JP2016141705A - バインダーピッチおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】製鋼用黒鉛電極等に用いた場合に、密度が高い、機械強度の向上、または電気抵抗率の低減のいずれかを図ることができるバインダーピッチを提供する。
【解決手段】軟化点が150〜350℃、キノリン不溶分が10〜80質量%、トルエン不溶分が15〜80質量%、固定炭素が60〜82.2質量%、および炭素(C)と水素(H)の原子数比C/Hが2.10以上であるバインダーピッチ。
【選択図】なし
【解決手段】軟化点が150〜350℃、キノリン不溶分が10〜80質量%、トルエン不溶分が15〜80質量%、固定炭素が60〜82.2質量%、および炭素(C)と水素(H)の原子数比C/Hが2.10以上であるバインダーピッチ。
【選択図】なし
Description
本発明は、アルミニウム製錬用電極、製鋼用黒鉛電極等の炭素材料に使用されるバインダーピッチおよびその製造方法に関する。
バインダーピッチはフィラーコークスのバインダー材として使用されるピッチであり、通常、軟ピッチを熱改質して製造される。
軟ピッチは、原料のコールタールから蒸留操作によりナフタレン油、アントラセン油等の低沸点油を留出させた残渣である。この軟ピッチは、軟化点が40〜70℃と低く、軽質分が過剰であり、かつ重質分が不足するため、炭素電極材料等の炭素材料用のバインダーとして利用するためには、350〜450℃で熱改質して所定の規格まで濃縮および重質化されることが知られている。
軟ピッチは、原料のコールタールから蒸留操作によりナフタレン油、アントラセン油等の低沸点油を留出させた残渣である。この軟ピッチは、軟化点が40〜70℃と低く、軽質分が過剰であり、かつ重質分が不足するため、炭素電極材料等の炭素材料用のバインダーとして利用するためには、350〜450℃で熱改質して所定の規格まで濃縮および重質化されることが知られている。
バインダーピッチは、軟化点以上の温度で骨材のフィラーコークスと混練する際、フィラーコークスの表面を良く濡らし、フィラーコークス中の開気孔への浸透性が良く、さらに炭化歩留り(固定炭素量)が高いほど、炭素材料の密度を増大させることができる。炭化歩留りを高くし、炭素材料の密度を増大させると、機械強度の向上や電気抵抗率の低減を図ることが可能であり、アルミニウム製錬用電極、製鋼用黒鉛電極等にとって望ましい特性を得ることができる。
炭化歩留りを向上させるためには、バインダーピッチ中の重質分を増大させることが有効である。そして、バインダーピッチ中の重質分は、バインダーピッチの軟化点を高くすることにより、増大させることが可能である。しかし、単に軟化点を高くしただけでは、電極の機械強度が高く、かつ電気抵抗率が低いというバランスのとれたものは得られていない。
特許文献1には、「炭化収率が70重量%以上、軟化点が170℃以上で、光学的異方性相が70vol%以上であるメソフェーズピッチを酸化処理することによって得られる、炭素に対する水素の原子比が0.48〜0.59の範囲であり、且つ炭素に対する酸素の原子比が0.01〜0.10の範囲である自己融着性炭素質粉体。」が記載されている。しかし、QI、TIの値は不明であり、特定のメソフェーズピッチのみを原料とする製造方法である。
特許文献2には、原料コールタールピッチを前処理して蒸留し、キノリンに不溶性のものを含まない、無灰である留出物を得、熱処理しさらに蒸留して所望の軟化点を有するピッチを得る製造方法が記載されている。しかし前処理が、チャンバーの壁面に処理材料の薄膜をローターブレードが回転して貼り付けて蒸留するWFE蒸留装置または、高温、低圧で高い減圧性能を有する装置を用いる高効率蒸発蒸留装置等の特別な装置が必要である。
本発明では、機械強度が高く、かつ電気抵抗率が低いというバランスのとれた電極を得ることができるバインダーピッチと特別な装置を用いる必要のないその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねたところ、原料のコールタールのキノリン不溶分の量を適正に制御することであることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は以下の通りである。
