本発明者らは、高精細、高アスペクト比などの多種多様な形状を賦形しても、良好に離型可能で、またその形状が長期安定性に優れたシート用の樹脂組成物について鋭意検討し、樹脂組成物の表面から数nmの範囲の最表面の物性を、特定な条件に制御することができる樹脂組成物を作ってみたところ、上記課題を一挙に解決することを究明したものである。すなわち、かかる樹脂組成物によれば、表面への賦形性、特にナノオーダーの形状賦形時の離型性に優れ、かつその形状が長期安定性に優れたシート(以下、易表面賦形性シート)を提供することができることに成功したものである。
本発明の易表面賦形性シート用樹脂組成物は、走査粘弾性顕微鏡を用いて、下記(1)〜(7)の手順従って求められる樹脂組成物の位相差増大開始温度Tsが25℃以上であることを特徴とするものである。
すなわち、まず、
(1) シリコンウエハー上に該樹脂組成物の薄膜(乾燥膜厚250nm)を形成させる。
(2) 真空条件下、該薄膜表面に、走査粘弾性顕微鏡のプローブであるカンチレバー(バネ定数0.1N/m)の探針を接触させながら、膜厚方向に振幅1nmで、周波数100Hzの正弦振動を薄膜試料に与えたときのカンチレバーが検出する応答振動の位相δaを計測する。
(3) 前記(2)と同様に、同温度条件にて、真空条件下、シリコンウエハー表面に、前記(2)と同じ探針を接触させながら、振幅1nm、周波数100Hzの正弦振動をシリコンウエハーに与えたときの応答振動の位相δbを計測する。
(4) 該薄膜表面とシリコンウエハー表面の相対的な位相差Δδ=δa−δbを求める。
(5) 前記(2)および(3)の測定を、温度−50℃〜(Tg1+20℃)(Tg1は該樹脂組成物のガラス転移温度)の範囲において、1℃毎に実施し、各温度について、得られた位相から、(4)と同様、該薄膜表面とシリコンウエハー表面の相対的な位相差Δδ=δa−δbを求める。
(6) 前記(1)〜(4)で得られた位相差Δδを温度に対してプロットする。
(7) 最も低温側から前記(5)のプロットを観察し、温度上昇に伴い増大を開始する温度を、位相差増大開始温度Tsとする。
ここで、走査粘弾性顕微鏡とは、走査型フォース顕微鏡の一種であり、図1(a)に示すように、カンチレバー102の先端に設けた探針103で試料102表面に接触させながら、一定振幅の正弦振動l1を試料102に与えたときのカンチレバー102が検出する応答振動l2を、カンチレバー102の背面に照射したレーザー光104の反射光をフォトディテクター105で電気信号(電位)の振動として検出し、それを解析することによって、試料表面から数nmの最表面の力学物性を評価することができ、かつ、測定環境に温度制御機構を付随し、温度分散の測定も可能とした装置のことである。これら温度分測定機能を付随した走査粘弾性顕微鏡の一例としては、エス・アイ・アイ・ナノテクノロジー(株)製”E−sweep”に、ロックインアンプを搭載したもの等が挙げられるが、これらには限定されず、上記条件を備えた装置であれば任意に用いることができる。
次に、位相差Δδについて、図1(b)を用いて説明する。この位相差Δδとは、上記走査粘弾性顕微鏡を用いて測定される値であって、次の通り求められる値である。
まず、試料である薄膜101表面にカンチレバー102の探針103を接触させながら、膜面(xy平面)に対し、垂直方向に、一定振幅で、正弦振動l1aを試料101に与えたときに、カンチレバー102が検出する応答振動l2aの位相δaを求め、次に同温度条件でブランクであるシリコンウエハー111表面にカンチレバー102の探針103を接触させながら、膜面(xy平面)に対し、垂直方向に、一定振幅の正弦振動l1bをシリコンウエハー111に与えたときに、カンチレバー102が検出する応答振動l2bの位相δbを求め、該薄膜表面とシリコンウエハー表面の相対的な位相差Δδ=δa−δbとして求められる値であり、試料表面が硬い/柔らかいの程度を表す値である。
ここで、本発明における位相差Δδとは、真空条件下、シリコンウエハー上に形成した薄膜101表面に、走査粘弾性顕微鏡のプローブであるカンチレバー102(バネ定数0.1N/m)の探針103を接触させながら、膜面(xy平面)に対し垂直方向に、振幅1nm、周波数100Hzで正弦振動l1aを試料101に与えたときにカンチレバー102が検出する応答振動l2aの位相δaを求め、次に、同温度条件でブランクであるシリコンウエハー111表面に同じカンチレバー102の探針103を接触させながら、膜面(xy平面)に対し垂直方向に振幅1nm、周波数100Hzの正弦振動l1bをシリコンウエハー111に与えたときに、カンチレバー102が検出する応答振動l2bの位相δbを求め、該薄膜表面とシリコンウエハー表面の相対的な位相差Δδ=δa−δbとして求められる値のことである。
ここで、上記方法にて観測される位相差は、試料表面が硬い/柔らかいの程度を表す値であり、試料表面が硬い場合、その位相差は小さく、また柔らかいと、その位相差が大きくなるので、位相差Δδの温度依存性を評価することは、試料最表面の硬い/柔らかい、すなわち粘弾性の温度依存性を直接評価することになる。そのため、位相差が増大を開始する温度、つまり位相差増大開始温度Tsは、薄膜の最表面(約1〜10nm)のガラス転移温度(表面Tg)とすることができる。ここで、薄膜101表面近傍の分子は異種媒体(空気)と接しており、樹脂の内部(バルク)と比較してエネルギー的に不安定な状態にあるので、位相差増大開始温度Ts、すなわち、該表面Tgは、一般的な手法(示唆走査熱量測定(DSC)等)により求められるバルクのガラス転移温度(バルクTg)と比較して低い温度である。そのため、本発明の易表面賦形性シート用樹脂組成物は、バルクの熱特性だけでなく、最表面の熱特性、すなわち表面のガラス転移温度(表面Tg)を特定の条件に制御することにより、特にナノオーダーの形状賦形時の離型性に優れ、かつその形状の長期保存性に優れるという、従来にはない優れた効果を発現するのである。
以下、位相差増大開始温度Tsの求め方について、詳細に説明する。
本発明の易表面賦形性シート用樹脂組成物の位相差増大開始温度Tsを求める方法としては、まず、シリコンウエハー上に乾燥膜厚250nmで該樹脂組成物の薄膜101を形成させる必要がある。ここで、該樹脂組成物の薄膜101の膜厚は乾燥膜厚250nmが好ましいが、乾燥膜厚200nm〜300nmの範囲では位相差増大開始温度Tsは変化しないので、この範囲の乾燥膜厚で薄膜101を形成すればよい。
シリコンウエハー上に、該樹脂組成物の薄膜101を形成させる方法としては、該樹脂組成物が熱可塑性樹脂を主たる成分とする場合は、該樹脂組成物を溶媒に溶解させ、その溶液を用いて、シリコンウエハー上にスピンコート、ディップコート、バーコート、グラビアコート、ブレードコートなどの公知の塗布方法を用いて塗布後、乾燥により溶媒を除去させることで作製することができる。ここで、該樹脂組成物を用いる溶媒としては、該樹脂組成物が溶解する溶媒であって、かつ、シリコンウエハー上に塗布、乾燥した時に、はじきが生じず、また、乾燥により除去可能なものを選択するのが好ましい。また、該樹脂組成物に、有機微粒子、無機微粒子、金属、金属塩、その他添加剤等で溶媒に不溶な成分を含んでいる場合には、フィルターによる濾過や、遠心分離などにより、該樹脂組成物から不溶成分を除去した後に、該樹脂組成物を溶媒に溶解させた溶液を調整して塗布する。また、該樹脂組成物に可塑剤、界面活性剤、染料などの添加剤を含んでいる可能性がある場合は、前記同様に、該樹脂組成物から不溶成分を除去した後に、最沈殿法、再結晶法、クロマトグラフィー法、抽出法等により、それら添加剤を除去した後に、該樹脂組成物の溶媒に溶解させた溶液を調整して塗布する。
溶媒を除去させる際の乾燥方法としては、熱風オーブンや、ホットプレート、赤外線などによる加熱乾燥や、真空乾燥、凍結乾燥などの公知の方法や、それらを組み合わせた方法を用いればよいが、薄膜内の溶媒を十分に除去する必要があり、塗膜内の溶媒含有量を100ppm以下とする必要がある。加熱乾燥をする場合、乾燥温度としては、好ましくは樹脂組成物のバルクのガラス転移温度Tg1以上、分解温度未満、より好ましくはTg1以上でかつ溶媒の沸点以上、樹脂組成物の分解温度未満である。ただし、溶媒の沸点以上の温度で乾燥する場合、塗布後、一気に所定の乾燥温度まで上昇させると、溶媒が急激に揮発し、薄膜内部にボイドができたり、はじきが生じたりして、薄膜表面に大きな凹凸が発生する場合があるので、好ましくは、塗布後、Tg1以上でかつ溶媒の沸点未満でしばらく乾燥させた後、Tg1以上でかつ溶媒の沸点以上、分解温度未満に上昇させるのがよい。また、乾燥時間としては好ましくは4時間以上、より好ましくは5時間以上である。なお、乾燥後、吸湿を防ぐために、測定直前まで乾燥を実施し、乾燥終了後直ちに測定を実施する。もし乾燥直後の測定が不可能な場合は、測定直前まで、デシケーターや、保管庫などで乾燥条件下、乾燥窒素条件下、真空条件下など、吸湿しない条件下で試料を保管するのが好ましい。
また、該樹脂組成物が光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂など、硬化性樹脂を主たる成分とする場合おいて、シリコンウエハー上に、該樹脂組成物の薄膜101を形成させる方法としては、該樹脂組成物が液状である場合はその樹脂組成物をシリコンウエハー上に、スピンコート、ディップコート、バーコート、グラビアコート、ブレードコートなどの公知の塗布方法を用いて塗布後、その塗膜を硬化させることで形成することができる。また、該樹脂組成物が固体状である場合、もしくは液状であってもその粘度が非常に高い場合は、該樹脂組成物を溶媒に溶解させた溶液を上述の方法を用いて塗布後、乾燥により溶媒を除去した後にその塗膜を硬化させることで形成することができる。
硬化方法としては、光硬化性樹脂の場合は、該樹脂組成物が感光する波長の光を照射させればよいが、本測定試料としては500mJ/cm2以上照射して硬化させたさせたものを用いる。
また、熱硬化性樹脂の場合は、熱重合開始温度以上に一定時間加熱することで硬化させればよいが、本測定試料としては熱重合開始温度+20℃以上にて10分以上加熱して硬化させたものを用いる。ただし、加熱温度としては該樹脂組成物の硬化物の分解温度未満で行う。
溶媒を用いた場合、乾燥方法としては、熱風オーブンや、ホットプレート、赤外線などによる加熱乾燥や、真空乾燥、凍結乾燥などの公知の方法や、それらを組み合わせた方法を用いればよいが、少なくとも硬化後の薄膜には溶媒が含まれないようにする必要があり、硬化後の塗膜内の溶媒含有量を100ppm以下とする必要がある。硬化後の塗膜内の溶媒含有量を100ppm以下とするためには、必要に応じて硬化後に再度乾燥することも好ましく行われる。
次に、上記手法にて作製した薄膜101を用いて、走査粘弾性顕微鏡にて、以下の手順にて該薄膜101表面の位相差Δδの温度分散を求める。その手順としては、まず、測定条件としては、真空条件下、該薄膜101表面に、走査粘弾性顕微鏡のプローブであるカンチレバー102(バネ定数0.1N/m)の探針103を試料101表面に接触させながら、膜面(xy平面)に対し垂直方向に、振幅1nm、周波数100Hzの正弦振動l1aを試料101に与えたときの、カンチレバー102が検出する応答振動l1aの位相δa1を求める。なお、δa1は同じ測定点で10回以上測定し、得られた値の60%中間値の平均値でもって、試料表面の位相δa1とする。次に、この測定をna箇所場所(na≧5)を変えて応答信号l1aの位相δa2、δa3、・・・δanaを測定し、得られた値の60%中間値の平均値でもって、試料表面の位相δaとする。
続いて、同温度条件で、ブランクであるシリコンウエハー111表面に、同じカンチレバー102の探針103を接触させながら、膜面(xy平面)に対し垂直方向に振幅1nm、周波数100Hzの正弦振動l1bをシリコンウエハー111に与えたときに、カンチレバー102が検出する応答振動l2bの位相δb1を求める。なお、δb1は同じ測定点で10回以上測定し、得られた値の60%中間値の平均値でもって、シリコンウエハー表面の位相δb1とする。次に、この測定をnb箇所場所(nb≧5)を変えて応答信号l2bの位相δb2、δb3、・・・δbnbを測定し、得られた値の60%中間値の平均値でもって、試料表面の位相δbとする。得られたδa、δbから、該薄膜表面とシリコンウエハー表面の相対的な位相差Δδ=δa−δbを求める。
上記条件の測定を、温度−50℃〜(Tg1+20℃)(Tg1は該樹脂組成物のガラス転移温度)の範囲において、1℃毎に行い、位相差Δδの温度分散を測定する。なお、この際、各温度毎に測定点を変えて測定する。次に、得られた各温度での位相差Δδを温度に対してプロットする。このプロットを最も低温側から観察し、温度上昇に伴い増大を開始する温度を、位相差増大開始温度Tsとする。
ここで、位相差増大開始温度Tsの求め方は、図2(a)のように、最も低温側からこのプロットを観察したときに、ベースラインとなるプロットの集団P11に対し、位相差Δδが全体として徐々に増大し、かつその増大する温度範囲Tpが10℃以上である場合に位相差増大領域P12とし、その位相差増大領域より低温側のベースラインを高温側に延長した直線l11と位相差増大領域の接線の傾きが最大になるように引いた接線l12との交点の温度を、位相差増大開始温度Tsとする。
ここで、位相差増大開始温度Tsを求める場合において、図2(a)の様に温度分散曲線が低温側で位相差Δδが概ね一定の場合の他に、図2(b)の様に温度分散曲線が低温側で徐々に低下する場合や、図2(c)の様に低温側で徐々に上昇していく場合があるが、その場合には、それぞれプロットの集団P21,P31をベースラインとみなし、ベースラインから外れて位相差Δδが増大し、かつその増大する温度範囲Tpが10℃以上である場合に位相差Δδ増大領域P22、P32とし、図2(a)と同様の手順により求める。
上記一連の測定に用いるカンチレバー102の材質は、特に指定はないが、バネ定数が測定温度範囲において変化しないものを用いる。例えば、シリコン製、窒化ケイ素製またはシリコン製両面に金や白金などの金属蒸着したものが好ましく用いられる。具体的には、シリコン製に両面に金や白金などの金属蒸着したオリンパス(株)製、OMCL−RC800PB−1が挙げられるが、これに限定されない。
このように、本発明の易表面賦形性シート用樹脂組成物は、上述の方法によって求められた位相差増大開始温度Tsが25℃以上であるものであるが、より好ましくは位相差増大開始温度Tsが30℃以上、もっとも好ましくは40℃以上であるものがよい。すなわち、上述の方法により求められた位相差増大開始温度Tsが上記範囲に満たない該樹脂組成物からなる易表面賦形性シートでは、ナノオーダーの構造体の賦形において、表面が軟化して、金型表面に粘着したり、成形品の機械的強度が大きく低下したりして、離型時にパターンの破断が起こったり、離型できたとしても、離型時に変形してパターン倒れが起こったり、変形なく離型できたとしても、その形状の長期保存時の経時安定性、耐衝撃性等が悪くなるため好ましくない。本発明のパターン形成方法において、位相差増大開始温度Ts、すなわち、最表面のガラス転移温度(表面Tg)を上記範囲に制御することにより、初めて本発明の前記効果を達成することができるものである。特にナノオーダーの形状賦形時において、離型でのパターンの破断、倒れ等がなく離型する事ができ、またそのパターンを長期間保存しても、パターン崩れなく、形状を維持することが、初めてできたものである。
また、本発明の易表面賦形性シート用樹脂組成物は、ポリエステル樹脂を主たる成分とする樹脂組成物であって、前記ポリエステル樹脂がフルオレン骨格を有する繰り返し単位を共重合成分として含み、かつ、全ジオール成分100mol中に含まれるフルオレン骨格を有するジオールのmol量をn1、全ジカルボン酸成分100mol中に含まれるフルオレン骨格を有するジカルボン酸のmol量をn2とした場合、全ジオール成分100mol中に含まれるフルオレン骨格を有するジオールのmol量n1、全ジカルボン酸成分100mol中に含まれるフルオレン骨格を有するジカルボン酸のmol量n2の和n1+n2が20≦n1+n2≦80を満たし、かつ固有粘度が0.40〜0.65からなるものである。ここで、主たる成分とは、上述の樹脂が好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、最も好ましくは70重量%以上から成ることを示すものである。
また、本発明の易表面賦形性シート用樹脂組成物において、位相差増大開始温度Tsを25℃以上とするためには、ポリエステル樹脂を主たる成分とする熱可塑性樹脂の場合は、示差走査熱量測定(以下、DSC)により得られる、昇温過程(昇温速度:10℃/min)におけるガラス転移温度Tg1、すなわちバルクTgが、好ましくは70〜160℃、より好ましいのは90〜160℃、最も好ましくは110〜150℃の範囲であるものがよい。
ここでいうガラス転移温度Tg1とは、JIS K−7121(1999)に基づいた方法により求められた値であり、昇温速度10℃/minで走査した時に得られる示差走査熱量測定チャートのガラス転移の階段状の変化部分において、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状の変化部分の曲線とが交わる点から求めた値である。かかるガラス転移温度Tg1が、70℃より下回ると、該樹脂組成物をシート化して賦形したときに、高精細パターンや高アスペクト比パターンを成形する場合、離型時にパターンが変形したり、また、離型できたとしても成形品の熱安定性が低く、形状が経時変化するため好ましくない。また該ガラス転移温度Tg1が160℃より上回ると、賦形温度が高くエネルギー的に非効率であり、またシートの加熱/冷却時の体積変動が大きくなりシートが金型に噛み込んで離型できなくなったり、また離型できたとしてもパターンの転写精度が低下したり、部分的にパターンが欠けて欠点となる等の理由により好ましくない。本発明の易表面賦形性シート用樹脂組成物がポリエステル樹脂を主たる成分とする熱可塑性樹脂の場合において、ガラス転移温度Tg1を上記特定範囲に制御することにより、良好な転写性、離型性を得ることができたものである。
