JP5144358B2 - テラヘルツ波発生方法と装置 - Google Patents
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Description
周波数・波長が異なる2つの単一周波数レーザ光を利用して、差周波混合の原理で単一周波数のテラヘルツ波を発生させる(例えば、下記特許文献1)。さらに、片方のレーザ光の周波数を制御して周波数の差を変化させることにより、テラヘルツ波の周波数を変化させる。
広域のフェムト秒パルスレーザを用いて、広域帯のテラヘルツ波パルスを発生させる手法がある(例えば、下記特許文献2)。
第1レーザビームは所定方向に空間的な広がりを持つとともに、第1レーザビームの空間的な周波数分布は、前記所定方向である周波数勾配方向に周波数の大きさが漸増する分布であり、第2レーザビームも前記周波数勾配方向に空間的な広がりを持つとともに、第2レーザビームの空間的な周波数分布も、前記周波数勾配方向に周波数の大きさが漸増する分布であり、これにより、両レーザビームの重なり領域の各位置で両レーザビームの周波数差が同一となり、該重なり領域から単一周波数のテラヘルツ波を発生させ、
第1レーザビームと第2レーザビームを前記周波数勾配方向に互いに対し空間的にシフトさせることで、前記重なり領域における前記周波数差を変化させ、これにより、前記単一周波数を変化させる、ことを特徴とするテラヘルツ波発生方法が提供される。
レーザ生成誘導装置と差周波混合部とを備え、
前記レーザ生成誘導装置は、第1レーザビームと第2レーザビームを生成し互いに重なるように前記差周波混合部へ案内し、
前記差周波混合部は、入射される第1レーザビームと第2レーザビームの重なり領域において、両レーザビームの周波数差を周波数とするテラヘルツ波を発生させ、
第1レーザビームは所定方向に空間的な広がりを持つとともに、第1レーザビームの空間的な周波数分布は、前記所定方向である周波数勾配方向に周波数の大きさが漸増する分布であり、第2レーザビームも前記周波数勾配方向に空間的な広がりを持つとともに、第2レーザビームの空間的な周波数分布も、前記周波数勾配方向に周波数の大きさが漸増する分布であり、これにより、前記重なり領域の各位置で両レーザビームの周波数差が同一となり、該重なり領域から単一周波数のテラヘルツ波が発生するようになっており、
第1レーザビームと第2レーザビームを前記周波数勾配方向に互いに対し空間的にシフトさせるシフト装置をさらに備え、
前記シフトにより、前記重なり領域における前記周波数差を変化させ、これにより、前記単一周波数が可変となっている、ことを特徴とするテラヘルツ波発生装置が提供される。
所定の周波数帯域を持つレーザ光を発生させる帯域レーザ発生部と、
前記レーザ光が入射されることで、空間的な広がりを持つとともに前記周波数分布を有する勾配レーザビームを生成する周波数勾配生成部と、
前記勾配レーザビームを第1レーザビームと第2レーザビームとに分離するビーム分離部と、
第1レーザビームと第2レーザビームを前記差周波混合部へ案内する案内光学部と、を有する。
前記シフト装置は、前記反射ミラーを移動させることで、前記反射した第2レーザビームが前記差周波混合部へ入射する位置を変化させる。
本発明は、図1に示す特性を持つ第1レーザビームと第2レーザビームを利用する。
図1に示すように、第1レーザビームと第2レーザビームの各々は、周波数勾配方向(図1の横軸方向に対応)に空間的な広がりを持つとともに、その空間的な周波数分布は、前記周波数勾配方向に周波数の大きさが漸増する線形的分布である。第1レーザビームと第2レーザビームの各々の空間的形状は、例えば楕円形状であってよく、この楕円の長軸方向が前記周波数勾配方向に相当してよい。
このような第1レーザビームと第2レーザビームとを、それぞれの周波数勾配方向を同じ向きにして、重ねると、両レーザビーム1a,1bの重なり領域の各位置で両レーザビーム1a,1bの周波数差が同一となる(図2(A)を参照)。即ち、図2(A)において、第1レーザビーム1aと第2レーザビーム1bとは互いに重なっており、重なり領域の各位置(位置x)で、周波数差が同一となる。
