JP5152180B2 - バラシクロビルの製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は、ヘルペス、帯状疱疹等の治療薬(抗ウイルス剤)として知られているバラシクロビル(2−[(2−アミノ−1,6−ジヒドロ−6−オキソ−9H−プリン−9−イル)メトキシ]エチル L−バリネート)の製造方法に関する。さらに本発明は、アミノ酸エステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バラシクロビルは、ヘルペス、帯状疱疹等の治療薬として世界的に広く使用されてきたアシクロビルのプロドラッグである。バラシクロビルは、アシクロビルの経口吸収性を改善したものであり、アシクロビルと同様にヘルペス等の治療薬として広く用いられつつある。
バラシクロビルの製造方法としては、アシクロビルとN−[(ベンジルオキシ)カルボニル]−L−バリンとをN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドの存在下に溶媒中で縮合反応させ、得られたZ−バラシクロビル(2−[(2−アミノ−1,6−ジヒドロ−6−オキソ−9H−プリン−9−イル)メトキシ]エチル N−[(ベンジルオキシ)カルボニル]−L−バリネート)の保護基(Z基)を還元して脱離する方法が一般的である(特許文献1及び2参照)。
しかしながら、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドを用いる縮合反応においては、N−[(ベンジルオキシ)カルボニル]−L−バリンのラセミ化が避けられず、Z−バラシクロビルのD異性体である2−[(2−アミノ−1,6−ジヒドロ−6−オキソ−9H−プリン−9−イル)メトキシ]エチル N−[(ベンジルオキシ)カルボニル]−D−バリネートが、Z−バラシクロビル及びD体の合計量を100%とした場合に、通常数%程度生成するという問題がある。
また、Z基の除去はPd触媒等を用いる接触還元により行われるが、必ずしも操作が簡便とは言えない。
【0003】
バラシクロビルの製造方法としては、アシクロビルとN−(tert−ブトキシカルボニル)−L−バリンとをN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドの存在下に溶媒中で縮合反応させ、得られたBoc−バラシクロビル(2−[(2−アミノ−1,6−ジヒドロ−6−オキソ−9H−プリン−9−イル)メトキシ]エチル N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−バリネート)の保護基(Boc基)を酸により脱離する方法も知られている(特許文献3参照)。
しかしながら、この方法においても、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドを使用することによるラセミ化の問題は解決されていない。
【0004】
また、バラシクロビルの製造方法としては、アシクロビルの水酸基をp−トルエンスルホニルオキシ基などの脱離基に変換し、該アシクロビル誘導体とエナミノン型保護基でアミノ基が保護されたL−バリンアルカリ金属塩とを加熱下で溶媒中反応させ、得られたN−保護バラシクロビルのエナミノン型保護基を酸により脱離する方法も知られている(特許文献4参照)。
しかしながら、この方法においては、アシクロビルを誘導体化する必要があり工程が煩雑である。また、アシクロビル誘導体とN−保護バリンアルカリ金属塩とを高温にて縮合する必要があり、ラセミ化抑制の観点から光学活性体の製造として必ずしも適した方法とは言えない。
【特許文献1】
特開平10−195075号公報
【特許文献2】
国際公開第98/31683号パンフレット
【特許文献3】
特表2005−508993号公報
【特許文献4】
国際公開第98/03553号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、化学的及び光学的に高純度のバラシクロビルを効率的に得ることのできる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、エナミノン型保護基で保護されたL−バリンを、縮合剤の存在下、温和な条件でアシクロビルと縮合させ、次いで保護基を除去することにより、化学的及び光学的に高純度のバラシクロビルを効率的に得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
[0007]
すなわち、本発明は、以下の内容を包含する。
[1]式(2):
[0008]
[化1]
[0009]
で表されるアシクロビルと、
式(1):
[0010]
[化2]
[0011]
(式中、R1はアルキル基、アリール基又はアルコキシル基を示し、R2は水素原子又はアルキル基を示し、R3はアルキル基を示す。)
で表されるN−保護バリンの有機アミン塩を、又は該N−保護バリンのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩を中和し、縮合剤存在下に縮合反応させることを特徴とする、式(3):
[0012]
[化3]
[0013]
(式中、各記号は前記と同義を示す。)
で表されるN−保護バラシクロビルの製造方法。
[2]上記[1]記載の製造方法に従って、式(3)で表されるN−保護バラシクロビルを得た後、該N−保護バラシクロビルを酸で脱保護することを特徴とする、式(4):
[0014]
[化4]
[0015]
で表されるバラシクロビル又はその塩の製造方法。
[3]上記[1]記載の製造方法に従って、式(3)で表されるN−保護バラシクロビルを得た後、該N−保護バラシクロビルを塩酸で脱保護することを特徴とする、式(5):
[0016]
[化5]
[0017]
で表される塩酸バラシクロビルの製造方法。
[4]縮合剤が、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドである、上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の方法。
[5]中和が酸又は強酸と弱塩基の塩によって行われる、上記[1]乃至[4]記載のいずれか一に記載の方法。
[6]中和が、塩基存在下に行われる、上記[1]乃至[5]記載のいずれか一に記載の方法。
[7]式(2):
[0018]
[化6]
[0019]
で表されるアシクロビルと、
式(1):
[0020]
[化7]
[0021]
(式中、R1はアルキル基、アリール基又はアルコキシル基を示し、R2は水素原子又はアルキル基を示し、R3はアルキル基を示す。)
で表されるN−保護バリンの有機アミン塩とを、縮合剤存在下に縮合反応させることを特徴とする、式(3):
[0022]
[化8]
[0023]
(式中、各記号は前記と同義を示す。)
で表されるN−保護バラシクロビルの製造方法。
[8]上記[7]記載の製造方法に従って、式(3)で表されるN−保護バラシクロビルを得た後、該N−保護バラシクロビルを酸で脱保護することを特徴とする、式(4):
[0024]
[化9]
[0025]
で表されるバラシクロビル又はその塩の製造方法。
[9]上記[7]記載の製造方法に従って、式(3)で表されるN−保護バラシクロビルを得た後、該N−保護バラシクロビルを塩酸で脱保護することを特徴とする、式(5):
[0026]
[化10]
[0027]
で表される塩酸バラシクロビルの製造方法。