本発明の易表面賦形性シート用樹脂組成物がポリエステル樹脂を主たる成分とする熱可塑性樹脂の場合は、ガラス転移温度Tg3を前記特定範囲に制御することで良好な転写性、離型性を得ることができるのである。
本発明の易表面賦形性シート用樹脂組成物において、ポリエステル樹脂を主たる成分とする熱可塑性樹脂の場合は、ゲル浸透クロマトグラフ(以下、GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量Mwが、好ましくは10000〜100000、より好ましくは15000〜90000、特に好ましくは20000〜80000であるものがよい。なお、かかる樹脂組成物に、有機微粒子、無機微粒子、金属、金属塩、その他添加剤等で溶媒に不溶な成分を含んでいる場合には、フィルターによる濾過や、遠心分離などにより、該樹脂組成物から不溶成分を除去した後に、該樹脂組成物の溶媒溶液を調整して測定した値である。また、該樹脂組成物に可塑剤、界面活性剤、染料などの添加剤を含んでいる可能性がある場合は、前記同様に、不溶成分を除去した後に、最沈殿法、再結晶法、クロマトグラフィー法、抽出法等を実施した後に、再度該樹脂組成物の溶媒溶液を調整して測定した値である。
本発明の易表面賦形性シート用樹脂組成物において、ポリスチレン換算重量平均分子量Mwが10000より下回ると、機械的強度が弱くなるだけでなく、位相差増大開始温度Tsが低下して25℃未満となる場合があり、特にナノオーダーの高精度パターンや高アスペクト比パターンを成形して金型から離型する際にパターンの破断や、変形が起こったり、また、離型が出来ても形成品の耐久性や形状の熱安定性が悪くなるため好ましくない。また、該ポリスチレン換算重量平均分子量Mwが100000より上回ると、特にナノオーダーの形状賦形において、賦形がしにくくなり、パターン全体が形成不良となったり、部分的にパターンが欠けたりする欠点が惹起するため、好ましくない。本発明の易表面賦形性シート組成物において、ポリスチレン換算重量平均分子量Mwを、上記特定範囲に制御することで、位相差増大開始温度Tsを25℃以上に保ったまま成形性を付与することができ、その結果、特にナノオーダーの形状賦形時において、離型でのパターンの破断、倒れ等がなく離型する事ができ、またそのパターンを長期間保存しても、パターン崩れなく、形状を維持する事ができたものである。
また、本発明の易表面賦形性シート用樹脂組成物において、位相差増大開始温度Tsを25℃以上とするためには、ポリエステル樹脂を主たる成分とする熱可塑性樹脂の場合は、樹脂組成物の低分子量成分をGPC、再結晶、最沈殿などの手法により除去する事も好ましく行われる。その場合、GPCによる分子量分布曲線において、分子量分布全体の積分値に対するポリスチレン換算分子量Mwが5,000以下の成分の含有率Rを、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2重量%以下、特に好ましくは1重量%以下に制御するのがよい。また、分子量分布を狭くすることによっても、位相差増大開始温度Tsを25℃以上とすることができる場合がある。その場合、GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量Mwとポリスチレン換算数平均分子量Mnの比である多分散度Mw/Mnを、好ましくは3以下、より好ましくは2.5以下、特に好ましくは2以下とするのがよい。
また、本発明の易表面賦形性シート用樹脂組成物において、ポリエステル樹脂を主たる成分とする熱可塑性樹脂は、固有粘度が0.40〜0.65dl/gである。ここでいう固有粘度とは、オルトクロロフェノール100mlに樹脂を溶解させ(溶液濃度C=1.2g/ml)、その溶液の25℃での粘度をオストワルド粘度計を用いて測定した値と、同様に溶媒の粘度を測定した値とを用いて、下記式の[η]として求められる値である。
・ηsp/C=[η]+K[η]2・C
(ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)―1、Kはハギンス定数(0.343とする)である。)
なお、該樹脂組成物に、有機微粒子、無機微粒子、金属、金属塩、その他添加剤等で溶媒に不溶な成分を含んでいる場合には、フィルターによる濾過や、遠心分離などにより、不溶成分の除去を行った後に、溶液を調整して測定した値である。また、該樹脂組成物に可塑剤、界面活性剤、染料などの添加剤を含んでいる可能性がある場合は、不溶成分を除去した後に、最沈殿法、再結晶法、クロマトグラフィー法、抽出法等を実施した後に、再度溶液を調整して測定した値である。固有粘度が上記範囲より大きい場合は、賦形する際にシートの変形が起こりにくなり、特にナノオーダーの形状賦形時に金型への樹脂の充填が途中から進行しなくなって金型の形状を十分に転写できなかったり、できたとしても、賦形速度が遅かったり、成形品に残留応力が残って形状安定性が低下する傾向にある。そのため、荷重を大きくしてプレス圧力を高くしたり、加圧時間を長くする等を行う必要があるが、効率的ではなく好ましくない。また、荷重を大きくすると金型への負荷が大きく、くり返し使用耐久性が低下することもあり好ましくない。また、上記範囲に満たない場合は、成形品の機械的強度が大きく低下したりして、離型時にパターンの破断が起こったり、離型できたとしても、離型時に変形してパターン倒れが起こったり、変形なく離型できたとしても、その形状の長期保存時の経時安定性、耐衝撃性等が悪くなるため好ましくない。本発明の易表面賦形性シートにおいて、シートを構成する樹脂組成物の固有粘度をこの範囲とすることで、ナノオーダーの形状賦形時においても、容易に成形可能とすることができる。
また、本発明の易表面賦形性シート用樹脂組成物は、ポリエステル樹脂を主たる成分としてなるものであり、特にジカルボン酸、もしくはそのエステル形成性誘導体とジオールの共重合物とを共重合物したポリエステルが、重合が容易であることなどから好適に用いられる。
ジカルボン酸成分としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸類、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、イソソルビド、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、などの脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン、9,9’−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン酸等芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸、もしくはそのエステル誘導体などが代表例としてあげらるが、これらに限定されない。分子中に二つのカルボキシル基を有する化合物を適宜選択して使用する。また、これらは単独で用いても、必要に応じて、複数種類用いても構わない。
また、上述のジカルボン酸類のカルボキシ末端に、l-ラクチド、d−ラクチド、ヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸類、およびその誘導体、そのオキシ酸類が複数個連なったもの等を付加させたジカルボキシ化合物も好ましく用いられる。
また、ジオール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等の脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、イソソルビドなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールA、1,3―ベンゼンジメタノール,1,4−ベンゼンジメタノール、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、などの芳香族ジオール類等のジオールなどが代表例としてあげらるがこれらに限定されない。分子中に二つのヒドロキシル基を有する化合物を適宜選択して使用する。また、これらは単独で用いても、必要に応じて、複数種類用いても構わない。
また、上述のジオール類のヒドロキシ末端にジオール類を付加させたジヒドロキシ化合物も好ましく用いられる。用いられるグリコール類としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2’−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等の脂肪族ジオール類、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールA、1,3―ベンゼンジメタノール,1,4−ベンセンジメタノールなどの芳香族ジオール類などがあげられる。これらのジオール類は、二つのヒドロキシ末端にそれぞれ異なるジオールが付加されていてもよく、さらには、ジオール類が複数個連なっていてもよい。複数個連なっている場合、異なるジオールが混在していてもよい。
本発明の易表面賦形性シート用樹脂組成物を構成するポリエステル樹脂は、上述のジカルボン酸成分と、ジオール成分を適宜選択して、共重合させることにより得ることができる。
ここで、本発明の易表面賦形性シート用樹脂組成物を構成するポリエステル樹脂は、少なくともフルオレン骨格を有する繰り返し単位を共重合成分として含むものである。フルオレン骨格を有する繰り返し単位を共重合成分として含むことによって、特にナノオーダーの形状賦形性に優れるだけではなく、高い透明性、および、光学歪みを低減させる効果も併せて奏するので好ましい。
ポリエステル樹脂に、かかるフルオレン骨格を導入するためには、ジオール成分としてフルオレン骨格を有するジオールや、その誘導体を共重合させることによって得ることができる。また、フルオレン骨格を有するジカルボン酸や、その誘導体を共重合させることによっても得ることができる。
フルオレン骨格を有するジオールの例として、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの他に、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−エチルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−プロピルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジプロピルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジイソプロピルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−n−ブチルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−ジ−n−ブチルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジイソブチルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−(1−メチルプロピル)フェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ビス(1−メチルプロピル)フェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−ベンジルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジベンジルフェニル)フルオレン等があげられる。
また、上述のフルオレン骨格を有するジオールのヒドロキシ末端にジオール類を付加させたジヒドロキシ化合物も好ましく用いられる。用いられるグリコール類としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2’ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等の脂肪族ジオール類、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールA、1,3―ベンゼンジメタノール,1,4−ベンセンジメタノールなどの芳香族ジオール類などがあげられる。これらのジオール類は、フルオレン骨格を有するジオールの二つのヒドロキシ末端にそれぞれ異なるジオールが付加されていてもよく、さらには、ジオール類が複数個連なっていてもよい。複数個連なっている場合、異なるジオールが混在していてもよい。
また、フルオレン骨格を有するジカルボン酸の例として、9,9’−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレンの他に、9,9’−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−カルボキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−カルボキシ−3、5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−カルボキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−カルボキシ−3、5−エチルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−カルボキシ−3−プロピルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−カルボキシ−3,5−ジプロピルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−カルボキシ−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−カルボキシ−3,5−ジイソプロピルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−カルボキシ−3−n−ブチルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−カルボキシ−3−ジ−n−ブチルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−カルボキシ−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−カルボキシ−3,5−ジイソブチルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−カルボキシ−3−(1−メチルプロピル)フェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−カルボキシ−3,5−ビス(1−メチルプロピル)フェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−カルボキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−カルボキシ−3,5−ジフェニルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−カルボキシ−3−ベンジルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−カルボキシ−3,5−ジベンジルフェニル)フルオレン等があげられる。
また、上述のフルオレン骨格を有するジカルボン酸のカルボキシル基末端に、l-ラクチド、d−ラクチド、ヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸類、およびその誘導体、そのオキシ酸類が複数個連なったもの等を付加させたジカルボキシ化合物も好ましく用いられる。
本発明の易表面賦形性シート用樹脂組成物を構成するフルオレン骨格を有するポリエステル樹脂は、上述のジカルボン酸とジオール、フルオレン骨格を有するジカルボン酸、フルオレン骨格を有するジオールを適宜選択して共重合させることによって得ることができる。その重合方法としては、エステル交換法、直接重合法、溶液重合法、界面重合法など、公知の技術を用いて得ることができる。
ここで、本発明の易表面賦形性シート用樹脂組成物を構成するフルオレン骨格を有するポリエステル樹脂において、全ジオール成分100mol中に含まれるフルオレン骨格を有するジオールのmol量をn1、その他ジオールのmol量をn3、全ジカルボン酸成分100mol中に含まれるフルオレン骨格を有するジカルボン酸のmol量をn2、その他ジカルボン酸のmol量をn4とした場合、全ジオール成分100mol中に含まれるフルオレン骨格を有するジオールのmol量n1、全ジカルボン酸成分100mol中に含まれるフルオレン骨格を有するジカルボン酸のmol量n2の和n1+n2が、20≦n1+n2≦80を満たすものである。該n1+n2が、20未満の場合は、ポリエステル樹脂が結晶性を有して成形性が低下し、特にナノオーダーの形状の賦形が困難となったり、ポリエステル樹脂の複屈折が大きくなり、成形後に歪みが残ったりすることがあるため好ましくない。また、該n1+n2が、80を超えると、シート自体が脆くなり、機械的強度が低下することがあるため好ましくない。本発明の易表面賦形性シートを構成するフルオレン骨格を有するポリエステル樹脂、全ジオール成分100mol中に含まれるフルオレン骨格を有するジオールのmol量n1、全ジカルボン酸成分100mol中に含まれるフルオレン骨格を有するジカルボン酸のmol量n2の和n1+n2を上述の特定な割合の範囲内に制御することによって、特にナノオーダーの形状賦形性に優れるだけでなく、成形品の光学歪みの低減と、機械的強度の両立を達成することができたものである。