図2(A)の状態から、第1レーザビームと第2レーザビームを前記周波数勾配方向に互いに対し空間的にシフトさせることで、前記重なり領域における前記周波数差を変化させる。例えば、図2(A)の状態から、図2(B)のように第2レーザビームを左にシフトさせると、前記周波数差が小さくなる。一方、図2(A)の状態から、図2(C)のように第2レーザビームを右にシフトさせると、前記周波数差が大きくなる。
このような重なり領域を差周波混合部内に位置させるとともに、上述のように前記周波数差を変化させることで、可変な単一周波数のテラヘルツ波を発生させることができる。
レーザ生成誘導装置3は、上述の第1レーザビーム1aと第2レーザビーム1bを生成し互いに重なるように前記差周波混合部5へ案内する。前記差周波混合部5は、入射される第1レーザビーム1aと第2レーザビーム1bの重なり領域において、両レーザビーム1a,1bの周波数差を周波数とするテラヘルツ波6を差周波混合により発生させる。シフト装置7は、第1レーザビーム1aと第2レーザビーム1bを前記周波数勾配方向に互いに対し空間的にシフトさせる。
この構成により、第1レーザビーム1aと第2レーザビーム1bとをそれぞれの周波数勾配方向を同じ向きにして重ね、両レーザビーム1a,1bを前記周波数勾配方向に互いに対し空間的にシフトさせることができる。これにより、前記重なり領域の各位置において両レーザビーム1a,1bの周波数差を同じにしつつ、当該周波数差を変化させることができる。従って、該周波数差に等しい単一周波数のテラヘルツ波6を発生させる場合に、該単一周波数を変化させることができる。
帯域レーザ発生部9は、所定の周波数帯域を持つレーザ光を発生させる。帯域レーザ発生部9は、例えば、フェムト秒レーザやその他の所定の周波数帯域(好ましくは、広帯域)のレーザ光を発生させるレーザ発生部である。
周波数勾配生成部11には、帯域レーザ発生部9からのレーザ光が入射される。周波数勾配生成部11は、入射されるレーザ光から勾配レーザビームを生成する回折格子などの分散素子であってよい。勾配レーザビームは、前記周波数勾配方向に空間的な広がりを持つとともに前記周波数分布を有する。
ビーム分離部12は、前記勾配レーザビームを第1レーザビーム1aと第2レーザビーム1bとに分離する。ビーム分離部12は、例えば、ビームスプリッタであり、勾配レーザビームを好ましくは1対1の強度割合で第1レーザビーム1aと第2レーザビーム1bとに分離する。
案内光学部13は、ビーム分離部12で分離された第1レーザビーム1aと第2レーザビーム1bを、前記差周波混合部5へ案内する。図3の例では、案内光学部13は、ビーム分離部12で分離された第2レーザビーム1bを反射させる第1反射ミラー13aおよび第2反射ミラー13bと、ビーム分離部12で分離された第1レーザビーム1aを反射させる第3反射ミラー13cおよび第4反射ミラー13dと、第2反射ミラー13bで反射された第2レーザビーム1bと第4反射ミラー13dで反射された第1レーザビーム1aとを結合させるように差周波混合部5へ案内するビームスプリッタ13eと、を有する。なお、図3の例では、案内光学部13は、シリンドリカルレンズ13fをさらに有する。この構成で、第1レーザビーム1aと第2レーザビーム1bとが、前記差周波混合部5において互いに重なるように前記差周波混合部5に案内される。
好ましくは、シフト装置7は、第2反射ミラー13bだけでなく、第1反射ミラー13aも同じ方向にかつ同じ距離だけ移動させる。これにより、第2レーザビーム1bと第1レーザビーム1aとの光路差が生じることを防止できる。即ち、ビーム分離部12から差周波混合部5までの第1レーザビーム1aの第1光路と、ビーム分離部12から差周波混合部5までの第2レーザビーム1bの第2光路とは、同じ距離に設定されるが、シフト装置7が、第2反射ミラー13bと第1反射ミラー13aを同じ方向にかつ同じ距離だけ移動させることで、第1反射ミラー13aと第2反射ミラー13bを移動させても第1光路と第2光路に差が生じない。従って、第1レーザビーム1aと第2レーザビーム1bが、パルスレーザである場合にも、発生するテラヘルツ波6の損失を防ぐことができる。