(1)軟化点が150〜350℃、キノリン不溶分が10〜80質量%、トルエン不溶分が15〜80質量%、固定炭素量が60〜82.2質量%、炭素(C)と水素(H)の原子数比C/Hが2.10以上であるバインダーピッチである。
(2)コールタールを蒸留して軟ピッチを得る蒸留工程と、得られた軟ピッチを350〜420℃の温度範囲で12〜15時間加熱して、ピッチを熱改質して、(1)に記載のバインダーピッチを得る熱改質工程とを備えるバインダーピッチの製造方法である。
(3)前記蒸留工程が、蒸留塔を用いる減圧蒸留または常圧蒸留である(2)に記載のバインダーピッチの製造方法。
(4)上記(1)に記載のバインダーピッチとフィラーコークスとを混合し焼成して得られる電極。
(1)軟化点が150〜350℃、キノリン不溶分が10〜80質量%、トルエン不溶分が15〜80質量%、固定炭素量が60〜82.2質量%、炭素(C)と水素(H)の原子数比C/Hが2.10以上であるバインダーピッチである。
(2)コールタールを蒸留して軟ピッチを得る蒸留工程と、得られた軟ピッチを350〜420℃の温度範囲で12〜15時間加熱して、ピッチを熱改質して、(1)に記載のバインダーピッチを得る熱改質工程とを備えるバインダーピッチの製造方法である。
(3)前記蒸留工程が、蒸留塔を用いる減圧蒸留または常圧蒸留である(2)に記載のバインダーピッチの製造方法。
(4)上記(1)に記載のバインダーピッチとフィラーコークスとを混合し焼成して得られる電極。
本発明のバインダーピッチは、特殊炭素材、耐火物、製鋼用黒鉛電極、などの炭素材料を製造する際に使用されるバインダーピッチで、密度が高い、機械強度の向上、または電気抵抗率の低減のいずれかを図ることができ、優れた特殊炭素材、耐火物、製鋼用黒鉛電極などの炭素材料となるバインダーピッチである。
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
本願発明のバインダーピッチは、軟化点が150〜350℃、キノリン不溶分が10〜80質量%、トルエン不溶分が15〜80質量%、固定炭素量が60〜82.2質量%、炭素(C)と水素(H)の原子数比C/Hが2.10以上である。
本願発明のバインダーピッチは、軟化点が150〜350℃、キノリン不溶分が10〜80質量%、トルエン不溶分が15〜80質量%、固定炭素量が60〜82.2質量%、炭素(C)と水素(H)の原子数比C/Hが2.10以上である。
〈軟化点(SP)〉
本発明のバインダーピッチの軟化点(SP)は150〜350℃であり、好ましくは150〜250℃である。
バインダーピッチの軟化点(SP)は、バインダーピッチの流動性が発現する温度指標である。この指標は、バインダーピッチとフィラーコークスとの混練物を形成する工程で特に重要である。バインダーピッチの軟化点は、炭素材料を製造する設備の能力を上記範囲の軟化点が得られるように調整する。
軟化点(SP)の測定方法は、JIS K 2425:2006(クレオソート油、加工タール及びタールピッチ試験方法)の8.1(手動式測定方法)または8.2(自動式測定方法)が好ましく、8.1(手動式測定方法)がより好ましい。
本発明のバインダーピッチの軟化点(SP)は150〜350℃であり、好ましくは150〜250℃である。
バインダーピッチの軟化点(SP)は、バインダーピッチの流動性が発現する温度指標である。この指標は、バインダーピッチとフィラーコークスとの混練物を形成する工程で特に重要である。バインダーピッチの軟化点は、炭素材料を製造する設備の能力を上記範囲の軟化点が得られるように調整する。
軟化点(SP)の測定方法は、JIS K 2425:2006(クレオソート油、加工タール及びタールピッチ試験方法)の8.1(手動式測定方法)または8.2(自動式測定方法)が好ましく、8.1(手動式測定方法)がより好ましい。
〈キノリン不溶分(QI)含有量〉
