JP5152026B2 - エポキシ樹脂組成物 - Google Patents
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Description
例えば特許文献1および2には、優れた性能を有する接着剤としてエポキシ樹脂組成物が記載されている。特許文献1には、ブチラール樹脂とエポキシ樹脂を含有する樹脂組成物にフェノールノボラック樹脂オリゴマーおよびジシアンジアミドを配合してなることを特徴とする積層板金属箔接着用の接着剤組成物が記載されている。また、特許文献2には、ブチラール樹脂、エポキシ樹脂等を特定比率で含む接着剤組成物が記載されている。
(1)エポキシ樹脂(A)、コアシェル型粒子(B)およびアセタール樹脂(C)を含み、
エポキシ樹脂(A)100質量部に対して、アセタール樹脂(C)を0.1〜1質量部を含み、
エポキシ樹脂(A)が、ウレタン変性エポキシ樹脂およびゴム変性エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物。
(2)エポキシ樹脂(A)100質量部に対して、コアシェル型粒子(B)5〜100質量部を含む、上記(1)に記載のエポキシ樹脂組成物。
(3)アセタール樹脂(C)の分子量(Mw)が10,000〜150,000であり、アセタール化度が60mol%以上である、上記(1)または(2)に記載のエポキシ樹脂組成物。
(4)コアシェル型粒子(B)における最外層のガラス転移点が+50℃以上であり、内層のガラス転移点が−30℃以下である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
(5)コアシェル型粒子(B)の平均1次粒子径が50〜500nmである、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
(6)構造用接着剤である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
本発明は、エポキシ樹脂(A)、コアシェル型粒子(B)およびアセタール樹脂(C)を主成分として含むエポキシ樹脂組成物である。
このようなエポキシ樹脂組成物を、以下では「本発明の組成物」ともいう。
本発明の組成物が含有するエポキシ樹脂(A)は、エポキシ基を2個以上有する化合物であれば特に制限されない。例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型のようなビスフェニル基を有するエポキシ化合物、ポリアルキレングリコール型、アルキレングリコール型のエポキシ化合物、ナフタレン環を有するエポキシ化合物、フルオレン基を有するエポキシ化合物等の二官能型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型のような多官能型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;ダイマー酸のような合成脂肪酸のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;N,N,N′,N′−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)、テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、N,N−ジグリシジルアニリンのようなグリシジルアミノ基を有する芳香族エポキシ樹脂;トリシクロデカン環を有するエポキシ化合物(例えば、ジシクロペンタジエンとm−クレゾールのようなクレゾール類またはフェノール類を重合させた後、エピクロルヒドリンを反応させる製造方法によって得られるエポキシ化合物)等が挙げられる。また、例えば、東レ・ファインケミカル社製のフレップ10のようなエポキシ樹脂主鎖に硫黄原子を有するエポキシ樹脂が挙げられる。
ゴム変性エポキシ樹脂は、エポキシ当量が200〜350g/eqであるのが好ましい。また、ゴム変性エポキシ樹脂の量は、エポキシ樹脂(A)中、0〜100質量%であるのが好ましく、0〜60質量%であるのがより好ましい。本発明の組成物の柔軟性がより高まり、接着剤としての強度もより十分になるからである。
なお、本発明において、ゴム変性エポキシ樹脂のエポキシ当量およびその添加量は、製造時に用いる過剰のエポキシ樹脂を含むゴム変性エポキシ樹脂におけるエポキシ当量および添加量とする。
なお、本発明において、ウレタン変性エポキシ樹脂のエポキシ当量およびその添加量は、製造時に用いる過剰のエポキシ樹脂を含むウレタン変性エポキシ樹脂におけるエポキシ当量および添加量とする。
本発明の組成物が含有するコアシェル型粒子(B)は、コア層およびシェル層の2層を少なくとも有するものである。
コアシェル型粒子(B)は、低温から高温における接着性能および柔軟性により優れるという観点から、2層および/または3層であるのが好ましい。
コアシェル型粒子(B)が2層構造の場合、シェル層に隣接する内層はコア層となる。そしてこのコア層のガラス転移温度が−30℃以下であるのが好ましい。
コアシェル型粒子(B)が3層構造の場合、コアシェル型粒子(B)は、シェル層に隣接する内層として中間層を有し、中間層のガラス転移温度が−30℃以下であるのが好ましい。3層構造のコアシェル型粒子(B)は、中心にガラス転移温度が50℃以上のコア層を有し、コア層を覆うようにガラス転移温度が−30℃以下の中間層を有していることが好ましく、さらに中間層を覆うようにガラス転移温度が50℃以上の最外殻にシェル層を有することが好ましい。
まずシェル層について説明する。
シェル層を形成する物質は特に限定されないが、ガラス転移点が50℃以上の物質であることが好ましく、50〜200℃であることがより好ましく、80〜200℃であることがさらに好ましい。より高温で接着力を備える本発明の組成物が得られるからである。
なお、ガラス転移点は、動的な粘弾性測定におけるtanδのピーク値の温度をいう。コアシェル型粒子(B)における他層のガラス転移点も同様とする。
