以下、図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は本発明の一例である管束引抜押込装置に備える吊下具の構造を示す正面図、図2は管束引抜押込装置を用いて熱交換器のシェルから管束を引き抜く使用状態を示す側面図、図3は管束引抜押込装置の全体構造を示す平面図、図4は側面図である。管束引抜押込装置Rは、熱交換器Hの高さ位置までクレーンで吊り上げ、重心を取りながら、熱交換器HのシェルSに対して管板tの手前から管束Tを抜き差しする装置である。熱交換器Hは、例えば石油精製プラントなどの所定の高所位置に横設される横置き式多管型で、多数の伝熱管を、それらの前端を円板状の管板tに貫通して取り付け、中途部をじゃま板jに貫通して取り付けた伝熱管の束からなる、例えば直径1m重さ10tの管束Tを形成し、これを円筒状のシェルS内に挿設した構造になっている。図中符号Pは、管板tの手前にまで伸びた熱交換器Hのチャンネル側配管で、符号Dは、作業者が無線操作盤を使って管束引抜押込装置Rを無線操作したりする作業用デッキである。
管束引抜押込装置Rは、管束Tを吊り下げる長さ約10mの長尺な躯体フレームFを備える。躯体フレームFは、図5および図6に示すように、一対の平行な長手の縦枠部10・10と複数の短手な横桟部11…とで全体に梯子形に構築した鋼製枠体からなる。特に縦枠部10は、ガイドレール10として断面I形に形成し、上部側のT形部分に第1レール部10aを形成する一方、下部側の逆T形部分に第2レール部10bを形成している。
そこで、管束引抜押込装置Rは、図3および図4に示すように、躯体フレームFにおいて、図中最も右端の管束抜き差し方向前端にチャッキング手段Cを付設し、ガイドレール10の第1レール部10aにバランサBを摺動自在に搭載し、第2レール部10bに摺動自在に台車Aを係着し、横桟部11に台車Aを管束抜き差し方向に直線移動させる台車移動手段Gを付設し、ガイドレール10の第2レール10bの台車Aの前端寄りに並べて複数の、例えば3基の吊下具W1・W2・W3を摺動自在に係着する一方、図中左端の管束抜き差し方向後端に取付台12を備え、取付台12の上に、チャッキング手段C・バランサB・台車A・台車移動手段G等を駆動する駆動手段Mと、駆動手段Mの駆動を無線操作盤から受ける電気制御信号に応じて制御する電気制御手段E等を搭載してなる。
チャッキング手段Cは、図7および図8に示すように、ガイドレール10の各第1レール部10aの前端部に設け、その突端に向け順次長さ方向に片側側面を開放した細長矩形状のシリンダ収納部10cと、突端を開口した細長い角筒状のガイド部10dとを連設し、シリンダ収納部10c内にチャッキング用油圧シリンダ13を固設し、ガイド部10d内にクランプ14のスライドフレーム14aを長さ方向に摺動自在に嵌挿し、そのスライドフレーム14aに油圧シリンダ13のピストンロッド13aの先端を軸着してクランプ14を管束抜き差し方向に進退可能に保持する。更に、ガイド部10dには、その突端にそれと直交する下向きに固定ブロック15を突設している。一方、クランプ14は、スライドフレーム14aの先端に軸芯方向に螺着したボルト16の頭部16aでチャッキングブロック14bを挟んで、ボルト軸部16bを中心として回動自在にスライドフレーム14aの先端に連結し、チャッキングブロック14bの開き角度位置を、シェルSの開口周縁に有するシェルフランジ24の大きさに応じて調整できるようになっている。
そこで、チャッキング手段Cは、油圧シリンダ13を作動してピストンロッド13aを引き込むと、クランプ14が後退してチャッキングブロック14bと固定ブロック15との間でシェルフランジ24をクランプする一方、ピストンロッド13aを突出させると、クランプ14が前進してシェルフランジ24のクランプ状態が解除される構造になっている。
更に、チャッキング手段Cは、固定ブロック15と可動側のチャッキングブロック14bのそれぞれ対応する位置に軸挿通用の長穴19を設けている。そこで、チャッキング手段Cでは、シェルフランジ24をクランプするチャッキング時に、シェルフランジ24の大きさに応じて、外側に回動して開いたチャッキングブロック14bと、固定ブロック15との間にシェルフランジ24をクランプしてから、連通する長穴19にねじ棒17を貫挿し、ねじ棒17にナット18を螺着してシェルフランジ24を締め付ける。以って、チャッキング手段Cは、油圧シリンダ13の強い油圧だけでチャッキングブロック14bと固定ブロック15との間にシェルフランジ24を一気にクランプすると、締め付けが強すぎてシェルフランジ24が損傷するおそれがあるので、これを防止するために、最後はねじ棒17にナット18を螺着してシェルフランジ24を締め付ける。
バランサBは、図9および図10に示すように、バランサ本体20と、バランサ本体20をガイドレール10の第1レール部10aに沿って摺動させるバランサ用油圧シリンダ21を備える。バランサ本体20は、それぞれ一対の平行な長手の縦枠20aと短手な横枠20bとを矩形枠形に組み立て、コーナーの連結部20cをボルト止めした鋼製枠体からなる。なお、コーナーの連結部20cは、ボルト止めに加え、連結部20cを貫通するピン穴に固定ピン22を固く圧入して緊締する締り嵌めの固定構造になっている。このバランサ本体20には、平行な縦枠20aの下縁にそれぞれ互いに向き合う内向きに断面L形に屈曲した係合片20dを延設し、また、コーナーの連結部20cの上側に設けるフック穴22には、シャックル23を連結している。