キノリン不溶分(QI)は重質分の成分であり、石炭を乾留する際に生成する気相生成炭素であるフリーカーボン(粒径1μm以下程度)と、ピッチの熱改質の際に生成する高分子化した粒径1〜50μm程度のサイズを有するメソフェーズとからなり、前者は1次QI、後者は2次QIとも呼ばれる。
本発明のバインダーピッチのキノリン不溶分(QI)含有量は、10〜80質量%、好ましくは23.5〜80質量%である。また、本発明のバインダーピッチのフリーカーボン(1次QI)の好ましい含有量は10〜80質量%である。本発明のバインダーピッチのメソフェーズ(2次QI)の好ましい含有量は70質量%以下である。
バインダーピッチのキノリン不溶分(QI)含有量がこの範囲内であると、炭素材料の焼成時にバインダーピッチが成型体から流出することが防止され、また、固定炭素(FC)量(炭化歩留り)が低下したりする等の弊害を避けることができ、しかもバインダーピッチのフィラーコークスとの混錬時の粘度を、混錬に支障がでない範囲とすることができる。
キノリン不溶分(QI)量の測定方法は、JIS K 2425:2006(クレオソート油、加工タール及びタールピッチ試験方法)の15.1(ろ過法)または15.2(遠心法)が好ましく、15.1(ろ過法)がより好ましい。
キノリン不溶分(QI)は重質分の成分であり、石炭を乾留する際に生成する気相生成炭素であるフリーカーボン(粒径1μm以下程度)と、ピッチの熱改質の際に生成する高分子化した粒径1〜50μm程度のサイズを有するメソフェーズとからなり、前者は1次QI、後者は2次QIとも呼ばれる。
本発明のバインダーピッチのキノリン不溶分(QI)含有量は、10〜80質量%、好ましくは23.5〜80質量%である。また、本発明のバインダーピッチのフリーカーボン(1次QI)の好ましい含有量は10〜80質量%である。本発明のバインダーピッチのメソフェーズ(2次QI)の好ましい含有量は70質量%以下である。
バインダーピッチのキノリン不溶分(QI)含有量がこの範囲内であると、炭素材料の焼成時にバインダーピッチが成型体から流出することが防止され、また、固定炭素(FC)量(炭化歩留り)が低下したりする等の弊害を避けることができ、しかもバインダーピッチのフィラーコークスとの混錬時の粘度を、混錬に支障がでない範囲とすることができる。
キノリン不溶分(QI)量の測定方法は、JIS K 2425:2006(クレオソート油、加工タール及びタールピッチ試験方法)の15.1(ろ過法)または15.2(遠心法)が好ましく、15.1(ろ過法)がより好ましい。
〈トルエン不溶分(TI)含有量〉
本発明のバインダーピッチのトルエン不溶分(TI)含有量は15〜80質量%である。好ましくは30〜80質量%、さらに好ましくは50〜80質量%である。
トルエン不溶分(TI)含有量がこの範囲であると、炭化歩留りが高くなり、キノリン不溶分増加によるバインダーピッチの高性能化を期待することができる。
トルエン不溶分(TI)含有量の測定方法は、JIS K 2425:2006(クレオソート油、加工タール及びタールピッチ試験方法)の14.2(加工タール及びタールピッチのトルエン不溶分定量方法)が好ましい。
本発明のバインダーピッチのトルエン不溶分(TI)含有量は15〜80質量%である。好ましくは30〜80質量%、さらに好ましくは50〜80質量%である。
トルエン不溶分(TI)含有量がこの範囲であると、炭化歩留りが高くなり、キノリン不溶分増加によるバインダーピッチの高性能化を期待することができる。
トルエン不溶分(TI)含有量の測定方法は、JIS K 2425:2006(クレオソート油、加工タール及びタールピッチ試験方法)の14.2(加工タール及びタールピッチのトルエン不溶分定量方法)が好ましい。
〈固定炭素(FC)量〉
本発明のバインダーピッチの固定炭素(FC)量は60〜82.2質量%である。固定炭素(FC)量は炭化歩留りを示す指標である。
固定炭素(FC)量の測定方法は、JIS K 2425:2006(クレオソート油、加工タール及びタールピッチ試験方法)の11(固定炭素分定量方法)が好ましい。
本発明のバインダーピッチの固定炭素(FC)量は60〜82.2質量%である。固定炭素(FC)量は炭化歩留りを示す指標である。
