JP5155620B2 - 厚み滑り振動片の製造方法 - Google Patents
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Description
図54に示すように、厚み滑り振動子90は、厚み滑り振動片91と、該厚み滑り振動片91を内部に収納するケース92と、厚み滑り振動片91をケース92内に密閉させるプラグ93とを備えている。
厚み滑り振動片91は、図55から図57に示すように、一定の厚みで板状に形成され、外形が矩形状に形成された水晶板94と、該水晶板94の両面に形成された励振電極95、引き出し電極96及びマウント電極97とを有している。具体的には、水晶板94の両面の略中央部分に、励振電極95がそれぞれ対向するように形成されている。なお、図55では、一方の励振電極95のみ図示している。また、水晶板94の矩形状の外形は、機械加工により形成する方法が慣用されている(特許文献1参照)。
上記プラグ93は、ケース92を密閉させるステム100と、ステム100を貫通した状態で配置された2本のリード端子101と、ステム100の内側に充填された充填剤102とを有している。2本のリード端子101は、それぞれケース92内に突出している部分がインナーリード101aとなり、ケース92外に突出している部分がアウターリード101bとなっている。なお、リード端子101の外表面には、予め錫(Sn)−鉛(Pb)の半田メッキが施されている。
初めに、鉛は自然環境や人体に悪影響を及ぼす有害な重金属であるため、近年では鉛を使用しなお鉛フリー化への転換が世界的に進められている。そのため、インナーリード101aとマウント電極97とを接続する際に使用する錫−鉛メッキに関しても、鉛を使用しない錫−銅メッキ等が用いられるようになってきた。
ところが、錫−銅メッキは拡散し易いので、振動子として完成後に125℃を超えるような高温の雰囲気に長時間放置した場合や、前記振動子をリフロー処理で基板に実装する場合において、図58に示すように、メッキ膜Mがマウント電極97上から引き出し電極96上に拡散する場合があった。更には、引き出し電極96を越えて励振電極95上まで拡散する場合もあった。なお図58では、上側の励振電極95の中央部分近傍までメッキ膜Mが拡散している場合を示している。特に積層した金属膜のうち、表面に形成された金は、錫に溶け易い性質を有しているので、メッキ膜Mが金に沿うような形で拡散し易かった。このため、拡散したメッキ膜Mの影響を受けて励振電極95の重量が変化して、周波数が大幅(数十ppmから数百ppm)に変動する。これにより、振動子としての規定の周波数範囲を超える場合があった。このような現象は、振動子が小型になり熱容量が小さくなるに伴い、振動子を構成する部材の温度変化が大きくなるから、より顕著に発生する課題である。
本発明に係る厚み滑り振動片の製造方法は、励振電極と、引き出し電極を介して励振電極に電気的に接続されたマウント電極とが水晶板の外表面上に形成され、所定の電圧が励振電極に印加されたときに厚み滑り振動する厚み滑り振動片を、水晶ウエハを利用して一度に複数製造する方法であって、水晶の原石を決められた切断角度及び厚みで切断して前記水晶ウエハにすると共に、該水晶ウエハの厚みを所定の厚みまで研磨する切断研磨工程と、該切断研磨工程後、前記水晶ウエハの研磨面をエッチングして加工変質層を除去すると共に、水晶ウエハの厚みを規定値内に揃えるエッチング工程と、該エッチング工程後、前記水晶ウエハの両面にクロムを薄膜状に堆積させたクロム層をそれぞれ成膜すると共に、該クロム層上に金を薄膜状に堆積させた金層をさらに成膜する金属層成膜工程と、該金属層成膜工程後、前記クロム層及び前記金層をフォトリソ技術によりエッチングして、所定の形状にパターニングする金属層エッチング工程と、該金属層エッチング工程後、前記水晶板が連結部を介して前記水晶ウエハに連結されるように、パターニングした前記クロム層及び金層をマスクとして水晶ウエハをフォトリソ技術によりエッチングすると共に、パターニングした前記クロム層及び金層を、前記励振電極、前記引き出し電極及び前記マウント電極のパターンに沿ってエッチングする電極パターン形成工程と、該電極パターン形成工程後、前記引き出し電極領域における少なくとも一部分の前記金層、又は、前記マウント電極領域における引き出し電極近傍の前記金層を、フォトリソ技術によりエッチングして除去する金層除去工程と、該金層除去工程後、前記連結部を切断して複数の前記水晶板を個片化する切断工程と、を備えていることを特徴とするものである。
次いで、スパッタ装置等を利用して、水晶ウエハの両面にクロムを薄膜状に堆積させたクロム層をそれぞれ成膜すると共に、該クロム層上に金を薄膜状に堆積させた金層をさらに成膜する金属層成膜工程を行う。なお、このクロム層と金層とを積層した積層膜は、後に励振電極、引き出し電極及びマウント電極となるものである。
