JP5146304B2 - 遠心分離機 - Google Patents

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Description

本発明は、ロータ室内を真空に保ちつつロータをロータ室内で回転させて試料を分離するための遠心分離機に関し、特に使用者が真空引きが悪くなった状態を容易に認識することができる遠心分離機に関する。
遠心分離機は、チューブやボトルに収容された試料をロータに収納し、ロータをドアにより密閉されたロータ室(回転室)内でモータ等の駆動装置によって高速回転させることによって、ロータと共に回転する試料の分離や精製等を行う。ロータの回転速度はその用途によって異なり、最高回転速度が数千回転程度の比較的低速のものから15万回転程度の高速のものまで種々のロータ回転速度を有する製品群が提供されている。なかでもロータの回転速度が概ね40,000rpmを超える遠心分離機にあっては、ロータ室内の空気とロータとの摩擦熱によるロータと試料の温度上昇を抑制するため、ロータ室を真空にするための真空ポンプを備える。用いられる真空ポンプは、粗引きポンプとしての油回転真空ポンプと、より高真空を得る補助ポンプとしての油拡散真空ポンプとで構成されることが一般的である。真空ポンプを用いた遠心分離機においては、真空状態を低真空/中真空/高真空に分類し、中真空以上になるまでは5,000rpm以上の加速しないようにし、試料の温度上昇を防止している。また、真空ポンプの動作開始後、所定の時間以内に特定の真空度に達しない場合には、真空異常のメッセージを出力し運転を中断する措置が採られている。
真空に関わる日ごろのメンテナンスについては、「ロータ室に水分や霜などが付着していると、所定の真空度に達するのに時間がかかるため、この場合にはロータ室の水分や霜などを布等でふき取ること」が推奨されている。また、「油回転真空ポンプのオイルは劣化していれば交換すること」、「ロータ室内を密閉するドアパッキンにゴミが付着したり傷が付いていると、良好な真空が得られないため、ドアパッキン部を清潔に保ち、頻繁に使用する場合には、3〜4ヵ月毎にドアパッキンを取り出し、柔らかい布等で拭いた後、バキュームグリースを薄く塗布すること」が同様に推奨されている。
一方、真空ポンプの性能を良好に維持するために、様々な工夫がされている。例えば、特許文献1には、真空ポンプの排出口の圧力センサの変化速度が所定の閾値よりも小さい時には、圧力が短時間のうちに加速度的に急激に増加する傾向がないため、圧力の絶対値に関するデータが所定の閾値を越えている場合は、真空ポンプのメンテナンス時期が到来したとコントローラが判断し、報知器を作動させてオペレータに通知する技術が開示されている。
特許文献2には、外部動力により駆動される真空圧を発生する真空ポンプと、真空ポンプにより発生する真空圧を蓄えるタンクと、タンク内の真空圧が第1の所定圧力に達したとき真空ポンプを駆動させる下限スイッチと、タンク内の真空圧が第1の所定圧力よりも高い真空圧の第2の所定圧力に達したとき真空ポンプを停止させる上限スイッチを備え、下限スイッチが動作した後、上限スイッチが動作するまでに所定時間以上要した場合に警報を発するようにした技術が開示されている。
特開2001−12379号公報 特開平6−264871号公報
遠心分離機は、試料を遠心分離するたびに真空ポンプのオン/オフと、ロータ室を密閉するドアの開/閉を行う。遠心分離機を短時間に複数回使用するような場合は、一日に数十回真空ポンプのオン/オフや、ドアの開/閉を繰り返すことがあり、油回転真空ポンプのオイルの劣化は早まり、ロータ室内を密閉するドアパッキンへのゴミの付着や傷の発生が起こり易くなる。さらに、遠心分離する試料を低温に保持する場合には、ロータ室に水分や霜などが付着し易いなど、真空に関わる必要なメンテナンスを実施していないと真空引きが悪くなる状態をまねきやすい環境にある。
遠心分離機は、ロータ室内の空気とロータとの摩擦熱によるロータと試料の温度上昇を防止するため、一定の真空度に達するまではロータを低回転域で回転させ、一定の真空度に達してから高回転域まで加速をする。特に温度上昇に敏感な試料は、低真空で回転をさせずに、高真空になってからロータの回転をスタートさせる必要があるため、真空引きが悪くなった状態が生ずると、ロータが高速回転を開始するまでの時間の遅延をまねき、遠心分離に要する時間が長くなる。さらに悪くなった状態が進むと、真空ポンプを動作開始後、真空ポンプによる真空引きが悪い状態では、特定の時間以内に特定の真空度に達しないことが生じ、真空異常のメッセージが出力されて運転自体が中断されることがある。