[10]縮合剤が、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドである、上記[7]乃至[9]のいずれか一に記載の方法。
[11]式(6):
[0028]
[化11]
[0029]
で表されるN−保護バラシクロビルを酸で脱保護することを特徴とする、式(4):
[0030]
[化12]
[0031]
で表されるバラシクロビル又はその塩の製造方法。
[12]式(6):
[0032]
[化13]
[0033]
で表されるN−保護バラシクロビルを塩酸で脱保護することを特徴とする、式(5):
[0034]
[化14]
[0035]
で表される塩酸バラシクロビルの製造方法。
[13]式(6):
[0036]
[化15]
[0037]
で表されるN−保護バラシクロビル。
[14]アミノ基が式(7):
【0038】
【化16】
【0039】
(式中、R1はアルキル基、アリール基又はアルコキシル基を示し、R2は水素原子又はアルキル基を示し、R3はアルキル基を示す。)
で表される保護基で保護されたアミノ酸の有機アミン塩とアルコールとを縮合剤存在下に縮合反応させることを特徴とする、アミノ基が式(7)で表される保護基で保護されたアミノ酸エステル化合物の製造方法。
[15]上記[14]の製造方法に従って、アミノ基が式(7)で表される保護基で保護されたアミノ酸エステル化合物を得た後、該保護基を酸で脱保護することを特徴とする、アミノ酸エステル化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、化学的及び光学的に高純度のバラシクロビル及びその前駆体を効率的に得ることができる。また本発明によれば、アミノ酸エステル化合物を効率的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明について実施の形態を説明する。
まず、本発明で用いられる用語の定義について説明する。
【0042】
「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0043】
「アルキル基」としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖又は分枝鎖のC1−10アルキル基が挙げられる。
【0044】
「アルケニル基」としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基等の直鎖又は分枝鎖のC2−10アルケニル基が挙げられる。
【0045】
「アルキニル基」としては、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−ペンチニル基、1−ヘキシニル基等の直鎖又は分枝鎖のC2−10アルキニル基が挙げられる。
【0046】
「シクロアルキル基」としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基等のC3−8シクロアルキル基が挙げられる。
【0047】
「アリール基」としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、アンスリル基、アントリル基、アズレニル基、フェナントリル基、アセナフチレニル基等のC6−14アリール基が挙げられる。
【0048】
「アラルキル基」としては、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、ナフチルメチル基等のC7−14アラルキル基が挙げられる。
【0049】
「アルコキシ基」としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、sec−ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基等の直鎖又は分枝鎖のC1−10アルコキシ基が挙げられる。
【0050】
「アシル基」としては、例えば、ホルミル基、カルボキシ基、C1−6アルキル−カルボニル基、C1−6アルコキシ−カルボニル基、C3−8シクロアルキル−カルボニル基、C6−14アリール−カルボニル基、カルバモイル基、C1−6アルキル−カルバモイル基、C1−6アルコキシ−カルバモイル基、C6−14アリール−カルバモイル基、C1−6アルキルスルホニル基などが挙げられる。
【0051】
「複素環基」としては、炭素原子以外に、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される1〜5個のヘテロ原子を含有する3〜12員の複素環基が挙げられ、例えば、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピロリニル基、ピロリジニル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、イミダゾリニル基、イミダゾリジニル基、ピラゾリル基、ピラゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピリジル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、キヌクリジニル基、フラニル基等の3ないし6員単環式複素環基、並びにベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、ベンゾ[b]チエニル基、インドリル基、イソインドリル基、1H−インダゾリル基、ベンズインダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、1,2−ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾピラニル基、1,2−ベンゾイソチアゾリル基、1H−ベンゾトリアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、シンノリニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、プリニル基、ブテリジニル基、カルバゾリル基、α−カルボリニル基、β−カルボリニル基、γ−カルボリニル基、アクリジニル基、フェノキサジニル基、フェノチアジニル基、フェナジニル基、フェノキサチイニル基、チアントレニル基、フェナトリジニル基、フェナトロリニル基、インドリジニル基、ピロロ[1,2−b]ピリダジニル基、ピラゾロ[1,5−a]ピリジル基、1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジニル基などの8ないし12員縮合多環式複素環基が挙げられる。
【0052】
R1、R2又はR3で表される「アルキル基」は、例えば、炭素数1から10のアルキル基であり、直鎖状でも分岐鎖状であってもよい。具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。好ましくは炭素数1から6のアルキル基である。
また、R5で表される有機基で例示される「アルキル基」についても、上記と同様の基が挙げられる。
【0053】
R1で表される「アリール基」は、例えば、炭素数6から12のアリール基である。具体例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。好ましくはフェニル基である。
また、R5で表される有機基で例示される「アリール基」についても、上記と同様の基が挙げられる。
【0054】