また、本発明の易表面賦形性シート用樹脂組成物を構成するフルオレン骨格を有するポリエステル樹脂において、全ジオール成分100mol中に含まれるフルオレン骨格を有するジオールのmol量をn1と、その他ジオールのmol量n3の比n1/n3が、好ましくは20/80〜100/0、より好ましくは30/70〜100/0、最も好ましくは40/60〜100/0の範囲であるのがよい。該比n1/n3が、20/80より下回ると、ポリエステル樹脂の成形性が低下し、特にナノオーダーの形状の賦形が困難となったり、複屈折が大きくなり、成形後に歪みが残ったりすることがあるため好ましくない。本発明の易表面賦形性シート用樹脂組成物を構成するフルオレン骨格を有するポリエステル樹脂において、かかる比n1/n3を上述の特定範囲内に制御することによって、特にナノオーダーの形状賦形性に優れるだけでなく、成形品の光学歪みも低減させることできたものである。また、これらのフルオレン骨格を有するジオールの中で、重合反応時の反応性、および成形品の機械特性の点から、共重合成分として、フルオレン骨格を有するジオールのヒドロキシ末端にジオール類を付加させたジヒドロキシ化合物を少なくとも含むのが好ましい。この場合、フルオレン骨格を有するジオール100molのうち、ヒドロキシ末端にジオール類を付加させたもののモル量をn1’、ジオール類を付加させていないもののモル量n1”としたときに、その比n1’/n1”が50/50〜100/0であることが好ましい。より好ましくは60/40〜100/0、最も好ましくは70/30〜100/0である。
また、本発明の易表面賦形性シート用樹脂組成物を構成するフルオレン骨格を有するポリエステル樹脂において、全ジカルボン酸成分100mol中に含まれるフルオレン骨格を有するジカルボン酸のmol量をn2と、その他ジカルボン酸のmol量をn4の比n2/n4は任意ではあるが、好ましくは0/100〜60/40、より好ましくは0/100〜50/50、最も好ましくは0/100〜40/60であるのがよい。すなわち、該n2/n4が、60/40より上回ると、重合が困難になったり、重合できたとしてもシート自体が脆くなり、機械的強度が低下することがあるため好ましくない。本発明の易表面賦形性シート用樹脂組成物を構成するフルオレン骨格を有するポリエステル樹脂において、かかるn2/n4を上述の特定範囲内に制御することによって、ポリエステル樹脂に機械的強度を付与することが可能となる。
ここで、本発明の易表面賦形性シート用樹脂組成物を構成するフルオレン骨格を有するポリエステル樹脂において、その他ジカルボン酸成分100mol%中、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、イソソルビド、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸のmol量をn4’、脂環族ジカルボン酸以外のその他ジカルボン酸のmol量をn4”としたときに、その比n4’/n4”が、好ましくは50/50〜100/0、より好ましくは60/40〜100/0、最も好ましくは70/30〜100/0であるのがよい。かかる比n4’/n4”が、50/50より下回ると、成形品の光学歪みが多くなるため好ましくない。本発明の易表面賦形性シート用樹脂組成物を構成するフルオレン骨格を有するポリエステル樹脂おいて、かかる比n4’/n4”を上述の特定値に制御することによって、高速で賦形できるだけではなく、より高い透明性、および、光学歪みをより低減させることができるため好ましい。
また、本発明の易表面賦形性シート用樹脂組成物には、本発明の効果が失われない範囲内で、重合時もしくは重合後に各種の添加剤を加えることができる。かかる添加剤の例としては、例えば、有機微粒子、無機微粒子、分散剤、染料、蛍光増白剤、酸化防止剤、耐候剤、帯電防止剤、離型剤、増粘剤、可塑剤、pH調整剤および塩などを使用することができる。特に、離型剤として、長鎖カルボン酸、もしくは長鎖カルボン酸塩、などの低表面張力のカルボン酸やその誘導体、および、長鎖アルコールやその誘導体、変性シリコーンオイルなどの低表面張力のアルコール化合物等を重合時に少量添加することが好ましく行われる。重合時にこれらの低表面張力化合物を添加することでポリエステル骨格の末端に低表面張力成分を導入することができ、それにより、離型剤のブリードアウトなく、金型への樹脂の密着が低減させ離型性を向上させることができるために好ましく行われる。
本発明の易表面賦形性シートは、上述の易表面賦形性シート用樹脂組成物を、シート状に加工することによって得ることができる。なお、以下、シートを構成する易表面賦形性シート用樹脂組成物が、熱可塑性樹脂を主たる成分とする場合は易表面賦形性シート(1)、硬化性樹脂を主たる成分とする場合は易表面賦形性シート(2)とする。
また、本発明の易表面賦形性シート(1)は、該シートのガラス転移温度Tg2+40℃において、動的粘弾性測定(以下、DMAと称す)により得られる動的貯蔵弾性率E2’が、好ましくは1×104〜5×106Pa、より好ましくは、1×104〜2.0×106Paであるのがよい。
ここでいうガラス転移温度Tg2とは、JIS K−7121(1999)に基づいた方法により、昇温速度10℃/minで走査した時に得られる示差走査熱量測定(1st RUN)チャートのガラス転移の階段状の変化部分において、各ベースラインを延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線とガラス転移の階段状の変化部分の曲線とが交わる点から求めた値である。
また、ここでいう動的貯蔵弾性率E2’とは、JIS K−7244に基づいた方法により、引張モード、試料動的振動速さ(駆動周波数)は1Hz、チャック間距離5mm、歪振幅10μm、力振幅初期値100mN、昇温速度2℃/minでの測定条件にて温度依存性(温度分散)を測定した時に得られる値である。
本発明の易表面賦形性シート(1)において、該シートのガラス転移温度Tg2+40℃での動的貯蔵弾性率E2’が、1×104Paより高いと、賦形する際にシートの変形が起こりにくくなり、金型への樹脂の充填が途中から進行しなくなって、金型の形状を十分に転写できなかったり、転写できたとしても、賦形速度が遅かったり、成形品に残留応力が残って形状安定性が低下する傾向にある。そのため、荷重を大きくしてプレス圧力を非常に高くしたり、加圧時間を長くする必要があるが、効率的ではなく好ましくない。また、高精細のパターンや、高アスペクト比パターンの大面積賦形時には、面内に圧力不均衡が生じて転写の面内均一性が低下したりすることもあり、好ましくない。また、荷重が大きくなるほど金型への負荷が大きく、くり返し使用耐久性が低下するため好ましくない。また、該動的貯蔵弾性率E2’が、5×106Paより低いと、プレス時の樹脂の流動性が高くなりすぎて、プレス時に金型内に樹脂が充填せずに流れてしまうため好ましくない。
本発明の易表面賦形性シート(1)において、該動的貯蔵弾性率E2’を、上記特定範囲とすることで、高精細のパターンや、高アスペクト比パターンの賦形時であっても、良好な転写精度を得ることができると共に、良好な転写精度、面内均一性を得ることができたものである。
また、本発明の易表面賦形性シート(1)は、該シートのガラス転移温度Tg2+40℃において、DMAにより得られる動的損失弾性率E2”が、好ましくは1×103〜1.8×106Pa、より好ましくは、1×103〜1.5×106Paであるのがよい。すなわち、かかる動的損失弾性率E2”が、1×103Paより高いと、賦形する際にシートの変形が起こりにくくなり、金型への樹脂の充填が途中から進行しなくなって金型の形状を十分に転写できなかったり、転写できたとしても、賦形速度が遅かったり、成形品に残留応力が残って形状安定性が低下する傾向にある。そのため、荷重を大きくしてプレス圧力を非常に高くしたり、加圧時間を長くするなどを行う必要があるが、効率的ではなく好ましくない。また、高精細のパターンや、高アスペクト比パターンの大面積賦形時には、面内に圧力不均衡が生じて転写の面内均一性が低下したりすることもあり、好ましくない。また、荷重が大きくなるほど金型への負荷が大きく、くり返し使用耐久性が低下するため好ましくない。また、動的損失弾性率E2”が、1.8×106Paより低いと、プレス時の樹脂の流動性が高くなりすぎて、プレス時に金型内に樹脂が充填せずに流れてしまうため好ましくない。本発明の易表面賦形性シート(1)において、かかる動的損失弾性率E2”を上記特定な範囲に制御することで、高精細のパターンや、高アスペクト比パターンの大面積賦形時であっても良好な転写精度を得ることができると共に、良好な転写精度、面内均一性を得ることができたものである。
また、本発明の易表面賦形性シート(1)は、25℃において、DMAにより得られる動的貯蔵弾性率E1’が、好ましくは0.1×109〜2.5×109Pa、より好ましくは0.5×109〜2×109Paであるのがよい。かかる動的貯蔵弾性率E1’が、0.1×109Paを上回ると、樹脂の剛性が高くなり、高精細のパターンや、高アスペクト比パターンの大面積賦形時に金型からの離型が困難となるため好ましくない。また、かかる動的貯蔵弾性率E1’が、2.5×109Paより下回ると、成形品の機械的強度が低下し、離型時に変形が起こったり、離型できたとしても形状の経時安定性、耐衝撃性等が悪くなるため好ましくない。本発明の易表面賦形性シート(1)において、かかる動的貯蔵弾性率E1’を上記特定な範囲に制御することで、高精細のパターンや、高アスペクト比パターンの大面積賦形時の離型性と、成形品の機械的強度を両立することができたものである。
また、本発明の易表面賦形性シート(1)は、上述の条件でのDMA測定により得られる25℃での動的貯蔵弾性率E1’が0.1×109〜2.5×109Paであり、かつTg2+40℃での動的貯蔵弾性率E2’が1×104〜5.0×106Paであることが好ましい。より好ましくは、25℃での動的貯蔵弾性率E1’が0.5×109〜2×109Pa、かつTg2+40℃での動的貯蔵弾性率E2’が1.0×104〜2×106Paである。本発明において、かかる特定な範囲とすることによって、高アスペクト比パターンの大面積賦形時の離型性、高速賦形性、転写精度、面内均一性および成形品の機械的強度を得ることができる。
また、本発明の易表面賦形性シート(1)は、示差走査熱量測定(以下、DSC)により得られる、昇温過程(昇温速度:10℃/min)における結晶化エンタルピーΔHccが1J/g以下であることが好ましい。
ここでいう結晶化エンタルピーΔHccとは、JIS K7122(1999)に基づいた方法にて求められた値であり、昇温速度10℃/minで走査した時に得られる示差走査熱量測定(1st RUN)チャートにおいて、結晶化に伴う発熱ピークの面積より求めた値である。好ましくは結晶化エンタルピーΔHccが0.1J/g以下、最も好ましくは0J/gである非晶性樹脂であるのがよい。かかる結晶化エンタルピーΔHccが、0.1J/gより大きいと、賦形前のシートの長期保存時において、経時的に結晶化が進行したり、また、表面に賦形する際の昇温時にシートを構成する樹脂が素早く結晶化して、賦形しにくくなったりする。そのため、高精細のパターンや、高アスペクト比パターンの大面積賦形時に、高速賦形が困難となるだけでなく、金型への樹脂の充填が不十分となって転写精度が低下したり、面内に圧力不均衡が生じて、転写の面内均一性が低下したりするので好ましくない。本発明において、かかる結晶化エンタルピーΔHccを上述の特定な範囲に制御することで、高アスペクト比パターンの賦形時であっても良好な高速賦形性、転写性および面内均一性を得ることができる。
また、本発明の易表面賦形性シート(1)は、25℃での光弾性係数kが、好ましくは50×10−12Pa−1以下、より好ましくは、40×10−12Pa−1以下、最も好ましくは30×10−12Pa−1以下であるのがよい。
ここでいう光弾性係数kとは、25℃、65RH%の雰囲気下、厚みd(nm)のシートに無張力の時の位相差Γ1(nm)、張力F(Pa)を加えたときに生じる位相差をΓ2(nm)としたときに、
・k=(Γ2−Γ1)/(d×F)
で定義される値のことである。なお、位相差Γの測定は、フィルムに1kg/mm2(9.81×106Pa)の張力をかけた状態で、直交ニコル、光源としてはナトリウムD線(波長589nm)を備えた偏光顕微鏡で、25℃の雰囲気下行う。
かかる光弾性係数kが、50×10−12Pa−1より大きいと、加工時に光学歪みが残り、成形品面内において光学特性が変化して色調のムラなどが発生したりすることがあるため、好ましくない。本発明の易表面賦形性シート(1)において、かかる光弾性係数kを、上述の特定な範囲に制御することによって、加工時に光学歪みが残ることなく、成形品面内において均一な光学特性を得ることができる。
本発明の易表面賦形性シート(1)のガラス転移温度Tg2は、好ましくは70〜160℃、より好ましくは80〜160℃、更に好ましくは100〜150℃の範囲であるのがよい。かかるガラス転移温度Tg2が、70℃より下回ると、高精細パターンや高アスペクト比パターンの成形の離型時にパターンが変形したり、また、離型できたとしても成形品形状の熱安定性が低く、形状が経時変化するため好ましくない。また、該ガラス転移温度Tg2が、160℃より上回ると、賦形温度が高くエネルギー的に非効率であり、またシートの加熱/冷却時の体積変動が大きくなりシートが金型に噛み込んで離型できなくなったり、また離型できたとしてもパターンの転写精度が低下したり、部分的にパターンが欠けて欠点となる等の理由により好ましくない。本発明の易表面賦形性シート(1)において、該シートのガラス転移温度Tg2を特定な範囲に制御することで、良好な転写性、離型性を得ることができる。
本発明の易表面賦形性シート(1)のガラス転移温度Tg2、動的貯蔵弾性率E’、動的損失弾性率E”、光弾性係数kなどは、シートを構成する樹脂のモノマー種を適宜共重合させることによって調整可能である。例えば、その他ジオール成分として、ビスフェノール−Aや、スピログリコールのような剛直な骨格を導入することによって、ガラス転移温度Tg2、動的貯蔵弾性率E’が上昇する。また、ポリエチレングリコールのような柔軟な骨格を導入するとガラス転移温度Tg2、動的貯蔵弾性率E’が低下する。
また、可塑剤や架橋剤などの導入によっても、ガラス転移温度Tg2、動的貯蔵弾性率E’、動的損失弾性率E”、などを制御することができる。可塑剤の場合、その種類、添加量によって制御することができる。すなわち可塑剤の量が多くなるほど、ガラス転移温度Tg2、動的貯蔵弾性率E’、動的損失弾性率E”は低下するが、逆に破断伸度などは向上する。また架橋剤の場合、その添加量を多くしたり、架橋の進行度を高くすると、ガラス転移温度Tg2、動的貯蔵弾性率E’、動的損失弾性率E”が上昇するが、逆に破断伸度は低下する。これらも勘案して、適宜調整して添加することによって、前述の特定な条件範囲を満たすシートを提供することができる。
また、本発明の易表面賦形性シート(1)には、電磁波照射により硬化する成分などを添加しても構わない。この場合、成形工程において、金型から離型前、もしくは金型から離型した後に、成形品に電磁波を照射して硬化させることで、成形品の機械強度、熱的安定性を向上させることができる。
また、本発明の易表面賦形性シート(1)は、本発明の効果が失われない範囲内で、各種の添加剤を加えることができる。かかる添加剤の例としては、例えば、有機微粒子、無機微粒子、分散剤、染料、蛍光増白剤、酸化防止剤、耐候剤、帯電防止剤、重合禁止剤、離型剤、増粘剤、pH調整剤および塩などを使用することができる。
本発明の易表面賦形性シート(1)は、一軸、または二軸方向に延伸されていても構わない。しかしながら、用いる材料によっては、高倍率の延伸によって配向結晶化が進む結果、ガラス転移温度Tg2,動的貯蔵弾性率E’、及び動的損失弾性率E”の上昇を伴い、成形性が低下することがあるため、物性値の変化に併せて適宜制御しながら延伸を行うのが好ましい。
また、本発明の易表面賦形性シート(2)は、硬化後に変形に対して耐性をもつことが好ましい。具体的には、厚さ100μmのシート形成し、硬化させたとき、直径100mmの心棒に沿って180°折り曲げても破断しないことが好ましい。より好ましくは直径50mmの心棒に沿って180°折り曲げても破断しないのがよい。この条件を満たすことで、単体で用いても通常の使用における変形に対する耐性をもち、また大面積化しても自重で破断するということもない。
また、本発明の易表面賦形性シート(2)には、熱可塑性樹脂などの樹脂成分を添加しても構わない。この場合、硬化後の変形に対する耐性をより高めることができる。
また、本発明の易表面賦形性シート(2)は、本発明の効果が失われない範囲内で、各種の添加剤を加えることができる。かかる添加剤の例としては、例えば、有機微粒子、無機微粒子、分散剤、染料、蛍光増白剤、酸化防止剤、耐候剤、帯電防止剤、重合禁止剤、離型剤、増粘剤、pH調整剤および塩などを使用することができる。
本発明の易表面賦形性シート(1)または易表面賦形性シート(2)は、上述の樹脂単体からなるシートであってもかまわないし、複数の層からなる積層体であってもよいが、かかる積層体の場合は、積層体の少なくとも片側の表面(表面層、表層)に上述の、つまり易表面賦形性シートからなる層を設ける必要がある。
すなわち、本発明の易表面賦形性シート積層体は、前記易表面賦形性シートからなる易表面賦形性シート層と、支持体となる基材層とを少なくとも含む複数の層からなる積層体であって、しかもその積層体の少なくとも片側の表面層に該易表面賦形性シート(1)が配置されている積層構造を有するものである。
かかる積層体の場合、単体シートと比べて、易滑性や、耐摩擦性などの表面特性や、機械的強度、成形品形状の熱安定性を付与することができる。このように複数の層からなる積層体とした場合は、シート全体が前述の要件を満たすことが好ましいが、シート全体としては前述要件を満たしていなくても、少なくとも前述の要件を満たす層が表層に形成されていれば容易に表面を賦形することができる。つまり、本発明の易表面賦形性シート積層体全体としては前述要件を満たしていなくても、該易表面賦形性シートが表面層として形成されているため、容易に表面を賦形することができる。
かかる支持体となる基材は、賦形の際にその形状が変化するシート状のもの、賦形の際にその形状が変化しないシート状のもの、およびそれらを組み合わせたもの、いずれでも構わないが、賦形後の成形品の寸法安定性などの観点から、賦形の際にその形状が変化しないシート状のものを少なくとも一層含むのが好ましい。また、この場合、易表面賦形性シート層は、賦形の際にその形状が変化するシート状のもの側、賦形の際にその形状が変化しないシート状のもの側、どちらに形成されていても構わない。