そこで、バランサ本体20は、横枠20bと係合片20dとでレールフランジf1を挟んでガイドレール10の第1レール部10aと係合し、しかも、間にウエアプレート25を挟んで摺動自在に第1レール部10aに係着してガイドレール10の上側を走行する跨座式の軌道構造になっている。そして、シャックル23には、上端をクレーンのフックに掛け止める吊りワイヤロープの下端を掛け止めるようになっている。バランサ用油圧シリンダ21は、ガイドレール10・10の後端寄りで横桟部11上に固定し、ピストンロッド21aの先端を縦枠20aに軸着してバランサ本体20と連結している。
台車Aは、図11、図12および図13に示すように、台車本体30と、台車本体30に付設した引抜用掛止手段35とリフト用油圧シリンダ36および押込み用押当手段40を備える。
台車本体30は、鋼製で、台板部30aと、台板部30aの両側縁上の平行な一対の角筒状縦枠部30b・30bと、台板部30aの両端縁上の平行な一対の角筒状横枠部30c・30dとで上側開放の矩形箱形に形成し、縦枠部30b・30bの長さ方向両端に板状のアーム部30eを上向きに凸設してなる。アーム部30eは、突出方向上下に一対の車軸27を内向きに突設し、上下の車軸27にそれぞれ一対の走行用ローラ28・29を回転自在に枢着している。台車本体30は、その前端に相当する横枠部30dに、断面L状の一対の支持フレーム部30f・30fを間隔をあけて平行に垂設し、支持フレーム部30f・30fの外側に引抜用掛止手段35を図中上下に昇降可能に担持する一方、支持フレーム部30f・30f間に、それらと平行な縦向きにリフト用油圧シリンダ36を立てて固持し、ピストンロッド36aの先端を引抜用掛止手段35に軸着している。
引抜用掛止手段35は、矩形な押当板部35aと、押当板部35aの上縁から直角に屈曲して延びる矩形な延出部35bと、延出部35bの先端縁から下向きに屈曲したフック部35cからなっている。そこで、引抜用掛止手段35は、台車本体30の前端に固持したリフト用油圧シリンダ36のピストンロッド36aの先端を押当板部35aに連結している。そこで、引抜用掛止手段35は、管束Tの引き抜き時にリフト用油圧シリンダ36を作動し、先端のフック部35cが管板tの周縁フランジ26に係止する高さ位置と周縁フランジ26から外れる退避高さ位置に昇降自在に台車本体30の前端に組み付けてなる。なお、引抜用掛止手段35は、フック部35cの押当板部35aと向き合う内側に緩衝用にクッションゴム31を貼着している。
他方、台車Aは、押当板部35aのフック部35cと向い合う正面に、厚肉な矩形ゴム盤を貼着して緩衝部32を形成し、以って、引抜用掛止手段35の押当板部35aに、管束TをシェルS内に押し込む時に、緩衝材32を介して管板tに押し当てる押込み用押当手段40を形成してなる。
更に、台車Aは、台車本体30の両側において、縦枠部30b・30bの下面に長さ方向に重ねて押込み補助フレーム45のフレームガイド37を固着している。フレームガイド37は、押込み補助フレーム45の外形に合わせて角柱状の中空穴37aが貫通する細長い角筒形の型鋼からなり、外側面にそれと直交する外向きにロックピン38のガイドパイプ39を突設している。
ロックピン38は、図14に示すように、ピン本体38aと、軸状の操作レバー部38bとでT形に成形してなる。一方、ガイドパイプ39は、パイプ穴39aを両端が開口した貫通穴で形成すると共に、外周部に操作ガイド溝28を切り抜いてあり、パイプ穴39aが基端側開口を通して中空穴37aと連通するようにフレームガイド37の外側面に固着している。操作ガイド溝28は、ガイドパイプ39の外周部を、その長手方向に中空穴37aの穴幅に対応する長さ範囲だけ切り抜いた直線の切換操作溝28aと、切換操作溝28aに対して円周方向に切り抜いた基端側のロック溝28bと、先端側のロック解除溝28cとからなっている。そこで、ロックピン38は、ピン本体38aをパイプ穴39aに長さ方向にスライド自在に且つ周方向に回転自在に挿入し、操作レバー部38bをガイド溝28のロック溝28bに係合すると、ピン先端が中空穴37aを横断するロック位置に位置決め保持される一方、操作レバー部38bをロック解除溝28cに係合すると、ピン先端が中空穴37aにまで進入しないロック解除位置に位置決め保持されるようにガイドパイプ39に装着している。
押込み補助フレーム45は、図11、図12および図13に示すように、約2mの角筒形の型鋼からなり、長さ方向に間隔を置いて幅方向に貫通するロック穴29a・29b・29cを設け、前端に鍔状に受け板片45aを突設すると共に引手リング33を回転自在に枢支する一方、後端外周に抜け止めリブ45bを設けてなる。
加えて、台車Aには、フレームガイド37の外側面にロックピン38の横枠部30d側にシャックル取付部30gを突設し、シャックル取付部30gにシャックル34を連結している。シャックル34には、図2に示すように、それぞれ連結部材のチェーンcが係合される。管束TをシェルS内から、例えば約1.5m程、始めに引き抜く初期引き抜き時に、チェーンcの一端を台車側のシャックル34に係合する一方、他端を管束Tの管板tに設ける係合部に係合して管束Tに台車Aを連結する。
そこで、台車Aは、図11、図12および図13に示すように、引抜用掛止手段35をチャッキング手段Cのある前方に向けて、台車本体30を、上向きに凸設したアーム部30eを介して第2レール部10bに懸架してガイドレール10から懸垂し、第2レール部10bにレールフランジf2を走行用ローラ28・29で挟んで摺動自在に係着することにより躯体フレームFの下を管束抜き差し方向に走行する懸垂式の軌道構造になっている。