R1で表される「アルコキシ基」は、例えば、炭素数1から10のアルコキシ基であり、直鎖状でも分岐鎖状であってもよい。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、sec−ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基等が挙げられる。好ましくは炭素数1から6のアルコキシ基である。
また、R5で表される有機基で例示される「アリール基」についても、上記と同様の基が挙げられる。
【0055】
R4で表されるアミノ酸側鎖としては、例えば、水素原子(グリシンの側鎖)、メチル基(アラニンの側鎖)、イソプロピル基(バリンの側鎖)、イソブチル基(ロイシンの側鎖)、sec−ブチル基(イソロイシンの側鎖)、メチルチオエチル基(メチオニンの側鎖)、ベンジル基(フェニルアラニンの側鎖)などが挙げられる。
【0056】
R5で表される有機基は特に限定されず、例えば、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよい複素環基等の各種有機基が挙げられる。
また、R5で表される有機基で例示される「アラルキル基」は、例えば、炭素数7〜10のアラルキル基であり、具体例としては、例えばベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。
【0057】
R5で表される有機基の、「置換基を有していてもよいアルキル基」、「置換基を有していてもよいアルケニル基」、「置換基を有していてもよいアルキニル基」、「置換基を有していてもよいシクロアルキル基」、「置換基を有していてもよいアリール基」、「置換基を有していてもよいアラルキル基」、「置換基を有していてもよいアルコキシ基」、「置換基を有していてもよいアシル基」および「置換基を有していてもよい複素環基」の「置換基」としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アシル基、複素環基等から選択される1〜5個の置換基が挙げられる。
【0058】
R1としては、アルキル基ではメチル基、エチル基が好ましく、アリール基ではフェニル基が好ましく、アルコキシル基ではメトキシ基、エトキシ基が好ましい。
R2としては、水素原子が好ましい。
R3としては、メチル基、エチル基が好ましい。
【0059】
N−保護バリン(1)のアルカリ金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
【0060】
N−保護バリン(1)のアルカリ土類金属塩としては、例えば、マグネシウム塩、カルシウム塩等が挙げられる。
【0061】
N−保護バリン(1)の有機アミン塩としては、カルボキシル基を有する化合物と塩を形成できる有機アミンとの塩であれば特に限定されないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ピペリジン、ピペラジン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の有機アミンとの塩が挙げられる。
【0062】
以下、本発明のバラシクロビルの製造方法について説明する。
本発明の製造方法において原料として使用されるN−保護バリン(1)のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又は有機アミン塩(以下、単に「N−保護バリン(1)の塩」と称する)は、公知の方法(例えば、Revue Roumaine de Chimie (1970), 15, 1375−1390に記載の方法等)に従って、L−バリンを保護することによって得られる。例えば、L−バリンを塩基存在下、β−ジケトン又はβ−ケトエステルと反応させる方法等が挙げられる。塩基の使用量は、L−バリン1当量に対して、好ましくは1〜5当量、より好ましくは1〜2当量である。β−ジケトン又はβ−ケトエステルの使用量は、L−バリン1当量に対して、好ましくは1〜10当量、より好ましくは1〜5当量である。また、溶媒を使用する場合の使用量は、L−バリン1モルに対して、好ましくは0.1〜20L、より好ましくは0.2〜10Lである。
【0063】
β−ジケトン又はβ−ケトエステルとしては、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等が挙げられる。
塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸水素塩等の無機塩基;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ピペリジン、ピペラジン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の有機塩基が挙げられる。特に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
本反応において、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を調製する場合は、溶媒中で行うのが好ましい。一方、有機アミン塩を調製する場合は、溶媒を使用しないのが好ましい。溶媒を使用する場合の溶媒としては、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジクロロメタン等のハロゲン系炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族系炭化水素類、及びこれらの任意の混合溶媒が挙げられる。特に、水、メタノール、エタノール、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミドが好ましい。
【0064】
反応温度は、通常、0〜200℃、好ましくは10〜100℃である。反応時間は反応温度等によって異なるが、通常、0.1〜50時間、好ましくは0.2〜30時間である。
本反応で得られたN−保護バリン(1)の塩は、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の常法により精製することができるが、精製することなく次の反応に使用することもできる。
【0065】
本発明においては、式(2)で表されるアシクロビルと、式(1)で表されるN−保護バリンの有機アミン塩を縮合剤存在下に縮合反応させるか、または、該N−保護バリンのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩を中和し、縮合剤存在下に縮合反応させて、式(3)で表されるN−保護バラシクロビルを製造する。
上述したように、N−保護バリン(1)は一般に塩の形態で得られる。アルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩の場合、反応を進行させるために中和が必要である。有機アミン塩の場合も中和を行ってよいが、通常その必要はなく、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩に比べ、より簡便に反応を行うことができる。
【0066】
工程1
【0067】
【化17】
(式中の各記号は、上記と同義を示す。)
[0068]
N−保護バリン(1)の塩の中和は、酸または強酸と弱塩基からなる塩を用いて行うことができる。中和操作は特に制限はなく、例えば、N−保護バリン(1)の塩に、酸または強酸と弱塩基からなる塩を加えて中和し、フリーのN−保護バリン(1)とした後に、アシクロビル(2)と縮合反応する方法、N−保護バリン(1)の塩とアシクロビル(2)が存在する系中に、酸または強酸と弱塩基からなる塩を添加し、中和と縮合反応を同時に行う方法等が挙げられる。