固定炭素(FC)量の測定方法は、JIS K 2425:2006(クレオソート油、加工タール及びタールピッチ試験方法)の11(固定炭素分定量方法)が好ましい。
[バインダーピッチの製造方法]
本発明のバインダーピッチの製造方法は、キノリン不溶分が5〜80質量%のコールタールを蒸留して軟ピッチを得る蒸留工程と、得られた軟ピッチを350〜420℃の温度範囲で12〜15時間加熱して、上記記載のバインダーピッチを得る熱改質工程とを備えるバインダーピッチの製造方法である。原料バインダーピッチのキノリン不溶分を上記範囲とすることで、得られるバインダーピッチの上記(1)の特性を特定範囲とすることができ、密度が高く、機械強度の向上、または電気抵抗率の低減のいずれかを図ることができる。
(1)蒸留工程
〈コールタール〉
コールタールは、一般的には、瀝青炭、亜瀝青炭等の石炭をコークス炉において1100〜1350℃で乾留したときに発生するガスを冷却および凝縮して回収したものである。得られるコールタールの、キノリン不溶分を5〜80質量%とするには、乾留温度、ガス冷却および凝縮の条件を調整する。
〈軟ピッチ〉
軟ピッチは、コールタールから蒸留操作によりナフタレン油、アントラセン油等の低沸点油を留出させた残渣である。
〈蒸留〉
原料コールタールの蒸留は、常圧蒸留でもよいし、減圧蒸留でもよいが、減圧蒸留とすることが好ましい。減圧蒸留をすることによって、コールタール中の軽質分をより効率的に留出させることができる。
本発明のバインダーピッチの製造方法は、キノリン不溶分が5〜80質量%のコールタールを蒸留して軟ピッチを得る蒸留工程と、得られた軟ピッチを350〜420℃の温度範囲で12〜15時間加熱して、上記記載のバインダーピッチを得る熱改質工程とを備えるバインダーピッチの製造方法である。原料バインダーピッチのキノリン不溶分を上記範囲とすることで、得られるバインダーピッチの上記(1)の特性を特定範囲とすることができ、密度が高く、機械強度の向上、または電気抵抗率の低減のいずれかを図ることができる。
(1)蒸留工程
〈コールタール〉
コールタールは、一般的には、瀝青炭、亜瀝青炭等の石炭をコークス炉において1100〜1350℃で乾留したときに発生するガスを冷却および凝縮して回収したものである。得られるコールタールの、キノリン不溶分を5〜80質量%とするには、乾留温度、ガス冷却および凝縮の条件を調整する。
〈軟ピッチ〉
軟ピッチは、コールタールから蒸留操作によりナフタレン油、アントラセン油等の低沸点油を留出させた残渣である。
〈蒸留〉
原料コールタールの蒸留は、常圧蒸留でもよいし、減圧蒸留でもよいが、減圧蒸留とすることが好ましい。減圧蒸留をすることによって、コールタール中の軽質分をより効率的に留出させることができる。
(2)熱改質工程
(熱改質)
原料コールタールを蒸留することにより得られる軟ピッチは、キノリン可溶かつトルエン不溶の重質分であるβ成分が不足している場合があるため、熱改質工程によりピッチを重質化させる。
(温度・時間)
本発明では、熱改質の温度および時間に関する条件は、温度を350〜420℃、時間を12〜15時間にするのが好ましく、より好ましくは360〜400℃、12〜14時間である。温度が350℃未満では、重質化が起こりにくく、420℃以上では、ピッチが炭素化し流動性が失われてしまう。
(熱改質)
原料コールタールを蒸留することにより得られる軟ピッチは、キノリン可溶かつトルエン不溶の重質分であるβ成分が不足している場合があるため、熱改質工程によりピッチを重質化させる。
(温度・時間)
本発明では、熱改質の温度および時間に関する条件は、温度を350〜420℃、時間を12〜15時間にするのが好ましく、より好ましくは360〜400℃、12〜14時間である。温度が350℃未満では、重質化が起こりにくく、420℃以上では、ピッチが炭素化し流動性が失われてしまう。
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[バインダーピッチの試験方法]
(軟化点の測定方法)