台車Aは、台車本体30の両側のフレームガイド37に押込み補助フレーム45を抜き差し方向に移動可能に嵌挿して保持している。押込み補助フレーム45は、フレームガイド37にいて、最も前端側のロック穴29aがガイドパイプ39のパイプ穴39aと連通する位置に嵌挿し、操作レバー部38bを持ってロックピン38を回動してガイド溝28のロック解除溝28cから外してから、切換操作溝28aに沿ってロック位置まで押し込んでピン先端をロック穴29aに係合し、最も後側に寄った退避位置にロックして保持している。なお、台車Aの摺動長さ範囲は、台車Aが通過する位置をリミッタで検知して制御するようになっている。
台車移動手段Gは、図5および図15に示すように、台車Aを抜き差し方向に直線移動させる主たる手段のスクリュシャフト50と、スクリュシャフト50の駆動用の油圧モータmと、スクリュシャフト50に螺合した可動ナット51と、台車Aを抜き差し方向に移動させる従たる手段の初期引抜始動部55と、図18および図19に示すように、スクリュシャフト50を撓まないように支えるねじシャフト支持部60を備える。
スクリュシャフト50は、図15に示すように、約8mの長尺な台形ネジシャフトで、一端を躯体フレームFの後端の横桟部11に組み付けた第1ねじ軸受42で回転自在に軸支する一方、他端を躯体フレームFの前端寄りの横桟部11に組み付けた第2ねじ軸受43で回転自在に軸支してガイドレール10・10間中央でそれらと平行に配設している。油圧モータmは、片側ガイドレール10の後端で第1ねじ軸受42の横に設置し、第1ねじ軸受42を介してスクリュシャフト10と連結し、駆動手段Mの油圧ポンプを動かして得た圧油を用いて軸の回転運動を取り出してスクリュシャフト50を回転する構造になっている。
可動ナット51は、砲金製で、図15および図16に示すように、内周が雌ねじ穴51aの円筒形のネジジャッキで、一側周縁に円形鍔状の固定用フランジ51bを設けてなる。そこで、可動ナット51は、雌ねじ穴51aにスクリュシャフト50を螺合して同シャフト50上に装着し、両端の軸受41・42間でスクリュシャフト50が回転駆動すると、スクリュシャフト50上を長さ方向に直線移動する構造になっている。
初期引抜始動部55は、図15および図17(A)に示すように、初期引抜用油圧シリンダ44と、油圧シリンダ44のピストンロッド44aを台車Aに連結する可動連結具46を備える。初期引抜用油圧シリンダ44は、シリンダ本体44bとピストンロッド44aに軸心方向にスクリュシャフト50が貫挿する逃げ穴47が中心に貫通したセンターホールシリンダからなる。可動連結具46は、上側と前側を開放した矩形箱形をなし、後板部46aにピストンロッド44aが嵌合するロッド挿通穴を設け、底板部46bの両側縁から外側にボルト止め用の固定片46cを鍔状に延ばしてなる。
そこで、初期引抜始動部55は、ロッド挿通穴に初期引抜用油圧シリンダ44のピストンロッド44aを通して可動連結具46をピストンロッド44aに連結し、逃げ穴47にスクリュシャフト50を通して初期引抜用油圧シリンダ44にスクリュシャフト50に嵌装し、シリンダ本体44bの前端に固定用フランジ51bをボルト止めして可動ナット51をスクリュシャフト50上で初期引抜用油圧シリンダ44に固定し、固定片46cにおいて可動連結具46を台車本体30上に固定して組み立てる。以って、初期引抜始動部55は、管束Tの初期引き抜き時にスクリュシャフト50の回転駆動を停止する一方で、必要に応じて、初期引抜用油圧シリンダ44を作動すると、図17(B)に示すように、ピストンロッド44aが所定の初期引抜長さL、例えば約15cm程突出して可動連結具46を押し出し、これにより、可動連結具46を固定した台車Aを、駆動停止中のスクリュシャフトフト50を逃げ穴47にスルーさせながら、管束抜き差し方向後方Xに移動する構造になっている。
ねじシャフト支持部60は、図18および図19に示すように、片側のI型ガイドレール10に固着した長手板状の取付座49と、取付座49の両端に回転自在に連結した一対のリンク板52・53と、両端をリンク板52・53に回転自在に連結した細長板状の平行リンク54の4つのリンクからなる平行クランク組立体Qと、平行クランク組立体Qのリンク板52・53にそれぞれ連結する第1および第2ねじ受けアーム56・57と、リンク板52・53を回動付勢する付勢ばね58と、台車A側に付設したアーム押圧ガイド66とで構成されている。
取付座49は、片側ガイドレール10の垂直なレールウェブwの内側面にレールフランジf1・f2と平行に固着し、長さ方向両端に先端部61a・62aをスクリュシャフト50側に向けて取付板61・62を固定する。リンク板52・53は、取付板61・62の先端部61a・62aに、ガイドレール10の高さ方向に立てたヒンジピン59の上端でそれを中心に回動自在に連結する。以って、平行クランク組立体Qは、平行リンク54で連結した対辺のリンク板52・53が常に平行運動する平行クランク機構を形成する。そこで、ねじシャフト支持部60は、回動するリンク板52・53をクッションゴム片64を介して受け止めるストッパ片61b・62bをそれぞれ取付板61・62に立設する一方、上端にリンク板52・53を連結したヒンジピン59の下端にそれぞれ第1および第2のねじ受けアーム56・57を一体回転可能に連結する。