保護基の脱離を防ぐ観点から、中和は塩基存在下に行うのが好ましい。特に、後述の酸の添加や、強酸と弱塩基からなる塩の添加に先立って、有機塩基を加えてから中和を行うことが好ましい。この場合、前工程のN−保護バリン(1)の塩の製造において、本工程に必要な量の有機塩基をあらかじめ存在させておいてもよい。有機塩基としては、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基等が挙げられ、好ましくは、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジンである。
中和に酸を用いる場合、当該酸の使用量は、N−保護バリン(1)の塩1当量に対して、好ましくは0.8〜1.2当量、より好ましくは0.9〜1.1当量である。有機塩基を加える場合、塩基の使用量は、N−保護バリン(1)の塩1当量に対して、好ましくは0.01〜1当量、より好ましくは0.02〜0.5当量である。溶媒の使用量は、N−保護バリン(1)の塩1モルに対して、好ましくは0.1〜20L、より好ましくは0.2〜10Lである。
[0069]
中和に使用される酸としては、例えば、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸類;メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類;塩化水素、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、炭酸等の鉱酸類等が挙げられ、好ましくは、トリフルオロ酢酸、塩化水素、塩酸である。
【0070】
中和に強酸と弱塩基からなる塩を用いる場合、当該塩の使用量は、N−保護バリン(1)の塩1当量に対して、好ましくは0.8〜10当量、より好ましくは0.9〜2当量である。有機塩基を加える場合、塩基の使用量は、N−保護バリン(1)の塩1当量に対して、好ましくは0.8〜10当量、より好ましくは0.9〜2当量である。溶媒の使用量は、N−保護バリン(1)の塩1モルに対して、好ましくは0.1〜20L、より好ましくは0.2〜10Lである。
中和に使用される当該塩としては、例えば、ピリミジン塩酸塩、トリエチルアミン塩酸塩、イミダゾール塩酸塩、ピリジニウムパラトルエンスルホン酸等が挙げられ、好ましくは、ピリミジン塩酸塩である。
溶媒としては、特に限定されないが、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジクロロメタン等のハロゲン系炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族系炭化水素類、及びこれらの任意の混合溶媒等が挙げられる。
【0071】
中和の温度は特に限定されず、通常、−30〜100℃、好ましくは−10〜50℃である。中和によりN−保護バリン(1)を一旦フリー体とする場合の中和時間は特に限定されず、通常、0.1〜30時間、好ましくは0.1〜20時間である。中和によりN−保護バリン(1)を一旦フリー体とする場合、N−保護バリン(1)は、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の常法により精製することができるが、通常は精製することなく次の反応に使用することができる。
【0072】
本発明の縮合反応において、N−保護バリン(1)(N−保護バリン(1)の塩)の使用量は、アシクロビル(2)1当量に対して、0.8〜3当量、より好ましくは1〜2当量である。縮合剤の使用量は、N−保護バリン(1)1当量に対して、1〜3当量、より好ましくは1.2〜2当量である。溶媒の使用量は、アシクロビル(2)1モルに対して、好ましくは0.1〜20L、より好ましくは0.5〜10Lである。
【0073】
縮合剤としては、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、3−(3−ジメチルアミノプロピル)−1−エチルカルボジイミド塩酸塩、N,N−ジイソプロピルカルボジイミド等が挙げられ、好ましくは、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドである。
溶媒としては、ジクロロメタン等のハロゲン系炭化水素類;酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;トルエン等の芳香族系炭化水素類;アセチルアセトン等のβ―ジケトン類、及びこれら任意の混合溶媒が挙げられる。特に、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、トルエンが好ましい。
【0074】
縮合反応は、触媒となる塩基共存下に行ってもよい。好ましい塩基としては、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、4−ジメチルアミノピリジン等の有機塩基が挙げられる。塩基を使用する場合、その使用量はアシクロビル(2)1当量に対して、0.01〜1当量、より好ましくは0.05〜0.3当量である。
【0075】
反応時間は、通常、1〜100時間、好ましくは5〜50時間である。反応温度は、通常、0〜50℃、好ましくは0〜30℃である。反応温度が低すぎると反応速度が低下する傾向にある。一方、反応温度が高すぎるとラセミ化率が増大する傾向にある。
【0076】
なお、アシクロビル(2)は融点250℃の白色〜微黄色結晶であり、通常は2/3水和物として存在する。よって、本工程で使用されるアシクロビル(2)には、このような水和物も包含される。アシクロビル(2)の晶析は、例えばアルカリ性水溶液にアシクロビル(2)を溶解したアシクロビル(2)の溶液を酸で中和晶析することにより行うことができる(例えば、特開平5−78329号公報参照)。
【0077】
アシクロビル(2)は、公知の方法で製造することができる(例えば、特開平5−78329号公報等参照)。何れの方法によりアシクロビル(2)を製造するかにかかわらず、工業的規模で生産を行う場合、反応溶液からアシクロビル(2)を結晶として取得する晶析工程においては、一定量の結晶の確保、母液と結晶の分離性確保、結晶純度の低下防止、作業性などの観点から、通常平均粒径が150μm以上の結晶として取得される。結晶を粉砕等することによりアシクロビル(2)を微細化してから使用してもよい。
【0078】
本反応で得られたN−保護バラシクロビル(3)は、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の常法により精製することができるが、精製することなく次の反応に使用することもできる。なお、N−保護バラシクロビルのD体を晶析やシリカゲルカラムクロマトグラフィーなどの精製手段で除去することは困難であるが、本発明においては、縮合工程においてD体の比率を低減化することが可能であるため、D体の比率が低減化されたN−保護バラシクロビル(3)を得ることができる。
[0079]
N−保護バラシクロビル(3)を酸で脱保護することにより、バラシクロビル(4)又はその塩を得ることができる。
[0080]
工程2
[0081]
[化18]
(式中の各記号は、上記と同義を示す。)
[0082]
酸の使用量は、N−保護バラシクロビル(3)1当量に対して、好ましくは1〜5当量、より好ましくは1〜2当量である。溶媒の使用量は、N−保護バラシクロビル(3)1モルに対して、好ましくは0.1〜20L、より好ましくは0.2〜10Lである。