通常、遠心分離機において真空引きが悪くなった状態と判断するのは、真空ポンプの動作開始から一定間隔毎(例えば2分間隔)に取得した真空値(真空センサにより測定された気圧(Pa))が、予め登録した真空ポンプ動作時間と真空度の関係の閾値より大きい(真空度が低い)と認識した場合である。しかし、遠心分離機を使用していない期間が長いと、ロータ室の壁面やモータ巻線の表面など真空内に置かれる部材の表面への水分子等の吸着量が増加するため、真空引きを行う過程で吸着分子が徐徐に気化する脱気の現象により、真空到達が遅くなる場合がある。上記した脱気による真空到達の遅れは一時的なものであるが遠心分離機の制御手段が真空引きが悪くなった状態と誤判断すると、使用者に無用の不安を与えてしまうという問題があった。
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、その目的は、真空引きが悪くなった状態を誤検出することを防止し、安定して稼動する使い勝手の良い遠心分離機を提供することである。
本発明の他の目的は、真空に関わるメンテナンスを怠たることによる遠心時間の遅延の防止や、真空異常による運転の中断を防止することができる遠心分離機を提供することである。
本願において開示される発明のうち、代表的なものの特徴を説明すれば、次の通りである。
本発明の一つの特徴によれば、分離すべき試料を保持するロータと、ロータを収容して密閉空間を形成するロータ室とロータを回転駆動する駆動源と、ロータ室内を真空にするための真空ポンプと、ロータ室の真空値を検出する真空センサと、検出された真空値に基づいて遠心分離動作の制御をする制御手段を有し、真空値が閾値より高いときに真空が異常であるとして真空ポンプを停止させる遠心分離機において、真空ポンプが動作していない不動作時間を計測し、不動作時間の長さに応じて真空値の判別禁止時間を設定し、真空ポンプが動作開始してから真空値の判別禁止時間を経過した後に、制御手段は検出された真空値を用いた判別制御を開始するように構成した。この不動作時間は、遠心分離機の電源オフの時間と、遠心分離機の電源はオンであるが真空ポンプが動作していない時間を含み、連続して経過するこれら時間の合計を求めることにより算出できる。
本発明のさらに他の特徴によれば、真空値の判別禁止時間は、真空ポンプ不動作時間に応じて予め設定され、これらの関係を制御手段内の記憶手段に格納しておく。また、真空引きが異常である場合と、異常ではないが真空引きが良くない劣化状態とを判定するための2つの閾値を設け、真空値が異常ではないが劣化状態と判断した場合は、メンテナンスを促すメッセージを表示装置に表示するようにした。真空値の検出は一定間隔毎に複数回行い、複数回の検出結果と閾値との比較により真空の異常及び劣化を判定すると良い。
本発明のさらに他の特徴によれば、検出された真空値と閾値の比較結果を記憶手段に格納し、真空が良くない場合を示す閾値外である状態が、複数の遠心分離動作分連続した際に、メンテナンスを促すメッセージを表示装置に表示する。つまり、メンテナンスを促すメッセージは、1回の遠心分離動作の異常だけで判断するのではなく、複数回連続して発生した場合に表示するようにした。メンテナンスを促すメッセージは、緊急度がそう高くないことから遠心分離の動作が終了した後に表示すると良い。尚、真空が異常であると判定された場合には、その検出がされたらロータの回転を直ちに停止させるようにすると良い。
請求項1の発明によれば、真空ポンプが動作していない不動作時間を計測し、不動作時間の長さに応じて真空値の判別禁止時間を設定し、真空ポンプが動作開始してから判別禁止時間を経過した後に、制御手段は検出された真空値を用いた制御を開始するので、不動作時間により影響する検出のばらつきを排除することができ、真空値を用いた精度の良い制御を行うことができる。
請求項2の発明によれば、不動作時間は、遠心分離機の電源オフの時間と、遠心分離機の電源はオンであるが真空ポンプが動作していない時間を含み、連続して経過するこれら時間の合計により算出されるので、遠心分離機の電源オフの時間まで考慮した高精度な制御が可能となる。