第1および第2のねじ受けアーム56・57は、ピンヒンジ59を中心軸穴に嵌挿した円筒部56a・57aと、円筒部56a・57aの下端から直角に伸びる水平な受け板部56b・57bとからなる。受け板部56b・57bは、円筒部56a・57aの下端において、先端部56c・57cでスクリュシャフト50を下から受け支える高さ位置にあり、先端部56c・57cの上面に円盤状の弾性パット63を貼着してなる。付勢ばね58は、引張コイルばねで、一端を取付座49の固定掛止点r1に掛け止める一方、他端を平行リンク54の長さ方向中間の移動掛止点r2に掛け止め、平行リンク54が平行移動したときに移動掛止点r2が固定掛止点r1よりリンク板52側の一方向に移動するとその方向(抜き差し方向後方X)に平行リンク54を付勢し、リンク板52をストッパ片61bに押し当たる退避位置に位置決め保持する一方、リンク板53を弾性パット63でスクリュシャフト50を下から受け支える支持位置に位置決めし、反対にリンク板53側の他方向に移動するとその方向(抜き差し方向前方Y)に平行リンク54を付勢し、リンク板53をストッパ片62bに押し当たる退避位置に位置決め保持する一方、リンク板52を弾性パット63でスクリュシャフト50を下から受け支える支持位置に位置決め保持するようになっている。
他方、台車A側のアーム押圧ガイド66は、図20に示すように、スクリュシャフト50が貫挿した初期引抜用油圧シリンダ44のシリンダ本体44bにおいて、平行クランク組立体Qと対向する側に取り付け、管束抜き差し方向前端と後端にそれぞれスクリュシャフト50側に向けて斜めに屈曲した第1および第2の押当ガイド板66a・66bを設けてなる。
そこで、ねじシャフト支持部60は、回転駆動するスクリュシャフト50上を台車Aが、例えば管束抜き差し方向前方Yに移動するとき、図18に示すように、第1ねじ受けアーム56が支持位置にあると、アーム押圧ガイド66の第1押当ガイド板66aが受け板部56aに押し当たり、対辺の第1ねじ受けアーム56と第2ねじ受けアーム57とが付勢ばね58に抗して平行運動して平行リンク54を抜き差し方向前方Yに移動するため、第1ねじ受けアーム56を退避位置に回動する一方、それに代え、第2ねじ受けアーム57が支持位置に回動し、反対に、台車Aがスクリュシャフト50上を抜き差し方向後方Xに移動するとき、第2ねじ受けアーム57の受け板部57aが支持位置にあると、アーム押当ガイド67の第2押当ガイド板66bが受け板部57aに押し当たり、対辺の第1ねじ受けアーム56と第2ねじ受けアーム57とが付勢ばね58に抗して平行運動して平行リンク54を抜き差し方向後方Xに移動するため、第2ねじ受けアーム57を退避位置に回動する一方、それに代え、第1ねじ受けアーム56を支持位置に回動し、結局、第1ねじ受けアーム56と第2ねじ受けアーム57の何れかによって常にスクリュシャフト50を下から受け支えることにより、スクリュシャフト50に撓みが発生するのを防止して台車Aを常に安定してスムーズに走行させることができる。
第1、第2および第3の吊下具W1(W2・W3)は、図3および図4に示すように、それぞれガイドレール10の平行な第2レール部10bに摺動自在に懸架するスライドサドル70(71・72)と、スライドサドル70(71・72)の両端に取り付ける各一対のレバーブロック75(76・77)と、レバーブロック75(76・77)に着脱自在に連結するスリング80(81・82)とからなる。
スライドサドル70(71・72)は、図1および図21に示すように、サドルフレーム70a(71a・72a)の両端にそれぞれ一対の板状のアーム70b(71b・72b)を平行に上向きに立てて固着し、アーム70b(71b・72b)に上下に一対の車軸73を互いに内向きに突設し、上下の車軸73にそれぞれ一対の走行ローラ68・69を回転自在に枢着してなる。そこで、スライドサドル70(71・72)は、ガイドレール10・10の第2レール部10bにレールフランジf2を走行ローラ68・69で挟んで摺動自在に台車Aの前端寄りに並べて係着してガイドレール10・10間に横架してなる。
レバーブロック75(76・77)は、ブロック本体75a(76a・77a)内のギヤを操作レバー75b(76b・77b)の操作で回転して先端にフック78・79を有するチェーン74を巻き上げる仕組みになっている。吊下具W1(W2・W3)は、このレバーブロック75(76・77)のブロック本体75a(76a・77a)をスライドサドル70(71・72)のアーム70b(71b・72b)に直接固定し、市販のものにある上部側のフックを排した構造となし、それだけチェーン74の巻き上げシロが短くて済むようになっている。一方、スライドサドル70(71・72)は、サドルフレーム70a(71a・72a)の両端において、走行ローラ68・69の図中下側をチェーン74の巻上げ経路に沿って斜めに切り欠いて逃げ凹部70c(71c・72c)を形成し、巻き取る角度によってチェーン74が引っ掛かることがない構造になっている。
スリング80(81・82)は、全体に合成繊維製で、図22(A)に示すように、帯状の下地材kと、下地材kの外面85の幅方向両側縁にその長さ範囲にわたりそれぞれ袋状に縫製した紐通しx・yと、両側の紐通しx・yにそれぞれ貫挿する長さサイズの異なる第1、第2および第3の3種類の紐体a・b・cとで構成されている。