そして、最後に各水晶板と水晶ウエハとを連結していた連結部を切断して切り離し、水晶板を個片化する切断工程を行う。その結果、水晶ウエハから、励振電極、引き出し電極及びマウント電極が水晶板の外表面上に形成された厚み滑り振動片を一度に複数製造することができる。
即ち、従来のものは、金層に沿って励振電極までメッキ膜が拡散してしまっていた。これに対して本発明の厚み滑り振動片は、金層が途中で除去されているので、メッキ膜が励振電極まで拡散する前に止まってしまう。このように、金層を除去することで、メッキ膜が励振電極まで拡散してしまうことを防止することができる。つまり、金層が除去された領域を、拡散防止領域として機能させることができる。
そしてまた、本発明はフォトリソ技術を用いて除去すべき金属の領域(即ち、その位置と幅)を決め、且つ、エッチングにより金層の除去をしているから、その領域を水晶ウエハの両面の全面に亘って、精度良く且つ均一に加工することができる。従って、厚み滑り振動片をより小型化しても、水晶ウエハの面内に亘って除去すべき領域を均一に且つ再現性良く加工することができる。
上述したように、本発明に係る厚み滑り振動片の製造方法によれば、鉛フリー化に対応しながら、高品質な厚み滑り振動片を一度に複数、効率良く製造することができる。
次いで、スパッタ装置等を利用して、水晶ウエハの両面に所定の金属を薄膜状に堆積させたエッチング用金属層をそれぞれ成膜する第1の金属層成膜工程を行う。
次いで、パターニングされたエッチング用金属層をマスクとして、水晶ウエハをフォトリソ技術によりエッチングする。これにより、1枚の水晶ウエハから後に厚み滑り振動片となる水晶板を、連結部を介して水晶板に連結された状態で複数形成することができる。また、後に形成される励振電極の周囲を囲むように水晶ウエハの両面をフォトリソ技術により環状にエッチングして、水晶板の振動漏れを抑制する環状溝をそれぞれ形成する。
次いで、水晶ウエハの両面に形成された積層膜を、フォトリソ技術により励振電極、引き出し電極及びマウント電極のパターンに沿ってエッチングする。この電極パターン形成工程を行うことで、水晶ウエハに連結部で連結された状態の厚み滑り振動片を複数形成することができる。
そして、最後に各水晶板と水晶ウエハとを連結していた連結部を切断して切り離し、水晶板を個片化する切断工程を行う。その結果、水晶ウエハから、励振電極、引き出し電極及びマウント電極が水晶板の外表面上に形成されていると共に、励振電極の周囲が環状溝によって囲まれた厚み滑り振動片を一度に複数製造することができる。
即ち、従来のものは、金層に沿って励振電極までメッキ膜が拡散してしまっていた。これに対して本発明の厚み滑り振動片は、金層が途中で除去されているので、メッキ膜が励振電極まで拡散する前に止まってしまう。このように、金層を除去することで、メッキ膜が励振電極まで拡散してしまうことを防止することができる。つまり、金層が除去された領域を、拡散防止領域として機能させることができる。
そしてまた、本発明はフォトリソ技術を用いて除去すべき金属の領域(即ち、その位置と幅)を決め、且つ、エッチングにより金層の除去をしているから、その領域を水晶ウエハの両面の全面に亘って、精度良く且つ均一に加工することができる。従って、厚み滑り振動片をより小型化しても、水晶ウエハの面内に亘って除去すべき領域を均一に且つ再現性良く加工することができる。
更に、水晶板には励振電極の周囲を囲むように環状溝が形成されているので、励振電極は他の部分よりも厚みが薄くなった薄肉部で囲まれた状態となる。よって、励振電極によって生じた厚み滑り振動は、この薄肉部を超えて外側に伝わり難くなる。従って、振動漏れを抑制することができ、効率良く厚み滑り振動させることができる。
上述したように、本発明に係る厚み滑り振動片の製造方法によれば、鉛フリー化に対応しながら、高品質で振動漏れが抑制された厚み滑り振動片を一度に複数、効率良く製造することができる。
そして、金層除去工程を行った後、複数の水晶板が連結部を介して連結されている水晶ウエハを、金属マスクを有する成膜用治具にセットする治具セット工程を行う。次いで、成膜用治具の金属マスクを利用して、複数の水晶板の側面にだけ、クロム層を成膜すると共に、該クロム層にさらに金層を成膜して側面金属層を形成する側面金属層成膜工程を行う。これにより、水晶板の両面に形成されたマウント電極を、クロム層及び金層からなる側面金属層を介して互いに電気的に接続することができる。