バインダーピッチの軟化点を、JIS K 2425の8.1(タールピッチの軟化点測定方法(環球法)−手動式測定方法)に準拠した方法により測定した。まず、840μm(20メッシュ)篩下のサンプルを推定軟化点より50℃を超えない温度で加熱溶解して、φ16×H6.4mmの環に注いで固定させた。次に、この環を試料棚に置き、環の中央部にφ9.525mm、質量3.5gの鋼球を置いた。この棚をグリセリン中に浸し、浴温を5℃/分で上昇させ、サンプルが軟化して鋼球が環の25.4mm下にある底板に達したときの温度を軟化点とした。
(軟化点の測定方法)
バインダーピッチの軟化点を、JIS K 2425の8.1(タールピッチの軟化点測定方法(環球法)−手動式測定方法)に準拠した方法により測定した。まず、840μm(20メッシュ)篩下のサンプルを推定軟化点より50℃を超えない温度で加熱溶解して、φ16×H6.4mmの環に注いで固定させた。次に、この環を試料棚に置き、環の中央部にφ9.525mm、質量3.5gの鋼球を置いた。この棚をグリセリン中に浸し、浴温を5℃/分で上昇させ、サンプルが軟化して鋼球が環の25.4mm下にある底板に達したときの温度を軟化点とした。
(キノリン不溶分含有量の測定方法)
バインダーピッチのキノリン不溶分を、JIS K 2425の15.1(タールピッチのキノリン不溶分定量方法−ろ過法)に準拠した方法により測定した。まず、250μm(60メッシュ)篩下のサンプル1gを、75℃のキノリン20mLに30分溶解した。次に、可溶分を吸引ろ過により取り除き、残分をキノリンおよびアセトンで洗浄、乾燥、秤量してキノリン不溶分を算出した。
バインダーピッチのキノリン不溶分を、JIS K 2425の15.1(タールピッチのキノリン不溶分定量方法−ろ過法)に準拠した方法により測定した。まず、250μm(60メッシュ)篩下のサンプル1gを、75℃のキノリン20mLに30分溶解した。次に、可溶分を吸引ろ過により取り除き、残分をキノリンおよびアセトンで洗浄、乾燥、秤量してキノリン不溶分を算出した。
(トルエン不溶分含有量の測定方法)
バインダーピッチのトルエン不溶分を、JIS K 2425の14.2(加工タール及びタールピッチのトルエン不溶分定量方法)に準拠した方法により測定した。まず、250μm(60メッシュ)篩下のサンプル2gを、温トルエン100mLに混ぜ、還流操作により30分加熱溶解した。次に、熱いうちに可溶分を吸引ろ過により取り除き、残分をトルエンおよびアセトンで洗浄、乾燥および秤量してトルエン不溶分を算出した。
バインダーピッチのトルエン不溶分を、JIS K 2425の14.2(加工タール及びタールピッチのトルエン不溶分定量方法)に準拠した方法により測定した。まず、250μm(60メッシュ)篩下のサンプル2gを、温トルエン100mLに混ぜ、還流操作により30分加熱溶解した。次に、熱いうちに可溶分を吸引ろ過により取り除き、残分をトルエンおよびアセトンで洗浄、乾燥および秤量してトルエン不溶分を算出した。
(固定炭素含有量の測定方法)
バインダーピッチの固定炭素量を、JIS K 2425の11(固定炭素分定量方法)に準拠した方法により測定した。まず、250μm(60メッシュ)篩下のサンプル1gを、落とし蓋付き磁器るつぼに入れ、蓋をしないで430℃に保った電気炉中で30分加熱して揮発分を除去した。次に、蓋をして磁器B型るつぼ内に置き、周囲をコークス粒で敷き詰めて蓋をかぶせたあと、800℃に保った電気炉中で30分加熱し、冷却後、秤量して固定炭素を算出した。
バインダーピッチの固定炭素量を、JIS K 2425の11(固定炭素分定量方法)に準拠した方法により測定した。まず、250μm(60メッシュ)篩下のサンプル1gを、落とし蓋付き磁器るつぼに入れ、蓋をしないで430℃に保った電気炉中で30分加熱して揮発分を除去した。次に、蓋をして磁器B型るつぼ内に置き、周囲をコークス粒で敷き詰めて蓋をかぶせたあと、800℃に保った電気炉中で30分加熱し、冷却後、秤量して固定炭素を算出した。
(バインダーピッチのC/H比の測定方法)