[0083]
酸としては、例えば、塩化水素、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸等の鉱酸類;酢酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸類等が挙げられ、好ましくは、塩化水素、塩酸である。
溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;水;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン等の芳香族系炭化水素類;酢酸エチル等のエステル類等、及びこれらの任意の混合溶媒が挙げられ、好ましくは、メタノール、エタノール、アセトン、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、水である。
[0084]
反応温度は、通常、−10〜80℃、好ましくは0〜50℃である。反応時間は反応温度等によって異なるが、通常、0.1〜10時間、好ましくは0.2〜5時間である。
[0085]
バラシクロビル(4)は薬理上許容される塩の形態としてもよい。塩としては酸付加塩が挙げられ、このような塩を与える酸としては、例えば、塩酸、リン酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸などが挙げられる。これらの中では、塩酸が好ましい。
N−保護バラシクロビル(3)の脱保護に塩酸を使用するとN−保護バラシクロビル(3)から1工程で塩酸バラシクロビルが得られるので、好ましい。
【0086】
塩酸バラシクロビルが水和物で得られた場合、公知の方法に従って無水物とすることもできる(米国特許第6,107,302号明細書参照)。
【0087】
上記製造方法により得られる塩酸バラシクロビルの純度は98%以上であり、更には99%以上にまで向上させることができる。また、バラシクロビルの光学異性体であるD体の比率(D体/L体+D体)は1.0%以下、更には0.3%以下、更には0.2%以下にまで低減させることができる。このように、本発明によれば、化学純度及び光学純度の高い塩酸バラシクロビルを得ることができ、本発明により得られる塩酸バラシクロビルは医薬品原末(Active Pharmaceutical Ingredients)として高い価値を有するものである。
【0088】
バラシクロビルの純度は以下の条件で測定することができる。
カラム:Adsorbosphere 5μm、φ4.6mm×250mm(Alltech製)
移動相A:25mMギ酸アンモニウム、pH3.5
移動相B:アセトニトリル:50mM酢酸アンモニウム、pH5.5=1:1
グラジェント条件:(1)〜(3)の3段階
(1)100%移動相Aから90%移動相A+10%移動相B、30分(直線)
(2)90%移動相A+10%移動相Bから100%移動相B、5分(直線)
・ 100%移動相B、10分
検出:UV、254nm
流速:1.0ml/min
カラム温度:25℃
【0089】
バラシクロビルのD体比率は以下の条件で測定することができる。
カラム:Crown Pak CR(+)(ダイセル製)
溶離液:過塩素酸水溶液(pH1.5)/メタノール=98/2(容量比)
検出:UV、254nm
流速:0.8ml/min
カラム温度:20℃
バラシクロビルは10.3分、バラシクロビルの光学異性体は7.3分に検出される。
【0090】
バラシクロビルの水分含量はカールフィッシャー水分計により測定することができる。サンプル量を100mgとし、2〜3回の平均値を分析値とすることができる。
【0091】
Z−バラシクロビルの純度は以下の条件で測定することができる。
カラム:Inertsil ODS−2、φ4.6mm×250mm(ジーエルサイエンス(株)製)
溶離液:アセトニトリル:水:60%過塩素酸=350:650:0.1(容量比)
波長 :210nm
流量 :0.8ml/min
カラム温度:25℃
【0092】
Z−バラシクロビルのD体比率は以下の条件で測定することができる。
カラム:Chiralcel OD−R、φ4.6mm×250mm(ダイセル化学工業(株)製)
溶離液:アセトニトリル:水=300:700(容量比)
波長 :254nm
流量 :0.5ml/min
カラム温度:25℃
【0093】
なお、上記N−保護バリン(1)の例で説明したように、N−保護バリン(1)等のアミノ基が式(7):
【0094】
【化19】
【0095】
(式中、R1はアルキル基、アリール基又はアルコキシル基を示し、R2は水素原子又はアルキル基を示し、R3はアルキル基を示す。)
で表される保護基で保護されたN−保護アミノ酸の塩のカルボキシル基と、アシクロビル(2)等のアルコール化合物のヒドロキシル基とを、縮合剤存在下に縮合反応させ、N−保護アミノ酸エステル化合物を製造する場合に、該N−保護アミノ酸がアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩であると、反応を進行させるために中和が必要となる。しかしながら、該N−保護アミノ酸が有機アミン塩の場合は、中和を行わなくとも、縮合反応が進行し、より簡便にエステル結合を形成させることができる。
【0096】
すなわち、アミノ基が式(7)で表される保護基で保護されたN−保護アミノ酸の有機アミン塩とアルコールを縮合剤存在下に縮合反応させることにより、N−保護アミノ酸の有機アミン塩のカルボキシル基とアルコール化合物のヒドロキシル基によりエステル結合を形成させ、アミノ基が式(7)で表される保護基で保護されたN−保護アミノ酸エステル化合物を製造することができる。
【0097】
得られた、「アミノ基が式(7)で表される保護基で保護されたN−保護アミノ酸エステル化合物」の該保護基は、上述のように酸で脱保護することにより、アミノ酸エステル化合物又はその塩を製造することができる。
縮合反応及び脱保護は上記記載の方法に準じて行うことができる。
【0098】
N−保護アミノ酸のアミノ酸としては、カルボキシル基とアミノ基を有する化合物であれば特に限定されず、α−アミノ酸、β−アミノ酸、γ−アミノ酸のD体、L体、ラセミ体等、各種のアミノ酸を用いることができる。リジン等、アミノ酸の側鎖がアミノ基を有するアミノ酸は、式(7)で表される保護基の他、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等の公知の保護基で該アミノ基が保護されたものを使用すればよい。また、グルタミン酸等、側鎖がカルボキシル基を有するアミノ酸において、該カルボキシル基を反応に関与させる必要がない場合も同様に、メチル基、エチル基等の公知の保護基で該カルボキシル基が保護されたものを使用すればよい。また、アルコール化合物も、ヒドロキシル基を有する化合物であれば特に限定されない。アルコール化合物がヒドロキシル基を複数有する場合、またはアミノ酸がヒドロキシル基を有する場合、反応に関与させる必要がないヒドロキシル基はベンジル基、メトキシメチル基、エトキシエチル基等の公知の保護基で保護して使用すればよい。アルコール化合物がアミノ基、カルボキシル基を有する場合も上記と同様に保護して使用すればよい。
【0099】
α−アミノ酸の場合を例にとり下式に示す。
【0100】
【化20】
【0101】
(式中、
R1は、アルキル基、アリール基又はアルコキシル基を示し、
R2は、水素原子又はアルキル基を示し、
R3は、アルキル基を示し、