即ち、従来のものは、金層に沿って励振電極までメッキ膜が拡散してしまっていた。これに対して本発明の厚み滑り振動片は、金層が途中で除去されているので、メッキ膜が励振電極まで拡散する前に止まってしまう。このように、金層が除去されているので、メッキ膜が励振電極まで拡散してしまうことを防止することができる。つまり、金層が除去された領域を、拡散防止領域として機能させることができる。
また、本発明に係る厚み滑り振動片によれば、上述した製造方法により製造されているので、鉛を使用しないメッキを使用したとしても、メッキ膜の拡散を防止することができ、周波数が大幅に変動してしまうことを防ぐことができる。よって、品質を高めて信頼性の向上化を図ることができる。
また、本発明に係る発振器によれば、上述した厚み滑り振動子を備えているので、同様に高品質化を図ることができ、製品の信頼性を高めることができる。
本実施形態の厚み滑り振動子1は、図1に示すように、厚み滑り振動片2と、該厚み滑り振動片2を内部に収納するケース3と、厚み滑り振動片2をケース3内に密閉させる気密端子であるプラグ4とを備えている。
本実施形態の水晶板10は、外形が略矩形状に形成されている。そして、この水晶板10の両面の略中央部分に、上記励振電極11がそれぞれ対向するように形成されている。また、水晶板10の端部には、引き出し電極12を介して励振電極11にそれぞれ電気的に接続されたマウント電極13が形成されている。なお、マウント電極13は、一方の励振電極11に接続されたものと、他方の励振電極11に接続されたものとが、水晶板10の両面にそれぞれ形成されている。この際、一方の面に形成されたマウント電極13は、他方の面に形成されたマウント電極13に対して、水晶板10の側面上に形成された側面金属層14を介して互いに電気的に接続されている。
プラグ4は、ケース3を密閉させるステム5と、該ステム5を貫通した状態で配置され、ステム5を間に挟んで一端側がマウント電極13に電気的に接続されたインナーリード6aとされ、他端側が外部に電気的に接続されるアウターリード6bとされた2本のリード端子6と、ステム5の内側に充填された充填剤7とを備えている。
なお、ケース3及びプラグ4は、厚み滑り振動片2を内部に気密封止する封止部材8を構成するものである。また、2本のリード端子6は、外部接続端子として機能するものである。
本実施形態の厚み滑り振動片2の製造方法は、切断研磨工程、エッチング工程、金属層成膜工程、金属層エッチング工程、電極パターン形成工程、金層除去工程、治具セット工程、側面金属層成膜工程及び切断工程を順に行って、1枚の水晶ウエハSを利用して一度に複数の厚み滑り振動片2を製造する方法である。
これら各工程について、図5及び図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。
この研磨装置20は、図7及び図8に示すように、汎用のラッピング装置であって、サンギヤ(太陽歯車)21と、インターナルギヤ(内歯車)22と、キャリア(遊星歯車)23とからなる遊星歯車機構を有している。また、キャリア23の上下には、下定盤24及び上定盤25が配置されている。なお、この研磨装置20は、下定盤24が回転し、上定盤25が固定された3ウェイ方式とされている。また、サンギヤ21、インターナルギヤ22、キャリア23及び下定盤24は、図7に示す方向に回転するように設定されている。なお、この際の下定盤24の回転速度及び印加荷重は、図示しない制御部によってプログラム制御されている。
まず、水晶のランバード原石を用意すると共に、X線回折法等によりランバード原石の切断角度の測定を行う(S1)。これは、厚み滑り振動片2の温度特性が、ランバード原石の切断角度に依存しているからである。なお、本実施形態では、切断角度として、35度10分30秒±30秒に設定する。
次いで、上記切断角度を持って、ランバード原石をワイヤーソー(例えば、線径が約160μmの高張力線)を用いて略220μmの厚みに切断する(S2)。なお、この切断時に使用する研磨剤としては、例えば、平均粒径が約11.5μmの緑色炭化珪素研磨剤である。
まず1回目のラッピングを行う前に、水晶ウエハSの側面の研磨を行う(S3)。即ち、切断した1枚毎の水晶ウエハSを接着剤で張り合わせてブロックにした後、図示しない研磨機で外周の研削を行う。続いて、面摺機にブロックを当ててコーナーの面取りを行い、水晶ウエハSの方向に識別を付けた後、図示しないラッピング装置で外周をラッピングする。これにより、水晶ウエハSの寸法精度を出すことができ、且つ、外周を滑らかに仕上げて、水晶ウエハSの割れや欠けの発生を抑えることができる。その後、加熱等により接着剤を溶解させ、1枚毎の水晶ウエハSに分離する。そして、分離した水晶ウエハSを洗浄液中で超音波洗浄して、接着剤を完全に除去する。
