以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(導電性高分子アクチュエータ)
本発明の導電性高分子アクチュエータは、電気化学的酸化または還元によって駆動するカチオン駆動層およびアニオン駆動層を少なくとも積層して構成されるバイモルフ層を有するものであれば、特に制限されない。このバイモルフ層の構成として、カチオン駆動層とアニオン駆動層を直接にまたは接着剤、金属膜等を介して積層する構成が可能であり、または、カチオン駆動層とアニオン駆動層との中間に基材(電解液保液機能有する)を設ける構成も可能である(カチオン駆動層/基材/アニオン駆動層)。さらに、基材の両面に金属膜を積層してカチオン駆動層とアニオン駆動層とをそれぞれ積層した5層構造も可能である。
また、導電性高分子材料としては、特に制限されず、例えば、分子鎖にピロールおよび/またはピロール誘導体を含むものが好ましい。また、導電性高分子アクチュエータの幅、長さ、厚み等のサイズは、アクチュエータとしての用途に応じて適宜設定され、第1、および第2導電性高分子アクチュエータとしては、それぞれ同じサイズが好ましい。
また、上記導電性高分子は、ドーパントとしてのアニオンを、該導電性高分子へのドーピングおよび脱ドーピングすることができるものであれば、特に限定されるものではない。上記ドーパントは、必要とされる電解伸縮量や用途等に応じて、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、BF4 −、PF6 −、過塩素酸イオンやパーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンを用いることができる。
特に、上記導電性高分子として、上記導電性高分子が、下記式(1)で表されるパーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンがドープされた膜状導電性高分子を用いること、
(CmF(2m+1)SO2)(CnF(2n+1)SO2)N− (1)
〔上記式(1)において、mおよびnは任意の整数。〕、
または、上記導電性高分子として、下記式(2)で表されるパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンがドープされた膜状導電性高分子を用いること、
(ClF(2l+1)SO2)(CmF(2m+1)SO2)(CnF(2n+1)SO2)C− (2)
〔上記式(2)において、l、mおよびnは任意の整数。〕、
が、より速い駆動速度を得ることができるために好ましい。
なお、本発明において、バイモルフ層の中間層として、基材を用いることができる。この基材(さらに金属電極層)を介してアニオン層、カチオン層がそれぞれ形成される。この基材としては、その面方向での伸縮が可能な素材であれば特に制限されず、例えば、不織布、紙、布、綿、メンブレン素材、織物素材、編み物素材等が例示される。また、基材は、絶縁性を有し、電解液を含浸、又は液移動可能に保持できることが好ましい。また、基材の厚み、硬度は、伸縮変位機能を発揮するように設計されていれば、特に制限されない。
また、基材としては、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミド、ポリオレフィン、セルロースアセテートなどの多孔質基材(多孔質支持体)が好ましい。なかでも、上記多孔質基材(多孔質支持体)としては、化学的安定性や柔らかさやアクチュエータ素子の繰り返しの駆動における耐久性の観点から、多孔質ポリテトラフルオロエチレン(多孔質PTFE)などをもちいることが特に好ましい。また空中で駆動させる場合は、電解液を保持している層(多孔質基材層(多孔質支持体層))のイオン導電率が高いことがより好ましく、また、空孔率は可能な限り高い方が好ましい。
(駆動電解液)
本発明に用いられる駆動電解液は、上記導電性高分子アクチュエータの各素子が電圧印可により駆動するための電解質を含み、上記電解質を溶解するための溶媒として用いられる。本発明においては、上記電解質を溶解する溶媒として有機溶媒、水、有機溶媒と水の混合溶液を用いることができる。水本発明においては、上記電解質を溶解する溶媒として有機溶媒および酸の混合溶液、または有機溶媒、水、および酸の混合溶液を用いることができる。また、上記導電性高分子が酸に接触処理したものを用いる場合では、上記電解質を溶解する溶媒として、有機溶媒、または有機溶媒および水の混合溶液を用いることができる。駆動電解液としてこれらの混合溶液を含むことにより、上記導電性高分子アクチュエータは、一定の電圧を与えた状態における時間に対する伸縮量(駆動速度)を測定した場合に、上記駆動電解液中で大きな駆動速度を示すことができる。
また、本発明においては、上記有機溶媒が、エステル結合、カーボネート結合、およびニトリル基のうち少なくとも1つ以上の結合または官能基を含む極性有機化合物であることが好ましい。
上記有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、電気化学の反応場として用いることができる溶媒であることが好ましい。上記極性有機化合物としては、たとえば、γ−ブチロラクトン、α―メチル−γ−ブチロラクトン(以上、エステル結合を含む有機化合物)、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート(以上、カーボネート結合を含む有機化合物)、およびアセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル(以上、ニトリル基を含む有機化合物)をあげることができる。上記極性有機化合物は速い伸縮速度と大きな最大伸縮率を得ることができるために好ましい。なかでも、たとえば、プロピレンカーボネート、ブチロラクトン、アセトニトリル、又はエチレンカーボネイトなどが好ましく、バランスの良い駆動性能と共に、より長期の耐久性を得ることができる。
また、上記混合溶媒に水を含む場合、水と有機溶媒との混合比は、特に限定されるものではない。上記駆動電解液の溶媒として水を含む混合溶媒を用いた場合には、有機溶媒のみを用いた場合に比べて通常2倍以上の駆動速度の向上をすることができる。また、上記有機溶媒は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
上記駆動電解液は、導電性高分子や有機溶媒の種類により、上記混合比を特定することが難しい。有機溶媒の導電性高分子を膨潤させる能力等により、駆動速度を向上させるための有機溶媒の最小値は、上記有機溶媒の種類に依存することになる。たとえば、プロピレンカーボネートについては、特級試薬では水の含有量が0.005%であることから、水と有機溶媒との混合比を0.1:99.9とすることもできる。上記混合溶媒における水と有機溶媒との好適な混合比の範囲は、容量比で、水含有比下限が0.5、1.0、5.0、10または20から選ばれる値から、水含有比下限上限が99.5、99.0、95.0、90.0、または80.0から選ばれる範囲を、有機溶媒の種に応じて、選ぶことができる。なお、上記混合比は、ガスクロマトグラフィー法を用いた測定方法、特に水分含有率が少ない場合にはカールフィッシャー法を用いた測定方法を用いることにより、駆動電解液を分析することにより求めることができる。