ここで、賦形の際にその形状が変化しないシート状のものとは、該易表面賦形性シート(1)の場合は、その表面層のガラス転移温度(以下、Tg21)+40℃において、DMAにより得られる基材の動的貯蔵弾性率E3’が、好ましくは5×107Pa以上、より好ましくは1.0×108Pa以上であるのがよい。
ここで、該易表面賦形性シート(1)の表面層のガラス転移温度Tg21とは、積層体1の表面層をカッターで削り取り、得られたものを、JIS K−7121(1999)に基づいた方法により求められた値であり、昇温速度10℃/minで走査した時に得られる示差走査熱量測定(1st RUN)チャートのガラス転移の階段状の変化部分において、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線とガラス転移の階段状の変化部分の曲線とが交わる点から求めた値である。
DMAによって得られる基材の動的貯蔵弾性率E3’が、上記の値に満たないと、成形のために圧力印加した際において、表面層に十分に圧力がかからなくなり、パターンの精度が低くなるため好ましくない。本発明の易表面賦形性シート積層体(1)は、かかる基材として、動的貯蔵弾性率E3’を上述の特定な範囲に制御した基材を少なくとも一層含むことによって、表面層を精度よく成形可能なシートとすることができたものである。
また、本発明の易表面賦形性シート積層体(1)の表面層を構成する前記易表面賦形性シート(1)層のガラス転移温度Tg21は、好ましくは70〜160℃、より好ましくは80〜160℃、特に好ましくは100〜150℃の範囲であるのがよい。かかるガラス転移温度Tg21が、70℃より下回ると、ナノオーダーの高精細パターンや高アスペクト比パターンの成形の離型時にパターンが変形したり、また、離型できたとしても成形品の形状の熱安定性が低く、形状が経時変化するため好ましくない。また、該ガラス転移温度Tg21が、160℃より上回ると、賦形温度が高くエネルギー的に非効率であり、またシートの加熱/冷却時の体積変動が大きくなりシートが金型に噛み込んで離型できなくなったり、また離型できたとしてもパターンの転写精度が低下したり、部分的にパターンが欠けて欠点となる等の理由により好ましくない。本発明の易表面賦形性シート積層体(1)において、かかるガラス転移温度Tg21を、上記特定な範囲に制御することで、良好な転写性、離型性を得ることができる。
また、本発明の易表面賦形性シート積層体(1)は、該基材と表面層との剥離強度Fが、好ましくは50mN/cm以上、より好ましくは70mN/cm以上、最も好ましくは100mN/cm以上であるのがよい。
ここでいう剥離強度Fとは、本発明の易表面賦形性シート積層体(1)の表面層を基材に対して180°方向に剥離したときの剥離強度Fであり、剥離力のSSカーブの立ち上がり部分を除いた剥離長さ50mm以上の平均剥離力T(N)から、剥離強度F(N/cm)=T/W(ここで、T(N):平均剥離力、W(cm):サンプル幅)で求められる値である。
該基材と表面層との剥離強度が、50mN/cm未満であると、本発明の易表面賦形性シート積層体の表面に金型を押し当てた後、離型しようとしても、基材と表面層間で剥離が起こり、離型ができないため好ましくない。本発明の易表面賦形性シート積層体(1)において、かかる剥離強度を50mN/cm以上とすることによって、高精細のパターンや、高アスペクト比のパターン成形時においても、基材と表層間で剥離が起こることなく離型することができる。
本発明の易表面賦形性シート積層体(1)における、支持体となる基材の例としては、ポリエステル樹脂、二軸延伸ポリエステルフィルム、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の有機フィルム基材や、シリコン、ガラス、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鋼、チタン等の金属基材およびコンクリート等の無機基材、ケイ素系樹脂など有機無機複合基材、及びこれらを組み合わせたものなどが適用可能であるが、より好ましくは可撓性を有する基材を用いることが、取り扱い性や、軽量化の点からよい。さらに好ましくは二軸延伸したポリエステルフィルムが取り扱い性と機械強度を兼ね備えているだけでなく、他の機能を容易に付与させることができるという点から好ましい。また、さらに他の機能をもった基材との複合体も、該基材として好ましく採用される。
本発明の易表面賦形性シート積層体(1)の表面層の屈折率N1と基材の屈折率N2の差ΔN=|N1−N2|はできるだけ小さくすることが好ましく、好ましくは屈折率差ΔNを0〜0.10、より好ましくは0〜0.08、さらに好ましくは0〜0.06である。なお、基材が方向によって屈折率が異なる、すなわち複屈折性を有する場合は、最も屈折率の高い方向の屈折率N2maxと、最も屈折率の低い方向の屈折率N2minの平均値でもって、基材の屈折率N2とする。屈折率差ΔNが上述の範囲を外れると、成形品を光学用途に用いた場合、基材との屈折率差に由来する薄膜干渉により、色ムラとなって現れて色均一性が低下したりすることがあるため好ましくない。本発明の易表面賦形性シート積層体(1)において、表面層の屈折率N1と基材の屈折率N2の差ΔN=|N1−N2|を上述の範囲とすることによって、色均一性に優れたシートとすることができる。具体的には、基材として、二軸延伸したポリエステルフィルムを用いた場合、易表面賦形性シート積層体(1)の表面層を構成する易表面賦形性シートの屈折率N1は1.55〜1.7が好ましく、より好ましくは1.58〜1.68、更に好ましくは1.60〜1.68である。該表面層の屈折率N1がこの範囲を外れると、基材ポリエステルフィルムとの屈折率差ΔNが大きくなり、薄膜干渉による色均一性が低下するため好ましくない。かかる表面層の屈折率N1を上述の範囲とすることによって、良好な色均一性を有するシートを得ることができる。
また、かかる基材には、本発明の効果が失われない範囲内で、各種の添加剤を加えることができる。添加配合することができる添加剤の例としては、例えば、有機微粒子、無機微粒子、分散剤、染料、蛍光増白剤、酸化防止剤、耐候剤、帯電防止剤、重合禁止剤、離型剤、増粘剤、pH調整剤および塩などを使用することができる。
本発明の易表面賦形性シート(1)の厚さ(厚み、膜厚)としては、好ましくは10μm〜5mm、より好ましくは20μm〜2mmの範囲であるのがよい。また、易表面賦形性シート積層体(1)の場合は、基材上に積層する該易表面賦形性シート(1)のの厚さとしては、好ましくは0.1μm〜5mm、より好ましくは、0.2μm〜1mm、特に好ましくは0.2〜500μmの範囲で設けるのがよい。である。なお、この場合、基材の厚さは特に限定されない。
本発明の易表面賦形性シート(1)の形成方法としては、例えば単体シートの場合、シート形成用材料を押出機内で加熱溶融し、口金から冷却したキャストドラム上に押し出してシート状に加工する方法(溶融キャスト法)を使用することができる。その他の方法として、シート形成用材料を溶媒に溶解させ、その溶液を口金からキャストドラム、エンドレスベルト等の支持体上に押し出して膜状とし、次いでかかる膜層から溶媒を乾燥除去させてシート状に加工する方法(溶液キャスト法)等も使用することができる。また易表面賦形性シート(2)の形成方法としては上述の方法のうち、溶液キャスト法を用いることができる。
また、本発明の易表面賦形性シート積層体(1)の製造方法としては、二つの異なる熱可塑性樹脂を二台の押出機に投入し、溶融して口金から冷却したキャストドラム上に共押出してシート状に加工する方法(共押出法)、単膜で作製したシートに被覆層原料を押出機に投入して溶融押出して口金から押出しながらラミネートする方法(溶融ラミネート法)、基材と易表面賦形性シート(1)をそれぞれ別々に作製し、加熱されたロール群などにより熱圧着する方法(熱ラミネート法)、接着剤を介して張り合わせる方法(接着法)、その他、シート形成用材料を溶媒に溶解させ、その溶液をシート上に塗布する方法(コーティング法)、およびこれらを組み合わせた方法等を使用することができる。
ここで、本発明の易表面賦形性シート積層体(1)の製造方法として、溶融ラミネート法、熱ラミネート法、接着法、コーティング法等に用いる基材は、易接着層などの塗布層を形成したものが表面層との接着力の点で好ましく用いられる。この場合、塗布層を構成する樹脂としては、例えばポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ケイ素樹脂等の熱可塑性樹脂、およびそれらの混合物等を、用いる基材、表面層に応じて適宜選択して用いられるが、易表面賦形性シート積層体(1)においては、基材として二軸延伸ポリエステルフィルムを用いた場合で、表面層がポリエステル樹脂を主たる成分とする場合は、接着性の点からポリエステル系樹脂を主たる成分としたものが好ましく用いられる。ここでいう主たる成分とは、塗布層を構成する熱可塑性樹脂のうち、ポリエステル系樹脂が、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、最も好ましくは70重量%以上から成ることを示すものである。
また、基材との密着性向上、耐ブロッキング防止等の点で、塗布層に、架橋剤を含有するのが好ましい。かかる架橋剤としては、塗布層を構成する樹脂に存在する官能基、例えばヒドロキシル基、カルボキシル基、グリシジル基、アミド基等と架橋反応する樹脂や化合物が好ましく用いられ、その例としてはメチロール化あるいはアルキロール化した尿素系、メラミン系、アクリルアミド系、ポリアミド系樹脂及びエポキシ化合物、イソシアネート化合物、カップリング剤、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物等、及びそれらの混合物等を使用することができる。かかる架橋剤種類、および含有量は、基材、表面層、塗布層を構成する樹脂、架橋剤の種類等によって適宜選択されるが、通常は樹脂固形分100重量部に対し、好ましくは0.01〜50重量部、より好ましくは0.2〜30重量部の範囲がよい。また、かかる架橋剤には、触媒を併用して架橋反応を促進させることも好ましく行われる。なお、架橋反応方式としては、加熱方式、電磁波照射方式、吸湿方式などのいずれでも構わないが、通常は加熱による方法が好ましく用いられる。
また、塗布層には、塗布層の滑り性改良や、耐ブロッキング性のために微粒子を含有するのが好ましい。その例として、無機微粒子や有機微粒子などを使用することができる。かかる無機微粒子としては、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、レニウム、バナジウム、オスミウム、コバルト、鉄、亜鉛、ルテニウム、プラセオジウム、クロム、ニッケル、アルミニウム、スズ、亜鉛、チタン、タンタル、ジルコニウム、アンチモン、インジウム、イットリウム、ランタニウム等の金属、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セシウム、酸化アンチモン、酸化スズ 、インジウム・スズ酸化物、酸化イットリウム 、酸化ランタニウム 、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム 、酸化ケイ素等の金属酸化物、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム 、フッ化アルミニウム 、氷晶石等の金属フッ化物、リン酸カルシウム等の金属リン酸塩、炭酸カルシウム等の炭酸塩、硫酸バリウム等の硫酸塩、その他タルクおよびカオリンなどを用いることができる。また、有機微粒子としては、架橋スチレンや架橋アクリルなどの架橋微粒子の他、塗布層を構成する熱可塑性樹脂に対して非相溶だが、微分散して海島構造を形成する熱可塑性樹脂も微粒子として用いることもできる。かかる微粒子の形状としては、真球状、回転楕円体状、扁平体状、数珠状、板状または針状等のものを用いることができるが、特に限定されない。かかる微粒子の平均粒径は0.05〜15μmが分散性、滑り性、耐ブロッキング性の点から好ましく、0.1〜10μmがより好ましい。また、かかる微粒子の添加量は任意であるが、通常は樹脂固形分100重量部に対し、好ましくは0.1重量部〜50重量部、より好ましくは1〜30重量部である。
また、塗布層には、効果が失われない範囲内で、必要に応じて、各種の添加剤を加えることができる。添加配合することができる添加剤の例としては、例えば、分散剤、染料、蛍光増白剤、酸化防止剤、耐候剤、帯電防止剤、重合禁止剤、増粘剤、消泡剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、pH調整剤および塩などを使用することができる。
上記、塗布層を基材上へ形成する方法としては、上述の塗布層を構成する材料を溶媒に溶解/分散させた塗液を基材上に塗布、乾燥する手段が採用される。この際、用いる溶媒は任意であるが、安全性の点から水を主たる成分として用いることが好ましい。その場合、塗布性や、溶解性などの改良のため、水に溶解する有機溶剤を少量添加させても構わない。かかる有機溶剤の例として、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n―ブチルアルコールなどの脂肪族または脂環族アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールなどのジオール類、メチルセロソロブ、エチルセロソロブプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのジオール誘導体、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、N−メチルピロリドンなどのアミド類など、および、これらの混合物を使用することができるが、これらに限定されない。
塗布層を基材上に塗設する方法としては、基材の製膜中に塗設するインラインコーティング法、製膜後の原反に塗設するオフラインコーティング法があげられ、どちらでも用いることが出来るが、より好ましくは基材製膜と同時にできて効率的であり、かつ塗布層の基材への接着性が高いという理由からインラインコーティング法が好ましく用いられる。また、塗設する際には、塗布液の基材上への濡れ性向上、接着力向上の観点から基材表面へコロナ処理なども好ましく行われる。
また、本発明の易表面賦形性シート積層体(1)の基材として二軸延伸ポリエステルフィルムを選択した場合、易表面賦形性シート積層体(1)の製造方法として、上述の溶融ラミネート法、熱ラミネート法、コーティング法等の方法の他に、二台の押出機にシート形成用材料と、基材用のポリエステル材料をそれぞれ投入し、溶融して口金から冷却したキャストドラム上に共押出して、二軸延伸した後、熱処理を施す方法(共押出二軸延伸法)も好ましく行われる。
二軸延伸する方法としては、長手方向と幅方向の延伸とを分離して行う逐次二軸延伸方法や、長手方向と幅方向の延伸を同時に行う同時二軸延伸方法のどちらであっても構わない。
また、熱処理工程における熱処理温度Taは、表層の融点(もしくは軟化点)をTm1、基材の融点をTm2とした時に、Tm2>Ta>Tm1とすることが好ましい。この温度範囲で熱処理を行うことで、基材を熱固定して機械的強度を付与すると同時に、表層を溶融させて均一化し、易成形性を付与することができる。
本発明の易表面賦形性シート(1)、および易表面賦形性シート積層体(1)を用いてパターンを形成する方法の例を、図3を用いて説明する。
本発明の易表面賦形性シート(1)、および易表面賦形性シート積層体(1)は、加熱・加圧または電磁波照射を用いた金型転写により表面にパターンを形成することができる。加熱・加圧を用いた方法においては、図3(a)に示すように、本発明の易表面賦形性シート(1)、および易表面賦形性シート積層体(1)1と金型2を重ねて加熱・加圧し、離型することにより、基材1表面に金型形状が転写される。このとき、少なくとも金型と対向する表面が熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂で構成されているのが好ましい。また、電磁波照射を用いた方法においては、図3(b)に示すように、金型2に易表面賦形性シート用樹脂組成物を直接充填、またはシート状に加工したものに金型2を押しあてた後、電磁波照射を行い、樹脂を硬化させ、離型することによって金型2形状を転写する。このとき、少なくとも金型と対向する表面が電磁波、例えば紫外線、可視光、電子線により硬化する樹脂により構成されているのが好ましい。
以下、本発明の易表面賦形性シート(1)、および易表面賦形性シート積層体(1)の表面に、パターンを形成する方法の例を、図3を用いてより詳細に説明する。
図3(a)は加熱・加圧を用いて金型賦形する場合の例を示すものである。本発明の易表面賦形性シート(1)(または易表面賦形性シート積層体(1)の易表面賦形性シート(1)により構成された表面層側)1と、転写すべきパターンと反転した凹凸を有する金型2とを、シートのガラス転移温度Tg2(易表面賦形性シート積層体(1)の場合はTg21、以後これらをTg2と称す)以上融点Tm未満の温度範囲内に加熱し(図3(a−1))、本発明の易表面賦形性シート(1)(または易表面賦形性シート積層体(1)の易表面賦形性シート(1)により構成された表面層側)1と金型2を接近させ、そのまま所定圧力でプレス、所定時間保持する(図3(a−2))。次にプレスした状態を保持したまま降温する。最後にプレス圧力を解放して金型2からシートを離型する(図3(a−3))。
本発明の表面賦形方法において、加熱・加圧を用いて賦形する場合は、加熱温度、およびプレス温度T1はTg2℃〜(Tg2+60℃)の範囲内であり、シートの融点Tm未満であることが好ましい。この範囲に満たないと、動的貯蔵弾性率E’、動的損失弾性率E”が十分に低下していないため、金型をプレスしたときの変形が起こりにくくなり、成形に必要な圧力が非常に高くなる。またこの範囲を上回ると、加熱温度、およびプレス温度T1が高くエネルギー的に非効率であり、また、金型とシートの加熱/冷却時の体積変動量の差が大きくなりすぎて、シートが金型に噛み込んで離型できなくなったり、また離型できたとしてもパターンの精度が低下したり、部分的にパターンが欠けてしまう等の理由により好ましくない。本発明の表面賦形方法において、加熱・加圧を用いて賦形する場合は、加熱温度、およびプレス温度T1をこの範囲とすることで、良好な成形性と、離型性を両立することができる。
