73.9質量%、固定炭素58.6質量%、160℃における粘度は550mPa・sであった。また、キノリン不溶分のC/Hは3.38であった。結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例1において、濃縮ピッチの軟化点を106.0℃に調整し、熱改質の温度を360℃、保持時間を4時間としたこと以外は、実施例1と同じ方法にてバインダーピッチ(熱改質ピッチ)を得た。このバインダーピッチは、軟化点106.7℃、キノリン不溶分8.8質量%、トルエン不溶分30.0質量%、ヘキサン不溶分76.8質量%、固定炭素59.9質量%、160℃における粘度は1390mPa・sであった。また、キノリン不溶分のC/Hは3.34であった。結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例1において、濃縮ピッチの軟化点を110.5℃に調整し、熱改質の温度を360℃、保持時間を4時間としたこと以外は、実施例1と同じ方法にてバインダーピッチ(熱改質ピッチ)を得た。このバインダーピッチは、軟化点111.6℃、キノリン不溶分8.3質量%、トルエン不溶分30.4質量%、ヘキサン不溶分77.3質量%、固定炭素62.4質量%、160℃における粘度は2040mPa・sであった。また、キノリン不溶分のC/Hは3.38であった。結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1と同じ軟ピッチ2000gをステンレス製の容器に入れ、容器内圧を常圧とし、窒素ガスを0.9リットル/分で吹き込みながら、温度350℃、保持時間12時間の条件で、濃縮および熱改質し、軟化点90.8℃、キノリン不溶分10.3質量%、トルエン不溶分31.2質量%、ヘキサン不溶分70.0質量%、固定炭素57.3質量%のバインダーピッチ(熱改質ピッチ)を得た。このバインダーピッチの160℃における粘度は440mPa・sであった。またキノリン不溶分のC/Hは3.13であった。結果を表1に示す。なお、窒素ガスの吹込みによる濃縮効果は、ラボ装置においては水蒸気と同等である。
(比較例2)
比較例1において、窒素ガスを1.0リットル/分で吹き込むこと以外は、比較例1と同じ方法にてバインダーピッチ(熱改質ピッチ)を得た。このピッチは、軟化点97.1℃、キノリン不溶分11.2質量%、トルエン不溶分32.9質量%、ヘキサン不溶分71.2質量%、固定炭素58.0質量%、160℃における粘度は800mPa・sであった。また、キノリン不溶分のC/Hは3.06であった。結果を表1に示す。
(比較例3)
比較例1において、窒素ガスを1.1リットル/分で吹き込むこと以外は、比較例1と同じ方法にてバインダーピッチ(熱改質ピッチ)を得た。このピッチは、軟化点106.4℃、キノリン不溶分11.8質量%、トルエン不溶分35.3質量%、ヘキサン不溶分73.8質量%、固定炭素60.5質量%、160℃における粘度は1640mPa・sであった。また、キノリン不溶分のC/Hは3.03であった。結果を表1に示す。
(比較例4)
比較例1において、窒素ガスを1.2リットル/分で吹き込みながら、温度350℃、保持時間6時間、さらに温度340℃、保持時間6時間としたこと以外は、比較例1と同じ方法にてバインダーピッチ(熱改質ピッチ)を得た。このピッチは、軟化点114.0℃、キノリン不溶分8.5質量%、トルエン不溶分33.1質量%、ヘキサン不溶分75.6質量%、固定炭素61.8質量%、160℃における粘度は2800mPa・sであった。また、キノリン不溶分のC/Hは3.35であった。結果を表1に示す。
以上の実施例、比較例の測定結果を図1〜図4に示した。図中の特許文献1に記載の方法で製造したバインダーピッチのプロットは比較例1〜4の測定値であり、濃縮ピッチのプロットは実施例1〜5の改質前の測定値であり、本発明のバインダーピッチのプロットは実施例1〜5の測定値である。
Figure 0005156242
本発明のバインダーピッチは、製鋼用黒鉛電極、アルミニウム製錬用電極などの炭素材料を製造する際に使用できる。
軟化点と粘度との関係を示すグラフである。 軟化点と軽質分含有量との関係を示すグラフである。 軟化点とγレジン含有量との関係を示すグラフである。 軟化点とβレジン含有量との関係を示すグラフである。

Claims (5)

  1. 軟化点(t)が90〜120℃、
    キノリン不溶分の含有量が5〜15質量%、
    フリーカーボンの含有量が2質量%以上、
    メソフェーズの含有量が7質量%以下、
    かつ、軽質分、γレジンおよびβレジンの含有量が下記式(1)〜(4)を満足することを特徴とするバインダーピッチ。
    Xl ≦ −0.3t + 57 ・・・式(1)
    X2 ≧ 0.2t + 24 ・・・式(2)
    X3 ≧ 0.1t + 9 ・・・式(3)
    85 ≦ Xl+X2+X3 ≦ 95 ・・・式(4)
    ただし、X1:軽質分の含有量(質量%)、X2:γレジンの含有量(質量%)、
    X3:βレジンの含有量(質量%)、t:軟化点(℃)である。
  2. 前記バインダーピッチの160℃における粘度(η)が下記式(5)を満足することを特徴とする請求項1に記載のバインダーピッチ:
    η ≦ 0.3e0.08t ・・・式(5)
    ただし、η:バインダーピッチの160℃の粘度(mPa・s)、t:軟化点(℃)である。
  3. 軟化点が85〜120℃の範囲に調整された濃縮ピッチを、350〜400℃の温度で熱改質して請求項1に記載のバインダーピッチを得ることを特徴とするバインダーピッチの製造方法。
  4. 前記濃縮ピッチが、コールタールの減圧蒸留で得られることを特徴とする請求項3に記載のバインダーピッチの製造方法。
  5. 前記バインダーピッチが、請求項1または2に記載のバインダーピッチであることを特徴とする請求項3または4に記載のバインダーピッチの製造方法。
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