たとえば、上記有機溶媒がプロピレンカーボネートである場合には、水とプロピレンカーボネートとの混合比が容量比で25:75〜75:25であることが、導電性高分子への電圧印可による駆動速度がより速くなるため好ましい。上記混合溶媒は、上記有機溶媒が複数種用いられていてもよく、この場合には、上記混合比は、水の重量と全有機溶媒の合計重量との比で計算される。
上記水は、特に限定されるものではないが、純水、蒸留水もしくはイオン交換水であることが、金属イオンや塩化物イオン等による電解伸縮への阻害因子が含まれ難いために好ましい。
また、上記の駆動電解液には、電解質としてアニオンが含まれる。上記アニオンは、ドーパントイオンとして、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、BF4 −、PF6 −やパーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンを用いることができる。また、上記アニオンは、たとえば、Na+、K+、Li+等とカチオンと対イオンを形成した電解質塩を用いてもよい。
上記電解質塩としては、たとえば、上記アニオンのリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウムパーフルオロアルキルスルホニルイミド、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドのリチウム塩、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドのテトラブチルアンモニウム塩等を挙げることができる。
上記電解質として電解質塩が加えられる場合、上記駆動電解液100重量部に対して、上記電解質塩が1〜90重量部含まれることが好ましく、5〜75重量部含まれることがより好ましく、10〜50重量部含まれることが特に好ましい。
また、上記駆動電解液には酸を含む混合溶液を用いることもできる。この酸としては、特に限定されるものではないが、一価の強酸であることが好ましい。
上記酸としては、たとえば、(CF3SO2)2NH、(C2F5SO2)2NH、(CF3SO2)(C2F5SO2)NHなどのパーフルオロアルキルスルホニルイミド、(CF3SO2)3CH、(C2F5SO2)3CH、(CF3SO2)(C2F5SO2)2CHなどのパーフルオロアルキルスルホニルメチド、硝酸などの無機酸などが好ましいものとしてあげられる。
上記酸は単独で用いてもよいし、また2種以上を混合して使用してもよいが、上記駆動電解液のpHが0〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましい。上記pHが4以上であると十分な添加効果が得られにくく、一方、上記pHが0以下では溶媒が分解してしまうおそれがある。なお、上記導電性高分子が酸に接触処理したものを用いる場合では、特に酸を駆動電解液に含まなくてもよい。
さらに、上記駆動電解液には、アニオンが含まれる。上記アニオンは、ドーパントイオンとして、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、BF4 −、PF6 −やパーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンを用いることができる。これらのアニオンを用いた場合であっても、上記混合溶媒を用いることにより、導電性高分子を含む導電性高分子アクチュエータ素子の駆動速度を向上することができる。
特に、上記駆動電解液において、より速い駆動速度を得るために、上記導電性高分子アクチュエータに含まれる導電性高分子のバルク中に下記式(3)で表されるパーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンを含み、かつ、上記駆動電解液中にも下記式(3)で表されるパーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンを含むことがより好ましい。
(式3)
(CmF(2m+1)SO2)(CnF(2n+1)SO2)N− (3)
〔上記式(3)において、mおよびnは任意の整数。〕
さらに、上記駆動電解液において、より速い駆動速度を得るために、上記高分子アクチュエータ素子に含まれる導電性高分子のバルク中に下記式(4)で表されるパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンを含み、かつ、上記駆動電解液中にも下記式(4)で表されるパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンを含むことがより好ましい。
(式4)
(ClF(2l+1)SO2)(CmF(2m+1)SO2)(CnF(2n+1)SO2)C− (4)
〔上記式(4)において、l、mおよびnは任意の整数。〕
これらのドーパントイオンを含むことにより、上記導電性高分子のバルク中に上記パーフルオロアルキルスルホニルイミドまたはパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンが取り込まれ、または放出されて、導電性高分子が大きな伸縮運動をすることができるので、上記高分子アクチュエータ素子は、従来の導電性高分子の電解伸縮方法に比べて、速い駆動速度を示すことができる。
また、本発明においては、上記電解質を溶解する溶媒として常温常圧下で液状の非イオン性有機化合物を含む溶液を用いることができる。上記非イオン性有機化合物は、イオン性官能基やイオン性部位を分子構造中に有していないものであれば特に限定されず適宜用いることができる。上記有機化合物としては、電荷のキャリアとなるイオンを含む塩の溶媒となることができる有機化合物、または電荷のキャリアとなることができる有機化合物であればよい。上記非イオン性有機化合物は、180℃以上の沸点または分解温度を有し、常温常圧下で液状であることが好ましく、さらに溶媒としての機能も有することが好ましい。また、245℃以上の沸点を有する有機溶媒であることがより好ましい。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
上記非イオン性有機化合物としては、たとえば、ジエチレングリコール、グリセリン、スルホラン、プロピレンカーボネート、ブチロラクトン、アセトニトリル、エチレンカーボネイト、ポリエーテル化合物などをあげることができる。なかでも、たとえば、ジエチレングリコール、グリセリン、スルホラン、プロピレンカーボネート、ブチロラクトン、又はポリエーテル化合物などが好ましく、さらには、ポリエーテル化合物を用いることが、バランスの良い駆動性能と共に、より長期の耐久性を得ることができるため、特に好ましい。