メチルメタクリレートまたはスチレンと共重合可能なモノマーとして、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアルキルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル、芳香族ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、シアン化ビニリデン等のビニル重合性モノマーを挙げることができる。中でもエチルアクリレート又はアクリロニトリルが好ましい。また、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基などの官能基を持ったモノマーを共重合させることができる。例えばエポキシ基を持つモノマーとしては、グリシジルメタクリレートが挙げられ、カルボキシル基を持つモノマーとしては、メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸が挙げられる。また、水酸基を持つモノマーとしては、2−ヒドロキシメタクリレート、2−ヒドロキシアクリレートが挙げられる。
架橋性モノマーとしては、例えばジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル化合物、ヘキサンジオールジアクリレート、ノルボルネンジメチロールジメタクリレート等のアルカンポリオールポリアクリレートなどを挙げることができる。グラフト用モノマーとしては、例えば、アリルメタクリレート等の不飽和カルボン酸アリルエステルなどを挙げることができる。
また、シェル層を製造する際に使用されるモノマーがアクリロニトリルを含む場合、ポリマーがニトリル基を有することになるので、ニトリル基はエポキシ樹脂(A)が硬化して生成するヒドロキシ基と水素結合を形成することができる。また、ニトリル基は、被着体(例えば、溶融亜鉛めっき鋼板)の界面に対し作用し接着性を高めることができる。
このように、ニトリル基が形成することができるエポキシ樹脂(A)との水素結合および/または被着体に対する作用によって、本発明の組成物は、低温から高温におけるより優れた接着性能およびより優れた柔軟性を有することができる。
芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、モノクロルスチレン、3,4−ジクロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。なかでも、低温から高温における接着性能および柔軟性により優れるという観点から、スチレンが好ましい。
アクリロニトリル以外の非芳香族系単量体の量は、シェル層を製造する際に使用されるモノマーの全量中、好ましくは70質量%以下の範囲であり、より好ましくは50質量%以下の範囲である。
シェル層を製造する際に使用することができる架橋性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ブチレングリコールジメタクリレートが挙げられる。特に低温から高温における接着性能および柔軟性により優れるという観点から、ジビニルベンゼンが好ましい。架橋性単量体の量は、シェル層を製造する際に使用されるモノマーの全量中、通常、30質量%以下の範囲であり、好ましくは0.5〜20質量%の範囲であり、より好ましくは5〜15質量%の範囲である。
シェル層に隣接する内層は、低温から高温における接着性能および柔軟性により優れるという観点から、そのガラス転移温度が−30℃以下であるのが好ましく、−110〜−30℃であることがより好ましく、−110〜−40℃であることがさらに好ましい。
アルキル基の炭素数が2〜8であるアクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられる。
シェル層に隣接する内層を製造する際に使用することができるモノマーは、例えば、アルキル基の炭素数が2〜8であるアクリル酸アルキルエステルやブタジエンと共に、それに共重合可能な他のビニル系単量体を併用することができる。アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他のビニル系単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物や芳香族ビニリデン化合物、アクリロニトリルやメタクリロニトリル等のシアン化ビニルやシアン化ビニリデン、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のアルキルメタクリレートが挙げられる。
アクリル酸アルキルエステルやブタジエンと共重合可能な他のビニル系単量体の量は、シェル層に隣接する内層を製造する際に使用するモノマーの全量に対して、通常、50質量%以下の範囲であり、好ましくは30質量%以下の範囲である。
3層のコアシェル型粒子(B)におけるコア層を製造する際に使用することができるモノマーとしては、例えば、芳香族ビニル単量体が挙げられる。芳香族ビニル単量体は、上記と同義である。
非芳香族単量体としては、例えば、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアルキルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニルやシアン化ビニリデンが挙げられる。非芳香族単量体の使用量は、コア層を製造する際に使用することができるモノマー全量中の、好ましくは50質量%以下の範囲であり、より好ましくは20質量%以下の範囲である。
架橋性単量体としては、例えば、分子内に二個以上の重合性エチレン性不飽和結合を有する単量体が挙げられる。具体例としては、例えば、ジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル単量体、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのなかでは、特にジビニルベンゼンが好ましい。
架橋性単量体の使用量は、コア層を製造する際に使用することができるモノマー全量中の、通常、30質量%以下の範囲であり、好ましくは0.5〜20質量%の範囲であり、より好ましくは5〜15質量%の範囲である。
3層のコアシェル型粒子(B)におけるコア層のガラス転移温度が50℃以上の物質であることが好ましい。コア層のガラス転移温度は50〜200℃であることがより好ましく、80〜200℃であることがさらに好ましい。より高温で接着力を備える本発明の組成物が得られるからである。