請求項3の発明によれば、真空値の判別禁止時間は、真空ポンプ不動作時間に応じて予め設定され、これらの関係を制御手段に格納しておくので、算出された不動作時間をもとに真空値の判別禁止時間を即座に求めることができる。
請求項4の発明によれば、真空引きが異常である場合と、異常ではないが真空引きが良くない劣化状態を判定する2つの閾値を設け、検出された真空値が、異常ではないが劣化状態と判断した場合は、メンテナンスを促すメッセージを表示装置に表示するので、遠心分離動作を中止するような異常が発生する前に、メンテナンスを促すメッセージが発せられることになり、使用者に無用の不安を与えることなく、真空引きが悪くなった状態による遠心時間の遅延や、真空異常による運転の中断を防止することができる。
請求項5の発明によれば、真空値の検出は一定間隔毎に複数回行い、複数回の検出結果と閾値との比較により真空引きが正常か異常か、及び劣化状態にあるか否かを判定するので、ノイズや検出のばらつき等を排除した高精度な検出を行うことができる。
請求項6の発明によれば、検出された真空値と閾値の比較結果を記憶手段に格納し、真空引きが良くない劣化状態との判定が、複数の遠心分離運転に渡り連続した際に、メンテナンスを促すメッセージを表示装置に表示するので、メンテナンスが必要な状態であると確実に判定された後のメッセージとなり、信頼性の高いメッセージを発することができる。


請求項7の発明によれば、真空が異常であると判定された場合は、ロータの回転を停止させるので、異常の発生時にそのまま遠心分離動作を続行させて、試料等を劣化や損傷させてしまうことを防止できる。
請求項8の発明によれば、メンテナンスを促すメッセージは、遠心分離の動作が終了した後に表示するので、使用者がメッセージを異常の発生と勘違いして遠心分離動作を停止させてしまう恐れを防止できる。また、使用者はメッセージの表示後に直ちにメンテナンス作業に移行することができる。
本発明の上記及び他の目的ならびに新規な特徴は、以下の明細書の記載及び図面から明らかになるであろう。
本発明の実施形態による遠心分離機について、図1に基づいて説明する。図1は、本発明の実施態様に係る遠心分離機の構成を示す断面図である。遠心分離機1は、試料を保持して回転するロータ2と、ロータ2を収容するロータ室3と、ロータ室3を取り囲み密閉空間を形成する真空チャンバ4と、真空チャンバ4へロータ2の出し入れを行うためのドア5と、真空チャンバを減圧する油回転真空ポンプ6と、油回転真空ポンプ6と真空チャンバ4の間に直列に接続された油拡散真空ポンプ7と、使用者が遠心条件の設定操作や運転状態の確認を行う操作表示部8と、ロータ2を回転させる駆動源たるモータ9と、真空チャンバ4への空気の流入を開閉する開閉弁10と、真空チャンバ4内の圧力を測定する真空センサ11と、制御部12と、ロータ室3の内部の温度を一定に保つためのサーモモジュール13を含んで構成される。
油拡散真空ポンプ7は、大気圧から真空引きできないため、初めに油回転真空ポンプ6で真空引きし、その後、油拡散真空ポンプ7が動作し、所定の真空度に到達するまで2つの真空ポンプを用いてロータ室3を減圧する。油拡散真空ポンプ7は、オイルを貯留するボイラと、該ボイラを加熱するヒータと、ボイラで気化したオイル分子を一定方向に噴射させるジェットと、気化したオイル分子を冷却して液化するための冷却部とで構成される。
制御部12は、図示しないマイクロコンピュータ、リアルタイムクロック素子、揮発性及び不揮発性の記憶メモリを含み、図示しない信号線により真空センサ11の信号を入力し、モータ9の回転制御、油回転真空ポンプ6のON/OFF制御、油拡散真空ポンプ7のON/OFF制御、操作表示部8への情報の表示と入力データの取得、開閉弁10の開閉、サーモモジュール13の制御等、遠心分離機1の全体の制御を行う。操作表示部8は、例えばタッチパネル式の液晶表示手段、又はディスプレイと入力装置の組合せであり、使用者に必要な情報を表示し、使用者からの操作の指示を受け取る。
使用者が操作表示部8を操作して遠心分離機1の運転を開始したとき、真空チャンバ内の圧力が充分に低下しないうちにロータ2を高速回転させると、空気との摩擦によってロータ2が発熱し、ロータ2が保持する試料温度が上昇してしまう。この温度上昇を防止するため、制御部12は、真空センサ11の出力から真空チャンバ4内の圧力を検知し、所定の圧力まで低下しなければロータ2を高速回転させないように制御する。また、真空チャンバ4内の圧力の推移状況によって真空が劣化していないかを検出する。