上記非イオン性有機化合物は単独で用いてもよいし、また2種以上を混合して使用してもよいが、配合量としては、電解液100重量部に対して、0.01〜100重量部であることが好ましく、0.05〜50重量部であることがより好ましく、0.1〜30重量部であることがさらに好ましい。0.01重量部未満であると十分な経時的耐久性が得られない場合があり、100重量部を超えると駆動周波数が低下する場合がある。
また、駆動電解液には、電解質としてアニオンが含まれる。上記アニオンは、ドーパントイオンとして、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、BF4 −、PF6 −やパーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンを用いることができる。また、上記アニオンは、たとえば、Na+、K+、Li+等とカチオンと対イオンを形成した電解質塩を用いてもよい。
上記電解質塩としては、たとえば、上記アニオンのリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウムパーフルオロアルキルスルホニルイミド、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドのリチウム塩、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドのテトラブチルアンモニウム塩等を挙げることができる。
上記電解質として電解質塩が加えられる場合、上記駆動電解液100重量部に対して、上記電解質塩が1〜90重量部含まれることが好ましく、5〜75重量部含まれることがより好ましく、10〜50重量部含まれることが特に好ましい。
また、本発明においては、上記駆動電解液中にさらにイオン性液体を含むことができる。イオン性液体は、特に限定されないで用いることができる。なかでも、上記イオン性液体が、テトラアルキルアンモニウムイオン、ジアルキルイミダゾリウムイオン、トリアルキルイミダゾリウムイオンなどのイミダゾリウムイオン、ピラゾリウムイオン、ピロリウムイオン、ピロリニウムイオン、ピロリジニウムイオン、およびピペリジニウムイオンからなる群より少なくとも一種選ばれたカチオンと、PF6 −、BF4 −、AlCl4 −、ClO4 −、および下記式(5)で示されるスルホニウムイミドアニオンからなる群より少なくとも一種選ばれたアニオンとの組合せからなる塩を含むことが好ましい。これらのイオン性液体は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
(式5)
(CmF(2m+1)SO2)(CnF(2n+1)SO3)N− (5)
[上記式(5)において、mおよびnは任意の整数である。]。
さらには、上記駆動電解液において、より速い駆動速度を得るために、上記アクチュエータ素子に含まれる導電性高分子のバルク中に下記式(6)で表されるパーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンを含み、かつ、上記駆動電解液中にも下記式(6)で表されるパーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンを含むことがより好ましい。
(式6)
(CmF(2m+1)SO2)(CnF(2n+1)SO2)N− (6)
〔上記式(6)において、mおよびnは任意の整数。〕。
また、上記駆動電解液において、より速い駆動速度を得るために、上記アクチュエータ素子に含まれる導電性高分子のバルク中に下記式(7)で表されるパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンを含み、かつ、上記駆動電解液中にも下記式(7)で表されるパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンを含むことがより好ましい。
(ClF(2l+1)SO2)(CmF(2m+1)SO2)(CnF(2n+1)SO2)C− (7)
〔上記式(7)において、l、mおよびnは任意の整数。〕。
これらのドーパントイオンを含むことにより、上記導電性高分子のバルク中に上記パーフルオロアルキルスルホニルイミドまたはパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンが取り込まれ、または放出されて、導電性高分子が大きな伸縮運動をすることができるので、上記アクチュエータ素子は、従来の導電性高分子の電解伸縮方法に比べて、速い駆動速度を示すことができる。
なお、本発明の導電性高分子アクチュエータ素子においては、特定の形状を有し、かつ導電性高分子を含んでなる導電性高分子有形物に含まれるアニオンと同じアニオンが、上記駆動電解液中に含まれることが好ましい。上記アクチュエータ素子に用いられた導電性高分子のバルク中に含まれ、ドーパントとして機能し得るアニオンと同じアニオンが上記駆動電解液中に含まれることにより、導電性高分子バルク中への出入りが容易となりやすく、所望の伸縮量の電解伸縮を容易に得ることができる。また、上記駆動電解液中に含まれるアニオンがパーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンまたはパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンである場合には、上記駆動電解液中で電解伸縮をさせる導電性高分子有形物の製造用電解液中に含まれるパーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンまたはパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンとイオン半径が同程度であることが、電解伸縮を容易に行うことができるので好ましい。
(導電性高分子アクチュエータの製造方法)
支持電解質として例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸を用いて電解重合法により作用電極上に得られた導電性高分子膜(第1の駆動層)作製する。次いで、得られた導電性高分子膜(第1の駆動層)上に導電性高分子膜(第2の駆動層)を電解重合法(支持電解質として例えば、パラフェノールスルホン酸を用いる)により作製する。この際に、第1の駆動層の両端部分をマスキングして電解重合することにより第2の駆動層のサイズを適宜設定することができる。