続いて、第3回目のラッピングを行う(S6)。この第3回目のラッピングでは、研磨装置20により、厚みを80μmから50μmまで薄くする。即ち、片面15μm研磨を行う。なお、この際厚みが40μmのキャリア23を用いる。
この仕上げラッピングによって、水晶ウエハSの厚みを50μmから所定の厚みである34μmまで薄くする。即ち、片面8μmの研磨を行う。なお、この際厚みが30μmのキャリア23を用いる。
これにより、切断研磨工程が終了する。
本実施形態では、例えば、エッチング量として4μmに設定する。まず、水晶ウエハSの厚みを、図示しない厚み滑り測定器で予め全て測定した後に、一定の厚み毎に分類する。そして、分類した水晶ウエハSをそれぞれ専用のバスケットに並べた後、所定の時間の間、バスケットごとエッチング液に浸漬する。なおこの間、バスケットをゆっくり上下に揺動させて、水晶ウエハSの厚みにムラが生じてしまうことを防止する。そして、所定の時間が経過した後、バスケットをエッチング液から取り出すと共に、純水に浸漬させて十分にエッチング液を取り去る。その後、スピン乾燥を行った後、水晶ウエハSの厚みを再度測定し、規定値内に入っていれば本工程を終了する。測定した結果、仮に水晶ウエハSの厚みが規定値内に入っていない場合には、再度本工程によるエッチングを繰り返す。
なお、エッチング液としては、フッ化水素酸とフッ化アンモニウムとの混合液を使用する。また、エッチング液のエッチング速度は、別のサンプルで予め求めておき、エッチング対象の水晶ウエハSのエッチング時間を決定している。
具体的には、まず、厚み揃えが終了した水晶ウエハSを所定のバスケットにセットして、水晶ウエハSの準備を行う(S20)。そして、純水や60℃程度の温度に加熱した温純水や超純水にバスケットを浸漬して、水晶ウエハSを洗浄する(S21)。洗浄した後、水晶ウエハSをスピン乾燥機等で脱水する。脱水後、真空中で水晶ウエハSを加熱し、吸着した水分を脱利させる。次いで、スパッタ装置等の図示しない成膜装置を利用して、水晶ウエハSの両面にクロム層15と金層16とを積層した状態でそれぞれ成膜する(S22)。
この際、クロム層15の厚みが数百Åとなるように成膜すると共に、金層16の厚みが数千Åとなるように成膜を行う。また、水晶ウエハSの両面に対して同時に成膜を行っても構わないし、片面だけ先に成膜した後、裏返して残りの片面を成膜しても構わない。なお、クロム層15と金層16とを積層した積層膜Pは、後に励振電極11、引き出し電極12及びマウント電極13となるものである。
具体的には、まず、水晶ウエハSの両面にレジスト(ネガ型のフォトレジスト)をそれぞれ塗布する(S23)。即ち、水晶ウエハSの片面にレジストを塗布して所定の温度で処理した後、残りの片面に同様にレジストを塗布する。両面にレジストを塗布した後、80℃程度の温度で熱処理を行う。
続いて、レジストによる外形パターンをマスクとして、クロム層15及び金層16をエッチングする(S25)。この際、クロム層15をエッチングするエッチング液としては、例えば、フェリシアン化カリウムと水酸化カリウムの水溶液とを混合させた水溶液等が用いられる。また、金層16をエッチングするエッチング液としては、例えば、ヨウ素、無水エタノール、ヨウ化カリウム、純水等の混合液が用いられる。
本実施形態では、まず、水晶ウエハSのエッチングを行う前に、積層膜Pに対してレジストによる電極パターンを形成する場合を説明する。
これにより、図9(b)に示すように、1枚の水晶ウエハSから後に厚み滑り振動片2となる水晶板10を、連結部10aを介して水晶ウエハSに連結した状態で複数形成することができる。なお、図9(b)では、クロム層15及び金層16の図示を省略している。また、図9(b)では、厚み滑り振動片2の水晶板10はウエハの中心近傍に存在する種結晶を境にして上段と下段との2段に配置され、且つ、各段ともに8個ずつの水晶板10が形成された列が複数配置されている。例えば、厚み滑り振動片2の水晶板10の長辺が約2mmで短辺が約1.1mmの外形のとき、長辺が約34mmで短辺が約29mmの水晶ウエハSを用いた場合には、厚み滑り振動片2の水晶板10の取り個数は約150から約200個となる。
このように、電極パターン形成工程を行うことで、水晶ウエハSに連結部10aで連結された状態の厚み滑り振動片2を複数形成することができる。この時点では、図10及び図11に示すように、励振電極11、引き出し電極12及びマウント電極13は、共にクロム層15及び金層16から構成されている。なお、図10から図13においては、連結部10aの図示を省略している。
具体的には、まず、上述したと同様に水晶ウエハSの両面にレジストを再度塗布する(S32)。続いて、引き出し電極12領域における金層16を剥離するための図示しない金層剥離用マスクを用意する。そして、この金層剥離用マスクを利用して、水晶ウエハSの両面に形成されたレジストを同時に露光した後、現像を行ってレジストによる金層剥離パターンを形成する(S33)。