次に真空引きが悪くなった状態を検出する方法を図2を用いて説明する。図2は、真空ポンプを稼働させてからの真空値の遷移を示すグラフであり、縦軸には気圧(Pa)、横軸には時間(分)を示し、ここでは横軸の1目盛を2分間隔としている。比較を容易にするために、図2においてはTの時点で同じ気圧であるものと仮定して説明する。本実施形態においては、真空値の判別禁止時間を求めて、その時間の経過後に真空引きが悪くなった状態の判定を開始するように構成した。これは、遠心分離機を使用していない期間が長いと、ロータ室の壁面やモータ巻線の表面など真空内に置かれる部材の表面への空気分子等の吸着量が増加するため、真空引きを行う過程で吸着分子が徐徐に気化する脱気の現象により、真空到達が遅くためである。
本実施形態では、真空ポンプの不動作時間に対応する真空値の判別禁止時間(T)を決定し、脱気による一時的な真空到達の遅れを真空引きが悪くなった状態として誤判定することを防止するようにした。時間0は、遠心分離動作を開始して真空ポンプをONにした時間であり、Tは本実施形態による真空引きが悪くなった状態の検出を開始する時間である。また、時間Tにおける真空値が所定の値(V)より高いときに真空が異常であるとして2つの真空ポンプとモータを停止させるように制御する。さらに、図2中の閾値曲線23のように、メッセージを表示するか否かを判定するための真空ポンプ動作時間と真空値の関係をあらかじめ設定しておき、測定した真空値が予め登録した閾値曲線23よりも大きい状態の時に、表示操作部8に“メンテナンスが必要”である旨のメッセージを表示するようにした。
理想曲線20は、2つの真空ポンプが理想的に動作する場合の真空値の遷移状況を示すものである。理想曲線20では、真空が異常である閾値(時間T、真空値V)を下回り、真空が良くない場合と判定する閾値である閾値曲線23をすべての領域で下回っているので、この場合は真空引きが悪くなった状態が起きていない。
異常曲線22は、何らかの原因により所望の真空度への到達状況が悪い状況を示す曲線である。異常曲線22では、真空ポンプが動作開始し、Tにて真空引きが悪くなった状態の検出を開始してから、特定の時間Tまでの間に特定の真空値Vよりも高真空到達していないため、真空が良くないか否かを判断するまでもなく真空異常のアラームが発生される。
遷移曲線21は、真空ポンプ動作開始後、特定の時間Tまでの間に特定の真空値Vに達しているため、真空異常とはならずに遠心分離動作を継続することができるが、特定の真空値Vに到達以降の真空度の達成状況が悪く、時間T付近から閾値曲線23よりも大きくなる状態である。つまり真空が劣化してきている状態、即ち真空系のメンテナンスが必要な状態である。本実施形態では、このように真空異常と判断する判断基準に加えて、メンテナンスを推奨するメッセージを表示するように構成した。
次に図3を用いて遠心分離機の真空ポンプが動作していない不動作時間の計測方法を説明する。図3は、真空ポンプ不動作時間と真空値の判別禁止時間の関係を示すグラフである。この真空ポンプ不動作時間には、遠心分離機1の電源をOFFにしている時間、及び、遠心分離機1の電源はONであるが真空ポンプ(6、7)が稼動していない状態の時間を含む。遠心分離機1は制御部12にリアルタイムクロック素子を搭載し時刻を認識できる。また、制御部12にはEEPROMなど電源がオフとなってもデータを記憶可能な素子を搭載している。従って、遠心分離機1の電源がオン状態の時には、真空ポンプが動作していない時間を真空ポンプ不動作時間として積算する。また遠心分離機1の電源がオフの時間は、遠心分離機1の電源がオンした時刻(電源オン時刻)と、電源がオフとなる際に記憶させた時刻(電源オフ時刻)から真空ポンプ不動作時間に積算すれば良い。このようにして、算出した真空ポンプ不動作時間を図3の曲線30と照合することによって真空値の判別禁止時間Tを算出することができる。尚、図3のグラフに示す関係は、あらかじめ制御部12内の記憶手段に記憶させておくと良い。