以上の製造方法によって、導電性高分子膜(第1の駆動層)に導電性高分子膜(第2の駆動層)が積層された2層の導電性高分子膜(第1の駆動層、第2の駆動層)が得られる。この2層の導電性高分子膜を作用電極から剥がす。これにより,導電性高分子膜(第1の駆動層)と導電性高分子膜(第2の駆動層)の2枚の膜が積層されて構成されたバイモルフ構造の導電性高分子アクチュエータが得られる。上記の第1の駆動層と第2の駆動層において、電圧を印加した場合に、電気化学的酸化によって収縮する膜(第1の駆動層)をカチオン駆動層と称し、膨張する膜(第2の駆動層)をアニオン駆動層と称する。これらの関係において、カチオン駆動層が還元状態であるときにアニオン駆動層は酸化状態であり、一方、アニオン駆動層が還元状態であるときにアニオン駆動層は酸化状態である。
また、上記電解重合によって形成される第1の駆動層(例えば、カチオン駆動層)と第2の駆動層(例えば、アニオン駆動層)のサイズについては特に制限されないが、第1、第2導電性高分子アクチュエータの結合部位である、一方の第1結合先端部から他方の第2結合先端部に延びる方向のアニオン駆動層の長さ(a)と、当該アニオン駆動層の一方の先端部から直近の結合先端部までの長さ(b)との関係において、(a:2×b)が(3〜1.1:1)の範囲に設定した場合、アクチュエータの開閉運動を大きくすることができる。特に、2:1にした場合、アクチュエータの開閉運動が最大になる。すなわち、この条件に従うことで、開く動作による開口面積が大きくなり、閉じる動作による開口面積が最小(例えば、2個の導電性高分子アクチュエータ同士が当接する、または略当接する程度)になる。また、開閉動作における開く力、閉じる力の程度が強い。
図1は、第1、第2導電性高分子アクチュエータについて説明する図である。図1に示すように、第1導電性高分子アクチュエータ40は、・BR>謔Pの駆動層(カチオン駆動層)10と第2の駆動層(アニオン駆動層)20で構成されるバイモルフ構造である。また、第2導電性高分子アクチュエータ41は、第1の駆動層(カチオン駆動層)11と第2の駆動層(アニオン駆動層)21で構成されるバイモルフ構造である。これら第1、第2導電性高分子アクチュエータ40、41の両先端部分は、挟持手段30、31によって挟持されて固定されている。一方の第1結合先端部30aから他方の第2結合先端部31aに延びる方向のアニオン駆動層の長さ(a)と、当該アニオン駆動層の一方の先端部(20aまたは20b)から直近の結合先端部(それぞれ対応する30aまたは31a)までの長さ(b)とが図1によって示されている。ここで、(a:2×b)は(2:1)である。
また、導電性高分子アクチュエータは、その長さ方向の厚み断面形状が直線状、または、その長さ方向の厚み断面形状が曲線状に構成できる。第1、第2導電性高分子アクチュエータを曲線形状に構成するために、第1、第2導電性高分子アクチュエータを作製する場合に、例えば、電解重合時に、作用電極の形状を直線状ではなく曲線状、特には開閉運動アクチュエータを開いた状態の形状、円弧状にすることにより、開閉運動アクチュエータの初期状態を開いた状態にすることができる。例えば、図4に示す開閉運動アクチュエータの初期状態において、第1、第2導電性高分子アクチュエータ対が曲線状に形成され、開口状態が形成されているのが分かる。これによって、開閉運動アクチュエータの開閉運動を、閉じた状態の直線状からの開閉運動に比較して大きく設定することができ、さらに、その際の発生力も大きくすることができる。
また、上記電解重合に用いる電解液(導電性高分子製造用電解液)が、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ヒドロキシル基、ニトロ基、スルホン基およびニトリル基のうち少なくとも1つ以上の結合または官能基を含む有機化合物および/またはハロゲン化炭化水素を溶媒として含むことが好ましい。上記の電解液中に上記溶媒を含み、さらに、パーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンまたはパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンなどを含むことにより、得られた導電性高分子は、1酸化還元サイクル当たりにおいてより大きな電解伸縮を示すものとなる。
上記有機化合物としては、たとえば、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン(以上、エーテル結合を含む有機化合物)、γ−ブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸−t−ブチル、1,2−ジアセトキシエタン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル(以上、エステル結合を含む有機化合物)、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネイト、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート(以上、カーボネート結合を含む有機化合物)、エチレングリコール、ブタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−オクタノール、1−デカノール、1−ドデカノール、1−オクタデカノール(以上、ヒドロキシル基を含む有機化合物)、ニトロメタン、ニトロベンゼン(以上、ニトロ基を含む有機化合物)、スルホラン、ジメチルスルホン(以上、スルホン基を含む有機化合物)、およびアセトニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル(以上、ニトリル基を含む有機化合物)をあげることができる。また、ドデシルベンゼンスルホン酸、パラフェノールスルホン酸を例示できる。なお、ヒドロキシル基を含む有機化合物は、特に限定されるものではないが、多価アルコールおよび炭素数4以上の1価アルコールであることが、伸縮率が良いためにより好ましい。なお、上記有機化合物は、上記の例示以外にも、分子中にエーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ヒドロキシル基、ニトロ基、スルホン基およびニトリル基のうち、2つ以上の結合または官能基を任意の組み合わせで含む有機化合物であってもよい。
アニオン駆動層の支持電解質としては、例えば、塩酸(HCL)、エチルベンゼンスルホン酸(EBS)、パラトルエンスルホン酸(PTS)、テトラブチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホンイミド(TBATFSI)、テトラフルオロ硼酸テトラブチルアンモニウム(TBABF4)、パラフェノールスルホン酸(PPS)等が挙げられる。また、カチオン駆動層としては、例えば、ポリスチレンスルホン酸(PSS)、ドデシルベンゼンスルホン酸(DBS)等が挙げられる。