図示例の下地材kは、長さ約3mで、幅サイズが約25cmの幅広な帯形状に縫製し、しかも、内面86の幅方向中央に帯状のゴム製保護ベルト87を縫い付けている。図示例の紐通しx・yは、下地材kの長さ方向一端k1から他端k2側に段階的に袋巾の狭い第1、第2および第3の袋体x1・x2・x3、y1・y2・y3にそれぞれ3分割し、各袋体の片側側縁を一線に揃えて下地材kの外面85に縫製してなる。図示例の紐体a・b・cは、いずれも紐本体88・89・90の両端にループa1・a2、b1・b2、c1・c2を形成する一方、直径の異なる3種類の管束に合わせて長さを異にすると共に、その長さサイズの違いが一目で判るように色分けしている。最も直径の短い管束に対応する最も短い第1の紐体aは例えば緑色で識別し、図22(b)に示すように、2つに等分に折り曲げた状態の長さL1を約1.8mとし、直径が中間サイズの管束に対応する中間の第2の紐体bは、例えば青色で識別し、2つ折り状態の長さL2を約2.55mとし、直径が最も長い管束に対応する最も長い第3の紐体cは、例えば黄色で識別し、2つ折り状態の長さL3を約3.5mとしてなる。
そこで、第1の紐体aは、紐本体88を紐通しx・yの第1袋体x1・y1に通して両端のループa1・a2をそれぞれ第1袋体x1・y1の紐出入口91a・92aから引き出したU形の2つ折り状態で内装する。第2の紐体bは、紐本体89を紐通しx側の第1袋体x1、第2袋体x2と、紐通しy側の第1袋体y1、第2袋体y2に通して両端のループb1・b2をそれぞれ第2袋体x2・y2の紐出入口93・94から引き出したU形の2つ折り状態で内装する。第3の紐体cは、紐本体90を紐通しxの第1袋体x1、第2袋体x2および第3袋体x3と、紐通しyの第1袋体y1、第2袋体y2および第3袋体y3に通して両端のループc1・c2をそれぞれ第3袋体x3・y3の紐出入口95・96から引き出したU形の2つ折り状態で内装する。すると、紐通しx・yの第1袋体x1・y1の紐出入口91b・92b間にU形に折り曲がった紐体a・b・c3本の折返しループz1(z2・z3)が形成された状態で、スリング80・81・82がそれぞれ組み立てられる。
以って、スリング80(81・82)は、直径が異なる3種類の管束に対応する長さの第1、第2および第3の紐体a・b・cを、両端ループa1・a2(b1・b2、c1・c2)と折返しループz1(z2・z3)が紐出入口から引き出た状態で、それぞれ紐通しx・yの第1、第2および第3の袋体x1・x2・x3、y1・y2・y3に内装し、管束に巻き付けて使用するとき、吊り込み対象の管束の直径に適合する長さのものを第1、第2および第3の紐体a・b・cの中から選択可能に構成してなる。このスリング80(81・82)には、図23に示すように、外面85に複数の合成繊維製ベルト97を幅方向に縫い付けて補強し、また、図24に示すように、複数のループ掛け用フック67を縫い付け、例えば図25に示すように、ループ掛けフック67に未使用の紐体b・cの折返しループz2・z3等を掛けてまとめることにより、それら未使用のループがふら付いて作業の邪魔にならないようにしている。なお、スリング80(81・82)は、それぞれ紐体a・b・cを袋体x・yから引き抜くことができ、それによって、定期的に損傷やダメージの有無などの点検を行うことができる。
吊下具W1(W2・W3)は、吊り込み対象の管束の直径の違いに応じて、図1に示すように、レバーブロック75(76・77)のチェーン74の先端に有する片側フック78に、スリング80(81・82)の紐体a・b・cの両端ループa1・a2(b1・b2、c1・c2)の何れかを係脱自在に係止し、他側フック79に折返しループz1(z2・z3)の何れかを係脱自在に係止してレバーブロック75(76・77)に着脱自在にスリング80(81・82)を連結し、チェーン74を介して環状に吊り下げている。従って、スリング80(81・82)は、直径の異なる3種類の管束の中で最も直径の短い管束に巻き付けて使用するときは、その細径の管束に合わせて、図23に示すように、その管束が貫挿する小径な環状に形成し、最も短尺な第1の紐体aのループa1・a2をレバーブロック75(76・77)の片側フック78に係止し、折返しループz1を他側フック79に係止して吊り下げる。直径が中間サイズの管束に使用するときは、その中径の管束に合わせて、図24に示すように、その管束が貫挿する中径な環状に形成し、中間長さの第2紐体bのループb1・b2をレバーブロック75(76・77)の片側フック78に係止し、折返しループz2を他側フック79に係止して吊り下げる。直径が最も長い管束に使用するときは、その大径の管束に合わせて、図25に示すように、その管束が貫挿する大きな環状に形成し、最も長尺な第3の紐体cの両端ループc1・c2をレバーブロック75(76・77)の片側フック78に係止し、折返しループz3を他側フック79に係止して吊り下げる。
そこで、吊下具W1(W2・W3)は、図1に示すように、スライドサドル70(71・72)を、上向きに立てたアーム70b(71b・72b)を介して第2レール部10bに懸架してスリング80(81・82)をガイドレール10から懸垂し、第2レール部10bにレールフランジf2を走行ローラ68・69で挟んで摺動自在に係着することにより躯体フレームFの下を管束抜き差し方向に移動する懸垂式の軌道構造になっている。
しかも、吊下具W1(W2・W3)では、スリング80(81・82)は、直径が異なる3種類の管束に対応する長さの第1、第2および第3の紐体a・b・cを、両端ループa1・a2(b1・b2、c1・c2)と折返しループz1(z2・z3)を紐出入口から引き出した状態で、それぞれ紐通しx・yの第1、第2および第3の袋体x1・x2・x3、y1・y2・y3に内装し、吊り込み対象の管束の直径に適合する長さのものを3種の紐体a・b・cの中から選択可能に構成するから、管束に巻き付けて使用するとき、紐通しx・yに内装した紐体a・b・cの中から吊り込み対象の管束Tの直径に適合する長さのものを選んでレバーブロック75(76・77)のフック78・79にそれぞれ両端ループa1・a2(b1・b2、c1・c2)と折返しループz1(z2・z3)を係止すればよく、直径が異なる管束に巻き付けて吊り込むたびに、吊り込み対象の管束に適合する長さのスリングやロープ等の吊り具を別途に用意し、いちいち個別に付け替える必要がなく、その結果、簡単に短時間で管束に巻き付けて吊り込むことができる。