シフト装置7は、例えばサーボモータにより第1反射ミラー13aと第2反射ミラー13bを駆動するものであってよい。
図5(B)は、図5(A)の場合における両レーザビーム1a,1bの周波数差分布を示す。図5(B)に示すように、両レーザビーム1a,1bが重なる領域内の全体において、周波数差は0.7THzである(波長差にすると約1.5nmである)。この結果は、上述した本発明の原理と一致している。
本発明の最大の特長は、広帯域のレーザ光による励起で、単一周波数のテラヘルツ波6を発生させることである。従来のフォトミキサーと呼ばれる差周波発生方法では、帯域が非常に狭い連続光のレーザを用いていたが、その分レーザの強度が低くなり、充分な強度のテラヘルツ波6が得られないという欠点が挙げられる。また、広帯域のフェムト秒レーザの光を、光伝導素子に直接集光させる方法が広く利用されているが、その場合、発生するテラヘルツ波6の帯域も1THz程度と広くなり、分光用のデバイスとして利用するためには、波形自体をサンプリングする必要があった。
これらに対して、本発明は、広帯域のレーザ光の波長を限定することなく、ほぼ全ての波長成分を利用して、同一周波数を持つテラヘルツ波6を発生させることが可能なため、レーザ光の利用率が高く、より効率的な発生手法であると言える。さらに、片方のレーザ光のビーム(第2レーザビーム1b)を空間的にシフトするだけでテラヘルツ波6の周波数が同調されるため、従来のようにレーザ本体を制御して光の波長を変える必要が無く、より安定かつ高速に同調することが可能である。また、図3中で示した勾配レーザビームを形成するための回折格子などの周波数勾配生成部11の波長分解能をさらに高めれば、テラヘルツ波6の線幅をより狭くすることが期待でき、分光測定のためのテラヘルツ波発生装置として充分利用できる。
図8は、上述した本発明の応用例を示す図である。図8に示すように、テラヘルツ波発生装置10は、ビーム走査装置17を有する。
図9は、テラヘルツ波ビームの走査原理を示す図である。この図は、テラヘルツ波ビーム6をそれぞれ(A)左側、(B)正面、(C)右側に向ける場合を示している。
この図において、2aは第1レーザビーム1aの波面、2bは第2レーザビーム1bの波面、6aはテラヘルツ波6の波面、θiは差周波混合部5への第1レーザビーム1aと第2レーザビーム1bとの間の相対的入射角(この例では第1レーザビーム1aの入射角)、θTはテラヘルツ波6の放射角である。
式(2)が意味するものは、発生するテラヘルツ波6の位相が、第1レーザビーム1aと第2レーザビーム1bの位相差に等しくなることである。したがって、図9(A)や図9(C)のように、片方の第1レーザビーム1aの入射方向を傾けると、各位置から発生するテラヘルツ波6の位相も変化し、全体から放射するテラヘルツ波6のビームの波面6aが傾斜するため、進行方向が傾く。従って、片方の第1レーザビーム1aの入射角θiを制御することで、テラヘルツ波ビーム6の走査(図で左右に振ること)ができることになる。
図9(A)において、第1レーザビーム1aの入射を左に傾けることにより生じる第1レーザビーム1aと第2レーザビーム1b間の位相差は数2の式(3)で表現される。
この図に示すように、第1レーザビーム1aの入射角θiを±0.1°振ると、1THzの場合に、テラヘルツ波ビーム6の走査範囲(放射角)は±40°にも及び、広角度のビーム走査が可能となる。
レーザ光偏向装置19は、第4反射ミラー13dを回転駆動することで、第1レーザビーム1aの入射角θiを変化させる。代わりに、レーザ光偏向装置19は、第4反射ミラー13dとビームスプリッタ13eとの間などに配置され、第1レーザビーム1aの進行方向を変更する装置(例えば、電気光学変更器、音響光学偏向器、)であってもよい。
共焦点レンズ系21は、共通焦点23bとこれより上流側に位置する第1焦点23aとの間に位置し、第1焦点23aを通過した第1レーザビーム1aを共通焦点23bに集光させるようになっている。この例で、共焦点レンズ系21は、2枚の凸レンズ21a,21b(又は凸レンズ群)からなり、それぞれ焦点距離F1,F2を有し、その間隔がF1+F2に設定されている。焦点距離F1,F2は、同一であるのが好ましいが、相違してもよい。