なお、コアシェル型粒子(B)の1次粒子径の平均値はゼータ電位粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社)を用いて測定して得た値を意味するものとする。
コアシェル型粒子(B)はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の組成物が含有するアセタール樹脂(C)は特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えばポリビニルアルコールに各種アルデヒドを反応させて作る。反応させる各種アルデヒドの反応率を変えることによってアセタール化度を変えることができる。
本発明の組成物が含有する硬化剤(D)は特に限定されず、通常エポキシ樹脂の硬化剤として用いられるものを用いることができる。例えばジシアンジアミド、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、2−n−ヘプタデシルイミダゾールのようなイミダゾール誘導体、イソフタル酸ジヒドラジド、N,N−ジアルキル尿素誘導体、N,N−ジアルキルチオ尿素誘導体、テトラヒドロ無水フタル酸のような酸無水物、イソホロンジアミン、m−フェニレンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、メラミン、グアナミン、三フッ化ホウ素錯化合物、トリスジメチルアミノメチルフェノールなどを用いることができる。これらの中の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の組成物がこのような性能を具備する理由について明確ではないが、極性の高いアセタール樹脂を特定量配合することで高い接着力が得られるものと、本発明者は推定している。
(実施例1〜5および参考例1)
エポキシ樹脂(A)としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER828、ジャパンエポキシレジン社製)、ウレタン変性エポキシ樹脂(EPU−78−11、ADEKA社製)およびゴム変性エポキシ樹脂(EPR−1309、ADEKA社製)を用い、コアシェル型粒子(B)として3層コアシェル型粒子(M−601、ガンツ化成社製:1次粒子の平均粒径=200〜300nm)または2層コアシェル粒子(F351、ガンツ化成社製:1次粒子の平均粒径=200〜300nm)を用い、アセタール樹脂(C)としてアセタール樹脂−1(KS−10、積水化学社製、分子量(Mw)約17,000、アセタール化度:74±3mol%)、またはアセタール樹脂−2(KS−3、積水化学社製、分子量(Mw)約108,000、アセタール化度:74±3mol%)を用い、硬化剤(D)として硬化剤(Dicy15、ジャパンエポキシレジン社製)を用い、さらに触媒(DUMU99、保土ヶ谷化学社製)およびシリカ(RY−200S、日本エアロジル社製)を加え、これらを均一に混練して本発明の組成物を得た。各々の実施例における各成分の添加量(質量部)は第1表の通りである。
そして、各組成物を2種類のテストピース(溶融亜鉛めっき鋼板、非めっき鋼板)の各々の表面に塗布し、引張り剪断強度試験およびT字剥離強度試験に供した。ここで両試験ともにJIS K−6850(1999年)に従って行った。ここでテストピースは0.8×25×200mmのものを用いた。また、170℃で30分間保持して各組成物を硬化させた。また、接着剤の塗布厚は0.15mmとした。試験結果を第1表に示す。
アセタール樹脂を用いないこと以外は実施例2,3,6と同様とした実験を行った。試験結果を第1表に示す。
コアシェル型粒子を用いないこと以外は実施例6と同様とした実験を行った。試験結果を第1表に示す。
また、80℃におけるT字剥離強度試験における破壊形態は、いずれの実施例においても凝集破壊であった。したがって、接着剤としての信頼性が高い。
なお、破壊には、接着剤層の内部が破壊する「凝集破壊」と、接着剤と被着体(テストピース)との界面で剥がれる「界面破壊」があり、さらに被着体(テストピース)がめっき鋼板である場合は、めっきと鋼板とが剥離する「メッキ破壊」がある。ここで、接着剤と被着材とが接着されていることを保証するためにも、破壊形式としては凝集破壊が好ましい。界面破壊またはメッキ破壊は接着力をコントロールできていない状態であり、信頼性に乏しい。
また、コアシェル型粒子(B)を用いていない比較例2の組成物を用いた場合、実施例1〜5および参考例1に対して低い強度となった。また、80℃における引張り剪断試験における破壊形態はメッキ破壊であり、T字剥離試験における破壊形態は界面破壊であった。したがって、接着剤としての信頼性が低い。
Claims (6)
- エポキシ樹脂(A)、コアシェル型粒子(B)およびアセタール樹脂(C)を含み、
エポキシ樹脂(A)100質量部に対して、アセタール樹脂(C)を0.1〜1質量部を含み、
エポキシ樹脂(A)が、ウレタン変性エポキシ樹脂およびゴム変性エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物。 - エポキシ樹脂(A)100質量部に対して、コアシェル型粒子(B)5〜100質量部を含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
- アセタール樹脂(C)の分子量(Mw)が10,000〜150,000であり、アセタール化度が60mol%以上である、請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
- コアシェル型粒子(B)における最外層のガラス転移点が+50℃以上であり、内層のガラス転移点が−30℃以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
- コアシェル型粒子(B)の平均1次粒子径が50〜500nmである、請求項1〜4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
- 構造用接着剤である、請求項1〜5のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
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