R4は、アミノ酸側鎖を示し、
R5は、有機基を示す。)
【0102】
以下、本発明の比較例および実施例について更に詳細な説明をするが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0103】
バラシクロビルの合成
L−バリン8.9g(76mmol)をメタノール44mlに懸濁させ、アセチルアセトン9.1g(91mmol)及び水酸化ナトリウム3.4g(83mmol)を加え、60℃で3時間攪拌し、L−バリンの消失をニンヒドリンにより確認した。
溶媒を留去し、トルエンを用いた共沸脱水を行い、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と称する)に溶媒置換を行った。得られたDMF溶液を10℃に冷却し、4−ジメチルアミノピリジン0.8g(6.3mmol)、続いてトリフルオロ酢酸8.7g(76mmol)を加えた。
この溶液を5℃に冷却し、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(以下、「DCC」と称する)のDMF溶液17.4g(60質量%溶液、DCC51mmol)、続いて9−[(2−ヒドロキシエトキシ)メチル]グアニン(アシクロビル)の2/3水和物(結晶粉砕品、平均粒度30μm)15g(63mmol)を加えた。さらに、DCCのDMF溶液17.4g(60質量%溶液、DCC51mmol)を20時間掛けて滴下し、6時間攪拌を継続した。
この溶液に水1.1gを加え40℃で4時間攪拌、25℃に冷却した後に析出したジシクロヘキシルウレアを濾過により除去した。
ジシクロヘキシルウレアを除去した濾過液に水、続いて35%塩酸を1.2倍モル(対アシクロビル)加えた。この溶液を分析すると2−[(2−アミノ−1,6−ジヒドロ−6−オキソ−9H−プリン−9−イル)メトキシ]エチル L−バリネート(バラシクロビル)が57mmol(収率90%、対アシクロビル)含まれていた。また、この溶液中に含まれているバラシクロビルのD体比率は0.3%(L体:D体=99.7:0.3)(ピーク面積比)であった。
【実施例2】
【0104】
塩酸バラシクロビルの調製
L−バリン9.6g(82mmol)をメタノール48mlに懸濁させ、アセチルアセトン10g(99mmol)及び水酸化ナトリウム3.7g(86mmol)を加え、60℃で2.5時間攪拌した。
40℃に冷却後、溶媒を留去し、トルエンを用いた共沸脱水を行った。次に、DMFに溶媒置換を行った。得られたDMF溶液を10℃に冷却し、4−ジメチルアミノピリジン0.8g(6.3mmol)、続いてトリフルオロ酢酸9.7g(84mmol)を加えた。
この溶液を5℃に冷却し、60%DCCのDMF溶液17.5g(51mmol)、続いてアシクロビルの2/3水和物(結晶粉砕品、平均粒度30μm)15g(63mmol)を加えた。さらに、60%DCCのDMF溶液17.4g(51mmol)を20時間掛けて滴下し、8時間攪拌を継続した。
この溶液に水1.1gを加え40℃で4時間攪拌、25℃に冷却した後、析出したジシクロヘキシルウレアを濾過により除去した。
ジシクロヘキシルウレアを除去した濾過液を濃縮し、得られた残渣を水600mlの中に滴下し懸濁液とした。この懸濁液を20℃で30分攪拌後、濾過し固形物71.4gを得た。さらに、得られた固形物69.2gに水54mlを加え懸濁液とし、30℃で35%塩酸を11g(104mol)加えた。この溶液を減圧濃縮し、得られた濃縮液にアセトン128gを30℃で2時間かけ滴下した。5℃まで冷却し、濾過、40℃にて減圧乾燥することで、バラシクロビル塩酸塩を白色結晶として18.2g、HPLC純度98.1%、収率81%で得た。得られたバラシクロビルは、D体比率が0.1%(L体:D体=99.9:0.1)(ピーク面積比)、水分が4.8%であった。
【実施例3】
【0105】
2−[(2−アミノ−1,6−ジヒドロ−6−オキソ−9H−プリン−9−イル)メトキシ]エチル N−(1−アセチルプロペン−2−イル)−L−バリネートの調製
L−バリン9.6g(82mmol)をメタノール48mlに懸濁させ、アセチルアセトン10g(99mmol)及び水酸化ナトリウム3.7g(86mmol)を加え、60℃で2時間攪拌した。
溶媒を留去し、トルエンを用いた共沸脱水を行い、DMFに溶媒置換を行った。DMF溶液を10℃に冷却し、4−ジメチルアミノピリジン0.8g(6.3mmol)、続いてトリフルオロ酢酸9.8g(84mmol)を加えた。
この溶液を5℃に冷却し、60%DCCのDMF溶液17.4g(51mmol)、続いてアシクロビルの2/3水和物(結晶粉砕品、平均粒度30μm)15g(63mmol)を加えた。さらに、60%DCCのDMF溶液17.4g(51mmol)を20時間掛けて滴下し、8時間攪拌を継続した。
この溶液に水1.1gを加え40℃で4時間攪拌、25℃に冷却した後、析出したジシクロヘキシルウレアを濾過により除去した。
ジシクロヘキシルウレアを除去した濾過液を濃縮し、得られた残渣を水600mlの中に滴下し懸濁液とした。この懸濁液を20℃で30分攪拌後、濾過し、濾過(固形)物を139g得た。
この濾過物10gに水とメタノールを加え、60℃に加熱し溶解した。溶解液をゆっくり10℃まで冷却し、析出した結晶を濾過し、60℃にて減圧乾燥することで、2−[(2−アミノ−1,6−ジヒドロ−6−オキソ−9H−プリン−9−イル)メトキシ]エチル N−(1−アセチルプロペン−2−イル)−L−バリネートを結晶として1.4g得た。一部を採取し、塩酸を作用させバラシクロビル塩酸塩に誘導することで、D体比率が0.1%(ピーク面積比)であることを確認した。
1H−NMR(400MHz,d−DMSO):δ=0.86(6H,m);1.8(3H,s);1.9(3H,s);2.0(1H,m);3.7(2H,m);4.1(1H,m);4.2(2H,m);5.0(1H,s);5.4(2H,s);6.5(1H,s);7.8(1H,s);10.6(1H,s):11.0(1H,d,J=9.3Hz)
ESI−MS m/z:407(M+H+)
【実施例4】
【0106】
N−保護アミンのトリエチルアミン塩を用いたバラシクロビル塩酸塩の調製(1)
L−バリン31.1g(266mmol)にアセチルアセトン29.3g(292mmol)及びトリエチルアミン40.7g(398mmol)を加え、45℃で41時間攪拌した。
その後、減圧下でアセチルアセトン及びトリエチルアミンを留去し、さらにDMFを加えて減圧することで脱水を行った。得られたDMF溶液に、4−ジメチルアミノピリジン1.8g(14.8mmol)を加えた。
この溶液を5℃に冷却し、60%DCCのDMF溶液40.6g(118mmol)、続いてアシクロビルの2/3水和物(結晶粉砕品、平均粒度30μm)35g(148mmol)を加えた。さらに、60%DCCのDMF溶液60.9g(177mmol)を20時間掛けて滴下し、2時間攪拌を継続した(アシクロビルの消費率は98%)。
この溶液に水2.7gを加え40℃で3時間攪拌し、25℃に冷却した後にDMFを加え、析出しているジシクロヘキシルウレアを分離により除去した。