また、上記導電性高分子製造用電解液に溶媒として含まれるハロゲン化炭化水素は、炭化水素中の水素が少なくとも1つ以上ハロゲン原子に置換されたもので、電解重合条件で液体として安定に存在することができるものであれば、特に限定されるものではない。上記ハロゲン化炭化水素としては、たとえば、ジクロロメタン、ジクロロエタンをあげることができる。上記ハロゲン化炭化水素は、1種類のみを上記導電性高分子製造用電解液中の溶媒として用いることもできるが、2種以上併用することもできる。また、上記ハロゲン化炭化水素は、上記の有機化合物との混合液として用いてもよく、上記有機溶媒との混合溶媒を上記導電性高分子製造用電解液中の溶媒として用いることもできる。
上記電解重合法により得られた導電性高分子のバルク中には、上記電解重合法に用いられた上記パーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンまたはパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンが存在することとなる。上記導電性高分子が上記パーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンまたはパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンを含む上記導電性高分子は、上述のように1酸化還元サイクル当りの伸縮量が大きく、駆動速度(%/s)の値も大きく、しかも、容易に得ることができるので好ましい。たとえば、上記の導電性高分子の有形物を膜状体は、従来の導電性高分子の電解伸縮がその最大の伸縮率が面方向で1酸化還元サイクル当たり10〜15%程度までしか得られていなかったのに対して、ドーパントとして上記パーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンまたはパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンを導電性高分子のバルク中に含むことにより、長さ方向において、1酸化還元サイクル当たり16%以上、特に20%以上の優れた最大の伸縮率を示すことが可能となる。上記膜状体は、人工筋肉に代表される大きな伸縮率が要求される用途に好適に用いることができる。なお、上記の導電性高分子の有形物は、ドーパントの他に、動作電極としての抵抗値を低下させるために、金属線や導電性酸化物などの導電性材料を適宜含むことができる。
上記電解重合法における上記パーフルオロアルキルスルホニルイミドイオンまたはパーフルオロアルキルスルホニルメチドイオンの電解液中の含有量が特に限定されるものではないが、十分な電解液のイオン導電性を確保するために、パーフルオロアルキルスルホニルイミド塩として、電解液中に1〜40重量%含まれるのが好ましく、2.8〜20重量%含まれるのがより好ましい。また、電解重合法により得られる導電性高分子膜の膜質を向上させるために、トリフルオロメタンスルホン酸塩を電解液中に1〜80%加えた複合電解質を用いることもできる。また、これらのイオンは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
また、上記電解重合法にて用いられる電解液(導電性高分子製造用電解液)には、さらに、パーフルオロアルキルスルホニルイミド塩を含む以外に、導電性高分子の単量体を含んでいてもよく、さらにポリエチレングリコールやポリアクリルアミドなどの公知のその他の添加剤を含むこともできる。
上記電解重合法は、導電性高分子単量体の電解重合として、公知の電解重合方法を用いることが可能であり、定電位法、定電流法および電気掃引法のいずれをも適宜用いることができる。たとえば、上記電解重合法は、電流密度0.01〜20mA cm−2、反応温度−70〜80℃で行うことができ、良好な膜質の導電性高分子を得るために、電流密度0.1〜2mA cm−2、反応温度−40〜40℃の条件下で行うことが好ましく、反応温度が−30〜30℃の条件であることがより好ましい。
なお、上記電解重合法に用いられる作用電極は、電解重合に用いることができれば特に限定されるものではなく、ITOガラス電極、炭素電極や金属電極などを適宜用いることができる。上記金属電極は、金属を主とする電極であれば特に限定されるものではないが、Pt、Ti、Ni、Au、Ta、Mo、CrおよびWからなる群より選ばれた金属元素についての金属単体の電極または合金の電極を好適に用いることができる。なかでも、得られた導電性高分子の伸縮率および発生力が大きく、かつ電極を容易に入手できることから、金属電極に含まれる金属種がPt、Tiであることが特に好ましい。なお、上記合金としては、たとえば、商品名「INCOLOY alloy 825」、「INCONEL alloy 600」、「INCONEL alloy X−750」(以上、大同スペシャルメタル社製)を用いることができる。また、対極については公知の電極、たとえばPt、Niを好適に用いることができる。
上記電解重合法に用いられる電解液に含まれる導電性高分子の単量体としては、電解重合による酸化により高分子化して導電性を示す化合物であれば特に限定されるものではなく、たとえばピロール、チオフェン、イソチアナフテン等の複素五員環式化合物、ならびにそのアルキル基、オキシアルキル基等の誘導体があげられる。なかでも、ピロール、チオフェン等の複素五員環式化合物、ならびにその誘導体が好ましく、特にピロールおよび/またはピロール誘導体を含む導電性高分子であることが、製造が容易であり、導電性高分子として安定であるために好ましい。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
上記導電性高分子層(アニオン駆動層、カチオン駆動層)の厚みは、アクチュエータの仕様により適宜設計するものであり、例えば0.01μm〜数百μmの範囲が例示できる。
(結合部材)
第1、第2導電性高分子アクチュエータの両端部を結合するために、結合手段が用いられる。この結合手段としては、例えば、接着または粘着による結合による固定でもよく、挟持手段による挟み込みによる結合の固定でもよい。挟持手段は、その形状及びサイズが特に制限されず、開閉運動アクチュエータの用途に応じて適宜設計できる。また、挟持手段は、ソリッド素材、フレキシブル素材で構成でき、その用途に応じた素材を選択できる。また、挟持手段は、その機能を発揮するものであれば特に制限されないが、例えば、絶縁性素材、金属、貴金属が例示される。
(開閉運動アクチュエータの作製)
開閉運動アクチュエータは、カチオン駆動層を内側にして互いに対向させるように、第1、第2導電性高分子アクチュエータを配置し、当該第1導電性高分子アクチュエータと当該第2導電性高分子アクチュエータとの夫々の先端部を結合するように作製する。結合としては、例えば、接着または粘着による固定、挟持手段による挟み込み固定が例示できる。上記電極部材を挟持手段として兼用して用いるように構成することができる。また、先端部の固定面積は、アクチュエータの用途によって設定できる。
