JP4401682B2 - フォノンポラリトン導波路結合テラヘルツ波発生装置 - Google Patents

フォノンポラリトン導波路結合テラヘルツ波発生装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はコヒーレントテラヘルツ波発生装置に関わる。
【0002】
【従来の技術】
生体物質など、大きな分子や高分子を識別するためのテラヘルツ波分光光源として利用され、更には周波数選択化学反応への利用が期待されるテラヘルツ波の発生装置として、誘電体LiNbO結晶内のフォノンポラリトンモードを利用した差周波発生やパラメトリック発振によるテラヘルツ波発生装置が知られている。すなわち、非線形光学結晶であるLiNbO結晶などに一つまたは二つのポンプ光(後者をシグナル光あるいはアイドラ光と呼ぶこともある)を入射し、差周波発生やパラメトリックオッシレーションにより、テラヘルツ電磁波と結晶のフォノンによる分極を励起し、テラヘルツ波電磁波を発生し外部に取り出す。こうして得られるテラヘルツ波電磁波の周波数はおよそ0.7THzから2.5THzの範囲のコヒーレント光である。LiNbO結晶の場合はテラヘルツ波の方向がポンプ光の方向と大きくことなるため、図1のように結晶内光路側面にシリコンプリズムを配置して位相の揃う方向に取り出す。
【0003】
一方GaP結晶内のフォノンポラリトンモードを利用する場合は取り出し角度が小さく、ポンプ光の光路前方からテラヘルツ波を外部に取り出すことができるため比較的効率が高い。いずれの方式においても外部に取り出す際に分極振動が電磁波になる際に広がってでてくるのでこれを図のような軸はずし法物面鏡で集光するか、あるいはポリエチレンレンズやシリコンレンズを使って図のように集光する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
GaPなどの非線形光学結晶の前方からテラヘルツ波電磁波を自由空間に取り出す場合について説明する。結晶のフォノンポラリトンモードすなわちフォノンと電磁波が結合したモードからテラヘルツ波電磁波が自由空間に放出される際、ビームの広がりが大きく、また放出の効率も高くない。これは結晶内で発生したテラヘルツ結晶振動による分極が完全に進行方向に揃っていないこと、および外部の電磁界モードと整合がとれていないためである。その上、位相整合のため斜め方向に放出させることになり、そのため楕円ビーム形状となり、レンズやミラーで集光する方式では有効に集束することが容易でない。その結果、テラヘルツ波の取り出しあるいは結合効率が悪く、またビームの不均一な広がりのため簡便な測定ができない。
【0005】
本発明の目的は、述上の欠点を除き、効率高くテラヘルツ電磁波出力を取り出し簡便に測定に利用できるテラヘルツ波発生装置を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明ではGaPなどのフォノンポラリトンモードを励起してテラヘルツ波電磁波を発生する非線形光学結晶のテラヘルツ波を取り出す出力面に対して、テラヘルツ波の波長程度あるいはその数倍以下の距離まできわめて近接させあるいは直結させてテラヘルツ波導波路すなわち中空金属パイプからなる金属導波管、あるいは誘電体丸棒などの誘電体導波路を対向して設置する。その結果、非線形分極から放出されるべきテラヘルツ波電磁波のモードパターンが導波路のそれに整合することになり、効率高くまた細い均一なビームとしてテラヘルツ波を外部に取り出すことが可能となる。ポンプ光が該導波路に侵入することを防ぐためテラヘルツ波は出力面に垂直に近く入射させ、一方、ポンプビームは出力面で全反射となるような角度で入射させることが望ましい。また、整合度を高めるため、テラヘルツ波の出射方向は出力面に垂直に近いことが望ましい。このためには、後述の図のように結晶を最適な形状にする。
【0007】
【作用】
テラヘルツ波発生用結晶のテラヘルツ波出力面に導波路が接近すると結晶内部で励起されているフォノンポラリトンモード誘電分極から発するテラヘルツ波放射電磁界分布の境界条件のすくなくとも一部を該導波路自体が形成することとなり、結晶内部での誘電分極振動からのテラヘルツ波放射に直接影響し整合するから導波路内最適分布に対応するモードでテラヘルツ波電磁波が放出されることになる。このためには導波路の入力端面の基本波あるいは最適モードのモードパターンと結晶側出力面のモードパターンが界面にて十分重なることが必要であるから導波路の管内波長の少なくとも数倍以下の距離まで該導波路を結晶の出力面に近接させなければならない。望ましくは波長程度以下まで近接させる。
【0008】
なお、導波路にポンプビーム自体が侵入するとGeフィルタなどで除去しなければならず、Geでの吸収や再放射が起きるのでポンプ光は出力面での全反射を使って除去することが望ましい。その方法をGaP結晶の場合について図を使って説明する。GaPにおいてはポンプ光の波長が1.0μmよりわずかに長波長では、平行方向でフォノンポラリトンとの位相不整合Δqを発生するがこれは非常に小さい。従って角度整合に必要な、二つのポンプ光が結晶内で成す角θinが十分に小さい微小角度整合になっている。ポンプ光波長1.064μm、テラヘルツ周波数1THzでは約3.2分と求められる。一方、差周波テラヘルツ波が結晶内で成す角θはθinより100倍以上大きく約14度から20度である。それでもLiNbO結晶の場合の60度に比べて十分小さい。ポンプ光のGaP内部での全反射角は約15度であるから、図のようにポンプ光を出力面方向から15度以上傾いて入射するように結晶入射端面の方向を傾ければポンプ光は出力面で全反射され、一方、テラヘルツ光は出力面に対して垂直に近い角度で出射することができる。