バインダーピッチの炭素(C)および水素(H)の含有量を、ThermoQuest社製の元素分析計(MODEL: EA1110−CHNS−0)を用いて測定し、C/H(モル組成比)を算出した。具体的には、250μm(60メッシュ)篩下のピッチ5mgを元素分析計(EA1110−CNHS−0)の専用セルに入れ、サンプルを完全燃焼させ、発生したCO2ガスおよびH2Oガスを定量してサンプル中のC、Hの含有量を測定し、C/H(モル組成比)を算出した。
バインダーピッチの炭素(C)および水素(H)の含有量を、ThermoQuest社製の元素分析計(MODEL: EA1110−CHNS−0)を用いて測定し、C/H(モル組成比)を算出した。具体的には、250μm(60メッシュ)篩下のピッチ5mgを元素分析計(EA1110−CNHS−0)の専用セルに入れ、サンプルを完全燃焼させ、発生したCO2ガスおよびH2Oガスを定量してサンプル中のC、Hの含有量を測定し、C/H(モル組成比)を算出した。
[試験用電極の製造]
実施例および比較例のバインダーピッチを用いて、試験用電極を製造した。
(1)フィラーコークス
コークスを粉砕し、粒径範囲4〜8mm、2〜4mm、1〜2mm、0.5〜1mm、0.25〜0.5mmおよび0.25mm未満に分級した。
粒径範囲4〜8mmを13質量%、2〜4mmを13質量%、1〜2mmを13質量%、0.5〜1mmを13質量%、0.25〜0.5mmを13質量%、0.25mm未満を35質量%の割合で混合し、粒度調整したフィラーコークスを得た。
(2)混錬
有効容積1Lの2軸型ニーダーをあらかじめバインダーピッチの軟化点+50℃に加熱しておき、粒度調整したフィラーコークス800gをバインダーピッチの軟化点+50℃に予熱後、そのニーダーに投入した。フィラーコークス投入後5分間撹拌し、上記「バインダーピッチの製造」において製造した粉状のバインダーピッチ130.2gをニーダーに投入し、さらに30分間混錬し、フィラーコークスとバインダーピッチからなるペーストを調製した。
(3)成型
調製したペーストをステンレス製バットに移し変え、バインダーピッチの軟化点℃まで徐冷した。
次いで、徐冷したペーストをバインダーピッチの軟化点℃に加熱された内部が直径70mm、高さ100mmのステンレス製円筒容器に投入し、50MPaで60秒間加圧し、試験電極を成型した。
(4)焼成
成型した試験電極を1170℃で、5時間焼成した。
(5)加工
焼成した試験電極を、直径50mm、高さ50mmの円筒型試験電極に加工した。
実施例および比較例のバインダーピッチを用いて、試験用電極を製造した。
(1)フィラーコークス
コークスを粉砕し、粒径範囲4〜8mm、2〜4mm、1〜2mm、0.5〜1mm、0.25〜0.5mmおよび0.25mm未満に分級した。
粒径範囲4〜8mmを13質量%、2〜4mmを13質量%、1〜2mmを13質量%、0.5〜1mmを13質量%、0.25〜0.5mmを13質量%、0.25mm未満を35質量%の割合で混合し、粒度調整したフィラーコークスを得た。
(2)混錬
有効容積1Lの2軸型ニーダーをあらかじめバインダーピッチの軟化点+50℃に加熱しておき、粒度調整したフィラーコークス800gをバインダーピッチの軟化点+50℃に予熱後、そのニーダーに投入した。フィラーコークス投入後5分間撹拌し、上記「バインダーピッチの製造」において製造した粉状のバインダーピッチ130.2gをニーダーに投入し、さらに30分間混錬し、フィラーコークスとバインダーピッチからなるペーストを調製した。
(3)成型
調製したペーストをステンレス製バットに移し変え、バインダーピッチの軟化点℃まで徐冷した。
次いで、徐冷したペーストをバインダーピッチの軟化点℃に加熱された内部が直径70mm、高さ100mmのステンレス製円筒容器に投入し、50MPaで60秒間加圧し、試験電極を成型した。
(4)焼成
成型した試験電極を1170℃で、5時間焼成した。
(5)加工
焼成した試験電極を、直径50mm、高さ50mmの円筒型試験電極に加工した。
[試験電極の電極特性の測定]
上記により製造した試験電極を用いて、かさ密度の測定(JIS R 7222:1997の7 かさ比重の測定方法による)、万能試験機を用いた圧縮強度の測定(JIS R 7222:1997の9 圧縮強さの測定方法による)、および四端針法による電気抵抗率(体積抵抗率)の測定(JIS R 7222:1997の12 固有抵抗の測定方法による)を行った。