図2は、開閉運動アクチュエータの開閉動作について説明する図である。図2に示すように、開閉運動アクチュエータ60は、第1導電性高分子アクチュエータ40と第2導電性高分子アクチュエータ41の両先端部を挟持手段30、31によって結合・固定することで構成している。第1、第2導電性高分子アクチュエータ40、41に電圧が印加された場合、電気化学的還元によって、カチオン駆動層10,11が膨潤し、アニオン駆動層20、21は収縮するため、第1、第2導電性高分子アクチュエータ40、41は、内側に閉じる動作を行なう。一方、電気化学的酸化により、カチオン駆動層10,11が収縮し、アニオン駆動層20、21は膨潤するため、第1、第2導電性高分子アクチュエータ40、41は、外側に開く動作を行なう。
また、図3は、曲線形状の導電性高分子アクチュエータを用いた開閉運動アクチュエータについて説明する図である。図3において、第1、第2導電性高分子アクチュエータ40,41は、その長さ方向の断面形状が曲線形状(円弧形状)であり、その両端部を結合して内側が開いた状態を初期状態とした開閉運動アクチュエータ61が作製されていることが分かる。挟持手段30には、電圧印加手段(例えば正負極切り換え機能有する電源電圧部)が接続される。第1、第2導電性高分子アクチュエータ40、41のカチオン駆動層10、11に正電圧が印加され、アニオン駆動層20、21に負電圧が印加された場合、電気化学的還元によって、カチオン駆動層10,11が膨潤し、アニオン駆動層20、21は収縮するため、第1、第2導電性高分子アクチュエータ40、41は、内側に閉じる動作を行ない、図3に示すように、開口部分がない程度に閉じた状態を形成することができる。一方、印加電圧を正負極逆にした場合、電気化学的酸化により、カチオン駆動層10,11が収縮し、アニオン駆動層20、21は膨潤するため、第1、第2導電性高分子アクチュエータ40、41は、外側に開く動作を行ない、図3に示すように、初期状態の開口面積よりも大きな開口状態を形成することができる。
また、第1、第2導電性高分子アクチュエータの幅方向と直交する方向(長さ方向、または周方向)に所定数のスリットを設けるように構成する。ここでのスリットは、完全なまたは部分的な切れ目、または凹状の溝、折り目等でもよく、特に完全な切れ目が好ましい。スリットの数、スリット間隔は、アクチュエータの用途によって設定できる。また、第1、第2導電性高分子アクチュエータの幅、厚みは、特に制限されず、アクチュエータの用途によって設定できる。図4は、スリット45を形成した開閉運動アクチュエータ62について説明するための図である。図4に示すように、第1、第2導電性高分子アクチュエータ40、41の両端部が挟持手段30、31によって結合され、挟持手段30、31で結合された部分を除いて、スリット45(切れ目)が所定間隔(例えば1mm間隔)で設けられている。
この構成によれば、アクチュエータを閉じる動作の場合に、大きな力を発生することができる。つまり、第1、第2導電性高分子アクチュエータの結合された両端部分(挟持手段30、31で結合された部分)にはスリットが設けられていないため、開閉動作における同期がとれ、その結果、完全な切れ目のスリットであっても、近接する部分での接触がなく、開閉動作を阻害することがない。
(蠕動運動アクチュエータの作製)
蠕動運動アクチュエータは、開閉運動アクチュエータを複数個連続に設置し、夫々の開閉運動アクチュエータの開閉運動に位相差を設けるように構成される。位相差を設けるために、開閉運動アクチュエータ単位に、位相差をもって電圧印加を行える制御手段を備えることが好ましい。
この構成によれば、開閉運動アクチュエータ単位に、位相差(時間差)をもって、開閉運動を行なわせることができ、すなわち、いわゆる蠕動運動を実現できる。この蠕動運動アクチュエータは、その用途として、マイクロポンプとして用いたり、ノズル先端に設置することにより、噴流の拡散または噴流の抑制制御に用いることができる。
図5は、蠕動運動アクチュエータの一例を示す図である。図5に示すように、蠕動運動アクチュエータ70は、6つの開閉運動アクチュエータ65を連続して配置してなる。つなぎ部分は、特に接続手段を設ける必要はないが、接続手段を設けるように構成してもよい。この蠕動運動アクチュエータ70の開口内部に伸縮自在の筒状体80が配置されている。蠕動運動アクチュエータ70において、任意の位相差をもって電圧印加を行い蠕動運動を行なわせると、筒状体80はその運動にあわせ伸縮する。例えば、この筒状体80の内部に流体を流す場合に、この蠕動運動アクチュエータ70を用いることで、流体の流速制御、流量制御等を自在に実現できる。この開閉運動アクチュエータ65に、複数の上記スリットを設けることで、開閉運動の作用力を強いものに構成できる。
(電圧印加制御)
本発明において、印加電圧の制御方法は、例えば、正負極の切り替え、電圧値制御、パルス制御、連続印加、断続的印加制御等が例示される。また、本発明において、印加する時間(期間)に比例して、伸縮が生じている。よって、印加時間を制御することで、収縮・膨潤の変位量を簡単に制御できる。
また、印加電圧は、アクチュエータのサイズ・性能、電導性高分子アクチュエータの材料、厚み、サイズ等の設計に依存するが、電導性高分子としてポリピロールを用いた場合、その印加電圧は、例えば、ポリピロールが分解しない電圧値以下が望ましく、−2.0Vから2Vの範囲が例示される。
また、印加電圧の正負極切り換えタイミングは、開閉運動アクチュエータの仕様によって設定でき、たとえば、0.1〜400Hz周期で各電極に反対電圧が印加されるようにすることができる。
(用途)
本発明の開閉運動アクチュエータは、ダイアフラムポンプ、マッサージ器等のアクチュエータとして利用可能である。
また、開閉運動アクチュエータを複数個連続に配置して形成した蠕動運動アクチュエータは、マイクロポンプに用いたり、ノズル先端に設置することにより、噴流の拡散または噴流の抑制制御に用いることができる。
本発明の開閉運動アクチュエータは、より具体的には、OA機器、アンテナ、ベッドや椅子等の人を乗せる装置、医療機器、エンジン、光学機器、固定具、サイドトリマ、車両、昇降器械、食品加工装置、清掃装置、測定機器、検査機器、制御機器、工作機械、加工機械、電子機器、電子顕微鏡、電気かみそり、電動歯ブラシ、マニピュレータ、マスト、遊戯装置、アミューズメント機器、乗車用シミュレーション装置、車両乗員の押さえ装置および航空機用付属装備展張装置、OA機器や測定機器等の上記機器等を含む機械全般に用いられる弁、ブレーキおよびロック装置において、直線的な駆動力を発生する駆動部もしくは円弧部からなるトラック型の軌道を移動するための駆動力を発生する駆動部、または直線的な動作もしくは曲線的な動作をする押圧部として好適に用いることができる。
また、開閉運動アクチュエータは、上記の装置、機器、器械等以外においても、機械機器類全般において、位置決め装置の駆動部、姿勢制御装置の駆動部、昇降装置の駆動部、搬送装置の駆動部、移動装置の駆動部、量や方向等の調節装置の駆動部、軸等の調整装置の駆動部、誘導装置の駆動部、および押圧装置の押圧部において、直線的な駆動力を発生する駆動部もしくは円弧部からなるトラック型の軌道を移動するための駆動力を発生する駆動部、または直線的な動作もしくは曲線的な動作をする押圧部として好適に用いることができる。