本発明の表面賦形方法において、加熱・加圧を用いて賦形する場合は、プレス圧力は、プレス温度T1での動的貯蔵弾性率E’、動的損失弾性率E”の値等により適宜調整されるが、0.5〜50MPaが好ましい。より好ましくは1〜30MPaである。この範囲に満たないと金型内への樹脂の充填が不十分となりパターン精度が低下する。またこの範囲を超えると、必要とする荷重が大きくなり、金型への負荷が大きく、くり返し使用耐久性が低下するため好ましくない。プレス圧力をこの範囲とすることで、良好な転写性を得ることができる。
本発明の表面賦形方法において、加熱・加圧を用いて賦形する場合は、プレス圧力保持時間は、プレス温度T1での動的貯蔵弾性率E’、動的損失弾性率E”の値等と成形圧力により適宜調整されるが、平板プレスの場合、10秒〜10分が好ましい。この範囲に満たないと金型内への樹脂の充填が不十分となりパターン精度が低下したり、面内均一性が低下する。またこの範囲を超えると、樹脂の熱分解による劣化などが起こり成形品の機械的強度が低下する可能性があるため好ましくない。本発明の表面賦形方法において、加熱・加圧を用いて賦形する場合は、保持時間をこの範囲とすることで良好な転写性と、成形品の機械的強度の両立ができる。ただし、ロールtoロール成形の場合はプレス時間が10秒以下であっても構わない。
また本発明の表面賦形方法において、加熱・加圧を用いて賦形する場合は、プレス圧力開放温度T2は(Tg2−10℃)〜(Tg2+30℃)の温度範囲内で、位相差増大開始温度Tsより高くプレス温度T1より低いのが好ましい。より好ましくは(Tg2−10℃)〜(Tg2+30℃)である。この範囲に満たないと、プレス時の樹脂の変形が残留応力として残り、離型時にパターンが崩壊したり、離型できたとしても成形品の熱的な安定性が低下するため好ましくない。またこの範囲を上回ると、圧力解放時の樹脂の流動性が高いため、パターンが変形したりして転写精度が低下したりするため好ましくない。本発明の表面賦形方法において、加熱・加圧を用いて賦形する場合は、プレス圧力開放温度T2をこの範囲とすることによって、良好な転写性と離型性とを両立することができる。
また本発明の表面賦形方法において、加熱・加圧を用いて賦形する場合は、離型温度T3は20℃〜T2℃の温度範囲内であることが好ましい。より好ましくは20℃〜Tg2℃の温度範囲、最も好ましくは20℃〜Ts℃の温度範囲である。この範囲を上回ると、離型時の樹脂の流動性が高かったり、表面が軟化して粘着性を有していたりして、離型時にパターンが変形して精度が低下することがあるため好ましくない。本発明の表面賦形方法において、加熱・加圧を用いて賦形する場合は、離型時の温度をこの範囲とすることによって、パターン精度よく離型することができる。
また、本発明の表面賦形方法としては、図3に示したような平版をプレスする方法(平版プレス法)の他に、表面に凹凸を形成したロール状の金型を用いて、ロール状シートに成形し、ロール状の成形体を得るロールtoロールの連続成形であってもよい。ロールtoロール連続成形の場合、生産性の点で平版プレス法より優れている。
本発明の表面賦形方法に用いる金型の横断面図を図4(a)〜(f)に例示する。図4の横断面にて観察される金型凸部11の形状としては、矩形(図4(a))、台形(図4(b))、三角形(図4(c))、これらが変形したもの(図4(d)、(e)、(f))、およびこれらの混在したもの等が好ましく用いられるが、これら以外の形状も用いることができる。すなわち、横断面図において金型凸部11の側面が、ほぼシート面に対して垂直な図4(a)等の他にも、図4(b)〜(f)のような形態も含まれる。図4では隣接する金型凸部11間に平坦部が形成されている例を示したが、隣接する金型凸部11間が平坦でなくてもよく、さらには隣接金型凸部11の裾が連結していてもよい。また、金型凹部12の形状についても、上記金型凸部11と同様に、矩形、台形、三角形、釣鐘型、またはこれらが変形したもの等の形状を好ましく用いることができる。
図5(a)〜(h)は、それぞれ、金型をその面と平行に切断した場合の断面における、金型凸部11と金型凹部12との配置を模式的に示す断面図である。図5(a)〜(h)のように金型凹部12の形状が、線状、略三角形、略四角形、略六角形、円、楕円等から選ばれる形状を有していてもよい。図5(a)〜(c)は金型凹部12がストライプ状である場合、図5(d)は金型凹部12の断面が円形状である場合、図5(e)は三角形状である場合、図5(f)〜(g)は四角形状である場合、図5(h)は六角形状である場合を、それぞれ例示するものである。この金型凹部12は、図示した場合のように整列していてもよく、またランダムに配列していたり、異なる形状が混在していてもよい。また、図6(a)〜(d)のように、金型凸部11の形状が、略三角形、略四角形、略六角形、円、楕円等から選ばれる形状を有していてもよい。
また、本発明における表面賦形方法に用いる金型凸部11の幅Sは好ましくは0.001〜20μm、より好ましくは、0.005〜10μm、最も好ましくは0.01〜5μmである。高さHは好ましくは0.001〜20μm、より好ましくは0.005〜10μm、最も好ましくは0.01〜5μmである。また、金型凸部11のアスペクト比H/Sは好ましくは0.1〜25であり、より好ましくは1〜20である。
ここで、金型凸部11の幅Sは、図4(a)に図示したように、金型凸部11の単位長さである。なお、図5のストライプ状パターンの場合は単位長さの短い方向で測定する。図5(d)〜(h)の場合は単位長さが最も短いところを幅Sとする。また、図6(a)の様に金型凸部11が円形の場合はその直径を、楕円の場合はその短径を、図6(b)〜(d)の様に三角形・四角形などの多角形の場合はその内接円の直径を、金型凸部11幅Sとすればよい。また、金型の厚み方向における金型凸部11の高さHは図4に示すように、金型凸部11の厚みを指す。
また、この配列層は、この配列層内の金型面方向断面において、金型凸部11の面積と金型凹部12の面積比率は任意である。
ここで、金型凸部11の幅、金型凹部12の幅は、図4(a)の場合、それぞれS、tの長さでもって表される。なお、図4(b)等のようにその長さ単位が位置により異なる場合はその平均値でもって表す。また、凹凸のくり返し単位(ピッチ)は金型凸部の幅Sと金型凹部の幅tの和で表され、金型凸部11のピッチは、好ましくは0.002〜40μm、より好ましくは0.01〜20μm、最も好ましくは0.02〜10μmである。
金型の材質としては、特に限定されるものではないが、金型の加工性の点から、シリコンやガラス、離形性と耐久性からはステンレス鋼(SUS)、ニッケル(Ni)などの金属材質が好ましい。
金型は上述の材質をそのまま用いても構わないが、易滑性を付与するため、金型の表面を表面処理剤で処理するのが好ましい。表面処理による金型の表層の接触角としては、好ましくは80°以上、より好ましくは100°以上である。
表面処理の方法としては、表面処理剤を金型表面に化学結合を用いて固定する方法(化学吸着法)や、表面処理剤を金型表面に物理的に吸着させる方法(物理吸着法)等を使用することができる。この中で、表面処理効果のくり返し耐久性、および成形品への汚染防止の観点から化学吸着法により表面処理するのが好ましい。
化学吸着法に用いられる表面処理剤の好ましい例としては、フッ素系シランカップリング剤を使用することができる。これを用いた表面処理方法としては、有機溶剤(アセトン、エタノール)中での超音波洗浄、硫酸等の酸、過酸化水素等の過酸化物の溶液中での煮沸洗浄、などの洗浄方法により金型の表面を洗浄した後、フッ素系シランカップリング剤で処理する。その処理方法の一例として、フッ素系シランカップリング剤をフッ素系溶剤に溶解させた溶液に金型を浸漬する方法(湿式法)や、真空蒸着させて金型表面に析出させる方法(乾式法)などを使用することができる。湿式法の場合には、浸漬時に溶液を加熱することも好ましく行われる。
本発明の表面賦形方法によって得られる成形品とは、本発明の易表面賦形性シート(1)に金型を用いて賦形されたものであり、その横断面図は図7(a)〜(b)に例示するように、シート状の基部4上に賦形部3が形成されたものである。図7(a)は、本発明の易表面賦形性シート(1)に賦形した成形品を、図7(b)は本発明の易表面賦形性シート積層体(1)に賦形した場合の成形品を模式的に表す横断面図である。本発明の表面賦形方法によって得られる成形品の形状としては、好ましくは用いる金型と凹凸が反転したものであって、具体的な横断面図を 図8(a)〜(f)に例示する。図8の横断面にて観察される成形品の凸部22の形状としては、矩形(図8(a))、台形(図8(b))、三角形(図8(c))、これらが変形したもの(図8(d)、(e)、(f))、およびこれらの混在したもの等が好ましく用いられるが、これら以外の形状も用いることができる。すなわち、横断面図において成形品の凸部22の側面が、ほぼシート面に対して垂直な図8(a)等の他にも、図8(b)〜(e)のような形態も含まれる。また、図8では隣接する成形品の凸部22間に平坦部が形成されている例を示したが、隣接する成形品の凸部22間が平坦でなくてもよく、さらには隣接成形品の凸部22の裾が連結していてもよい。また、成形品の凹部21の形状についても、上記成形品の凸部22と同様に、矩形、台形、三角形、釣鐘型、またはこれらが変形したもの等の形状を好ましく用いることができる。
図9(a)〜(h)は、それぞれ、本発明の表面賦形方法によって得られる成形品その面と平行に切断した場合の断面における、成形品の凸部22と成形品の凹部21との配置を模式的に示す断面図である。図9(a)〜(h)のように成形品の凹部21の形状が、線状、略三角形、略四角形、略六角形、円、楕円等から選ばれる形状を有していてもよい。図9(a)〜(c)は成形品の凹部21がストライプ状である場合、図9(d)は成形品の凹部21の断面が円形状である場合、図9(e)は三角形状である場合、図9(f)〜(g)は四角形状である場合、図9(h)は六角形状である場合を、それぞれ例示するものである。この成形品の凹部21は、図示した場合のように整列していてもよく、またランダムに配列していたり、異なる形状が混在していてもよい。また、図10(a)〜(d)のように、成形品の凸部22の形状が、略三角形、略四角形、略六角形、円、楕円等から選ばれる形状を有していてもよい。
また、本発明の表面賦形方法によって得られる成形品が、その凸部22のアスペクト比H’/S’は0.1〜15、好ましくは1〜10である。さらにかかる凸部22の形状は、好ましくは凸部22の幅S’が0.001〜20μm、より好ましくは0.005〜10μm、最も好ましくは0.01〜5μmである。また該凸部22の高さH’が好ましくは0.001〜20μm、より好ましくは0.005〜10μm、最も好ましくは0.01〜5μmである。
ここで、成形品の凸部22の幅S’は、図8(a)に図示したように、成形品の凸部22の単位長さである。なお、図9(a)〜(c)のストライプ状パターンの場合は単位長さの短い方向で測定する。図9(d)〜(h)の場合は単位長さが最も短いところを幅S’とする。また、図10(a)の様に成形品の凸部22が円形の場合はその直径を、楕円の場合はその短径を、図10(b)〜(d)の様に三角形・四角形などの多角形の場合はその内接円の直径を、成形品の凸部22幅S’とすればよい。また、成形品の厚み方向における成形品の凸部22の高さH’は図8に示すように、成形品の凸部22の厚みを指す。
また、この配列層は、この配列層内の成形品面方向断面において、成形品の凸部22の面積と成形品の凹部21の面積比率は任意である。
ここで、成形品の凸部22の幅、成形品の凹部21の幅は、図8(a)の場合、それぞれS’、t’の長さでもって表される。なお、図8(b)等のようにその長さ単位が位置により異なる場合はその平均値でもって表す。また、凹凸のくり返し単位(ピッチ)は成形品の凸部22の幅S’と成形品の凹部21の幅t’の和で表され、成形品の凸部22のピッチは好ましくは0.002〜40μm、より好ましくは0.01〜20μm、最も好ましくは0.02〜10μmである。
また、本発明の表面賦形方法によって得られる成形品の基部4の厚みl’としては、任意であるが、機械的強度等の面から20μm〜2mmが好ましく、より好ましくは30μm〜1mmであり、さらに好ましくは50μm〜500μmである。しかしながら、図7(b)の様に、本発明の易表面賦形性シート積層体に賦形した場合は基部の厚みl’は特に限定はされず、20μm以下であっても構わない。
また、転写性(転写率)は成形品の凸部の断面積A’金型凹部の断面積Aの比A’/Aでもって判断される。転写性が良好であるとはその比A’/Aが好ましくは0.90以上、より好ましくは0.92以上であることを示す。
本発明の易表面賦形性シートを用いて作製された成形品は、各種用途に使用することが可能であるが、用途の一例としては、バイオチップ、半導体集積材料、意匠部材、光回路、光コネクタ部材、およびディスプレイ用部材などを使用することができる。
[特性の評価方法]
A.ガラス転移温度Tg1,Tg2,Tg21、結晶化エンタルピーΔHcc
ガラス転移温度Tg1、Tg2、Tg21はJIS K7121(1999)に基づいて、結晶化エンタルピーΔHccはJIS K7122(1999)に基づいて、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量測定装置”ロボットDSC−RDC220”を、データ解析にはディスクセッション”SSC/5200”を用いて求めた。サンプルパンに樹脂組成物、またはシートを5mgずつ秤量し、昇温速度は10℃/minで走査した。ガラス転移温度Tg1、Tg2は、示差走査熱量測定チャートのガラス転移の階段状の変化部分において、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線とガラス転移の階段状の変化部分の曲線とが交わる点から求めた。また、結晶化エンタルピーΔHccは結晶化の発熱ピークの面積より求めた。なお、易表面賦形性シート積層体の場合は、積層体1の表面層をカッターで削り取り、得られたものを上述の方法で測定して、表面層のガラス転移温度のTg21、結晶化エンタルピーΔHccを求めた。
B.位相差増大開始温度Ts
位相差増大開始温度Tsはエス・アイ・アイ・ナノテクノロジー(株)製E−sweepを用いて、カンチレバーとして、バネ定数0.1N/mのオリンパス(株)製、OMCL−RC800PB−1を用いて明細書記載の方法にて行った。概要は下記(1)〜(7)の手順である。
(1) シリコンウエハー上に該樹脂組成物の薄膜(膜厚250nm)を形成させた。
(2) 真空条件下、該薄膜表面に、走査粘弾性顕微鏡のプローブであるカンチレバー(バネ定数0.1N/m)の探針を接触させながら、膜厚方向に振幅1nmで、周波数100Hzの正弦振動を薄膜試料に与えたときのカンチレバーが検出する応答振動の位相δaを計測した。
(3) 前記(2)と同様に、同温度条件にて、真空条件下、シリコンウエハー表面に(2)と同じ探針を接触させながら、振幅1nm、周波数100Hzの正弦振動をシリコンウエハーに与えたときの応答振動の位相δbを計測した。
(4) 該薄膜表面とシリコンウエハー表面の相対的な位相差Δδ=δa−δbを求めた。
(5) 前記(2)および(3)の測定を、温度−50℃〜(Tg1+20℃)(Tg1は該樹脂組成物のガラス転移温度)の範囲において、1℃毎に実施し、各温度について、得られた位相から、(4)と同様、該薄膜表面とシリコンウエハー表面の相対的な位相差Δδ=δa−δbを求めた。
(6) 前記(1)〜(4)で得られた位相差Δδを温度に対してプロットした。
(7) 最も低温側から前記(5)のプロットを観察し、温度上昇に伴い増大を開始する温度をTs(位相差増大開始温度)とした。
C.固有粘度
オルトクロロフェノール100mlに樹脂を溶解させ(溶液濃度C=1.2g・/ml)、その溶液の25℃での粘度をオストワルド粘度計を用いて測定した。また、同様に溶媒の粘度を測定した。得られた溶液粘度、溶媒粘度を用いて、下記式により、固有粘度[η]を求めた。
ηsp/C=[η]+K[η]2・C
(ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)―1、Kはハギンス定数(0.343とする)である。)。
D.動的貯蔵弾性率E’、動的貯蔵弾性率E”
動的貯蔵弾性率E’、動的損失弾性率E”は、JIS−K7244(1999)に基づいて、セイコーインスツルメンツ社製の動的粘弾性測定装置”DMS6100”を用いて求めた。引張モード、駆動周波数は1Hz、チャック間距離5mm、歪振幅10μm、力振幅初期値100mN、昇温速度は2℃/minの測定条件にて、各シートの粘弾性特性の温度依存性を測定した。この測定結果から、室温、及びTg2+40℃での動的貯蔵弾性率E’ 動的損失弾性率E”を求めた。なお、易表面賦形性シート積層体の場合は、表面層の材料を用いて単膜を作製し、上述の方法に従って測定した。
E.剥離強度
積層体を幅2cm×長さ12cmの短冊状に切り出し、厚さ2mmの表面平滑なアクリル板に基材側を両面テープで張り付け、表層側にポリエステル粘着テープ(日東電工(株)製No.31B、幅19mm)を張り付けて、アクリル板の上端をテンシロン引っ張り試験機(東洋測器(株)製UTMIII)のロードセルにつるした。次いで、粘着テープの上端に帯状のリード紙をはり、その一端を下部チャックで把持して、クロスヘッド速度300mm/minで下(180°)方向に引っ張り、基材層と表層の層間の剥離力を測定した。剥離強度F(N/cm)は、SSカーブの立ち上がり部分を除いた剥離長さ50mm以上の平均剥離力T(N)から次式により算出した。
・剥離強度F(N/cm)=T/W
ここで、T(N):平均剥離力、W(cm):サンプル幅。
F.ポリスチレン換算重量平均分子量Mw、ポリスチレン換算数平均分子量Mn、分散度Mw/Mn、Mw=5000以下の成分含有率R