続いて、不要となったレジストを剥離する(S35)。また、レジストを剥離した後、水晶ウエハSを超音波洗浄すると共に、スピン乾燥機で脱水した後、クリーンオーブンで乾燥させる。
なお、金層16の厚みとしては、例えば、1000Åから1500Å程度である。また、側面金属層14を形成する際に、水晶板10の両面側からそれぞれ成膜することが好ましい。
その結果、水晶ウエハSから、励振電極11、引き出し電極12及びマウント電極13が水晶板10の外表面上に形成された図2に示す厚み滑り振動片2を一度に複数製造することができる。特に、1枚の水晶ウエハSから複数の厚み滑り振動片2を製造できるので、効率の良い製造を行うことができる。
この製造装置30は、図16(a)、(b)に示すように、図示しない搬送ベルトによって移動可能なマウント治具31と、該マウント治具31上に取り付けられた振動片ホルダ32と、該マウント治具31上に着脱自在に固定されるパレット33とを備えている。
また、パレット33は、上面視矩形状で且つ断面視L字状に形成されており、図16(b)に示すように、上部にプラグ4を嵌め込むことができる凹部33aが、長手方向に沿って所定間隔毎に複数形成されている。この凹部33aは、円筒状のステム5を上方から嵌合できるように、底面が円筒内面の溝状に形成されている。この凹部33aによって、図16(a)に示すように、複数のプラグ4を所定の間隔に並べた状態でパレット33に固定できるようになっている。なお、パレット33の凹部33aの間隔は、振動片ホルダ32の凹部32aの間隔と同じ間隔に設定されている。これにより、複数の厚み滑り振動片2と複数のプラグ4とを、それぞれ対向するように位置決めした状態で確実に並べることができるようになっている。
まず、搬送ベルトを駆動してマウント治具31を図17に示すワーク供給ステーションS1に移動させる。そして、ワーク供給ステーションS1にて、図示しないロボット等により、振動片ホルダ32に形成された凹部32aに複数の厚み滑り振動片2を整列させる(S40)。またこれと同時に、ワーク供給ステーションS1にて、複数のプラグ4をパレット33の凹部33aにセットしておく。
即ち、従来では、金層16に沿って励振電極11までメッキ膜Mが拡散してしまっていた。これに対して本実施形態では、金層16が途中で除去されているので、図18及び図19に示すように、メッキ膜Mが引き出し電極12まで流れず、励振電極11にまで拡散する前に止まってしまう。このように、金層16を除去することで、メッキ膜Mが励振電極11まで拡散してしまうことを防止することができる。つまり、金層16が除去された領域を、拡散防止領域として機能させることができる。
また、本実施形態では、側面金属層14により水晶板10の両面のマウント電極13が電気的に接続されているので、インナーリード6aを水晶板10の裏表に関係なくマウント電極13に対して確実に接続することができる。つまり、上述したように、厚み滑り振動片2を片面だけでインナーリード6aに接続できるので、製造が容易になり、製造効率を高めることができる。
なお、取り出しステーションS3にてパレット33が取り外されたマウント治具31は、搬送ベルトの駆動により自動回収ラインに沿ってワーク供給ステーションS1に再び移動させられる。その後、再び複数の厚み滑り振動片2と、複数のプラグ4が予めセットされたパレット33とが供給された後、上述した工程を繰り返す作業に用いられる。
この周波数調整は、最初のイオン源でまず高速に周波数を粗く調整した後、次のイオン源で精密に周波数を調整する。また、この周波数調整は、周波数が低い領域から徐々に高くし、所定の周波数幅に収まったところで調整を終了する。
なお、圧入を行う前に、プラグ4、厚み滑り振動片2及びケース3等を十分に加熱して、表面吸着水分等を脱利させておく。
特に、本実施形態の厚み滑り振動子1は、上述したように周波数が大幅に変動することがない信頼性の向上した高品質の厚み滑り振動片2を有しているので、同様に振動子としての高品質化を図ることができる。また、厚み滑り振動片2は、内部に気密封止されているので、空気のダンピングの影響を受けずに高精度に振動することができる。また、塵埃等の影響を受けないことからも品質に優れている。
即ち、図20及び図21に示すように、引き出し電極12領域における金層16の一部(マウント電極13近傍の金層16)を所定距離H(例えば、10μm以上50μm以下)だけ除去しても構わない。この場合であっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