また、開閉運動アクチュエータは、関節装置における駆動部として、関節中間部材等の直接駆動可能な関節部または関節に回転運動を与える駆動部に好適に用いることができる。
また、開閉運動アクチュエータは、たとえば、CAD用プリンター等のインクジェットプリンターにおけるインクジェット部分の駆動部、プリンターの上記光ビームの光軸方向を変位させる駆動部、外部記憶装置等のディスクドライブ装置のヘッド駆動部、ならびに、プリンター、複写機およびファックスを含む画像形成装置の給紙装置における紙の押圧接触力調整手段の駆動部として好適に用いることができる。
また、開閉運動アクチュエータは、たとえば、電波天文用の周波数共用アンテナ等の高周波数給電部を第2焦点へ移動させるなどの測定部や給電部の移動設置させる駆動機構の駆動部、ならびに、車両搭載圧空作動伸縮マスト(テレスコーピングマスト)等のマストやアンテナにおけるリフト機構の駆動部に好適に用いることができる。
また、開閉運動アクチュエータは、たとえば、椅子状のマッサージ機のマッサージ部の駆動部、介護用または医療用ベッドの駆動部、電動リクライニング椅子の姿勢制御装置の駆動部、マッサージ機や安楽椅子等に用いられるリクライニングチェアのバックレスト・オットマンの起倒動自在にする伸縮ロッドの駆動部、椅子や介護用ベッド等における背もたれやレッグレスト等の人を乗せる家具における可倒式の椅子の背もたれやレッグレスト或いは介護用ベッドの寝台の旋回駆動等に用いられる駆動部、ならびに、起立椅子の姿勢制御のため駆動部に好適に用いることができる。
また、開閉運動アクチュエータは、たとえば、検査装置の駆動部、体外血液治療装置等に用いられている血圧等の圧力測定装置の駆動部、カテーテル、内視鏡装置や鉗子等の駆動部、超音波を用いた白内障手術装置の駆動部、顎運動装置等の運動装置の駆動部、病弱者用ホイストのシャシの部材を相対的に伸縮させる手段の駆動部、ならびに、介護用ベッドの昇降、移動や姿勢制御等のための駆動部に好適に用いることができる。
また、開閉運動アクチュエータは、たとえば、エンジン等の振動発生部からフレーム等の振動受部へ伝達される振動を減衰させる防振装置の駆動部、内燃機関の吸排気弁のための動弁装置の駆動部、エンジンの燃料制御装置の駆動部、ならびにディーゼルエンジン等のエンジンの燃料供給装置の駆動部に好適に用いることができる。
また、開閉運動アクチュエータは、たとえば、ホース金具をホース本体にカシメ固定する等の固定具の押圧部に好適に用いることができる。
また、開閉運動アクチュエータは、たとえば、自動車のサスペンションの巻ばね等の駆動部、車両のフューエルフィラーリッドを解錠するフューエルフィラーリッドオープナーの駆動部、ブルドーザーブレードの伸張および引っ込みの駆動の駆動部、自動車用変速機の変速比を自動的に切り替えるためやクラッチを自動的に断接させるための駆動装置の駆動部に好適に用いることができる。
また、開閉運動アクチュエータは、たとえば、座板昇降装置付車椅子の昇降装置の駆動部、段差解消用昇降機の駆動部、昇降移載装置の駆動部、医療用ベッド、電動ベッド、電動テーブル、電動椅子、介護用ベッド、昇降テーブル、CTスキャナ、トラックのキャビンチルト装置、リフター等や各種昇降機械装置の昇降用の駆動部、ならびに重量物搬送用特殊車両の積み卸し装置の駆動部に好適に用いることができる。
また、開閉運動アクチュエータは、たとえば、食品加工装置の食材吐出用ノズル装置等の吐出量調整機構の駆動部に好適に用いることができる。
また、開閉運動アクチュエータは、たとえば、清掃装置の台車や清掃部等の昇降等の駆動部に好適に用いることができる。
また、開閉運動アクチュエータは、たとえば、面の形状を測定する3次元測定装置の測定部の駆動部、ステージ装置の駆動部、タイヤの動作特性を検知システム等のセンサー部分の駆動部、力センサーの衝撃応答の評価装置の初速を与える装置の駆動部、孔内透水試験装置を含む装置のピストンシリンダのピストン駆動装置の駆動部、集光追尾式発電装置における仰角方向へ動かすための駆動部、気体の濃度測定装置を含む測定装置のサファイアレーザー発振波長切替機構のチューニングミラーの振動装置の駆動部、プリント基板の検査装置や液晶、PDPなどのフラットパネルディスプレイの検査装置においてアライメントを必要とする場合にXYθテーブルの駆動部、電子ビーム(Eビーム)システムまたはフォーカストイオンビーム(FIB)システムなどの荷電粒子ビームシステム等において用いる調節可能なアパーチャー装置の駆動部、平面度測定器における測定対象の支持装置もしくは検出部の駆動部、ならびに、微細デバイスの組立をはじめ、半導体露光装置や半導体検査装置、3次元形状測定装置などの精密位置決め装置の駆動部に好適に用いることができる。
また、開閉運動アクチュエータは、たとえば、ゴム組成物のプレス成形加硫装置の駆動部、移送される部品について単列・単層化や所定の姿勢への整列をさせる部品整列装置の駆動部、圧縮成形装置の駆動部、溶着装置の保持機構の駆動部、製袋充填包装機の駆動部、マシニングセンタ等の工作機械や射出成形機やプレス機等の成形機械等の駆動部、印刷装置、塗装装置やラッカ吹き付け装置等の流体塗布装置の駆動部、カムシャフト等を製造する製造装置の駆動部、覆工材の吊上げ装置の駆動部、無杼織機における房耳規制体等の駆動装置、タフティング機の針駆動システム、ルーパー駆動システム、およびナイフ駆動システム等の駆動部、カム研削盤や超精密加工部品等の部品の研磨を行う研磨装置の駆動部、織機における綜絖枠の制動装置の駆動部、織機における緯糸挿通のための経糸の開孔部を形成する開口装置の駆動部、半導体基板等の保護シート剥離装置の駆動部、通糸装置の駆動部、CRT用電子銃の組立装置の駆動部、衣料用縁飾り、テーブルクロスやシートカバー等に用途をもつトーションレースを製造するためのトーションレース機におけるシフターフォーク駆動選択リニア制御装置の駆動部、アニールウィンドウ駆動装置の水平移動機構の駆動部、ガラス溶融窯フォアハースの支持アームの駆動部、カラー受像管の蛍光面形成方法等の露光装置のラックを進退動させる駆動部、ボールボンディング装置のトーチアームの駆動部、ボンディングヘッドのXY方向への駆動部、チップ部品のマウントやプローブを使った測定などにおける部品の実装工程や測定検査工程の駆動部、基板洗浄装置の洗浄具支持体の昇降駆動部、ガラス基板を走査される検出ヘッドを進退させる駆動部、パターンを基板上に転写する露光装置の位置決め装置の駆動部、精密加工などの分野におけるサブミクロンのオーダで微小位置決め装置の駆動部、ケミカルメカニカルポリシングツールの計測装置の位置決め装置の駆動部、導体回路素子や液晶表示素子等の回路デバイスをリソグラフィ工程で製造する際に用いられる露光装置および走査露光装置に好適なステージ装置の位置決めのための駆動部、ワーク等の搬送または位置決め等の手段の駆動部、レチクルステージやウエハステージ等の位置決めや搬送のための駆動部、チャンバ内の精密位置決めステージ装置の駆動部、ケミカルメカニカルポリシングシステムでのワークピースまたは半導体ウェーハの位置決め装置の駆動部、半導体のステッパー装置の駆動部、加工機械の導入ステーション内に正確に位置決めする装置の駆動部、NC機械やマシニングセンタ等の工作機械等またはIC業界のステッパーに代表される各種機器用のパッシブ除振およびアクティブ除振の除振装置の駆動部、半導体素子や液晶表示素子製造のリソグラフィ工程に使用される露光装置等において光ビーム走査装置の基準格子板を上記光ビームの光軸方向に変位させる駆動部、ならびに、コンベヤの横断方向に物品処理ユニット内へ移送する移送装置の駆動部に好適に用いることができる。