ジシクロヘキシルウレアを除去した濾過液を濃縮し、得られた残渣に60℃で2−プロパノール160gを滴下し懸濁液とした。この懸濁液にさらに2−プロパノール231gを加え、10℃まで冷却し結晶を分離した。さらに、得られた結晶にDMF167gを加え70℃で溶解し、2−プロパノール167gを加えた。10℃まで冷却後、結晶を分離した。得られた結晶に水136g、アセトン136gを加え懸濁液とし、35%塩酸を12.8g(123mol)加え30℃で4時間撹拌した。この溶液を減圧濃縮し、得られた濃縮液にアセトン630gを50℃で滴下した。この懸濁液を1時間熟成後、結晶を分離し乾燥することで、バラシクロビル塩酸塩の粗結晶を32.9g得た。この粗結晶30.0gに80wt%のアセトン水を加え懸濁液とし、10℃で撹拌した。5℃に冷却し結晶を分離、乾燥することで、バラシクロビル塩酸塩を白色結晶として25.5g得た。
得られたバラシクロビル塩酸塩は、HPLC純度が99.4%、D体比率が0.1%以下(ピーク面積比)、水分が6.4%であった。
【実施例5】
【0107】
N−保護アミンのトリエチルアミン塩を用いたバラシクロビル塩酸塩の調製(2)
L−バリン53.3g(455mmol)にアセチルアセトン49.2g(492mmol)及びトリエチルアミン55.3g(546mmol)を加え、50℃で24時間攪拌した。
その後、減圧下でアセチルアセトン及びトリエチルアミンを留去し、さらにDMFを加えて減圧することで脱水を行った。得られたDMF溶液に、4−ジメチルアミノピリジン3.1g(25.3mmol)を加えた。
この溶液を5℃に冷却し、60%DCCのDMF溶液69.6g(202mmol)、続いてアシクロビルの2/3水和物(結晶粉砕品、平均粒度30μm)60g(253mmol)を加えた。さらに、60%DCCのDMF溶液104.4g(304mmol)を20時間掛けて滴下し、2時間攪拌を継続した(アシクロビルの消費率は98%)。
この溶液に水4.6gを加え40℃で3時間攪拌し、25℃に冷却した後、析出しているジシクロヘキシルウレアを分離により除去した。
ジシクロヘキシルウレアを除去した濾過液を濃縮し、得られた残渣に60℃でアセトン189gを加え、1時間撹拌後、さらにアセトン279gを滴下した。10℃まで冷却後、結晶を分離し、2−[(2−アミノ−1,6−ジヒドロ−6−オキソ−9H−プリン−9−イル)メトキシ]エチル N−(1−アセチルプロペン−2−イル)−L−バリネートを粗結晶として63.7g得た。得られた粗結晶20gに水32.4g、アセトン68.8gを加え懸濁液とし、さらに35%塩酸4.9gを加え、50℃にて1時間撹拌した。ろ過により不溶物を除去した後、アセトン141gを加え、50℃にて撹拌した。40℃に冷却後、結晶を分離、乾燥することでバラシクロビル塩酸塩を14.5g得た。
得られたバラシクロビル塩酸塩は、HPLC純度が99.2%、D体比率が0.2%(ピーク面積比)、水分が0.5%であった。
【実施例6】
【0108】
N−保護アミンのトリエチルアミン塩を用いたバラシクロビル塩酸塩の調製(3)
L−バリン54.2g(463mmol)にアセチルアセトン50.1g(500mmol)及びトリエチルアミン56.2g(55mmol)を加え、60℃で17時間攪拌した。
その後、減圧下でアセチルアセトン及びトリエチルアミンを留去し、さらにDMFを加えて減圧することで脱水を行った。得られたDMF溶液383gのうちの119gを次の工程に使用した。該DMF溶液119gに4−ジメチルアミノピリジン0.98g(8.0mmol)及びDMF55mlを加えた。
この溶液を5℃に冷却し、60%DCCのDMF溶液22.1g(64.1mmol)、続いてアシクロビルの2/3水和物(未粉砕品、平均粒度170μm)22g(80.1mmol)を加えた。さらに、60%DCCのDMF溶液33.1g(96.1mmol)を20時間掛けて滴下し、2時間攪拌を継続した(アシクロビルの消費率は99%)。
この溶液に水1.4gを加え40℃で3時間攪拌し、25℃に冷却した後、析出しているジシクロヘキシルウレアを分離により除去した。
ジシクロヘキシルウレアを除去した濾過液を濃縮し、得られた残渣に60℃でアセトン65gを加え、1時間撹拌後、さらにアセトン96gを滴下した。10℃まで冷却後、結晶を分離し、2−[(2−アミノ−1,6−ジヒドロ−6−オキソ−9H−プリン−9−イル)メトキシ]エチル N−(1−アセチルプロペン−2−イル)−L−バリネートを粗結晶として20.9g得た。得られた粗結晶10gに水17.8g、アセトン36.7gを加え懸濁液とし、さらに35%塩酸2.6gを加え、50℃にて1時間撹拌した。ろ過により不溶物を除去した後、アセトン75.2gを加え、50℃にて撹拌した。40℃に冷却後、結晶を分離、乾燥することでバラシクロビル塩酸塩を7.9g得た。
得られたバラシクロビル塩酸塩は、HPLC純度が98.9%、D体比率が0.1%以下(ピーク面積比)、水分が2.2%であった。
実施例7
[0109]
N−保護アミンのトリエチルアミン塩を用いたバラシクロビル塩酸塩の調製(4)
L−バリン40.0g(342mmol)にアセチルアセトン42.8g(369mmol)及びトリエチルアミン41.5g(410mmol)を加え、50℃で72時間攪拌した。
その後、減圧下でアセチルアセトン及びトリエチルアミンを留去し、さらにDMFを加えて減圧することで脱水を行った。得られたDMF溶液368gのうちの123gを次の工程に使用した。該DMF溶液123gに4−ジメチルアミノピリジン0.77g(6.3mmol)、DMF8mlを加えた。
L−バリン40.0g(342mmol)にアセチルアセトン42.8g(369mmol)及びトリエチルアミン41.5g(410mmol)を加え、50℃で72時間攪拌した。
その後、減圧下でアセチルアセトン及びトリエチルアミンを留去し、さらにDMFを加えて減圧することで脱水を行った。得られたDMF溶液368gのうちの123gを次の工程に使用した。該DMF溶液に123gに4−ジメチルアミノピリジン0.77g(6.3mmol)、DMF8mlを加えた。
この溶液を5℃に冷却し、アシクロビルの無水物14.2g(63.2mmol)を加え、60%DCCのDMF溶液17.4g(50.6mmol)を加えた。さらに、60%DCCのDMF溶液17.4g(50.6mmol)を21時間掛けて滴下し、4.5時間攪拌を継続した(アシクロビルの消費率は95%)。
この溶液に水1.1gを加え45℃で16時間攪拌し、析出しているジシクロヘキシルウレアを分離により除去した。
ジシクロヘキシルウレアを除去した濾過液を濃縮し、得られた残渣に60℃でアセトン62gを加え、1時間撹拌後、さらにアセトン100gを滴下した。10℃まで冷却後、結晶を分離し、2−[(2−アミノ−1,6−ジヒドロ−6−オキソ−9H−プリン−9−イル)メトキシ]エチル N−(1−アセチルプロペン−2−イル)−L−バリネートを粗結晶として22.2g得た。得られた粗結晶に塩酸を作用させバラシクロビル塩酸塩を誘導し、HPLCにて分析したところ、D体比率が0.1%(ピーク面積比)であった。
【実施例8】
【0110】
N−保護アミンのトリエチルアミン塩を用いたバラシクロビル塩酸塩の調製(5)
L−バリン26.7g(228mmol)にアセト酢酸メチル28.6g(246mmol)及びトリエチルアミン27.6g(273mmol)を加え、60℃で24時間攪拌した。
その後、減圧下でアセト酢酸メチル及びトリエチルアミンを留去し、さらにDMFを加えて減圧することで脱水を行った。得られたDMF溶液に、4−ジメチルアミノピリジン1.1g(8.8mmol)を加えた。
この溶液を5℃に冷却し、アシクロビルの2/3水和物(結晶粉砕品、平均粒度30μm)21g(88.5mmol)、続いて60%DCCのDMF溶液24.4g(70.8mmol)を加えた。さらに、60%DCCのDMF溶液36.5g(106mmol)を21時間掛けて滴下し、20時間攪拌を継続した(アシクロビルの消費率は89%)。