駆動手段Mは、図3および図4に示すように、躯体フレームFの後端に立設した取付台12の上に電気制御手段Eと並置し、ディーゼルエンジンやディーゼルエンジンで駆動する油圧ポンプ等を備え、油圧ポンプを、油圧ホースを介して各アクチュエータ、即ち、スクリュシャフト50の油圧モータm、チャッキング用油圧シリンダ13、バランサ用油圧シリンダ21、リフト用油圧シリンダ36、初期引抜用油圧シリンダ44と接続し、これらアクチュエータと電気制御手段Eを介して電気的に接続している。そこで、無線操作盤から送る電気制御信号を電気制御手段Eが受けると、電気制御手段Eは電気制御信号に基づいてディーゼルエンジンを駆動して油圧ポンプを回転し、この油圧ポンプから送られる圧油に基づいて油圧モータm等のアクチュエータを作動する。
さて、以上のような構成の管束引抜押込装置Rを用いて、熱交換器HのシェルSから管束Tを引き抜いてから、管束Tに洗浄等のメンテナンスを施し、しかる後に管束Tを押し込んでシェルS内に戻す方法について、以下に説明する。なお、図示例において、作業対象の熱交換器Hは、例えば最も直径の短い(1m)管束Tを備えた小型のもので、また、図2に示すように、管板tの手前に、台車Aを管板tの直前まで接近させて管束Tの引抜・押込作業をするには障害となるチャンネル側配管Pが延伸した構造になっている。
そこで、この種の熱交換器HのシェルS内から管束Tを引き抜くときは、作業用デッキDから作業者が携帯した無線操作盤を操作することにより管束引抜押込装置Rを作動させて作業が行われる。まず、管束引抜押込装置Rは、クレーンのフックhをバランサBのシャックル23に係止して玉掛け状態で熱交換器Hの高さ位置まで吊り上げ、チャッキング手段Cを前に向けて管板tの手前まで移動する。そのとき、必要に応じ、バランサ用油圧シリンダ21を作動してバランサBをガイドレール10の第1レール部10a沿って抜き差し方向に摺動させて、重心を取りながら、管束引抜押込装置Rを管板tの手前まで移動し、特に、管束Tが引き出されると、躯体フレームFの下側に沿って移動できる高さ位置で水平を保って吊持する。
しかる後、管束引抜押込装置Rをクレーンで若干持ち上げてから、図4および図8に示すように、チャキング手段Cのチャッキングブロック14bを固定ブロック15との間でシェルフランジ24を挟む高さ位置に下げ戻してから、シェルフランジ24の大きさに応じて、チャッキングブロック14bを回動して開き角度位置を調整し、シェルフランジ24を確実に挟むように位置決めする。それから、チャッキング用油圧シリンダ13を作動してピストンロッド13aを引き込み、クランプ14を後退させてチャッキングブロック14bと固定ブロック15との間でシェルフランジ24をクランプする。その後、ねじ棒17をチャッキングブロック14bと固定ブロック15を連通する長穴19に貫挿してから、ねじ棒17にナット18を螺着してシェルフランジ24を締め付け、管束引抜押込装置RをシェルSに水平状態で固定する。以って、最後は、ねじ棒17にナット18を螺着してシェルフランジ24を締め付けることにより、油圧シリンダ13の強い油圧だけでシェルフランジ24を一気にクランプすると、締め付けが強すぎてシェルフランジ24が損傷するのを防止することができる。
チャッキング手段Cで管束引抜押込装置RをシェルSに固定した後、図示例では、いま管束Tを引き抜き始める初期引き抜き時に、台車Aは、管板tから約1.5m離隔したチャンネル側配管Pより遠い位置に停止させる一方、図26(A)に示すように、台車A側のシャックル34に連結部材のチェーンcの一端を係止し、他端を管板tに有する係止部に係止して管束Tに台車Aを連結する。
しかる後、台車移動手段Gの油圧モータmを作動し、スクリュシャフト50を、可動ナット51がスクリュシャフト50上を抜き差し方向後方に直線移動する一方向に回転して台車Aを摺動し、チャンネル側配管Pが台車Aの移動の障害にならない位置まで、図26(B)に示すように、およそ1.5mの長さだけ、いったん管束TをシェルS内から引き抜く。次いで、引き抜いた管束Tの前端部が吊下具W1・W2・W3の環状に吊り下げたスリング80・81・82を貫挿すると、その中で最も台車A寄りの第1吊下具W1において、レバーブロック75の操作レバー75bを回動操作してチェーン74をブロック本体75aに巻き取ることによりスリング80を締め込んで管束Tの前端部に巻き付ける。以って、第1吊下具W1は、躯体フレームFの下側で管束Tの前端部にスリング80を巻き付けて管束Tの前端部を上から抱き込むように保持する(図1参照)。
この初期引き抜き後、管束引抜押込装置Rは、チャッキング手段Cでシェルフランジ24をクランプしてシェルSに固定したまま、台車Aと管束Tを連結したチェーンcを取り外してから、リフト用油圧シリンダ36を作動し、台車本体30の前端に担持した引抜用掛止手段35をいったん退避高さ位置に上昇させてから、係止高さ位置に下降させて先端のフック部35cを管板tの周縁フランジ26にクッションゴム31を介して引っ掛ける。(図11・図12参照)