このように、引き出し電極12領域において金層16を全て除去せずに一部だけ除去しても構わない。つまり、引き出し電極12領域における少なくとも一部分の金層16を除去すれば、メッキ膜Mが励振電極11まで拡散してしまうことを防止することができる。
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では厚み滑り振動片2の片面に2つのインナーリード6aが接続されていたのに対し、第2実施形態では、厚み滑り振動片2の両面にインナーリード6aがそれぞれ接続されている点である。
また、本実施形態の厚み滑り振動片51は、マウント電極13領域における引き出し電極12近傍の金層16が除去されており、この部分だけ下地のクロム層15が露出している。
本発明は、このように該当する金層16の領域を、フォトリソ技術を用いて取り除いているので、加工精度は、厚み滑り振動片が小型になっても水晶ウエハSの両面の全面に亘って維持できる。従って、小型化しても、品質バラツキの少ない厚み滑り振動子を提供することが可能となる。
本実施形態の発振器55は、図31に示すように、厚み滑り振動子1を、集積回路56に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器55は、コンデンサ等の電子部品57が実装された基板58を備えている。基板58には、発振器用の上記集積回路56が実装されており、この集積回路56の近傍に、厚み滑り振動子1の厚み滑り振動片2が実装されている。これら電子部品57、集積回路56及び厚み滑り振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
この厚み滑り振動片60は、図32から図34に示すように、外形が矩形状に形成された水晶板10を備えており、該水晶板10の両面の略中央部分には上面視円形状で且つ断面視台形状の凹部61が形成されている。これにより水晶板10は、凹部61が形成された領域で厚みが薄くなっている。
また、本実施形態の厚み滑り振動片60は、マウント電極13領域における引き出し電極12近傍の金層16が除去されており、この部分だけ下地のクロム層15が露出している。
次いで、マスクとなっていたレジスト及びクロム層15及び金層16を全て剥離(S54)した後、改めて、水晶板10の両面にクロム層15及び金層16を成膜する(S55)。なお、この2回目に成膜されたクロム層15と金層16とからなる積層膜Pが、後に励振電極11、引き出し電極12及びマウント電極13となるものである。
これにより、水晶板10の両面に形成された凹部61内に励振電極11を形成することができると共に、各励振電極11に接続された引き出し電極12及びマウント電極13を水晶板10の片面にのみ形成することができる。なお、この時点では、励振電極11、引き出し電極12及びマウント電極13は、共にクロム層15及び金層16から構成されている。
その結果、図32に示すように、逆メサ構造の厚み滑り振動片60を製造することができる。
なお、前述した実施形態における水晶の外形及び逆メサ部のエッチングには、フッ酸系のエッチング液によるウエットエッチングに限られず、ハロゲン系ガスを用いたドライエッチング、例えば、RIE(リアクティブイオンエッチング)等を利用することも可能である。
この厚み滑り振動片110は、図36及び図37に示すように、外形が矩形状に形成された水晶板10と、水晶板10の両面に形成された励振電極11、引き出し電極12及びマウント電極13と、水晶板10の側面に形成された側面金属層14と、励振電極11の周囲を一周囲むようにリング状(環状)に形成され、水晶板10の振動漏れを抑制する環状溝111と、を備えている。
また、本実施形態の厚み滑り振動片110は、マウント電極13領域における引き出し電極12近傍の金層16が除去されており、この部分だけ下地のクロム層15が露出している。
よって、水晶ウエハSの両面に、クロム層15を成膜すると共に、該クロム層15上に金層16を成膜する(S22)。次いで、図39に示すように、水晶ウエハSの両面にレジスト112をそれぞれ塗布する(S23)。
なお、図40で示すW1は、後に個片化されたときに水晶板10の幅方向となる寸法を示したものである。またW2は、隣接して形成される水晶板10との間隔を示すものである。なおこのW2に該当する寸法部分は、レジスト112が現像されて既に溶出されている。
まず、水晶ウエハSの両面に再度レジスト112を塗布する(S27)。続いて、環状溝111に相当する部分のレジスト112が剥離されるように、環状溝111のパターンを有するマスクでレジスト112を露光した後、該レジスト112を現像して図43に示すように溝パターン112aを形成する(S70)。なお、図43で示すW3は、溝パターン112aの幅を示すものである。