【0009】
【実施例】
(実施例1)
に示すように第1のポンプ光16として波長1.064μmのパルスYAGレーザを使用する。第2のポンプ光として波長可変パラメトリックオッシレータ(OPO)からのレーザ光17をGaP結晶15に入射する。OPOの出力光波長を1.038μmから1.062μmの範囲または1.066μmから1.091μmの範囲に選べば差周波数は0.5THzから7THzの範囲になる。1THz近傍のテラヘルツ波を得る場合について説明する。テラヘルツ波出力面に内径1mmの円筒状金属導波管19を1THzの自由空間波長である300μm程度以下まで近接または直結して配置する。導波管の長さは測定対象物の位置まであるいは測定対象物を導波管で挟んで検出器まで導波管を伸ばして伝送させてもよい。図は径がしだいに広がる型のテーパ導波管の場合であり、モードが多重になる可能性があるが、導波管内部での損失が径の増大とともに減少する。図は逆に狭くなる型のテーパ導波管を配置する場合であり、サンプル微小部分のテラヘルツ分光特性の測定に適している。円筒状金属導波管ではなく矩形金属導波管であってもよい。図のように円筒あるいは矩形導波管19の他端に導波管・ストリップ線路変換器20を介してストリップ線路21を接続し、該ストリップ線路上に塗布されたDNAや生体高分子サンプル22によるインピーダンス変化をインピーダンス測定器23を用いて測定し、分子の同定やテラヘルツ波応答特性の解明に利用することができる。
【0010】
(実施例2)
テラヘルツ波導波路として誘電体の棒あるいは誘電体ファイバを用いる。誘電体棒としてたとえばポリエチレンを円筒状に加工して実施例1と同様に配置する。寸法はポリエチレンの屈折率を考慮すればよい。テーパ状にすることは実施例1と同様である。ポリエチレン導波路は多少吸収をともなうが、フレキシブルなので図のようにテーパによってファイバ状に細くしてから人体内部などに挿入してテラヘルツ波を送り、内部の吸収や反射を測定することができる。屈折率が内部で大きい階段型や連続分布の集束型誘電体導波路や誘電体ファイバにすればテラヘルツ波伝送中の漏洩減衰を減らすことができる。
【0011】
【発明の効果】
本発明によれば、導波路によってフォノンポラリトンモードからテラヘルツ波電磁波を効率高く取り出し伝送し操作が容易なビームを得ることのできる、0.5THzから7THzまでの周波数可変THz波単一周波数コヒーレントテラヘルツ波発生装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来のテラヘルツ波発生法を示す図である。
【図2】 軸はずし法物面鏡によるテラヘルツ波集光法を示す図である。
【図3】 ポリエチレンレンズによるテラヘルツ波集光法を示す図である。
【図4】 本発明におけるポンプ光の全反射による除去法を示す図である。
【図5】 実施例1における、金属導波管を接続したテラヘルツ波発生部を示す図である。
【図6】 実施例1における、次第に太くなるテーパー導波管を接続したテラヘルツ波発生部を示す図である。
【図7】 実施例1における、次第に細くなる導波管を接続したテラヘルツ波発生部を示す図である。
【図8】 実施例1における、ストリップ線路を接続したテラヘルツ波発生部を示す図である。
【図9】 実施例2における本発明テラヘルツ波発生部の構成を示す図である。
【符号の説明】
1−−−LiNbO結晶
2−−−第1のポンプ光
3−−−第2のポンプ光(アイドラ光、あるいは信号光とも呼ぶ)
4−−−テラヘルツ波
5−−−シリコンプリズム
6−−−GaP結晶
7−−−第1のポンプ光
8−−−第2のポンプ光
9−−−テラヘルツ波
10および11−−−軸はずし法物面鏡
12−−−検知器
13および14−−−ポリエチレンレンズ
15−−−GaP結晶
16−−−第1のポンプ光
17−−−第2のポンプ光
18−−−テラヘルツ波
19−−−金属導波管
20−−−導波管・ストリップ線路変換器
21−−−ストリップ線路
23−−−インピーダンス測定器
24−−−テーパ型ポリエチレンファイバ導波路

Claims (6)

  1. フォノンポラリトンを差周波混合あるいはパラメトリック発振によって励起しテラヘルツ波電磁波を発生する半導体あるいは誘電体非線形光学結晶のテラヘルツ波を取り出す出力面に近接あるいは直結して、テラヘルツ波電磁波を導波する中空金属、あるいは誘電体で形成された導波路が設置され、該導波路を通してテラヘルツ波電磁波出力が取り出されることを特徴とするフォノンポラリトン導波路結合テラヘルツ波発生装置。
  2. 前記非線形光学結晶がGaP結晶であることを特徴とする請求項1に記載のフォノンポラリトン導波路結合テラヘルツ波発生装置。
  3. 前記テラヘルツ波出力面においてポンプ光が全反射することを特徴とする請求項1又は2に記載のフォノンポラリトン導波路結合テラヘルツ波発生装置。
  4. 前記導波路がテーパを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のフォノンポラリトン導波路結合テラヘルツ波発生装置。
  5. 前記導波路の少なくとも一部がフレキシブルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のフォノンポラリトン導波路結合テラヘルツ波発生装置。
  6. 前記導波路の一部にストリップ線路が結合されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のフォノンポラリトン導波路結合テラヘルツ波発生装置。
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