それから、改めて油圧モータmを作動し、図27(A)・(B)に順に示すように、台車移動手段Gのスクリュシャフト50を一方向に回転して可動ナット51を介して台車Aを管束抜き差し方向後方Xに摺動し、管束T全体がシェルS内から出るまで連続的に引き抜いていく。一方、この引き抜き時に、図27(A)に示すように、管束Tの中間部が引き出されたところで、第2吊下具W2において、レバーブロック76の操作レバー76bを回動操作し、チェーン74をブロック本体76a内に巻き取ることによりスリング81を締め込んで管束Tの中間部に巻き付ける。その後、図27(B)に示すように、管束Tの後端部が引き出されたところで、第3吊下具W3において、図28に示すように、レバーブロック77の操作レバー77bを回動操作し、チェーン74をブロック本体77a内に巻き取ることによりスリング82を締め込んで管束Tの後端部に巻き付ける。以って、吊下具W1・W2・W3は、順次、引き出される管束Tに略等間隔にガイドレール10から懸垂したスリング80・81・82を締め込んで巻き付けることにより、管束Tを躯体フレームFの下にして上から抱き込むように保持する。
その後、管束TがシェルS内から、図29(A)に示すように完全に引き出されると、チャッキング手段Cのチャキングナット18を緩めてねじ棒17をチャッキングブロック14bと固定ブロック15の長穴19から外し、シェルフランジ24の締め付けを解除してから、チャッキング用油圧シリンダ13を作動し、ピストンロッド13aを突出させてクランプ14を前進さることにより、チャッキングブロック14bを固定ブロック15から離反させてシェルフランジ24のクランプを解除し、管束引抜押込装置Rを熱交換器Hから取り外す(図4・図8参照)。そのとき、クレーンで吊り上げた管束引抜押込装置Rのバランスが崩れやすいが、バランサ用油圧シリンダ21を作動してバランサBをガイドレール10の第1レール部10aに沿って抜き差し方向に摺動させて、重心を取りながら、管束引抜押込装置Rを、クレーンで吊って、図29(B)に示すように搬送用トラックの荷台dに向けて降し、何処かに仮置きすることなく、直接に荷台dの上に盤木eを介して管束Tを載せる。
次いで、吊下具W1・W2・W3のスリング80・81・82をレバーブロック75・76・77の片側フック78から外して管束Tの保持を解除する。しかる後、搬送用トラックで所定の洗い場などに搬送して保守/点検したり洗浄したりする。
ところで、上述した初期引き抜き時には、台車Aを連結部材のチェーンcで管束Tに連結してから、油圧モータmを作動して台車移動手段Gのスクリュシャフト50を回転駆動することにより台車Aを抜き差し方向後方に摺動させて管束Tを引き抜いた。しかし、本発明では、管束TがシェルS内に固く嵌り込んでいるため、スクリュシャフト50を回転駆動させて無理に管束Tを引き抜くと、スクリュシャフト50に負荷がかかり過ぎてスクリュシャフト50が損傷する虞があるときは、台車移動手段Gのスクリュシャフト50に代え、初期引抜始動部55を作動して管束TをシェルSから強制的に引き抜くことができる。
そのときは、図17(A)・(B)に示すように、初期引抜用油圧シリンダ44を作動してピストンロッド44aを所定の初期引抜長さ約15cmだけ突出させて可動連結具46を押し出し、これにより、可動連結具46が固定された台車Aを、駆動停止中のスクリュシャフトフト50を逃げ穴47にスルーさせながら、抜き差し方向後方Xに移動して管束Tを強制的に初期引抜長さLだけシェルSから引き抜く。その結果、管束TがシェルS内に固く嵌り込んでいるときでも、スクリュシャフト50を無理に回転駆動させることにより管束Tを強引に引き抜いてスクリュシャフト50が損傷するのを防止することができる。
さて次に、保守/点検、洗浄等の終えた管束Tを元の熱交換器HのシェルS内に押し込んで戻すときは、図29(B)に示すように、搬送用トラックの荷台dに載せて洗浄等の終えた管束Tが戻ってくると、管束Tは、荷台d上から別の場所に移し替えることなく、そのまま荷台d上に載置する一方、管束引抜押込装置Rをクレーンで荷台dの上方に吊り下げる。
それから、油圧モータmを作動して台車Aをガイドレール10に沿って抜き差し方向後方Xに移動して管板tの手前に片寄せしてから、吊下具W1・W2・W3のレバーブロック75・76・77の操作レバー75b・76b・77bを回動操作し、チェーン74をブロック本体75a・76a・77a内に巻き取ることによりスリング80・81・82を締め込んで管束Tの外周に略等間隔にスリング80・81・82を巻き付け、管束Tを躯体フレームFの下にして上から抱き込むように保持する。しかる後、クレーンで管束引抜押込装置Rごと熱交換器Hの高さ位置まで吊り上げ、管束Tの後端99を前に向けてシェルSの開口の手前まで移動する。
次いで、引き抜き時と同じように、図29(A)に示すように、チャキング手段Cのチャッキングブロック14bを固定ブロック15との開でシェルフランジ24を挟んでから、チャッキング用油圧シリンダ13を作動してピストンロッド13aを引き込むことによりクランプ14を後退させてチャッキングブロック14bと固定ブロック15との間でシェルフランジ24をクランプする。それから、ねじ棒17をチャッキングブロック14bと固定ブロック15の長穴19に貫挿してから、ねじ棒17にナット18を螺着してシェルフランジ24を締め付け、管束引抜押込装置RをシェルSに水平状態で固定する。
そのように管束引抜押込装置Rは、チャッキング手段Cでシェルフランジ24をクランプしてシェルSに固定する一方、台車移動手段Gの油圧モータmを作動し、スクリュシャフト50を、引き抜き時とは反対に、可動ナット51がスクリュシャフト50上を抜き差し方向前方Yに直線移動する他方向に回転して台車Aを摺動し、押込み用押当手段40の緩衝材32を介して管板tに押し当ててから、そのまま管束Tを押圧し、順次、図27(B)・(A)に示すように、シェルS内に押し込む。