検出器として昭和電工(株)製示差屈折率検出器RI(RI−71型、感度64)を、カラムとして東ソー(株)製TSKgel GMHHR−M(φ7.8mm×30cm、理論段数14,000段)を2本搭載した東ソー(株)製ゲル浸透クロマトグラフGPC(8)を用いてMw、Mn、Rを求めた。移動層にはクロロホルムを用いた。流速は1.0mL/min、カラム温度は23℃±2℃、注入量は0.200mLであった。標準試料には単分散ポリスチレン(東ソー(株)製TSK標準ポリスチレン)を用いた。
G.形状観察
断面観察については、金型、成形品の断面を切り出し、白金−パラジウムを蒸着した後、日本電子(株)製電界放射走査型電子顕微鏡”JSM−6700F”で写真を撮影し、断面観察を行ない、金型凸の高さ、及びH幅S、アスペクト比H/S、凹部の断面積A、成形品の凸部の高さH’、及び幅S’、アスペクト比H’/S’,凸部の断面積A’を求めた。なお、実施例・比較例において、パターンの破断が確認された場合は破断していない部分で上記項目を求めた。
離型性は次のように判定した。成形品を切り出し、表面に白金―パラジウム蒸着した後、表面観察を行い、
パターンが形成されているもしくはごく僅かの部分で破断している:○
パターンの一部に破断痕が確認される:△
パターンの大部分に破断痕が確認される、もしくは金型から離型が出来ない:×
とした。
パターン倒れの有無については次のように判定した。成形品を切り出し、表面に白金―パラジウム蒸着した後、表面観察を行い、
隣接する凸部間が接触していない、もしくはごく僅かの部分だけ接触している:○
パターンの一部が接触している:△
パターンの大部分で凸部が倒れている:×
とした。
また、転写性は次のように判定した。成形品凹部の断面積A’と金型凸部の面積Aとの比A’/Aを求めて
0.90以上:○
0.85以上 0.90未満:△
0.85未満:×
とした。
成形品形状の保存安定性については次のように判定した。成形品を切り出し、表面に白金―パラジウム蒸着した後、表面観察を行い、
1)試験前のパターン倒れが○の場合は
隣接する凸部間が接触していないもしくはごく僅かの部分で接触している:○
パターンの一部が接触している:△
パターンの大部分で凸部が倒れている、もしくは凸部が消失している:×
2)試験前のパターン倒れが△の場合は
接触箇所が増えていない:○
接触箇所が増加している:△
パターンの大部分で凸部が倒れている、もしくは凸部が消失している:×
とした。
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
なお、実施例、比較例において用いた金型は以下の3種類である(図11参照)。
「金型1」(図11(a))
材質:ニッケル、サイズ:30mm角
パターン:ストライプ
ピッチ:1μm、凸部幅:2μm、凸部高さ:3μm
断面形状:矩形状
「金型2」(図11(b))
材質:ニッケル、サイズ:30mm角
パターン:ストライプ
ピッチ:1500nm、凸部幅:1000nm、凸部高さ:1500nm
断面形状:矩形状
「金型3」((図11(c))
材質:ニッケル、サイズ:30mm角
パターン:ストライプ
ピッチ:150nm、凸部幅:100nm、凸部高さ:150nm
断面形状:矩形状。
(実施例1)
ジカルボン酸成分としてシクロヘキサンジカルボン酸、ジオール成分として9,9’−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)フルオレン80mol%、エチレングリコール20mol%共重合したポリエステル(固有粘度C=0.40dl/g)3重量部をシクロヘキサノン/メチルエチルケトン/トルエン=1/1/1溶液97重量部に溶解させた。得られた溶液をスピンコート法(1st−700rpm10秒、2nd−1000rpm30秒)にてシリコンウエハー上に塗布し、150℃の熱風オーブン中で6時間乾燥させ、膜厚250nmの塗膜を形成した。
得られた塗膜について、走査粘弾性顕微鏡にて表面の位相差増大開始温度Tsを測定した。また、上記ポリエステルのガラス転移温度Tg1を測定した。結果を表1に示す。位相差増大開始温度Tsは54℃であった。
また、上記ポリエステルを100℃で4時間真空乾燥させた後、押出機内で280℃で溶融させて、口金から20℃のキャストドラム上に押し出して冷却し、厚さ600μmのシートを得た。
得られたシートのガラス転移温度Tg2、室温及びTg2+40℃での動的貯蔵弾性率E’、Tg2+40℃での動的損失弾性率E2”を測定した。結果を表1に示す。
また、得られたシート、及び金型を165℃に加熱し、シートと金型の凹凸面を接触させて20MPaでプレスし、そのまま2分間保持した。その後130℃に冷却後プレスを解放し、30℃に冷却して金型から離型して樹脂成形品を得た。
得られた成形品の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、いずれの金型においても形状が十分に転写されていることを確認した(金型1:A’/A=0.977、金型2:A’/A=0.959、金型3:A’/A=0.942)。また、成形品の表面を観察したところ、いずれの金型においてもパターン倒れが起こっていないことを確認した。
次に、成形品を23℃、湿度60%で一ヶ月間放置した後に成形品の表面を観察したところ、パターン倒れは観察されず、長期保存においても形状は保たれていることがわかった。結果を表2に示す。
(実施例2)
ジカルボン酸成分としてシクロヘキサンジカルボン酸70mol%,テレフタル酸30mol%、ジオール成分として9,9’−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)フルオレン50mol%、エチレングリコール50mol%共重合したポリエステル(固有粘度C=0.55dl/g)3重量部をシクロヘキサノン/メチルエチルケトン/トルエン=1/1/1溶液97重量部に溶解させた。得られた溶液をスピンコート法(1st−700rpm10秒、2nd−1000rpm30秒)にてシリコンウエハー上に塗布し、150℃の熱風オーブン中で6時間乾燥させ、膜厚250nmの塗膜を形成した。得られた塗膜について、走査粘弾性顕微鏡にて表面の位相差増大開始温度Tsを測定した。また、上記ポリエステルのガラス転移温度Tg1を測定した。結果を表1に示す。位相差増大開始温度Tsは39℃であった。
また、上記ポリエステルを90℃で4時間真空乾燥させた後、押出機内で280℃で溶融させて、口金からキャストドラム上に押し出して冷却し、厚さ600μmのシートを得た。
得られたシートのガラス転移温度Tg2、室温及びTg2+40℃での動的貯蔵弾性率E’、 Tg2+40℃での動的損失弾性率E2”を測定した。結果を表1に示す。
また、プレス温度を150℃、プレス解放温度を115℃とした以外は、実施例1と同様の方法で樹脂成形品を得た。
得られた成形品の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、いずれの金型においても形状が十分に転写されていることを確認した。(金型1:A’/A=0.969、金型2:A’/A=0.945、金型3:A’/A=0.930)。また、成形品の表面を観察したところ、いずれの金型においてもパターン倒れが起こっていないことを確認した。
次に、成形品を23℃、湿度60%で一ヶ月間放置した後に成形品の表面を観察したところ、パターン倒れは観察されず、長期保存においても形状は保たれていることがわかった。結果を表2に示す。
(実施例3)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ジオール成分として9,9’−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)フルオレン40mol%、エチレングリコール60mol%共重合したポリエステル(固有粘度C=0.52dl/g)3重量部をシクロヘキサノン/メチルエチルケトン/トルエン=1/1/1溶液97重量部に溶解させた。得られた溶液をスピンコート法(1st−700rpm10秒、2nd−1000rpm30秒)にてシリコンウエハー上に塗布し、150℃の熱風オーブン中で6時間乾燥させ、膜厚250nmの塗膜を形成した。得られた塗膜について、走査粘弾性顕微鏡にて表面の位相差増大開始温度Tsを測定した。また、上記ポリエステルのガラス転移温度Tg1を測定した。結果を表1に示す。位相差増大開始温度Tsは61℃であった。
また、上記ポリエステルを110℃で4時間真空乾燥させた後、押出機内で280℃で溶融させて、口金からキャストドラム上に押し出して冷却し、厚さ600μmのシートを得た。
得られたシートのガラス転移温度Tg2、室温及びTg2+40℃での動的貯蔵弾性率E’、 Tg2+40℃での動的損失弾性率E2”を測定した。結果を表1に示す。
また、プレス温度を165℃、プレス解放温度を130℃とした以外は、実施例1と同様の方法で樹脂成形品を得た。
得られた成形品の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、いずれの金型においても形状が十分に転写されていることを確認した。(金型1:A’/A=0.960、金型2:A’/A=0.941、金型3:A’/A=0.921)。また、成形品の表面を観察したところ、いずれの金型においてもパターン倒れが起こっていないことを確認した。
次に、成形品を23℃、湿度60%で一ヶ月間放置した後に成形品の表面を観察したところ、パターン倒れは観察されず、長期保存においても形状は保たれていることがわかった。結果を表2に示す。
(実施例4)
ジカルボン酸成分としてシクロヘキサンジカルボン酸、ジオール成分として9,9’−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)フルオレン50mol%、エチレングリコール50mol%共重合したポリエステル(固有粘度C=0.59dl/g)を10重量%となるようにトルエンに溶解させた。得られた溶液100重量部を攪拌しながら、イソプロピルアルコールを50重量部添加し、再沈殿させた。得られた溶液から濾過して得た固形物を、イソプロピルアルコールで洗浄した後、80℃で4時間真空乾燥させた。得られた固形物の固有粘度はC=0.60dl/gであった。
得られた固形物を0.2g/mlとなるようにクロロホルムに溶解後、孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、得られた溶液をGPCにてポリスチレン換算重量平均分子量Mw、ポリスチレン換算重量平均分子量Mn、多分散度Mw/Mn、Mw=5000以下の成分含有率Rを求めたところ、Mwは56500、Mnは29900、Mw/Mnは1.89、Wは0.78%であった。
次に、得られた固形物3重量部をシクロヘキサノン/メチルエチルケトン/トルエン=1/1/1溶液97重量部に溶解させた。得られた溶液をスピンコート法(1st−700rpm10秒、2nd−1000rpm30秒)にてシリコンウエハー上に塗布し、150℃の熱風オーブン中で6時間乾燥させ、膜厚250nmの塗膜を形成した。得られた塗膜について、走査粘弾性顕微鏡にて表面の位相差増大開始温度Tsを測定した。また、上記固形物のガラス転移温度Tg1を測定した。結果を表1に示す。位相差増大開始温度Tsは32℃であった。
また、上記固形物を80℃で4時間真空乾燥させた後、2枚のポリイミドフィルム’カプトン(商標登録)’500H(東レ・デュポン(株)製)で挟み、280℃のホットプレート上で溶融させて、プレスし、急冷した後剥離することで、厚さ600μmのシートを得た。
得られたシートのガラス転移温度Tg2、室温及びTg2+40℃での動的貯蔵弾性率E’、 Tg2+40℃での動的損失弾性率E2”を測定した。結果を表1に示す。
また、プレス温度を135℃、プレス解放温度を100℃とした以外は、実施例1と同様の方法で樹脂成形品を得た。
得られた成形品の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、いずれの金型においても形状が十分に転写されていることを確認した。(金型1:A’/A=0.962、金型2:A’/A=0.948、金型3:A’/A=0.926)。また、成形品の表面を観察したところ、いずれの金型においてもパターン倒れが起こっていないことを確認した。
次に、成形品を23℃、湿度60%で一ヶ月間放置した後に成形品の表面を観察したところ、パターン倒れは観察されず、長期保存においても形状は保たれていることがわかった。結果を表2に示す。
(実施例5)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ジオール成分として9,9’−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)フルオレン40mol%、エチレングリコール60mol%共重合したポリエステル(固有粘度C=0.64dl/g)3重量部をシクロヘキサノン/メチルエチルケトン/トルエン=1/1/1溶液97重量部に溶解させた。得られた溶液をスピンコート法(1st−700rpm10秒、2nd−1000rpm30秒)にてシリコンウエハー上に塗布し、150℃の熱風オーブン中で6時間乾燥させ、膜厚250nmの塗膜を形成した。得られた塗膜について、水平力顕微鏡にて表面の水平力増大温度Tsを測定した。また、上記ポリエステルのガラス転移温度Tg1を測定した。結果を表1に示す。水平力増大温度Tsは63℃であった。
また、上記ポリエステルを110℃で4時間真空乾燥させた後、押出機内で280℃で溶融させて、口金からキャストドラム上に押し出して冷却し、厚さ600μmのシートを得た。
得られたシートのガラス転移温度Tg2、室温及びTg2+40℃での動的貯蔵弾性率E’、 Tg2+40℃での動的損失弾性率E2”を測定した。結果を表1に示す。
また、プレス温度を165℃、プレス解放温度を130℃とした以外は、実施例1と同様の方法で樹脂成形品を得た。
得られた成形品の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、金型3で僅かに成形性が低下しているものの、いずれの金型においても形状が十分に転写されていることを確認した。(金型1:A’/A=0.957、金型2:A’/A=0.932、金型3:A’/A=0.894)。また、成形品の表面を観察したところ、いずれの金型においてもパターン倒れが起こっていないことを確認した。
次に、成形品を23℃、湿度60%で一ヶ月間放置した後に成形品の表面を観察したところ、パターン倒れは観察されず、長期保存においても形状は保たれていることがわかった。結果を表2に示す。
(実施例6)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ジオール成分として9,9’−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)フルオレン40mol%、エチレングリコール60mol%共重合したポリエステル(固有粘度C=0.52dl/g)3重量部をシクロヘキサノン/メチルエチルケトン/トルエン=1/1/1溶液97重量部に溶解させた。得られた溶液をスピンコート法(1st−700rpm10秒、2nd−1000rpm30秒)にてシリコンウエハー上に塗布し、150℃の熱風オーブン中で6時間乾燥させ、膜厚250nmの塗膜を形成した。得られた塗膜について、走査粘弾性顕微鏡にて表面の位相差増大開始温度Tsを測定した。また、上記ポリエステルのガラス転移温度Tg1を測定した。結果を表3に示す。位相差増大開始温度Tsは61℃であった。
また、表面層として、110℃で4時間真空乾燥させた上記ポリエステル、基材層として、170℃で2時間真空乾燥させたポリエチレンテレフタレート(PET)をそれぞれ別の押出機内で280℃で溶融させて、所定の方法により片側にPETを有する溶融二層共押出口金からキャストドラム上に共押出して冷却して、二層積層シートを作成した。このようにして得られた二層積層シートを84℃に加熱して、長手方向に3.3倍延伸し、続いてテンターで85℃の予熱ゾーンを通して、90℃で幅方向に3倍延伸し、その後90℃で20秒、220℃で30秒間熱処理し、全膜厚100μmの積層シートを得た。なお、表面層の厚さは5μmであった。
得られた積層シートのガラス転移温度Tg21、表面層と基材層の剥離強度を求めた。結果を表3に示す。
また、表面層について、単膜で口金からキャストドラム上に押し出して冷却し単層シートを得た。得られたシートのガラス転移温度Tg2、室温及びTg2+40℃での動的貯蔵弾性率E’、Tg2+40℃での動的損失弾性率E2”を測定した。結果を表3に示す。
また、得られたシート、及び金型を165℃に加熱し、シートの表面層と金型の凹凸面を接触させて20MPaでプレスし、そのまま2分間保持した。その後130℃に冷却後プレスを解放し、30℃に冷却して金型から離型して樹脂成形品を得た。
得られた成形品の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、いずれの金型においても形状が十分に転写されていることを確認した(金型1:A’/A=0.923、金型2:A’/A=0.910、金型3:A’/A=0.908)。また、成形品の表面を観察したところ、いずれの金型においてもパターン倒れが起こっていないことを確認した。
次に、成形品を23℃、湿度60%で一ヶ月間放置した後に成形品の表面を観察したところ、パターン倒れは観察されず、長期保存においても形状は保たれていることがわかった。結果を表4に示す。
(実施例7)
ジカルボン酸成分としてシクロヘキサンジカルボン酸、ジオール成分として9,9’−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)フルオレン80mol%、エチレングリコール20mol%共重合したポリエステル(固有粘度C=0.40dl/g)3重量部をシクロヘキサノン/メチルエチルケトン/トルエン=1/1/1溶液97重量部に溶解させ、膜厚250nmの塗膜を形成した。得られた溶液をスピンコート法(1st−700rpm10秒、2nd−1000rpm30秒)にてシリコンウエハー上に塗布し、150℃の熱風オーブン中で6時間乾燥させた。得られた塗膜について、走査粘弾性顕微鏡にて表面の位相差増大開始温度Tsを測定した。また、上記ポリエステルのガラス転移温度Tg1を測定した。結果を表3に示す。位相差増大開始温度Tsは54℃であった。