(2)非線形光学素子には、非線形光学結晶、光伝導素子を含む。
(3)テラヘルツ波が発生する非線形光学素子は、アレー構造であってもよい。
(4)アレー構造の場合の素子数は2つ以上であれば幾つでもよい。
(5)レーザ光の帯域は可視光や赤外線である。
(6)レーザ光偏向装置として、電気光学偏向器、音響光学偏向器、回転ミラーがこれに含まれる。
(7)レンズの代わりに、反射鏡を用いてもよい。
(8)2次元方向のテラヘルツ波ビーム走査も可能である。
Claims (4)
- 第1レーザビームと第2レーザビームとを差周波混合部に入射し、両レーザビームを該差周波混合部内で重ねることで、両レーザビームの周波数差を周波数とするテラヘルツ波を発生させるテラヘルツ波発生方法であって、
第1レーザビームは所定方向に空間的な広がりを持つとともに、第1レーザビームの空間的な周波数分布は、前記所定方向である周波数勾配方向に周波数の大きさが漸増する分布であり、第2レーザビームも前記周波数勾配方向に空間的な広がりを持つとともに、第2レーザビームの空間的な周波数分布も、前記周波数勾配方向に周波数の大きさが漸増する分布であり、これにより、両レーザビームの重なり領域の各位置で両レーザビームの周波数差が同一となり、該重なり領域から単一周波数のテラヘルツ波を発生させ、
第1レーザビームと第2レーザビームを前記周波数勾配方向に互いに対し空間的にシフトさせることで、前記重なり領域における前記周波数差を変化させ、これにより、前記単一周波数を変化させる、ことを特徴とするテラヘルツ波発生方法。 - 第1レーザビームと第2レーザビームから両レーザビームの周波数差を周波数とするテラヘルツ波を発生させるテラヘルツ波発生装置であって、
レーザ生成誘導装置と差周波混合部とを備え、
前記レーザ生成誘導装置は、第1レーザビームと第2レーザビームを生成し互いに重なるように前記差周波混合部へ案内し、
前記差周波混合部は、入射される第1レーザビームと第2レーザビームの重なり領域において、両レーザビームの周波数差を周波数とするテラヘルツ波を発生させ、
第1レーザビームは所定方向に空間的な広がりを持つとともに、第1レーザビームの空間的な周波数分布は、前記所定方向である周波数勾配方向に周波数の大きさが漸増する分布であり、第2レーザビームも前記周波数勾配方向に空間的な広がりを持つとともに、第2レーザビームの空間的な周波数分布も、前記周波数勾配方向に周波数の大きさが漸増する分布であり、これにより、前記重なり領域の各位置で両レーザビームの周波数差が同一となり、該重なり領域から単一周波数のテラヘルツ波が発生するようになっており、
第1レーザビームと第2レーザビームを前記周波数勾配方向に互いに対し空間的にシフトさせるシフト装置をさらに備え、
前記シフトにより、前記重なり領域における前記周波数差を変化させ、これにより、前記単一周波数が可変となっている、ことを特徴とするテラヘルツ波発生装置。 - 前記レーザ生成誘導装置は、
所定の周波数帯域を持つレーザ光を発生させる帯域レーザ発生部と、
前記レーザ光が入射されることで、空間的な広がりを持つとともに前記周波数分布を有する勾配レーザビームを生成する周波数勾配生成部と、
前記勾配レーザビームを第1レーザビームと第2レーザビームとに分離するビーム分離部と、
第1レーザビームと第2レーザビームを前記差周波混合部へ案内する案内光学部と、を有する、ことを特徴とする請求項2に記載のテラヘルツ波発生装置。 - 前記案内光学部は、光路に関して前記ビーム分離部と前記差周波混合部との間に設けられ、前記ビーム分離部からの第2レーザビームを反射させる反射ミラーを有し、
前記シフト装置は、前記反射ミラーを移動させることで、前記反射した第2レーザビームが前記差周波混合部へ入射する位置を変化させる、ことを特徴とする、請求項3に記載のテラヘルツ波発生装置。
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