このエッチングについて詳細に説明すると、積層膜Pに溝パターン112aがエッチングされた時点で、水晶ウエハSの表面は溝パターン112aと重なっている領域が露出した状態となる。そのため、この露出した領域において、水晶ウエハSは表裏よりエッチング反応が進行する。このとき、エッチング速度を予め把握しておくことにより、エッチング槽への浸漬時間に基づいてエッチングされる環状溝111の深さ等を予想することができる。
まず、図47に示すように、水晶ウエハSから積層膜P及びレジスト112を剥離する(S74)。そして、この図47に示す状態を出発点として、以降の工程で励振電極11、引き出し電極12、マウント電極13及び側面金属層14を形成していく。積層膜P及びレジスト112の剥離が終了した後、改めて水晶ウエハSの両面にクロム層15と金層16とからなる積層膜Pを成膜する(S75)。なお、この2回目に成膜された積層膜Pが、後に励振電極11、引き出し電極12及びマウント電極13となるものである。
まず、水晶ウエハSの両面にレジストをそれぞれ塗布する(S76)。続いて、各電極のパターンを形成するための図示しない電極パターン形成用マスクを利用して、水晶ウエハSの両面に形成されたレジストを同時に露光した後、現像を行ってレジストによる電極パターンを形成する(S77)。続いて、レジストによる電極パターンをマスクとして、クロム層15及び金層16からなる積層膜Pをエッチングする(S78)。
これにより、図48に示すように、水晶板10の両面に励振電極11、引き出し電極12及びマウント電極13を形成することができる。なお、この時点では、励振電極11、引き出し電極12及びマウント電極13は、共にクロム層15及び金層16から構成されている。
まず、不要となったレジストを剥離する(S79)。次いで、水晶ウエハSの両面にレジストを再度塗布する(S80)。続いて、マウント電極13領域における引き出し電極12近傍の金層16を剥離するための金層剥離用マスクを用意する。そして、この金層剥離用マスクを利用して、レジストを同時に露光した後、現像を行ってレジストによる金層剥離パターンを形成する(S81)。続いて、このレジストによる金層剥離パターンをマスクとして、金層16をエッチングする(S82)。これにより、マウント電極13領域における引き出し電極12近傍の金層16が剥離され、下地となっているクロム層15が露出した状態となる。なお、この時点では、水晶板10の両面に形成されたマウント電極13は、まだ互いに電気的に接続されていない。そして、不要となったレジストを剥離する(S83)。
その結果、図36及び図37に示すように、水晶板10の両面に環状溝111が形成された厚み滑り振動片110を製造することができる。
即ち、引き出し電極12は、励振電極11からマウント電極13の方向に向かって引き出されるものであるが、途中で環状溝111を横切るように通過せざるを得ない。そのため、引き出し電極12を形成する際に、環状溝111の角部分或いはその近傍で、断線しないように(パターンが切れないように)注意する必要がある。
また、水晶ウエハSをエッチング(S71、S73)する際に、エッチング液を用いたウェットプロセスを述べたが、これに限られず、ドライエッチングを利用したドライプロセスで行っても構わない。
更に、第1の金属層成膜工程の際に、エッチング用金属層として、クロム層15及び金層16からなる積層膜Pを用いたが、該積層膜Pに限定されるものではない。異なる種類の金属を積層しても構わないし、或いは、単一の金属を成膜しても構わない。
この厚み滑り振動子70は、内側に凹部71aが形成されたメタル製のベース71と、該ベース71の凹部71a内に収容される厚み滑り振動片2と、厚み滑り振動片2を凹部71a内に収容した状態でベース71に固定されるリッド72とを備えている。
また、リード74はベース71の底面に露出している。即ちこのリード74は、一端がマウント電極13に電気的に接続されると共に、他端が外部に接続される外部接続端子として機能する。また、ベース71の底面には、露出したリード74を除く領域において図示しない絶縁膜が形成されている。
即ち、この表面実装型振動子80は、図50及び図51に示すように、厚み滑り振動子1と、該厚み滑り振動子1を所定の形状で固定するモールド樹脂部81と、一端側がアウターリード6bに電気的に接続されると共に、他端側がモールド樹脂部81の底面に露出して外部に電気的に接続される外部端子部82とを備えている。
このように厚み滑り振動子1をモールド樹脂部81で固めることで、回路基板上等に安定して取り付けることができるので、より使用し易く、使い易さが向上する。