上記により製造した試験電極を用いて、かさ密度の測定(JIS R 7222:1997の7 かさ比重の測定方法による)、万能試験機を用いた圧縮強度の測定(JIS R 7222:1997の9 圧縮強さの測定方法による)、および四端針法による電気抵抗率(体積抵抗率)の測定(JIS R 7222:1997の12 固有抵抗の測定方法による)を行った。
(実施例1)
高炉用コークス炉から発生したキノリン不溶分9.8質量%のコールタールを、蒸留およびそれに続く熱改質工程により、軟化点160℃、キノリン不溶分23.8質量%、トルエン不溶分44.2質量%、固定炭素65.8質量%、メソフェーズ率2.5%、C/Hが2.18のバインダーピッチを得た。焼成した電極の特性は、かさ密度1.683g/cm3、圧縮強度59.5MPa、電気抵抗率60.2μΩ・mであった。また、キノリン不溶分のC/Hは3.49であった。結果を表1および2に示す。
高炉用コークス炉から発生したキノリン不溶分9.8質量%のコールタールを、蒸留およびそれに続く熱改質工程により、軟化点160℃、キノリン不溶分23.8質量%、トルエン不溶分44.2質量%、固定炭素65.8質量%、メソフェーズ率2.5%、C/Hが2.18のバインダーピッチを得た。焼成した電極の特性は、かさ密度1.683g/cm3、圧縮強度59.5MPa、電気抵抗率60.2μΩ・mであった。また、キノリン不溶分のC/Hは3.49であった。結果を表1および2に示す。
(実施例2)
高炉用コークス炉から発生したキノリン不溶分9.8質量%のコールタールを原料タールとし、蒸留およびそれに続く熱改質工程により調整した、軟化点250℃、キノリン不溶分45.5質量%、トルエン不溶分68.4質量%、固定炭素82.1質量%、メソフェーズ率5.6%、C/Hが2.26のバインダーピッチを得た。焼成した電極の特性は、かさ密度1.724g/cm3、圧縮強度62.8MPa、電気抵抗率61.7μΩ・mであった。また、キノリン不溶分のC/Hは3.47であった。結果を表1および2に示す。
高炉用コークス炉から発生したキノリン不溶分9.8質量%のコールタールを原料タールとし、蒸留およびそれに続く熱改質工程により調整した、軟化点250℃、キノリン不溶分45.5質量%、トルエン不溶分68.4質量%、固定炭素82.1質量%、メソフェーズ率5.6%、C/Hが2.26のバインダーピッチを得た。焼成した電極の特性は、かさ密度1.724g/cm3、圧縮強度62.8MPa、電気抵抗率61.7μΩ・mであった。また、キノリン不溶分のC/Hは3.47であった。結果を表1および2に示す。
(比較例1)
高炉用コークス炉から発生したキノリン不溶分1.8質量%のコールタールを原料タールとし、蒸留およびそれに続く熱改質工程により、軟化点160℃、キノリン不溶分4.7質量%、トルエン不溶分25.9質量%、固定炭素58.4質量%、メソフェーズ率0.8%、C/Hが1.75のバインダーピッチを得た。焼成した電極の特性は、かさ密度1.554g/cm3、圧縮強度49.9MPa、電気抵抗率64.8μΩ・mであった。また、キノリン不溶分のC/Hは3.46であった。結果を表1および2に示す。
高炉用コークス炉から発生したキノリン不溶分1.8質量%のコールタールを原料タールとし、蒸留およびそれに続く熱改質工程により、軟化点160℃、キノリン不溶分4.7質量%、トルエン不溶分25.9質量%、固定炭素58.4質量%、メソフェーズ率0.8%、C/Hが1.75のバインダーピッチを得た。焼成した電極の特性は、かさ密度1.554g/cm3、圧縮強度49.9MPa、電気抵抗率64.8μΩ・mであった。また、キノリン不溶分のC/Hは3.46であった。結果を表1および2に示す。
(比較例2)
高炉用コークス炉から発生したキノリン不溶分1.8質量%のコールタールを原料タールとし、蒸留およびそれに続く熱改質工程により、軟化点250℃、キノリン不溶分9.3質量%、トルエン不溶分32.5質量%、固定炭素59.8質量%、メソフェーズ率1.8%、C/Hが1.79のバインダーピッチを得た。焼成した電極の特性は、かさ密度1.532g/cm3、圧縮強度48.4MPa、電気抵抗率69.7μΩ・mであった。また、キノリン不溶分のC/Hは3.48であった。結果を表1および2に示す。