それから、図26(B)に示すように、管束Tの押込み長さの残りがチャンネル側配管Pが台車Aの移動の障害になる1.5m程になると、台車Aの駆動を停止する一方、台車Aのフレームガイド37に嵌挿し最も後側の退避位置にロックピン38によるロック状態で保持した押込み補助フレーム45を、いったんロックピン38によるロックを解除してから、引手リング33を持ってフレームガイド37から前方の管板t側に向けて引き出し、前端の受け板片45aが管板tに近接する押込み位置まで引き出したところで、ロックピン38の先端を最も後端寄りのロック穴29cに係合させて押込み位置にロック状態で保持する(図11・図14参照)。
しかる後、この一対の押込み補助フレーム45の受け板片45a・45a間に緩衝材の木製角材100を載せてから(図3参照)、改めて台車移動手段Gの油圧モータmを作動してスクリュシャフト50を引き抜き時とは反対の他方向に回転し、台車Aを抜き差し方向前方Yに摺動させて押込み用補助フレーム45で緩衝材の木製角材100を介し管束Tを押圧してシェルS内にすべて押し込む。管束Tの押込みが完了すると、管束引抜押込装置Rは、チャッキング手段Cによるシェルフランジ24のクランプを解除してシェルSから外し、クレーンで吊り下げて地上に降ろし、管束Tの引抜押込作業を終了する。
以上のように管束引抜押込装置では、シェルSに対して管束Tを引き抜き、これから押し込むためにスクリュシャフト50を回転駆動して台車Aを抜き差し方向に走行させるが、台車Aは、台車本体30を、上向きに凸設したアーム部30eを介して第2レール部10bに摺動自在に懸架してガイドレール10から懸垂し、躯体フレームFの下を抜き差し方向に走行する懸垂式軌道構造にすると共に、シェルSから引き出され、これから押し込む管束Tを吊持するためにレバーブロック75(76・77)の操作レバー75b(76b・77b)を回動操作してチェーン74をブロック本体75a(76a・77a)内に巻き取ることによりスリング80(81・82)を締め込んで管束Tの外周に巻き付けるが、吊下具W1(W2・W3)も、レバーブロック75(76・77)を、上向きに立てたスライドサドル70(71・72)のアーム70b(71b・72b)を介して第2レール部10bに摺動自在に懸架してスリング80(81・82)をガイドレール10から懸垂し、管束Tを躯体フレームFの下で上から抱え込むように保持する懸垂式軌道構造をなし、ガイドレール上を台車が走行して引き抜かれる管束を躯体フレームの上に載せて保持する跨座式でないため、引き抜いた管束Tは、従来のように何処かに仮置きすることなく、そのまま吊り降して搬送用トラックの荷台dの上に載せればよく、従って、仮置き場所から荷台に積み替えるためにわざわざ管束の玉掛けに使用する大型重量物の吊りフレームを取り外す作業も必要なく、管束を搬送用トラックの荷台に積み替え終えると、再び吊りフレームを管束から外す必要もなく、他方、押し込み時には、管束をクレーンで玉掛け状態で吊り下げて、搬送用トラックの荷台からわざわざ移し替えたり、その後に吊りフレームを再び組み立てる必要がなく、それだけ従来の吊りフレームのような大型の重量物を取り扱う危険な作業ステップが少なくなり、その結果、必要な作業ステップを少なくして作業員数を減らし、作業時間も短縮して作業の効率化を図る一方で、作業の安全性を高めることができる。
ところで、管束引抜押込装置Rは、管束Tをシェル内Sから引き抜くときとシェルS内に押し込むとき、台車移動手段Gの油圧モータmを作動して細長いスクリュシャフト50を回転することにより台車Aを管束抜き差し方向に摺動させるが、その間は、図18および図19に示すように、ねじシャフト支持部60を作動してスクリュシャフト50を撓まないように常に支えている。
そこで、管束Tの押し込み時、ねじシャフト支持部60は、台車Aが回転駆動するスクリュシャフト50上を抜き差し方向前方Yに移動するとき、第1ねじ受けアーム56の受け板部56aが支持位置にあると、アーム押当ガイド66の第1押当ガイド板66aが受け板部56aに押し当たり、対辺のリンク板52・53とが付勢ばね58に抗して平行運動して平行リンク54を抜き差し方向前方Yに移動し、第1ねじ受けアーム56を退避位置に回動する一方、それに代わり、第2ねじ受けアーム57が支持位置に回動してスクリュシャフト50を第2ねじ受けアーム57で下から受け支えている。
他方、管束Tの引き抜き時、ねじシャフト支持部60は、台車Aがスクリュシャフト50上を台車Aが抜き差し方向後方Xに移動するとき、第2ねじ受けアーム57の受け板部57aが支持位置にあると、アーム押当ガイド66の第2押当ガイド板66bが受け板部57aに押し当たり、対辺のリンク板52・53とが付勢ばね58に抗して平行運動して平行リンク54を抜き差し方向後方Xに移動し、第2ねじ受けアーム57を退避位置に回動する一方、それに代わり、第1ねじ受けアーム57が支持位置に回動してスクリュシャフト50を第2ねじ受けアーム57で下から受け支えている。
結局、管束引抜押込装置Rは、スクリュシャフト50を回転駆動させて台車Aを抜き差し方向に摺動する間、ねじシャフト支持部60を作動して第1ねじ受けアーム56と第2ねじ受けアーム57の何れかで下からスクリュシャフト50を常に受け支えることにより、スクリュシャフト50に撓みが発生するのを防止し、台車Aを常に安定してスムーズに走行させることができる。