水晶の切断研磨工程において、キャリア23は同じく6インチの円板を用い、水晶ウエハSは適当量の偏心を持たせて配置させた(不図示)。これは、研磨工程中に水晶ウエハSをキャリア23内で自転し易くし、水晶ウエハS面内で厚みのバラツキを低減させるためのものである。水晶ウエハSの切断後の厚みは、220μmであり、初回の研磨の厚みの設定値を130μmに、2回目の研磨の厚みの設定値を100μmに、最終の厚みの設定値を約60μmにそれぞれ設定し、3回の研磨を施した。
なお、前述した逆メサ構造を持つ振動子の場合には、凹部の振動領域を除いて、水晶板の厚みは、80μmから100μmの厚みに設定できるので、3インチの水晶ウエハを用いることができる。
S 水晶ウエハ
1、50、70 厚み滑り振動子
2、51、60、110 厚み滑り振動片
6 リード端子(外部接続端子)
8、75 封止部材
10 水晶板
10a 連結部
11 励振電極
12 引き出し電極
13 マウント電極
14 側面金属層
15 クロム層
16 金層
55 発振器
56 集積回路
74 リード(外部接続端子)
111 環状溝
Claims (5)
- 励振電極と、引き出し電極を介して励振電極に電気的に接続されたマウント電極とが水晶板の外表面上に形成され、所定の電圧が励振電極に印加されたときに厚み滑り振動する厚み滑り振動片を、水晶ウエハを利用して一度に複数製造する方法であって、
水晶の原石を決められた切断角度及び厚みで切断して前記水晶ウエハにすると共に、該水晶ウエハの厚みを所定の厚みまで研磨する切断研磨工程と、
該切断研磨工程後、前記水晶ウエハの研磨面をエッチングして加工変質層を除去すると共に、水晶ウエハの厚みを規定値内に揃えるエッチング工程と、
該エッチング工程後、前記水晶ウエハの両面にエッチング用金属層をそれぞれ成膜する第1の金属層成膜工程と、
該第1の金属層成膜工程後、前記エッチング用金属層をフォトリソ技術によりエッチングして、所定の形状にパターニングする金属層エッチング工程と、
該金属層エッチング工程後、前記水晶板が連結部を介して前記水晶ウエハに連結されるように、パターニングした前記エッチング用金属層をマスクとして水晶ウエハをフォトリソ技術によりエッチングすると共に、前記励振電極の周囲を囲むように水晶ウエハの両面をフォトリソ技術により環状にエッチングして、前記水晶板の振動漏れを抑制する環状溝を形成するウエハエッチング工程と、
該ウエハエッチング工程後、前記エッチング用金属層を除去した後、前記水晶ウエハの両面にクロムを薄膜状に堆積させたクロム層をそれぞれ成膜すると共に、該クロム層上に金を薄膜状に堆積させた金層をさらに成膜する第2の金属層成膜工程と、
該第2の金属層成膜工程後、前記クロム層及び金層を、前記励振電極、前記引き出し電極及び前記マウント電極のパターンに沿ってエッチングする電極パターン形成工程と、
該電極パターン形成工程後、前記引き出し電極領域における少なくとも一部分の前記金層、又は、前記マウント電極領域における引き出し電極近傍の前記金層を、フォトリソ技術によりエッチングして除去する金層除去工程と、
該金層除去工程後、前記連結部を切断して複数の前記水晶板を個片化する切断工程と、
を備えていることを特徴とする厚み滑り振動片の製造方法。 - 請求項1に記載の厚み滑り振動片の製造方法において、
前記電極パターン形成工程の際、前記水晶板の両面に前記マウント電極を形成し、
前記金層除去工程と前記切断工程との間に、
金属マスクを有する成膜用治具に前記水晶ウエハをセットする治具セット工程と、
該治具セット工程後、前記金属マスクを利用して前記水晶板の側面に、クロムを薄膜状に堆積させたクロム層を成膜すると共に、該クロム層上に金を薄膜状に堆積させた金層をさらに成膜する側面金属層成膜工程とを行い、前記水晶板の両面に形成された前記マウント電極を電気的に接続することを特徴とする厚み滑り振動片の製造方法。 - 請求項1または2に記載の厚み滑り振動片の製造方法において、
前記切断研磨工程の際、前記水晶ウエハが角型であって、長辺が11mm以上34mm以下で、且つ、短辺が11mm以上29mm以下となるように前記原石から切断することを特徴とする厚み滑り振動片の製造方法。 - 請求項1または2に記載の厚み滑り振動片の製造方法において、
前記切断研磨工程の際、前記水晶ウエハが直径3インチとなるように前記原石から切断することを特徴とする厚み滑り振動片の製造方法。 - 請求項1から4のいずれか1項に記載の厚み滑り振動片の製造方法において、
前記エッチング工程の際、前記水晶ウエハの厚みを30μm以上160μm以下となるように厚みを調整することを特徴とする厚み滑り振動片の製造方法。
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