この溶液に水1.6gを加え45℃で3時間攪拌、25℃に冷却した後、析出しているジシクロヘキシルウレアを分離により除去した。
ジシクロヘキシルウレアを除去した濾過液を濃縮し、得られた残渣に60℃でアセトン70gを加え、1時間撹拌後、さらにアセトン139gを滴下した。10℃まで冷却後、結晶を分離し、2−[(2−アミノ−1,6−ジヒドロ−6−オキソ−9H−プリン−9−イル)メトキシ]エチル N−(1−メトキシカルボニルプロペン−2−イル)−L−バリネートを粗結晶として27.2g得た。得られた粗結晶に塩酸を加え、バラシクロビル塩酸塩に誘導後、HPLCにて分析したところ、D体比率が0.1%(ピーク面積比)であった。
【比較例1】
【0111】
L−バリン13.3g(114mmol)をメタノール67mlに懸濁させ、アセチルアセトン13.8g(137mmol)及び水酸化ナトリウム5.2g(121mmol)を加え、70℃で5時間攪拌した。
50℃に冷却後、溶媒を留去し、トルエンを用いた共沸脱水を行った。次に、DMFに溶媒置換を行った。得られたDMF溶液に、4−ジメチルアミノピリジン0.8g(6.3mmol)を加えた。
この溶液を5℃に冷却し、60%DCCのDMF溶液17.4g(51mmol)、続いてアシクロビルの2/3水和物(結晶粉砕品、平均粒度30μm)15g(63mmol)を加えた。さらに、60%DCCのDMF溶液26.1g(76mmol)を18時間掛けて滴下し、3時間攪拌を継続した。
滴下終了後及び3時間撹拌後のアシクロビルの消費量をHPLCにて確認したところ、アシクロビルは全く消費されていなかった。
【比較例2】
【0112】
DMF104mlにBoc−L−バリン33.6g(155mmol)を加え4℃に冷却した。
さらに4−ジメチルアミノピリジン1.6g(13mmol)、60%DCCのDMF溶液35.5g(103mmol)を加え6℃に冷却後、アシクロビルの2/3水和物(結晶粉砕品、平均粒度30μm)31g(129mmol)を加えた。さらに60%DCCのDMF溶液を18時間掛けて滴下し、6時間撹拌を継続した(アシクロビルの消費率は99%)。水2.3gを加え40℃で4時間撹拌後、析出しているジシクロヘキシルウレアを分離により除去した。
得られたBoc−バラシクロビルを含むろ過液に塩酸を作用させ、Boc基を脱保護することでバラシクロビル塩酸塩に誘導し、高速液体クロマトグラフィーによりD体比率を算出したところ、11.3%(L体:D体=88.7:11.3)(ピーク面積比)であった。
【比較例3】
【0113】
5℃に冷却したDMF124gにZ−L−バリン(38.9g,155mmol)と4−ジメチルアミノピリジン(1.58g,12.9mmol)を溶解した。平均粒径が171μmのアシクロビル(2/3水和物 30.6g,129mmol)をこの溶液に加えて懸濁させ、DCC(4.44g,12.9mmol)を含有するDMF溶液(60質量%)を添加した。さらに、DCC(66.5g,194mmol)を含有するDMF溶液(60質量%)を約30時間かけてゆっくりと添加した。反応液に水(2.32g,129mmol)を加えてDCCを分解し、析出した白色固体をろ過により除去した。ろ過液に水318gを添加して2時間攪拌し、20℃まで冷却晶析した。ろ過して得られた結晶に205gのメタノールを添加してスラリー洗浄して、ろ過して得られた結晶を85℃減圧乾燥してZ−バラシクロビル化合物51.5gを得た。収率は88%であった。高速液体クロマトグラフィーにより純度及びD体比率を算出したところ、純度は97.4%であり、D体比率は1.7%(L体:D体=98.3:1.7)(ピーク面積比)であった。
【比較例4】
【0114】
比較例3で得られたZ−バラシクロビル20.0gを変性アルコール水(2.4:1,容量比)に添加し、加熱還流して完全溶解した。40℃に冷却して5%パラジウム炭素(水分53%)4.34gを添加した。99%ギ酸3.97gを1時間かけて滴下した。1時間攪拌した後、更に99%ギ酸2.48gを添加した。ろ過して得られたろ過液に塩酸4.43gを滴下し、20℃まで冷却した。溶液を30分間攪拌した後、溶剤を減圧留去し、残渣にアセトン116gを1時間かけて滴下した。溶液を1時間攪拌後ろ過し、得られた結晶をアセトン39.0gに添加し、1時間攪拌後ろ過した。得られた結晶を60℃減圧乾燥し13.2gを得た。その内の9.96gを変性アルコール2.7gに加え、60℃で一晩攪拌後、溶媒を留去して塩酸バラシクロビル化合物の結晶9.95gを得た。収率は84%であった。高速液体クロマトグラフィーにより純度及びD体比率を算出したところ、純度は99.6%であり、D体比率は1.7%(L体:D体=98.3:1.7)(ピーク面積比)であった。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明によれば、光学異性体の含有比率の低減化及び化学的高純度化を同時に実現できるバラシクロビルの効率的な製造方法が提供可能になる。また本発明によれば、アミノ酸エステル化合物を効率的な製造方法が提供可能になる。
Claims (10)
- 式(2):
式(1):
で表されるN−保護バリンの有機アミン塩を、又は該N−保護バリンのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩を中和し、縮合剤存在下に縮合反応させることを特徴とする、
式(3):
で表されるN−保護バラシクロビルの製造方法。 - 請求項1記載の製造方法に従って、式(3)で表されるN−保護バラシクロビルを得た後、該N−保護バラシクロビルを酸で脱保護することを特徴とする、式(4):
- 請求項1記載の製造方法に従って、式(3)で表されるN−保護バラシクロビルを得た後、該N−保護バラシクロビルを塩酸で脱保護することを特徴とする、式(5):
- 縮合剤が、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
- 中和が酸又は強酸と弱塩基の塩によって行われる、請求項1乃至4記載のいずれか一項に記載の方法。
- 中和が、塩基存在下に行われる、請求項1乃至5記載のいずれか一項に記載の方法。
- 式(2):
式(1):
で表されるN−保護バリンの有機アミン塩とを、縮合剤存在下に縮合反応させることを特徴とする、式(3):
で表されるN−保護バラシクロビルの製造方法。 - 請求項7記載の製造方法に従って、式(3)で表されるN−保護バラシクロビルを得た後、該N−保護バラシクロビルを酸で脱保護することを特徴とする、式(4):
- 請求項7記載の製造方法に従って、式(3)で表されるN−保護バラシクロビルを得た後、該N−保護バラシクロビルを塩酸で脱保護することを特徴とする、式(5):
- 縮合剤が、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドである、請求項7乃至9のいずれか一項に記載の方法。
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JPN7009001653; BALOG, A. et al.: 'Peptides. XV The use of beta-dicarbonyl N-protected asparagine and glutamine in peptide synthesis' Revue Roumaine de Chimie Vol.19, No.4, 1974, 689-699 * |
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