また、上記ポリエステルを35℃のシクロヘキサノン/メチルエチルケトン=/トルエン1.5/1.5/1溶液中に20重量%の濃度となるように溶解させた。得られた溶液を100μm厚のポリエステルフィルム‘ルミラー’U46(東レ(株)製)上にメタバー(♯30)を用いて塗布し、140℃で30分間乾燥させて、乾燥膜厚5μmの表面層を有する積層体を作製した。
得られた積層シートのガラス転移温度Tg21、表面層と基材層の剥離強度を求めた。結果を表2に示す。
また、表面層について、溶液を100μm厚のポリエステルフィルム(‘ルミラー’(登録商標)T60、東レ(株)製)上にアプリケーターを用いて塗布し、100℃で30分間乾燥させた後、剥離し、80℃で6時間真空乾燥することで、単層シートを得た。得られたシートのガラス転移温度Tg2、室温及びTg2+40℃での動的貯蔵弾性率E’、Tg2+40℃での動的損失弾性率E2”を測定した。結果を表3に示す。
また、得られたシート、及び金型を165℃に加熱し、シートの表面層と金型の凹凸面を接触させて20MPaでプレスし、そのまま2分間保持した。その後130℃に冷却後プレスを解放し、30℃に冷却して金型から離型して樹脂成形品を得た。
得られた成形品の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、いずれの金型においても形状が十分に転写されていることを確認した。(金型1:A’/A=0.969、金型2:A’/A=0.952、金型3:A’/A=0.939)。また、成形品の表面を観察したところ、いずれの金型においてもパターン倒れが起こっていないことを確認した。
次に、成形品を23℃、湿度60%で一ヶ月間放置した後に成形品の表面を観察したところ、パターン倒れは観察されず、長期保存においても形状は保たれていることがわかった。結果を表4に示す。
(実施例8)
ジカルボン酸成分としてシクロヘキサンジカルボン酸70mol%,テレフタル酸30mol%、ジオール成分として9,9’−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)フルオレン50mol%、エチレングリコール50mol%共重合したポリエステル(固有粘度C=0.55dl/g)3重量部をシクロヘキサノン/メチルエチルケトン/トルエン=1/1/1溶液97重量部に溶解させた。得られた溶液をスピンコート法(1st−700rpm10秒、2nd−1000rpm30秒)にてシリコンウエハー上に塗布し、150℃の熱風オーブン中で6時間乾燥させ、膜厚250nmの塗膜を形成した。得られた塗膜について、走査粘弾性顕微鏡にて表面の位相差増大開始温度Tsを測定した。また、上記ポリエステルのガラス転移温度Tg1を測定した。結果を表3に示す。位相差増大開始温度Tsは39℃であった。
また、表面層として、上記ポリエステルを用いる他は実施例7と同様に積層体、単膜シートを作製した。
得られた積層シートのガラス転移温度Tg21、表面層と基材層の剥離強度を求めた。結果を表3に示す。また、得られた単膜シートの、ガラス転移温度Tg2、室温及びTg2+40℃での動的貯蔵弾性率E’、Tg2+40℃での動的損失弾性率E2”を測定した。結果を表3に示す。
また、プレス温度を150℃、プレス解放温度を115℃とすること以外は実施例7と同様の方法で樹脂成形品を得た。
得られた成形品の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、いずれの金型においても形状が十分に転写されていることを確認した(金型1:A’/A=0.970、金型2:A’/A=0.952、金型3:A’/A=0.935)。また、成形品の表面を観察したところ、いずれの金型においてもパターン倒れが起こっていないことを確認した。
次に、成形品を23℃、湿度60%で一ヶ月間放置した後に成形品の表面を観察したところ、パターン倒れは観察されず、長期保存においても形状は保たれていることがわかった。結果を表4に示す。
(実施例9)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ジオール成分として9,9’−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)フルオレン40mol%、エチレングリコール60mol%共重合したポリエステル(固有粘度C=0.52dl/g)3重量部をシクロヘキサノン/メチルエチルケトン/トルエン=1/1/1溶液97重量部に溶解させた。得られた溶液をスピンコート法(1st−700rpm10秒、2nd−1000rpm30秒)にてシリコンウエハー上に塗布し、150℃の熱風オーブン中で6時間乾燥させ、膜厚250nmの塗膜を形成した。得られた塗膜について、走査粘弾性顕微鏡にて表面の位相差増大開始温度Tsを測定した。また、上記ポリエステルのガラス転移温度Tg1を測定した。結果を表3に示す。位相差増大開始温度Tsは61℃であった。
また、表面層として、上記ポリエステルを用いる他は実施例7と同様に積層体、単膜シートを作製した。
得られた積層シートのガラス転移温度Tg21、および、表面層と基材層の剥離強度を求めた。結果を表3に示す。また、得られた単膜シートの、ガラス転移温度Tg2、室温及びTg2+40℃での動的貯蔵弾性率E’、Tg2+40℃での動的損失弾性率E2”を測定した。結果を表3に示す。
また、プレス温度を165℃、プレス解放温度を130℃とすること以外は実施例7と同様の方法で樹脂成形品を得た。
得られた成形品の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、いずれの金型においても形状が十分に転写されていることを確認した(金型1:A’/A=0.939、金型2:A’/A=0.928、金型3:A’/A=0.925)。また、成形品の表面を観察したところ、いずれの金型においてもパターン倒れが起こっていないことを確認した。
次に、成形品を23℃、湿度60%で一ヶ月間放置した後に成形品の表面を観察したところ、パターン倒れは観察されず、長期保存においても形状は保たれていることがわかった。結果を表4に示す。
(実施例10)
ジカルボン酸成分としてシクロヘキサンジカルボン酸、ジオール成分として9,9’−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)フルオレン50mol%、エチレングリコール50mol%共重合したポリエステル(固有粘度C=0.60dl/g)を10重量%となるようにトルエンに溶解させた。得られた溶液100重量部を攪拌しながら、イソプロピルアルコールを50重量部添加し、再沈殿させた。得られた溶液から濾過して得た固形物を、イソプロピルアルコールで洗浄した後、80℃で4時間真空乾燥させた。
得られた固形物を0.2g/mlとなるようにクロロホルムに溶解後、孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、得られた溶液をGPCにてポリスチレン換算重量平均分子量Mw、ポリスチレン換算重量平均分子量Mn、多分散度Mw/Mn、Mw=5000以下の成分含有率Rを求めたところ、Mwは56500、Mnは29900、Mw/Mnは1.89、Wは0.78%であった。
次に、得られた固形物3重量部をシクロヘキサノン/メチルエチルケトン/トルエン=1/1/1溶液97重量部に溶解させた。得られた溶液をスピンコート法(1st−700rpm10秒、2nd−1000rpm30秒)にてシリコンウエハー上に塗布し、150℃の熱風オーブン中で6時間乾燥させ、膜厚250nmの塗膜を形成した。得られた塗膜について、走査粘弾性顕微鏡にて表面の位相差増大開始温度Tsを測定した。また、上記固形物のガラス転移温度Tg1を測定した。結果を表3に示す。位相差増大開始温度Tsは32℃であった。
また、表面層として、上記固形物を用いる他は実施例7と同様に積層体を作製した。
また、上記固形物を80℃で4時間真空乾燥させた後、2枚のポリイミドフィルム’カプトン(商標登録)’500H(東レ・デュポン(株)製)で挟み、280℃のホットプレート上で溶融させて、プレスし、急冷した後、剥離することで、厚さ600μmの単膜シートを得た。
得られた積層シートのガラス転移温度Tg21、および、表面層と基材層の剥離強度を求めた。結果を表3に示す。また、得られた単膜シートの、ガラス転移温度Tg2、室温及びTg2+40℃での動的貯蔵弾性率E’、Tg2+40℃での動的損失弾性率E2”を測定した。結果を表3に示す。
また、プレス温度を135℃、プレス解放温度を100℃とすること以外は実施例7と同様の方法で樹脂成形品を得た。
得られた成形品の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、いずれの金型においても形状が十分に転写されていることを確認した。(金型1:A’/A=0.960、金型2:A’/A=0.941、金型3:A’/A=0.925)。また、成形品の表面を観察したところ、いずれの金型においてもパターン倒れが起こっていないことを確認した。
次に、成形品を23℃、湿度60%で一ヶ月間放置した後に成形品の表面を観察したところ、パターン倒れは観察されず、長期保存においても形状は保たれていることがわかった。結果を表4に示す。
(実施例11)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ジオール成分として9,9’−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)フルオレン40mol%、エチレングリコール60mol%共重合したポリエステル(固有粘度C=0.64dl/g)3重量部をシクロヘキサノン/メチルエチルケトン/トルエン=1/1/1溶液97重量部に溶解させた。得られた溶液をスピンコート法(1st−700rpm10秒、2nd−1000rpm30秒)にてシリコンウエハー上に塗布し、150℃の熱風オーブン中で6時間乾燥させ、膜厚250nmの塗膜を形成した。得られた塗膜について、水平力顕微鏡にて表面の水平力増大温度Tsを測定した。また、上記ポリエステルのガラス転移温度Tg1を測定した。結果を表3に示す。水平力増大温度Tsは63℃であった。
また、表面層として、上記ポリエステルを用いる他は実施例7と同様に積層体、単膜シートを作製した。
得られた積層シートのガラス転移温度Tg21、および、表面層と基材層の剥離強度を求めた。結果を表3に示す。
また、得られた単膜シートの、ガラス転移温度Tg2、室温及びTg2+40℃での動的貯蔵弾性率E’、Tg2+40℃での動的損失弾性率E2”を測定した。結果を表3に示す。
また、プレス温度を165℃、プレス解放温度を130℃とすること以外は実施例7と同様の方法で樹脂成形品を得た。
得られた成形品の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、金型3で僅かに成形性が低下しているものの、いずれの金型においても形状が十分に転写されていることを確認した(金型1:A’/A=0.935、金型2:A’/A=0.925、金型3:A’/A=0.890)。また、成形品の表面を観察したところ、いずれの金型においてもパターン倒れが起こっていないことを確認した。
次に、成形品を23℃、湿度60%で一ヶ月間放置した後に成形品の表面を観察したところ、パターン倒れは観察されず、長期保存においても形状は保たれていることがわかった。結果を表4に示す。
(比較例1)
ジカルボン酸成分としてシクロヘキサンジカルボン酸100mol%,ジオール成分として9,9’−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)フルオレン25mol%、エチレングリコール75mol%共重合したポリエステル(固有粘度C=0.54dl/g)3重量部をシクロヘキサノン/メチルエチルケトン/トルエン=1/1/1溶液97重量部に溶解させた。得られた溶液をスピンコート法(1st−700rpm10秒、2nd−1000rpm30秒)にてシリコンウエハー上に塗布し、150℃の熱風オーブン中で6時間乾燥させ、膜厚250nmの塗膜を形成した。得られた塗膜について、走査粘弾性顕微鏡にて表面の位相差増大開始温度Tsを測定した。また、上記ポリエステルのガラス転移温度Tg1を測定した。結果を表1に示す。位相差増大開始温度Tsは15℃であった。
また、60℃で4時間真空乾燥させた上記ポリエステルを押出機内で280℃で溶融させて、口金からキャストドラム上に押し出して冷却して、厚さ600μmのシートを得た。
得られたシートのガラス転移温度Tg2、室温及びTg2+40℃での動的貯蔵弾性率E’、Tg2+40℃での動的損失弾性率E2”を測定した。結果を表1に示す。
また、プレス温度を110℃、プレス解放温度を75℃とした以外は、実施例1と同様の方法で樹脂成形品を得た。
得られた成形品の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、いずれの金型においても十分に成形できていた(金型1:A’/A=0.962、金型2:A’/A=0.938、金型3:A’/A=0.925)が、成形品の表面を観察したところ、金型3においてパターン倒れが起こっていた。結果を表2に示す。
(比較例2)
ジカルボン酸成分としてシクロヘキサンジカルボン酸、ジオール成分として9,9’−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)フルオレン50mol%、エチレングリコール50mol%共重合したポリエステル(固有粘度C=0.59dl/g)を0.2g/mlとなるようにクロロホルムに溶解後、孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、得られた溶液をGPCにてポリスチレン換算重量平均分子量Mw、ポリスチレン換算重量平均分子量Mn、多分散度Mw/Mn、Mw=5000以下の成分含有率Rを求めたところ、Mwは44100、Mnは10300、Mw/Mnは4.28、Rは3.91であった。
次に、上記ポリエステル3重量部をシクロヘキサノン/メチルエチルケトン/トルエン=1/1/1溶液97重量部に溶解させた。得られた溶液をスピンコート法(1st−700rpm10秒、2nd−1000rpm30秒)にてシリコンウエハー上に塗布し、150℃の熱風オーブン中で6時間乾燥させ、膜厚250nmの塗膜を形成した。得られた塗膜について、走査粘弾性顕微鏡にて表面の位相差増大開始温度Tsを測定した。また、上記固形物のガラス転移温度Tg1を測定した。結果を表1に示す。位相差増大開始温度Tsは22℃であった。
また、上記ポリエステルを80℃で4時間真空乾燥させた後、2枚のポリイミドフィルム’カプトン(商標登録)’500H(東レ・デュポン(株)製)で挟み、280℃のホットプレート上で溶融させて、プレスし、急冷した後剥離することで、厚さ600μmのシートを得た。
得られたシートのガラス転移温度Tg2、室温及びTg2+40℃での動的貯蔵弾性率E’、 Tg2+40℃での動的損失弾性率E2”を測定した。結果を表1に示す。
また、プレス温度を135℃、プレス解放温度を100℃とした以外は、実施例1と同様の方法で樹脂成形品を得た。
得られた成形品の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、いずれの金型においても十分に成形できていた(金型1:A’/A=0.965、金型2:A’/A=0.949、金型3:A’/A=0.928)が、成形品の表面を観察したところ、金型3においてパターン倒れが起こっていた。結果を表2に示す。
(比較例3)
スピログリコール30mol%共重合PET(”S−PET30”,三菱ガス化学(株)製,固有粘度C=0.68dl/g)3重量部をシクロヘキサノン/メチルエチルケトン/トルエン=1/1/1溶液97重量部に溶解させた。得られた溶液をスピンコート法(1st−700rpm10秒、2nd−1000rpm30秒)にてシリコンウエハー上に塗布し、150℃の熱風オーブン中で6時間乾燥させ、膜厚250nmの塗膜を形成した。得られた塗膜について、走査粘弾性顕微鏡にて表面の位相差増大開始温度Tsを測定した。また、上記ポリエステルのガラス転移温度Tg1を測定した。結果を表1に示す。位相差増大開始温度Tsは22℃であった。
また、80℃で4時間真空乾燥させた上記ポリエステルを押出機内で280℃で溶融させて、口金からキャストドラム上に押し出して冷却して、厚さ600μmのシートを得た。
得られたシートのガラス転移温度Tg2、室温及びTg2+40℃での動的貯蔵弾性率E’、Tg2+40℃での動的損失弾性率E2” を測定した。結果を表1に示す。
また、プレス温度を140℃、プレス解放温度を105℃とした以外は、実施例1と同様の方法で樹脂成形品を得た。
得られた成形品の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、金型1,2では十分に成形ができていたが、金型3では頂点が丸くなっており、十分に成形ができていなかった(金型1:A’/A=0.960、金型2:A’/A=0.929、金型3:A’/A=0.742)。また、成形品の表面を観察したところ、金型3においてパターン倒れが起こっていた。結果を表1に示す。
(比較例4)
イソフタル酸17.5mol%共重合PET3(固有粘度C=0.66dl/g)重量部をN−メチルピロリドン97重量部に溶解させた。得られた溶液をスピンコート法(1st−700rpm10秒、2nd−1000rpm30秒)にてシリコンウエハー上に塗布し、150℃の熱風オーブン中で6時間乾燥させ、膜厚250nmの塗膜を形成した。得られた塗膜について、走査粘弾性顕微鏡にて表面の位相差増大開始温度Tsを測定した。また、上記ポリエステルのガラス転移温度Tg1を測定した。結果を表1に示す。位相差増大開始温度Tsは14℃であった。
また、上記ポリエステルを150℃で2時間真空乾燥させた後、押出機内で250℃で溶融させて、口金からキャストドラム上に押し出して冷却して、厚さ600μmのシートを得た。