高炉用コークス炉から発生したキノリン不溶分1.8質量%のコールタールを原料タールとし、蒸留およびそれに続く熱改質工程により、軟化点250℃、キノリン不溶分9.3質量%、トルエン不溶分32.5質量%、固定炭素59.8質量%、メソフェーズ率1.8%、C/Hが1.79のバインダーピッチを得た。焼成した電極の特性は、かさ密度1.532g/cm3、圧縮強度48.4MPa、電気抵抗率69.7μΩ・mであった。また、キノリン不溶分のC/Hは3.48であった。結果を表1および2に示す。
(比較例3)
高炉用コークス炉から発生したキノリン不溶分0.8質量%のコールタールを原料タールとし、蒸留およびそれに続く熱改質工程により、軟化点160℃、キノリン不溶分3.6質量%、トルエン不溶分32.7質量%、固定炭素57.9質量%、メソフェーズ率0.2%、C/Hが1.73のバインダーピッチを得た。焼成した電極の特性は、かさ密度1.507g/cm3、圧縮強度44.3MPa、電気抵抗率69.8μΩ・mであった。また、キノリン不溶分のC/Hは3.46であった。結果を表1および2に示す。
高炉用コークス炉から発生したキノリン不溶分0.8質量%のコールタールを原料タールとし、蒸留およびそれに続く熱改質工程により、軟化点160℃、キノリン不溶分3.6質量%、トルエン不溶分32.7質量%、固定炭素57.9質量%、メソフェーズ率0.2%、C/Hが1.73のバインダーピッチを得た。焼成した電極の特性は、かさ密度1.507g/cm3、圧縮強度44.3MPa、電気抵抗率69.8μΩ・mであった。また、キノリン不溶分のC/Hは3.46であった。結果を表1および2に示す。
なお、熱改質条件は、実施例では350〜420℃の温度範囲で12〜15時間の範囲で行い、比較例はこれを外れる条件で行った。
表1、2に示された電極特性からわかるように、実施例1、2の電極は、比較例1〜3の電極に比べて、かさ密度が大きく、圧縮強度が大きく、しかも電気抵抗率が低かった。したがって、本発明のバインダーピッチをアルミニウム製錬用電極、製鋼用黒鉛電極等の炭素材料に使用すると、炭素材料の密度を高くすることができ、機械強度の向上や電気抵抗の低減を図ることが可能である。
Claims (4)
- 軟化点が150〜350℃、
キノリン不溶分が10〜80質量%、
トルエン不溶分が15〜80質量%、
固定炭素が60〜82.2質量%、および
炭素(C)と水素(H)の原子数比C/Hが2.10以上であるバインダーピッチ。 - コールタールを蒸留して軟ピッチを得る蒸留工程と、得られた軟ピッチを350〜420℃の温度範囲で12〜15時間加熱して、ピッチを熱改質して、請求項1に記載のバインダーピッチを得る熱改質工程とを備えるバインダーピッチの製造方法。
- 前記蒸留工程が、蒸留塔を用いる減圧蒸留または常圧蒸留である請求項2に記載のバインダーピッチの製造方法。
- 請求項1に記載のバインダーピッチとフィラーコークスとを混合し焼成して得られる電極。
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JP2015017065A JP2016141705A (ja) | 2015-01-30 | 2015-01-30 | バインダーピッチおよびその製造方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2020045426A (ja) * | 2018-09-19 | 2020-03-26 | Jfeケミカル株式会社 | タールの調整方法及びバインダーピッチの製造方法 |
-
2015
- 2015-01-30 JP JP2015017065A patent/JP2016141705A/ja active Pending
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