次に、遠心分離機の真空ポンプの動作を開始させた後に、特定の間隔で真空値を計測する真空値取得手順について説明する。図4は真空値取得手順を示すフローチャートである。まず、遠心分離の開始に伴い、真空ポンプ不動作時間を算出し、図3の曲線30から真空値の判別禁止時間Tを算出し(ステップ41)、真空ポンプの動作が開始したか否かを検出する(ステップ42)。次に、真空値の判別禁止時間Tが経過したか否かを判定し、経過したらステップ44に移行し、経過していなかったら待機する(ステップ43)。次に、真空センサ11の出力を用いて真空値を測定し(ステップ44)、時間Tに到達したか否かを判定する(ステップ45)。時間Tの場合は、ステップ49において真空値が所定の値(V1)以下の高真空に到達しているか(真空度が高い)を判定し(ステップ49)、真空値が所定の値(V1)以上の場合(真空度が低い)、「真空異常」とのメッセージを操作表示部8に表示して、2つの真空ポンプをオフにし、遠心分離運転を停止し(ステップ50)、処理を終了する。
ステップ49において、真空値が所定の値(V1)以下の場合(真空度が高い)ステップ46に移り、制御部12内のタイマによって、前回の測定から2分経過したかを判定し(ステップ46)、特定間隔(ここでは2分)経過毎に取得された真空値を、制御部12中にある図示しないメモリに格納する(ステップ47)。上記のステップを30分経過するまで繰り返して、30分間分のデータ、即ち2分毎の15サンプル分、の取得を行った後、メモリへの格納を終了する(ステップ48)。以上の手順により、真空値の判別禁止時間の間(0〜T)は真空値が取込まれないため、真空度を用いた制御は行われない。尚、本実施形態では制御部12が真空センサ11の出力を取り込まないようにしたが、必ずしもこれに限られず、真空値の判別禁止時間の間(0〜T)に制御部12が真空センサ11の出力を取り込むようにするが、それを判別用に使わないというものであっても良く、同様の効果が得られる。
次に図5を用いて、真空ポンプ等の真空を維持するための部材のメンテナンスが必要か否かの判定手順を説明する。図5は、図4のフローチャートの続きであり、真空のメンテナンスが必要か否かの判断及び表示手順を示す部分である。この判断及び表示も、制御部12中の図示しないマイクロコンピュータによって実行される。
まず、ステップ51において、測定した真空値が予め登録した真空ポンプ動作時間と真空値の関係の閾値曲線23以上(真空度が低い)であるかの判定を行う(ステップ51)。この判定は取得した15サンプルの値と、予め登録した真空ポンプ動作時間と真空値の関係の閾値曲線23(真空系のメンテナンスを必要と判断する閾値)を特定間隔(ここでは2分とする)毎に比較して判定する。ここで、15サンプルがすべて閾値曲線23の真空値を下回る(真空度が高い)場合は、真空値が正常であるので処理を終了する。15サンプルのうち1サンプルでも閾値曲線23を上回る(真空度が低い)場合は、前回測定した真空値が予め登録した真空ポンプ動作時間と真空値の関係の閾値曲線23以上(真空度が低い)であるかを判定する(ステップ52)。前回は閾値曲線23以下(真空度が高い)の場合は、今回の遠心分離動作で初めて閾値を上回ったものであるため、真空値が異常というほどではないので処理を終了する。前回も閾値曲線23以上(真空度が低い)の場合は、いわゆる2回以上連続して異常値が測定されたのでステップ53に進む。
次に、前々回測定した真空値が予め登録した真空ポンプ動作時間と真空値の関係の閾値曲線23以上(真空度が低い)であるかの判定を行う(ステップ53)。ここで、前々回も閾値曲線23以上(真空度が低い)の場合、即ち今回、前回、前々回と3回連続して測定した真空値が閾値曲線23以上であるので、操作・表示部8に「真空のメンテナンスを実施して下さい」とのメッセージを表示し(ステップ54)、処理を終了する。メッセージの表示の仕方は、操作表示部8の画面の一部にポップアップウインドウを表示して、通常の表示内容の上に重畳して表示させるようにしても良いし、備考欄等の空き表示エリアを利用してそこにメッセージを表示するようにしても良い。
尚、ステップ54において、メッセージを表示するのは、15サンプルの真空値を取得した直後にステップ51〜54を実行して、遠心分離運転中にメッセージを表示するようにしても良いし、遠心分離運転が終了するまで待って、ロータ2の回転が停止した後にメッセージを表示するようにしても良い。遠心分離が終了してからメッセージを表示するようにすれば、使用者がメッセージに驚いて異常発生と勘違いして遠心分離運転を止めてしまうような誤操作を防止できるので、使い勝手が良い。