得られたシートのガラス転移温度Tg2、室温及びTg2+40℃での動的貯蔵弾性率E’、 Tg2+40℃での動的損失弾性率E2”を測定した。結果を表1に示す。
また、プレス温度を110℃、プレス解放温度を75℃とした以外は、実施例1と同様の方法で樹脂成形品を得た。
得られた成形品の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、金型1、2では十分に成形ができていたが、金型3では頂点が丸くなっており、十分に成形ができていなかった(金型1:A’/A=929、金型2:A’/A=0.863、金型3:A’/A=0.710)。また、成形品の表面を観察したところ、金型3においてパターン倒れが起こっていた。結果を表2に示す。
(比較例5)
ダイマー酸15mol%、1,4−ブタンジオール62mol%共重合PET(固有粘度C=0.74dl/g)10重量部をクロロホルム90重量部に溶解させた。得られた溶液をスピンコート法(1st−700rpm10秒、2nd−1000rpm30秒)にてシリコンウエハー上に塗布し、150℃の熱風オーブン中で6時間乾燥させ、膜厚250nmの塗膜を形成した。得られた塗膜について、走査粘弾性顕微鏡にて表面の位相差増大開始温度Tsを測定した。また、上記ポリエステルのガラス転移温度Tg1を測定した。結果を表1に示す。位相差増大開始温度Tsは−30℃であった。
また、上記ポリエステルを120℃で2時間真空乾燥させた後、押出機内で250℃で溶融させて、口金からキャストドラム上に押し出して冷却して、厚さ600μmのシートを得た。
得られたシートのガラス転移温度Tg2、室温及びTg2+40℃での動的貯蔵弾性率E’、 Tg2+40℃での動的損失弾性率E2”を測定した。結果を表1に示す。
また、プレス温度を45℃、プレス解放温度を20℃、離型温度20℃とした以外は、実施例1と同様の方法で樹脂成形品を得た。
得られた成形品の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、いずれの金型においても頂点が丸くなっており、十分に成形ができていなかった(金型1:A’/A=0.347、金型2:A’/A=0.272、金型3:A’/A=0.102)。また、成形品の表面を観察したところ、金型3においては成形が殆ど出来ていなかったため、パターン倒れについて確認はできなかった。
次に、成形品を25℃で一ヶ月放置した後に成形品の表面を観察したところ、金型2,3において、パターンが殆ど消失していることがわかった。結果を表2に示す。
(比較例6)
ポリメタクリル酸メチル(シグマアルドリッチ(株)製、重量平均分子量15000,固有粘度0.28dl/g)25重量部をシクロヘキサノン/メチルエチルケトン/トルエン=1/1/1溶液75重量部に溶解させた。得られた溶液をスピンコート法(1st−1500rpm30秒)にてシリコンウエハー上に塗布し、150℃の熱風オーブン中で6時間乾燥させ、膜厚250nmの塗膜を形成した。得られた塗膜について、走査粘弾性顕微鏡にて表面の位相差増大開始温度Tsを測定した。また、上記ポリメタクリル酸メチルのガラス転移温度Tg1を測定した。結果を表1に示す。位相差増大開始温度Tsは−7℃であった。
また、上記ポリマー30重量部をシクロヘキサノン/メチルエチルケトン=1/1溶液70重量部に溶解させた。この溶液を口金からエンドレスベルトに流延して、次いで120℃の熱風にて溶媒を乾燥除去した後剥離した。次に75℃で4時間真空乾燥させて、厚さ600μmのシートを得た。
得られたシートおよびシートのガラス転移温度Tg2、室温及びTg2+40℃での動的貯蔵弾性率E’、Tg2+40℃での動的損失弾性率E2”を測定した。結果を表1に示す。
また、プレス温度を140℃、プレス解放温度を105℃とする以外は、実施例1と同様の方法で樹脂成形品を得ようとしたが、金型3では凸部が離型時に破断し、どちらも樹脂成形品を得ることができなかった。金型1,2では十分に成形できていることを確認した(金型1:A’/A=0.952、金型2:A’/A=0.923)。結果を表2に示す。
(比較例7)
ジカルボン酸成分としてシクロヘキサンジカルボン酸100mol%,ジオール成分として9,9’−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)フルオレン25mol%、エチレングリコール75mol%共重合したポリエステル(固有粘度C=0.54dl/g)3重量部をシクロヘキサノン/メチルエチルケトン/トルエン=1/1/1溶液97重量部に溶解させた。得られた溶液をスピンコート法(1st−700rpm10秒、2nd−1000rpm30秒)にてシリコンウエハー上に塗布し、150℃の熱風オーブン中で6時間乾燥させ、膜厚250nmの塗膜を形成した。得られた塗膜について、走査粘弾性顕微鏡にて表面の位相差増大開始温度Tsを測定した。また、上記ポリエステルのガラス転移温度Tg1を測定した。結果を表3に示す。位相差増大開始温度Tsは15℃であった。
また、表面層として、60℃で4時間真空乾燥させた上記ポリエステルを用いる他は実施例6と同様にして積層体、単膜シートを作製した。
得られた積層シートのガラス転移温度Tg21,表面層と基材層の剥離強度を求めた。結果を表3に示す。また、得られた単膜シートの、ガラス転移温度Tg2、室温及びTg2+40℃での動的貯蔵弾性率E’、Tg2+40℃での動的損失弾性率E2”を測定した。結果を表3に示す。
また、プレス温度を110℃、プレス解放温度を70℃とした以外は、実施例6と同様の方法で樹脂成形品を得た。
得られた成形品の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、いずれの金型においても十分に成形できていた(金型1:A’/A=0.965、金型2:A’/A=0.950、金型3:A’/A=0.934)が、成形品の表面を観察したところ、金型3においてパターン倒れが起こっていた。結果を表4に示す。
(比較例8)
スピログリコール30mol%共重合PET(”S−PET30”,三菱ガス化学(株)製,固有粘度C=0.68dl/g)3重量部をシクロヘキサノン/メチルエチルケトン/トルエン=1/1/1溶液97重量部に溶解させた。得られた溶液をスピンコート法(1st−700rpm10秒、2nd−1000rpm30秒)にてシリコンウエハー上に塗布し、150℃の熱風オーブン中で6時間乾燥させ、膜厚250nmの塗膜を形成した。得られた塗膜について、走査粘弾性顕微鏡にて表面の位相差増大開始温度Tsを測定した。また、上記ポリエステルのガラス転移温度Tg1を測定した。結果を表3に示す。位相差増大開始温度Tsは22℃であった。
また、表面層として、80℃で4時間真空乾燥させた上記ポリエステルを用いる他は実施例6と同様にして積層体、単膜シートを作製した。
得られた積層シートのガラス転移温度Tg21,表面層と基材層の剥離強度を求めた。結果を表3に示す。また、得られた単膜シートの、ガラス転移温度Tg2、室温及びTg2+40℃での動的貯蔵弾性率E’、Tg2+40℃での動的損失弾性率E2”を測定した。結果を表2に示す。
また、プレス温度を140℃、プレス解放温度を105℃とした以外は、実施例6と同様の方法で樹脂成形品を得た。
得られた成形品の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、金型1,2では十分に成形ができていたが、金型3では頂点が丸くなっており、十分に成形ができていなかった(金型1:A’/A=0.925、金型2:A’/A=0.902、金型3:A’/A=0.826)。また、成形品の表面を観察したところ、金型3においてパターン倒れが起こっていた。結果を表4に示す。
(比較例9)
イソフタル酸17.5mol%共重合PET(固有粘度C=0.66dl/g)3重量部をN−メチルピロリドン97重量部に溶解させた。得られた溶液をスピンコート法(1st−700rpm10秒、2nd−1000rpm30秒)にてシリコンウエハー上に塗布し、150℃の熱風オーブン中で6時間乾燥させ、膜厚250nmの塗膜を形成した。得られた塗膜について、走査粘弾性顕微鏡にて表面の位相差増大開始温度Tsを測定した。また、上記ポリエステルのガラス転移温度Tg1を測定した。結果を表3に示す。位相差増大開始温度Tsは14℃であった。
また、表面層として、150℃で2時間真空乾燥させた上記ポリエステルを用いる他は実施例6と同様にして積層体、単膜シートを作製した。
得られた積層シートのガラス転移温度Tg21,表面層と基材層の剥離強度を求めた。結果を表3に示す。また、得られた単膜シートの、ガラス転移温度Tg2、室温及びTg2+40℃での動的貯蔵弾性率E’、 Tg2+40℃での動的損失弾性率E2”を測定した。結果を表3に示す。
また、プレス温度を110℃、プレス解放温度を75℃とした以外は、実施例6と同様の方法で樹脂成形品を得た。
得られた成形品の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、いずれの金型においても頂点が丸くなっており、十分に成形ができていなかった(金型1:A’/A=0.872、金型2:A’/A=0.854、金型3:A’/A=0.621)。また、成形品の表面を観察したところ、金型3においてパターン倒れが起こっていた。結果を表2に示す。
(比較例10)
ジカルボン酸成分としてシクロヘキサンジカルボン酸100mol%,ジオール成分として9,9’−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)フルオレン25mol%、エチレングリコール75mol%共重合したポリエステル(固有粘度C=0.54dl/g)3重量部をシクロヘキサノン/メチルエチルケトン/トルエン=1/1/1溶液97重量部に溶解させた。得られた溶液をスピンコート法(1st−700rpm10秒、2nd−1000rpm30秒)にてシリコンウエハー上に塗布し、150℃の熱風オーブン中で6時間乾燥させ、膜厚250nmの塗膜を形成した。得られた塗膜について、走査粘弾性顕微鏡にて表面の位相差増大開始温度Tsを測定した。結果を表3に示す。位相差増大開始温度Tsは15℃であった。
また、表面層として、60℃で4時間真空乾燥させた上記ポリエステルを用いる他は実施例7と同様にして積層体、単膜シートを作製した。
得られた積層シートのガラス転移温度Tg21,表面層と基材層の剥離強度を求めた。結果を表3に示す。また、得られた単膜シートの、ガラス転移温度Tg2、室温及びTg2+40℃での動的貯蔵弾性率E’、 Tg2+40℃での動的損失弾性率E2”を測定した。結果を表3に示す。
また、プレス温度を110℃、プレス解放温度を75℃とした以外は、実施例7と同様の方法で樹脂成形品を得た。
得られた成形品の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、いずれの金型においても十分に成形できていた(金型1:A’/A=0.966、金型2:A’/A=0.957、金型3:A’/A=0.939)が、成形品の表面を観察したところ、金型3においてパターン倒れが起こっていた。結果を表4に示す。
(比較例11)
ジカルボン酸成分としてシクロヘキサンジカルボン酸、ジオール成分として9,9’−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)フルオレン50mol%、エチレングリコール50mol%共重合したポリエステル(固有粘度C=0.59dl/g)を0.2g/mlとなるようにクロロホルムに溶解後、孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、得られた溶液をGPCにてポリスチレン換算重量平均分子量Mw、ポリスチレン換算重量平均分子量Mn、多分散度Mw/Mn、Mw=5000以下の成分含有率Rを求めたところ、Mwは44100、Mnは10300、Mw/Mnは4.28、Rは3.91であった。
次に、上記ポリエステル3重量部をシクロヘキサノン/メチルエチルケトン/トルエン=1/1/1溶液97重量部に溶解させた。得られた溶液をスピンコート法(1st−700rpm10秒、2nd−1000rpm30秒)にてシリコンウエハー上に塗布し、150℃の熱風オーブン中で6時間乾燥させ、膜厚250nmの塗膜を形成した。得られた塗膜について、走査粘弾性顕微鏡にて表面の位相差増大開始温度Tsを測定した。また、上記固形物のガラス転移温度Tg1を測定した。結果を表3に示す。位相差増大開始温度Tsは22℃であった。
また、表面層として、上記固形物を用いる他は実施例7と同様に積層体、単膜シートを作製した。
得られた積層シートのガラス転移温度Tg21、および、表面層と基材層の剥離強度を求めた。結果を表2に示す。また、得られた単膜シートの、ガラス転移温度Tg2、室温及びTg2+40℃での動的貯蔵弾性率E’、Tg2+40℃での動的損失弾性率E2”を測定した。結果を表3に示す。
また、プレス温度を135℃、プレス解放温度を100℃とすること以外は実施例7と同様の方法で樹脂成形品を得た。
得られた成形品の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、いずれの金型においても十分に成形できていた(金型1:A’/A=0.963、金型2:A’/A=0.948、金型3:A’/A=0.928)が、成形品の表面を観察したところ、金型3においてパターン倒れが起こっていた。結果を表4に示す。
(比較例12)
スピログリコール30mol%共重合PET(”S−PET30”,三菱ガス化学(株)製,固有粘度C=0.68dl/g)3重量部をシクロヘキサノン/メチルエチルケトン/トルエン=1/1/1溶液97重量部に溶解させた。得られた溶液をスピンコート法(1st−700rpm10秒、2nd−1000rpm30秒)にてシリコンウエハー上に塗布し、150℃の熱風オーブン中で6時間乾燥させ、膜厚250nmの塗膜を形成した。得られた塗膜について、走査粘弾性顕微鏡にて表面の位相差増大開始温度Tsを測定した。また、上記ポリエステルのガラス転移温度Tg1を測定した。結果を表3に示す。位相差増大開始温度Tsは22℃であった。
また、表面層として、80℃で4時間真空乾燥させた上記ポリエステルを用いる他は実施例7と同様にして積層体、単膜シートを作製した。
得られた積層シートのガラス転移温度Tg21、表面層と基材層の剥離強度を求めた。結果を表3に示す。また、得られた単膜シートの、ガラス転移温度Tg2、室温及びTg2+40℃での動的貯蔵弾性率E’、Tg2+40℃での動的損失弾性率E2”を測定した。結果を表3に示す。
また、プレス温度を140℃、プレス解放温度を105℃とした以外は、実施例7と同様の方法で樹脂成形品を得た。
得られた成形品の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、金型1,2では十分に成形ができていたが、金型3では頂点が丸くなっており、十分に成形ができていなかった(金型1:A’/A=0.925、金型2:A’/A=0.901、金型3:A’/A=0.826)。また、成形品の表面を観察したところ、金型3においてパターン倒れが起こっていた。結果を表4に示す。
(比較例13)
イソフタル酸17.5mol%共重合PET(固有粘度C=0.66dl/g)3重量部をN−メチルピロリドン97重量部に溶解させた。得られた溶液をスピンコート法(1st−700rpm10秒、2nd−1000rpm30秒)にてシリコンウエハー上に塗布し、150℃の熱風オーブン中で6時間乾燥させ、膜厚250nmの塗膜を形成した。得られた塗膜について、走査粘弾性顕微鏡にて表面の位相差増大開始温度Tsを測定した。また、上記ポリエステルのガラス転移温度Tg1を測定した。結果を表3に示す。位相差増大開始温度Tsは14℃であった。
また、表面層として、150℃で2時間真空乾燥させた上記ポリエステルを用い、溶媒としてN−メチルピロリドンを用いる他は実施例7と同様にして積層体、単膜シートを作製した。
得られた積層シートのガラス転移温度Tg21、表面層と基材層の剥離強度を求めた。結果を表3に示す。また、得られた単膜シートの、ガラス転移温度Tg2、室温及びTg2+40℃での動的貯蔵弾性率E’、Tg2+40℃での動的損失弾性率E2”を測定した。結果を表3に示す。
また、プレス温度を110℃、プレス解放温度を75℃とした以外は、実施例7と同様の方法で樹脂成形品を得た。
得られた成形品の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、いずれの金型においても頂点が丸くなっており、十分に成形ができていなかった(金型1:A’/A=0.887、金型2:A’/A=0.865、金型3:A’/A=0.638)。また、成形品の表面を観察したところ、金型3においてパターン倒れが起こっていた。結果を表4に示す。
(比較例14)
ポリメタクリル酸メチル(シグマアルドリッチ(株)製、重量平均分子量15000,固有粘度0.28dl/g)25重量部をシクロヘキサノン/メチルエチルケトン/トルエン=1/1/1溶液75重量部に溶解させた。得られた溶液をスピンコート法(1st−1500rpm30秒)にてシリコンウエハー上に塗布し、150℃の熱風オーブン中で6時間乾燥させ、膜厚250nmの塗膜を形成した。得られた塗膜について、走査粘弾性顕微鏡にて表面の位相差増大開始温度Tsを測定した。また、上記ポリメタクリル酸メチルのガラス転移温度Tg1を測定した。結果を表3に示す。位相差増大開始温度Tsは−7℃であった。
また、表面層として、ポリメタクリル酸メチル(シグマアルドリッチ(株)製、重量平均分子量15000)を用いる他は実施例7と同様に積層体、単膜シートを作製した。
得られた積層シートのガラス転移温度Tg21,およびシートの表面層と基材層の剥離強度を求めた。結果を表3に示す。また、得られた単膜シートの、ガラス転移温度Tg2、室温及びTg2+40℃での動的貯蔵弾性率E’、 Tg2+40℃での動的損失弾性率E2”を測定した。結果を表2に示す。
また、プレス温度を140℃、プレス解放温度を105℃とする以外は、実施例7と同様の方法で樹脂成形品を得ようとしたが、表面層と基材間で剥離が生じ、金型から離型することができなかった。結果を表4に示す。