また、開閉運動アクチュエータは、たとえば、電子顕微鏡等の走査プローブ顕微鏡のプローブの位置決め装置の駆動部、ならびに、電子顕微鏡用試料微動装置の位置決め等の駆動部に好適に用いることができる。
また、開閉運動アクチュエータは、たとえば、自動溶接ロボット、産業用ロボットや介護用ロボットを含むロボットまたはマニピュレータにおけるロボットアームの手首等に代表される関節機構の駆動部、直接駆動型以外の関節の駆動部、ロボットの指のそのもの、ロボット等のハンドとして使用されるスライド開閉式チャック装置の運動変換機構の駆動部、細胞微小操作や微小部品の組立作業等において微小な対象物を任意の状態に操作するためのマイクロマニピュレータの駆動部、開閉可能な複数のフィンガーを有する電動義手等の義肢の駆動部、ハンドリング用ロボットの駆動部、補装具の駆動部、ならびにパワースーツの駆動部に好適に用いることができる。
また、開閉運動アクチュエータは、たとえば、サイドトリマの上回転刃または下回転刃等を押圧する装置の押圧部に好適に用いることができる。
また、開閉運動アクチュエータは、たとえば、パチンコ等の遊戯装置における役物等の駆動部、人形やペットロボット等のアミューズメント機器の駆動部、ならびに、乗車用シミュレーション装置のシミュレーション装置の駆動部に好適に用いることができる。
また、開閉運動アクチュエータは、たとえば、上記機器等を含む機械全般に用いられる弁の駆動部に用いることができ、たとえば、蒸発ヘリウムガスの再液化装置の弁の駆動部、ベローズ式の感圧制御弁の駆動部、綜絖枠を駆動する開口装置の駆動部、真空ゲート弁の駆動部、液圧システム用のソレノイド動作型制御バルブの駆動部、ピボットレバーを用いる運動伝達装置を組み込んだバルブの駆動部、ロケットの可動ノズルのバルブの駆動部、サックバックバルブの駆動部、ならびに、調圧弁部の駆動部に好適に用いることができる。
また、開閉運動アクチュエータは、たとえば、上記機器等を含む機械全般に用いられるブレーキの押圧部として用いることができ、たとえば、非常用、保安用、停留用等のブレーキやエレベータのブレーキに用いて好適な制動装置の押圧部、ならびに、ブレーキ構造もしくはブレーキシステムの押圧部に好適に用いることができる。
また、開閉運動アクチュエータは、たとえば、上記機器等を含む機械全般に用いられるロック装置の押圧部として用いることができ、たとえば、機械的ロック装置の押圧部、車両用ステアリングロック装置の押圧部、ならびに、負荷制限機構および結合解除機構を合わせ持つ動力伝達装置の押圧部に好適に用いることができる。
<実施例>
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されず、本発明の技術的思想を同じくする全ての形態、態様、製品、部品に及ぶことは言うまでもない。
[実施例1]
作用電極に曲面を有するチタン板(縦30mm×幅30mm),モノマーにピロールを用いて電解重合を行う。電解重合方法(条件:ピロール、0.15mol/l,約0℃)により,支持電解質にドデシルベンゼンスルホン酸(0.25mol/l)を用い、水溶液中にて1mA/cm2の電流密度で2時間15分の定電流電解重合を行い,第1の導電性高分子膜(カチオン駆動層)を作製した。次いで、第1の導電性高分子膜の縦方向両端面(5mmずつ)を絶縁テープでマスキングし、それを作用電極として、支持電解質にパラフェノールスルホン酸(0.25mol/l)を用い、水溶液中にて1mA/cm2の電流密度で2時間15分の定電流電解重合を行い、第2の導電性高分子膜(アニオン駆動層)を作製した。電解重合後、チタン板からカチオン駆動層(第1)とアニオン駆動層(第2)が接合されたバイモルフ構造の導電性高分子膜を剥がし、次いで、縦方向両端面の絶縁テープを剥がし、蒸留水で洗浄し、室内で乾燥させ、バイモルフ層の導電性高分子アクチュエータを得た。この時、正方形の両端部が単層構造(カチオン駆動層)、その他中心部がバイモルフ層(カチオン駆動層+アニオン駆動層)の導電性高分子アクチュエータ(縦30mm×幅30mm×バイモルフ層厚み150μm)となる。導電性高分子アクチュエータの幅方向と直交する方向(縦方向)に1mm間隔で29本のスリット(長さ20mm)を設ける。
得られた導電性高分子アクチュエータ素子を2つ準備して、夫々の導電性高分子アクチュエータのカチオン駆動層が対向するように配置する。これらの重ね合わせた縦方向下部を絶縁テープで固定し、縦方向上部は白金板で挟み込み、固定することにより、開閉運動アクチュエータを作製した。
開閉運動アクチュエータをNaCl水溶液中で、下限−1.2Vから上限0.9Vの範囲で、5〜20[mV/sec]の増加または減少となるように印加させることにより、アクチュエータの開閉運動を確認できた。アクチュエータは酸化時に開き、還元時に閉じる運動を確認し、図6に開閉動作を確認した写真を示す。さらに,この開閉運動アクチュエータの内側にチューブを挿入設置し、チューブ内に水を流した状態で、開閉運動を行なわせた。その結果、開閉運動によって、チューブ内の水の流量を正確に制御でき、また、完全に流れを遮断できることも確認できた。
[比較例1]
上記実施例1の条件において、作用電極の幅を1mmとし、その他の条件は同一として、ポリピロールによる導電性高分子アクチュエータ素子を作製した。得られた導電性高分子アクチュエータ素子を25枚並べてそれらの縦方向下部を絶縁テープで固定し、縦方向上部は白金板で挟み込み、固定することにより、開閉運動アクチュエータを作製した。それぞれの内面側が、カチオン駆動層である。
開閉運動アクチュエータをNaCl水溶液中で、下限−1.2Vから上限0.9Vの範囲で、5〜20[mV/sec]の増加または減少となるように印加させることにより、開閉運動を確認できた。しかしながら、開閉動作を完全に同期させることができなかった。さらに,この開閉運動アクチュエータの内側にチューブを挿入設置し、チューブ内に水を流した状態で、開閉運動を行なわせた。その結果、開閉運動によって、チューブ内の水の流量を正確に制御することができなかった。
以上の結果から分かるように、実施例1のように幅広の導電性高分子アクチュエータにスリット(長さ2mm)を設けた方が、比較例1のようにスリットを設けるのではなく複数の導電性高分子アクチュエータによって幅広のアクチュエータ体を構成するよりも、開閉運動制御を正確に行え、例えばチューブ内の流量制御を正確に行えることを確認できた。