本実施形態によれば、遠心分離機1の電源オフを含む真空ポンプが動作していない不動作時間を計測し、不動作時間の長さに応じて判定禁止時間の長さを変化させることにより、真空引きが悪くなった状態による遠心時間の遅延の防止、真空異常による運転の中断を防止することができる。また、使用者にとっては真空異常によりロータ2の回転が停止する状態が起こる前に、「真空のメンテナンスを実施して下さい」とのメッセージが表示されることがほとんどであるので、安心して遠心分離機を使用することができる。
以上、本発明を示す実施形態に基づき説明したが、本発明は上述の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、本実施形態では今回、前回、前々回と3回連続して閾値曲線23を超えた真空値が存在する場合にメッセージを表示するように構成したが、必ずしも3回連続に限られずに、任意の回数としても良い。また、閾値曲線23を超えたか否かを、測定された15サンプル中1つでも異常値が有れば超えたと判断したが、1つだけの異常値で即断せずに複数のサンプルが異常になった場合に異常であると判断するようにしても良い。
本発明の実施態様に係る遠心分離機の全体構成を示す断面図である。 本発明の実施態様に係る遠心分離機において、真空ポンプを稼働させてからの真空値の遷移を示すグラフである。 本発明の実施態様に係る遠心分離機において、真空ポンプ不動作時間と真空値の判別禁止時間の関係を示すグラフである。 本発明の実施態様において真空値の取得手順を示すフローチャートである。 本発明の実施態様において真空のメンテナンスが必要か否かの判断及び表示手順を示すフローチャートである。
符号の説明
1 遠心分離機 2 ロータ 3 ロータ室 4 真空チャンバ
5 ドア 6 油回転真空ポンプ 7 油拡散真空ポンプ
8 操作表示部 9 モータ 10 開閉弁 11 真空センサ
12 制御部 13 サーモモジュール
20 理想曲線 21 遷移曲線 22 異常曲線 23 閾値曲線
30 (真空ポンプ不動作時間と真空値の判別禁止時間の関係を示す)曲線

Claims (8)

  1. 分離すべき試料を保持するロータと、該ロータを収容して密閉空間を形成するロータ室と前記ロータを回転駆動する駆動源と、前記ロータ室内を真空にするための真空ポンプと、前記ロータ室の真空値を検出する真空センサと、検出された前記真空値に基づいて遠心分離動作の制御をする制御手段を有する遠心分離機において、
    前記制御手段は、
    前記真空ポンプが動作していない不動作時間を計測し、
    前記不動作時間の長さに応じて真空値の判別禁止時間を設定し、
    前記真空ポンプが動作開始してから前記判別禁止時間を経過した後に前記真空値を用いた制御を開始することを特徴とする遠心分離機。
  2. 前記不動作時間は、前記遠心分離機の電源オフの時間と、前記遠心分離機の電源はオンであるが前記真空ポンプが動作していない時間を含み、連続して経過するこれら時間の合計により算出されることを特徴とする請求項1に記載の遠心分離機。
  3. 前記判別禁止時間は、前記真空ポンプ不動作時間に応じて予め設定され、これらの関係を前記制御手段に格納しておくことを特徴とする請求項2に記載の遠心分離機。
  4. 真空引きが異常である場合と、異常ではないが真空引きが良くない劣化状態を判定する2つの閾値を設け、
    前記制御手段はこれらの閾値を用いて、前記真空値が異常ではないが劣化状態と判断した場合は、メンテナンスを促すメッセージを表示装置に表示することを特徴とする請求項3に記載の遠心分離機。
  5. 前記制御手段は、前記真空値の検出一定間隔毎に複数回行い、複数回の検出結果と前記閾値との比較により真空引きが正常か異常か、及び劣化状態にあるか否かを判定することを特徴とする請求項4に記載の遠心分離機。
  6. 前記制御手段は、検出された前記真空値と前記閾値の比較結果を記憶手段に格納し、真空引きが良くない劣化状態との判定が、複数の遠心分離運転に渡り連続した際に、前記メンテナンスを促すメッセージを前記表示装置に表示することを特徴とする請求項5に記載の遠心分離機。
  7. 前記制御手段は、真空引きが異常であると判定た場合は、前記ロータの回転を停止させることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の遠心分離機。
  8. 前記制御手段は、前記メンテナンスを促すメッセージ、前記遠心分離の動作が終了した後に表示することを特徴とする請求項4〜7のいずれか一項に記載の遠心分離機。
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